「死神君、あーん♪」
「・・・・・死神、あーん」
「二人共・・・・・自分のも食べなさいって言っているでしょうに」
「姉上、もう諦めが肝心だと思うのじゃ」
強化合宿四日目の朝、朝食。僕達の横で繰り広げられている羨ましい光景を見て
嫉妬心が湧きあがるのはきっと僕だけじゃないと思う。
「今日の夜も頑張るぞー!」
「あっという間に四日目だね」
「そして、俺達が召喚獣を合同で操作することも最後だ。帰ったらSクラスに向けて
作戦を考えないとな」
「学力の方は置いといて、操作は四日前と比べて俺達は慣れてきたしな。
坂本の言う通り、学校に戻って作戦を考えないと」
「つってもよ。相手は400点オーバーが当たり前のようにいるんだろう?
召喚獣の腕輪を使ってくるSクラスの奴らにどう立ち向かうんだ?」
「それをこれから他の各代表と考えるんだ。
今の俺達はSクラス打倒という旗を掲げて一致団結している」
僕らが覗きだという濡れ衣は未だに着されたままだけどね・・・・・。
「ねえ、お尻に火傷がある女子を探さなくてもいいの?」
「そうだな・・・・・探したいところだが、今回は無理だ。
蒼天からの依頼で俺達はモンスターと戦わなきゃならんし」
「・・・・・鉄人に荷物検査をされてカメラやパソコンが没収された」
そうだ、ムッツリーニの言う通り。僕らは二日目の夜、鉄人の魔の手によって
荷物検査をされて不要な物と判断された物は全て没収された。それは僕達だけ限らず、
合宿所にいる男子と女子全員にも行われたようだ。
「ムッツリーニの言う通りだ。女子の方も荷物検査をされて、脅迫犯の奴も覗きに
使っていた機器を没収されたはずだ。まあ、一先ずは安心だろう」
「でも、脅迫犯は一体誰なんだろう?」
「さぁーな。俺達は取り敢えず目の前のことを集中しよう。
今日で合宿は最後だからな」
「勝てるといいね」
「勝てるんじゃない。勝たないといけないんだ。これ以上奴らを好き勝手にやらせて
みろよ。姫路がSクラスに滅茶苦茶にされかねないぞ?」
「絶対に頑張るよ僕はっ!」
許さないぞSクラス!絶対に姫路さんを守ってやる!
「・・・・・今日も保健体育を学びたい」
ムッツリーニが真剣な眼差しでそういう。僕はちょっと不安感を抱く。
「ねえ、雄二と大和。ムッツリーニは本当に保健体育しか学ばないでいるつもりだよ」
「他の科目にも目を向けて欲しいところだが、唯一無二の武器だからな・・・・・」
「長所はとことん伸ばした方がいい。それが強みになる」
雄二と大和はそう言う。そう言う事なら僕も日本史をとことん伸ばそう。
「でも、雄二」
「なんだ」
「Sクラスってあの新校舎の方だよね?渡り廊下を占拠すれば僕達の移動できる範囲が
確保できるんじゃない?」
悪友に指摘したら、顎に手をやって渋い顔をし出した。
「いやそれ以前にSクラスは新校舎の殆どを占拠している。それに新校舎と言えば、
まだDクラスが残っている。新校舎を制圧を目的とすれば残すのはDクラスのみだ」
「今思えば、Sクラスの思惑はそっちの方にもあったかもな」
「思惑って?」
大和の意味深な言葉に首を傾げる。
「新校舎にあるA・B・C・Dクラスを全てSクラスの設備と教室にすれば新校舎は
Sクラスの領域みたいな感じになる。だからA・B・Cのクラスに待機して、
待ち伏せ・奇襲なんてことも考えられるんだ」
「・・・・・拙いな。だとすると、合宿が終わったらSクラスの奴はDクラスに
宣戦布告をするかもしれないわけか」
「多少、召喚獣の操作慣れをしてもSクラスは強い。今日中に対策を考えないと
残るD・E、そしてFクラスの俺達にも破竹の勢いで攻めてくるぞ」
「うし、そういうことなら休憩時間にでも各代表と会議をしよう」
僕らの方針みたいなのが決定した。
―――☆☆☆―――
自習授業を挟んだ休憩。その休憩を利用して、A~Eの代表と雄二は食堂で集まって
Sクラスを対抗するための対策と評した会議が行われた。
「Dクラスに攻め込む可能性は大きい。だから、Sクラスの領域となりかけている
新校舎から撤退して広い場所で戦った方がいい。四方八方から攻められたら終わりだぞ」
「だけど、Sクラスが本当に宣戦布告をしてくるのか?俺達の教室の設備は
Sクラスのようなエリート達が欲しがっているようなもんじゃないぞ」
「平賀、九鬼英雄の性格は幼少の頃から付き合っている俺達風間ファミリーが
よく知っている。だから新校舎のクラスをすべて制覇するはずだ。
もしもその気が無くても警戒はすべきだぞ。周りはSクラス。その中で取り残された
Dクラスだとな」
「・・・・・そうか、それで俺達はどう言った行動をすべきなんだ?」
平賀君は真摯に雄二と大和に訊く。勝つ為だろうけど、心の中では一矢を報いる為
なのかもしれない。
「坂本の言う通りに新校舎から離れて広い場所で戦うべきだ。数はBクラスもいる
Dクラスが有利だが、戦う場所が狭すぎる。数を活かすためには校庭で戦うべきだ」
「おいおい直江。Sクラスに囲まれている状況下で一体どうやって校庭に行くんだ?
お前がDクラスの立場を説明したばかりだろうが」
Dクラスに所属している根本君が大和に嘲笑うかのように言う。
でも、大和はそれを人蹴りする。
「試召戦争のルールを覚えていないようだな元Bクラスの代表。
代表が明確な居場所さえ分かればどこでもそこから試召戦争を始めても良いんだぜ?
つまり、Dクラス代表である平賀が例え、Dクラスの生徒達と一緒に校庭から初めても
ルール上問題ない。鞄を置いて速やかに全員、校庭に行けばいいだけだ」
「なるほど・・・・・」
「まあ、それは相手にもバレていると思っての行動だ。
Sクラスには頭のキレがいいやつがいるし、俺の作戦も見破られているはずだ」
「ふん、それじゃあ作戦の立てようもないじゃないか。結局は召喚獣同士のバトルで
しか勝つ方法がないだろう」
鼻を鳴らす根本君。直江は気にせずに言い続ける。
「まあ、そうなるな。だが、仕掛けられる前にこっちから仕掛けてようと思っている」
「どういうことだ?」
「Dクラスは試召戦争じゃなくて、模擬試召戦争をしてもらいたい」
「模擬試召戦争・・・・・?どうして模擬の方なんだ?」
「そっちなら本来の試召戦争じゃないからクラスの設備が奪われないで済む。
その上、Sクラスは模擬だから回復試験も時間も義務もない」
試召戦争上のルールの一つだろう。僕にはちょっと理解できない。
「質では負けているが、量はこちらが有利だ。D(B)が模擬試召戦争を終えれば
次は立て続けにE(C)クラスにも模擬試召戦を申し込んでもらい、
最後は俺達F(A)がSクラスを叩く」
「点数を回復試験で補充できない上に時間もない。補充がままらないSクラスを
あなた達Fクラスはかなり有利な状況で挑めるってことね?
なんだか、自分達だけで楽をしようとしているわね」
「それはしょうがないだろうEクラス代表。Sクラスと渡り合える生徒は
Fクラスにおいて片手で数えるぐらいしかいない。それにお前達がSクラスの奴らの
点数を削ってもらわないと勝機が無いんだ。
つまり、お前達が勝利の鍵を握っているんだってことだ」
「上手く言い包めようたって私達Eクラスや平賀君のDクラス、
それにA・B・Cクラスに何のメリットもないわよ」
「いや、メリットならあるぜ」
不敵に言う大和。メリットがある・・・・・?
「学園長に頼んで仮に俺達がSクラスに勝てばA・B・Cクラスの皆にもう一度
振り分け試験をやってもらう。そうすれば否が応でも自分達のクラスか、
さらに上のクラスに所属できる可能性がある。さらに、協力してくれるD・Eクラスは
Sクラスの教室で期限付きだがその教室で学校生活をしてもらうってことを
約束しよう。どうだ、悪い話じゃないだろう」
「・・・・・そうね、それが本当に可能だったら悪くはないわ」
「ああ、あのSクラスの設備と教室で過ごせれるなら申し分ないな」
中林さんと平賀君は納得した。根本君や小山さんも大和の提案に文句はなさそうだ。
奪われたクラス、または上位のクラスに行けれるなら文句のつけようもないだろう。
「ちょっと待って、Fクラスはどうなるの?」
「さぁーな。俺達はSクラスを倒した前代未聞のFクラスと学校に伝えられるん
じゃないか?」
「栄光と名誉だけが望み?」
木下さんの質問に大和と雄二は顔を見合わせて肩を竦める。
結局は具体的な答えは言わず話をはぐらかした二人だった。
「何度も言うが、これはお前達の協力なしではできない戦争だ。
ハーデスの考えに乗ったお前達はSクラスを倒すまで同志だ。Sクラスを倒した
次の日、俺達は敵同士になるだろうが今は仲良くしようぜ。仲間同士の間で
小競り合いなんて起こしたら勝てるもんが勝てなくなる」
雄二の言葉に皆が揃って頷いた。
「ええ、分かっているわよ」
「ここは素直に乗ってやるぜ」
「俺達のクラスに宣戦布告してくるなら一矢を報いでも次の勝利へと導いてやる」
「・・・・・奪われたクラスと設備を奪い返す」
「あのSクラスに一泡吹かしてやるわ」
「Sクラスは強者だが、弱者は弱者なりの強みがある。
だからこそ、あの傲慢で権力を笠にするエリート共に思い知らせてやろうじゃないか」
六クラスの気持ちが一つになった。これならSクラスにだって勝てるはずだ。
―――☆☆☆―――
時間は過ぎていき、あっという間に四日目の夜が訪れた。僕達は合宿所から出て
バスの中で待機。
今夜で強化合宿は最終日。だから、時間が許す限り召喚獣操作を慣れて少しでも
ハーデスに近づきたい
「もしも同じメンバーだったら、次はどの階に行く?」
「俺達の点数じゃあ精々2Fが限界だ。元Aクラスの奴らとだったら
3Fのモンスターといけるだろうがな」
「誰か3Fに言った人っているのかな?」
「ハーデス達辺りじゃないか?あのメンバーだったら3Fのモンスターと渡り合える」
「・・・・・地下は?」
「止めた方がいい。地下に言った奴の話によれば地下に足を踏み込んだ瞬間。
500点代のモンスターだったそうだ」
ご、500・・・・・元Aクラスでもそのモンスターに挑める人は極僅かかも・・・・・。
「Fクラスの俺達じゃ、精々一体が限界だ。効率よく操作を慣れるとしたら
1F、2Fの階で行くしかない」
「だな。わざわざ強い所に行くなんて無謀だ。そんなところに行けるとすれば
ハーデスぐらいだ」
「・・・・・ねえ、もしも僕達の中でハーデスと一緒に組んだら、
地下に行こうと言いだすんじゃない?」
「ははは、まさか。そんなこと有り得ないだろう」
大和が笑って僕の予想を無いと否定する。
『Fクラス男子、Aクラス女子、Fクラス男子、Fクラス男子、Fクラス男子』
あ、僕達のクラスだね。さて、一体誰が誰と組むんだろうか。
『―――死神・ハーデス』
「「「頼む、あいつと一緒にだけはなりたくない・・・・・っ!」」」
『―――霧島翔花』
「「「・・・・・」」」
『―――坂本雄二』
「のぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」
雄二が地獄に落とされた。そんな雄二に僕は優越感を―――。
『―――吉井明久』
「いっやあああああああああああああああああっ!?」
「二人共、骨は拾っておいてやる」
くっ・・・・・ニヒルに笑って優越感を浸っている友達が憎いっ!視線だけで相手を
呪うことはできないだろうか・・・・・。そう思っていると最後の一人が名乗られた。
『―――直江大和』
その人物は僕と雄二の前にいた。だからこそ、雄二と同時で肩に手を乗せて
親指を立てた。
「「WELCOME・・・・・・」」
「なんでだぁぁぁぁぁああああああああああああっ!?」
やっぱり僕らはどこまでも一緒だよね?
「雄二・・・・・一緒」
「うぐっ・・・・・翔花・・・・・っ」
何時の間にか霧島さんの妹がいた。好きな人と一緒に組めれて嬉しそうだ。
『・・・・・』
そしてバスの奥からにハーデスが現れた。
「な、なあ・・・・・ハーデス?お前、どこに行くつもりでいる?」
大和は恐る恐るとハーデスに訊いたら、ハーデスはスケッチブックでこう書いた。
『・・・・・まだ行っていない地下』
「「「そこだけは止めよう、ハーデス!」」」
大和が言う500点台のモンスターがいる場所に行っても補習送りになるだけだ!
霧島さんの妹が一緒だからって、Fクラスの僕と雄二と大和が行っても
一撃でやられちゃうよ!
『・・・・・ダメだ、決めた。霧島翔花、坂本雄二を連れてきてくれ』
「分かった・・・・・」
「ちょっ、待てハーデス!俺達を鬼の補習室に連れていく気か!?いくらなんでも
地下は危険過ぎる!直江が500点台のモンスターがいるって言ったんだ!」
『・・・・・強くなる甲斐があるじゃないか。直江大和、良いことを教えてくれた』
ダメだ、ハーデスは僕達を強くさせようとスパルタな訓練と称した地獄へ連れて
いく気だ!
「直江ぇぇぇええええええええええええっ!」
「大和ぉぉぉおおおおおおおおおおおおっ!」
「いや、最後に余計なことを言った坂本がどうも悪い!」
僕らは霧島さんの妹とハーデスに引き摺られながら言い合いをする。
ハーデスに何度も懇願しても方針を変えないと頑になって男子の大浴場に繋がる
地下の階段へと僕達を引き摺る。
『・・・・・さて、特訓の開始だ』
「嫌だ!鉄人の補習をこんなあっさりしなくちゃならないなんて!」
「なあ、ハーデス?なにも俺達より強いモンスターと戦わなくても、
弱いモンスターとならいくらでも操作が向上できるとは思わないか?」
『・・・・・つまらない。相手に対するプレッシャーをなれるにはこれがいいんだ。
それにそれ以上喚くと・・・・・』
黒いマントから扇子のように広げる数枚の写真。
『・・・・・お前らのチャイナ姿の写真をネットに流すぞ』
「「「この野郎っ!
『・・・・・既に一部を流出した。ツィート数が五万。三人共、人気。
主に悪が4、善が6の意味で』
「「「こ、この野郎ぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」」」
僕らはどうしてもやらなければならないことができた。
それは目の前の骸骨を殴ることだァッ!
『・・・・・エルボー』
ドッ!(僕と雄二、大和の鎖骨にハーデスの腕が炸裂した音)
「「「ぐほっ!?」」」
ハーデスに吹っ飛ばされ長い廊下に転がる僕ら。そしてようやく止まったところで
影が生まれた。
UNKNOWN 535点
理科 UNKNOWN 512点
UNKNOWN 549点
敵モンスターの顔が僕らを見下ろしている。モンスターの姿はどれも狼のような
フォルムだった。
「・・・・・これ、応戦しないと俺ら鉄人に捕まるよな?」
「噂通りの点数・・・・・僕達、勝てるの?」
「やらなきゃ鉄人の補習だ。だが、問題ない。俺達にはハーデスと翔花がいる。
あの二人に擦り付けよう」
流石雄二。そういう考えを直ぐに浮かべるね。それじゃ、あの二人を―――。
「って、あっちもモンスターと戦っているよ?」
「「なにぃっ!?」」
しかも、僕らとの距離はかなりある。僕達の目の前には大浴場でこのモンスターを
倒せば大浴場に入れる。
「お前ら、理科の点数はどのぐらいだ?」
雄二に問われて僕と大和は答えた。
「俺は300点台だ」
「僕・・・・・ヤマが当たったから69点ぐらいだったよ」
「ちっ、そのぐらいか。俺もせいぜい171点だったな。これ、かなり厳しいぜ」
どっちにしろ、500点台のモンスターに勝てるほどの点数ではない僕らだった。
「こうなったら、ハーデスと翔花が来るまで回避に専念しよう」
「それしかないか」
「そうなるよねぇ・・・・・」
崖っぷちに立たされた気分のまま僕らは召喚獣を喚んだ。
すると、モンスターが凄い速さで迫って来て牙や爪で攻撃を仕掛けてきた。
「武器で防ごうとはするなよ!防いだら点数が減っちまうからな!」
「「分かってるよ!」」
一対一の戦いになった。点数が高いモンスターは大和へ、
低い方は僕にと戦闘が始まり、あの二人が来るまでの辛抱、持ち堪えなきゃいけない。
「くっ、すばしっこい上に攻撃のパターンが予測つかねぇ・・・・・っ!」
「回転しながら迫ってくるよ!」
「上と横からの爪の攻撃っ!」
悪戦苦闘を強いられる僕ら。スキあらば攻撃と思っているけど、
このモンスター達は隙がないっ!
「ハーデスと翔花は・・・・・まだかっ」
「まだ距離はあるよ!」
「ちぃっ!敵のモンスターは強いな!」
モンスターと戦い始めてもう数分ぐらい経っただろうか。
どっちもダメージを与えられずにいて、召喚獣もヘロヘロになっていく。
「こっのぉ!」
噛みつく為に顔を突き出したモンスターの横に瞬時でかわして―――首に木刀を連打して
攻撃した。
「あれ?」
ようやく攻撃を当てたことに僕は呆けた。でも、モンスターはそんな僕を許さず
また攻撃を仕掛けてくる。横からの薙ぎ払いをしようとするモンスターの横へ
攻撃を仕掛けてくる前に移動して横っ腹に木刀を深く突き刺した。
・・・・・また、攻撃が当てられた。あんなに速くて隙を突けなかったモンスターに。
「なんだ、明久の奴が攻撃を始めたぞ?」
「おいおい、マジかよ」
大和と雄二が驚嘆している。僕も驚いているけど・・・・・今の僕って・・・・・、
「(モンスターの動きや攻撃パータンが分かっちゃう?)」
それって、何度もモンスターの攻撃パターンをかわしたりして見ていたから?
そんな、ゲームみたいな・・・・・。ゲーム?
「ねえ、二人共。格闘ゲームとかしているよね?」
「急になんだよ?」
「これ、格闘ゲームだと思って戦ってみたらどうかな?」
「格闘ゲームって・・・・・」
「明久、試召戦争とゲームの区別がつかなくなったのか?」
この際、雄二の悪口は放っておこう。
「だって、格闘ゲームは相手の動きと攻撃を読んで隙あらば
攻撃をするもんでしょう?」
モンスターの噛みつきに跳躍でかわしながら木刀をモンスターの額に突き刺した威力は
小さいけどそれでもダメージは与えられる。
「試召戦争だって前進させたり、防いだり、攻撃したり、かわしたりするし、
格闘ゲームと変わりないじゃない?」
飛び掛かってくるモンスターに対し、床に滑るように移動してモンスターの懐、
腹部の真下に潜り込んで怒濤の連続突きを食らわせる。
そこが弱点なのかダメージが2、3倍の威力が与えられた。
「「・・・・・」」
ポカンと開いた口が塞がらないでいる雄二と大和。
「きっとハーデスが僕達にさせたい、教えたいことはこう言うことなんだと思うよ」
モンスターが怒ったように咆哮を上げた。僕は武器を構えていれば、
モンスターが分身をし始めた。
まさか・・・・・一定の数値を越えているモンスターは腕輪の力みたいな能力が
あるというのか!?だけど・・・・・!
「点数が大きいお前が本体だっ!」
分身は大体10点。一体だけが100点のモンスターがいる為、
本体はどのモンスターなのかハッキリと分かりやすかった。だからこそ、
分身のモンスターをかわしつつ前進をして―――、
「うぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
口を開いて噛みつこうとするモンスターの眉間に向かって木刀を投げ放った。
吸い込まれるように木刀がモンスターの眉間からそれてしまい、目玉に直撃した。
それでもモンスターは、迫ってくる・・・・・っ!
「こいつで」
武器が無い、有るのは己自身の身体のみ。手を固く握りしめ、
「最後だぁぁぁあああああああああああああああああああっ!」
モンスターの鼻に思いっきり突き刺したっ!
理科 UNKNOWN 0点
最後の一撃によってモンスターは僕の前から姿を消した。
た、倒した・・・・・僕一人で、
モンスターを倒したんだ。
「やったぁああああああああああ!」
「戦死者を出したチームは補習っ!」
「へ?」
いきなり鉄人!?どうして!
「て、鉄人!どうして僕らが戦死者なんですか!?」
「吉井、お前が生き残っても他の奴らが死んでは意味がないだろう」
他の奴ら・・・・・?霧島さんの妹とハーデスは問題ない、
僕もさっきモンスターを倒したばっかりだから・・・・・残るのは?
「「・・・・・」」
雄二と大和だけ。でも、二人はまだ・・・・・・。
Fクラス 坂本雄二 0点
理科
Fクラス 直江大和 0点
「ええええええええええええええ!?」
「・・・・・すまん、明久。お前の戦いを見ていた間にやられていた」
「・・・・・狼って弱った獲物に容赦なかったんだったよな・・・・・」
そんなッ!?せっかく倒したのに僕の苦労が水の泡じゃん!
「なにやってるのさ二人共!」
「いやー、なぁ?」
「ああ、まぁ」
「「どっちみち俺達は負けていたし、いいじゃん?」」
「少しは悪びれよこのバカッ!」
って、あっ。鉄人に担がれた!?
「さぁーて、楽しい補習の時間だ。趣味は勉強、尊敬する人は二宮
「「「それは洗脳だ!」」」
・・・・・あれ?
「鉄人、霧島さんとハーデスは?いないんですけど」
「あの二人なら自首したぞ。そういえば坂本と直江にと伝言を頼まれていたな」
伝言・・・・・?なんだろう?
「『・・・・・油断大敵。罰としてお前らの写真をネットにアップする』だそうだ」
「「な、なっにぃぃぃいいいいい!?」」
ああ・・・・・。二人の写真が全世界に広がった。
「鉄人降ろせ!俺達を解放しろ!」
「ハーデスを止めないと、このままじゃ俺達は女装趣味の変態になってしまう!」
「ええい、暴れるなバカ共がっ!言い訳して逃げようなどと見苦しいぞ!」
「「俺達が社会的に殺されてしまうんだよッ!」」
「何を訳のわからんことを言うのだ貴様らは。
それ以上喚けば鬼の補習を三倍にしてやるぞ!」
結局、二人の言い分を聞いてもらえず補習室へ連行された僕ら。
補習室に放り込まれると霧島さんとハーデスがいて、
「「ハーデスくたばれぇ!」」
ネットに流される前に叩き潰そうと行動をした雄二と大和が逆に殴られた。
こうして、強化合宿は色々と起きたけど為になるような経験を得た。
―――☆☆☆―――
カポーン・・・・・・。
「地下のモンスターはそれほどまでに強かったのか」
「吉井明久はなんとか一人で倒した。あいつは鍛え上げれば成長する」
「アタシ達が来るまで待ってて欲しかったわね」
「・・・・・一緒に戦いたかったのに」
「とは言っても、ボクらも見事バラバラで一緒に戦うことはできなかったけどねー」
山奥にある露天風呂にアタシ達は死神の何らかの移動方法で移動し、入浴中。
混浴なんて生まれて初めてだし、弟の秀吉もいるけど家族だから別段と恥ずかしく
はない。けど、死神は別。恥ずかしいはずなのに、抵抗が無い・・・・・。
「のうハーデス。聞きたいことがあるんじゃが、どうやって合宿所から
この山奥まであっという間に移動できたんじゃ?」
「あれだ、転移魔方陣だ」
「姉上達に渡したあの敷物の魔方陣?」
「そうだ。試しに見せてやろうか」
死神は徐に手の平を広げたら、湯が死神の手の平に集まりだしてあっという間に
凍った。その凍った塊は、目の前で現れた二つの幾何学的な魔方陣に乗せると、
音も無く消失して片方の幾何学的な魔方陣のところに現れ、
また消えると最初に氷塊を乗せた幾何学的な魔方陣のところにまた現れた。
「こんな感じで無機物や有機物を移動させることができる。
俺達自身も移動ができるわけだ。まあ、もっと砕いて説明すると、
子供の遊び道具で糸電話ってあるだろう?紙コップ同士に繋げた糸が物を
移動させる道、空間だとして、紙コップそのものが物を移動させるに必要不可欠な
媒体、陣だな」
「それも魔力ってのが必要なの?」
「風力や火力、電力でできるんなら最初からライターや乾電池、
扇風機で風を起こすような機械でお前達を移動させるぞ。
それができないから魔力って他の力と異なるエネルギーで移動しているんだ」
「それってどこまでできるの?限界とかある?」
「限界は無いが、一気に地球の裏側まで行けることはできないな。
何度も転移魔方陣でジャンプしないといけない」
「ジャンプ?」
「跳ぶような感覚の意味で言っている」
死神から聞く話はファンタジー的で理解ができそうでできない。死神と一緒に入って
いるアタシと代表、愛子と秀吉、それからさっきから黙っている小山さんも
興味深そうに耳を傾けている。
「死神君、その魔力ってボク達にもある?」
「あるわけ無いし」
「即答・・・・・」
「そんな奴がいたら、俺が使い方を指導してやるさ」
「死神だけなの?その、魔力というエネルギーみたいなものを持っているのは」
小山さんが初めて訊いた。死神は首を横に振って「他にもいる」と首肯する。
「俺以外いるとすれば蒼天の上空に浮かんでいる複数の大地に棲んでいる
ドラゴン達だ。でも、魔力なんて使う機会が無いし、簡単に見せるような力でもない。
ファンタジーはこれからも存在はしないさ」
「えー、ファンタジー的な展開は興味あるのにぃー」
「興味あるんかい」
「うん、すっごく」
愛子が満面の笑みを浮かべて頷いた。ほんと、楽しいことが起きると
首を突っ込むんだから・・・・・。
死神に視線を向けると、真っ直ぐ愛子に向かって言った。
「愛子がそこまで言うなら体験させても良いぞ。ファンタジーを」
「えっ、本当?」
「ああ、誰もが一度でも思ったことを体験させてやる」
どんな体験をさせるのか、ちょっと気になる。アタシ達は露天風呂から出て着替え
終えると、木造の建物の外で死神と愛子を見つめる。
「そんじゃするぞ」
「うんうん!」
死神は愛子に向かって手を突きだす。その手の平に魔方陣が発現して、
愛子の足元にも魔方陣が出現する。魔方陣の光に包まれる愛子に大して変化はない。
十秒ぐらいで愛子の足元の魔方陣は消失した。
「愛子に浮遊魔法を施した。自分の体が地面から浮くイメージをしてみろ」
「浮くイメージだね、分かった」
瞑目する愛子。すると・・・・・愛子の足が地面からゆっくりと浮き始めた。
「・・・・・愛子、浮いている」
「おおっ、これはまた・・・・・凄いのじゃ」
「これが・・・・・魔法・・・・・」
一人で宙に浮く愛子にアタシは目を丸くしながら見守る。
愛子が目を開けて周囲を見下ろし、自分が浮いているんだと悟ると。
「凄い凄い!ボク、浮いているよぉーっ!って、きゃー!?」
「あっ、愛子っ!?」
はしゃいだと思ったらいきなり落ちた!でも、落ちる愛子の真下に死神がいて、
なんなく愛子を受け止めた。お姫様抱っこで。
「浮くイメージを中断しちゃダメだ。イメージをしないと高い所から落ちて
死ぬことだってあるんだ。それを理解して跳ぶようになってくれ」
「う、うん・・・・・分かったよ」
「それじゃ、もう一度だ。慣れれば自由に空を移動できる」
地面に下ろされて愛子はまたイメージをする為に集中する。
見守っていると愛子は地面から浮き上がった。
「よし、次は自分が動くイメージをするんだ。ゆっくりな?」
死神の指導で愛子は瞑目しながら頷き、イメージ通りに空中で上下左右に動く。
「上出来だ。目を開けて動いてみろ」
「分かった」
愛子の瞼は開いた。真剣な眼差しで空中を動き回り続ける。次第に口が緩んで、
笑みが浮かびだす。
「死神君!ボクちゃんと空を飛んでいるよ!」
「イメージだけは止めるなよー?」
「うん、分かってるよー!」
・・・・・愛子が笑いながら空を飛んでいる。なんというか・・・・・怖い。
「・・・・・死神、私にも」
「ハーデス、ワシにも頼まれてくれんかの?」
「面白そうだから私も」
「はいはい、分かったよ」
代表達まで興味津々で死神に魔法を掛けて貰っている。
「優子、お前は?」
「・・・・・遠慮するわ」
「そうか。なら、優子は俺と一緒に飛んでもらうとするか」
・・・・・一緒に飛ぶ?どういうことだろうか?
~~~数分後~~~
「あはははっ!きっもちぃぃぃっ!」
「おお、飛んでおる。ワシは飛んでおるぞ!」
「飛ぶってこんな気分なのね・・・・・!」
「・・・・・何とも言えない心地」
合宿所に戻る最中、アタシ達は空を飛んで移動中。背中に翼が無いのに拘わらず、
代表達は空中に浮いて死神に続いて空を飛んでいる。空を飛ぶことを遠慮した
アタシは・・・・・死神の首に腕を回して背中にしがみ付く感じで飛んでいる
死神と合宿所に戻っている。
「俺からあんまり離れるなよ。お前達に掛けた魔法は無限じゃないんだからな」
「分かったぁっー!」
元気よく返事をする愛子。とても楽しそうに笑っていて、
アタシ達の周りに動きまわる。
「どうだ優子。擬似的に空を飛んでいる感覚は」
「ええ、風が強いけど悪くはないわ」
「魔法はこういったこともできるんだ。面白いだろう?」
「そうね、魔法を初めて目の当たりにしたけれど凄いことは分かったわ」
風で髪が激しく揺れる。でも、死神の背中から感じる体温にアタシの心臓は激しく
高鳴っている。こんな形で異性に抱き付くなんて・・・・・。
そもそもアタシは男に抱き付いた経験なんて死神が初めてで、こいつしかないわ。
「・・・・・」
顔がなんとなく熱くなる。愛子達に見られないように死神の真紅の髪に埋めて隠す。
なにアタシはときめいているのよ。こいつは誰とも付き合えないのよ・・・・・。
ドラゴンだし人間じゃないんだし。それに代表に好意を向けられていて・・・・・。
でも・・・・・気が付けばアタシ、いつも死神の姿を追っている・・・・・。
離れていると、死神は今どんなことをしているのかって頭の中で
浮かんでいたり・・・・・死神のあの笑った顔までも思い浮かぶと・・・・・。
「・・・・・っ」
ギリッ・・・・・!
「え、ちょ?優子・・・・・さん・・・・・?」
こ、こんな悩みをする人って漫画や小説で例えると・・・・・こ、恋する乙女じゃないのぉっ!?
「違う、違う!アタシはそんなんじゃないんだからぁっー!」
「いきなり何を言い出すんだ!?というか首、首が
腕の力を弱めろ!」
「うるさい!アタシがこんなに悩まされる原因はアンタの所為よ!」
「身に覚えのない上に理不尽な暴力っ!?ちょっと待て優子!
この場で俺の意識を狩ろうとするな!秀吉達に掛けた魔法が解けて俺達も山の中に
落ちてしまうから!?俺以外本気で死ぬぞこの高さなら!」
「そんなこと、どうでもいいわよ!」
「「「「ええっ!?」」」」
「・・・・・優子、乱心・・・・・」
秀吉達が慌ててアタシを死神がから離そうとするけれど、アタシはまだこいつを―――!
「この、死神のバカァァァァアアアアアアアアアアアアッ!」
「だから何!?俺が一体お前に何をしたと言うんだぁぁぁああああああああああああっ!?」
悲鳴を上げる死神。精々苦しみなさい!アタシの悩みの根源に苦しませないと
気が済まないわ!
「あ、姉上!ハーデスを殺してはならぬのじゃ!」
「死神君の言う通りボク達も堕ちちゃうよ!」
「止めなさいよ木下さん!」
「・・・・・優子、止めて」
死神の首を絞め続けるアタシ、代表達が必死に引き剥がそうとするこんな行動は
合宿所が見えてくるまで続いた。
「・・・・・優子を背に負ぶさったら命が無いな・・・・・」
「もう一度、絞めましょうか?」
「もう勘弁してくれっ!」