バカと真剣とドラゴン―――完結―――   作:ダーク・シリウス

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愉快なバカ達との夏休み!
夏一問


期末試験も終わって、得も言われぬ解放感が僕らを包む込むこの時期。七月も残すところ

あと数日となり、けたたましい蝉の鳴き声や、聳え立つような入道雲といった、

真夏の風物詩が僕らの周りを彩っていた。

 

「おい、明久。期末考査の結果が出たそうだぞ」

 

「あー、そうなんだ」

 

成績優秀者は掲示板で張り出される。まあ、僕達Fクラスが掲示板に張り出されている

紙に名前が載るとは思えない。成績最下位のFクラスだからこそ、見るまでもないと

Fクラスだけじゃなく、D・Eクラスも同様だ。A・B・Cも何人か成績が優秀な

生徒もいるから載るだろうけど、殆どSクラスの生徒が名前に載る。

掲示板は新校舎の方に張り出されるから人混みの多い。大和と一緒にFクラスに

入ろうとすると、

 

「おいマジかよ・・・・・」

 

「あのFクラスがSクラスを差し置いて堂々の一位だと・・・・・!」

 

唖然とした声が聞こえてきた。

 

「え、Fクラス?」

 

「・・・・・もしかしたら」

 

僕と大和は人込みを掻き分けてようやく掲示板の前に移動した。

成績優秀者だけが掲示板に張り出される髪に凝視すると・・・・・。

 

 

1位Fクラス 死神・ハーデス 

 

2位Sクラス 九鬼英雄  

 

3位Sクラス 葵冬馬 

 

4位Sクラス 武蔵坊弁慶

 

 

「ハ、ハーデスが1位・・・・・!?」

 

「全教科1000点を叩きだす程の男だ。なんとなく予想していたが、凄いな。

二学年堂々の1位だぞ。弁慶の方はギリギリ4位か。即退学にならなくて良かったな」

 

「英雄のクローンだしね。そんな凄い人が退学なんてなったら世間から見る目が

変わっちゃうよ」

 

「だな。んじゃ、校庭に行こうぜ。全校集会に遅れる」

 

 

 

 

―――神月学園。定例の全校朝礼。

 

いつもの朝礼とは違った光景が広がっていた。

 

「おいテレビが来てるぞ?あれは雪広アナじゃないか」

 

「ワォ。エグゾエルの龍造寺もいるわよ」

 

人気のテレビに出演している人物達、 ニュースDEドゥーンの者達が校庭にいて

カメラが多く構えられている。

 

「義経達の取材かな?なーんか嫌な予感がするね」

 

テレビカメラを前に多数の人間がソワソワしている。そんな中、朝礼は始まった。

 

「さーて楽しい夏休みの中を集まってくれてワシは嬉しく思うのじゃ」

 

理事長の川神鉄心が全校生徒を見渡し発する。炎天下の中、ジリジリと暑さを体で

感じながら気だるそうに話を耳に傾ける。

 

「生水には気をつけて昆虫採集や河原遊びをするんじゃぞ」

 

いつの時代の話をしているんだと、そう思わずにはいられない生徒もいた。

 

「さぁここからが本番。テレビよく撮っておくんじゃぞ。さて夏と言えば祭りとじゃが・・・・・今年はデカいのがあるぞい。その説明をこの者達がしてくれるぞい」

 

川神鉄心の言葉に呼応して教壇に上がる四人の女性と少女達が姿を現す。

 

「「「「こんにちは、神月学園の皆さん」」」」

 

刹那。校庭に絶叫の轟きが響き、空気を振動させるほど全校生徒(主に男子)が絶賛した。

 

『すっげぇー可愛い!』

 

『誰だあの美女と美少女達は!?』

 

『俺、見たことがある!学園祭で2年F組の喫茶店に働いていた子達だぞ』

 

男子達は源義経達が転入してきた以上の喜びを表したのだった。

 

 

 

「貴様ら!静かにせんか!その首を斬られたいか!?」

 

「我らが王の御前の前で誰がはしゃいでいいと言ったっ!貴様らは礼儀を知らぬ愚か者ばかりか!」

 

 

だが、それ以上の怒声の絶叫が教壇の前に整列している全校生徒に得物を突き付けて

叱咤する

黒いスカート、緑を基調とした制服を身に包む艶やかな黒い長髪をサイドテールに

結んだ少女と赤を基調としたチャイナドレスを身に包み黒い長髪をオールバックにした少女。

 

 

シーン・・・・・・。

 

 

 

そんな二人の少女によって場が急激に静まり返った。

 

 

 

「春蘭、ありがとう」

 

「愛紗ちゃん。せっかく皆が喜んでくれているのにその言い方はダメじゃない」

 

 

 

片や褒め言葉、肩や嗜めで声を掛けるのは青い瞳、金髪のツインテールをさらにロール巻きにし、

濃い色が基調としている服を着ている少女と、愛紗と呼んだ少女の制服と似ている

服装を着ている雰囲気がほんわかしている少女。

 

「こ、こえぇ・・・・・・」

 

「女なのになんて声を出すんだよ・・・・・」

 

「あの者達を会うのはこれで二度目じゃな」

 

「・・・・・新しい商品が売れる」

 

『・・・・・』

 

構える土屋康太のカメラをハーデスが取り上げた。

 

『・・・・・また、斬られるぞ?』

 

「・・・・・分かった」

 

もうカメラを壊されては堪らないといった表情を浮かべる土屋康太だった。

 

 

 

「あ、あの。できれば静かに聞いてください。これからお知らせする事は私達に

とっても重要なことですので」

 

「お嬢ちゃん!お名前はなんですかぁーっ!?」

 

 

頭にベールを身に着け、中国の人が着るような漢服を身に包む少女が苦笑を浮かべながら発した。

が、とあるスキンヘッドが興奮気味に叫んだところで額に矢じりの部分が潰れた矢が

当たって倒れた。

 

 

「華琳?直接言うんじゃなくて、テレビを中継して知らせた方が早かったんじゃない?」

 

「言わないで・・・・・まさか、こんなにも落ち着かない生徒ばかりだとは思わなかったわ」

 

 

透き通る青い瞳に長い桃色の髪をポニーテールに結び、赤を基調とした豪華絢爛な

チャイナドレスと装飾品を身に付けた女性が華琳と呼んだ金髪の少女は額に手を当てて

呆れている様子を窺わせる。

 

 

「・・・・・全員に告げるわ。私達が喋っていいと言うまでは少しでもざわついたり

喋ったりしたら、この学校の規則に則って鬼の補習を問答無用に受けてもらうから覚悟しなさい。

そんなことした生徒のクラス丸ごとね」

 

 

華琳の言葉はふざけているのではないと悟り、全校生徒は固唾を呑んで静かに見聞する事にした。

全校生徒の様子にようやくと溜息を一つ吐く華琳は口を開いた。

 

 

「時間が過ぎてしまったけれど、自己紹介をするわ。私達は蒼天を代表する者達と

同時に蒼天を束ねている五人の内の四人よ。私は蒼天の北区を統べている北区の王、華琳」

 

「私は蒼天の南の代表を務めている南区の王、雪蓮よ。よろしくね♪」

 

「蒼天の東区を務めています、東区の王の月です。よろしくお願いします」

 

「同じく蒼天の西区の代表を務めさせていただいています西区の王の桃華です!皆さん、よろしくお願いしますね!」

 

 

『『『よろしくお願いしまーす!』』』

 

 

「・・・・・さっき警告したばかりだって言うのに・・・・・ああ、死神の格好をした子

以外全員この場から連れ出してちょうだい。―――うるさいから」

 

「はっ―――。貴様ら!鬼の補習をするぞ!逃げようなんて甘い考えはするんじゃないぞ!」

 

 

西村宗一が一度、四人に深く頭を下げてから数人の教師と共に召喚獣を喚び出して

2年F組の(ハーデス以外)に詰め寄った。

 

 

『ちょっ!本気でするの!?』

 

『そんな!そんなの横暴じゃないのよ!?』

 

『待ってくれ!今度はちゃんといい子に訊いているからさ!』

 

『ワシらは喋っておらんというのに理不尽じゃ!』

 

『つーか、どうしてハーデスだけいいんだよ!連帯責任じゃないのか!?』

 

『鉄人!弁解を、僕らに弁解の余地をー!?』

 

 

数人の教師がハーデスを残し、召喚獣も用いてハーデスのクラスメート達を

補習室へと強引に連れて行かれてしまった。ポツンと取り残されたハーデスは異様に目立っていた。

 

 

「お主・・・・・ちとやり過ぎではないのかの?」

 

「うるさくて話にもならないわよ。それに後でまた放送されるんだから知らない

生徒はニュースでも見て知ればいいだけよ」

 

「身も蓋もないことを言うのぉ・・・・・」

 

 

まったくだとハーデスは頷いた。

 

 

「さて、邪魔者はいなくなったし私達がこの場にいる理由を簡潔に説明するわ」

 

「えーと、皆さんも知っているかもしれませんが蒼天に宇宙まで伸びている建物が

一昨日完成しました」

 

「だから、そのお祝いに蒼天はとある催しをすることに決めましました」

 

「同時に能力がある人を蒼天に招いて今でも今後でも移住もして貰いましょうって

魂胆も含まれているけどね」

 

 

蒼天での催し・・・・・何だろうと全校生徒の中で疑問が浮かぶ。

 

 

「あの建物は今後の蒼天の象徴となるわ。あの建物を作った理由は月面に人が住める

ようなスペースコロニーを作る為の通過点なの」

 

「月で住めれたら青くて大きい丸い地球を見ながら生活ができてロマンチックだよね!」

 

「その為のだ一段階が完成したので」

 

「蒼天は盛大な大会を催しを行うことを決めたわ。心して聞きなさい」

 

 

静まり返っている校庭に整列している全校生徒を見渡し、

四人の王はそれぞれ笑みを浮かべ口を開いた。

 

 

「それは武闘会。ここ川神市でも武闘会が行われているから、蒼天でも武闘会を開催するわ」

 

「武闘会の詳細は夜、生中継でお知らせしますので皆さん見てください」

 

「蒼天と皆さんのどっちが強いのか勝負です!これも夜のニュースやネットにもお知らせします。どうか確認してくださいね」

 

 

蒼天が世界中に挑戦状を叩きつけた事実に世界は勇むだろう。

 

 

「本音を言えば日本と蒼天の戦いということ」

 

「なんだか最近、蒼天から編入させた子が大変な目に遭っているみたいだし」

 

「私達もちょっとこれは酷いんじゃないかって思いましたので」

 

「へぅ・・・・・申し訳ございませんが、本当に日本と戦争をするワケにもいきません。ので、このような形で日本を粛清する事に決めました」

 

 

『『『―――――っ!?』』』

 

 

「高が一人の為に・・・・・と思っているだろうけど、そこにいる死神は私達に

とって大切な子なのよ」

 

「濡れ衣を着せ、陥れようとしたどこかの生徒達の名前と家族構成はこちらで

確認させてもらっています」

 

「死神は私達の大切な家族。だから家族を傷付ける人達は絶対に許せないわよ?」

 

「日本に圧力を掛けてでも家族を傷つける生徒は一族郎党・・・・・社会的にも

抹殺し、生まれてきたことを後悔させます。勿論・・・・・九鬼財閥でも

九鬼家に働くとある執事さんでも同じですので悪しからず」

 

 

お祝いを兼ねて催しを行う武闘大会の意味・・・・・死神・ハーデスを傷つけている日本(神月学園)に対する粛清。

 

 

「それじゃ、知らせるだけ知らせたので、私達はこれで失礼させてもらうわ」

 

「死神くぅーん!また虐められたら教えてねぇー?」

 

「それじゃ、お元気で・・・・・」

 

「ばいばーい♪」

 

四人の王と護衛の二人は空から現れた金色のドラゴンの手に乗って蒼天へ。

 

 

『『『『『・・・・・』』』』』

 

『・・・・・』

 

 

カキカキ・・・・・バッ。

 

 

『・・・・・何時でも俺のことを虐めていいからな?悪口もどんどん言ってくれ。

―――蒼天にいる家族に告げてやるから』

 

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

「あ、熱い・・・・・」

 

「まるでサウナにいる感じだな」

 

理不尽な補習がようやく終わり、教室に戻った僕らのエアコンどころか扇風機もない、風通しは悪く最悪の環境と言える状態の教室の扉の前に立つだけで感じる。

 

「だけどそれ以上に見ているだけで熱いと思わせる奴が一人いる」

 

「脱いでって言いたいけど本人が脱ぐ意志がないから無理だよね」

 

肌を隙間なく覆い隠す黒いマントに顔を隠す髑髏の仮面の人物がギラギラと窓の外から

照らされている太陽光を浴びている。黒色って太陽の熱を吸収するって訊くけど

ハーデスは大丈夫なのだろうか?まあ、他の人のを心配する余裕はない。

大和の言い得て妙なこのサウナ状態の教室で今日も補習をするんだから。

 

「・・・・・暑い」

 

ムッツリーニがミカン箱に上半身を突っ伏す。けど、ミカン箱自体も暑さにやられたのか、ムッツリーニに押しつぶされて現状が崩れてしまっている。

 

「今日も暑いな」

 

「まったくじゃこんな日にも補習とはもはや拷問じゃな」

 

雄二と秀吉が下敷きをパタパタと自分に向けて扇いでいる。その気持ちは同感だよ。

 

「にしても、ハーデスよ。お主は暑くないのかの?」

 

『・・・・・』

 

ハーデスを問う秀吉にコクリと死神の格好をした人物は頷いた。あいつ、絶対に化け物じゃないだろうか。

 

「暑ぃ・・・・・」

 

「冷えた部屋でコーラとポテチを飲食しながらネットでアニメを見てだらけたいよぉ・・・・・」

 

「エスデス、お前の氷で何とかしろ」

 

「無理だ。氷が溶けて水になるのがオチだ」

 

「なら、氷でかき氷を作れ」

 

「お前・・・・・私の力を何だと思っている?」

 

一部の女子はネクタイを取って第二ボタンまで外して胸元を晒して下敷きで扇いでいる。

な、なんて煽情的な・・・・・!健康的な白い肌が見えて、ブラが見えそうで見えない・・・・・!

 

「ムッツリーニ、女子が胸元を・・・・・!」

 

「・・・・・すまん、暑くてその気力がない」

 

あのエロの権化がシャッターを押さないとは・・・・・!?

 

『・・・・・』

 

ハーデスがエスデスさんの肩を触れて、意識を向けさせると何やらスケッチブックに

書いて意思表示をした。何て書いたのだろうか?でも、エスデスさんは「分かった」と首肯したぞ?

 

 

―――十数分後―――

 

 

「(逃げよう大和。この魂の牢獄から)」

 

「(確かに、これは逃げたくもなる。俺もこの鉄拳補習フルコースには飽き飽きしていたところだ)」

 

 

 

―――俺達は、西村先生の補習からの脱走を決意した。

 

 

「(だいたい、夏休みに入っているのに授業があるってのが間違いなんだよな。

しかも鉄人の野郎はあろうことか男子を後ろに女子を前に座らせ手やがるから俺達の

周囲は男が殆ど。勉強どころか息をするのもキツいじゃねぇか)」

 

俺の隣の席でファミリーの島津岳人がその野性味たっぷりの顔を顰める。

 

「(オマケに授業をやっているのが西村先生だ・・・・・。

冬でも暑苦しいくらいなのに、この環境で鉄人のビジュアルは拷問に等しい・・・・・)」

 

教壇では筋骨隆々の熱血教師、鉄人こと西村先生が汗一つ見せずに補習授業を進めている。

バテる様子を全く見せないのは趣味のトライアスロンで鍛え上げた体力のおかげだろうか。

 

「(よくこんな状況で姫路は真面目にノートを取れるよな・・・・・。アイツは化け物か?)」

 

「(いやガクト。もっと化け物が俺の後ろにいる)」

 

Aクラスの優等生の姫路よりも暑苦しい恰好をしている生徒が一人いる。

その人物は黒いマントを頭ですっぽり覆い、髑髏の仮面を被っている死神・ハーデス。

包帯だらけの手は筆を持ってノートに走らせている音がよく聞こえる。

 

「(ああ、そういえばそうだった。あいつの方が異常だったな)」

 

「(絶対に暑いのにそんな雰囲気を感じさせない辺り凄いの一言だ)」

 

「(見ているとこっちまで暑くなるから敢えて見ないが・・・・・やっぱり暑いな)」

 

俺達は日当たり良好、風通し最悪の窓際最後尾から二番目のポジションなんだろう。

差別もいいところだ。

 

「(それで大和、どうやって抜け出す?相手はあの鉄人なんだから、

見つかったら最悪の事態になるに違いない)」

 

「(あまりの暑さで思考が鈍る・・・・・)」

 

「(頼みの軍師も暑さでバテ気味か・・・・・)」

 

ガクトと小声で相談しながら西村先生の隙を窺う。勿論、口が動いていることを気取られるような

ヘマはしない。腹話術のように口の動きを最小限に抑えて会話をしている。

このFクラスで西村先生に目をつけられている男子生徒には必須の技術だ。

 

「―――ここで元の高さをhとした時、位置エネルギー全てが運動エネルギーに変換されたと

すると、この時の速度vは重力加速度gと高さhにのみ依存する式となり―――」

 

あの先生は教科書を読み上げながらも俺達の方へ向いている。今動くのは得策じゃない。

下手な動きを見せたら即座に捕まってしまうだろう。どうしたらいいだろうか・・・・・。

 

『(おい、吉井、坂本。逃げるのか?)』

 

『(逃げるなら俺達も一枚噛ませろ。こんな地獄には付き合いきれねぇ)』

 

『(俺もだ。このままだったら確実に干からびて死んじまう)』

 

頭を悩ませていると、近くの席のクラスメート達が話しかけてきた。

あいつら、腕や足の骨を折られたはずなのにピンピンして学校に通い始めた時は目を

丸くしたな。あいつら曰く、かなり苦い薬を飲まされた翌日に骨が治ったとかなんとか・・・・・。

まあいい、治ったんならそれでいいじゃないか。奴らの顔は黒板を向いていて、

口は会話をしているとは思えないほどに小さくしか動かしていない。

このクラスであの人(西村先生)に目を付けられていないのは女子と一部の男子ぐらいだ。

他のクラスメートは全員この技術を習得している。しかも話しかけているのは明久と坂本だ。

あの二人は俺の二つほど離れたミカン箱の前に座っている。

 

『(ガクト、明久と坂本が脱走する構えだ。俺達も乗るぞ)』

 

『(了解だ!)』

 

あとは機を窺うのみ。明久と坂本、お前らを生贄にしてでも俺は逃げるぞ。

 

 

「―――つまり、物体の落下速度というものはその物体の質量に依存しないということになる。

だが、理論とは違って現実には空気抵抗というものがある。綿毛と鉄球が同様の速度で

落下しないのはこの空気抵抗によるものが大きく、式に表すと―――」

 

説明が佳境に至ったのか、西村先生が黒板へと向き直って板書を始めた。

俺達に背を向けたこのタイミング、逃す訳にはいかないっ!俺達は脱出の為に腰を浮かせて、

 

ブーッ!ブーッ!ブーッ!

 

『『『―――っ!!!』』』

 

誰かの何かのブザーが鳴り始め、俺達は制されてしまった。

だ、誰だ・・・・・このチャンスを棒に振った奴は・・・・・!?

 

「誰だ?携帯の電源を切っていない者は?」

 

西村先生がゆっくりとこちらに振り返り、俺達を睨みつける。

 

「・・・・・お前か、死神」

 

ハーデス・・・・・お前かぁぁぁぁぁっ!?おのれ、俺達がお前の為に動いたという

のに仇で返すとは・・・・・!ハーデスに対する怒りを燃やしていると、

俺の隣を通り過ぎて西村先生に向かって歩き出し携帯を突き出した。

怪訝な面持ちであの先生はハーデスを見やると溜息を吐いて口を開いた。

 

「学園長からの呼び出しでは仕方がないな。行っていいぞ」

 

学園長の呼び出し・・・・・?だが、アイツだけこの地獄から逃れると思うと憎らしいなぁっ!

そう思っていると、ハーデスの赤い目がカッ!と怪しく煌めいた。な、なんだ・・・・・?

ハーデスの赤い目に光が無くなると俺達に向かってスケッチブックを突き出した。

 

『・・・・・西村先生を十秒間だけ停止させた。逃げたければ逃げろ』

 

それだけ伝え残してハーデスはいなくなった。その後、俺達は顔を見合わせて―――

 

「逃げるぞぉぉぉぉぉっ!」

 

坂本の合図によって男子の殆どが教室から脱走をした。どうやってあの西村先生を

停止させたのかは分からないがアイツがくれたこのチャンスを逃す訳にはいかない!

 

『―――貴様らぁっ!補習から逃げるとはいい度胸だ!全員、捕まえて超絶な鬼の補習と

俺の面白い話を聞かせてやるから覚悟しろぉっ!』

 

背後から凄まじい轟きが聞こえてきた。拙い!もう十秒間が経ったのか!?

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

「で・・・・・これはなんだ?」

 

「アンタが勝手にガキ共に提案したから、ガキ共の召喚獣の装備を変更している

最中にちょいっとミスをしちまってねぇ」

 

「・・・・・お前の代わりに誰か派遣しようかなぁ」

 

「ま、待ちな!いくらなんでもそれは横暴だよ!」

 

「俺に欠陥品の黒金の腕輪を与えただけじゃなく、欠陥品の白金の腕輪を開発し、

それを気付いた竹中教頭に転覆させられそうになった人はどこのどいつだ?」

 

「うぐっ・・・・・痛いところを突くんじゃないか・・・・・」

 

「や、正直お前の失敗がこうも立て続けに起きているし。

サーバールームに生徒を侵入させた結果、あんな騒動も起きたしな」

 

「・・・・・返す言葉もないよ」

 

「だが、話を聞く限り・・・・・それは上手く活用はできるな。

今の時期と考慮すれば世間にPRできる」

 

「だ、だろう?だからお前さんをこの事について教えてとあることをして貰おうと思ったのさ!」

 

「・・・・・なるほど、そういうことか。いいだろう、今回は目を瞑る。

ただし、また何か仕出かしたら・・・・・蒼天に戻って一から出直してもらうぞ」

 

「わ、分かったさね・・・・・」

 

「代わりに面白い開発をしたら研究費を二倍にしてやるよ。

勿論、失敗してもそれが活用できたらの話しだ」

 

「怪我の功名ってやつだね、分かったよ」

 

―――☆☆☆―――

 

「ひ、酷い目に遭った・・・・・」

 

「やべぇ・・・・・鉄人の拳+昔話で意識が朦朧と・・・・・」

 

ハーデスが作ってくれた好機が呆気なくなくなってしまった。

鉄人が全力で全く間に僕らを捕まえた瞬間に巨大な拳で拳骨、校庭で正座をさせる

僕らに若い頃の鉄人がブラジル人とのレスリングを熱く語って小一時間は聞かされたんだ。

 

 

『相手は身長195cm、体重120kgの巨漢、ジョルジーニョ・グラシェーロ。

腕の太さが女性のウエストくらいはありそうな男だった。だが、俺とて負けはしない。

188cm、97kgの鍛えに鍛えた肉体でヤツと正面からぶつかり合い―――』

 

 

『やめろっ!やめてくれぇーっ!』

 

『脳が!脳が痛ぇよっ!脳がぁーっ!』

 

『ママァーッ!』

 

 

『―――しかし、ヤツはレスリングと柔道を勘違いしていた。腕ひしぎを仕掛けてきたんだ。

だがこの俺の自慢の上腕二頭筋には勝てるわけもない。汗に塗れ、血管を浮き上がらせながらも

俺は腕を伸ばしきること無く抵抗し続けた。すると向こうはすかさず俺の頭上に回り、

その分厚い大胸筋で俺の顔を圧迫しつつ上四方固めを―――』

 

 

『ぐぁあああああっ!い、嫌だ!目を閉じたくない!最悪のビジュアルがまぶたの裏に張り付いて

離れない!』

 

『起きねぇ!福村が起きねぇよ!おい、しっかりしろよ!福村ぁーっ!』

 

『ここは鬼の地獄だ!こんな炎天下の中を正座させられて暑苦しい言葉で

語られるなんて地獄じゃなきゃ何だって言うんだよぉーっ!』

 

 

と・・・・・僕らは延々と鉄人に語られて補習から脱走した皆はグッタリと身動きを微動だもしない。

 

「お主ら、散々な目に遭ったの・・・・・」

 

「まさか大和まで参加するとは思わなかったわ」

 

秀吉と一子が同情と苦笑を僕達に向けてくる。

 

「く・・・・・どっちみち俺は地獄を受けなきゃならなかったようだな・・・・・」

 

大和がゲッソリとしていて肩を落としている。

 

「僕達もハーデスについて行くべきだったかもしれないや」

 

「学園長室なら入ってこれないからな。こりゃ反省しないとダメだ。

次は学園長室に行くぞ」

 

「OK」

 

「お主ら、反省する所が違うぞい」

 

そうかな?作戦が失敗したならそれを糧に活かして成功させるのが作戦だと僕は思うんだけど。

 

「秀吉達女子は大丈夫だったの?」

 

「暑さなんてへっちゃらよ?」

 

「ドイツのリューベックより暑かったが、風が入ってくるし辛いと思うほど暑くはなかったな」

 

「クリスと同意見。木下はどう?」

 

「待て、ワシを女の枠に入れるのではない!ワシは男じゃぞ!?」

 

はは、何を言っているんだい秀吉は。どこからどう見ても立派な美少女なのに。

 

『・・・・・』

 

と、そんなこんな話し合っているとハーデスが戻ってきた。

 

「お帰りハーデス。あのババァ長に何て言われたの?」

 

「どうで、システムの調整がミスった話をしていただけだろ?」

 

雄二と声を掛けると首を横に振られた。大して教えてくれずエスデスさんのところに近づいた。

 

「やるか」

 

『・・・・・(コクリ)』

 

二人共何をするのだろうか?様子を見守ると、ハーデスは鞄から・・・・・大量のスプーンと

器を取り出した。さらに様々な液体が入っている瓶を取り出し続け、

最後にはマントから店に置いてあるような大きいかき氷器を取り出した。

 

 

パチンッ!

 

 

エスデスさんが指を弾くと、かき氷器に一瞬で氷の塊が出来上がった。

こ、これは・・・・・まさかっ!?ハーデスが器をかき氷器に設置してペダルを掴むと回し始め、

 

 

シャリシャリシャリシャリッ!

 

 

削り続けて純白の羽毛と思わせる氷を器に盛り続けた。あとは青い液体を氷に掛けて

スプーンを氷に差し、

 

「おおっ、ブルーハワイ。私の好きな味だ」

 

それをエスデスさんが嬉しそうにハーデスから受け取ってかき氷を食べ始めた。

 

「かき氷!いいな、アタシも食べたいわハーデス!」

 

『・・・・・ムッツリーニ商店夏季限定かき氷。一杯、100円』

 

「お金を取る気!?でも、背に腹は替えれないからイチゴ味よ!」

 

一子がお金を払ってハーデスから所望した味のかき氷を受け取った。

 

「美味しいっ!生き返るわぁーっ!」

 

本当に美味しそうに一子がかき氷を食べる。お、美味しそうだ・・・・・他のクラスメートも見れば、

100円玉を手にしてハーデスの前に立ち並んでいた。はやっ!?何時の間に!

 

「ダ、ダメですよ!教室でかき氷を販売するなんて!」

 

「マヨは食べたくないの?」

 

「そ、それは食べたいですけど時と場所が・・・・・」

 

「ならいいじゃない。死神、レディーファーストで私とマヨにレモンと練乳をちょうだい」

 

『・・・・・200円』

 

「はいはい、払うって」

 

皆の心はかき氷に摑まれたと言っても過言じゃない。しばらくはこの状態が続きそうだ。

 

―――☆☆☆―――

 

『・・・・・手が疲れた』

 

「・・・・・おかげで儲かった」

 

昼休み。Fクラスにてハーデスはスケッチブックで意思表示してくる。お疲れさん。

 

「アハハ、Fクラスへ遊びに行ったら行列ができていて何だろうと思ったら死神君が

かき氷を販売していたなんてね」

 

「こんな暑い日には冷えた物を食べたがるのは無理もないわよ」

 

「そういうAクラスのお前らはかき氷を食べなくても良い設備で過ごしているじゃないか。

Bクラス以上のクラスにはエアコンがあるし、AクラスとSクラスは冷蔵庫、

リクライニングシート、各種飲料やお菓子が支給されているんだからよ。

Fクラスとは天地の差だ」

 

坂本が皮肉に言う。確かにその通りだ。冷蔵庫は氷も作れるだろうし、

わざわざかき氷を食べなくても良いはずだ。

 

「いいじゃない。死神が販売しているんだからアタシ達がかき氷を買って食べようが勝手でしょう」

 

「うーん、この練乳は美味しいねぇー」

 

「・・・・・美味しい」

 

「美味・・・・・」

 

Aクラスだけじゃなく、E・D・C・Bクラスの連中もかき氷の販売の話を聞き付け、

ムッツリーニ商店のかき氷は大評判。一時俺達も手伝う羽目になった。

氷が無くなる度にエスデスが氷を作ってくれるから問題は起こらなかった。

 

「ありがとうねハーデス。とっても美味しかったわ」

 

「かき氷が食えるなら補習も少しは我慢できるな」

 

「・・・・・唯一の楽しみができた」

 

「はい、とても美味しかったです」

 

「気が利くじゃないハーデス。見直したわよ」

 

周りから称賛の声が上がる。ハーデスはただ頷くだけだ。

 

「そう言えばハーデスはかき氷は食べんのかの?」

 

『・・・・・食べる暇はない』

 

「むぅ・・・・・なら、ワシのかき氷をあげるのじゃ。ほれ、あーんじゃ」

 

『・・・・・』

 

木下の宇治味のかき氷を乗せたスプーンがハーデスに突き出された。それを口の部分の

マスクを外して食べたハーデス。

 

「どうじゃ、美味しいかの?」

 

『・・・・・(コクリ)』

 

「「・・・・・っ!」」

 

「明久とムッツリーニ、血の涙を出すなって・・・・・」

 

男に嫉妬してどうするんだって二人共・・・・・・。

 

「アハッ、何だか面白そうだね。ボクもあーん♪」

 

今度は工藤が練乳味のかき氷をハーデスに食べ始めた。二度あることは三度ある、よって・・・・・。

 

「・・・・・死神、あーん」

 

霧島がイチゴ味のかき氷をハーデスに食べさせることは予想の内に入る。

 

「ほら、次は優子の番だよ?」

 

「なっ、何でアタシまで・・・・・!」

 

「だって、死神君が物欲しそうに優子を見ているよ?」

 

「骸骨の顔に赤い目で見られているようにしか見えないわよ!?」

 

尻尾があれば振っていそうな雰囲気を感じるのはどうしてだろうか?

 

『・・・・・くれないの?』

 

「うっ・・・・・わ、分かったわよ。ほら・・・・・」

 

すんなりとハーデスにオレンジ味のかき氷を食べさせた。もう少し否定的に拒むかと思ったんだがな。

 

「お、美味しい?」

 

『・・・・・美味しい』

 

何だか嬉しそうだ。口元も緩んでいる。

 

「エスデス、もう一度氷を作れ。私も食べさせたい」

 

「もう疲れたから無理だ。氷を作るのに気を使わないといけないんだぞ」

 

ヤクザとマフィアの娘達の話はこの際いいか。

 

「それにしても、ここの教室は暑いわね」

 

「こんなところで補習なんて結構キツいでしょ?」

 

「・・・・・死神、大丈夫?」

 

かき氷を食べたからと言って暑さが無くなったわけじゃない。またじわりと太陽光が

俺達の体温の温度を上げてくる。

 

『・・・・・』

 

ハーデスがミカン箱に何かを置きだした。

 

「ハーデス、それはなんだ?」

 

「綺麗ね。緑と青、白い結晶が盤の上に浮いているわ」

 

一子の言う通り。少し大きめの盤の上に大小様々な結晶がガラス製の球状の中で浮いている。

その結晶は淡く光って見つめていると結晶から冷気を感じる。

 

『・・・・・この結晶は風と水、氷の力が籠っていて起動するとエアコンみたいな役割をする』

 

パチンと何かが弾いたような音がした。すると、複数の結晶が縦横無尽に動き出して、

エアコンを起動させたような涼しさが感じるようになった。

 

「あ、涼しい!」

 

「凄いな。それも蒼天の商品か?」

 

「何時までも見てみたくなるわね」

 

女子には良好のようだった。蒼天が造るものはどれも心に印象を残す物ばかりだ。

 

「そういや、お前。学園長と何の話をしていたんだ?」

 

「あっ、そうだね。具体的なこと聞いていないよ?」

 

「そうだな。西村先生が学園長からの呼び出しとか言っていたし」

 

俺達の疑問はハーデスの行動で解消された。

 

『・・・・・試獣召喚(サモン)

 

黒金の腕輪で召喚専用のフィールドを展開し、お馴染のキーワードを口にするハーデス。

すると、ハーデスの背後に魔方陣のように幾何学模様が出現した。

そして、その中心から徐々に何かが姿を現す。

 

 

グオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!

 

 

「「「「「はいっ!?」」」」」

 

「「「「「ええっ!?」」」」」

 

 

現れたのは、全身が赤もよりも鮮やかな真紅のドラゴンだった。体長は二メートル

ぐらいで天井とぶつかりそうだ・・・・・。

 

「ハーデスの召喚獣、ドラゴンってどういうこと!?」

 

「もしかして、ババアのシステムの調整ミスだったりする?」

 

「・・・・・有り得る」

 

俺達の予想はハーデスが肯定と首を縦に振って頷いた。

 

『・・・・・俺達の召喚獣はオカルトの部分が濃く出て妖怪の類になっている』

 

「妖怪?俺達の召喚獣が?」

 

『・・・・・学園長のシステムの調整の失敗でそうなっている。

そして、俺達の召喚獣で肝試しをしようと考えている』

 

「「「「「肝試しぃっ!?」」」」」

 

この時期に肝試しって・・・・・いや、調整をミスしてオカルトの部分が濃く出て

妖怪に変貌した俺達の召喚獣が肝試しをすればPRに使えるからか?

 

『・・・・・秀吉、召喚獣を召喚してみろ』

 

「そうじゃの。では、試獣召喚サモンじゃ」

 

 

・・・・・ポンッ(猫又登場)

 

 

「なっ、ワシの召喚獣がどうして猫又なのじゃっ!?」

 

「可愛いね。秀吉に似合っているよ」

 

「どうやらハーデスや秀吉の召喚獣を見る限り、本当に俺達の召喚獣も姿が

変わっているようだな」

 

「・・・・・気になる」

 

皆も召喚する気満々のようだ。

 

「そんじゃ、一斉に召喚してみっか」

 

「そうね。きっとウチのは綺麗な姿に変わっているのかも」

 

「私はどんな姿でしょうか・・・・・」

 

「俺も気になるな!」

 

「俺様もだぜ!」

 

風間ファミリーも召喚フィールド内に入り、

 

 

『『『『『試験召喚獣召喚・試獣召喚(サモン)ッ!』』』』』

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

「「どういうことだババアァッ!」」

 

「「どういう事なんですか学園長ッ!」」

 

事の元凶である学園長に俺達は学園長室に飛び込んだ。

 

「なんだい、騒々しいガキどもだねぇ」

 

鬱陶しいそうに顔を歪める学園長。

 

「おいコラ。俺達の召喚獣に何てことをしてくれやがったんだ」

 

「なにって、死神から説明を聞いていないのかい」

 

「それが、どうして俺達の召喚獣がこんなことになっているのか説明しやがれ」

 

坂本が召喚フィールドを展開して、俺達が召喚獣を召喚した。猫又、デュラハン、サキュバス、壁、吸血鬼、サイクロプスetc・・・・・。

 

「教師の断りも無く召喚獣を喚び出してそんなに補習をしたいのかね?」

 

「俺達が補習を受けるよりも、この学園の長のアンタがシステムの調整を失敗したと

いう事実が世間に知れ渡ったら大変なことになるんじゃないのか?」

 

「別に失敗じゃないさ。それも一つの偶然起きた成功の一種だよ」

 

「紙一重な言い方をしやがる。素直に失敗したといえばいいのによ」

 

肩を竦め坂本は俺達の召喚獣を見据える。

 

「確かにハーデスから聞いたぞ。調整の結果オカルトの部分が色濃く出たとな」

 

「そうさね。オカルトといえばお化けだからね」

 

「でも、学園長。どうして僕の召喚獣はデュラハンなんですか?

お化けなら日本の妖怪とかもいっぱいいるはずなのに」

 

「それは召喚者の特徴や本質から喚び出される妖怪が決定するんだよ。観察処分者の

お前さんの本質はバカってことだね」

 

特徴や本質・・・・・ハーデスはドラゴンだから強いってことか?

そんな単純な特徴だったら姉さんもドラゴンだと思うが・・・・・。

 

『・・・・・力の塊。なるほどな』

 

ハーデスがそうスケッチブックに書いていた。力の塊か・・・・・。

 

「じゃあ、秀吉の特徴は『可愛い』ということらしいな」

 

「つ、ついにワシは召喚システムにまでそんな扱いを・・・・・」

 

「じゃ、じゃあ私のは一体何なんですか!?」

 

「姫路の場合は・・・・・私と同じ『大胆』だね」

 

「・・・・・ウチのは・・・・・・?」

 

島田の召喚獣はぬりかべ。・・・・・ダメだ、笑ってしまう・・・・・っ!

 

『・・・・・固い=気持ちが素直になれない?』

 

「いんや、出るところも出ていないからまな板―――つまり壁みたいなだってことじゃねーの?」

 

『・・・・・なんだ、ロマンチックじゃない方か。書いて損した。

島田にその手の事に関しては壁に等しいか』

 

「だっはっはっはっ!面白ぇっ!座布団一枚だハーデス!」

 

「島津、ハーデス。ちょっと表に出なさい」

 

二人に対し殺意を向ける島田だった。

 

「ムッツリーニは・・・・・血と女を求めているからか?」

 

「・・・・・そんな事実はない(ブンブン)」

 

いや、首を横に振っても今までのお前の言動を見るとそれでしかないんだがな。

 

「俺の場合は野生か?俺にピッタリだな」

 

「キャップのは風神だから自由や風ってことかしら?」

 

「だろうな。いやー、俺も雲の上に乗って飛んでみたいぜ!」

 

「俺様のってなんだ?」

 

「力しか特徴が無いんじゃないかな」

 

「そういうモロは・・・・・なんだ?」

 

「・・・・・聞かないで」

 

「大和の召喚獣って狐の妖怪よね?」

 

「狐の特徴は人をだます、狡賢いだから」

 

「あー、大和にピッタリだな。軍師だけあって相手の裏をかいたりとかするしよ」

 

・・・・・微妙に嬉しくない特徴だった。

 

「んで、ババァ。俺らの召喚獣、元に戻そうなんて考えはないんだろう?」

 

「せっかくの遊び心を無化にしたくないからね。今は夏だから肝試しにはもってこいの季節だろう?」

 

ハーデスが肝試しをやると学園長から聞いた話は本当のようだな。

 

「つまり、本当にババァは肝試しの季節に合わせて召喚獣も妖怪仕様にカスタマイズしたと言いたいのか?」

 

「そうさ。あれは夏休みでも登校する可愛い生徒達への、アタシからのささやかなプレゼントさ」

 

嘘くせぇ・・・・・ボウズだのガキだの言う学園長が可愛い生徒なんて言うわけがない。

 

「ん~・・・・・そうか。まぁ、ババァがそう言うのならそういうことにしておくか」

 

「え?本当のことを聞かないの?」

 

明久がビックリした表情で坂本に問うた。

 

「別にババァに『実は調整失敗だった』なんて言わせたところでメリットはないだろう。

それより、学園長のありがたい心遣いに甘えさせてもらおうぜ」

 

「甘えさせてもらうって・・・・・それってつまり、ハーデスが言った召喚獣を使って肝試しをやるってこと?」

 

「ああ。学園長もそれを考えた上でのプレゼントって言ってるんだろう?

達に召喚獣の異変が伝わった以上は、世間体を考えると学園側も何もしないわけにも

いかないだろうしな」

 

坂本の奴、明らかに学園長に対する皮肉な発言を言いやがる。

あいつが意味深な視線を送ると、学園長は小さく嘆息して頷いた。

 

「やれやれ・・・・・。どうやらアンタはこういうことにだけは頭が回るねぇ・・・・・」

 

暗に、それは調整を失敗したと認めた発言だった。

 

「蒼天のお偉いさんは良くもこんなババァで派遣させたもんだな。

これ以上失敗したら蒼天のお偉いさんが黙っていないんじゃないか?」

 

「・・・・・まあ、今のところ首の皮一枚繋がっている状態かもしれないさね」

 

学園長はうっすら額に汗を浮かばせてハーデスを一瞥した。『試験召喚システム』を

開発した蒼天はスポンサーも務めており、ハーデスはその蒼天からやってきた編入生。

ある意味、監視役として来たようなもんだろうと最近そう思うようになった。

 

「ねえ、大和。結局どうなるの?」

 

「まあ、俺達の召喚獣で学園長の尻拭いをするってことかな。

オカルト化になった召喚獣を肝試しに用いて元々考えていた計画通りにするんだ」

 

「?????」

 

ワン子は明久並みの思考能力だとは思わなかった。

 

「つまり、学園長は肝試しをやることで『元から計画していた出来事』にしようってことだよ。

まさか、学園長がシステムの調整ミスったなんて世間に伝わったら風評、評判が悪くなるからな」

 

「うーん。結局は肝試しをするんだよね?」

 

「そういうことだ」

 

大部分はピンとこなかったようだ。まあ、変な方向で捉えられるよりもいいか。

 

「じゃあ、そういうことで残りの二日の補習期間は肝試しってことでいいんだよな?」

 

坂本が嬉しそうに学園長に問う。さてはコイツ、最初から肝試しにかこつけて西村先生の補習を

潰す気だったな?気持ちは分からなくはないが、後々にとしわ寄せがくるぞ。

 

「いいや、ただの肝試しなら却下さね。あくまでも召喚獣は学習意欲向上のための

ツールだからね。見た目だけで楽しむのは授業の一環とは認めないよ」

 

そこだけは譲れない、と言わんばかりに学園長が首を横に振る。

つまり、どこかに点数を使った勝負の要素を織り込まなければダメということだろう。

 

「それならチェックッポイントでも作って、そこで勝負でもさせるか。それなら文句はないだろう?」

 

「そうさねぇ・・・・・。ルール次第だけど、それなら認めてもいいかもしれないね」

 

「よし。決まりだな」

 

坂本が満足そうに頷く。こうして、学園と試験召喚システムを使った一風変わった

肝試しが行われることになった。

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

その日の夜。蒼天が催しする二大大会の説明は全世界が注目していた。

今朝学校に現れた四人の王とゲストとして招かれた男がいた。

 

 

『今日のゲスト、ドバイの格闘王ミスマさん!

ミスマさんの格闘戦歴は123試合123勝123KOとまさに不敗!

財力と暴力を併せ持つ無敵のドバイ王!』

 

「史文恭ー見ててどう思う?」

 

「弱くは無いが、弱いな」

「それどっちだよ?」

 

 

『今、会場に来ているメス共に告ぐ。全員、俺のホテルについて来い。

そして、上手く私を気持ちよくさせれば一億やろう』

 

会場が異様な熱気に包まれた。

 

『哀しいなぁ・・・・・金に踊らされ誇りを失う家畜共』

 

「・・・・・ゲスが」

「ああ、こう言う格闘家がいると知れば嫌悪感を抱かない奴はいないだろう」

 

『そ、そんな横暴が許されると・・・・・!』

『俺は無敵・・・・・財力もある・・・・・力があれば何をしても良い。

世界は、圧倒的な力に支配されているのだ!』

 

高らかに格闘王はカメラに向かって発した。テレビに映っている華琳はカメラに

映っても構わないほどあからさまに嫌悪感を表情に出している。

 

 

『それじゃ、あなたの国の民は貧困に強いられているでしょうね。かわいそうに』

 

『ふん、弱い者は強者に食われ強者の為に踏み台となるのが世の常だ。蒼天もそうであろう』

 

『冗談じゃないわよ。あなたみたいな性欲の塊で財力と暴力でものをいわす頭まで

脳筋が治めている国とは違い、蒼天は自然豊かでできるかぎりの平等を求めている国よ。

不備があれば直ぐに対応して民の声を直で聞き、不満を解消するわ』

 

『やれやれ、世の中に平等など無理だとはわからない子娘だ』

 

『それをしようとしていない国の王に言われても空気のように言葉の力が空っぽよ?』

 

 

嘲笑を浮かべる華琳。自分より明らかに若い娘に貶されてドバイの格闘王は顔を引き攣らせた。

 

 

『蒼天の民共は見る目がないな。こんな子娘共を王にするとは。

しかも四人も同じ国に王など必要がないだろう』

 

『一つの国に一人しかいない王が国の全てを管理できているのかしら?

日本なんて借金大国で、中国は大気汚染、アメリカは治安の悪い街なんて数えるだけでも

きりがないわ。それに比べて蒼天は五つの区を分けて五つの区にそれぞれ私達が

治めれば治安や環境問題は解決するわ』

 

『簡単な数を間違えているぞ。五つの区に五人の王?この場に四人しかいない小娘の王が、

頭が幼稚レベルだったとはな?救いようのない』

 

『ああ、もう一人の王は出張中よ?今頃、ドバイにいるんじゃないかしら』

 

『・・・・・なんだと?』

 

『ふふっ』

 

 

その言葉に格闘王は目を見開き、華琳達に激しく睨みつけた。

 

 

『貴様ら・・・・・この俺様をゲストとしてこの極東の地に越させた理由は・・・・・!』

 

『さて、なんのことかしらね?私はただ出張と言っているだけあって、

あなたの会社をどうこうしていると一言も言っていないわよ?』

 

『(ギリッ)この、傭兵くずれの国がぁ・・・・・っ!』

 

『傭兵くずれの国、ね。まあ、他国から依頼を受けて物資や金銭など要求するから

否定はしないわ。蒼天は未来永劫、独立国家として存在し続ける』

 

 

威風堂々とした発言を全世界に告げた。

 

 

「うわぁ・・・・・テロリストみたいな発言」

 

「でも、蒼天は他の国より確かに凄く、そして強い」

 

「あ、格闘王が」

 

 

『お前らに告ぐ。今から俺様の女になれ。そうすれば今以上の暮らしができるぞ』

 

『私、強くて楽しい男が好きだから遠慮するわ』

 

『強さなら俺様が世界で一番強いぞ』

 

『あら、それじゃ川神百代を倒せるのね?』

 

『はははっ、勿論だ!』

 

『なら、その実力を私と勝負して見せてよ?10秒だけでいいからさ』

 

『ふん、そこまで言うなら見せてやろう』

 

 

しかし、雪蓮に3秒で瞬殺された格闘王だった。

 

 

『よわっ・・・・・』

 

 

『この程度の強さが川神百代のレベルだったら世界のレベルに呆れてしまうわ。―――でも、蒼天は違う』

 

 

カメラに向かって華琳達は言った。

 

 

『蒼天は他の国から傭兵の国と言われているけど逆に言えば強者が何万人もいるってこと。

―――全世界の強者達よ。戦う勇気がある者は8月30日に行われる武闘大会に参加しなさい』

 

『武闘会の参加資格の説明をします。年齢は無制限、武器は自由』

 

『ですが、こちらで用意する武器でお願いします。街中に武器を所持している人がいたら直ぐに警備の人達に捕縛されますので気を付けてください』

 

『その際、契約書を書いてもらうわよ。責任転換されたら堪ったものじゃないし』

 

『大会の当日まで皆さん強くなってくださいね!挑戦者の皆さん以外にも私達蒼天の人達からも参加します!』

 

『それと8月の下旬から9月の初旬までずっとお祭りをするわよ。大会が始まるまで祭りを満喫してくれると嬉しいわ』

 

『素敵な旅館やホテルがいっぱいありますので遠慮なく来てくださいねー!』

 

四人の王は席から立ち上がり、撮影場からいなくなろうとする。

 

『それじゃ、さっさと帰りましょうか』

 

『皆さん、お疲れ様でしたー』

 

『ご協力感謝します』

 

『帰ったらお酒を飲もっと♪』

 

 

「・・・・・最後まで自由な発言をしていたような」

 

「あの人も自由人だからなぁー」

 

「で、あの人は?」

 

「多分、蒼天にいるんじゃないかなー?」

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

「さて、あっちは上手くいっているかしらね?」

 

「大丈夫ですよ華琳さん」

 

「そうね。久々に仕事をして貰っているし、ヘマをするわけないじゃない」

 

「はい」

 

夜の七浜の中を歩く華琳達。帰りはしばらくすれば迎えに来るので中華街の店に

寄って購入した甘栗や肉まんなど食べて待っていた。

 

「この甘栗美味しいですね。作る人の腕がいいんですよねきっと」

 

「あの店ごとを蒼天に移住してもらう?」

 

「交渉なら私がするわよ?」

 

「穏便にお願いしますね」

 

少々荒事な交渉をしてしまうこともしばしばある同じ王の一人に苦笑を浮かべる月。

夜空には満月が浮かんでいる。

 

「あの満月・・・・・見ていると昔を思い出すわ」

 

「そうですねー」

 

「私をあの退屈な世界から連れ出してくれた夜と同じだわね」

 

「私も、大切なお友達と大変な目に遭っていた時、この満月の夜に助けてくれた思い出があります・・・・・」

 

四者四様・・・・・脳裏に浮かべるある人物との記憶。

 

 

『俺と一緒に来るか?』

 

 

たった一言で自分達の人生は生まれ変わった。退屈な毎日は無くなり、

何の取り柄がない自分に壮大なことを笑って任せてくれ、一緒に毎日楽しい生活をしようと

誘ってくれたあの男の笑顔を見て一緒に歩いて生きたいと思った。

だからこそ今の自分達がいると、桃華と華琳に雪蓮や月は思った。

 

 

「「「「これからもずっと・・・・・」」」」

 

 

ガチャッ!

 

 

「動くな」

 

 

何もない空間から100人程度の男女が現れた。

 

「手を後ろに回して立ち上がれ」

 

「あら・・・・・私達を誰か知っての言葉ね?」

 

「蒼天の東西南北の王であることは調査済みだ」

 

「お前達がずっと蒼天から離れる機会を待っていた。何せ上空だけじゃなく、

海域すら厳重な警戒で安易に侵入すらできなかったからな」

 

銃火器、刀剣を構えて囲む者達の台詞に華琳は嘆息した。

 

「それに比べて日本は簡単にテロリストに入られちゃってまぁ・・・・・」

 

「これだからどこぞの国に拉致されたり、不法侵入を許すのよこの国は」

 

「御託は良い。この数で我々の装備、丸腰なお前達がどうこうできるとは思えない」

 

「我々の人質となってもらおう」

 

「それはどうしてですか?お金ですか?」

 

「ふん、確かに資金も必要だが貴様らの軍事兵器がどこの世界も注目を集めている。その兵器を戦争に使用すれば敵なしだ」

 

テロリストの狙いが分かった。なら、この後自分達がどうなるのかすでに明白。

 

「あの機体は女しか乗りこなせないわよ」

 

「ならば、開発者達も要求し我らの為に男でも乗りこなせるようにして貰わないとな」

 

「それは良い明暗ね!」

 

不意に明るい声を発した雪蓮の手に赤く丸い飴玉みたいなものが摘まんでいた。

 

「でも、そう簡単にいくのかしらね?」

 

華琳の手にも同じ赤い飴玉があった。

 

「雪蓮。10分ぐらいかしら?」

 

「3分でいいんじゃない?」

 

意味深な会話が聞こえる。テロリスト達は訝しみ、銃口を華琳の額に突き付けた。

 

「貴様ら、いったい何の話をしている・・・・・?」

 

「飴玉を舐める時間よ。それぐらいいいでしょう?武器も持っていない無抵抗もできやしない私達の―――」

 

 

ガリッ!

 

 

「もしもこんな状況下に陥た時の切り札を使わせてもらうことをね」

 

舐めるどころか、噛み砕いた音が聞こえてきた。

 

「これ、成る度に個人差だけど・・・・・身体に異変が起きるのよねぇ?」

 

「しょうがないでしょ。それ相応の代償をなく絶大的な力を得れるわけ無いから」

 

「これを開発した彼も鬼畜だと思わない?」

 

「なら、使わなければいいじゃない」

 

「やーだ♪だってこれ・・・・・すっごく楽しくて興奮するんだもの」

 

華琳と雪蓮が朗らかに話し合っている間にも身体が変化していた。

二人の身体は青と赤のオーラに包まれ何かの形へと成っていく。

 

「二人だけ任せちゃダメよね」

 

「はい、私達も・・・・・」

 

桃花と月も赤い飴玉を噛み砕き、緑と白のオーラに包まれ始めた。オーラに包まれた

4人の姿が見えなくなったところで形が具現化したようにテロリスト達を見下ろす形になった。

背中を合わせる4人は翼を生やし、トカゲのフォルムをした姿になった。

それはまるでドラゴンそのもの。赤いドラゴン、青いドラゴン、緑のドラゴン、

白いドラゴンが100メートルの高さからテロリスト達を見下ろし睨みつけた。

 

「なっ、なんだこれはぁぁぁああああああああああああああああああっ!?」

 

「そ、蒼天の王達が、ドラゴンになっただと・・・・・っ!」

 

「こんな情報は知らない!―――まさか、さっきの赤い飴玉か・・・・・!」

 

4体のドラゴンの出現に慌てふため、恐れ戦く敵の周囲に幾何学的な魔方陣が幾重にも現れ、

ドラゴンたち諸共囲んだ。

 

『一人残らず・・・・・潰すわよ』

 

『私に任せてもいいのにぃー』

 

『ダメです』

 

『一度、見境なく暴れて大変でしたよ!』

 

『はいはい、分かったわよ。そんじゃ―――狩を始めましょう。それも一方的な蹂躙を』

 

赤いドラゴンの言葉を有言実行したドラゴン達。灼熱の炎を吐き相手を焼失、

手を振るって鋭利な爪で一気に数人の身体を引き裂き、野太い尾で薙ぎ払い、

巨大な足跡を残すぐらい足で踏みつぶしたり―――100人もいたテロリスト達を

一人残らず命を狩った。

 

「ふぅ・・・・・しんどいわねこれ」

 

「でも、敵を倒せましたから」

 

「武器を持っていたらこんな疲労をしなくても良いけれど、

そうも言ってられない世の中ねやっぱり」

 

「この世から戦争なんて無くさないとダメですよね」

 

元の姿に戻った4人の王達の双眸は垂直のスリット状に成っていた。

 

「3人とも。ドラゴンみたいな目になってますよ」

 

「私達4人がそうなっているんですよ」

 

「この程度の変化なら問題ないわ。しばらくすれば元に戻るだろうし」

 

「さっきのテロリストでいい時間つぶしができたんじゃない?そろそろ迎えが来る―――」

 

雪蓮の視界の端に倒れていたはずのテロリストが動いた。

 

「こ、このままではすまさん・・・・・ぞ・・・・・っ」

 

上半身だけ起こし、銃を前に構えたテロリスト。―――その真上、闇に包まれた空間に一筋の光が

闇を裂くように物凄い速さで落ちてテロリストを轟音と共に呑みこんだのだった。

 

「これは・・・・・!」

 

6対12枚の翼を背に生やす金色の十字架。

さらにその上から12枚の金色の翼を生やした真紅の長髪の少年が舞い降りた。

 

「油断大敵、だぞお前ら」

 

「・・・・・遅いわよ。何していたのよ」

 

「ここに来た時点でお前らがアレを使ったから様子見をしていたんだ。まーさか、討ち漏らしていたとはな」

 

「来ていたならさっさと現れなさいよ。こっちはアレを使わざるを得なかったんだから」

 

「はいはい、悪かったよ」

 

翼を4人の前まで伸ばし包めば夜空に舞い上がった。

 

「蒼天に、家に戻るぞ」

 

「「ええ」」

 

「「はい」」

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