バカと真剣とドラゴン―――完結―――   作:ダーク・シリウス

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・・・・・第四問

「大和、大和。Aクラスに勝てると良いね」

 

「ん・・・・・できればそうだと思いたいな」

 

俺達は昨日、Aクラスに宣戦布告され、

早くもAクラスと試召戦争をすることになってしまった。

 

「え?どうして?」

 

「人は小さいミスを必ずする。だから、坂本自身もミスる可能性がある」

 

仮にあいつが敗北した場合、どうしてくれようか・・・・・。

 

「しっかし、なんで俺達に宣戦布告済んだ?」

 

「Aクラスが勝っても何のメリットも無いよね?」

 

「そうでもないよ」

 

「京?」

 

「戦争で負けたクラスは三ヶ月間、試召戦争を仕掛けるのは禁止される」

 

となると、Aクラスはこれ以上授業を潰されたくないが為に

宣戦布告をしたってことだろうな。京の発言にそう予想していると

 

「おーい、大和。Aクラスに行くからお前も来い」

 

教室で作戦会議を開いていた坂本に呼ばれ、

俺は腰を上げて坂本達と一緒について行った。

 

                ―――☆☆☆―――

 

「一騎討ち?」

 

「ああ。Fクラスは試召戦争として、Aクラス代表に一騎討ちを申し込む」

 

恒例の宣戦布告。今回は代表である雄二を筆頭に、僕、姫路さん、

秀吉にムッツリーニ、大和、ハーデスと首脳陣勢揃いでAクラスに来ていた。

ハーデス、キミはどうして背中に大鎌を背負っているのか聞かないよ。

 

「何が狙いなの?」

 

現在雄二と交渉のテーブルについているのは秀吉―――の双子の姉の木下優子さん。

秀吉を女の子にしたそのままの姿で、とても可愛い。

でも、この子を認めると秀吉にも気があるということに・・・・・!

 

「もちろん俺達Fクラスの勝利が狙いだ」

 

木下さんが訝しむのも無理はない。下位クラスに位置する僕らが、

一騎討ちでAクラス代表の霧島さんに挑むこと自体が不自然なのだから。

当然何か裏があると考えるだろう。

 

「面倒な試召戦争を手軽に終わらせることができるのはありがたいけどね、

だからと言ってわざわざリスク犯す必要もないわね」

 

「賢明だな」

 

予想通りの返事。ここからが交渉の本番だ。

 

カキカキカキカキ・・・・・。

 

交渉のテーブルの椅子、雄二の隣に腰を下ろして座っているハーデスが何かを描いている。

ハーデスの存在を見せびらかし、交渉を有利にさせるためなのだろうか?

 

「・・・・・ところで、あなたの隣にいるの誰?」

 

「ああ、冥府からやってきた死神様だ」

 

「・・・・・何しているの?」

 

「そうだな・・・・・おい、ハーデス。何を熱心に書いているんだ?」

 

交渉の話しは一時中断。ハーデスが何を書いているのか

雄二も気になっていたようでハーデスに問うた。

 

『・・・・・』

 

ハーデスは数枚の紙を纏めて雄二に手渡した。その紙を受け取り、雄二は見た途端に噴いた。

 

「お、お前!何書いているんだよ!?」

 

『・・・・・〆切りが迫っているから』

 

「〆切りってお前・・・・・こんなものを書いていたのかよ」

 

・・・・・何か絵本でも書いていたのかな?雄二が持っている紙は木下さんにも渡った。

 

「・・・・・っ!?」

 

すると、木下さんの目が大きく見開き、顔が真っ赤になって身体も震わせた。

ハーデスは木下さんから紙を奪うように取り、再び書き始めた。

何を書いているんだろうか・・・・・。

 

「ハーデス、ここで書いているのが邪魔になっているみたいだから

他のテーブルで書いた方が良いよ?」

 

『・・・・・』

 

僕の言葉にコクリと頷いた。ハーデスは立ち上がって紙と鉛筆、

消しゴムを持って別の場所へ―――ってどうして木下さんは僕を睨むの!?

僕、なにも悪いことをしていないよね!?

 

「なんだ、ハーデスに気でもあるのか?」

 

「じょ、冗談じゃないわよ!誰があんな怪しい奴なんかと!」

 

「冗談だ。さて、一騎討ちをYESかNO・・・・・どっちだ?

終戦直後で弱った弱小クラスに攻め込む卑怯者のAクラスさんよ」

 

雄二の挑発、尋ねに木下さんは目を細めた。

 

「・・・・・今、ここでやる?」

 

売り言葉買い言葉。木下さんが雄二にそう言ったその時だった。

 

「・・・・・待って」

 

「わっ!」

 

「・・・・・雄二の提案を受けてもいい」

 

突然現れた静かな、でも凛とした声。何時の間にか二人の女子生徒が近くに来ていた。

黒い長髪に黒い瞳、物静かな彼女は霧島翔子さん。Aクラス代表だ。

それとそんな霧島さんの後ろにいる霧島さんと同じ顔の女子生徒。一体誰だろう?

でも、2人共全く気配を感じさせないなんて。まるで武道の達人みたいだ。

 

「あれ?代表。いいの?」

 

「・・・・・その代わり、条件がある」

 

「条件?」

 

頷いて、霧島さんは何故かハーデスを一瞥し、雄二に向けて言い放った。

 

「・・・・・負けた方は何でも一つ言う事を聞く」

 

「うーん、そういうことならこうしましょう。勝負内容は五つの内

三つそっちに決めさせてあげる。二つはうちで決めさせてもらうわ」

 

全ては譲ってくれなかったけど、木下さんの妥協案が得られた。

 

「交渉成立だな」

 

「・・・・・勝負はいつ?」

 

「そうだな。明日の十時からでいいか?」

 

「・・・・・わかった」

 

独特の雰囲気を持つ人だな。話し方だけならムッツリーニに似ているし。

 

「よし。交渉は成立だ。一旦教室に戻るぞ」

 

「そうだね、皆にも報告しなくちゃいけないからね」

 

「おい、ハーデス。交渉を終えたから帰るぞー」

 

ハーデスにも声を掛ける。最後まで何か書いていたけど、何だったのかあとで聞こう。

僕らの試召戦争の終結は、すぐそこまで迫っていた。

 

 

                 ―――☆☆☆―――

 

 

「んで、どーすんのさ雄二。あんな約束をして」

 

昼休み、僕達は屋上で作戦会議をしながら茶菓子を飲食。

 

「俺達が勝つから関係ない。向こうが言いなりになる特典が付いたまでだ」

 

「しかし良いのか?あの霧島翔子というものは妙な噂があるのじゃが」

 

「妙な噂?」

 

「成績優秀、才色兼備。あれだけの美人なのに周りは男子がおらん話じゃ」

 

秀吉が知っている噂の話を聞いて俺は不思議に心の中で首を傾げた。

 

「へぇ、モテそうなのにね」

 

「何でも男子には興味が無いらしいのじゃ」

 

「まさか、女子に興味があると?」

 

「・・・・・っ!」

 

ムッツリーニがフィルムの交換をし出して、何かの撮影の準備をし出す。

 

「待つんだムッツリーニ。―――僕も手伝うよ」

 

「・・・・・明久ぁ・・・・・」

 

あれ、大和が頭を抱えているのは何故なんだろう?

 

「坂本。教科を三つ、こっちが選択できるわけだが何にするつもりだ?」

 

「まず一つは当然保健体育。これはムッツリーニに選んでもらう予定だ。

ムッツリーニの最強の武器にして唯一無二の強みだからな」

 

「・・・・・任せろ」

 

寡黙なる正識者(ムッツリーニ)の名は伊達ではないのだっ!

 

「それでもう一つは?」

 

「数学だな。これはBクラス並みの島田に戦わせようと思っている」

 

「任せてね!」

 

・・・・・Bクラス並みの程度じゃ、

Aクラスに勝てないことをこいつは分かってて捨石にするつもりだろう。

 

「それで、最後は?」

 

「最後は姫路に戦ってもらおうかな」

 

「は、はい。任せてください」

 

握った両拳を胸の前に。気合が入っている証拠だね。

 

「で、メンバーは?」

 

「ムッツリーニと姫路は当然として、島田と明久、俺だ」

 

当然のように言う雄二の肩に―――包帯で巻かれた手が叩いた。

 

「ん?」

 

『・・・・・』

 

「どわっ!ハ、ハーデス!?」

 

ここに来るときに見掛けなかったハーデスが雄二を驚かす。

 

『・・・・・俺も一騎打ちに出たい』

 

スケッチブックにそう書いたハーデスを怪訝な面持で雄二は口を開く。

 

「なんだと?お前の点数は1点しかないって聞いたが?」

 

『・・・・・問題ない。操作が慣れていない相手の点数はただの

ヒットポイントでしかない』

 

不敵な物言いをするハーデス。こいつの自信はどこからくるものなのか、

僕には理解できないな。

 

「んじゃ聞くが。お前は勝てるのか?」

 

『・・・・・勝てるのか、じゃない。俺はどんな状況でも勝つんだ』

 

「因みに、苦手科目は?」

 

『・・・・・ない』

 

オールラウンダー。ゲームだと望んだステータスだね。

 

「・・・・・本気になって戦ってくれるんだな?」

 

『・・・・・勝負事には手を抜かないつもりだ』

 

雄二は腕を組んで首を縦に振った。ハーデスの願いを受け入れる?

 

「分かった。お前がそこまで言うならお前を信じてやる。負けたら承知しないからな」

 

『・・・・・代表も負けたら許さない。負けたら―――』

 

「負けたら?」

 

『・・・・・大量のプチプチと大量の腐ったザリガニを代表の家に郵送する』

 

「絶対に俺は勝つから信じろ!だからそれだけは勘弁してくれっ!

家庭が崩壊してしまう!」

 

あの雄二が土下座しそうな勢いで必死に叫んだ。

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

「では、両名共準備は良いですか?」

 

 

Aクラス担任かつ学年主任の高橋先生が立会人を務める。

今日も知的な眼鏡とタイトスカートから伸びる脚にガクトが欲情した眼つきに見られている。

 

「ああ」

 

「・・・・・問題ない」

 

一騎討ちの会場はAクラス。ここは広いし最終決戦の場所としては良い感じだ。

 

「それでは一人目の方、どうぞ」

 

「アタシから行くわ」

 

向こうは木下―――秀吉の姉、木下優子。対するこちらは、

 

「よし、ハーデス。行って来い」

 

『・・・・・』

 

序盤からハーデスか。

 

「ちょっ、坂本。どうしてハーデスを戦わせるのよ!

ここは数学の点数が高いウチを出せば―――!」

 

「いや、Bクラス並みの点数の島田に荷が重い。

ここはあいつに賭ける。ここで負けようがまだ俺達は余裕だからな」

 

その意見には同意だ。俺だったら明久を選ぶな。

 

「この学校にそんなふざけた恰好で登校するなんて、よく学園は許してくれるわよね」

 

『・・・・・』

 

「そっちから科目を選択してもいいわよ。

どんな科目だろうがアタシの勝利に揺るぎないもの」

 

『・・・・・分かったわ』

 

ハーデスはスケッチブックに何かを書き始め、高橋先生に突き付ける。

高橋先生は頷き、召喚獣を召喚する専用のフィールドを展開した。―――保健体育か。

同じ教科を選んではいけないなんてルールは決められていないし、

土屋が保健体育を選んでも―――。

 

 

              保健体育

 

Aクラス 木下優子 259点 VS ???点 死神・ハーデス Fクラス 

 

 

 

 

「さて、Fクラスのあなたの点数を見なくてもアタシが勝つ―――!」

 

召喚獣を召喚した木下がハーデスを肉薄する!

 

『・・・・・相手を外見で判断するお前の敗北だ』

 

 

―――ザンッ!!!!!

 

 

召喚したハーデスの召喚獣が黒い光を残して木下の召喚獣の背後に移動した刹那。

木下の召喚獣の首が身体から離れてハーデスの召喚獣の手に握られていた。

 

『・・・・・俺とこの召喚獣の名は・・・・・』

 

 

              保健体育

 

Aクラス 木下優子 259点 VS 1000点 死神・ハーデス Fクラス 

 

 

 

 

『死神・ハーデスだ』

 

せ、1000点・・・・・っておい!?そんな点数を取れるのかよあいつは!

 

「せ、1000・・・・・っ!?」

 

あっさりと持ち前の召喚獣操作の腕前と驚異の点数で木下優子を倒したハーデス。

 

「お前・・・・・そんだけ点数を取れるならどうして言わないんだよ」

 

『・・・・・1点でもなんとかなるから』

 

「・・・・・お前、意外とムッツリーニなんだな」

 

『・・・・・』

 

そんな事を言ったら、俺はハーデスに鎌を振り回されながら追いかけられた。

マジで俺は魂を狩られるかと思った・・・・・!マジで怖かった・・・・・!

 

「・・・・・」

 

土屋がハーデスを睨んだ。

 

『・・・・・なんだ?』

 

「・・・・・俺のライバル」

 

ああ、お株を取られたことでライバル心が燃えたのか。

あいつらしいな。と、二人を見ていると二回戦は明久の奴が―――。

 

「―――左利きなんだ」

 

               物理

 

Aクラス 佐藤美穂 389点 VS 62点 吉井明久 Fクラス

 

 

 

 

なんか、可笑しなことを言って負けていた。そんなあいつに島田が殴りかかった。

 

「おい島田。明久に攻撃するな!こうなることは予想していたことだから!」

 

「ちょっと待て大和!労いの言葉よりも僕をバカにする言葉が出てくるの!?」

 

あっ、すまん。バカにしているわけじゃないんだけど、お前の成績からして

当然の結果だという風な意味で・・・・・って、バカにしていることは変わりないか。

 

「ああ、バカにしているな」

 

「ヒドイッ!僕の心のガラスハートが撃ち抜かれちゃったよ!」

 

意外と脆いんだな。後で慰めてやるから思いっきりガクトの胸で泣いていろ。

 

「では、三人目の方どうぞ」

 

「こちらからはムッツリーニだ」

 

「・・・・・(スック)」

 

土屋か。この勝負も勝てるな。なぜなら土屋は総合科目の点数のうち、

実に80%を保健体育で獲得する猛者だと聞いた。

その単発勝負ならAクラスだって負けはしない

 

「じゃ、ボクが行こうかな」

 

Aクラスからは緑色の薄い髪をショートカットした、ボーイッシュな女子が出てきた。

誰だ?あまり見たことがない女子だ。

 

「一年の終わりに転入してきた工藤愛子です。よろしくね」

 

身体の凸凹も少なくて、ぱっと見少年のようだ。男装させたら似合いそうだな。

 

「教科は何にしますか?」

 

高橋先生がムッツリーニに尋ねる。

 

「・・・・・・保健体育」

 

やはり。土屋の唯一にして最強の武器が選択したか。

 

「土屋くんだっけ?随分と保健体育が得意みたいだね?」

 

工藤が土屋に話しかける。よほどの自信があるようだ。それか土屋の実力を知らないだけか、

さてさてどちらだろうな?

 

「でも、ボクだってかなり得意なんだよ?・・・・・キミとは違って、実技で、ね♪」

 

・・・・・ありゃ、嘘だな。

 

「そっちのキミ、吉井君だって?勉強苦手そうだし、

保健体育で良かったらボクが教えてあげようか?もちろん実技で」

 

明久を誘惑しようとしている。

 

「フッ。望むところ―――」

 

「吉井には永遠にそんな機会なんて来ないから、保健体育の勉強なんて要らないのよ!」

 

「そうです!永遠に必要ありません!」

 

「・・・・・」

 

「島田に姫路。明久が死ぬほど悲しそうな顔をしているんだが」

 

『・・・・・』

 

ハーデスが徐に何かを取りだした。・・・・・小型録音機?

 

 

―――ピッ 《そっちのキミ、吉井君だって?勉強苦手そうだし、

      保健体育で良かったらボクが教えてあげようか?もちろん実技で》

     

     《吉井には永遠にそんな機会なんて来ないから、

      保健体育の勉強なんて要らないのよ!》

     

      《そうです!永遠に必要ありません!》

 

 

あいつがあの二人の会話を録音した?何のためにだ?

 

『・・・・・あの二人が吉井明久に好意を抱いていない証拠の発言、GET』

 

口から煙を吐きながらハーデスは不敵な物言いでスケッチブックに書いていた。

うわ、こいつ・・・・・最低だ。

 

「ちょっ、ウチらの会話を勝手に録音するんじゃないわよ!」

 

「直ぐに消してください!酷いです!」

 

「・・・・・口は災いの元」

 

「だな、旅人さんが言っていたことがなんだか最近思いだす」

 

改めて土屋と工藤の様子を見る。二人とも召喚獣を召喚していた。

土屋はBクラス戦でも見せた小太刀に忍び衣装。一方工藤の方は、

 

「なんだあの巨大な斧は!?」

 

明久の絶句には俺も同意する。見るからに破壊力抜群の巨大な斧。

オマケに工藤の召喚獣に腕輪まで装着している。あの自信は伊達じゃないってことか。

 

「実戦派と理論派、どっちが強いか見せてあげるよ。

その後、できたら死神君と勝負してみたいな♪」

 

「・・・・・!」

 

工藤が艶っぽく笑いかけるのと同時に、腕輪を光らせながら召喚獣が動いた。

召喚獣に横着している腕輪はどの教科も400点越えでなければ装着できない特殊な

攻撃を発動する事ができる便利なアイテムだ。工藤の腕輪はどうやら雷を武器に纏わせる

能力みたいだ。事実、巨大な斧に雷光を纏わせて、

有り得ないスピードで土屋の召喚獣に詰め寄る。

 

「それじゃ、バイバイ。ムッツリーニくん!」

 

斧が召喚獣を両断する―――。

 

「・・・・・加速」

 

と思った直後、土屋の腕輪が輝き、あいつの召喚獣の姿がブレた。

 

「・・・・・え?」

 

相手の戸惑う顔。俺もハッキリとは分からない。

何時の間にか土屋の召喚獣は相手の射程外にいたからだ。

 

「・・・・・加速、終了」

 

ボソリと、土屋が呟く。一呼吸置いて、工藤の召喚獣が全身から血を噴き出して倒れた。

 

 

              保健体育

 

Aクラス 工藤愛子 446点 VS 576点 土屋康太 Fクラス

 

 

 

 

―――やるな、ムッツリーニよ!

 

「そ、そんな・・・・・!この、ボクが・・・・・!」

 

工藤が床に膝をつく。相当ショックみたいだ。

 

「・・・・・ハーデスを先に倒すのは俺だ。お前ではない」

 

「・・・・・ふふっ。彼を倒す前にムッツリーニ君を倒す必要があるね。

―――こんな感じに」

 

女子制服の赤いスカートを摘まんで土屋に見せびらかしながら上げた。

 

「・・・・・(ブシャァッ!)」

 

『ムッツリーニィッ!』

 

Fクラスの男子共が一斉に凄い勢いで鼻血を吹く土屋に駆け寄った。

あいつ、色んな意味で油断できねぇっ!

 

「・・・・・これで、二対一ですね。次の方は?」

 

高橋先生は淡々と作業を進める。声も少なからず震えていた。

あと一勝で俺達の勝ちという状況に信じられないのだろう。この順で行くと―――。

 

「あ、は、はいっ。私ですっ」

 

『いよっしゃぁぁぁああああああああああっ!』

 

最後はやはり姫路だ。唯一Fクラスにいながら、Aクラスとまともに戦える人材だ。

彼女が勝利を収めれば、俺達Fクラスの勝ちだ。さて、相手は誰かな・・・・・?

 

「・・・・・」

 

Aクラスから歩み出たのは―――霧島翔子だと!?

 

「なっ、翔子だと!?おい、俺と勝負するんじゃなかったのか!」

 

「・・・・・ハッキリ言って、久保だと負けてしまうかもしれない。

だから、ここで食い止める。Aクラスのためにも」

 

なるほどな。流石にAクラス代表も表は冷静そうな顔だが、

内心は焦心に駆られているようだ。

誰がどの順番に出ていいのか自由だし、こう言う戦い方もある。

これは代表が負けたらクラスの敗北ってわけじゃない。

先に三勝したクラスが勝ちの戦争だ。

 

「ちっ・・・・・!姫路、翔子が出るなら俺が―――!」

 

「いえ、私にやらせてください」

 

「朝の作戦にも言ったはずだぞ!翔子に勝てるのは俺しかいないんだ!」

 

「・・・・・雄二が出るなら、私は翔花に変わってもらう」

 

「んだと・・・・・っ!?」

 

翔花?誰のことだと思うと霧島が霧島の容姿と酷似している女子に視線を送った。

そういうことか。あいつら姉妹だったんだな?・・・・こりゃ、詰んだな。霧島の奴、

完全にクラスの勝利を狙っている。

 

「では、Fクラス姫路瑞希さんとAクラス霧島翔子さんの一騎討ち勝負を始めます」

 

高橋先生も頃合いを見て試合を進めた。

 

「科目は何にしますか?」

 

「・・・・総合科目」

 

「分かりました。それでは・・・・・」

 

高橋先生が前と同じように操作を行う。

それぞれの召喚獣が喚び出されて―――激闘が繰り広げた。

 

 

               総合科目

 

Aクラス 霧島翔子 4419点 VS 4409点 姫路瑞希 Fクラス

 

 

 

 

・・・・・10点差か・・・・・厳しい状況だな。

Aクラス代表は伊達じゃない・・・・・っ!

 

「・・・・・勝負」

 

「負けません!点数だけが勝ち負けじゃないんです。

揺るがない想いも籠めて私は勝ちます!」

 

「・・・・・それは私も同じ・・・・・」

 

二人の召喚獣の武器は大剣と刀。激しく刀剣を振るい、激しい攻防を俺達に見せてくれる。

両クラスから二人の声援でいっぱいだ。Aクラスの室内中に声で轟く。

 

「はぁああああああっ!

 

「・・・・・っ」

 

熱い情熱と静かな情熱は何時までも続くかと思った直後、

一方の召喚獣が隙を作ってしまい、もう一方の召喚獣はその隙を突いた。その結果―――。

 

 

            総合科目

 

Aクラス 霧島翔子 1点 VS 0点 姫路瑞希 Fクラス

 

 

 

 

Aクラス側の勝利。

 

「・・・・・ごめんなさい」

 

「いや、Aクラス代表にあそこまで追い込んだ。よく頑張った」

 

「だな、あの代表が1点まで追い込んだのは姫路が初めてだ。

胸を張って誇ってもいいぐらいだぞ」

 

ふと、ハーデスが音もなく現れた。スケッチブックに文字を書き、姫路に突き付ける。

 

『・・・・・よく頑張った。あとは操作が慣れれば問題ない』

 

「ハーデス君・・・・・はい、次は負けません!」

 

「これで二対二です」

 

高橋先生の表情に安堵の色が浮かんでいる。

Aクラスが負けてしまうなんて思いもしないだろうしな。

首の皮一枚繋がった程度だが・・・・・。

 

「おい、坂本。次は誰を出すんだ?流石にお前を出す訳にはいかないぞ」

 

「・・・・・」

 

次の相手は学年次席だ。それを凌駕できる奴は今の俺達にはいない。

 

「Fクラス、誰が出ますか?」

 

あの先生も催促してくる。

坂本・・・・・お前はどうするつもりだ?そんな思いで坂本を見ていると―――。

 

「フハハハハッ!九鬼英雄、降臨なり!」

 

「おじゃましまーす!」

 

『・・・・・はっ?』

 

この場に、戦争中にSクラスの奴らが乱入してきた。流石にこれは予想できないって!

 

「あなた達はSクラスの生徒達ですね?今はAクラスとFクラスの戦争中です。

干渉しないでください」

 

「問題ない。我らは余興を観に来ただけなのだからな。・・・・・ほう、二対二か?

あのAクラスがFクラスに敗北に追い詰められているなど前代未聞であるな」

 

「所詮はAですからね。Sクラス代表の英雄様のクラスには遠く及びません!

ましてや、Fクラスに追い詰められているクラスです!」

 

『・・・・・っ!』

 

Aクラス生徒達から怒気が孕んだ。SとAの両クラスの中は犬猿の仲、

最悪と言ってもいいぐらいだ。

 

「で、死神の戦いは終わったか?終わっていなければ我らの前で戦って見せろ。

実を言うと我は死神の戦いぶりを見たくてやってきたのだらな」

 

「・・・・・死神・ハーデスの戦いは一回戦で終わりました」

 

「なに?そうなのか」

 

これで納得できる―――英雄じゃない。

 

「では、もう一度死神を戦わせろ。

二度同じ者が戦ってはならないルールではないのであろう?」

 

『はぁっ!?』

 

この疑問と驚愕が混じった声はAクラスとFクラス全員の声だ。

 

「待ちなさい。Sクラスが勝手に試召戦争のルールを変えないでください。

これは事前に決まったことです」

 

「だが、そのルールは決められていないのだろう?」

 

「・・・・・それは・・・・・」

 

「ならば問題あるまい。さあ、我の前で戦って見せろ」

 

英雄の横暴な決め事に場が静まり返る。

 

「・・・・・しょうがないな。ハーデス、行けれるか?相手は次席だろうが」

 

『・・・・・問題ない』

 

正直・・・・・あいつに助けられたって感じだ。ハーデスが中央に立ち、

学年次席の久保利光と対峙する。

 

「正直・・・・・この勝負は既に意味のないものとなっている。キミはどう思うかね?」

 

『・・・・・』

 

久保の言うことにもっともだと、首を縦に振った。

 

『・・・・・勝負ではFクラスが勝ち。だけど、実力はAクラスが勝ちだ』

 

「そう言ってもらえると、ありがたいね。またFクラスと再戦をしたい。

今度は真っ向勝負でね」

 

『・・・・・望むところだ。俺も楽しみにしている』

 

科目は数学。

 

 

               数学

 

Aクラス 久保利光 389点 VS 1点 死神・ハーデス Fクラス

 

 

 

 

このままハーデスの勝ちかと思ったが、

久保に攻撃されてもかわさなかったハーデスが負けたことで、俺達の敗北となった。

 

「なっ、どうしてだい!?」

 

『・・・・・この勝負は意味のないと言ったのはお前だ。

無意味なことを俺はしたくないだけだ』

 

敗北した代償というのか、ハーデスの肩口辺りのマントが勝手に弾け、血が噴き出した。

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

Sクラスはハーデスの戦いを見たらさっさと自分のクラスへ戻って行った。

この何とも言えない場の空気はどうしたらいいのだろうか・・・・・。

 

「んじゃ、勝者は敗者に命令権を下す時間に入ろうか?こっちは二勝。そっちは三勝」

 

雄二が他人事のように言う。ハーデスは突然生じた大量出血により、

霧島さんに付き添ってもらいながら傷の手当てを自分で施している。

あれはまるでフィードバックを受けているような感じだった。

まさかハーデスは僕と同じ観察処分者の設定をしている・・・・・?

 

「翔子、Aクラスは何を願う?」

 

「・・・・・」

 

霧島さんは一度顎に手をやって悩み、雄二に真っ直ぐ言う。

 

「・・・・・死神をAクラスに入れる」

 

「ダメだ。それだけは絶対に権利を使ってでも拒否るぞ」

 

「・・・・・ダメ?」

 

「ダメだ」

 

断わるの早いよ雄二。

 

「・・・・・じゃあ、死神をSクラス戦の時にだけ貸して?」

 

「お前、Sクラスに挑むのか?」

 

「・・・・・何時かしようと思っていた。

それに、あそこまで言われて何も思わない私じゃない」

 

霧島さん・・・・・。

 

「・・・・・まあ、それだったら問題ないな。

んじゃ、今度はこっちの願いを言うぜ。

―――Aクラス全員、Sクラスとの試召戦争の時に全力で俺達に力を貸せ」

 

「え?」

 

『ええええええっ!?』

 

え、Sクラスとの戦争って・・・・・本気で言っているの!?雄二!

 

「・・・・・雄二もSクラスに?」

 

「お前と同じ気持ちだったわけだ。最低ランクのFが最高ランクのSに勝ったら

これほど愉快な気分は味わえない。最高だろう?」

 

「・・・・・雄二らしい」

 

「褒め言葉として受け取らせてもらうぜ」

 

肩を竦め、気にしない態度をする雄二だった。本当に、Sクラスと試召戦争をするんだね。

 

「あのクラスに勝つためには俺達だけじゃダメだ。

協力が必要だ。それで翔子、残りの権利はなんだ?」

 

「・・・・・」

 

霧島さんは自分と同じ顔の女子生徒に目を向ける。

 

「・・・・・翔花、あなたの願いはなに?」

 

「姉さん・・・・・いいの?」

 

ね、姉さん・・・・・?信じられない言葉を発した彼女に霧島さんは頷いた。

 

「雄二、まさか・・・・・」

 

「ああ、あの二人は姉妹だぞ。霧島翔花、翔子の実の妹だ」

 

「まあ、なんとなくそう思ったのじゃ」

 

「・・・・・纏う雰囲気も同じ」

 

秀吉とムッツリーニは薄々分かっていたみたいだ。

 

「じゃあ・・・・・雄二。私と付き合って」

 

「・・・・・え?」

 

「お前、まだ諦めていなかったのか」

 

「諦めない・・・・・ずっと私は雄二が好き」

 

ど、どういうこと・・・・・?

 

「拒否権は?」

 

「ない・・・・今からデートに行く」

 

「え、あ、や、待て―――っ!」

 

問答無用とばかり霧島さんの妹は素早い動きでスタンガンを雄二に押し付け、

意識を狩ると雄二をどこかへと連れて行った。

 

「・・・・・死神、私と付き合って」

 

え、えええええええええっ!?

 

「ちょっ、代表!?どうしてこんな怪しい奴と付き合うのよ!?」

 

「・・・・・私は死神の正体を知っているから」

 

ハーデスがビクッ!と身体を震わせた。それから急いで、

スケッチブックに何か書き始める。

 

『・・・・・権利一つ、霧島の権利をはく奪!』

 

「・・・・・死神の正体、私は知っている。喋って良い?」

 

『・・・・・んなっ!?』

 

「・・・・・死神の正体だと?どういうことだ?」

 

「そうだな。死神は全身火傷を負って、

太陽光を浴びると危ないからあんな姿でいると先生から聞いるぞ」

 

訝しむガクトと大和。霧島さんは二人の発言に口を開く。

 

「・・・・・それは嘘。健康体のはず」

 

「「・・・・・」」

 

ガクトと大和は顔を見合わせ、一斉にハーデスへ振り向いた。

 

「そうだなぁ・・・・・お前の顔を見てみたいと思っていたところだ」

 

「霧島の権利を実行しようか」

 

『・・・・・!?』

 

ハーデスは動揺をしているのがよく分かった。だからなのか、物凄い速さで。

 

『・・・・・頼む!俺の正体を明かさないでくれ!』

 

『『『『『死神が土下座をしたぁぁぁああああああああああああああああっ!?』』』』』

 

霧島さんの足元で土下座をしたハーデスに僕達は驚きの色を隠せなかった。

 

「・・・・・どうしても?」

 

『・・・・・俺も色々とあるんだよ。というか、どうして分かったんだよ・・・・・』

 

「・・・・・分かる。あの日から私はあなたのことを忘れたことが一度もない。

どんな変装をしても、一目で分かる」

 

『・・・・・そうか』

 

「・・・・・だから、お礼を言いたい。仮面、取って?」

 

『・・・・・それは無理だ!』

 

話が平行線だな・・・・・。

 

「・・・・・今から私とデートする」

 

『・・・・・今からか!?ちょ、待―――!』

 

霧島さんの行動は早かった。ハーデスのマントを掴んで廊下にまで引き摺っていく。

 

「さて、Fクラスの皆。お遊びの時間は終わりだ」

 

唖然としている僕らの耳に野太い声がかかる。音のした方を見やると、

そこには生活指導の西村先生(鉄人)が立っていた。

 

「あれ?西村先生。僕らに何か用ですか?」

 

「ああ、今から我がFクラスに補習についての説明をしようと思ってな」

 

鉄人。我がFクラスって?

 

「おめでとう。お前らは戦争に負けたおかげで、

福原先生から俺と―――副担任の小島先生に担任が変わるそうだ。

これから一年、死に物狂いで勉強できるぞ」

 

『なにぃっ!?』

 

クラス男子生徒が全員が悲鳴を上げる!

ちょ、待って!鉄人は分かるけど小島先生って―――。

 

「あわわわわ・・・・・・!」

 

「あ、あの先生かよ・・・・・!?」

 

「うわー、監視が強化されたね」

 

「俺には関係ないけどな!」

 

「うーん、僕もかな?」

 

「大人しくしていればな」

 

風間ファミリーが誰よりも早く反応していた。小島先生―――正式名は小島梅子。

生徒指導の鬼の西村先生並みに、鬼のように指導が厳しい先生は小島先生で

『鬼小島』という別名がある。

そんな鬼のツートップが僕達の担任の教師になるなんて・・・・・!

 

『『『『『それはあんまりだぁあああああああっ!』』』』』

 

Fクラス男子生徒全員の叫びは、きっと全学年生徒の男子の気持ちも一緒だと僕は思いたい!

 

 

 

―――Aクラス―――

 

 

 

「最後はあんな結果だったけど、勝てて良かったわね」

 

「でも、無意味な戦いだからって自分から負けるなんて変わった死神君だね」

 

「いや、どちらにしろFクラスは詰んでいた。彼もそれを知って敢えて負けたんじゃないかな?」

 

「・・・・・でも、Sクラスが横やり入れるなんて」

 

「何か企んでいる・・・・・?」

 

「にょっほっほっ!失礼するのじゃ」

 

「っ・・・・・あなたは」

 

「此方はSクラスの大使じゃ。丁重に扱うようにのう?」

 

「・・・・・Sクラスが何をしに来たの?」

 

「このクラスに大使としてやってきた時点で分かっているようなことすら分からぬのであれば、

お主らの頭は空っぽのようじゃな。まあいい、特別に教えてやろう。下々の輩に栄光あるSクラスが手ほどきをしようと思っておる。高があのどん底の知能のない山猿共に苦戦を強いた

下等なクラスに此方らSクラスがAクラスに宣戦布告をしに来たのじゃ」

 

「なんですって・・・・・!?」

 

「もしもAクラスが負けた場合、のクラスは此方らSクラスがもらい受ける。

貴様らは最低最悪のFクラスに荷物を纏めて引っ越すのじゃ」

 

「待ちなさい!負けたとしても三ヶ月間の試召戦争を禁止や設備のランクダウン、

設備と教室の交換以外なことを学園が認めるわけがないし、

Sクラスの横暴を黙認するわけないじゃない!」

 

「こちらには世界最大財閥の一つの九鬼財閥に三大名家の一つ不死川家。

他にも此方のクラスに国家や財政に勤めておる両親の者共もおるのじゃ。

学園長は此方らの提案を無化にはできんのじゃ」

 

「(それは脅迫というものでしょうが・・・・・っ!)」

 

「よって、学園長も快く此方らの提案を受け入れ、明日の朝九時からお主らと試召戦争をする。

精々頑張るのじゃ。にょほほほ♪」

 

「・・・・・明日の九時・・・・・今日消費した科目を補給する暇が・・・・・」

 

「まさか、僕達の戦いを見に来た理由はこの為だったのか・・・・・っ!」

 

「なんていやらしい奴らなのよ・・・・・!」

 

「それでも・・・・・私達は戦わないといけない」

 

「負けたらFクラス・・・・・。でも、代表と翔花にとってある意味いいんじゃない?

好きな男の子と一緒になるんだし」

 

「「・・・・・」」

 

「ちょっ、愛子!何言っているのよ!代表と翔花も『それいいかも』って顔をしない!」

 

「・・・・・」

 

「久保君・・・・・まさかだと思うけどあなたまで考えていないわよね?」

 

「何を言っているんだい木下さん。僕が負けていいとは微塵も思っていないよ。

さて、明日に備えて作戦を考えよう。時間が許す限り」

 

「・・・・・ええ、そうね」

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

翌日

 

 

「英雄の奴・・・・・一体何を考えているんだ?」

 

「あいつの頭の中は分かりたくも無い」

 

「なんでまたAクラスと試召戦争をするんだろう?」

 

翌日、朝から試召戦争が始まった。AクラスとSクラス、エリート同士の戦いだ。

クラスも教室も近い為、拮抗の戦いになるに違いない。

 

「こんな感じ、僕達と似ているよね」

 

「ああ、今度はAクラスが俺達のようになっている」

 

「どうなるんだろうな?」

 

「Sクラスの勝ちになるんじゃね?あのクラスはAクラスより強いと言うことだけが

分かっているからな」

 

「じゃあ、設備のランクがダウンするよね。Bクラス並みの」

 

英雄がそれだけの目的で試召戦争をするのか?なんか、あいつらしい目的のような気がする。

それを俺達は知る由も無い。それを知るのは試召戦争が終わった後だ。

 

「で、ハーデスは何やってんだ?」

 

「明久と召喚獣を喚び合って稽古をしているみたいね」

 

召喚獣の操作が慣れている者同士、ハーデスが明久に攻撃を仕掛け、

明久はただかわし続けている光景が目の当たりにする。

アレは回避力を向上させている為だろうか。今は自習の為、クラスメート達は伸び伸びと

教室の中で過ごしている。何もすることが無いから暇で俺はあの二人に近づく。

 

「よっ!とっ!ほっ!ふっ!」

 

明久は巧みに操作し避ける。中々鋭い動きをするじゃないか。

対してハーデスは手加減しているのかわからないが、

明久の急所を狙い続けている。でも、ハーデスが加速して、明久の予想を上回って体勢を

崩され寸止めで額やのどに刃が突き付けられた。

 

『・・・・・何があろうと驚いたその瞬間が敗北に繋がる。

吉井、バカは何も考えず只一つの事を専念して行動すればいい。簡単なことだ』

 

「うーん。集中ねぇ・・・・・」

 

『・・・・・ゲームだと思えばいい』

 

「あ、それならできるかも」

 

おい。ゲームと学力を一緒にするんじゃない。

 

『・・・・・もう一度だ』

 

「うん、分かった」

 

『・・・・・ハードルを上げるぞ』

 

「へ?」

 

ハーデスの召喚獣がさっきよりも俊敏で明久の召喚獣に迫った。

 

「ちょっ!?はやっ!」

 

何とか紙一重でかわす明久。そんな光景は暇つぶしにもなって、

遠巻きでクラスメートが見ていることに気付く。

 

「ハーデスよ。ワシも参加させてくれんかの」

 

『・・・・・構わない』

 

「では、試獣召喚(サモン)じゃ」

 

木下も参加した。可愛らしい召喚獣が幾何学的な魔方陣から現れ、長刀を構えた。

 

「ぬおっ!?」

 

あっさりと木下の召喚獣はハーデスの召喚獣に懐を潜り込ませてしまい、

一気にピンチになった。

 

『・・・・・召喚獣と一体感になれ』

 

「一体感じゃと?」

 

『・・・・・覚えるのは簡単だ。相手の召喚獣が次の動きをすれば、

自分の召喚獣は自分だと思い込み、攻撃されたら自分が防ぐかかわす意識をすればいい。

召喚獣を操作するのだって自分の意思で動かすんだからな』

 

長々とスケッチブックで書き連ねたハーデス。木下はハーデスの言葉に頷き、

自分の召喚獣を凝視した。

そんな木下にハーデスは容赦なく刃が備わったトンファーを上段から振り下ろした。

―――が、木下の召喚獣は身体の向きを横に変えただけで攻撃をかわした。

 

『・・・・・』

 

立て続けにハーデスは怒濤に攻撃を仕掛ける。木下は長刀の柄で防いだり、

かわしたりして防御に徹するばかりだが、よくとまぁあんなに召喚獣を動かせると感嘆する。

 

『・・・・・中々だな』

 

「お主の言う通り。召喚獣の操作はなかなか難しいものじゃが、

自分が召喚獣と思い込んで操作すると意外とできるもんじゃの」

 

『・・・・・が、集中力が足りない』

 

トンファーが木下の首を挟む形で捉えた。ちょっとでも動けば刃に当たって点数が下がる。

 

「む・・・・・」

 

『・・・・・木下と吉井は召喚獣の操作が短期間で上達する。ある意味二人は似ているからな』

 

「僕と秀吉が似ているってどんなところ?」

 

明久がハーデスに尋ねた。俺も気になったので静かに訊いていると。

 

『・・・・・バカの一つ覚えと演技バカ。どっちも集中力が必要な要素を有している』

 

「ハーデス。普通に僕達は集中力があると言った方が早いと思うんだ」

 

『・・・・・バカをバカと言って遅いも早いもあるか』

 

「酷い!バカバカって連呼しなくたっていいじゃないか!」

 

「「いや、明久はバカだからしょうがないだろう」」

 

俺だけじゃなく坂本までもが同じことを発した。

 

『・・・・・別にバカは悪いことじゃない』

 

「へ?なんでだ?」

 

『・・・・・バカな奴ほど可愛いと言うし、バカを見ていると面白いからな』

 

「それは他人から見ての感想で僕自身がバカの悪いところの良さは言っていないからね!?」

 

『・・・・・要は、相手を楽しませるという点がバカの良い点だ』

 

あー・・・・・そういうことか。それは同感だな。

 

『・・・・・常識を覆し、予想だにしない行動をするのは何時もバカがやることだ。

俺はそういう奴らが一緒にいると楽しくて暇じゃなくなっていい』

 

「ねえ、大和。僕って誉められているの?貶されているの?」

 

「んー・・・・・・五分五分といったところか?」

 

本当はそうじゃないんだが、こう言った方が良いだろう。

 

「なに言っているんだ直江。明久のバカは死んでも治らないほど至高のバカなレベルだぞ。

ハーデスはそんな明久を見て面白がっているにすぎないんだ」

 

「おのれ雄二!貴様は余計なことを言うんじゃない!というか、雄二だって馬鹿じゃないか!」

 

「お前よりは大分マシだと自負するぞ」

 

鼻を鳴らす坂本。俺はハッキリと言ってやった。

そんな事を言う坂本とついでに明久を交互に見てだ。

 

「いや、どっちもどっちだ」

 

『・・・・・直江に同じく』

 

「「ンなバカなっ!?」」

 

何を驚く。当然の答えだろう。

 

『・・・・・反れたな。吉井、木下。続きをするぞ』

 

「・・・・・まだ納得していないけど分かった」

 

「ワシもできるだけ頑張るのじゃ」

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

ガラッ。

 

 

「お前ら席に付けっ!緊急報告があるぞ」

 

「緊急報告だぁ?鉄人、んだよそれは」

 

「いいから自分のミカン箱の前に座れ。話はその後だ」

 

しばらくして鉄人が現れた。鉄人がこの教室の担当だから別に不思議ではないけれど

一体どうしたんだろう?

僕らが適当な場所のミカン箱の前に座ると、鉄人は辺りを僕らを見回して口を開いた。

 

「既に知っているだろうがAクラスとSクラスが試召戦争を開戦しAクラスは破れた」

 

「だろうな。んで、それがどうかしたんか?俺達には関係のない話しだ」

 

「SクラスとAクラスの間で決まったルールでAクラスは今日から

このクラスに転属することとなった」

 

 

 

『『『『『・・・・・はい?』』』』』

 

 

 

Aクラスの皆がこのクラスに・・・・・って、えええええ?

 

「二クラス合計100以上が一つの教室に収まり切れんことで空き教室を

第二のFクラスとすることに決まった」

 

鉄人の話を聞いて僕らは目が点になった。

 

「はい、質問です!」

 

「なんだ川神」

 

「色々と訊きたいことが山ほどあるんですけど、あの空き教室が使われると言うなら

設備はこのクラスと同じになるんですか?」

 

「いや、今からこのクラスのように設備を整える暇はない。するとなれば夏休みの間だろう。

もしくはこのクラスを一度工事をし、二倍の広さを確保する為に作り直すかだな」

 

そんな夏休みの間で出来るものだろうか?未だに告げられた説明に僕は呆然と

聞いているだけでいると、

 

「おい鉄人。どうしてAクラスがFクラスになる?負けたんなら三ヶ月間の試召戦争を禁ずる、

設備のランクダウンか設備と教室の交換が主流のはずだっただろう」

 

「Sクラスが勝利し、Aクラスは敗北したのだ。それが今の結果だ」

 

具体的な説明をしてくれなさそうな鉄人。

 

「そう言うわけだ。第二のFクラスには俺が担当をする。

ここは小島先生に担当をする事となった」

 

『『『『『(・・・・・よしっ!)』』』』』

 

「今ガッツポーズをした奴は問答無用で鬼の補習をしてもらう」

 

それをしたのは・・・・・一部を除く僕達男子だった。無論、僕や雄二、

ムッツリーニもしてしまった。

 

 

 

 

 

 

「ねえ、雄二」

 

「知るかよ」

 

「何も言っていないんだけど!?」

 

「どーせ、どうしてAクラスはFクラスになったんだ?って聞きたいんだろう?」

 

「まあ、そうだけどさ・・・・・」

 

「だから俺が知るわけがないって言ったんだ。

どこのクラスが勝とうが負けようが俺達には関係のない話しだ」

 

「でもさ、雄二の片思いの霧島さんの妹が―――」

 

「誰が片思いだ!俺はあいつのことを何とも思っちゃいねぇんだぞ!」

 

「雄二よ。言う対象が逆だと思うのじゃ」

 

「・・・・・雄二が動揺」

 

「ぐっ・・・・・!・・・・・まあそういうことだ。

翔子達がFクラスになろうが俺達には関係のない話しだ」

 

「じゃが雄二。Fクラスとならば雄二と会いやすくなったのではなかろうか?

空き教室も直ぐ隣じゃし」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・壁一枚の教室同士」

 

「あっ、工事ってあの壁を壊せば二つのクラスは繋がるよね。

そうしたら霧島さんの妹は後ろから雄二を見れるね」

 

「お、怖ろしいことを言うんじゃないっ!

翔花が背後からずっと見られていると思うと勉強どころじゃない!」

 

「雄二は勉強などしない癖に何を言っておるのじゃ?」

 

「・・・・・意味不明」

 

「だねー」

 

「この野郎共。他人事だからって俺の気持ちも知らないで言いやがる・・・・・っ!」

 

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