「死神ぃっ!此方と日本史で勝負するのじゃ!綾小路先生、
模擬試召戦争を許可するのじゃ!」
「承認するでおじゃる」
『・・・・・懲りない奴』
日本史
Sクラス 不死川心 721点 VS 1000点 死神・ハーデス Fクラス
「な、何じゃその点数はぁっ!?」
『・・・・・俺の実力。じゃあ、西村先生とマンツーマンの勉強をして来い』
相手を倒すその仕草は作業的で、ハーデスの召喚獣が凄まじい速度で
不死川心の召喚獣の真後ろに移動したと思えば、相手の召喚獣の首が刎ねられ絶命、
点数が0点になった。
「また不死川か。毎度毎度鬼の補習をするほど俺は暇ではないのだぞ」
「ひぃぃっ!鬼の補習は嫌なのじゃぁっ!これは何かの間違いなのじゃ!」
「死神の召喚獣に倒された貴様は戦死者。間違いも何もない。
こい!今日は今まで以上にみっちりと補習をしてやる!」
不死川心を肩に担ぐ西村宗一。その様子をあからさまに溜息を吐いて踵を返した。
「待たれよ西村先生」
「む、何か?」
「死神・ハーデスの点数は正式な点数でおじゃるか?」
日本史の教諭、綾小路麻呂が訝しな視線をハーデスに送った。
その言葉に足を止め綾小路麻呂に振り向くハーデス。
『・・・・・俺がカンニングをしたと?』
「そうですぞ。死神が点数の補充を受ける時は高橋先生かこの私の目の前でして
もらっているのです。不正な好意愚か、カンニングするような生徒ではない」
「じゃがの。こうもあっさりと教師を超える点数を叩きだすのはマロが知る限りSクラスだけなのじゃ。Fクラスの生徒がそのような点数を叩きだすほど日本史のテストは簡単ではないのでおじゃる」
「君麻呂先生、それは生徒に対する失礼な発言ですぞ。この学校は主に結果が全てで
決まる。死神の各科目の点数が1000点なのは死神が勉強をした結果だからです。
それを教師が疑うなど問題ですが?」
「高橋先生と西村先生は死神・ハーデスと同じ蒼天から来た者同士・・・・・この者の
点数の付けた方が甘いのではないじゃろうか?」
「・・・・・なんですと?」
西村宗一から感じる雰囲気が変わった。
「君麻呂先生。確かに死神は私と高橋先生、他の数名の教師と同じ蒼天の者。
身内に関して蒼天は甘いと世界に認識されていますが、死神が私達の生徒である以上、
教師と生徒として厳しく指導している。あまり私達を軽視しないでもらいたいですな」
「これは失礼した。じゃがの、あまり強過ぎると生徒の向上力が無くなるのも
事実だとは思わぬかの?」
「それについては死神が1点で試召戦争をする時もあります。
それは誰でも自分を倒せる点数だからこそ相手も果敢に挑んでこれるのです」
『・・・・・降りかかる火の粉は払うつもりで不死川に対しての自衛。
あまりしつこく模擬試召戦争をしてくるならこっちも考えがあっての点数。
俺を疑うなら不死川をどうにかしてほしい。ハッキリ言って迷惑だ』
「な、なんじゃと・・・・・っ!」
『・・・・・それと』
ハーデスは徐に不死川心の頭を掴んで、カツラを外した。
『・・・・・誰がカツラをして良いと言った?二学期が始まるまで丸坊主だと俺は
お前らに告げたはずだ』
「か、返すのじゃ!それがないと此方は・・・・・!」
『・・・・・西村先生』
「没収だな」
あっさりとカツラは西村宗一の懐に仕舞われた。
「死神、朝の
『・・・・・イエッサーです』
「待つのじゃ西村先生!まだマロの話は―――!」
「君麻呂先生、自分の担当クラスに戻った方がいいですぞ。
生徒を指導し導かせる我々が待たせては教師として申し訳ないのですからな」
日本史のフィールドから西村宗一とハーデスが自分が行くべき場所へと背を向けて
離れる。
「おのれ・・・・・口惜しやぁ・・・・・っ!馬の骨も分からぬ国の者に
三大名家の者が、高貴な者が倒されるなどあってはならないのに・・・・・っ!
憎らしいや!あぁ憎らしや死神・ハーデス!」
―――2年F組―――
「ハーデス。キミの周りに置かれている本の数はなんなの?」
『・・・・・日本史に関する資料と記録』
「こ、こんなに日本史の本があるのね・・・・・アタシ、頭が痛くなりそう」
「良くこんな面倒くさい本を読むな」
「もう一人、幸せそうな人がいるけどね」
ハーデスの背中に背中を預けて読書している人物、読書が趣味だと自己紹介した
史文恭さん。二人の周りは本で囲まれていて、二人の空間はできていた。
「私も読書は嫌いじゃないが・・・・・」
「あの空間に入れない・・・・・っ」
口惜しいと極道さんとエスデスさんがハーデスと死文恭さんを見る。
その時、梁山泊から転入してきた林冲さん達が話しかけてきた。
「史文恭って死神の家にある図書室を自分の部屋にしたいって言いだす程だったよ」
「え、ハーデスの家に図書室なんてあったんだ?」
「あった。それも物凄い数の本が」
「死神の図書室を見た史文恭の反応・・・・・まだ覚えているよ」
「歓喜のあまり踊り出す勢いだったわね」
そ、そうなんだ・・・・・。ある意味彼女はハーデスの家に住めれて幸せなのかも
しれない。自分の好きな趣味と同じ趣味を持つ人と一緒に暮らせるし、
本もたくさんある。これほど好都合なことは無いかもしれない。
「おまけにトレーニングルームは凄かったなぁー」
「プールも凄かった」
「私は流れるプールでずっとのんびりしていたわ。最高ね、死神の家」
・・・・・ハーデスの家。もう一度行ってみたくなったや。
「林冲達は日本語とか読めれるか?」
「マスターとまではいかないが、読み書きはできるぞ」
「さんざん教え込まれたからな。否が応でも覚えたって」
「だねー」
「私は天才だからリン達より早く覚えたわ」
島田さんよりは日本語を理解しているってことか。雄二は顎に手をやって満足気に
頷いた。
「なるほど、それじゃある程度勉強はできるってことだな」
「「「「「だけど、古典は大の苦手」」」」」
清々しいねキミ達。
「わっち、日本語の読み書きができても勉強なんて大っきらいだし」
「傭兵の私達に勉学しろなんて有り得ないって」
「傭兵だから、勉学より武術を主にしていた」
「私はそれなり・・・・・」
「史進より上でリンの下・・・・・かな」
雄二は頭を抱えた。
「ダメだこいつら・・・・・なんとかしないと」
うん、口しないけど―――この人達役立たずだ。点数が低くても召喚獣の操作が
ハーデス並みに慣れているなら話は別だけど彼女達はきっと
僕と同じぐらいバカかもしれないや。
「おいハーデス。こいつらを家でも何でもいいから勉強させろ。
試召戦争時に使い物にならないぞ」
『・・・・・そうするつもりだ。期末試験も近いし、
赤点を二つ以上の生徒は夏休みの殆どは補習で潰れる』
ハーデスの書かれたスケッチブックを読んで、林冲さん達は顔を青ざめた。
「え、マジで?しかも二つ以上?」
「面倒・・・・・本国に帰りたい」
「うわー、私ら・・・・・詰み?」
「こ、これから勉強すればなんとかなる・・・・・」
「家主の死神に頼もう。それしかない」
いきなりの大ピンチな梁山泊。武術は凄いんだろうけど、成績は僕達Fクラスと
変わらないようだ。でも、今まで話しに参加していない彼女はどうだろうか?
「・・・・・史文恭さんって勉強、できるほう?」
「ん・・・・・?ああ、勉強ね」
んー、と目を天井に向けたままポツリと呟いた。
「―――多分、できないんじゃないか?読書は好きだけど」
「ハーデス、期末試験も近いから今日の放課後、
お前の家で泊まり込みの勉強会をしよう!この転入生共、全然アテにすらならない!」
雄二がハーデスの両肩を掴んで必死に提案した。
「それはそうと雄二」
「なんだ?」
「・・・・・この現状、なんだろうね」
Fクラスの主力メンバー、梁山泊の転入生と史文恭さんに一部の女子と男子を除いた
人数しかいない。誰がいないのかと言えば須川君達FFF団と挙げれる。
だからところどころ席が空いているんだ。
「須川君達が学校に来ていないって何だか不穏な感じがしてしょうがないんだけど」
「・・・・・集団欠席は初めて」
「それに
「なにか遭ったのじゃろうか?」
静かだからいいんだけど、何だか心配だ。
ピンポンパポーン 《2年F組の死神・ハーデス君。至急、学園長室にお越しください。
繰り返します、2年F組の死神・ハーデス君。至急、学園長室に―――》
校内放送が流れた。―――ハーデスが学園長室に?どうして、ハーデスが何かしたの?
「おい、お前が呼ばれる理由はなんだよ?」
『・・・・・俺が知りたいところだ。行ってくる』
立ち上がって、教室からいなくなった。顔を突き合いながらハーデスのことを話題にする。
「ハーデス、どうしたんだろ?」
「どうせ、試験召喚システムのことでババアが相談したいが為にわざわざ校内放送でもしたんじゃないか?」
「またシステムの故障とかの?」
「・・・・・ありえる」
「そういうことなら前回もそんなことがあったしね」
「はい、あの時は大変でしたね」
うん、ハーデスの身に本当大変なことが起きたよ。
同時に無茶させてはいけないってことも。僕達が頑張らないとフィードバックで
傷を負っちゃうハーデスを見ることになるし罪悪感と悔いが感じる。
―――学園長室―――
「・・・・・俺が、後輩に暴力?」
「そうさ、一年生を殴る蹴るの暴行をしたって報告が届いてね」
「それ何時だ?」
「昨日の夕方ぐらいかね。陸上部の部活中に死神の格好した奴が突然暴力を振るった
と体育の先生から訊いたんだよ。が、お前さん自身はやった覚えはないだろうがね」
「当たり前だ。どうして俺が部活中にそんなことをしないといけない」
「それと、これはまだ公にされていないが、お前さんとこのクラスの生徒の大勢が
夜の警備員に裏校舎で発見されたよ。腕や足を骨折した状態でね」
「・・・・・」
「そいつらから聞けば、覆面していて誰だか分からないと言い調査は困難中。
こんなこと世間に知らされたら学校は竹中教頭が狙っていたような事態になる」
「・・・・・俺を陥れようとする奴がこの学校にいるってわけか」
「心当たりはあるかい?」
「さあ、だけどそんなことしようとする奴らがいる可能性は否定できない。
俺は色々と無自覚に恨みを買ってしまったし」
「そうかい・・・・・さて、本題に入ろうか。死神・ハーデス。
お前さんを1週間の停学処分に下すよ」
「・・・・・理由は?」
「お前さんが謹慎処分中に偽物の死神が現ればお前の濡れ衣は晴れる。
だが、お前さんにも動いてもらうよ。後ほど伝える。すまないね」
「・・・・・了解」
『通知処分』
『2年F組 死神・ハーデス 以下の者を1週間の停学処分とする
神月学園学園長 藤堂カヲル』
『『『『『なんでこうなったんだっ!?』』』』』
「よし・・・・・次は仲間も声を掛けてやろう」
「そうすれば、主犯は誰なのか分からにってことか」
「それなら俺達の保身も・・・・・」
「だが、俺達を散々コケにしたFクラスにもなにかしてやりたいな。そこんとこどうするよ?」
「目には目を、歯には歯をだ。奴らをどん底に陥れてやるよ」
「・・・・・情報収集、完了」
―――☆☆☆―――
「なんでじゃー!」
『・・・・・停学処分を受けて早々にお前ら来たのか』
「当たり前じゃ!どうしてお主が一週間の停学処分を受けなければならぬ!?
お主が何もしておらんというのに!」
「・・・・・死神は悪いことをしてない・・・・・っ!」
「そうだよ!学園長に抗議しても『決まったもんを変えるつもりはないさね』って
一点張りで死神君が処分を受けた理由を教えてくれなかったよ!」
「本当・・・・・アンタがなにをしたって証拠も何もないのに、
いきなり学校に来て早々停学処分ですって?流石にアタシも頭にキタわよ・・・・・っ」
一週間の停学処分を受けたハーデスの一報は瞬く間に学園中に広がった。処分を受け、
家に籠っているハーデスの間に、何度も吉井明久達は抗議と理由を藤堂カヲルに
問い詰めたが同じ台詞で一点張り。納得のいく理由を聞けず最終的に追い出された上に
学校が終わるや否や、ハーデスと交流がある面々は親不孝通りの立ち入り禁止区域に
あるハーデスの家に赴き、いまに至る。
「ハーデス、今度はお主も学園長に抗議をしに行こう!」
『・・・・・いや、俺は停学処分を心から受けるつもりだ』
木下秀吉の促しにハーデスは否定し、いまの状況に肯定し、
心配をしている面々の目が信じられないと丸くなった。
「ちょ、ハーデスが何もしていないってのに文句の一つも言わないなんて
どういう神経なのさ!?」
「そうだな。懐が大きいお前でもこの扱いは理不尽だと思わないはずがないだろう」
「死神・・・・・どうして?何か遭ったのか?」
全員の瞳に当惑と怒り、悲しみが籠っていた。そんな面々に気付かないハーデスは鈍くない。
『・・・・・Fクラスの半分ぐらい学校に来なかった理由は病院送りをされたからだ』
「え・・・・・須川君達、怪我しちゃっているの?」
「大方。お前にラブレターを送った女子をめぐって仲間れでも起こしたんだろ?」
坂本雄二はクラスメートの性格と行動力を把握している。呆れながら溜息を吐いている
とハーデスが書くスケッチブックにとんでもない事実が書かれていた。
『・・・・・いや、誰かにやられたらしい。密かに調査をしているらしいが
手掛かりは一切ない』
「まさか、クラスメートを病院送りにしたってことをハーデスがしたってことになっておるのか?」
『・・・・・それと昨日の夕方、俺が陸上部の一年に暴力を振るったことになっている』
「それ、嘘よね?」
『・・・・・俺がやった事実であるならば嘘だ。
が、俺の姿をした奴が陸上部の部員に暴力をしたってことは事実だ』
ハーデス以外の面々は目を大きく見開き、言葉を失った。ハーデスに扮した何者かが
そんなことすれば必然的に目撃者の証言でハーデスの悪事をしたことを伝えられる。
死神の格好をしている者は神月学園においてただ一人、黒いマントと髑髏の仮面で
正体を隠している為、誰がやったのかも分からず事件は解決していない。
「・・・・・ハーデスを陥れる為の工作かもしれねぇな」
「ああ、俺もその考えだ坂本」
「ハーデスを陥れるって・・・・・」
信じられない面持ちの吉井明久に坂本雄二と直江大和は説明口調で言い続ける。
「それしか考えれねぇんだよ。というか、ハーデスに恨んでいる奴らは多すぎる。
Sクラス、川神先輩のファンクラブとかな」
「だが―――そんな事をする動機を持つ奴はそいつらしかいないってことだ。
後は直接現場で抑えて捕まえることができればハーデスの停学処分は
帳消しになるが・・・・・相手はそう簡単に尻尾を掴ませないだろう」
「ならば、ワシらはただこのまま黙っておれというのか・・・・・?
ワシはそんなことできんぞ」
瞳に怒りの炎が燃える木下秀吉の頭に包帯だらけの手が置かれた。
『・・・・・お前らは何もするな』
「なにもって・・・・・ハーデス」
『・・・・・これは俺個人じゃなく、蒼天に対する宣戦布告と思っている。
だからこそ、俺が片付けないと意味がない』
「死神、アンタ・・・・・一人で片付けようと思っていないでしょうね?」
ズイとハーデスの赤い仮面を上目遣いで睨む木下優子。
「アンタは確かに何でもできて強いわ。だけど、一人で何でもできると思っているの
ならそれは思い上がり、勘違いよ」
非難の言葉が木下優子から発せられ、ハーデスはただ耳を傾ける。
「死神、アンタにはたくさんの借りと恩がある。Aクラスとして、
一人の女の木下優子としてね。だから、少しでも借りと恩を返させなさいよ。
これじゃ、何時まで経っても返せれないじゃないのよ」
「優子の言う通りだね。ボク達が必ず死神君を陥れる犯人を見つけるよ」
「・・・・・私も、絶対に捕まえる・・・・・!」
三人の少女の真摯な言葉にハーデスは仮面の中で微笑む。
『・・・・・いや、その必要はない』
「なっ・・・・・!」
「ハーデス、どうしてそこまで一人で(ドスッ!)ぃっ!?」
『・・・・・最後まで俺の文字を見ろ』
吉井明久の頭にチョップを食らわす。黙らせればスケッチビックにこう書いた。
『・・・・・お前らが必死に犯人を探そうとすれば犯人は自分達を探していると
気付いて証拠を隠滅する可能性がある。お前らはただいつも通り学校生活を
送ってくれれば十分俺の役に立つ』
「おい、お前の偽物がまた何かする可能性があるっていうのか?」
『・・・・・これで終わりじゃないと俺は思っている。だからこそ、
停学処分を受けた俺は一人だけ隠密に犯人を捜し、捕まえる必要があるんだ』
「俺達が行動をすれば・・・・・良い迷惑ってことかよ」
吉井明久達が勝手に動かれるとハーデスにとって足枷になるという事実を突き付けられ
苦虫を噛み潰したような顔になる直江大和。
『・・・・・停学処分を受けた理由は、世間にこの事を知られる前に片づけておきたい
という学園長の願いに俺は汲み取り処罰を受けても行動をする。それが事の顛末だ』
「ちっ、そう言う理由だったんかよ」
忌々しげに舌打ちする坂本雄二。事情が事情で学園長とハーデスの間でかわされた
話に納得がいき、犯人を誘き出す為、ハーデスを学校から遠ざけまた犯人が出現した
際に捕まえるという計画を理解した。
「ワシらには・・・・・何もできんというのか?」
悲しげに木下秀吉は黒いマントを握った。
「ハーデスの役に立てると思っておったのに、ワシらの行動が邪魔を
するなんて・・・・・ワシは、友達の一人すら助けることができんのか・・・・・」
『・・・・・秀吉』
「ワシ・・・・・男なのにどうして、どうしてこんなにも弱いんじゃ・・・・・」
何時しか、身体を震わせ涙を流した。マントを握っていた手は強くなり、
悔しいという念が伝わってくる。
『・・・・・誰もお前が弱いとは思っていない』
「・・・・・ハーデス・・・・・?」
生の声でハーデスは語った。
『秀吉・・・・・お前にはお前しかできないことがある。力自慢の島津岳人や戦略と
知略が富んだ直江大和と坂本雄二、成績優秀で召喚獣の操作が巧い他の奴らが
できないことをお前はできる。お前が状況に応じてそれを発揮すればいいんだ』
「ワシにしかできないこと・・・・・」
復唱し、己しかできないことを瞬時で理解し、
ハーデスがそれをどううまく活用すればハーデスの役に立つか必死に考える。
『・・・・・直江大和』
「なんだ」
『・・・・・川神百代の様子はどうだ?』
唐突な質問に一瞬だけ目を丸くしたが直ぐに答えた。
「学校に通えるぐらいまで既に回復している」
『・・・・・なら、俺の偽物と戦わせるか。いい発散になるだろう』
「おい、モモ先輩に偽物を捕まえさせるって?どうやってだよ」
『・・・・・あいつだけじゃない、お前らにも協力してもらうぞ』
は・・・・?自分達が動けばただの邪魔になるんじゃないのかと訝しむ面々。
『・・・・・少なくとも俺が準備をし終えて、
お前らは俺の言う通りに行動を取ってもらう』
「それってどんな?」
『・・・・・まだ準備もしていない、後日伝える。今日のところは帰ってくれ』
そう言われハーデスの家に住んでいる林冲達以外の吉井明久達は納得していないまま
帰った。ただ一人だけ居残っている土屋康太を残して。
『・・・・・なぜ帰らない?』
「・・・・・ハーデス、これを・・・・・」
―――☆☆☆―――
―――学園長室―――
「学園長、昨日もまた・・・・・」
「ああ、分かってるさね。死神が今度は水泳部の女子高室を堂々と覗いたんだって?」
「それだけじゃなく、夜間に死神の格好をした者が窓ガラスを割った
報告も・・・・・」
「まったく、どうせ逃げられたんだろう?警備の警戒が緩すぎる面に痛みいるよ」
「停学処分に腹が立っての行動じゃないかと教師達の中でも話が・・・・・」
「あの仮面の中に隠れている素顔を見りゃ、そんなことするワケがないって誰もが
思うのにねぇ」
「ですが、彼の正体は極一部の者しか知らされていません。
それにこのままでは・・・・・」
「あいつを停学処分にして早三日目・・・・・さて、そろそろ動いてくれることを
信じておるよ」
「・・・・・・任務、開始」
・・・・・俺、土屋康太は行動を開始する。まずはEクラス。
「・・・・・失礼する」
「誰、って・・・・・あんたはFクラスの土屋じゃない」
「・・・・・協力してほしい」
「協力ってなに?またSクラスを倒すって?」
・・・・・・面倒なことはもう嫌だと顔に隠さないEクラスの代表。・・・・・だが、
これは互いの為にもなる話だ。
「・・・・・死神を見掛けたらこれを当ててくれ」
「死神?確か、一週間の停学処分を受けたんじゃないの?
最近何だか悪さをしているようだけどさ」
「・・・・・詳しくは言えない。だが、奴がお前にも襲わない可能性は無い。
・・・・・自分の身を守りたいならこれを投げて撃退するべき。
・・・・・クラス全員で」
・・・・・このクラスの人数分のスイッチ付きのカプセルが入った籠を教卓の上に置いた。
「これ、なに?」
「・・・・・このカプセルのスイッチを押せば、この通り」
・・・・・スイッチを押すと小規模な煙が発生してカラフルなボールが出てきた。
「それを死神に当てればいいのね?」
「・・・・・お前達の誰かの前に現れたら必ず当ててくれ。死神の身体のどこかでも
当てたら、クラス全員に賞金十万円」
『のったぁっー!』
・・・・・乗せやすいクラス。・・・・・だが、中林は訝しむ視線を送られてくる。
「何が目的?悪さをしている死神にこれを当てて賞金まで出すなんて」
「・・・・・理由は言えない。・・・・・こちらはお願いしかできない。
・・・・・頼む」
・・・・・頭を下げれば、中林は顎に手をやって考える仕草をする。
「・・・・・まあ、Fクラスには召喚獣の操作を慣れさせてもらってSクラスの
教室を堪能させてもらったお礼があるわね。いいわ、ただし今回だけよ協力するのは」
「・・・・・・感謝する。・・・・・それとこの事は誰にも言わないこと。
・・・・・言ったら賞金は無し」
『絶対に喋らない!約束しよう!』
・・・・・Eクラス攻略、次はDクラス。・・・・・・ハーデスから購入した
透明マントを羽織り、姿を隠してい新校舎の端っこ存在する教室を素早く入り込み、
Dクラス代表の平賀の前に姿を現す。
「・・・・・平賀」
「うおっ!?土屋何時の間に!」
「・・・・・Fクラスからお願いがある」
「坂本からのお願いか?話によるけど」
「・・・・・これを―――」
・・・・・Eクラスのように説明をし、清水美春には無償で島田の等身大をプレゼント。
・・・・・Dクラスの協力を得ることができた。
『Bクラスの根本には協力を要請しない。アイツは卑怯な男で裏切る可能性は大いにある』
・・・・・雄二の言うことは尤もだ。・・・・・結果、最初から協力をしてくれる
Aクラス以外の三クラスに協力を求めないといけない。―――残りはCクラス。
「・・・・・失礼」
「Fクラスの・・・・・土屋君ね?」
「・・・・・Fクラスから頼みがある」
「Sクラス戦はもう嫌よ?」
「・・・・・それはもうしない。・・・・・ただ、これをハーデスに当てて
欲しいだけだ」
・・・・・三度目の説明。Cクラス代表の小山以外は賞金の額に協力は惜しまないと言うが。
「お断りよ」
「・・・・・何故だ?」
「私はお金よりも欲しいものがあるの」
・・・・・手強い。・・・・・最近、観察処分者になった根本と別れ、
縁を切った話は聞いたがこの女の望みはなんだ?
「・・・・・条件は?」
「死神君の情報、知っている限りの情報を私に提供してくれればそれでいいわ」
・・・・・ハーデスの情報・・・・・?
「・・・・・内容は?」
「全て。趣味や好物、好みのタイプとかも死神君の情報を私は知りたいの」
・・・・・困った。・・・・・男の情報なぞ俺にとっては不必要なのに・・・・・・。
・・・・・だが、友の為だ。
「・・・・・できる限りの情報を集めよう」
「交渉成立、楽しみにしているわよ。一週間以内にね」
・・・・・さりげなく期限付きを言うか。・・・・・抜け目のない。
しかし、これで問題も無くE・D・Cクラスから協力を得れた。
・・・・・この事を透明マントで姿を隠したままFクラスへ報告。
「・・・・・戻った」
「どうだった?」
「・・・・・S・Bクラス以外のクラスが協力してくれる」
「よし、これで作戦の一段階は整った。次の作戦に移行する」
・・・・・犯人はどのクラスなのかは分かった。・・・・・だが、決定的な証拠はない。
「(・・・・・あの時、俺が奴らを倒していればハーデスは停学処分を受けなかっただろう)」
・・・・・今更こんなことを考えても遅い。・・・・・それでも今日中に犯人を
捕まえて鉄人に突き出してやる。
―――☆☆☆―――
「改めて聞くが、死神の偽物をぶっ倒せばいいんだな?」
「ああ、遠慮なく。学校を騒がしている悪い奴らだから捕まえてほしいんだ」
「んで、これを投げて当てれば十万円はもらえるのか・・・・・?」
「どうしたの?お金が大好きな姉さんが遠慮気味で珍しいよ」
「・・・・・いや、あの後のことだし」
ああ、と俺は納得した。姉さん、死神を復讐し隊会から提示された十万の賞金に目が
眩んでハーデスと勝負したけど逆に怖い思いをしたんだよな。
「もう、あんなのこりごりなんだよお姉さんは・・・・・はぁ・・・・・」
「大丈夫、本物じゃなくて偽物だから怖がるような要素は何一つもないって」
「あの一件以来、可愛い女の子が構ってもらえなくなってお姉さんはつまらないんだよ」
「多分、今回の一件で可愛い子が言い寄ってくるんじゃないか?」
「ん?どういうことだ」
不思議そうに姉さんが小首を傾げた。だって相手は死神だし。
「相手は偽物とはいえ外見は死神だし、学校を騒がせている奴らを姉さんが叩きのめ
した話が学校中に伝わると姉さんは瞬く間に人気者になるに違いないじゃん」
「・・・・・そうか、そう言う認識もされるのか私は」
「姉さんにとって良いこと尽くめだと思うよ。
しかもこれ、ハーデスから直々のお願いだからハーデスに借りを作れるよ?」
教えると姉さんは深い笑みを浮かべた。うわ、この笑み・・・・・碌でもないぞ。
「ふふふ・・・・・そうか、死神が私に借りを作るのか・・・・・そいつは凄く楽しいなぁ♪」
・・・・・すまん、ハーデス。骨ぐらいは拾うからな。