「それで姉上、ワシに訊きたいこととはなんじゃ?」
「死神が代表のことをどう思っているのか知りたいの。
アンタ、何か知っているんでしょ?」
「そのことか。ハーデスは霧島に対して怒ってはおらん。じゃが、しばらくは反省を
させたいようでの。自分の言動を理解して、落ち着いて接せれる状態になったら
許すとか言っておったのじゃ」
「そう・・・・・それだけ聞けただけでも安心できたわ」
「ハーデスは裏切られることが嫌いのようじゃ」
「裏切り?代表が死神に何か裏切ったって言うの?」
「好意を抱かれ、信用していた者から攻撃された。信用していた者に攻撃されたら
少なからずショックを受ける。それがハーデスにとって霧島が裏切ったと思っておる」
「・・・・・理解できないわけじゃないけど、死神が嫌いなことが裏切りなら
あの言動は納得できるわ。ねぇ、代表と死神の中を戻す方法わからないかしら?」
「こればかりは本人同士ではないと・・・・・じゃが、少なからずハーデスは霧島の
ことを嫌ってはおらん。霧島がハーデスに誠心誠意謝罪すればあるいは・・・・・」
「じゃあ、代表と死神を会わせましょう」
「それは明暗じゃが、どうやってじゃ?会えることは会えるが、
周りの視線を浴びる中で霧島はハーデスに謝罪させるというのかの?」
「バカね、そんなの決まっているじゃない。
皆が寝静まり返った時にアンタの部屋に行くわ」
―――☆☆☆―――
・・・・・深夜、私は優子と愛子に手を引かれて見回りの先生が来ないか
警戒しながらとある部屋に入った。・・・・・部屋の中は暗く、月明かりでしか
部屋は照らされていない。だから、死神の素顔が薄暗くてもよく見える。
「・・・・・死神」
・・・・・私を見る瞳に感情が籠っていない。顔も無表情で私を見つめる。
それが私の心を痛ませる。
まだ、彼は怒っているんだとそう思わせる。
「死神、代表の話を聞いてくれる?」
「代表は死神君に謝りたいって思っているの。お願い」
・・・・・優子と愛子がフォローしてくれる。
私をゆっくり前に出して死神と対峙させる。座っている死神の視線と会うように私は
座り、怒っているであろう死神に畏怖の念を抱きつつ口を開いた。
「・・・・・ごめんなさい」
「・・・・・」
「・・・・・死神が、そんなことしないことを分かっていたのに、
私は・・・・・何度も助けられたのに・・・・・酷いことをして
しまって・・・・・ごめんなさい」
・・・・・それから懺悔のようにポツポツと死神に対する謝罪を言う。
死神は何も言わず、私を見るだけ。
嫌われているのかな・・・・・私・・・・・だとすれば、もう・・・・・。
「言いたいことはそれだけか?」
「・・・・・っ」
死神が私に声を掛けた。コクリと小さく頷く。言いたいことは言った。
ちゃんと死神に謝った。
「・・・・・人の話をちゃんと聞くか?」
「・・・・・聞く」
「・・・・・理不尽な暴力もしないな?」
「・・・・・二度としない」
「・・・・・俺のこと嫌いでいてくれるな?」
「・・・・・それは無理」
・・・・・それだけは死んでも変えない。
死神に嫌われようとも心の中はあなたのことを想い続ける。
「・・・・・ちっ」
「いや、死神君。その質問はどうかと思うよ」
「しかも今、舌打ちしたでしょ」
「何のことだ?」
「堂々とシラを切るお主も肝が据わっておるの・・・・・」
・・・・・優子達が呆れたり唖然としている。
「俺に好意を抱いても碌なことが無いんだよ」
「どうして、そんな事を言うの?」
「俺が男が大好物だと言ったら?」
「「はい、嘘っ!」」
「嘘じゃな」
「・・・・・(コクリ)」
・・・・・一斉に嘘だと指摘する私達。死神はやれやれと肩を竦める。
まるでこう言われることを分かっていたように。
「少しぐらい動揺してくれたら可愛かったのにな」
「や、死神君がそんな人だったら学校中噂になっているって」
「もしもそれが本当だったら秀吉は・・・・・食べられちゃっているしね」
「そうか・・・・でも俺は秀吉に口説かれたぞ。風呂の中で」
・・・・・口説かれた?死神が・・・・・優子の弟に?
「・・・・・もう一度言ってくれないかしら?」
「俺は秀吉に口説かれたんだよ」
「・・・・・」
・・・・・死神の言葉に優子は立ち上がった。その目は狩人の目だった。
優子の弟にその目を向け口を開く。
「秀吉・・・・・アンタ、男相手になに言ってんのかしら?」
「ち、違うのじゃ姉上!ワシはハーデスに《お主の過去に何か遭ったのか当然知らん。じゃがな。今のお主なら知っておるぞ。雄二や明久、ムッツリーニ、直江達と共にの。お主が毎日苦痛と言うなら、ワシや他の皆とその苦痛を和らげよう》ハ、ハーデス!お主はなんてものを
再生しておるのじゃ!?」
「うわ・・・・・殺し文句だよ」
「・・・・・優子の弟、死神は渡さない」
「霧島よ!お主も勘違いを―――って、姉上!足の関節はそっちに曲がらん―――!」
~~~しばらくお待ちください~~~
「ひ、酷い目に遭ったのじゃ・・・・・」
「まったく、死神に口説くなんてソッチの系になったのかと思ったじゃないの」
「ううう・・・・・ワシは純粋な気持ちを言っただけじゃ・・・・・」
「その気持ちは凄く嬉しかったぞ」
「じゃ、じゃからそんな嬉しそうな笑みをするではない!」
「・・・・・それで、死神。あなたはどう答えたのよ」
・・・・・優子は問うた。自分の弟の人生を左右しかねない瞬間・・・・・。
「・・・・・(ポッ)」
「秀吉、アンタの首を180度変えてあげるわ」
「ま、待つんじゃ姉上!そんなことしたらワシはずっと後ろを見る羽目になる!
それにハーデスとワシは男なんじゃぞ!?
男同士が付き合っているなぞおかしいであろうに!」
「蒼天では同性愛結婚ができるって聞いたけど?
それに、何時の間にか名前で呼び合う仲になっているのはどうしてかしらね?」
「絆を結んだからじゃ。って、姉上よ。ワシの頭をホールドせんでくれぇっ・・・・・!」
「その絆は一体どういう意味での絆なんでしょうね・・・・・っ」
・・・・・優子が自分の弟に折檻をしていると死神が仲裁して二人を離した。
「ひ、酷いのじゃハーデス・・・・・」
「悪いな。でも、嬉しかったのは本当だし嘘じゃないんだけど?
秀吉はあの時言った言葉は嘘だと言うのか?」
「・・・・・違うのじゃ」
・・・・・照れて死神から顔を逸らす優子の弟。
「・・・・・話を戻す。翔子、深く反省しているなら良い。
だけど、もしもあんなことをもう一度したら」
「・・・・・したら?」
「お前の頭の中、記憶から俺の記憶とお前が俺に対する感情を全て消去する。
俺は信用している奴からの理不尽な攻撃は一番嫌いだからな」
・・・・・そんなことできるの?だけど、死神は本気で言っているのだと分かる。
「・・・・・わかった。約束する」
「ん、ならいい。おいで」
「・・・・・」
・・・・・死神に抱き寄せられて胸の中で頭を撫でられる。一日振りの死神の温もり・・・・・。
やっぱり死神のニオイが・・・・・温もりが・・・・・スキ、大スキ・・・・・。
「・・・・・ごめんなさい」
「自覚している分まだ猶予がある。自覚していない上に間違っていないと
思っていたら卒業するまで避けていただろうな」
「・・・・・」
・・・・・心から思った。気を付けようと。
「ところで・・・・・」
・・・・・愛子が話を切りだす。
「死神君、どうして自分のことを碌なことが無いって言うのカナ?
こんなに顔が格好いいのに」
「謙遜、しているわけ?」
・・・・・優子も愛子に続いて問うた。私も気になる。どうしてそんな事を言うのか。
そう思っていれば、死神は重く口を開いた。
「・・・・・この答え、三人が俺から離れるかもしれないからなぁ・・・・・」
「なによ、アタシ達には言えないっての?」
「木下優子達は女だからドン引きする可能性がある」
「しないわよ。絶対に」
「・・・・・本当か?」
「本当よ。なんなら、アタシがしたら・・・・・何でも言うことを聞いてあげるわよ」
・・・・・薄暗い部屋の中、うっすらと顔を染める優子。
その言葉でも死神は思い悩んでいると優子の弟が声を掛けた。
死神の手の甲に手を乗せて、上目遣いで声を掛けて。
「大丈夫じゃハーデス。ワシがついておる」
「・・・・・秀吉、やっぱアンタとは話し合った方がいいようね」
「な、何故そうなるのじゃ!?ワシは励ましているだけなのじゃぞ!?」
「まるで優子が死神君を励ましているような光景だからじゃない?」
「なっ・・・・・!」
・・・・・その指摘に優子は顔を真っ赤に染めた。優子の弟とは酷似した
顔の持ち主で、自分が弟の立場と変えると確かにそんな光景になってしまう。
「でも死神君。ボクも死神君のことが知りたいから教えてほしいな。できればだケド」
・・・・・愛子は微笑みながら真っ直ぐ言う。死神は私にも視線を送ると、
私も知りたいと暗にコクリと首を小さく縦に頷いた。
「・・・・・しょーもない。分かったよ」
・・・・・ようやく話す気になってくれた。私達は静かに死神の言葉に耳を傾ける。
「・・・・・俺は―――」
・・・・・死神の皮膚がまるで蛇のような鱗が覆い始め、
顔も形を変えてトカゲのようなフォルムになる。背中に赤い翼が生え、
腰辺りに野太い尾も生え出す。
『・・・・・ドラゴンだ』
「「「・・・・・」」」
『・・・・・思いっきりドン引きしているじゃんか・・・・・』
「・・・・・ごめんなさい」
「・・・・・死神君が・・・・・トカゲになるなんてね」
『・・・・・ドラゴンだからな?トカゲじゃない』
・・・・・ボッと口から火を吐く死神。
「・・・・・死神、元に戻れるの?」
『・・・・・戻れるぞ』
・・・・・人型のドラゴンになった死神は元の人間の状態に戻った。
それを目の当たりにした優子達は愕然と見つめるだけで息を呑んだ。
「それが・・・・・アンタの正体?他にも知っている人はいるの?」
「いや、俺がドラゴンだと知っているのはこの場にいるお前らだけだ。
―――俺が怖くなったか?」
「・・・・・」
「ま、ドラゴンは怖ろしい生物だしそれは仕方がない。
人間に化けて学校に通っているドラゴンがいるとは誰も露にも思わない」
・・・・・苦笑を浮かべ金色の瞳を真っ直ぐ優子と愛子を見回し、
最後に私にも向ける。
「翔子、俺は人間じゃない。化け物だぞ。こんな俺でも好きなのか?
人とは違う生物、ドラゴンだ」
「・・・・・」
「俺は誰かに好かれようが、俺はその好意を応えることができない。
甘えさせることができても、人間とドラゴンの寿命は桁違いであっという間に
人間の方が先に死ぬ。だからこそ俺は誰かと結婚をし一緒に暮らすこともできない」
・・・・・自分のことは綺麗さっぱり諦めろと暗に言う死神。
そっか・・・・・それが理由なんだ。
静かに耳を傾けていた私は瞳を死神の金色の瞳を覗きこむように見据える。
「・・・・・分かった」
「・・・・・翔子」
「・・・・・死神がドラゴンだと言うことは分かった。でも、それがどうしたの?」
・・・・・私の発言に死神は大きく目を見開いた。
きっと私がそんな事を言うとは思わなかったかもしれない。
死神・・・・・あなたは私のことを全く知らない。
だから私は、霧島翔子は言い続ける。
「・・・・・私は死神が化け物だろうがドラゴンだろうが関係ない。
死神が好き、大好き」
「元Aクラス代表の女とは思えない発言だな。俺の話を聞いていただろ・・・・・。
ドラゴンだぞ?化け物と付き合っている気持ち悪い女だと世間に知らされたらどうする」
「・・・・・周りのことなんて関係ない。私は死神が好き。この気持ちは偽りじゃない」
「・・・・・っ」
・・・・・死神は一瞬顔を歪ませた。
「翔子、お前って大バカだろう。吉井明久並みに恋愛に関すると」
「・・・・・死神と一緒にいられるならバカでも構わない」
・・・・・ちょっと失礼だと思うけど、死神と一緒なら構わない。そうなっても・・・・・。
「お前・・・・・っ!?」
・・・・・死神のを首に両腕を回して私の方へ顔を引き寄せた。・・・・・金色の瞳。
獣のような瞳が間近で見れて、瞳の奥が覗ける。―――その、色も。
「・・・・・死神、ずっと寂しかった?」
「なっ・・・・・!?」
「・・・・・寂しいから、寂しい思いをするから誰かと
ずっと一緒になろうとしないの?」
「―――――っ!」
バッ!
・・・・・私の発言に死神は背中から六対十二枚の金色の翼を生やし、
刃状にして私の背後から突き刺そうとする構えをする。
その凶行に尻目で見ると優子達は目を丸くしていた。
「それ以上、言うな・・・・・」
・・・・・どこまでも冷たく、死神は私を突き放そうとする。
殺意が籠った目を私の瞳を向ける。それでも真っ直ぐ死神を見つめる。
怖くないと言えば嘘になる。だけど、私は・・・・・死神の全てを受け入れたい。
「・・・・・それ以上言ったら、お前を殺すぞ」
「・・・・・死神に殺されるなら私は構わない。ずっと死神の傍にいれるから」
・・・・・柔和に微笑むと、顔を歪めた死神。
そんな辛そうな顔をしないで・・・・・大丈夫。
「絶対バカだ。俺が今まで見たことがない位の大バカだお前は」
「・・・・・死神、私を殺すの?」
・・・・・その質問に金色の翼は微弱に震えだす。
まるで葛藤しているかのようだった。・・・・・大丈夫、大丈夫だから。
「・・・・・殺すわけ無いだろうが・・・・・」
・・・・・翼は力が抜けたかのように床へしな垂れた。
「俺がここまでしても頑になって俺に好意を向けてくる女に殺すことはできない」
「・・・・・そう」
「お前の勝ちだ翔子。物理的な意味じゃなく、心理的な意味でな」
「・・・・・ぶい」
・・・・・右手をチョキにして喜びを表す。・・・・・優子達は解決したのだと
悟り安堵で息を吐く。
「はぁ・・・・・代表が殺されるじゃないかって心配したよ」
「アタシも・・・・・」
「じゃが・・・・・霧島の愛の力がハーデスを勝ったのじゃ」
「・・・・・安心しているが、お前らは俺のことが平気なのか・・・・・?」
・・・・・死神は優子達三人に問う。その問いにキョトンとした後にこう答えた。
「まあ、お主がドラゴンだと言うことはワシは既に知っておるが、
姉上と工藤はどうなのじゃ?」
「ボクは死神君は死神君だと思っているよ。正体がドラゴンだってことは驚いたけど、
こうして元の姿に戻れて対話ができるなら怖くもなんともないし」
「アタシは目の前で起こったことしか信じないし、
死神がドラゴンだとしても今更態度なんて変えるわけ無いじゃない」
「じゃあ、これまでどおり接することができると?
俺がドラゴンであることを知っておきながら?」
「「・・・・・(こくり)」」
・・・・・優子と愛子が同時に肯定と頷いたのだった。それを死神は、
「・・・・・そうか」
・・・・・どこか肩の荷が下りたように安堵で息を吐き、
「木下優子、工藤愛子。それに翔子と秀吉・・・・・ありがとうな」
・・・・・死神は心の底から純粋な笑みを浮かべた。
自分を受け入れてくれた私達に感謝の言葉を述べたのだ。
・・・・・ほら、大丈夫だった。死神は誰かに拒絶されることを嫌って、
拒絶されるなら寂しい思いをしてまでもずっと一人でいようとしていた。
それはとても辛く虚空を感じさせる。・・・・・だから、誰かが受け入れないと
死神はずっとこのまま・・・・・。
「「―――――っ」」
「っ・・・・・」
・・・・・優子達は死神の笑みを見て爆発したかのように
顔が真っ赤になった。・・・・・私も小さい頃から死神の笑顔を魅入られている。
だから、こんな笑顔を見れて嬉しくて私も微笑んだ。
「(・・・・・死神、ますます好きになっちゃった)」
・・・・・顔が熱い、私も顔が赤くなっている。・・・・・これが惚れた弱み、
なのかもしれない。
「・・・・・死神、聞きたいことがある」
「なんだ」
「・・・・・試験召喚システムを開発したのは・・・・・死神なの?」
・・・・・私がSクラスに髪を切られた翌日。
Sクラスの生徒の両親がこぞって学園長室に集まっているところに
私と優子、愛子の両親と入ると、大人の死神がいた。
自分のことを蒼天の中央区の王だと言っていた。
だから、その可能性があると思って聞いた。
「ん?ああ、そうだぞ」
「「えええっ!?」」
「あっ・・・・・」
・・・・・しまったって顔をした。もしかして、秘密だった・・・・・?
信じられないとそんな顔で優子が口を開いた。
「それじゃ、召喚獣の操作も達人なのは・・・・・開発した当人だったからなの?」
「まあ、そうだな。でも、始めっからあんなに操作はできなかった。
何日も操作し続けてようやくあんな風に操作できるようになった」
「試験召喚システムって十年ぐらい前に開発したんだよね?
死神君、キミって大人なの?」
「・・・・・まあ、この姿を見れば不思議に思うよな」
・・・・・十代後半、身長はそれなりに高い。
でも、年齢を不正できる魔法や薬があれば身長と容姿だって変えることができる。
「だが、どうして今頃そんな事を聞く?んで、どうして俺が中央区の王だと?」
「・・・・・死神、学園長室で自分で蒼天の中央区の王だと言った」
「あの時か・・・・・聞いてこないからてっきり忘れていたのかと思ったぞ」
「・・・・・ボク達、失礼な態度で接しちゃった・・・・・?」
「いや、気にするな。元々は試験召喚システムの調子を見に来たんだからな」
「それって学園長も知っているの?」
「知っているさ。それに知っているも何も、学園長のカヲルをはじめ、
西村先生や高橋女史、その他の教師も皆、蒼天から派遣されたメンバーだ」
「う、嘘・・・・・全然知らなかった」
「因みに西村は俺の弟子だ」
・・・・・雄二が知ったら驚愕しそう・・・・・。でも、教えない。
これは私だけの秘密・・・・・。
「ついでに言えば、俺が蒼天の王だって知っているのは学園長だけしか知らない。
西村達は『蒼天から来た編入生』としか認識していないから俺に対して
あんな接し方をしてくるわけだ」
「そんな偉い人と、ボク達は接していたんだね・・・・・心臓に悪いや」
「そ、そうね・・・・・ねえ、死神」
「なんだ?」
「えっとその・・・・・以前、何かの原稿を書いていたでしょう?
あれ、蒼天の王がどうして書いているの?」
「原稿?・・・・・ああ、乙女小説だな?あれは暇潰しに書いて
ふざけて出版社に出したらさ、『素晴らしいっ!』って採用されて
書き続けなきゃいけない羽目になったんだ」
・・・・・その乙女小説、強化合宿が終わったら全巻買おう。
「そ、そんな思いで書いていたんだ・・・・・」
「まあ、購入してくれる読者もいるし俺も書いて応えないと思ってはいる。
今でも書いているぞ。見るか」
「うっ・・・・・」
・・・・・優子が目を泳いだ。見たいけどプライドが邪魔をしていて
葛藤している様子に見える・・・・・。
「はい!ボク、見てみたいな!」
「・・・・・私も」
・・・・・愛子が興味を示して挙手する。私も手を挙げて見たいと言う。
「う・・・・・ア、アタシも・・・・・見てみたいかも」
・・・・・おずおずと優子も手を挙げた。顔を赤くして瞳がちょっと潤っている。
可愛い・・・・・。そんな優子に私と愛子は真っ直ぐ優子に譲るような
仕草で手を伸ばした。
「「どうぞどうぞ」」
「なにこのコントは!?アタシ、もしかして二人に誘い出されたの!?」
・・・・・優子が目を丸くしながら叫んで動揺する。うん、誘い出した・・・・・。
「見たいってバレバレだったぞ木下優子。
だが、意外だな。木下優子がBLだったとは」
「・・・・・わ、悪い!?アタシの趣味はBLだってことが・・・・・!」
「人の趣味にとやかく言うつもりはない。
寧ろ、コソコソと自分の趣味を隠している方が周りからバカにされる。
堂々と自分の好きなことを言って、すればいいと思うぞ」
「・・・・・それができたら苦労しないわよ」
「可愛く猫を被っているもんだしなぁー」
「なっ・・・・・どうしてアタシが猫を被ってるなんて・・・・・!」
「やー、代表?死神君といると素の代表が見え隠れしているどころか
曝け出しているよ?特に弟君の折檻をしている姿も見ちゃったし」
・・・・・うん。周りに優しく社交的な優子はFクラスに転属されてからは
見えなくなった。こっちの優子の方が好ましいと私は思う・・・・・。
「・・・・・もう、皆はアタシが猫被っていることを・・・・・?」
「うん、バレているよ?」
「・・・・・」
「木下優子。床に手を置いてショックを受けるのはしょうがないと思うが、
それが今まで行ってきたことが全部返ってきた反動だと思うぞ」
・・・・・死神はそう声を掛ける。すると、優子から静かな笑い声が聞こえてくる。
「・・・・・フフフ、そう・・・・・もうバレちゃっているのね・・・・・」
「・・・・・優子?」
「・・・・・いいわ、もう猫を被るのも止める。これからは好きなように言動するわ」
・・・・・優子がおかしくなった・・・・・?
「死神・・・・・堂々と自分の好きなことをすればいいのよね?」
「ああ・・・・・そう言ったけど、大丈夫か?
お前から禍々しいオーラを感じるんだけど・・・・・」
「失礼ね。アタシは正常よ。常識人よ。
趣味は美少年同士が絡み合うものが好物の木下優子よ」
「・・・・・ダメだ、ネジが数本吹っ飛んでいる。どうにかしないと・・・・・」
・・・・・頑張って、死神。
「それとね死神。いつまでもアタシの事をフルネームで呼ぶんじゃないわよ」
「分かった、これからは木下「優子よ」・・・・・はっ?」
「アタシのこと、優子といいなさいよっ」
・・・・・優子は照れくさそうに言う。
「あっ、それならボクも愛子って可愛く呼んでね」
「じゃあ、ラブ子」
「愛子の愛を英語で言い変えないでよ!?なんていうか恥ずかしいし!」
「・・・・・ラブ子」
「だ、代表までぇっ!」
「あら、可愛い名前じゃない。ねぇ、ラブ子」
「もう、優子までからかわないでよっ!」
・・・・・愛子が顔を真っ赤にして抗議する。
その時、優子は何か思い出したかのように言う。
「あれ、アタシ達は何の話をしていたのかしら?」
「・・・・・そういえばそうだね」
「・・・・・優子が乙女小説の事を聞いてくるから話が脱線した」
・・・・・そう言うと優子は気まずいのか、目を泳がした。
「・・・・・で、どこまで話したんだっけ?」
「俺が西村達のことを話していたところだ。他に訊きたいことはあるか?
と言っても戻らないといけない時間だけどよ」
「あっ、本当だ」
・・・・・時計を見るともうとっくに日付が変わって今日になっていた。
「そろそろ寝たほうがいい、明日に響くぞ」
「・・・・・明日もこっそり、死神の部屋に行く」
「や、1Fと3Fの距離があるから無理だろう。
廊下で途中、教師と出くわすのがオチだ」
「じゃあ、死神が私達の部屋に来ればいいじゃないの」
・・・・・優子、良いアイディア。でも、死神は嫌そうな顔して一言。
「・・・・・俺を変態扱いする気か?」
「なんでそうなるのよ!?」
「や、優子。女子の部屋に男子が忍び込んだら普通そうなるって」
「・・・・・それもそうね。でも、死神と話す時間が限られているし・・・・・」
・・・・・優子が悩んでいる。私も死神ともっと話がしたい。
だけど、死神の部屋と私達の部屋との距離がある。階段も登らないといけないし、
先生と会ってしまう可能性も考えるととても難しい。
「・・・・・しょうがない。これを渡すか」
マントから敷き物を取り出した。それを広げると幾何学的な
魔方陣と似ている絵画が描かれている。
「これってなに?」
「こいつは簡易式転移魔方陣」
「「「・・・・転移魔方陣・・・・・?」」」
・・・・・私達は揃って首を傾げる。死神は魔方陣に差しながら言う。
「この魔方陣の上に乗れば、違う場所へと移動ができる魔方陣だ」
「じゃあ、これを使えば死神君の部屋に行けれるんだね!?」
「いや、これだけじゃ足りない。俺と秀吉の部屋にもこれと同じ敷き物を用意して
俺が発動しなくちゃいけない。この魔方陣は魔力が必要だからな」
「魔力って?」
「それは・・・・・って、やばっ!?秀吉、布団の中に入って寝たフリをしろ」
・・・・・急に焦りの色を浮かべた死神。
「む?どうしてじゃ?」
「・・・・・西村がこっちに向かっているからだ」
「な、なんじゃと・・・・・!」
・・・・・見回り、今から廊下に出たら見つかっちゃう。
「ど、どうしよう・・・・・?」
「死神、どうにかならない?」
「・・・・・少し我慢はできるか?」
「・・・・・できる」
・・・・・私がそう言うと、敷物を布団の下に隠した後に部屋の隅っこに移動する
死神が私達に手招く。死神の方へ移動すると、急に私達を抱き締めた。
「ちょっ―――!?」
ガチャッ。
・・・・・扉が開いた。優子は咄嗟に口を固く閉じて死神の胸に顔を埋めた。
『・・・・・む、死神がいないな。全く、どこかでほっつき歩いているな?
見つけ次第、厳重に注意せなばいかんようだ』
・・・・・死神がいないことに西村先生は死神を探しに部屋からいなくなった。
「・・・・・行った」
「うわぁ・・・・・凄くドキドキしちゃった」
「そ、そうね・・・・・」
・・・・・部屋に戻るのが難しそう。
「それじゃ、お前達の部屋に送ろうか」
「・・・・・待って、ここで寝泊りさせて」
「はい?」
「だ、代表・・・・・!?」
・・・・・優子が目を丸くした。そんな優子や愛子、死神に理由を告げる。
「・・・・・今廊下を出たら私達も捕まる。
だから、朝早く起きて私達の部屋に戻った方がいい」
「なるほど・・・・・確かにその方がいいかも」
「ア、アタシは反対よっ」
「・・・・・じゃあ、優子一人で戻る?」
「うっ・・・・・」
・・・・・優子は言葉を詰まらせる。一人で帰るほどの度胸が無いらしい・・・・・。
「こ、今回だけよ・・・・・」
「え、マジでここで寝るつもりか?」
「・・・・・うん」
「・・・・・俺が送ってやろうと言っても?」
「・・・・・うん」
・・・・・甘えるように死神の胸に顔を埋める。耳から死神の溜息が聞こえる。
「しょーもない」
・・・・・それは私達と一緒に寝てくれると言う呆れと肯定の意味が含まれた
言葉だと私は勝手に判断した。