バカと真剣とドラゴン―――完結―――   作:ダーク・シリウス

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第二問

「久々のFクラスの教室ですねね」

 

「なんだか久々の故郷に戻ってきた感覚だな」

 

「俺達みたいなバカの集まりにピッタリな場所だろう」

 

「じゃが、ワシらはSクラスを倒したからの。

ただのバカの集まりではなくなったのじゃ」

 

「・・・・・最強のF組」

 

「いまのウチらならAクラスにだって勝てるんじゃない?」

 

カビ臭い畳、清潔とは真逆の教室、机はミカン箱、

成績は最低のFクラスに所属している僕ら。

空き教室にはもうAクラスの皆はいない。振り分け試験をして皆それぞれの教室に

戻ったからだ。まるで四月の時と同じ状態だ。ただ、僕らFもそうだけどS・A・B・C・Eクラスは負けちゃっているから三ヶ月間の試召戦争を禁じられているのは

まだ続いている。その間、僕らはどう動くのか代表の雄二が方針を決めるんだけど、

当の本人は床に寝転がって怠惰状態。まさかこんな形でDクラス以外の第二学年クラスが試召戦争に敗れて三ヶ月間も試召戦争できない状態になるとは思いもしなかった。

しばらくは普通の学校生活を送ることとなるね

 

「雄二、今後の僕らはどうするの?」

 

「そうだなぁ、Sクラス以外のクラスなら今の俺達だったら対等以上な勝負ができる。取り敢えず今は点数の向上を目指すか」

 

「・・・・・珍しい」

 

「じゃな。てっきり今すぐ試召戦争を仕掛けるのかと思ったぞい」

 

ムッツリーニと秀吉の指摘に僕も頷いた。召喚獣の操作も慣れているし、

姫路さんやハーデスみたいな高得点を叩きだす仲間がいる。

雄二が成績向上をするなんて雄二らしくない。

 

「今回の戦いで他のクラスは俺達に対する印象が変わっているはずだ。

俺達に勝つためにはやはり高得点を叩きだしてから挑む腹のはず。Aクラスの並みの

姫路とSクラス並みのハーデスがいるからな。

特にハーデスは第二学年全員に警戒されている。もうハーデスの存在を知らない奴は

いないから、ちょっとでもハーデスだけじゃなく俺達にも対抗できるぐらいの点数を

向上させたいと思っているだろうよ。だとすれば今のままの俺達じゃ戦うのは

厳しくなる。だから成績を向上する必要がある」

 

「学力が全てじゃないってEクラス戦で言った雄二と完全に趣旨が違っているね」

 

「言うな」

 

苦虫を噛み潰したような顔になった雄二。Sクラス戦で学んだかもしれない。

他のクラスと協力しなかったら僕らは負けていたかもしれない。

だから雄二は考えを改めて学力を向上しようと思っている。

 

「ううう・・・・・ウチ、日本語得意じゃないのに・・・・・勉強なんてしなくても

生活に困らないじゃない」

 

「・・・・・保健体育以外の教科はゴミ当然」

 

「ワシも古典は苦手じゃ。やりたくないのぉ・・・・・」

 

「お前らな・・・・・・」

 

雄二が皆の話を聞いて頭を抱えた。僕も日本史とか世界史以外はあんまり

得意じゃないからね・・・・・。

その点、ハーデスはSクラス並みで苦手科目は無い。

 

「やる気を出せお前ら。またSクラスから宣戦布告してこないなんてないんだぞ。

今度は他のクラスの協力無しで戦わないといけないんだ。

お前らがしっかりしないとSクラスにどんな目に遭わされるか分かったもんじゃない」

 

「そうですよ皆さん。しっかりと勉強をしましょうよ?」

 

「「「それでも勉強はしたくない!」」」

 

「お前ら、表に出ろ」

 

姫路さんの言葉すらこの三人は拒否する。雄二も少しキレ気味だった。

 

「そうだよ皆。雄二の言うことだって正しいんだ。ハーデスほどの点数まで

目指そうとは無理だけど精々Cクラスぐらいの点数が必要じゃない?」

 

『・・・・・』

 

あれ、皆・・・・・どうして訝しげな視線を送って来た。

 

「明久・・・・・だよな?」

 

「・・・・・偽物?」

 

「ちょっと待ってよ!?どうして突然僕を疑い始めるのさ!」

 

「うむ、明久らしくない発言をしたからの」

 

「秀吉、僕は雄二の考えに同感しただけなんだけど?」

 

「いや、吉井は絶対にそんな真っ当なことを言わないわよ」

 

「酷いっ!皆にとって僕という存在はなんなのさ!?」

 

「「「「バカ」」」」」

 

否定・・・・・できないっ。ふと、姫路さんがモジモジとして淡く顔を染めた。

 

「えっと・・・・・チャイナドレスを着た吉井君を見て可愛いと思いました」

 

「待つんだ姫路さん!個人的な印象を言ってどうするんだ!

しかも、可愛いと言われても僕は嬉しくないからね!」

 

「そ、そうね・・・・・不覚にもウチも思ってしまったわ・・・・・」

 

「・・・・・売上上々だった」

 

「うわぁぁぁぁんっ!」

 

僕は思わず皆から逃げだした。

 

『お前ら、明久と何の話をしていたんだ?』

 

『ああ、明久のバカが女装に嵌ったって話だ』

 

『・・・・・ついにモロのような趣味を』

 

『待ってガクト。ちょっと表で話をしようよ』

 

大和達の話が聞こえるけど、心のガラスハートに傷付いた今の僕には何も聞こえない!

 

 

ドンッ!

 

 

「いたっ!」

 

何かにぶつかった拍子に僕は尻餅をついた。

廊下に大きな物なんてなかったはずなのに・・・・・。

 

「こ、これ山猿!此方にぶつかっておいて謝罪の言葉もないのか!」

 

「へ?」

 

秀吉みたいに独特な喋り方をする女の子の声。眼前に視線を送ると着物を着た

尼さんのような女の子がいて僕と同じように尻餅をついている。

そんな女の子の傍にカツラのような物体が落ちていた。

 

「・・・・・えっと、見学の人ですか?もしそうならここには見学しない方が

いいですよ?ゴミが殆どでゴミ溜めに咲く綺麗な花が数種類しか無い教室ですから」

 

「ちっがうわぁーっ!お主、此方と何度も会っておろうが!」

 

「へ?会っている?着物を着た人と僕はどこかで会ったっけ・・・・・?」

 

「貴様・・・・・本当に此方のことが覚えておらんような・・・・・っ」

 

小首を傾げて疑問符を浮かべる僕に尼さんのような女の子は怒りで体を震わす。

 

「此方はSクラスの不死川心じゃ!これで覚えただろう山猿!」

 

「ああ、Sクラスの人か。髪が無いから誰だか分からなくて」

 

「何を言っておるのじゃ。此方に髪が無いなど―――」

 

「でも、カツラが・・・・・」

 

視線で指摘するとSクラスの不死川さんが気付いたようで、

慌てて周囲に目を配らせれば落ちているカツラを見つけて頭に被せた。

そして胸を張り、腕を組んで威厳に満ちた態度で言った。

 

「此方に髪が無いわけないのじゃ!」

 

「言い直さなくても良いと思うよ?そう言えばハーデスに髪を切られたことも

思い出したから」

 

でも、どうしてこんなところにSクラスの人がいるんだろう?宣戦布告はできないはずだ。

 

「それで何の用?」

 

「ふん、此方に用があるのは山猿のお前じゃなく死神じゃ」

 

「ハーデス?ハーデスはまだ登校していないよ?」

 

「ならば山猿のお前で良かろう」

 

なんだろう、かなり面倒くさそうなことに巻き込まれそうだ。

 

「此方と模擬試召をするのじゃ!」

 

「だが断わる!」

 

きっぱりと断言したが、相手が聞く耳を持ってくれず。

 

「断わらせはせんぞ!此方の不死川家の威光の前では此方の言う事を全て従うのが

道理なのじゃ!西村先生、模擬試召戦争を行うのじゃ。召喚許可を!」

 

「いいだろう、承認!」

 

「何時の間にぃっ!?」

 

おのれ鉄人!神出鬼没に現れたな!?って、相手はもう召喚獣を召喚している!

戦いに応じなければ否が応でも敵前逃亡とみなされて行きたくもない補習室に連れて

行かれる・・・・・っ!それだけは絶対に嫌だ!

 

「仕方がない、試験召喚獣召喚・試獣召喚(サモン)ッ!」

 

僕の姿をデフォルメとされた学ランに木刀の出で立ちの召喚獣が―――。

 

「あれ?」

 

でて・・・・・こない?幾何学的な魔方陣と共に現れる僕の召喚獣が。

 

試獣召喚(サモン)試獣召喚(サモン)試獣召喚(サモン)!」

 

何度も召喚のキーワードを言っても出てこない。

 

「おっかしいな・・・・・どうしたんだろう?」

 

疑問に思う僕はそれから何度も召喚獣を呼びだすキーワードを発した。

 

 

 

 

一方、ハーデスは極道遼子とエスデスと共にバイクで学校に着いた。

教師専用の駐車場にバイクを停車させ、降りると学校の玄関へ赴いたその時だった。

学校の窓ガラスから雪崩のように何かが降って湧いた。

目を丸くするが極道遼子とエスデスを抱き抱えて宙に逃れる。

 

「な、なんだアレは?」

 

「こっちが聞きたい」

 

『・・・・・』

 

ハーデスの赤い目は確かに見えている。大量の吉井明久の召喚獣が学校から雪崩の様子を思わせて出ている何かを。

 

『・・・・・(システムに何か異常が発生したな)』

 

試験召喚システムを開発した張本人だからこそ一目で察知した。

収まり次第、向かう先は教室じゃなく学園長室に向かうことを決めたハーデス。

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

―――学園長室―――

 

「まいったねぇ。試験召喚システムに何か遭ったようだね」

 

「はい、システムのコアに近い教師の召喚獣は完全にフリーズしていて

召喚ができません。生徒の召喚獣は暴走状態であります」

 

「システムに直接操作したいところだが・・・・・サーバールームの防犯システムに

アクセスができやしない。これじゃ扉が開かないから修理に入ることもできやしない」

 

「システムの電源を落としてみてはどうです?」

 

「無停電電源装置で一月はスタンドアローンで機能するよ」

 

「それでは・・・・・壁を壊して侵入するしかなさそうですね」

 

「明日は学会に学園のシステムのお披露目があるんだ。

壁に穴なんかあった日にはとんだ恥晒しさ」

 

高橋女史と藤堂カヲルが八方塞がりのこの状況に頭を悩ませていた。

マザーシステムでもある試験召喚システムのコアを制御したいがパソコンからでは

不可能と突き付けられた。残る手段は直接サーバールームに侵入して故障の原因を探り

修理をする他ない。しかし、藤堂カヲルが言った学園のシステムのお披露目が明日に

迫っていて壁に穴を開ける手段ができない。システムのコアがあるサーバールームに

繋がっている扉は防犯システムにより固く閉じられていて人の手では

開けることはできない。

 

「では・・・・・どうされます?」

 

「どうするもなにも、蒼天に頼むしかないさね」

 

「やはり・・・・・」

 

脳裏に浮かぶ10年前まで住んでいた故郷。高橋女史の脳裏に蒼天の街並みと

家族を思い浮かんでいる時、藤堂カヲルは深い溜息を吐いた。

 

「そういうことだ。すまないが修理しておくれ」

 

「はい?」

 

この学園長は何を言っているのだろうか?高橋女史は怪訝に藤堂カヲルの視線を

向けている方へ振り向けば、死神の格好をした者が二人の女子生徒を背後に立たせて

佇んでいた。ハーデスと極道遼子、エスデスの三人である。

 

「あなたは・・・・・」

 

死神の仮面に手を触れ、フードと一緒に取り払えば真紅の髪に金色の双眸が

高橋女史の視界に入る。

 

「ま、まさか・・・・・っ!?」

 

「何度も会っていたが、久し振りだな洋子」

 

「な、何故あなたがその姿で通っていらしていたんですか・・・・・!?」

 

高橋女史の動揺っぷりに二人の女子は小首を傾げて不思議そうに見ていた。

 

「まぁ、試験召喚システムの調子を見に来たんだ。そしたらこの騒ぎ、

様子を見に来てよかったよ。まさかこんなことになるなんて本国は絶対に露にも

思わないはずだ」

 

「このことを・・・・・本国にもお伝えするのですか?」

 

「原因次第で報告させてもらうさ。ただ―――」

 

藤堂カヲルに視線を送る。

 

「システムに故障なんて今まで無かったはずだ。

それにあそこは扉がロックされていて誰かが解除しない限り閉じられたままだ」

 

「竹中教頭みたいな奴がまだこの学校にいるというのかね?」

 

「頭の良い奴ならロックぐらいは解除できるはずだ。

もしかすると生徒が悪戯をしたかもしれないな」

 

「生徒が・・・・・!?」

 

試験召喚システムをこの学校に導入して以来、誰もサーバールームに侵入する生徒は

いなかった。ハーデスの指摘に高橋女史は目を丸くする。

 

「話によると、教師の召喚獣はフリーズしていて召喚ができなく、

生徒の召喚獣は暴走だってな?」

 

「そうさ、お前さんの召喚獣なら不具合も無く召喚できるはずだよ」

 

「だろうな。だが、暴走状態となると・・・・・一部を除いた召喚者の召喚獣以外が

全員、敵になっているかもしれないな」

 

「頼めるかい?」

 

「当たり前だ。システムを開発した者として修理ができないんじゃ開発者の名が泣く」

 

「それじゃ、直ぐに―――」

 

藤堂カヲルの言葉は最後まで言えなかった。同時にハーデスが急いで仮面とフードを

被って素顔を隠した直後に学園長室の扉が開いた。

 

「「おい、ババァ!って、ハーデスなんでここにいる!?」」

 

「やれやれ、騒々しいガキ共も来てしまったさね」

 

 

 

 

「システムの故障?」

 

「ああ、そうさね。だからそこにいる死神に修理を頼もうと思ったんだよ」

 

「でも、ハーデスの召喚獣って・・・・・」

 

「死神の召喚獣は観察処分者のアンタと同じでね。システムの別領域で

はしっているから他の生徒と違って暴走の影響が受けないんだよ」

 

「へぇ、ハーデスの召喚獣も物理干渉ができるってこと?」

 

僕の問いにハーデスはコクリと頷いた。

 

「でも、ちゃんと喚べ出せませんでしたよ?」

 

「不具合のある教師フィールドで召喚したからさ。

でも、お前さんらには自前のフィールドがあるじゃないか」

 

そっか、ハーデスと翔一の黒金の腕輪、雄二の白銀の腕輪は教師の立ち合い、承認なし

でも展開できる召喚獣召喚用フィールドの機能がある。

それを使えば召喚獣がおかしくなることもない。

 

「召喚獣を使ってサーバールームに入ってケーブルを繋げておくれ。

そしたらアタシが端末で防犯システムを切って扉を開ける」

 

「物理干渉ができる観察処分者の召喚獣ならではの作戦だな」

 

顎に手をやりながら雄二が学園長の作戦に少なからず感嘆していた。

だけど、ここで問題が一つ。

 

「でも、ハーデスの召喚獣は壁をすり抜けれないですよ?」

 

「システムを冷却する為の通気口がある。召喚獣のサイズなら通れるよ」

 

「だけど、通気口の中を見れないんじゃ召喚獣を操作できないんじゃない?」

 

島田さんの疑問の指摘にムッツリーニが何かを出して提示した。

 

「・・・・・これ、ビデオカメラと送信機」

 

「これを召喚獣に持たせれば中の様子が見えますね」

 

「あったま良いムッツリーニ!」

 

「よくこんなものを持っておったな?何に使うのじゃ?」

 

秀吉の何げない一言でムッツリーニは固まる。僕は皆から守るようにムッツリーニを

抱き締めた!

 

「ムッツリーニを責めないで!本当は良い奴なんだ!ただ、ちょっと―――!」

 

「まだ何も言っておらんのじゃが・・・・・」

 

「明久はお得意様だからな・・・・・」

 

秀吉と雄二が呆れた面持ちで何か言った。そんな僕達を余所に学園長が言う。

 

「黒金と白金の有効範囲は狭い。死神、お前さんはサーバールームの前で操作しな。

進路はここから誘導する」

 

『・・・・・(コクリ)』

 

ハーデスが分かったと首を振った。すると、

 

「失礼しまーす」

 

扉が開け離れたと同時に誰かが軽い口調で入って来た。

 

「ん?お前さんは」

 

「はい、松永燕です。なんだか召喚獣の調子がおかしいようで、

もしよければ私も手伝おうかと思いました」

 

見知らぬ女子だ。一年生か三年生のどっちかだろう。

学園長はハーデスと松永燕っていう人と交互に見て頷いた。

 

「ふむ・・・・・そうさね。あんたも蒼天から来た生徒として頼もうかい。

アンタの召喚獣も観察処分者と同じで暴走に影響が出ないはずだったね」

 

「お任せください」

 

ハーデスと同じ蒼天の出身者?こんな女子生徒が何時の間にこの学校にいたんだ?

 

「それじゃ死神君。頑張ろうね♪」

 

『・・・・・回復試験を受けてから行きたい。それと』

 

不意に、僕に近づくハーデス。

 

『・・・・・吉井明久、俺の黒金の腕輪とお前の白金の腕輪と交換してくれ』

 

「え?どうして?」

 

『・・・・・黒金の腕輪は不具合のある欠陥品の腕輪だ。

俺が点数を上げると暴走して壊れる。お前が起動させれば俺はどんな高得点だろうと

問題なく操作できる』

 

そういうことか。それなら確かに僕が適任かも。

 

「分かった。頑張って修理してね」

 

『・・・・・任せろ』

 

ハーデスは一度回復試験を受けてから謎の女子生徒とサーバールームへと移動する。

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