バカと真剣とドラゴン―――完結―――   作:ダーク・シリウス

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第三問

ハーデスと松永燕はサーバールームの前に辿り着いた。発信機とカメラを装着して

準備万端をすれば隣に佇んでいる吉井明久に頷いた。黒金の腕輪を嵌めた腕を掲げて

召喚獣召喚用フィールドを展開した。フィールドが展開すると死神の滑降した召喚獣、

白と黒の女子制服に腰には装備品を携えている召喚獣が召喚され通気口の中へと

侵入する。

 

「皆、誘導をお願いね」

 

『ええ、任せてください』

 

『・・・・・死神、頑張って』

 

「ありゃ、何時の間にか木下ちゃんがいたんだね」

 

『なんだか大変なことが起きているので、

二人がそっちに行っている間に学園長のところへ尋ねたんですよ』

 

「そっか、危険な場所を迂回したいから誘導よろしくね?」

 

『オーケー♪』

 

耳に付けた小型の無線機に話しかける松永燕。二人が目に装着している機器は、

召喚獣が装備している小型カメラがシステムを冷却している通気口の中が映って

見えるので作戦司令室にいる木下優子達がサーバールームまで誘導してくれる。

 

『三メートル先の右を曲がって次は十字路の左じゃ』

 

独特な言葉を発する木下秀吉の誘導に二人はその通りに進む。

 

「かなり複雑な構造の通気口だね。まるで迷路だよん」

 

『セキュリティの一種だからだよ』

 

無線機から藤堂カヲルの声が聞こえた時、ハーデスの様子がおかしい。

その様子を見ていた吉井明久が驚いた表情で発する。

 

「ちょっ、ハーデスが激しく震えているよ!?」

 

「こっちは点数が減っているしどうなっているんですか!?」

 

『ああ、毒の沼地だね。気を付けて進んでおくれ』

 

「「何でそんなのがあるんですか!」」

 

『セキュリティの一種だよ』

 

何でもかんでもセキュリティの一種と言えば納得すると思っているのかこの学園長は、

と松永燕とハーデス、吉井明久の心は一致した。

 

『危険地帯を迂回する』

 

「雄二、そこにいるクソババァから危険地帯は他にないか聞いてよね。

ハーデスがやられちゃったら松永先輩一人になっちゃうんだからさ」

 

『ああ、適当に分かった。それと次の角を右だ』

 

「分かったよん」

 

次の角を右に移動して進むことしばらく。

 

「あれ、なんか・・・・・出てきた」

 

 

幾何学的魔魔方陣が大量に出現。二人を囲むように後ろにも幾何学的な魔方陣が

大量に出現した。

 

 

F~S UNENOWN×60 8~798点

 

 

『ちょっ、これっ多すぎでしょ!?二人に警戒しすぎじゃないの!』

 

『・・・・・挟まれた・・・・・っ!』

 

『なんとかそこを突破してくれ二人共!』

 

『ハーデス、松永先輩、頑張って!』

 

指令室から焦った声が聞こえてくる松永燕とハーデスは背中を合わせて敵と対峙する。

 

「死神君。この状況、覆すことができる?」

 

『・・・・・』

 

ハーデスの答えはこうだった。ハーデスの召喚獣に異変が起きる。

死神の格好が真紅の光に包まれ、龍を模した真紅の全身鎧へと変貌した召喚獣。

前後に両腕を突き出して―――真紅のレーザービームに似た極太のエネルギー砲を放って

敵を一掃した。

 

『す、すごっ・・・・・』

 

『暴走召喚獣・・・・・全滅じゃ』

 

『今の・・・・・私の召喚獣の腕輪の能力に似ていますね』

 

『・・・・・まだ力を隠していた』

 

『でも、今の攻撃でハーデスの点数が三分の一まで減っちゃったわ』

 

『とにかく、今の内に進んで!』

 

敵がいない通気口を二人は突き進む。

そして、光が見えた時に―――また暴走召喚獣が出現した。

 

 

F~S UNENOWN×60 10~799点

 

 

「死神君っ!」

 

『・・・・・』

 

ハーデスの点数と威力の前では全て無に帰す。たった一撃で暴走召喚獣は通気口から

姿を消し、ついにサーバールームへ突入を果たした。

 

「着いた!」

 

『外れているケーブルがあるはずだ。それを繋げておくれ』

 

「了解」

 

二手で探し出すと、松永燕が外れているケーブルを見つけた。繋げようと

そのケーブルに手を伸ばしたその瞬間、暴走召喚獣によって

攻撃されて繋げることができなかった。

 

「やっぱり、そう簡単にはいかないよね」

 

『・・・・・』

 

すぐさま二人は背中を合わせた臨戦態勢になる。

対する暴走召喚獣は・・・・・300以上いた。

その数に松永燕の頬が引き攣り、ハーデスは言葉を失った。

 

『む、無理よ・・・・・こんな数に勝てるわけがないわ!』

 

『ハーデス、松永先輩!一先ず撤退をするんじゃ!』

 

『・・・・・状況が最悪過ぎる・・・・・っ』

 

指令室にいる面々の声に松永燕は同感だと思った。自分の点数は減っていないが、

ハーデスの点数はもう三分の二も消費している。その上、召喚獣の操作も

まだ慣れていない自分はこの数の相手にハーデスの足手纏いになるだけだ。

ここは素直に撤退したいところと思っているが・・・・・先ほど通って来た

通気口にも敵がいて退路を塞いでいる。

 

『・・・・・』

 

どうしようかと悩んでいた松永燕を余所にハーデスの召喚獣が二体となった。

吉井明久が所持していた白金の腕輪の機能を発動したのだろう。

その理由は―――敵と戦うこと。群がる敵に向かって二体同時が駆けだし、次々と敵を倒す。

 

『し、死神君!いくらなんでも無茶だよ!』

 

『いくらアンタが強くたって、数の暴力に敵うわけがないわ!』

 

『・・・・・死神、逃げて・・・・・!』

 

松永燕の耳にも聞こえる悲鳴。しかし、ハーデスは攻撃の手を緩めない。

攻撃を食らってもその二倍の数を倒す。その姿はまるで鬼神。何時の間にか松永燕は

その戦いを呆けて見ていて、暴走召喚獣の殆どがハーデスに狙いを絞って攻撃を

仕掛けていく。対して攻撃をされてこないことで我に返って松永燕は動いた。

高速で移動しながら倒していくハーデスの点数は二桁まで下がっていた。

暴走召喚獣も最初に比べてだいぶ減っている。だからこそ今が好機で外れている

ケーブルへ進む。しかし、複数の暴走召喚獣が襲い掛かってくる。

 

「死神君がたくさんの敵を引き受けているんだから、私だってね!」

 

装備品から何かを取り出した。それは二の腕まで覆う籠手で右手に装着して

松永燕は右手を敵に振るう。

 

『SPARK』

 

籠手から音声が流れ電撃が帯びる。右の拳のストレートパンチが敵に炸裂し電流が

点数を減らす。

 

「次はっと!」

 

『FREEZE』

 

冷気が帯びた拳を大剣を振り下ろしてくる召喚獣に向けた。大剣を受け止めた時、

大剣が凍りだし召喚獣も氷漬けになった。

その間左右から攻撃をされ紙一重でかわす松永燕は次の一手を整えた。

 

『FIRE』

 

籠手から灼熱の火炎放射を放出。複数の召喚獣を火達磨にさせたところでケーブルへ

向かった。

 

「よし、これで―――!」

 

ケーブルを触れて松永燕の警戒心は一瞬だけ緩んだ。遠くから狙っていた一筋の

凶弾もとい矢が松永燕の頭に襲いかかってくるのを気付かずにいた。

 

『危ないっ!』

 

「え・・・・・」

 

矢は狙いを違わず―――横から真紅の全身鎧の召喚獣が松永燕を庇おうと現れ、

そしてクロスした両腕に深く刺さり、腹部にも刺さった。

全身鎧の召喚獣の点数が0点となり松永燕から消えようとした。

その光景に慌てて外れたケーブルをしっかりと繋ぎ合せたことで・・・・・。

次々と暴走召喚獣が消えてシステムが正常に回復していく。

 

「死神君っ!」

 

修理をし終えたことで問題は解決した。装着していた機器を外して隣にいる

ハーデスに目をやった時だった。ハーデスの床の周りには大量の血が水溜りのように

なっていて胡坐を掻いたまま鎮座していた。

 

「ハ、ハーデス・・・・・ッ!」

 

顔を青ざめる吉井明久に松永燕の耳に掛けた無線機から催促の声が。

 

『吉井と松永!至急、死神を保健室に連れて行きな!

いま、死神がどういう状態なのか手に取るように分かるからね!』

 

無線機から聞こえる藤堂カヲルの指示に吉井明久と松永燕は我に返り、

ハーデスを背負う吉井明久と連れ添う松永燕は急ぎ保健室へと向かった。

 

―――☆☆☆―――

 

「おい、ババァ。ハーデスを保健室に連れて行ったのはどういうことだ?」

 

「ハーデス君に何か遭ったのですか?」

 

「・・・・・気になる」

 

あんな明久と見知らぬ女子生徒に叫ぶように言うババアを見るのは初めてだ。

ババアは俺達の視線を一身に浴びる最中、溜息を吐いた。

 

「アタシは言っただろう。死神は観察処分者と同じだとね」

 

「ああ、物理干渉のことだろう?」

 

「それだけじゃないさね」

 

・・・・・なんだと?

 

「あの死神はハンデとして状況によって全教科を1点にする他にフィードバックも

設定しているのさ」

 

「まるっきし明久と同じだな。だが、明久と同じフィードバックなら大して

問題は無いはずだ」

 

「アンタが思っているようなフィードバックなら保健室に行かせろなんて言わないよ」

 

「・・・・・もしやと思うのじゃが、ハーデスのフィードバックは明久以上の痛覚を

感じるのかの?」

 

秀吉が恐る恐るとババアに問うた。

おいおい、教師がそんなこと認めるわけがないだろう?

一歩間違えたら死だって・・・・・。

 

「そうさ。死神は点数が減ると吉井以上のフィードバック、

痛感をダイレクトに伝わって生身にも傷がつくんだよ」

 

「・・・・・まさか、久保君と戦って負けたあの時、いきなり傷を負ったのもって」

 

「間違いなく、フィードバックによる現象だろうね」

 

ババアが隠すまでもないと肯定した。だとすると・・・・・今のあいつは

どれだけダメージを負ったんだ?どれだけ傷を負ったんだ?あれだけの高得点が

0点まで減ったんだぞ。―――重傷ものじゃないのか?

 

「あ、あの学園長・・・・・あんなに点数が高かったら死神君は・・・・・」

 

「重傷だろうね。大量出血だって免れない。あの死神のフィードバックは

100%に設定しているんだ。バカの吉井は10%程度。

10%と100%のフィードバックは桁違いだ」

 

「・・・・・っ!」

 

翔子が居ても立っても居られないとばかり駈け出してこの場からいなくなろうとした。

 

 

ガラッ!

 

 

扉が開いた。それは翔子が開けたものじゃない。向こうが勝手に開けたんだ。

 

『・・・・・』

 

普段と変わらない姿で現れるハーデスが。―――ハーデス!?

 

「ハーデス!?」

 

「死神!?」

 

皆が一斉にハーデスのところへ行く。あいつは悠然と中に入って来る。

ババアが聞いていたより重傷じゃないよな・・・・・?翔子がハーデスに抱き付いた。

 

「・・・・・死神・・・・・大丈夫・・・・・?」

 

『・・・・・』

 

いつもと変わらずスケッチブックで意思表示する。

 

『・・・・・血が足りない。肉が食べたい』

 

「・・・・・焼き肉、食べに行く?」

 

『・・・・・行く』

 

あっさりと今晩の夕飯が決まったな。そんなハーデスの背後から明久と松永燕という

女子生徒が現れた。

 

「ハーデス、歩いちゃダメだって。傷が治ったからってあんなに血を出したんだから

安静しないと」

 

「そうだよん!ほら、松永納豆を食べて!」

 

『・・・・・仮面を被ってるから食べれない』

 

傷が治ったって、本当にフィードバックが伝わっていたのか。

 

「おい明久。本当にハーデスは傷を負っていたのか?」

 

「うん・・・・・サーバールームの前に血の池ができるほど。

しかも、マントを引っぺがしたら保険の先生が血の気が引くほど全身が真っ赤に

染まっていて・・・・・」

 

「もういい。それ以上聞くとホラーになりそうだ」

 

だが、そんな状態でどうやったら傷が治ったんだ?俺はそれが気になる。

だが、今は聞けないな。

 

「もう死神君!あんなに大量の暴走召喚獣と戦うなんてボクは信じられなかったよ!」

 

「・・・・・心配した・・・・・っ!」

 

「強いのは分かっているけど、それでも一人じゃできないことだってあることを

アンタは分からないわけじゃないんだからもっと自重しなさい!」

 

「姉上の言う通りじゃぞハーデス。ワシも心配したのじゃ」

 

「あなた・・・・・人をどれだけ心配させるんだ」

 

「そうだな。帰ったらお仕置きだ」

 

あいつを慕う奴らがハーデスに食って掛かる。おーおー、人気者だな。

 

『・・・・・悪かった。詫びに焼き肉を奢るから怒るな』

 

おっ、太っ腹だな。今日はご馳走だ。お袋に友達と飯を食うって報告をしないとな。

 

「―――さて、お前ら」

 

「あ?」

 

「戦死者は補習だ」

 

剛腕な腕を組んで俺達を見下ろす鉄人がいた。

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

ジューッ!ジュッー!

 

 

程良く燃える火の上に敷かれた網に敷かれた極上の肉が焼け、

煙と共に焼ける肉の臭い。ワシらは唾をゴクリと喉を鳴らして見守ること数秒。

 

「食べるぞお前らー!」

 

『『『おおっー!』』』

 

人のお金で食べるご飯は格別じゃと誰かが言う。心配を掛けて詫びと滅多に

食べれない高級の焼き肉店に足を運んだワシらはハーデスの奢りで満足するまで

こんがりと焼けた肉を食べる。

 

「美味い!このお肉美味い!」

 

「・・・・・美味」

 

「ああ、こんな肉を食うのは久し振りだなって明久。俺が取っておいた肉を食うんじゃねぇ!」

 

「へへん!早い者勝ち―――ってムッツリーニ!僕の肉を取るんじゃない!」

 

「・・・・・隙だらけ」

 

「ムッツリーニよ。自分の手元に寄せようとすると横取りされるのじゃ」

 

「・・・・・っ!?」

 

そして、戦場でもある。焼き肉店に訪れておるのは明久、雄二、ムッツリーニ、

ワシ、島田、姫路、姉上、工藤、霧島姉妹、ハーデス、極道、エスデス、

松永先輩の14人。

 

「まったく、男の子って落ち着いて食べれないのかしらね?」

 

「あはは、男の子ってあんな感じで美味しいものを食べるんですね」

 

「雄二も・・・・・男の子」

 

「でも、もう少し落ち着いて食べれないかしらね?」

 

隣の席には姉上と姫路、霧島の妹と島田が座ってバランスよく食べておる。

他の近くの席には工藤、霧島、極道、エスデスが座っておりハーデスと

松永先輩は二人きりで・・・・・。

 

ガツガツガツガツガツ・・・・・ッ。

 

物凄い勢いで食べ続けるハーデスの背後を見れる。余程血を大量に流したのじゃな。

 

「物凄い食いっぷりだな」

 

「しょうがないんじゃない?あんなにたくさんの召喚獣を一人で相手にしたんだからさ」

 

「・・・・・既に人の領域を超えている」

 

ムッツリーニよ。惜しい、ハーデスは確かに人間ではないのじゃ。

じゃが、この事は誰にも言えん。絶対にじゃ。

 

「ハーデスは強いよね。初めてなのに二体同時召喚獣を操作するんだからさ」

 

「明久の時はどうだったんだ?」

 

「うん。あれ、物凄い集中力が必要だよ。でも、ハーデスみたいな戦い方は絶対にできないって」

 

「ハーデスに持たせれば鬼に金棒ってことか。他の召喚獣と融合できる腕輪も

所持しているし俺達のクラスは他のクラスと違って優遇されている感じだぜ」

 

「・・・・・白金と黒金の腕輪は5つある」

 

「腕輪があってもそれを使いこなせないようでは、宝の持ち腐れじゃの」

 

「それは問題ないだろう。ちゃんと使いこなせているし」

 

雄二が肉を頬張りながら言う。

 

「んー、美味い。たまには焼き肉ってのも悪くは無いな」

 

「だねー。カロリーがどんどん摂取で来て嬉しいや」

 

「・・・・・(コクコク)」

 

「ハーデスに感謝じゃの」

 

太鼓判を打ちつつ焼き肉を食べ続けること30分ぐらいして、

 

「・・・・・(クワッ!)」

 

「え、どうしたのムッツリーニ?急にカメラを取り出してさ」

 

ムッツリーニとって逃せない瞬間が起きたのじゃろうかの?

 

「よーしお前ら。今日は食うぞー」

 

「うっはっ!師匠が珍しく焼き肉なんてどうしたんだよ?」

 

「仕事でガッポリと収入が入ってな。たまにはここで食べるのも悪くないだろう」

 

「わーい、お肉~」

 

「そう言う事なら遠慮なく食べるぜ」

 

「そうだね。こんな機会は滅多にないから遠慮なく食べさせてもらおうじゃないか」

 

新たな客が入って来た。ムッツリーニがカメラを構える理由がよく分かった。

 

「盗撮は犯罪じゃぞ?」

 

「・・・・・(ブンブンッ!)」

 

「や、ムッツリーニ。堂々とあの人達に向かってカメラを向けているから」

 

寡黙の性識者は相変わらずじゃのぉ・・・・・。

 

「ん?なぁ、師匠。あっちで死神みたいな恰好の奴がいるぜ?」

 

「あ?死神だ?」

 

オレンジ色のツインテールの少女の指摘に中年男性がこちらに視線を向けてきた。

 

「・・・・・ああ、あいつか。すげぇな、気を完全に隠していやがるぜ」

 

「師匠、わかるのかい?」

 

「お前らを鍛えてやってんのは誰だよ?俺は川神の師範代だぞ。

わからないんじゃ師範は務まらないっての」

 

川神の師範大・・・・・?もしやあの者、川神の関係者かの?

 

「それとなるほど・・・・・百代や一子が言っていた死神ってのはあいつのことだな?」

 

中年男性が口の端を吊り上げたと思えば用意されている束の箸を鷲掴みにして・・・・・ハーデスに向かって投げ放った。その愚行にワシは目を丸くした。

じゃが、食事中のハーデスは投げられた箸に気付かないまま食べ続けている。

そう、食べ続けて・・・・・。

 

「へぇ、やるじゃん死神。片手で箸を全部受け止めるなんてよ」

 

『・・・・・』

 

ハーデスが中年男性の言葉に反応して顔を男性の方へ向けた。

 

『・・・・・人の食事を邪魔するな釈迦堂』

 

「ん?お前、俺のこと知っているのか?」

 

声を発するハーデス。釈迦堂・・・・・それがあの男の名前じゃな。

何時の間にかワシらはハーデスと釈迦堂という男を見守っておった。

他の席に座っている姉上達や霧島達もじゃ。

 

『・・・・・久し振りだな。もう10年も経つか?』

 

「―――お前、まさか・・・・・・」

 

釈迦堂という男は目を丸くした途端に深い笑みを浮かべた。

 

「おいおい!なんだお前、この街に戻っていやがったのかよ!」

 

あろうことかハーデスに近づいて了承も無しに隣の席に座って嬉しそうに話をし出したのじゃ。

 

「なんだテメェ。一子がアイツは死神に殺されたって聞いたんだけど

生きているじゃねぇかよ?なぁーに嘘を吐いてんだお前はよ」

 

『・・・・・個人的な理由でそうしたんだ』

 

「つれねぇことをするなって。お前みたいな奴がそう簡単に死ぬわけがないだろうが」

 

まるで旧友と再会したような会話じゃった。ワシらはこの二人の接点に疑問が付きないでおる。

 

「で、お前はお友達と一緒に焼き肉パーティってか?」

 

『・・・・・そんなところだ』

 

「しっかし、なんだその格好は?怪しさムンムンだぜ?」

 

『・・・・・おかしいか?』

 

「おかしいっていうより近寄りがたい雰囲気がでているな。それが狙いか?

まあいいや、酒でも飲もうぜ」

 

釈迦堂は勝手に酒を二つ注文した。この者、ハーデスを知っておるものかの?

 

「あ、あのー」

 

「ん?なんだガキ」

 

「僕、ハーデスの友達なんですけどあなたは一体・・・・・」

 

「俺か?俺は釈迦堂刑部ってんだ。川神の師範代をしているぜ」

 

やはり・・・・・川神の者であったのか。

 

「つーとお前はあれか?一子から聞くバカな友達ってのはお前だな?

そのバカ面の特徴と一子から聞いたのと合うからよ」

 

「えーと、吉井明久です。一子にはお世話になっています」

 

「あーそんな堅苦しい挨拶はしなくていいって。普通に噛み砕いて接してくれや」

 

「って、師匠!なにその怪しさ満載の奴と慣れ合っているんだよ!?」

 

すっかり蚊帳の外じゃったツインテールの少女達までもがこっちに来た。

 

「おっ、良い男じゃねぇか。おいお前、後で面を貸せ」

 

「ああ?誰だテメェは」

 

ガラの悪い男が雄二に目を付ける。雄二も悪鬼羅刹と呼ばれた男じゃから不良に

怖気付く訳がない。逆に睨み返す程じゃ。

 

「―――気持ちよくしてやるからよ」

 

「なんだこいつ・・・・・何か物凄くヤバい感じがするぞ・・・・・!?」

 

態度が一変して顔を青ざめる雄二。う、うむ・・・・・ワシもこの者は危険じゃと

本能で感じたのじゃ。できれば二度と関わりたくないほどじゃ・・・・・・。

 

「こいつ、ゲイだからな。ま、頑張ってケツを掘られて来いよ」

 

「なんだとぉっ!?」

 

「そこの無口で小柄の男も見れば可愛いじゃねぇか。よし、二人纏めて可愛がってやるぜ」

 

「・・・・・(ブンブンブンッ!)」

 

ムッツリーニまでもが狙われるとは・・・・・。

ワシ・・・・・どうやら大丈夫のようじゃ。

 

「そこの女顔の男とバカ面の男もだからな?くくくっ、焼き肉屋で俺の欲望を

ぶつけることができるとはラッキーだぜ」

 

「な、なんだってっ!?」

 

明久とワシらまでもかっ!?こやつ、危険じゃ!

 

「あー、竜兵。手を出さない方が良いぜ」

 

「あ?なんでだよ、俺の勝手だろうが」

 

「この死神のお友達からだよ。お前、そいつらに手を出した次の日、酷い目に遭うぜ」

 

釈迦堂という者がフォローしてくれる。

 

「ふん、その死神が俺を倒せるかどうか怪しいもんだな」

 

『・・・・・ふーん、見ない間に随分とデカく言えるようになったんだな。竜兵?』

 

「あ?お前、馴れ馴れしく俺の名前を―――」

 

『お前らを最初に引き取って釈迦堂に託して10年も経ったが、

性格とその思考は改善されていないようだな竜兵』

 

ハーデスがガラの悪い男に向けて言い放った言葉は、ガラの悪い男の表情を一変させた。

 

「・・・・・おい、まさか・・・・・」

 

『・・・・・拳骨、久々にくれてやろうか』

 

包帯だらけの拳にメラメラと炎が燃えだした。ガラの悪い男は身体を震わせて、

 

「す、すまん!」

 

『すまん?』

 

「い、いや、ごめんなさい!それだけは勘弁してくれ!」

 

その場で土下座をした。なっ、こんな危ない男を土下座をさせるとは

ハーデス・・・・・お主は一体・・・・・。

 

「・・・・・へぇ、そういうこと」

 

「あ?どういうことだよアミ姉ぇ」

 

「なんだい天。竜兵をこんなことさせるやつは一人しかいないじゃないか。

久し振りだねぇ・・・・・」

 

「―――って、まさか・・・・・本当かよ!?」

 

目つきが鋭い女性の話を聞きツインテールの少女が目を大きく剥いた。

どうやらハーデスの正体を気付いたようで信じられないと表情をした。

 

「辰、あの人が目の前にいるよ」

 

「ん~?誰~?」

 

「顔を隠しているから分からないかい?なら、肩に手を触れてみな」

 

女性の催促に青い髪に眠たげな顔をしている女性が「わかったぁ~」と従い、

釈迦堂という男と入れ代ってハーデスの隣に座っては肩に手を触れた瞬間。

緑の目が開いた。

 

「あー、久し振りぃー」

 

『・・・・・触れただけでも分かったか』

 

「うん、分かったよぉー」

 

肩に手を触れている手はハーデスの首に回されより密着した。

まるで恋人同士にのようじゃった。

 

「・・・・・ぐぅ・・・・・」

 

「ね、寝た・・・・・?」

 

「辰は寝ることが大好きだからね。特に寝る場所が多かったのは

その死神の格好をしている奴の傍」

 

「お主らは一体誰なのじゃ?」

 

「私らはひっくるめると板垣兄弟姉妹さ。私は長女の板垣亜巳、

こっちのオレンジの髪の娘は末娘の板垣天使、で、ゲイの男は弟の板垣竜兵で死神の

格好をしたそいつに抱き付いて寝ているのは次女の板垣辰子。

川神院に世話になっているのさ今の私らは」

 

兄妹・・・・・全然似ておらんの。

 

「それで、ハーデスとの関係は?」

 

「ハーデス?ああ、どうせ偽名だろうね。まあ、関係は・・・・・秘密にしておこう」

 

「む、何故じゃ?」

 

「・・・・・感じていないだろうけど、教えるなって私に殺意を向けてくるんだよ。

だから言えないのさ」

 

ハーデスじゃな。絶対にハーデスじゃな。

 

「ただ、辰の場合はそいつのことが家族の次に好きだってことぐらいは言えるね。

異性として」

 

「またか、またハーデスか!どんだけハーデスはモテるんだよ!?」

 

「・・・・・嫉ましい・・・・・っ」

 

案の定、明久とムッツリーニが恨めしいとハーデスに嫉妬が籠る瞳を向ける。

まったく、返り討ちに遭ってもワシは知らんからの。

 

「ハーデスがモテるってのはどういうことだい?」

 

「うむ、一部じゃがハーデスに好意を抱いている女子がいるのじゃよ」

 

「へぇ、こんな恰好をしてよく好かれるね」

 

『・・・・・・魅力?』

 

「そんな死神の格好に魅力なんて微塵も感じないよ。大方、素顔を見せて口説いたんだろう?」

 

『・・・・・失礼な、口説いた覚えはない』

 

口説いてはいない・・・・・じゃが、お主は確実にフラグを立てておるのは

間違いないのじゃ。

 

『・・・・・あの川神姉妹に俺のことを言うなよ』

 

「どうしてだい?教えたら喜ぶだろうに」

 

『・・・・・いつか、自分で言う』

 

「ふぅーん?まあ、アンタには恩があるし言う通りにするさね。天、分かったね?」

 

「へいへい、分かっているって。バラしらたウチの命がなさそうだもんよ」

 

そこまでするような男ではないのじゃが・・・・・。

 

「なあ、お前はどこに住んでいるんだ?」

 

『・・・・・親不孝通りの立ち入り禁止区域』

 

「ああ、あんなところか。分かったぜ、今度お前の家に遊びに行くからな。

そんときは俺と遊んでくれや」

 

『・・・・・マフィアやヤクザにはこれを見せれば通してくれるはずだ』

 

ハーデスが何かをマントから取り出して渡した。釈迦堂という男はそれを見降ろして

胸のポケットにしまった。

 

「んじゃ、俺らも飯にすっか。おい辰子。飯にするから起きろ」

 

「んー・・・・・」

 

声を掛けてもハーデスに抱きついたまま起きる気配はない。釈迦堂という男は頭を

掻いて溜息を吐いたのじゃ。

 

「あー、ダメだこりゃ。完全に寝ていやがる」

 

『・・・・・起こす』

 

 

ゴンッ!

 

 

「んぁ?」

 

「起きたか、飯にすっからこっちに来い」

 

起こし方が拳骨とは・・・・・しかも本人は痛みを感じていないのかの?

いま、鈍い音がしたのじゃが。

 

「んー、分かったぁ・・・・・。また、会えるよね?」

 

『・・・・・そう思っている限りまた会えるさ』

 

「うん、ずっと思っているよ。大好きだもん、じゃあね」

 

手を振り、違う席へと移動して行った。ようやくワシらは解放された気分で息を吐いた。

 

「お前、知り合いが多いな」

 

「・・・・・しかも、女の子」

 

『・・・・・狙っているわけじゃないからな。ところで、肉が黒コゲになっているぞ』

 

「え、あ、あああっ!僕の肉がぁっ!」

 

「これじゃ食えないな。しょうがない、もう一度注文しようぜ」

 

「・・・・・今日は食べる」

 

ワシらもワシらで食事を開始する。今日は色々なことがあったが、

またハーデスのことが知れたのじゃ。

じゃがもっとハーデスのことを知りたいのぉ・・・・・。

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