ハーデスは極道遼子とエスデスを教室に居させ、
風に当たろうと屋上に足を運んだ。しかし、先客がいた。クリスティアーネ・フリードリヒ。
「む・・・・・ハーデスか」
『・・・・・珍しい先客がいたものだ。一人になりたかったか?』
「・・・・・そんなところだ」
クリスは金髪を風で靡かせながら前に視線を向けた。その隣にハーデスは近寄って
フェンスに寄り掛かる。二人が二人きりで話し合うのはこれが初めてでしばらく
沈黙が続いたが、
『・・・・・あいつら、直江達はおかしい』
ハーデスは声を変えた声音でクリスに話しかけた。ハーデスが声で話しかけてくる
ことに一瞬だけ驚くが、どういうことだ?と目で訴えた。
『・・・・・あいつらの大切な人物を殺したというのに、あいつらの大切な人物を
あんな勝ち方をしたのに、謝って来た。これがおかしくないと言えるか?』
「・・・・・きっと、大和達は冷静になったんだろう」
『・・・・・冷静?』
今度はハーデスがどういうことだ?と赤い目で訴えたら、コクリと首を縦に振った
クリスが語った。かつて、幼い頃の自分に言ってくれた旅人の言葉を直江大和達に告げた事を。
『・・・・・』
「大和達がお前に対する怒りや憎しみが無くなったのならばもう安心だが、
私はあんなこと言った手前で少し居心地が悪くてな。どう謝ろうか悩んでいたんだ」
顔を真っ直ぐ前に向けたまま苦笑を浮かべた。青い瞳はハーデスに向き、クリスが問うた。
「お前ならどう謝る?参考に訊かせてくれ」
『・・・・・あいつらなら、謝りはせずともお前を受け入れてくれるはずだ』
「どうして分かる?」
『・・・・・あいつらの性格は把握しているからな。いつも一緒にいて、
いつもお気楽で、いつも元気で、時にはバカなこともするが、
仲間に対する思いやりと仲間との絆は深く堅い』
赤い目は青い空を見上げた。
『・・・・・小さい時から全然変わっていないな。あいつら』
「・・・・・そうか、大和達は変わって・・・・・ん?」
『・・・・・どうした?』
ハーデスの発言に疑問を浮かべ言葉を止めたクリスに不思議そうにハーデスが尋ねたところ。
「なあ、どうしてお前があいつらのことを知っているような言い方をするんだ?
小さい時から全然変わっていないとは言う?」
『・・・・・』
クリスの発言を聞き、ハーデスは言葉を失った。今の発言は失言だった。
疑問を抱くのは当然だ。直江大和達の幼少の時代をハーデスが知るわけ無いのだから。
だからこそ苦し紛れの言い訳を言った。
『・・・・・言葉の、綾だ』
「言葉の綾・・・・・だな?」
訝しいと疑惑の視線を向ける。そんなクリスの視線から逃れるように
あさっての方向へ顔を向けた時だった。ヒュンッ!と風を切る音が聞こえたきた。
『・・・・・悪い』
「は?」
クリスを抱きしめながら音もなくフェンスから離れた途端にフェンスが吹っ飛んだ。
その光景を目を丸くしてみたクリスが唖然となる。
「ほう・・・・・気を隠した俺を察知するとはな」
「お前は・・・・・九鬼家の従者」
フェンスを蹴り壊した金髪の老執事、ヒューム・ヘルシング。威
圧感を放ち鋭い眼光をハーデスに睨みつける。
「今日こそはその仮面を剥いでやる。その赤子から離れろ」
『・・・・・(フルフル)』
「ふん、ならば、巻き込まれた不運を死神に恨むようにしてくれたまえよ」
「なっ・・・・・!?」
無関係な生徒にまで巻き込むことを躊躇うことを微塵もない言動をする
ヒューム・ヘルシングに信じられないと大きく目を剥いた。
「お、おい死神!私を巻き込む気か!?」
『・・・・・そのつもりはない。でも、一瞬で終わらせるから安心してくれ』
「赤子が・・・・・この俺を一瞬で倒すと?笑えない上に片腹が痛くもないぞ」
『・・・・・蒼天を敵に回したい?』
「お前に傷を負わせたぐらいで蒼天が牙を剥くほど小さい国ではなかろう。
無論、貴様を傷つけずに拘束して仮面を外させてもらうがな」
ハーデスに立った一歩で凄まじいスピードで迫る。白い手袋を装着した手は獲物を
狙う蛇の如く、鋭く突き出して骸骨の仮面に伸びた。
ガッ!
骸骨の仮面はヒューム・ヘルシングの手に摑まれた。
「どうした、俺を一瞬で倒すんじゃなかったか?お前の顔を隠す仮面は俺の手の中にあるぞ」
『・・・・・』
「ふん、旅人を殺したという戯言はどうやら虚言のようだな。
貴様のような奴にあの男が死ぬとは思えない」
勝利を確信したヒューム・ヘルシングの腕にそっとハーデスが掴んだ包帯だらけの手は
禍々しいオーラに包まれ、常闇と思わせるぐらい黒い手になったのだった。
「なんだ・・・・・その黒い手は・・・・・。・・・・・っ!?」
刹那、金色の目が大きく開いた。次第に身体を震わせ、
信じられない表情を顔に浮かべハーデスを見つめる。
「貴様・・・・・っ!」
『・・・・・一瞬で倒した』
仮面を掴む握力が弱まった。仮面から手を放させてクリスの腰に手を回したまま
屋上を後にしようとする。
「し、死神・・・・・あの者を放っておいていいのか?」
『・・・・・今日一日、あいつは動くこともできない』
「何故だ・・・・・?」
尻目でヒューム・ヘルシングを見やると、金髪の老執事が屋上に倒れ込んだ。
その様子にクリスは目を見張り、ハーデスとヒューム・ヘルシングと何度か交互に見た。
「ど、どうやって・・・・・?」
『・・・・・あいつの気を9割奪って―――これが旅人を殺してしまった原因だ』
「おやおや、ヒューム。こんなところで倒れて何をしておられるんですか?」
「・・・・・うるさい。良いから俺を紋様のところに運べ」
「そうは仰りますが、あなた方から殆ど気は感じません。いったいどうしたのですか?」
「・・・・・」
「なるほど・・・・・あなたは死神に負けたというわけですか。旅人以外の者に
破れるとはこれはおも―――ではなく驚きましたな」
「貴様・・・・・面白がっているな?」
「なんのことでしょうか。ですが、これ以上彼に関わるのはおやめなさい。
本格的に九鬼家と蒼天が戦争を勃発しかねないので」
「ふん、高が赤子の一人に蒼天が動くとは思えんがな」
「戦争をしなくても、関係は悪い方向へ進行してしまう可能性ありますよ」
「・・・・・ちっ、仕方がない。しばらくは無視しよう」
「死神に倒されたあなたが言っても頼りないだけですよ」
―――☆☆☆―――
「ハーデス・・・・・なにしてんの?」
授業が終わって休憩中、ミカン箱になにやらパーツみたいな物が散乱していて
組み立てている姿を窺わせるハーデス。
『・・・・・ボイスチャー付きの目覚ましを作っている』
「目覚まし時計?器用なことをするんだね。それで、どんな音声が流れるの?」
『・・・・・少し待て』
その通り少し待てば、目覚まし時計を完成させたハーデスは時間を設定して一分後。
ピピピッ!ピピピッ!《おはよう、朝だよ?起きないと悪戯しちゃうよー?》
って、なんだこりゃぁぁぁぁああああああああああっ!?
「ハーデス!?キミは何て物を作ったんだ!どうして僕の声が流れるんだよぉっ!?」
『・・・・・面白そうだから。因みに』
ピピピッ!ピピピッ!《おーい朝だよ?いつまで寝ないで起きて。
でも、キミの可愛い寝顔を見れるならこのままでも・・・・・》
『・・・・・音声の種類は約100種類ある』
「ひゃ、ひゃくっ!?ハーデス!いますぐその目覚まし時計を僕によこすんだ!」
「あ、あの・・・・・ハーデス君」
「へ?姫路さん?」
可愛らしいFクラスの清涼剤の一つの女子が顔を赤らめてハーデスを見つめる。
ま、まさか・・・・・姫路さんがハーデスに告白を・・・・・っ!?
「そ、その目覚まし時計・・・・・どうするんですか?」
「ほぇ?」
『・・・・・こうする』
ポイ (目覚まし時計がどこかに向かって放り投げられた)
パシッ (それをムッツリーニが受け取った)
『・・・・・ムッツリーニ商店の商品にする』
「つ、土屋君!その目覚まし時計はいくらですかっ!?」
ひ、姫路さんっ!?キミはどうしてそんな物を購入しようとするんだ!
「・・・・・三千円」
「た、高い・・・・・。も、もう少しだけ安くできませんか?」
「・・・・・写真撮影ーーー」
「ろ、露出の少ない写真なら手伝います」
「・・・・・千五百円」
「買います!」
か、買ったぁぁあああっ!?何で買うのさ姫路さん!
そんな時計はこの世から抹消すべきだ!
「甘いわね瑞希、ウチは二千を出すわ!」
「「えええっ!?」」
ここで新たな購入者が出現!その名も島田美波!って、
キミもどうしてそんな物を欲しがるのさー!?
「ど、どうして美波ちゃんが買うんですかぁっ!?」
「ちょ、ちょっとウチの目覚まし時計が壊れちゃって・・・・・その、新しいのを
買おうかなって思っていたところなのよ」
「ウソです!それでしたら吉井君のボイスチャー目覚まし時計じゃなくて
お店の時計を買っても良いじゃないですか!土屋君、私は二千五百円で買います!」
あ、競りが始まった。
「なっ、そ、それだったらウチは二千八百円を出すわよ!」
「うううっ~二千九百円です!」
「う、くっ・・・・・これ以上は無理・・・・・っ!」
項垂れる島田さん。財布の中と相談し合った結果、これ以上はNGだと判断したんだろう。
「・・・・・毎度あり」
「う、失ったものは大きいですが・・・・・得るものがそれ以上に
大きいです・・・・・っ!」
大事そうに目覚まし時計をその豊かな胸に抑え込むように抱き締める。
トントン。
「ん?なにハーデス」
『・・・・・・あれ、まだ完成していない。持ってきてくれ』
それはつまり姫路さんから目覚まし時計を貰いに来いということだろうか。
仕方なくその通りに動く。
「えっと、姫路さん」
「よ、吉井君?あ、この目覚まし時計は渡しませんからね!?」
「いや・・・・・ハーデスがその目覚まし時計はまだ未完成だから返してほしいって
言うんだ」
「未完成・・・・・?そ、そうなのですか・・・・・?」
唖然と目覚まし時計を見下ろす姫路さんから謝りながら取って、ハーデスに渡した。
僕から受け取ると、なにやらマントからカプセルを取り出した。カチッとスイッチを
押して少し離れたところに放り投げた瞬間、煙が発生して・・・・・僕自身が立っていた。
「・・・・・僕?」
『・・・・・の等身大だ』
等身大って・・・・・近くで見ても僕が目の前で立っているように物凄く酷似している。
まるで動くんじゃないかって思うほどだ。僕の等身大の後ろに回って、
ガチャガチャと何やら機械を弄っているような音が聞こえてくる。
少しして、ハーデスが戻ってきた。
『・・・・・これで完成』
「完成って・・・・・あの等身大の中に目覚まし時計を入れちゃったら、
音が聞こえなくなるんじゃないの?」
『・・・・・蒼天の技術力を侮ったらダメだぞ』
程なくして・・・・・僕が動き出した。しかも、跪いて何もない場所に笑顔を浮かべ、
手を揺さぶるような動作をし始める。
《瑞希ちゃん。もう朝だよ?早く起きないと遅刻しちゃうよ?》
「いっやぁぁぁぁあああああああああっ!?」
な、何て事を言うんだこの等身大(僕)はっ!?よりにもよって姫路さんの名前を
言いながら起こすなんて、まるで僕自身が姫路さんを起こしているようなもの
じゃないかァッ!恥ずかしい、超絶に恥ずかしいっ!誰でもいい、この等身大をぶっ壊して!
「・・・・・お小遣いを殆ど使いきって良かったです・・・・・っ!」
姫路さんが手を組んで幸せ絶頂の表情をしているぅ!?
「ううう・・・・・っ!あそこでお小遣い三千円を使いきってでも
買っていればぁ・・・・・!」
無念だと床に沈む島田さん・・・・・。
「ハーデスッ!あれ、壊して良いよね!?僕に対する人権を踏みにじっているよね!?」
『・・・・・開発者としてそれは困る』
等身大(僕)に近寄ったら、胸元にあるスイッチを押して煙が発生。煙がち籠る中
カプセルが飛び出して来てハーデスの手の中に収まった。
『・・・・・これ、説明書。それと試作品が故に壊れる可能性はある。
問題が生じたら教えてくれ。壊れても抱き枕にでもできるけど』
「はいっ!ありがとうございますハーデス君!一生大事に使い、宝物にします!」
カプセルが姫路さんの手の中に。ああ、きっと今夜からあの等身大兼目覚まし時計は
愛用されるだろう。僕が姫路さんの名前を呼びながら起こす仕草をして・・・・・。
「・・・・・ところでハーデス。キミがムッツリーニ商店の存在を知っていたんだね。
知らなかったのかと思ったよ」
そう訊くとムッツリーニに視線を向けたと思えば、スケッチブックでこう書いた。
『・・・・・神月新聞部の新聞を見てな。ムッツリーニ商店という名前があったから、
どんなものを販売しているのか直接本人に訊いたら』
「訊いたら?」
『・・・・・つまらないものばかりだった。だから俺もムッツリーニ商店の販売員に
加えてもらってもっと全校生徒に買ってもらえるほどの商品を売ろうと決めた』
「・・・・・ハーデスが加入したおかげで、売上金が三倍以上」
さ、三倍だって・・・・・?一体ムッツリーニと組んでどんなものを
販売しているんだキミは!?
『・・・・・あの等身大目覚まし時計はその商品の一つ』
「・・・・・今のところ売れているのは姫路と島田、秀吉の等身大。次に明久」
「ウ、ウチらの等身大もあるの!?」
「は、恥ずかしいです・・・・・っ!」
『・・・・・吉井明久の等身大を買った姫路がとやかく言えるような立場じゃないがな』
そう言いながら三つほどのカプセルを取り出したハーデス。スイッチを押して
またカプセルが煙に包まれ・・・・・姫路さんと島田さん、秀吉の等身大が現れた。
『『『おおーっ!』』』
Fクラスの男子が感嘆の声を上げる。うん、その気持ちは分かる。
三人の等身大は僕の等身大と同じで本物と遜色がないほど似ている。
「・・・・・一つの等身大の値段は二千五百、ボイスチャー付きは三千」
『・・・・・等身大は一週間で一体しか造れないからもっと値上げしても良いが、
生徒の懐の事情を考慮してこの値段だ。今でもこの三人だけ限らず、
他の奴らの等身大まで造らないといけない羽目だ』
三人の胸元にあるスイッチを押してカプセルに戻した。
「ほう、お前にそんな器用な才能があるとは驚いたな」
今まで静観していた雄二がようやく口を開いた。そう言えばそうだね?
料理はできると分かっていたけど、機械を弄れることは知らなかった。
『・・・・・坂本雄二の等身大は既に霧島翔花に購入された』
「待て・・・・・お前、俺の声で何て入力したんだ?」
雄二が頬を引き攣らせた。だよね、雄二の等身大を買わないはずがないよ彼女なら。
『・・・・・「おはよう、俺のマイハニー、愛しい翔花よ」』
「うおおおおおおおおっ!?ハーデスから俺の声で言われたァッ!
しかも、なんて呼び起こしを入力してくれたんだこの野郎!」
喚く我が悪友。その気持ち、物凄く分かるよ雄二。目の前で僕が姫路さんの
名前を言いながら呼び起こす光景を見て凄く恥ずかしいし嫌だったよ。
『・・・・・しかも、三体も買ったぞ』
「こえぇっ!三人の俺が翔花を起こす光景を思ったら物凄くこえぇっ!
こんなの俺じゃねぇッ!」
「―――やかましいぞ坂本ぉっ!」
げげっ!鉄人が現れた!もう休憩時間は過ぎていたのか!
―――☆☆☆―――
時が過ぎて昼休み。
「おい翔花。俺の等身大を見せてくれ。焼却炉に放り込むからよ」
「ダメ・・・・・せっかく買ったのに壊しちゃ困る」
「じゃあ、俺にも聞かせてくれ。目覚まし時計だけ壊して、
等身大は海に沈めてやるから」
「雄二が毎日毎朝起こしに来てくれるなら・・・・・」
「断わる」
「雄二・・・・・」
「断固拒否する」
「雄二・・・・・」
「否定する」
「雄二・・・・・そんなに死にたいの?私と屋上からバンジーして心中する?」
「分かった。今度お前の家に訪れて起こしに行こう」
態度が180度ガラリと変えた雄二であった。
「雄二、もう諦めたら?絶対に霧島さんの妹に勝てないって」
「アホ言え!ここで俺が根を上げたり、
降参なんかした日には翔花と結婚しないといけないんだぞ!?」
顔を青ざめて、絶対にそんなことはしないと気持ちが伝えてくる雄二を僕は指摘する。
「でも、結婚って男が18歳ならないとできないんでしょ?」
「・・・・・逆に言えば雄二の結婚記念日は後2.3年後」
「この中で一番早く結婚するのは雄二で確定じゃろう」
「て、てめぇら・・・・・他人事のように言いやがって・・・・・っ!」
「「「他人事だ(じゃ)から言うんだ(じゃ)」」」
異口同音ってきっとこの事だろう。
でも、霧島さんの妹の発言にちょっと怒った表情を浮かべる霧島さんが口を開いた。
「・・・・・翔花、それはダメ」
「姉さん・・・・・?」
姉が妹にそんな事をしてはいけないと言うのだろうか?きっとそうだよね、
だって妹が―――。
「・・・・・死ぬなら・・・・・海の深海に向かってダイブするべき」
「姉のお前がなに妹を死に場所を指摘しているんだぁっ!?」
「そっか・・・・・海の底ならいつまでも一緒に沈んでいられるね」
「こいつはさらりと受け止めて怖いことを言うんだぁっ!?俺はまだ死にたくねェぞっ!」
・・・・・この姉妹、怖い。
「代表と翔花はなに言っちゃってんのよ・・・・・」
「あはは、一緒に死ぬことを前提に話をするなんて驚きだね」
木下さんと工藤さんがそんな事を言っている。Aクラスの霧島姉妹、
木下さん、工藤さんがここにいる理由は当然、僕らとお昼ご飯を食べる為だ。
「なんだか、このメンバーで集うとAクラスの霧島さん達がFクラスに転属している
気分を感じるよ」
「・・・・・私は死神と一緒にいたくてFクラスになろうと思ったけど優子に
止められた」
「そんなこと、皆に迷惑をするでしょう代表。Aクラスの代表は代表しか
務まらないんだから」
「そう言う優子も死神君のクラスにしようかしら・・・・・と心の中で
思ったことあるんじゃないの?」
「なっ・・・・・!」
あ、顔が赤くなった。木下さん・・・・・意外と雄二と一緒で素直じゃないんだね。
「そ、そう言う愛子はどうなのよ・・・・・!」
「うーん、Fクラスって楽しかったから良いかなーって思ったんだけど、
やっぱりAクラスに戻ったんだよね」
「・・・・・どういうことよ?」
「だって、Fクラスに入っちゃったら死神君と試召戦争できないよ。
保険体育で勝負して死神君を超えたいからね♪」
なるほど・・・・・そう言う考えでAクラスに戻ったんだ工藤さん。
「死神君ほどの点数は無理だけど、それ相応の点数と操作技術を磨いて挑むからね。
勿論ムッツリーニ君を倒してキミに挑むよ」
「・・・・・その勝負、何時でも受けて立つ」
工藤さんにとってのライバルはムッツリーニとハーデスか。ムッツリーニも工藤さんと
ハーデスをライバル視しているから、二人のライバルはお互いでお互い同じハーデス。
「アタシも・・・・・死神を倒したいわ」
木下さんが意志が強い瞳を爛々としてハーデスを睨みつける勢いで見つめる。
「保健体育もそうだけど、死神を倒す気持ちは変わらない」
「おーおー、俺達のハーデスが人気者だな」
『・・・・・坂本雄二に押し付けてやる』
「俺は代表だぞ。負けたら意味ないじゃないか」
『・・・・・負けたら霧島翔花に突き出せば済む話』
「ふざけんな!お前を翔子に突き出せば全てが丸く収まるんだよ!」
いや・・・・・二人を突き出せば僕らの身の安全は保障されたのも当然だと思う。
「それにしてもハーデスよ。お主は演技ができるのじゃな」
『・・・・・演技?』
「ほれ、雄二の声を真似したじゃろう?」
『・・・・・「ああ、愛しの翔花。愛している」か』
「お前、それ以上ふざけたことを言うとFFF団に突き出すぞゴラ」
あはは、どんどん言っちゃっていいよハーデス。雄二が額に青筋を浮かべても
何とも思わないからさ。
「うむ、そのように他人の声を演じることができる友達がおると嬉しいのじゃ。
どうじゃ、演劇部に見学しにこんか?」
「秀吉、死神まで演劇バカを引き込もうとしないの」
『・・・・・「そうよ、寧ろアタシの趣味に付き合わせて―――」』
「アンタは何アタシの声でを言い出すのよぉぉぉぉおおおおおおおおおおっ!?」
今まで見たことがないほど木下さんの顔が真っ赤になった。
ハーデスの口を手で塞いで。
「凄いね、秀吉並みのものまねだよ」
「明久よ。演技じゃからな?ものまねではないのじゃ」
『・・・・・訊き慣れた声しかできないから秀吉には負ける』
「だってさ、演技では秀吉の勝ちだよ」
「ふむ・・・・・そう言う事ならワシは素直に喜べるのじゃ」
本当に嬉しそうに秀吉は笑みを浮かべた。
くっ・・・・・僕の純情を刺激するなんて・・・・・!
「じゃあ、死神君。翔花の声を真似できる?」
『・・・・・「雄二・・・・・スキスキスキスキスキスキスキスキスキスキ」』
「やめろぉっ!お前が言うと呪いの言葉にしか聞こえねぇっ!」
「雄二・・・・・・スキスキスキスキスキスキスキスキスキ」
「ぎぃやぁぁぁああああああっ!翔花の声が左右から聞こえてくるぅぅぅっ!?」
こ、これは・・・・・雄二を精神的ダメージを与えている!何て怖ろしいボイスチャー!
「あはは、おもしろーい!」
「アタシにとっていい迷惑よまったく・・・・」
呆れで溜息を吐く木下さん。だよね、その気持ちは物凄く分かるよ。
「ふむ・・・・・『アタシの声で死神に告白まがいなことを言われたら死神にどんな
顔で接すればいいのよ』とか?姉上よ」
「秀吉・・・・・屋上から紐無しバンジージャンプをしたいのね?」
「ははは、何を言うか姉上。そんなことしたらワシがぁぁぁぁ!?」
あっ、本当に屋上から放り投げられた。そんな光景を静かに見守っていると、
ハーデスのマントから釣り竿が出て来て吊りをする感じで針を秀吉が落ちた方へ投げ放った。
『・・・・・HIT』
キリキリとリールを巻き上げながら釣り竿を思いっきり振り上げると、
針に引っ掛かった秀吉が屋上に現れた。
「だ、大丈夫秀吉・・・・・?」
「ハーデスが助けてくれなかったらワシは校庭に落ちていたのじゃ」
「つぅーか、よくそれで助けれたな」
「・・・・・奇跡」
受け身も取れなかったから腰を擦る秀吉に僕らは目を丸くする。
本当に放り投げられるとは怖いお姉さんだ。
「さて、食べましょう」
「優子、キミは実の弟を屋上から放り投げて何とも思わないの?」
「秀吉が勝手に落ちただけじゃないの」
自分が屋上から落とした事実をこの姉はなかったことにしようとしている!
『・・・・・演劇の見学に関しては別にいいぞ』
「ほ、本当かの・・・・・?」
『・・・・・今日行っていいか?』
「勿論じゃ」
あっちはあっちで何か決まっているし。まぁいいか。
―――☆☆☆―――
約束通り、ハーデスは演劇部に顔を出した。演劇部は体育館を利用して活動していて
十数人の演劇部員と次の演技について顔を突き出しながら階段を行っている様子を
壁に寄りかかりながら見守っていた。
「・・・・・盗聴器は全て除いた」
『・・・・・約束の物は来週中に用意する』
「・・・・・分かった」
音もなく虚空から現れた土屋康太にそう言えば、再び姿を暗ました。
気を探知すれば、この場から遠ざかる気配が感じる。
『木下君はドラゴンに攫われた姫役に決定!』
『またワシは女役かの・・・・・』
『まあまあ、キミは女役にピッタリだからいいじゃない』
『ワシは男じゃぞ。ここはワシが姫を助ける騎士を任命するべきではなかろうか?』
『キミの全身を見ても騎士より姫役の方がピッタリだと思うがね』
『うふふ、綺麗なドレスを作り甲斐があるわ』
周りから女役を押し付けられる木下秀吉を哀れだと思った。
『ところで・・・・・あそこにいるのは?』
『ああ、ハーデスにワシの部活活動の様子を見にきてもらったのじゃ』
『あれが噂の死神・・・・・なるほど、物凄く雰囲気のある格好ですね』
なにやら話がハーデスの話題になり、演劇部員の一人が近づいてきた。
「ねえ、死神君もこっちに来ない?木下君のお友達みたいだしさ」
『・・・・・見学しにきただけなんだが』
「あれ、スケッチブックで話すなんて変わっているね。まあいいじゃん。
ほら、早く早く」
と、手を掴まれ何故か木下秀吉達の方へ連れられたハーデスを出迎える木下秀吉達。
「うお、近くで見るとマジで死神だ」
「仮面とマントが雰囲気を引き出しているんだねぇー」
「これに鎌を持たせたら完璧に死神・・・・・って、マントから鎌を取り出した!?」
「あはは!この子、面白い!ウェブにアップする為に写真をとろっと!」
あっという間に囲まれ、触られたり写真を取られたりと賑やかとなった。
木下秀吉は自慢げに語る。
「ハーデスは皆も知っての通り強く、
しかも今日知ったのじゃがワシの次に演技が巧いんじゃ」
「木下君並みに巧いんなら演劇部に入っても問題ないよね」
「ただ、その格好で演劇はできないがな」
『・・・・・入る気はない』
「スケッチブックで意思表示なんて個性的で変わっているね。死神の格好なのに」
『・・・・・「うるさいぞ貴様」』
「西村先生の声だ!すげぇっ!」
「もう、キャラ的にも面白い!」
畏怖の念を抱かれるどころか面白がられている事実に仮面の中で目をパチクリする
ハーデスだった。
「なあ、その仮面を取ってもらえないか?物凄く気になるからよ」
「そうね、アタシも気になるわ」
『・・・・・「なにいきなり言うんだいガキ共、
そんなことできるわけないじゃないのさ」』
「ぶふぅっ!学園長の声・・・・・!確かに木下の次に声の真似が巧そうだな」
「って、アンタもガキでしょうが!」
関西弁の漫才よろしく、ハリセンで突っ込まれたハーデスであった。
『・・・・・で、どんな演劇をするんだ?』
「んと、とある王国のお姫様は許されない恋をしてしまったの。
相手は王国の中で一番強くて格好良い白い龍騎士。でも、王国は一匹の邪悪な龍に
襲われ、姫様が龍に攫われちゃったの。王国が崩壊し、お姫様が攫われた。
だけと白い龍騎士はたった一人で邪悪な龍に攫われたお姫様を助けに向かって、
邪悪な龍と激しい死闘の末お姫様を救って・・・・・死んじゃったのぉぉっ!?」
「最後のストーリを変えるな」
部員の一人の頭にチョップをかます別の部員。
「まあ、最後は王道的なハッピーエンドで終わるんだよ。姫を助けたのは良いけど
帰る王国は滅んで、姫と騎士は王国から去り、許されない恋を実らせ幸せになったわけだ」
『・・・・・ストーリそのものが王道的な展開が多いな』
「それが演技ってもんだろ?んで、姫様役は木下に任せたのいいが、
騎士の方は誰が良いかな」
「これは当然男子の役目でしょ」
「部長さんがやりますか?」
部員の一人に言われた部長という男子生徒は首を横に振った。
「俺は台本作りをしないといけないんだ。男勝りな女子に任せる」
「ほう・・・・・喧嘩売っているんだな?ちょいっと表に出ろや」
「ま、待て冗談だぎゃあああっ!」
『・・・・・いつもこんな感じか?』
「賑やかじゃろ?・・・・・のう、お主が白騎士を務めてみる気は無いかの?」
「「「「「「はい?」」」」」
部員達が呆けた声を漏らした。そんな部員達を余所に木下秀吉はハーデスに言い続ける。
「先ほどムッツリーニがおったじゃろう。あれは自分の素顔を撮らせない為じゃろ?
ならば、今お主の素顔を見れるのはこの場にいる演劇部のみじゃ」
「え・・・・・なに?木下君は死神君の素顔を見たことがあるの?」
「あるのじゃ。ハーデスに口止めされておるから言えなかったが、格好良いぞ。
部長よりもな」
「木下、俺に喧嘩売ってんだな?表に出ろやぁぁああああいっ!?」
「木下君に手を出そうとするなこのケダモノ」
「誰がケダモノだ!俺は純粋に女が好きだ!」
「ロリ、ですけどね」
―――ここに井上準の同志がいたとハーデスは一歩下がった。
その一歩は体育館の壁にまで下がった。
『うおぉーい!?そこまでドン引きするやつがあるかぁー!?』
『あーあー、警戒しちゃっているよ。部長の息を吸ったら自分までロリコンになると
思ってんじゃない?』
『ロリコンの何が悪い!同志井上準に小さい女の子、幼女の神秘を聞かせてもらった
俺は目を覚ましたんだ!愛する女は熟しきった身体の女より、
まだ未成熟な身体の幼女を熟成する前にだな・・・・・』
『あー、誰か。精神病院か警察に連絡してくんない?
部長の頭がまたおかしくなったからさー』
演劇部の部長の扱いが慣れた感じがしてしょうがない上にこの個性的なメンバーが
演劇部だとは・・・・・。まともな生徒はこの学園にいないようだと後ほど
ハーデスは語った。
「あー、話を戻すぞ」
咳を一つ。部長がハーデスを見据える。木下秀吉の背に隠れているハーデスを。
「お前、いい度胸してるよな。あからさまな態度で寧ろ清々しいぞ」
「部長に尊敬も敬う必要もないかと。寧ろパシリの扱いがお似合いです」
「「「「「うんうん」」」」」
「お前らなぁっ・・・・・!」
肩をガクリと落とす。とても疲れた表情だ。
「たくっ、死神が来た途端に俺が疲れるってどういうことだよ」
「虐め甲斐がありますね」
「お前は毒舌が増えたよな」
「なんででしょう?こう、何かが付けたされたからでしょうか?」
可愛く小首を傾げる背の低いが出ているところは思いっきり出ていて、
引っ込んでいるところは引っ込んでいる一人の部員の話を聞いた部長は
体育館の出入り口に差してハーデスに促した。
「・・・・・よし、死神。回れ右して家まで進め」
「それは思いっきり帰れって言ってますよねロリコン部長」
「誰がロリコン部長だ!いや・・・・・ある意味その呼び方は称えられているか?」
「称えていませんしキモいだけです。あのSクラスの井上先輩同様にロリコンという
概念と共にこの世から消えてください変ロリ部」
「俺が全否定されている・・・・・っ!?というか最後の呼び方は絶対に
変態ロリコン部長の省略だろう!」
「違いますよ変人ロリータ部長ですよ」
「対して変わんねぇっー!」
部長と後輩がギャーギャーと騒ぎ出す。
「あの子、いつも以上に毒舌だね」
「うんうん、死神がいるからじゃない?これはこれで面白いや」
『・・・・・話が進まない。帰っていい?』
「すまぬ、もう少しだけいてほしい。きっと収まれば部活が始まるのじゃ」
~~~しばらくおまちください~~~
「はぁ・・・はぁ・・・」
「何はぁはぁ言ってんですか?キモいですよ」
「お前が毒舌過ぎて舌の味覚がおかしくなったんじゃねぇのかよ?」
「失礼な。私の舌は未だ異性の舌と絡めたことがないほど綺麗で清潔な舌ですよ」
「・・・・・彼氏いない歴=歳に処女か」
「そっくりそのままか返してやりますよ童貞部長w」
「・・・・・こいつ、退部させようかなぁ・・・・・」
深い溜息を吐いたところで辺りを見渡す。
「む、言い合いは終わったのかの?」
「と言っても、時間が時間ですがね」
「今日は一段と長かったな」
『・・・・・』
体育館のど真ん中でテーブルとお茶とミカンを用意して寛いでいたハーデス達がいた。
「ああ、悪いな。この毒舌ロリババアがどうしても話をしたいって言いだすもんで」
「なに言ってんですが。ロリ童貞でミジンコすら愛して止まないと豪快に言う部長が
言い寄って来ただけじゃないですか」
ガチャッ!
『・・・・・いい加減に部活活動する気、ない?』
二丁のガドリングガンを部長と後輩に突き付けたハーデス。そのガドリングガンの
威圧とハーデスから伝わるオーラに二人は冷や汗を流した。
ここでまた言い合いなど始めたら、ガドリングガンの砲身に火が噴くのは確実だ。
「お、おうすまん。早速始めようじゃないか」
「そ、そうですね・・・・・さっさと準備しましょうか」
『・・・・・で、秀吉。本気で言っているのか?』
部長と後輩の言葉でガドリングガンをマントの中に仕舞い木下秀吉に問うた。
「うむ、この場においてハーデスしか適任者はおらん」
『・・・・・分かった。お前が言うならやってやろう』
「ありがとうなのじゃ。それじゃ、衣装のサイズ合わせもせんとな。
仮面とマントを脱いでくれ」
ハーデスは立ち上がり最初にマントを外した。
黒一色の上下の服装に両腕は指先まで包帯だらけ。
続いて髑髏の仮面を外すと仮面に閉じ込められていた真紅の髪が解放された。
赤より鮮やかな赤い髪はスルリと流れ出るように腰まで伸び、
垂直のスリット状・・・・・猛禽類のような金色の双眸が木下秀吉達の瞳に映る。
「う、うわ・・・・・」
「なに・・・・・その顔・・・・・滅茶苦茶恰好いいじゃん・・・・・」
「髪・・・・・綺麗」
「瞳も獣のようで何だか格好良い・・・・・」
「「「「というか、仮面に隠すなんて勿体ない!」」」」
女子部員達が異口同音で抗議する。そんな女子達に溜息を吐いてこう告げる。
「言っておくけど、俺のことを他の奴らに言うなよ。言ったら・・・・・」
「言ったら?」
ニッコリとハーデスは笑みを浮かべた。ただし目は笑っていない。
「一人残らず、引っ越しをせざるを得ないぐらい家にクサヤの煙を流しこんでやるよ」
『『『地味な嫌がらせだが効果は抜群だ!』』』