バカと真剣とドラゴン―――完結―――   作:ダーク・シリウス

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第十二問

三日目の夜の夕食は豪華であった。中々食卓には出せないような外国の高級料理が

続々と目の前に置かれて、皆、太鼓判を打ちつつ料理を食べ始める。

こんな料理が食べれるなら喜んで依頼を果たそうとする気は起る。

 

「こんな凄い豪華な料理、Sクラスも食べたかっただろうね」

 

「あっちはあっちで豪華な料理を食っているだろうさ」

 

「・・・・・美味」

 

疲れが吹っ飛ぶと思うぐらい美味しい料理。そんな美味しい料理は一時間もしない内に

全て無くなり―――ワシとハーデスは個別風呂の時間となった。

またあの山の中にある天然の露天風呂へ向かう最中、

 

「おや、死神じゃないかい」

 

『・・・・・学園長』

 

「これから風呂だろうけど、ちょいっとアタシの話を聞いて欲しいんだがいいかい?」

 

一階で学園長と会い、ハーデスはワシにここで待つように言われ学園長と

どこかへ行ってしまった。しばらくし待っておると、

 

「あら、秀吉。こんなところで何をしているのかしら?」

 

「む・・・・・?」

 

聞き慣れた声に掛けられ、そちらに目を向けると男子と女子達が地下の大浴場へ

向かっておる光景とワシに声を掛けた姉上がいた。

 

「おお、姉上か。ハーデスを待っておったのじゃよ」

 

「死神を?」

 

「うむ、学園長に捕まっての。何やら話を聞いて欲しいようでハーデスが

ここで待つように言われておるのじゃ」

 

「ふーん、学園長と死神・・・・・どうせ試験召喚獣システムのことだろう

けど・・・・・そういえば、アンタと死神は個別風呂なのよね?

今の時間帯はA・B・Cの男子達とは別の風呂に入るのに

どうしてここにいるのかしら?」

 

・・・・・どうしたものか。天然の露天風呂で入っておると

素直に言ってもよいのじゃろうか?

 

「優子ーどうしたの?・・・・・って優子の弟君じゃん」

 

「・・・・・優子の弟?」

 

工藤と霧島にまで見つかってしまった。

 

『・・・・・待たせた』

 

そこでハーデスがようやく戻ってきた。姉上達が視線をハーデスに変え姉上の口が開いた。

 

「死神、どうして1Fにいるのかしら?あなたと秀吉は個別風呂だと

シオリに書いてあったし」

 

『・・・・・その個別風呂に行くところだ』

 

「それってどこにあるの?」

 

『・・・・・山の中』

 

アッサリとワシらの風呂場を教えたハーデス。そんな簡単に教えても

良かったのじゃろうか?

 

「山の中って・・・・・今、暗いわよ?」

 

『・・・・・問題ない。学園長からも許可をもらっているからな』

 

「へぇー、学園長が許しているんだ?何だか面白そう♪」

 

工藤がにんまりと笑みを浮かべ、ハーデスのマントを掴んだ。

 

「ねね、ボクも外にあるお風呂に連れて行ってよ」

 

「なっ、愛子何を言っているの!?そんな事ダメに決まっているじゃない!」

 

「・・・・・死神、私も行く」

 

「だ、代表まで!もー、いくらなんでもフリーダム過ぎるわよ二人共!」

 

姉上・・・・・苦労しておるのぉ・・・・・。

 

「・・・・・あなた達、何をしているの?」

 

「え?ああ、小山さん」

 

元Cクラス代表の小山までも見つかった。この者ならば工藤達を止めてくれるはずじゃ。

 

「死神と・・・・・木下君・・・・・でいいよね?」

 

「ワシは男じゃからな?」

 

「分かってるわよ。元Aクラスの木下さんと酷似した容姿だから二人揃っていると

一瞬どっちが姉妹―――じゃない姉弟なのか分からなくなるわね」

 

「姉妹ではないからの!?姉弟じゃからな!」

 

ワシと姉上と勘違いされることはもう慣れたことじゃが、

姉妹なんて言われ慣れてないのじゃ。

 

「で、どうしてそこで固まっているの?死神と木下君に至っては個別風呂のはずでしょ」

 

「うん、そうなんだけどこの二人は山の中にあるお風呂に入りに行こうとしていたんだよ。

ボクも行きたくてお願いしているところなんだ」

 

「山の中にあるお風呂・・・・・?それって露天風呂のことかしら?」

 

『・・・・・ん、そうだ』

 

ハーデス、そう易々と教えていいのであろうか?

 

「アタシはダメって反対しているのよ。代表も行く気でいるし、

小山さんも説得してくれない?」

 

「そうね・・・・・」

 

顎に手をやって小山の視線はハーデスに向けられる。

 

「分かったわ」

 

「そう、良かった―――」

 

小山の言葉に姉上は安心したように安堵した。強引でも引きとめてくれると

思ったからじゃろう。

 

「私もその露天風呂に行ってみたいわ」

 

「小山さんっっっ!?」

 

・・・・・姉上の気持ちと真逆な答えが小山の口から出て、

姉上の目が大きく目を見開いた。

 

「だって、露天風呂でしょう?山の中にあるなら合宿所のお風呂より気持ち良さそうだし、

なにより人がいない。私、大勢で賑やかに入るよりも静かにゆっくりと入りたい派なのよ」

 

「ボクは賑やかに楽しく入る派だねー」

 

「・・・・・私はどっちも」

 

話が着々と進み・・・・・結局、

 

「じゃあ、死神と一緒に露天風呂に行く人は挙手」

 

「はいっ!」

 

「・・・・・はい」

 

小山、霧島、工藤の三人が挙手する。姉上は手を挙げんかった。

 

『・・・・・俺達の意志は?』

 

「ないわ」

 

『・・・・・身体でタオルを隠して入ろうが、羞恥心はないのか』

 

「それぐらいはあるわよ。でも、混浴で入れる温泉だってあるし、

二人だけいいお風呂を独占なんてズルいじゃない」

 

足をロビーの方へ動かす小山。

 

「ほら、さっさと案内してくれる?お風呂の時間がなくなっちゃうわ」

 

「山の中って暗いけどどうやっていくんだろうね?」

 

「・・・・・徒歩だと思う」

 

工藤も霧島も小山に続きロビーへ。

 

『・・・・・しょうがない。行くぞ』

 

「ほ、本当に連れて行くのかの?」

 

『・・・・・学園長から許しを得たと言ったが、他の教師には伝えられていない。

ここでバレたりバラされたりすれば・・・・・西村先生の補習は免れない』

 

「うっ・・・・・そうじゃの。致し方ないのかの・・・・・」

 

『・・・・・旅は道連れ世は情け、あいつらも巻き込む』

 

ハーデスもロビーへ足を運んだ。残るはワシと姉上・・・・・。

 

「そ、それじゃあの姉上。ワシらは個別風呂へ行くのじゃ」

 

「・・・・・そうね、行きましょうか」

 

「あ、姉上?」

 

あんなに引き止めようとしていた姉上までもが行こうとする。頬を赤く染めた姉上が、

 

「か、勘違いしないでよね。アタシが一緒に行くのは愛子や代表が死神に羽目を

外過ぎない為の・・・・・そう、監視よ!ストッパーとして一緒に行くんだからね!?」

 

「わ、分かった。分かったから姉上・・・・・そう怒鳴らないでほしいのじゃ」

 

心の中で素直ではないと漏らすも、ここで口に出したら折檻を食らうのは必須。

口は災いの元じゃと言うしここは素直に流れた方が良いじゃろう。

姉上とロビーに進み、下履きと履き変えて外に出た。既にハーデス達は外で

ワシら待っておった。

 

「あれ、優子も結局来るんだ?」

 

「あなた達が羽目を外過ぎないための監視よ」

 

「アハハ、素直じゃないねー。それじゃ、死神君。二人が入っているお風呂に行こうっか」

 

工藤の言葉を聞きハーデスは頷く。じゃが、どうやって行くのじゃろうか?

ワシのように抱きかかえながら山の中に行くにしても、時間は掛かる。

一度にワシを含めて五人をあの天然の露天風呂に連れていくことなど不可能―――。

そう思ったらワシの足元が急に明るくなった。視線を下に落とせば、足元は何か円形で

見慣れない文字が浮かんでおった。これは・・・・・召喚獣を喚び出す際に浮かぶ

幾何学的な魔方陣・・・・・?光は強まり、ワシの視界は白一色に塗り替えられた―――。

 

 

 

 

「・・・・・」

 

視界が回復した頃に、ハーデスと共に入った個別風呂・・・・・天然の露天風呂が

最初に飛び込んだ。辺りを見渡せば流れている川、小屋、姉上達が存在していた。

 

「・・・・・あれ、ボク達・・・・・何時の間に?」

 

「合宿所が・・・・・ないわ」

 

「・・・・・摩訶不思議」

 

「ここが・・・・・二人の個別風呂」

 

初めて訪れた姉上。そしてどうやってここまで来たのか理解できないでおる。

ワシもそうじゃが、ハーデスは?

 

『・・・・・』

 

ハーデスへ顔を向けると、骸骨の仮面を取って口を開いた。

 

「ご要望通り、連れてきたぞ」

 

「死神・・・・・」

 

「ここが俺と秀吉が入っている風呂だ。満足してくれたかな?」

 

「・・・・・それが、死神の素顔なのね」

 

「秀吉達は俺の顔のことは知っている。

まあ、小山までもが来るなんて予想外だったが問題ないな」

 

「あら、あなたの顔のことで脅迫するとは思わないのかしら?」

 

不敵に申す小山。じゃが、ハーデスも不敵に笑みを浮かべた。

 

「そんな小物臭いことをする小山じゃないだろう?仮に俺を脅迫しても

何のメリットもない」

 

マントから手を出した。その手に金色の龍を模した錫杖を持っていた。

 

「脱衣所は一つしかないからな。造り直そう」

 

錫杖を地面に突き刺したその瞬間。錫杖が光り輝き辺りを照らす。

元々あった小屋が光に包まれ次第に光はまたしてもワシの視界を奪った。

 

「もう目を開けていいぞ」

 

耳にハーデスの声が入る。言われた通り目を開けると・・・・・天然の露天風呂が

あった場所にまるで旅館と思わす木造の小屋が建っていた。あの一瞬で一体ここまで

どうやって作ったというのじゃ・・・・・っ!?

 

「死神・・・・・アンタ、何をしたの?」

 

「何、ただ力を使っただけだ」

 

「力・・・・・?」

 

怪訝な面持になるのも無理はない。ハーデスは小屋の扉を開け放ってワシらを手招く。

手招かれたワシらは恐る恐る小屋の中に入る。玄関と思しき所に下駄箱があり、

下履きを脱いでそこに入れる。木造の廊下を歩くハーデスに続くと

赤(女)と青(男)の幟が吊るされた場所へと辿り着いた。

 

「んじゃ、温泉の中でまた落ち合おう」

 

「ええ・・・・・」

 

女専用の脱衣所と男専用の脱衣所に別れるワシら。

しかし、霧島がワシとハーデスと一緒に男の脱衣場に入ろうとする。

 

「おい、翔子と秀吉。お前らはこっちじゃなくて向こうだ」

 

「・・・・・ダメ?」

 

「ダメだ。秀吉と一緒に女の脱衣所に行け」

 

「待たぬかハーデス!?ワシは男じゃぞ!こっちで合っているはずじゃ!」

 

ワシを男だと認知しておる者に女の脱衣所に行けと言われてしまった!

これは一体何の冗談であろうか!?しかも、予想もしなかった所からまでも言われた。

 

「ほら、代表と秀吉。遊んでないでこっちに来なさい」

 

「あ、姉上!?姉上までも何を言っておるのじゃ!?ついに姉上までもがワシを女だと―――」

 

「あんたバカね。そんなの冗談じゃない。ねえ、死神?」

 

「ああ、冗談だ」

 

底意地の悪い笑みを浮かべる姉上とハーデス・・・・・。

からかわれたのだと知って、深く肩を落とす。

 

「・・・・・ワシは泣くぞ」

 

「泣いたら俺が慰めてやるよ」

 

・・・・・ワシを最初にからかった張本人に慰められても嬉しくないのじゃ。

ちゃんとワシも男の脱衣所に入ってハーデスと衣服を脱ぎ、

腰にタオルを巻いて天然の露天風呂に向かった。

じゃが、変わっていた。床はちゃんとした石畳が敷かれていて、

男と女の脱衣所に繋がる入口の付近に個別のシャワー室があった。

 

「女もいるからな。こういった個室も必要だろう」

 

「お主、本当にどうやって造ったのじゃ?」

 

「いずれ教えるさ」

 

はぐらかすハーデスは個別のシャワー室に入った。身体を洗ってから湯に浸かるようじゃの。

ワシもそうしようと思いハーデスの隣のシャワー室に入った途端。

 

『うわっ、凄い。ここが外なんて思えないや』

 

『造りもちゃんとしているし、シャワーも備えられているなんて』

 

『・・・・・死神達は?』

 

『あそこで髪を洗っているわよ?』

 

姉上達も入って来たようじゃの。

というか・・・・・本当に混浴をする羽目になるとは・・・・・。

 

「―――おい翔子!?なに俺のところに入って来ているんだ!出て行け!」

 

隣でハーデスが声を荒げて霧島を追いだしたようじゃ。

 

『だ、代表・・・・・大胆』

 

『・・・・・背中を流そうと思ったのに追い出された』

 

『霧島さんって恥じらいとかないのかしら?』

 

『死神限定よ。代表の突拍子な行動は。アタシ達も洗いましょう』

 

姉上達は反対側のシャワー室に入ったようじゃ。その後もワシとハーデスは、

 

「秀吉、シャワーの湯加減はどうだ?」

 

「問題ないぞい」

 

「ん、そいつは良かった」

 

他愛のない話しをしながら頭や体を洗って、姉上達よりも早く天然の温泉に入った。

 

「しかし、外の風景は見えんのじゃな」

 

「外の風景を見たいか?」

 

「そうじゃの。できるのか?」

 

「任せたまえ」

 

ハーデスが指をパチンと弾いた次の瞬間。木造が透明化になったような現象が起きた。

おお、外の風景が見えるのじゃ。

 

「言っておくけど、外を見えやすくしただけで外に出られないからな?」

 

そう言うハーデスの拳はコンコンと何かを叩いた。

その場所にワシも手で触れると堅い感触が手に感じる。もしや、木の壁かの?

 

「不思議じゃな。このようなことをどうやったらできるのじゃ?」

 

「企業秘密だ」

 

むぅ・・・・・ハーデスの正体を知ってもまだハーデスしか知らないことがあるようじゃ。

 

「それにしても・・・・・」

 

「ん?どうした」

 

「や、なに。お主の髪は長いのじゃな。それに雄二の髪より鮮やかじゃ」

 

ハーデスの真紅の髪を失礼して触れる。先ほど髪を洗ったからか、

艶々していて肌触りも良い。ポニーテールもできる。

 

「ふむ・・・・・」

 

ワシの髪とは違う肌触り。まるで女の髪のようじゃ。

 

「ハーデス、どんなシャンプーを使っておるのじゃ?」

 

「髪の芯まで潤うシャンプーだけど」

 

「それは市販で売ってるものかの?」

 

「や、蒼天のシャンプーだ」

 

蒼天のシャンプーか。明日にでも使わせてもらおうかの。

 

「やっほーおまたせー♪」

 

「・・・・・死神、おまたせ」

 

どうやら姉上達も洗い終えたようじゃ。そちらに振り向くとタオルで体を隠した

姉上達がいて、ワシらと同じ湯に入ってくる。

 

「うわー、外の温泉だから合宿所のお風呂とはまた違うねー♪あっちもそうだけど

こっちも足を伸ばせるし」

 

「外の風景が見えるけど、誰もいないわよね?」

 

「・・・・・気持ちいい」

 

「そうね、悪くはないわ」

 

評価は良好で何よりじゃ。

 

「よいしょっと・・・・・」

 

ふと、ハーデスが足を縁に乗せて寝転がるように浮かんだ。そして静かに目を閉じた。

 

「ハーデス?」

 

「ああ、たまにこうしているんだ。風呂の中で浮かんでいると心地いいから」

 

「自由な入り方をしているのね」

 

「まーなぁー。しばらく浮かんでいるとつい寝てしまう時もあるし」

 

目を瞑りながら笑むハーデス。そんなハーデスについ悪戯をしてしまうのは

しょうがないであろう?

 

「てりゃっ」

 

湯の中に押し込もうとすると、逆に捕まってワシが湯の中に押し込まれた。

 

「俺に仕掛けるなんてまだ早いぞ秀吉君」

 

「うぐ・・・・・気配でバレておったか」

 

「当たり前だ」

 

起き上がるハーデス。水も滴る男はまさしくハーデスの為にあるのかもしれない。

 

「「「「・・・・・っ」」」」

 

だからこそ、姉上が固唾に呑んでハーデスを見ておった。

 

「うーん」

 

「なんじゃ?」

 

「や、水に濡れた秀吉は良い男というより、女っぽいなって」

 

「ワシは男じゃが・・・・・」

 

「分かっているさ。でも、お前の顔は優子と一緒だから可愛いと思ってしまうんだ。

どこか格好良さが抜けているんだよな」

 

そ、そうなのか・・・・・?それは・・・・・とてもショックじゃ。

 

「・・・・・死神、私は?」

 

「翔子?」

 

「・・・・・死神から見て私は可愛い?」

 

霧島がハーデスに近づきながら問うてくる。その表情はとても真剣じゃった。

そんな霧島の頭に手を置きながらハーデスはこう言った。

 

「人によって魅力は違うもんさ。だから翔子も可愛いし、愛子や優子、小山も可愛いぞ」

 

微笑むハーデス。霧島は満足な答えを聞けたのか、嬉しそうにハーデスの隣で寄り添った。

 

「うわ、まさかボク達にまでそんな風に言ってくるなんて・・・・・」

 

「なんか、女慣れしていない・・・・・?まあ、悪くないけど・・・・・」

 

「・・・・・」

 

工藤達は様々な反応をしつつもどこか満更ではないようでおる。

それからしばらくワシらは雑談する。

今回したモンスターとの戦いのことや勉強のこと、世間話もしていると。

 

「ねえ、死神」

 

「なんだ小山」

 

「あなたって彼女いないわよね?」

 

「ああ、それは―――」

 

「・・・・・私が死神の彼女」

 

ハーデスの言葉を遮って主張する霧島。きっと雄二の方も霧島の妹が

そう言うかもしれんの。

 

「翔子、そいつは試召戦争で何でも言うことを聞く権利を使ったから

付き合っているようなもんだろう。正式な付き合いじゃない」

 

「・・・・・死神、私と付き合って?」

 

「あからさまに正式で付き合おうと告白してくるな。俺が誰とも付き合えない理由を

教えただろうが」

 

「・・・・・関係ない、私は死神が好き、ずっとこの気持ちは変えるつもりはない」

 

「お前なぁ・・・・・で、小山。俺がいなかったらどうしたって?」

 

「ただの確認よ。骸骨の仮面に黒いマントで学校に通っているから女子に

モテていないでしょうねって」

 

「あれは女避けも含まれているからな。でも、翔子にはこうして好意を向けられている」

 

ポンポンと霧島の頭を軽く叩く。霧島はハーデスの手を掴んで、自分の頬を寄せる。

意中の人の手の温もりを感じてとても幸せそうに目を細めて感じている。

 

「顔を隠す程何か理由があるのね?」

 

「あるが、そのことはノーコメントで」

 

「あら、釣れないわね。こうして肌を見せているのに」

 

「それはギリギリセーフだ。寧ろ見せているのは俺の方だと思う」

 

「ふふっ。それもそうね。じゃあ、好きな人とかいるの?」

 

小山が徐々にハーデスへ近寄る。好奇心で一杯であることが伝わってくる。

 

「特にはいないな」

 

「いないの?まさか・・・・・男が好きとか?」

 

「や、なんでそうなる?俺は普通に異性が好きだからな?」

 

「なんだ、つまらないわね。もしそうだったら話が盛り上がるのに」

 

「・・・・・なんだろう、ふざけて肯定したら学校中が噂になっていたかもしれない

というこの危機感は?」

 

「因みに、私の中で候補なのは木下君よ」

 

「ワ、ワシかの!?」

 

それは心外じゃ!ワシは男で男と付き合えるはずが・・・・・あった。

蒼天では同性同士の結婚が認められておったの。

 

「こんな格好良いのに仮面で隠すなんて勿体ないわね。絶対モテるわよ?」

 

「そう言う小山は好きな人、または付き合っている奴はいるのか?」

 

「いるわよ?元Bクラス代表の根本恭二」

 

「「えっ!?」」

 

「「・・・・・意外」」

 

「うむ、意外じゃ」

 

「え・・・・・何その反応?」

 

姉上と工藤が驚きで声を上げ、ハーデスと霧島は驚嘆、ワシも似た感じで漏らした。

対する小山はワシらの反応に戸惑っていた。

 

「いや、あの根本君って悪い噂しか聞こえないし・・・・・ねぇ?」

 

「俺は知らないけど、どこが好きになったんだ?って感じだな」

 

「彼女と付き合えないランキングで上位の根本じゃしな」

 

「・・・・・付き合っている人がいるなんて知らなかった」

 

「まあ・・・・・誰が誰と付き合おうが関係ないけど、根本君はないわぁ・・・・・」

 

ワシらの反応に小山は食って掛かった。

 

「何よ?恭二のことを知らない癖に。恭二はね、頭がいいのよ?」

 

「それって頭脳の意味で?」

 

「違うわ。策略的な意味でよ」

 

ふむ・・・・・そういう意味で好きだとは・・・・・人の好みは良く分からんのじゃ。

 

「じゃが小山よ。根本は卑怯じゃとよく聞くのじゃが?」

 

「卑怯な手段って、勝つ為には合理的で、有効だとは思わない?

私はそういうの結構好きなんだけど」

 

「・・・・・それだったら死神の方が凄い。今回の作戦は死神が考えた。

皆、死神の考えに乗って強くなっているのは確か」

 

「まあ・・・・・それは認めるわ」

 

小山はそれなりにハーデスを認めておるようじゃの。

 

「根本君と付き合った切っ掛けは?」

 

「恭二に告白されて私の好みを伝えると卑怯な手段で勝ったから付き合っても

良いかなって思って」

 

まさかと思うのじゃが・・・・・根本が卑怯な奴と聞くようになったのは

小山の原因でかの?

 

「彼氏がいる女が男と風呂に入ってよかったのかよ?」

 

「いいわよ、バレなければ。それに・・・・・死神の顔が拝めれたしね」

 

妖艶に笑む小山・・・・・。

 

「顔だけなら恭二に勝っているわね」

 

「男は顔だけじゃないぞー」

 

「分かっているわよ」

 

ハーデスが苦笑いで言うと少し口を尖らして首肯する小山。

 

「・・・・・死神は渡さない」

 

霧島がハーデスの腕に抱きついて自分のものだと自己主張。

 

「なあ、当たっているんだけど?」

 

「・・・・・当てている」

 

「うん、王道的な返しが来たなやっぱり」

 

そうやり取りしておるハーデスと霧島じゃが、

ハーデスが動揺していないのは冷静さを保っている証拠。

演技に長けておるのやもしれぬ・・・・・。

 

「女の子に風呂の中で抱きつかれているのによく冷静でいられるわね」

 

「まあ・・・・・蒼天でこういうことはよくあったし」

 

「・・・・・蒼天?」

 

そう言えば小山は知らんかったな。

 

「ハーデスは蒼天から来た編入生なんじゃ」

 

「・・・・・だから、蒼天の緑茶が茶道部に合ったわけね」

 

「味、どうだった?」

 

「ええ、美味しいわよ。ご馳走様でした。で、蒼天でよくあったってのは?」

 

「俺の周りに幼馴染の女がいて、俺が男湯に入っても幼馴染が入って抱きついてくるんだ」

 

幼馴染というのは嘘じゃろう。じゃが、親しい少女がいるのは確かじゃ。

 

「へぇ、蒼天じゃモテていたのね?」

 

「弟のように可愛がられているって・・・・・感じだがな」

 

あからさまな深い溜息を吐くハーデス。

 

「だから、異性に抱きつかれても平気なんだよ。新鮮さも感じないし」

 

「なんだかつまらないわね。もっと動揺しても良いのに」

 

「それだったら彼氏にもやってやれ。根本が喜ぶぞ」

 

「そう易々と身体を許すような女じゃないわよ」

 

「そっか、それは失礼した」

 

そう言ってハーデスが立ち上がった。

 

「ハーデス?」

 

「近くの川で水浴びをしてくる」

 

「水浴び?なんでまた」

 

「俺がそうしたいんだ。でも、俺が戻ってくるまで外に出ないでくれよ?」

 

外の風景が突然見えなくなり、木造の壁に戻った。ハーデスは浴場からいなくなり、

ワシらもその後を追うように浴場から出て居間で居座る。

 

「遅いのぉー」

 

「そうね、そろそろ戻らないといけないわ」

 

「でも、戻ってくるまで外に出ないでって言われているよ?」

 

「・・・・・だけど、合宿所に戻る方法は死神しか知らない」

 

「呼びに行きましょう」

 

小山の行動力はワシらを引き連れさせる。申し訳ないと思いつつハーデスを呼ぶ為、

自分達の所持品を持って全員で外に出た。

 

「ハーデスッ!」

 

「どこにおるのじゃー!」

 

川で水浴びをすると言っておったから川に来たワシらじゃが、

ハーデスの姿が見えない。どれだけ叫んで呼んでもハーデスは一向に現れない。

 

「まさか・・・・・置いて行かれた?」

 

「・・・・・死神はそんなことしない」

 

「だけど、見当たらないわ」

 

「どこで水浴びをしているんだろうねぇー?」

 

辺りは森と川・・・・・そんな場所にワシらはいる。帰り方も分からないワシらは

しばし途方に暮れていた。

じゃが、そんなワシらの目の前に流れている川から金色の光が出てきた。

その出来事にワシらは目を丸くしていると、何かが現れた。

いや・・・・・あれは・・・・・。

 

「ハーデス・・・・・?」

 

金色の光の正体は・・・・・金色の十二枚の翼から発光する翼。

小山以外、ワシらが知っているドラゴンの翼とはまた別の翼・・・・・。

 

「まったく・・・・・俺が戻ってくるまで外に出てくるなと言ったのにな・・・・・」

 

「お、お主・・・・・ハーデスなのか?」

 

「ああ、そうだ」

 

あっさりと肯定したハーデス。腰にタオルを巻いた状態で全身は水で濡れている。川の中にいたということじゃろうか。

 

「なに・・・・・その翼。まるで・・・・・天使じゃないの」

 

「翼の手入れをしていたからな。で、どうしたんだ?時間か?」

 

「え、ええ・・・・・そろそろ戻らないと」

 

その質問に姉上が答えると水を掻き分けながらこっちに来るハーデス。

 

「分かった。俺も着替えてくる」

 

それだけ言い残してあやつは木造の建物の中へと姿を消した。

 

「死神・・・・・一体何者?本当に、人間なの?」

 

「一応人間だぞ」

 

小山が漏らした言葉に、さっき着替えに行くと言ったはずのハーデスがワシらの背後に

佇んでおった。ここに来た時と同じ服を身に包んで。

 

「い、何時の間に・・・・・!?」

 

「さっさと身体を拭いて着替えたからな。それじゃ、合宿所に戻ろうか」

 

「ま、待ちなさい!まだ聞きたいことが―――!」

 

「それは明日にしてくれ。西村先生の補習で夜が明けるのはイヤだからな」

 

またしても、ここに来ると同じ幾何学的な魔方陣がワシらの足元に出現した。

光に包まれ視界が白く塗り替えられる。そして光が消失して視界が元に戻った頃に、

何時の間にかワシらは合宿所の玄関の中にいた。

 

「それじゃ、四人共。おやすみ」

 

ハーデスはそう言ってワシらを残してさっさと行ってしまった。

 

「・・・・・木下さん、あの死神のこと詳しく教えてくれないかしら?」

 

「・・・・・知ってしまった以上、隠し通せないでしょうね。

でも、誰にも言わないという約束を守ってくれるなら構わないわ」

 

「ええ・・・・・約束するわ」

 

また、ハーデスを知る者が増えたの。まあ、ハーデスが寂しい思いをしなくなると

思えば良い結果かもしれん。ワシもハーデスと一緒の客室に戻ろう。

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