バカと真剣とドラゴン―――完結―――   作:ダーク・シリウス

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夏六問

【To:吉井明久 From:死神・ハーデス    ハーデス、海に行くけどハーデス達もどう?】

 

【To:死神・ハーデス From:吉井明久    ・・・・・林冲達を連れて行ってくれ。

   俺は行かない】

 

 

【To:吉井明久 From:死神・ハーデス    ハーデスは行きたくないの?】

 

【To:死神・ハーデス From:吉井明久    ・・・・・俺の家にプールがある】

 

 

【To:吉井明久 From:死神・ハーデス    そういえばそうだったね】

 

【To:死神・ハーデス From:吉井明久    ・・・・・お前達だけで楽しんで来い】

 

 

【To:吉井明久 From:死神・ハーデス    ・・・・・うん、分かった。死神の正体を皆にバラす】

 

【To:死神・ハーデス From:吉井明久    お前・・・・・吉井明久じゃないな・・・・・っ!?】

 

 

 

『・・・・・吉井明久。俺を蔑ろにしたいのか・・・・・?』

 

「ご、ごめんハーデス。どうしても霧島さんのお願いに断われなかったんだよ・・・・・・」

 

「ハーデス、お前の気持ちは俺が一番よく分かるぞ」

 

「・・・・・気の毒」

 

「ハーデスも雄二と同じで霧島に逆らえないのぅ・・・・・」

 

海水浴当日。川神駅で集結しつつある僕ら。既に僕や雄二、ムッツリーニに秀吉の男子陣と

島田さんと姫路さん、霧島姉妹、秀吉のお姉さんに工藤さんが集まっている。

林冲さん、楊志さん、史進さん、武松さん、公孫勝さん、史文恭さん、極道さん、

エスデスさん達もハーデスと一緒に来て久し振りに再会した。

 

『・・・・・ところで、そこにいる女性は誰だ?』

 

「あ、そうだったね。ハーデス達は知らないよね。―――僕のお姉さんの」

 

「初めまして、吉井明久の肉奴隷の吉井玲です」

 

って、何を言い出すんだこの駄姉はぁーっ!?

 

『・・・・・蒼天に移住する事を勧めるぞ。近視結婚ができるからな』

 

「待って!?僕と姉さんの関係はそんなんじゃないんだぁー!」

 

「蒼天は何時かアキ君と一緒に移住する予定ですのでその御誘いはありがたく受けます」

 

「姉さん!姉弟同士は結婚できないよ!?」

 

「蒼天に移住すれば問題ありません♪」

 

ダメだ!どこからどう突っ込んでいいのか分からない!

 

『・・・・・吉井明久のことどう思っている?姉として』

 

「異性として好きです」

 

『・・・・・頑張れ、吉井明久』

 

「ハーデス!?そこは非常識な僕の姉さんに何か一言!それを言ってちょうだい!

諦めが早過ぎるよ!」

 

『・・・・・この人から感じるお前に対する愛情が俺の範疇を超えている。末長く幸せに』

 

ダメだ、ハーデスでさえも姉さんに関わりたくないって感じがしてどうしようもない!

 

『・・・・・直江大和達は?』

 

「ああうん。もうそろそろ来るんじゃないかな」

 

海水浴を提案したのは風間ファミリーからだ。何でも沖縄旅行券を当てたらしくてそれで

「皆行こう!」と翔一の鶴の一声で決まったそうだ。

 

「遠出なんていつ以来かなー」

 

「そうだね。僕もワクワクしているよ」

 

工藤さんの発言には僕も同意できる。今日は思い切って泳いで海の家の食べ物を食べたり、

バーベキューとかして楽しみたい。

 

「おーい、お前らー!」

 

僕らに大声で話しかけてくる聞き慣れた友達の声。これで全員揃ったね。

 

「よーし、全員集まってんな。そんじゃ、沖縄に行くぞぉー!」

 

『『『おおーっ!』』』

 

 

 

空港までの道のりは電車やバスで・・・・・と思ったんだけど、

ハーデスが用意してくれた蒼天のバスに乗り込んでいざ―――空を飛ぶバスは沖縄に向かっている。

 

「ちょっ!空飛ぶバスって常識外れじゃないかな!?」

 

「しかも、運転してんのがハーデスって・・・・・」

 

「・・・・・物凄い速さ」

 

「度肝を抜かれたのじゃ・・・・・」

 

道路だと数時間掛かるはずなのに空からの移動だと一時間ぐらいで着きそうだ。

 

「あいつ、無茶苦茶じゃないの・・・・・」

 

「す、凄いですねハーデス君は・・・・・」

 

高速で飛行するバスは山を越え、川を越え、谷を越えと進んでいく。あっ、富士だ。

 

「なあ、明久」

 

「なんだ?」

 

「ハーデス、あの恰好のまま砂浜にいると思うか?」

 

「雄二、それはもう今さら何だと思うけれど・・・・・なにを企んでいる?」

 

「いや、ただ単純に思った事を言ったまでだ」

 

青い空、白い雲、目の前は大海原。そして、砂浜に死神の格好をした人物―――。

 

「ぶほぉっ!」

 

「うおっ!?いきなり噴いてどうしたんだ!?」

 

「ご、ごめん・・・・・ハーデスが砂浜に立って佇んでいる想像をしたら

堪え切れなくなって・・・・・」

 

「・・・・・ああ、確かにナンパの魔除けになるだろうな」

 

「ん?何の話をしているんだ」

 

ガクトが話に入り込んできた。

 

「ハーデスがナンパの魔除けになるなって話だ」

 

「何だお前ら、ナンパをする気なら俺様も参加するぜ」

 

「いやいや、僕らじゃなくて女子のだよ」

 

「なんだ、そう言う事なら俺様が姫路達のボディーガードをしても変わらないだろう」

 

そりゃそうだろうね。鉄人並みではないけど、鍛え上げられた肉体のガクトを見れば

ナンパなんてする気失せるだろう。

 

「ガクト。風間ファミリーの中で一番モテる男のメンバーで誰?」

 

「悔しいがキャップが断トツだ。あの野郎、子供がそのまま成長した感じだから女に

興味がないんだぜ?男としてあり得ないだろう?」

 

「エロ本を見せたらどうなる?」

 

「普通の反応。興奮なんてしないんだあいつ」

 

な、なんだと・・・・・?

 

「ま、キャップに言い寄ってくる女共は全てモモ先輩に持って行かれるだろうがな」

 

「「納得できる」」

 

翔一がそうならハーデスはどうなんだろうな・・・・・。

 

「ナンパするなら俺様にも声を掛けろよな!喜んで付き合ってやるぜ!」

 

嬉々と笑みを浮かべるガクトは僕らから離れて行った。

 

「そういや・・・・・女子達の姿が見えないな?」

 

雄二の何げない一言に僕も気付いた。女の子の声がしなくなっていたのだ。

どこにいるんだろうか?

 

「・・・・・奥の部屋で一足早く水着に着替えている」

 

「わっ、ムッツリーニ」

 

僕の背後に影の如く佇んでいたエロの権化。

 

「どうした、女子の着替えを覗きに行かないのか?」

 

「・・・・・(フルフル)」

 

「珍しいな。盗撮しに行かないなんて」

 

「・・・・・ハーデスに『バスから落とされたくなければ大人しくしろ』と

 言われた・・・・・っ」

 

釘を刺されていた寡黙なる性識者は悔しげに奥歯を噛みしめていた。

 

「まあなんだ。ハーデスに逆らえるやつは翔子ぐらいだろう」

 

「雄二も、男らしく霧島さんの妹にガツンと言えなくちゃね」

 

「その言葉、そのままそっくりお前に変えてやるぜ明久」

 

「・・・・・どっちも同じだと思う」

 

「「こいつと同列の扱いをするなムッツリーニ!」」

 

何て事を言うんだムッツリーニ!この赤ゴリラと一緒にされて―――!

 

「何を騒いでいるんですかアキ君?」

 

「姉さん?って・・・・・」

 

水着に着替えていた姉さんが戻ってきた。だが・・・・・信じられない水着を身に包んでいた。

 

「・・・・・っ!?(ブシャァァァァッ!)」

 

「おおう・・・・・」

 

「―――どうしてスクール水着なんて着ているの姉さぁぁぁああああああああああんっ!?」

 

―――☆☆☆―――

 

バスに乗ること約一時間弱。

長い空の旅を経てたどり着いた沖縄は、白い砂浜と青い海がまた夏の季節だと実感させてくれる。

 

「わぁ・・・・・。眺めも良いですね・・・・・」

 

「凄いわね~。風も気持ちいいし」

 

「・・・・・絶好のロケーション」

 

「晴れて良かったよね~」

 

バスは小高い丘の駐車場にハーデスが停車させた。外に出た俺達は既に水着姿で

ブルーシート、パラソルとその他定番の様々な物を持って浜辺に移動中。

 

「今思えばよ。このバスは寝室もあるから泊まり込みもできるよな」

 

「流石にお風呂は無いからどこかの温泉に入るしかないよね」

 

「それは後で調べよう」

 

賑やかに大勢で浜辺に到着して色々と準備をし始める。

 

「にしても・・・・・・このパラソル大きいよな」

 

「学校のテント並みだな。これ、ハーデスが用意したんだって?」

 

「ブルーシートも大きいよ」

 

ブルーシートを敷けば、五つほどの巨大なパラソルを星の形に差して傘を展開する。

こうすると広範囲に影ができて寝転がれるから良いんだよな。

 

「で、ハーデスと土屋?お前らは何をしているんだ?」

 

「・・・・・機材の準備」

 

『・・・・・夏の思い出を残す準備』

 

二人揃ってカメラや色んな機材を弄っては組み立てている。二人の胸に秘めている

思いは違っているかもしれないがな。

 

「さーて、準備もできたし思いっきり遊ぶとしようか!」

 

「そうね!もう遊びたくてウズウズしていたわ!」

 

「そんじゃ、昼時になるまで各自自由に行動しよう」

 

風間ファミリーの俺達はイキイキと砂浜を蹴って海に向かった。

 

 

 

ひとしきり泳いだ吉井明久達をバスから数個のスイカと同じ数のバットを持ってきた

ハーデスの赤い目が捉えた。ずっとハーデスはバスの中で過ごしていて昼頃になれば

ようやく姿を現したのだった。浜辺に現れたハーデスを吉井明久達が近づいた。

 

「あっ、僕が持ってきたスイカと他にもスイカがある。ハーデスが持ってきたの?」

 

『・・・・・(コクリ)』

 

「スイカとバットを用意しているとは、明久とハーデスは気が利くな」

 

「海と言えばスイカ割りだからね。きちんと冷やしておいたし、きっと美味しいはずだよ」

 

「・・・・・暑くて喉も渇いているから、楽しみ」

 

三人はスイカを楽しみにしてハーデスから手渡されたスイカを見ていた。

 

「そういや、そろそろ昼時か。スイカとは別に昼飯も調達しておかないといけないな」

 

「え?塩水がいっぱいあるじゃない」

 

「平然とその答えを返せるお前って、ある意味凄いよな・・・・・」

 

「・・・・・よく生きていると思う」

 

『・・・・・度肝抜かされた。サバイバルで生き残りそうな奴だ』

 

唖然と坂本雄二と土屋康太が言葉を返した。

 

「火を起こせるのなら、海で貝を採っても面白そうだな」

 

「あ、それいいね。持って帰れば味噌汁とかにも使えるし」

 

「あとは海の定番の焼きそばやカレーやイカ焼きあたりもいいが―――ん?どうしたムッツリーニ?」

 

「・・・・・・あれ」

 

坂本雄二が尋ねると、土屋康太は遠くに見える女子達の姿を指差した。

誰かと話している様子で―――。

 

 

『カワイイ子ばっかりだね~。何?どっから来たの?』

 

『誰だ貴様は?馴れ馴れしく私達に話しかけてくるな。―――氷漬けにするぞ』

 

『それともヤクザとマフィアの娘に手を出して命を捨てる覚悟があるんだな?』

 

『ヒッ!?し、失礼いたしましたぁ~っ!』

 

 

「・・・・・ナンパのようだが、あの面子なら放っておいても問題ないと思う」

 

「・・・・・敵に回したくない存在が紛れ込んでいる」

 

『・・・・・一般人からしてみればそう思うのは自然の摂理と同じだ。

坂本雄二、吉井明久、土屋康太』

 

「「「うん?」」」

 

『・・・・・バスの荷物入れの中にバーベキューセットや食材を入れてある。暇なら手伝え』

 

「おっ、そうなのか?定番の料理の食材なんだな?」

 

『・・・・・(コクリ)』

 

「よし、そう言う事なら手伝おう。本当、ハーデスは何でも揃えてくれるから頼りになるぜ」

 

「秀吉達も呼んでくるね」

 

「・・・・・手伝う」

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

「うわー、美味しそう!」

 

「何時の間にこんなたくさんの食材と調理道具、食器を持って来たんだ・・・・・?」

 

「何だっていいだろう?ハーデスが用意してくれた食材をじゃんじゃん使って美味しく作ろう」

 

「ああ、いまはイカ焼きや焼きそばを作ろう―――おい京、その激辛な香辛料を俺に寄こせ。

お前は俺達の味覚を破壊したいのか」

 

「辛いだけで姫路のような激マズの料理よりマシだと思うけれど?」

 

「翔一、串焼きを焼くの美味いねー?」

 

「サバイバルの基本だからよく旅人さんに教わったんだ」

 

「あ、あの・・・・・私も何か手伝わせてください」

 

『『『俺達男がするからお前は何もしなくて良いから!』』』

 

姫路の料理はワシらを殺すことができるからの・・・・・流石に海まで来て姫路の料理

など食いとうないのじゃ。野菜を切る物と食材を焼き、

炒める者と分担して着々と料理を仕上げていく。

 

「ハーデス。飲み物はあるのか?」

 

『・・・・・バスの中の冷蔵庫』

 

「冷やしているのか。島田、悪いがバスから飲み物を持ってきてくれるか?」

 

「しょうがないわね」

 

「・・・・・・私も行く」

 

「なら、ボクも行こうかなー」

 

「きっと多いでしょうからアタシも行くわ」

 

姉上達が飲み物を取りに行ってくれた。その間に料理も完成している頃じゃろう。

 

「ご飯も炊いてあるなんてな」

 

「というか、釣り竿やモリまで持ってきているんだけど?」

 

『・・・・・夜食』

 

魚介類を採ろう思っているのかの?

 

「よーし、焼きそばとイカ焼きに串焼きは完成したな。残りの食材は夜にとっておこう。

あとはカレーの完成と島田達が来るのを待つだけだ」

 

「お腹が空いたわー」

 

完成した料理は紙皿の上に盛られていき、人数分の用意ができると島田達を待った。

 

 

~~~しばらくして~~~

 

 

ジュースのペットボトルを持ってきた島田達がようやく戻ってきた。

それにしても飲み物を持ってくるだけで随分と掛かったのぉ?

 

「お帰り。結構時間が掛かったね。どうしたの?」

 

「あはは、またナンパされちゃったんだよね」

 

「え?また?」

 

女子だけで取りに行かせたのは拙かったかの。

 

「さっきは特に、美波ちゃんと翔子ちゃんに翔花ちゃんが随分と迫られて困ってましたよね」

 

島田が苦笑いを浮かべながら島田と霧島姉妹に視線を送る。

 

「ホント、ウチああいうのって苦手なのに・・・・・」

 

「・・・・・私も、苦手」

 

「私も・・・・・」

 

執拗に迫られていたという三人は疲れた顔をしておった。

 

「ふえ~。それは大変だったね」

 

「いつものように腕力で片付けてやれば良かったんじゃないか?」

 

言いながら、雄二と明久は荷物を受け取ろうと手を伸ばす。

 

『・・・・・翔子、愛子、優子。大丈夫だった?』

 

ハーデスは霧島だけではなく、姉上や工藤にも声を掛けた。

 

「ええ、なんとかね・・・・・でも、次は死神も一緒に来てちょうだい。

ああいうナンパは男でないと執拗に迫ってくるから」

 

「・・・・・心配してくれてありがとう」

 

「優子の言う通りだね。今度はボク達と一緒に来て?」

 

『・・・・・ん、了解』

 

姉上達の頭を撫で始める。姉上は照れくさそうに顔をそっぽ向け、

工藤と霧島は嬉しそうに目を細めた。対して―――。

 

 

「こら吉井。アンタ、それだけしか言えないワケ?」

 

「吉井君。それはちょっと冷たいと思います。ハーデス君に見習ってください」

 

「雄二・・・・・女心がわかっていない。もっと、ヤキモチを妬いたり死神のように

心配するべき。」

 

「え?えーと?」

 

「いや俺なりに心配していると痛だだだっ!ちょっと待て!お前が俺に何を要求しているのか

さっぱり分からねぇ!」

 

「姉さんが羨ましい・・・・・雄二はどうして死神のようになれないのか不思議でしょうがない」

 

「あいつはあいつで俺は俺だ!って、ふぐぁぁあっ!」

 

 

こっちはこっちで、穏やかな雰囲気ではないのじゃ。

 

「おーいお前ら。戻って来たなら飯にしようぜ。せっかく作った料理が冷めてしまうって」

 

「話は食べながらでもできるからそうしてちょうだい!アタシはもう腹ペコで我慢できない

自信があるわよ!」

 

「犬。そこは辛抱強く待つんだ」

 

直江達がそう催促してきおった。そうじゃな、楽しいイベントを嫌悪の雰囲気にはしたくないのじゃ。

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

「うーん、美味しいわ!」

 

「海で食べるのと大勢で食べているからより美味しく感じるよな」

 

パラソルの下や立食している皆。和気あいあいと海の定番料理を食べている。

 

「あの、死神・・・・・私の水着姿はどうですか?」

 

林冲さんがおずおずとハーデスに聞いていた。彼女は黒いビキニに同じ色のパレオを

腰に巻いた水着姿。

 

『・・・・・自分で買って来たものか?』

 

「楊志達と一緒に買ってきました。・・・・・その時大変な目に遭いましたが」

 

いきなり涙目になって肩を落とす林冲さんの頭に包帯らだけの手が置かれた。

 

『・・・・・綺麗だ。可愛いぞ?』

 

「そ、そうですか・・・・・」

 

褒められて安心したのかホッと息を漏らした。

 

「なら、私の水着の評価を言ってもらおうか?」

 

エスデスさんが不敵な笑みを浮かべて白い水着をセクシーポーズをしながら

ハーデスに尋ねたら・・・・・。

 

『・・・・・エスデスの健康的な肌と相まって美がより引き出されているな』

 

「ふふっ、そうかそうか。お前が私に見惚れるほどの美しいというわけだな?」

 

『・・・・・ノーコメント』

 

素直じゃないなぁハーデス。

 

「エスデスより私の方が綺麗ですよね?」

 

極道さんがズイとハーデスの前に出た。彼女はフリルが付いている可愛らしい水着を

着ていて彼女の場合は綺麗というより可愛いが表現しちゃうね。

 

『・・・・・人の魅力はそれぞれ。遼子は綺麗より可愛いほうだから―――抱きして頭を

撫でたくなる』

 

「どうぞ、抱きしめていいですよ?―――お兄ちゃん」

 

『・・・・・分かった』

 

ハーデスの褒め言葉に嬉しいのか両腕を広げて待ち構えた彼女だった。ハーデスはすぐ

さま有言実行をした。

 

「はふぅ・・・・・」

 

幸せそうに漏らす極道さん。これを見た霧島さんも自分もとハーデスに訴えて

極道さんと同じようにされた光景を―――。

 

「死神君、ボクと優子にもお願いねー♪お兄ちゃん」

 

「ちょっ、愛子なに言ってんのよ!?」

 

「なんだか楽しそうだな!兄ちゃん俺も俺も!」

 

プチ☆ハーデスが抱き締める会が始まった。

 

「うーん」

 

「どうした?」

 

「うん、僕らの周りに美少女が多いなって思って」

 

そう言いながら僕はその内の一人の秀吉に視線を送る。

 

「・・・・・なぜそこでワシの顔を見るのじゃ」

 

「なるほど。それでお前は自分と比較して落ち込んでいるのか」

 

「・・・・・可哀想に」

 

蔑まれたような気がするけれど・・・・・気の所為だよね?

 

「イヤ、別にそんなわけ無いんだけど?それにほら、僕らの他にも大勢の女の人もいるしさ」

 

「ああ、女だけのグループもいるしナンパをする男だっていて当然だ。

なんだ、自分もナンパされるんじゃないかって思っているのか」

 

「・・・・・鏡で自分の顔を見てから言え明久」

 

気の所為じゃなかった・・・・・っ!

 

「それなら僕よりブサイクな二人はどうなんだよ!逆ナンされると思っているのか!?

僕は断言するね!絶対二人はモテないっ!」

 

「なんだとっ!?」

 

「・・・・・不名誉な・・・・・ッ!」

 

ハーデスはもう論外。あの格好でモテる訳がないからね。

仮に僕がモテなくてもこの二人よりはモテている!

 

「ふざけるなっ!俺がお前より容姿で劣っているとはセーラー服で自己紹介をした

お前に初めて会ったときから微塵にも思ったことがない!」

 

「・・・・・撤回を要求する・・・・・っ!」

 

「いーや、絶対に僕が間違っていないね!」

 

「バカな思考がついにそこまで至ってしまったか明久!だったら勝負しようぜ。

どっちがモテるのかをな!」

 

「・・・・・明久には負けれない・・・・・っ」

 

「あーいいよ、やってやろうじゃん!僕が本気を出せば―――」

 

つい熱く口論してしまった。だけど、譲れないことには絶対に負けたくない!

 

「本気を出せば・・・・・なんですか吉井君?」

 

「吉井。本気で、何かしら?」

 

なぜだとう。日差しが強くて暑いのに急激に寒気を感じる・・・・・。

背後を振りむいちゃダメだと僕の第七感が全力で言ってくるし・・・・・ここは前を

向いたまま言おう。

 

「えーっと、本気で、その・・・・・」

 

「まさか、モテる、とでも言うんですか?吉井君が?」

 

「吉井。アンタ何を言ってるの?アンタにナンパどころかモテるなんて有り得ないじゃない」

 

「む」

 

「そうですよ。吉井君にナンパ何て似合いませんし、うまくいくとも思えません。

見栄を張っちゃダメです」

 

「むむ」

 

「アキくん。人には向き不向きというものがあります。アキくんは恋愛事全般に

向いていませんから、異性との交遊はお友達までにしておくべきだと思います」

 

「むむむっ」

 

隣で聞いていた姉さんまで口を挟んできた。なんて酷い言われよう。

僕だって、本気を出せばナンパくらい・・・・・!

 

「雄二も・・・・・全然女心が分かっていない。だから・・・・・モテない」

 

「く・・・・・っ!言ってくれるじゃねぇか・・・・・っ!」

 

霧島さんの妹に言われている雄二が呻く。

 

「まあまあ、三人とも。明久と坂本はついカッとなって言ってしまっただけなんだ。

二人が本気でナンパするわけがないだろう?」

 

大和・・・・・。僕らをフォローしてくれるなんて・・・・・。

キミという友達を得て僕は嬉しいよ。

 

「直江君は黙っててください」

 

「そうよ。これはウチらの問題なんだからね」

 

「申し訳ございませんが横から口を挟まないでください」

 

でも、この三人はそれを無化にしてしまった。

 

「・・・・・ハーデス。バトンタッチ」

 

嘆息した大和が何故かハーデスと手を叩いて交代した。

 

『・・・・・吉井玲さん』

 

「はい、なんでしょうか?」

 

姉さんに何を聞くんだろう・・・・・?しかもこの声って・・・・・大和?

 

『・・・・・明久が異性と恋愛関係をしてはいけないのか?』

 

「ええ、愚弟が女の子と付き合っても幸せにはならないでしょうから。

ですので、全面的に異性との恋愛は禁止しているんです」

 

『・・・・・じゃあ、仮にだが。―――この中に明久に好意を抱いている女子がいても、

真正面から明久との正式な付き合いは認めないと?』

 

ちょっ、ハーデス!?キミは何て質問をするんだい!?僕のことが好きな女子が

この場にいるわけがないじゃないか!姉さんは顎に人差し指を当てながら悩む仕草を

して「そうですねぇー」と口にした。

 

「先ほども言ったように異性との交遊はお友達までにしておくべきだと思います。

アキくんが女の子と付き合って幸せになるとは思えませんし、

女の子に対してそこまで甲斐性があるとは思えませんので」

 

『・・・・・なるほど、質問に答えてくれてありがとうございます。(カチッ)―――証拠として

録音させてもらった』

 

ろく・・・・・おん・・・・・?まさか、ハーデス・・・・・。

 

『・・・・・その言葉に二言はないですね?』

 

「はい、勿論です」

 

『・・・・・なら、アンタも吉井明久と恋愛することもできないよな?―――異性だからよ』

 

ハーデスの言葉は姉さんの目を丸くするのに十分なほど効果的だった。

 

「ハーデス君・・・・・あなた・・・・・」

 

『・・・・・女であるアンタも吉井明久と恋愛はできない。それを自分で言ったからには

責任を取ってもらおうか?吉井明久の幸せを願っていない姉として失格な冷たい女』

 

「僕の幸せを願っていない・・・・・・?」

 

『・・・・・そうだろう?そうじゃなきゃ、女と恋愛関係にはなるなとは言わない。

つまり、お前は一生一人寂しく独身を貫かざるを得ない暮しをして冷たい姉に

従わされる人生を送らされるんだ。それをお前は幸せだと思うか?』

 

そう言われて僕は・・・・・目を丸くしたまま、姉さんを見つめた。思えばそうだ、

ハーデスは知らないだろうけど姉さんは期末が始まる前に僕の様子を確認しに

アメリカから来たんだ。それからというものの、理不尽な点数をつけられたり、

姉さんの非常識な言動に翻弄されたり、僕自身も悪いけれど酷い言われようも

何度か・・・・・。そう思うと何だか悲しくなってきた。

 

「・・・・・そうなんだね、姉さん。別に僕を幸せになって欲しくなかったんだね。

他の女の子と付き合っちゃいけないのは僕の人生を自分の玩具のようにしたかったんだね」

 

「アキくん。それは―――」

 

「ご、ごめんね・・・・・出来の悪い弟を見にわざわざアメリカから来てもらってさ。

僕、二学期から一生懸命勉強をして良い会社に務めれるように頑張るよ。

それで僕は一人で暮らすからそれでいいでしょう?だから、二学期の成績が良かったら

母さんに説明して姉さんをアメリカに戻ってもらうように説得するよ。

もう一人でも大丈夫だっててさ」

 

「―――――っ!?」

 

あれ、姉さんが酷く驚いた顔をしているよ。こんな姉さんを初めて見た。

 

「雄二、せっかく海に来たんだからもう一回ぐらい泳ごうよ」

 

「あ、ああ・・・・・そうだな。ハーデスの話を聞いて俺も理解したぜ。

翔花も理不尽な暴力をしてくるのは俺のこと何とも思っていなかったんだろうしな」

 

「ち、ちが・・・・・」

 

「強化合宿の時、俺が覗きをしていないって弁解してもお前・・・・・俺の話を

聞かなかっただろう?」

 

「っ・・・・・」

 

酷く霧島さんの妹が狼狽した。そういえばそうだね、すっかり忘れていたよ。

あの時の真犯人もまだ捕まっていないし。

 

「俺のことが好き好きと言いながら全然話を聞いてくれないじゃないか。

そんな女を彼女にしたら浮気と勘違いされる度に拷問されると、こっちが潰れてしまうぜ」

 

「ゆ、雄二・・・・・」

 

「よーし、明久!女に嫌われ者同士、思い出になるぐらいナンパなんてくだらねぇことを

しないで遊ぼうぜ!」

 

「そうだね。女の子にモテないって姉さんのお墨付きだし、

これからの人生は一匹狼で生き抜いて行こうじゃないか!」

 

「その意気だ明久!おら、ムッツリーニと秀吉もいつものようにバカ騒ぎしようぜ!」

 

「う、うむ・・・・・」

 

「・・・・・了解」

 

空元気な僕達を汲んでくれる秀吉とムッツリーニ。秀吉は一瞬、

ハーデスを見たけれど僕らと一緒に海へ駆けた。

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

「ハーデス、アンタってやつはぁ・・・・・っ!」

 

「最低ですよ・・・・・ハーデス君・・・・・!」

 

『・・・・・何のことだ?俺は事実を聞き言ったまでだ。』

 

「雄二に・・・・・酷い誤解をされた・・・・・」

 

『・・・・・霧島翔花に至っては坂本雄二がこの場の雰囲気に感染してああ言ったまでだ。

だが、事実だろう?アイツの話をちゃんと聞いたことがあるか?』

 

「・・・・・」

 

『・・・・・全ては、お前らの言動から招いた結果だ。

俺が悪いと思うならまず自分の言動を見直して、改善してから思えよ』

 

ハーデスに向けられる敵意と怒り・・・・・。まさか、こんな展開になるとは予想外だった。

 

『・・・・・姫路瑞希と島田美波が吉井明久に好意を抱いても付き合うことができないな。

吉井玲が断固拒否、認めないってお前らの前で言ったからな』

 

「ひ、酷いですハーデス君・・・・・っ!」

 

「ウチらがアンタに何をしたって言うのよ!?」

 

『・・・・・なにも?ただ、お前らが吉井明久に対するお仕置きと称した拷問に暴力は目に余る。

 本当に好きなら、あそこまでしないだろう一般女子として』

 

「それはウチらの勝手でしょう!?吉井が他の女の子に変な目で見るなんて迷惑じゃない!」

 

「そうです!他の女の子に迷惑をかけちゃ―――!」

 

『・・・・・お前らは吉井明久のなんだ?』

 

その素朴の疑問と質問は島田と姫路を噤ませるに十分な発言だった。

 

『・・・・・お前らは吉井明久のなんだ?恋人か?』

 

「そ、それは・・・・・・」

 

『・・・・・お前らも所詮、吉井明久の優しさを好いように甘えつつ自分達の玩具のように

扱っているだけに過ぎない』

 

「違います!私達は決して吉井君を玩具なんかにしていません!」

 

『・・・・・料理に人体に悪影響を及ぼす劇薬を平気に混入して味見すらしない、

それを相手に食べても平気だと信じ込んでいる姫路瑞希。吉井明久はお前のペットじゃないぞ?

そんなもの食べて平気なのはこの世に一人もいない』

 

―――それを今この場で言うお前は鬼畜だな。

 

「瑞希さん・・・・・アキくんにそんな料理を食べさせたのですか?」

 

「あ、玲さん・・・・・?」

 

「申し訳ございませんが・・・・・・危ない物を料理に入れる人をアキくんに

食べさせたくはありません。

 交遊はしてもいいのですがアキくんに今後一切その料理を食べさせないでください」

 

「そ、そんな・・・・・っ!」

 

いや、なぜそこまでショックを受ける?それが当然の言葉だと思うぞ?

一緒にいられるだけでもまだ幸せな方だ。二度と近寄らず関わるなって言われたら

明久と喋れなくなるんだからよ。まあ、結婚はできないだろうけどさ。

 

「ですがハーデス君・・・・・・どうしてあんなことを言いだすのですか」

 

非難の色が籠った瞳を玲さんはハーデスに向ける。確かに今日会ったばかりの奴に

あそこまで言われ放題で、明久に勘違い(?)され、敬遠の雰囲気を漂い姉を避ける

発言をしたから当然か。

 

『・・・・・俺はアンタの言ったことをさらに詳しく言っただけだ。

異性交遊を禁止なんてアンタが決めたことだろう。

男は女と一緒に暮さないと生きていけない生物でもあるんだ』

 

「私がアキくんと一緒に暮らせば同じことです」

 

『・・・・・吉井明久を奴隷のように束縛してか?』

 

「束縛など私は・・・・・」

 

『・・・・・実際、俺はお前達姉弟の暮らしは知らない。

だけど、異性と付き合うなって言うほどお前は偉いのか?あいつが誰と付き合おうが

アイツが決めた人生だ。お前の人生じゃない。

お前は吉井明久の人生を束縛しているのに気が付いていないのか?』

 

ハーデス・・・・・お前はどうしてそこまで熱くなるんだ・・・・・?

 

『・・・・・お前のような女が姉面している様子を見ると虫唾が走る。

良い姉で気取っているつもりだろうが、俺からしてみればお前は我がままで嫌な女に

しか認識できない』

 

「・・・・・」

 

『・・・・・あいつが異性と付き合っても幸せにならないなんて、あいつが誰かと付き合ってその結果をお前自身が見た上で言っているならともかく。そうでもないのに勝手に決め付けるんじゃねぇよ』

 

口から出る言葉の声音は怒気が孕んでいる。こいつ・・・・・怒っていやがる・・・・・・。

 

『・・・・・俺は家族を大事にしない奴は死ぬほど嫌いだ。

そんな奴らといさせるぐらいなら俺達蒼天が引き取って、吉井明久の能力に相応しい

仕事を任せる。そこで異性と結ばれて幸せになってもらうのもいいだろう』

 

「「「なっ・・・・・!」」」

 

『・・・・・だが、それを決めるのはあいつ自身だ。あいつの意思に尊重する。無理強いはしない』

 

あいつが蒼天に行きたいと言ったらこいつは即座に行動を起こすってことかよ。

―――ハーデスは真っ直ぐ包帯だらけの人差し指を玲さんと姫路、島田に指差した。

 

『・・・・・ここではっきり言ってやろう。お前らは―――』

 

「死神ストップよ」

 

木下優子・・・・・?彼女がハーデスに手で制した。

 

「死神、それ以上言うの禁止よ。アンタが吉井君のことを熱くなるのはいいけれど、

もうそのぐらいにしてちょうだい。せっかくの夏休みに海水浴が嫌なムードで

過ごすなんてアタシは嫌よ」

 

「そうだね。死神君、もうそこまで。ね?」

 

「・・・・・私達とあっちで遊ぶ」

 

『・・・・・』

 

ハーデスがズルズルと霧島と工藤、木下の姉に明後日の方向へ

この場から引き摺られて離されていく。

 

「あ、出遅れた」

 

「追いかけるぞ」

 

「わ、私達も・・・・・」

 

林冲達も引き摺られているハーデスに追いかけて行く。

残ったのは風間ファミリーと玲さんに姫路と島田、霧島(妹)。

 

「しゃーね。後片付けは俺達がしようぜ」

 

「ハーデスが用意してくれたんだからな。そのぐらいはしてやるとするか」

 

「うむ、当然のことだろう」

 

気まずい雰囲気を払うかのように俺達も行動をする。

 

 

 

 

「ハーデス・・・・・アイツだけは絶対に許さない・・・・・っ!」

 

「吉井君と・・・・・付き合えないなんて・・・・・こんな、悲しすぎます・・・・・」

 

「雄二・・・・・っ」

 

 

 

 

 

「ねえ、雄二・・・・・」

 

「言うな明久」

 

「・・・・・」

 

「別に本気で言ったわけじゃないだろう?どうせ、少し日が経った頃にあいつらは

変わっているか何時も通りとなるさ」

 

 

 

 

 

「もうあんなこと言わない方がいいよ。皆に嫌われちゃうよ?」

 

『・・・・・別に・・・・・嫌われても問題は・・・・・』

 

「・・・・・死神、孤独になろうとしない。私達はあなたの味方。・・・・・例え、

間違った事をしても・・・・・」

 

「アンタの気持ちは分からないわけでも理解できないわけでもないわ。

でも、もうあんなのこと絶対に言わないこと。いいわね?」

 

『・・・・・善処する』

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