バカと真剣とドラゴン―――完結―――   作:ダーク・シリウス

22 / 84
第九問

「雄二・・・・・一緒に勉強できて嬉しい」

 

「待て翔花、当然のように俺の膝に座ろうとするな。

クラスの連中が靴を脱いで俺を狙っている」

 

強化合宿二日目。今日の予定は元Aクラスとの合同合宿となっていた。

学習内容は基本的に自由。質問があれば周囲や教師に聞いてもOK。

要するに自習みたいなものだ。その為、机の並びも生徒同士が向かい合うような

形になっている。

 

「ハーデス。何を勉強しているんだ?」

 

『・・・・・土屋に頼まれて保健体育』

 

「・・・・・俺より知識豊富」

 

悔しげな顔を浮かべるムッツリーニ。ああ、ムッツリーニらしい自習勉強だことで。

 

「でも、何で自習なんだろう?授業はやらないのかな?」

 

「授業?そんなもんやるわけないだろ」

 

『・・・・・この合宿の趣旨はモチベーションの向上。

つまり、元AクラスはFクラスを見て「ああはなるまい」と、Fクラスは元Aクラスを

見て「ああなりたい」と考える。そういったメンタル面の強化が目的だから、

授業はしなくてもさして問題ではない。今回元Aクラスと合同学習をしているから

俺達Fクラスにとって元Aクラスは教師みたいな感じで自習をしている』

 

こいつの頭の回転に舌を巻かせてくれる。

 

「死神の言う通り・・・・・」

 

「元AクラスはともかくFクラスに効果があるとは思えないんだけど・・・・・」

 

明久の言葉には同意と頷く。現に、Fクラスは一部を除いてだらけている。

逆に元AクラスがFクラスを見てああはなるまいと必死に勉強をしている。

そんな光景に内心溜息を吐いていると、

 

「ああ、死神君ここにいたんだ。ならボクもここにしようかな?」

 

そこに訊き慣れなれた声が聞こえてきた。

 

『・・・・・工藤愛子』

 

「ハロハロ~死神君」

 

ニッと歯を見せて笑う工藤。ボーイッシュな雰囲気と相まって、

その仕草はとても爽やかに見えた。

 

「そういえば、死神君以外とはあんまり喋っていないから改めて自己紹介させて

もらうね。元Aクラスの工藤愛子です。趣味は水泳と音楽鑑賞で、スリーサイズは―――」

 

『・・・・・78・56.79』

 

「って、何時の間にボクのスリーサイズを知っているの?」

 

『・・・・・目測』

 

その赤い目で目測とは・・・・・女子のスリーサイズを知ることが

できる機能でもあるのか?

 

「そっか。じゃあ次は特技ね。特技はパンチラで好きな食べ物はシュークリームだよ」

 

なんだ!?最後の方に変な台詞が混ざったぞ!

 

「ん?どうしたの吉井君?」

 

「いや、別に工藤さんの特技を疑っているわけじゃないんだ。ただ、その・・・・・」

 

「あ、さては疑ってるね?なんなら、ここで披露してみせよっか?」

 

工藤が短いスカートの裾を摘んだ時だった。

 

『・・・・・工藤愛子は変態なのか?」

 

「へ?」

 

『・・・・・いや、露出狂の変態ビッチか。実技が得意って自分で言うほどだからな』

 

ジーと赤い目を工藤に向けるハーデスだった。

 

「え、えっと・・・・・ボクは別にそんな風に言った覚えはないんだけどな・・・・・」

 

『・・・・・特技がパンチラで、経験があるような言い方をした時点でそうだと

思うけど?誤解されたくなければ発言には気をつけた方が良い』

 

「・・・・・ご、ごめんなさい・・・・・」

 

シュンと工藤が落ち込んだ。

 

『・・・・・スパッツ穿いている時点で、ただからかうだけでパンチラなんて

できやしない処女のくせにな』

 

「さっきの謝罪をボクに返して!

というか、どうしてキミがそんなこと知っているのさ!」

 

『・・・・・勘』

 

「鎌を掛けられた!?」

 

土屋が鼻血を吹いている!誰か、誰か応急処置を!

 

「そんな!?工藤さん、僕のドキドキと高鳴った純情を返して!」

 

お前も余計なことを言わんでいい!

 

「ごめんごめん。じゃあ、代わりに面白いものを見せてあげるよ」

 

工藤が取り出したのはい小さな機械だった。これって小型録音機か。

 

「コレ、凄く面白いんだ。例えば―――」

 

小さな機械をカチカチと弄る工藤。少し間を置いて、

内蔵されているスピーカーから声が聞こえてきた。

 

―――ピッ《工藤さん》《僕》《工藤さんの》《パンチラ》《ドキドキ》《して》《いる》

 

「わあああああっ!僕はそんなこと言ってないよ!?変な物を再生しないでよ!」

 

「ね?面白いでしょ?」

 

悪戯っぽい笑みを浮かべる工藤。その笑みは何故か明久の背後に向いていた。

 

「・・・・ええ。最っっ高に面白いわ」

 

「・・・・・本当に、面白い台詞ですね」

 

俺も明久の背後に見やるや、島田と姫路が氷の微笑を浮かべていた。

 

『・・・・・』

 

すると、ハーデスが立ち上がり、一瞬で島田と姫路の背後に回り二人の襟を

掴んでこの場から遠ざけ始めた。

 

「ちょっと、なにすんのよ!」

 

「放してください!」

 

ドサッとゴミを放り投げるような音が聞こえた後、ハーデスが戻ってきた。

 

「ははは・・・・・凄い行動力だね」

 

「・・・・・容赦がない」

 

最近のこいつの言動。エスカレートしていくな・・・・・。

 

「ん?これって保健体育の?」

 

『・・・・・土屋に頼まれていて教えていた』

 

「へぇ、そうなんだ。じゃあ、ボクにも教えてよ」

 

『・・・・・構わない』

 

その手の知識が豊富な三トリオが集った。三人の話を聞くと、

こっちが変な気分になるような会話が絶え間なく繰り広げた。

 

「ねぇねぇ、死神君。一つ訊いてもいい?」

 

『・・・・・なんだ?』

 

「死神君、優子の弟君と一緒にお風呂入ってどうだった?弟君、

女の子みたいだからさ結構ドキドキとかしななかった?」

 

「な、何を申すのじゃお主は!?ワシがハーデスに対して・・・・・!」

 

「へ?秀吉、工藤さんはハーデスのことを聞いているのにどうして

キミが反応するのさ?」

 

「・・・・・っ!?」

 

明久の指摘に木下の奴は真っ赤に染まって慌てて弁解し始めた。

 

「おいまさか・・・・・二人とも・・・・・デキちゃった?」

 

『・・・・・デキていない』

 

「デキてなんぞおらん!」

 

だ、だよな・・・・・・。安堵で息を吐けばスケッチブックで書いた文字を

俺達に見せるハーデス。

 

『・・・・・でも、そういう人間は蒼天にもいる』

 

「えっ、そうなの?」

 

『・・・・・蒼天の民法は他の国とは異なっているから』

 

ほう。それは興味深い・・・・・。是非とも聞かせてもらおうか?

 

「例えば?」

 

カキカキ・・・・・バッ。

 

『・・・・・近親結婚、同性愛結婚、一夫多妻制、一妻多夫制とかできる。蒼天では』

 

ハーデスがスケッチブックに書いた民法、第831~749条。

婚姻に関わる法律を見た瞬間。

 

『『『『『はぁあああああああああああああああああああっ!?』』』』』

 

思わず大声で叫んでしまった。

 

「ちょっと待て!蒼天って同性愛結婚ができるのか!?」

 

「し、しかも・・・・・近親結婚って・・・・・」

 

「夢のハーレム、一夫多妻制ができるのかよ!?」

 

なんなんだ、蒼天って!そこまでフリーダムな国だったのか!?

AクラスやFクラスの生徒達が怪訝にこっちへ視線を送ってくるが、

俺達の話を聞いていたようでざわめきだしている。そんな時、学習室のドアが開き、

女子が物凄い勢いでハーデスに飛び掛かった。

 

「その話は本当ですの!?」

 

『・・・・・誰?』

 

「私は清水美春です!島田美波お姉様を心の底から愛している女ですわ!

先ほどの話は本当のことですの!?」

 

「ちょっ、美春!?いきなり現れてなに言ってんのよ!」

 

清水って・・・・・確かDクラスの女子だったな。

こいつ、同性愛者だったのか・・・・・。

 

『・・・・・本当だけど』

 

「お姉様!今すぐ私と蒼天へ移住しましょう!そこで幸せな家庭を作るのです!」

 

「イヤよ!ウチは普通に男の子が好きなんだから!子供だって作れないでしょう!」

 

『・・・・・女性器に男性器を生やす技術、蒼天にある』

 

「マ、マジで・・・・・?」

 

「お姉様!今の骸骨の文字を見られましたわね?私が豚野郎のビックサイズなアレを

付けますのでお姉様は私の子を生んでください!」

 

「イヤァァアアアアアアッ!」

 

カキカキ・・・・・バッ。

 

『・・・・・まあ、蒼天にこれたらの話になるけどな』

 

興奮している清水と心底嫌がる島田を余所にハーデスはそう書いた。

 

「キミ達、少し静かにしてくないかな?」

 

そんな中、凛とした声が響き渡った。知的に眼鏡を押し上げるクールな声の主は

久保利光のものだった。

 

「あ、ごめん久保君」

 

明久は彼にだけではなく、この部屋にいる皆に対して頭を下げる。

ハーデスの国の法律に驚かされて大声を上げてしまったからな。申し訳ない。

 

「吉井君か。とにかく気をつけてくれ。まったく、姫路さんといい島田さんといい、

Fクラスには危険人物が多くて困る」

 

危険人物が多いのは否めない。

 

「・・・・・ところでだ、死神君」

 

『・・・・・ん?』

 

「キミの国では同性愛結婚ができると騒ぎの中で小耳を挟んだんだが・・・・・。

つまり、女性と女性が結婚しているように男性は男性と結婚しているということに

なるのかな?となると、男同士で結婚している者がいると推測するの

だが・・・・・どうなんだね?」

 

久保の質問にハーデスは首肯する。

 

『・・・・・女性同士より少ないけど、二桁ぐらい男性同士で結婚した人間はいる。

幸せそうに楽しそうに暮らしている』

 

「・・・・・そうか、情報提供ありがとう」

 

『・・・・・人は愛があれば性別なんて関係ない。俺はそう思える』

 

「・・・・・性別なんか関係ない、か・・・・・」

 

久保が妙に思い詰めた表情をしてハーデスの台詞を反芻していた。

その顔を見ると・・・・・なぜだか鳥肌が立った。おかしいな。なんでだろう。

 

「骸骨野郎、良いこと言いますのね。少しは見直しましたわよ」

 

「ハーデス!余計なことを言わないでよ!ウチの人生が滅茶苦茶になるでしょうがー!」

 

「なんだか、島田は俺と似ているような・・・・・」

 

ここも騒がしくなったな。と、そう思っていると俺の視界の端に顔だけ

半分出してこっちを見つめている木下姉が映り込む。

結局、この騒ぎは鉄人が怒鳴りこんでくるまで続いた。

 

 

 

 

「・・・・・愛子、死神・・・・・怒ってた?」

 

「うーん、まだ怒っているような感じじゃなかったけど・・・・・顔が見れないから

何とも言えないや」

 

「死神が代表にあんなことを言うほどだからきっと・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「ああ、代表。死神は代表のことを嫌っていないよきっと。

ほら、しばらく様子を見るって言ってじゃない。だからそんな落ち込まないで」

 

「・・・・・私、死神に酷いことをした」

 

「それは・・・・・」

 

「・・・・・死神はそのせいで私と距離を取っている。だから嫌われて当然」

 

「そう言われると何とも言えないわ・・・・・そうだ」

 

「優子?」

 

「弟の秀吉から聞くわ。代表に対してどう思っているのか、秀吉なら聞けるはず」

 

「そっか、死神君と弟君は一緒の部屋だし仲もいいしね。

 ね、代表?そうしてもらおうよ」

 

「・・・・・優子、お願い」

 

「任せて」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。