バカと真剣とドラゴン―――完結―――   作:ダーク・シリウス

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真約二問

夏休みが終わって早数日経っても夏の名残りがまだ残っている川神市と神月学園に降り注ぐ

太陽の光に浴びながら僕らは学校を通って教室で変わらない学校生活の日常を送っていた。

 

 

シャリシャリシャリッ!

 

 

「ハーデス、イチゴ味お願いね」

 

「俺はコーラ味にしようかな」

 

夏の間、ハーデスに頼めばムッツリーニ商店夏季限定かき氷屋がかき氷を作ってくれる。

秋になるまでかき氷は食べれるから潤いと冷やしには堪らない食べ物だ。

 

 

『うーん、甘いなかき氷!かき氷はやはり練乳が限る!』

 

『えー?アタシはブルーハワイがいいと思うんだけどなー』

 

『どれも美味しいよ?私はダブルで頼んだ』

 

『あ、そういうのもいいんだ?』

 

『ぬかったぁーっ!だが、次は俺もそうしよう!』

 

 

皆もかき氷を食べて満足そうだ。僕も大満足。空になった容器とスプーンはそれぞれ

一ヵ所に集められてハーデスが片付けてくれる。ありがたい事だらけだねと思ったら

ハーデスが赤い目を扉の方に向けた。

 

「フハハハハッ!失礼するぞ民衆共!」

 

「お邪魔しまーす☆」

 

あ、Sクラスの代表とその他の人達。

 

「英雄、どうした?」

 

「実はそこにいる死神に・・・・・む?かき氷を販売しておるのか。

我も購入しようではないか。我はレモン味を所望する!」

 

「僕は練乳!練乳が食べたーい!」

 

「私はブルーハワイがいいですね」

 

「俺はイチゴ味がいいな」

 

普通にかき氷を購入して食べ始めたSクラスの人達。

 

「で、ハーデスに何か用か?かき氷を食べ過ぎて頭を押さえている英雄」

 

「ぬおおおおお・・・・・っ。う、うむ用件は旅人のことだ。

死神、旅人と会える機会は無いか?」

 

『・・・・・』

 

九鬼君の質問にスケッチブックでこう答えた。

 

『・・・・・知らない。連絡も滅多にできないから』

 

「むぅ・・・・・旅人は王としての務めで多忙であるから連絡も困難というわけか」

 

『・・・・・そう言うこと。・・・・・それと』

 

「なんだ?」

 

マントから束ねられた封筒が出てきた。それを九鬼君に向かって放り投げた。

 

『・・・・・お前達宛ての手紙を受け取っている。中央区の王から』

 

「―――旅人の手紙か!」

 

九鬼君がそう発すると風間ファミリーが反応して群がって来た。九鬼君が手紙を束ねている

紐を解いて大和達に配っていく。

 

「・・・・・旅人さんからの手紙」

 

「義経達の手紙もあるな。これは確かに届けようきっと喜ぶであろうからな」

 

「英雄、そろそろ授業が始まりますよ」

 

「そうか、ならば我らは退散しよう。さらばだ!」

 

「じゃーねー」

 

嵐が来て嵐が去った。ハーデスはかき氷に関する道具を摩訶不思議に仕舞っていると

出て行ったSクラスと入れ代るように鉄人が教室に入って来た。

 

「席に付けっ!これから報告をすることがある」

 

報告?二学期のイベント、体育祭のことかな?

 

「体育祭の前日と体育再当日にとある方が訪問をしにやってくる。

くれぐれも失礼のない言動をするんだぞお前ら」

 

「はい西村先生。その人はどんな人ですか?」

 

挙手する一子の質問に鉄人は溜息を吐いてこう漏らした。

 

「中央区の王だ。総理大臣との会談で日本に訪れる際

この神月学園の体育祭を見学しに参るとのことだ」

 

「嘘、旅人さんが来るの!?」

 

「うっはっ!あの人と話せる機会が直ぐに来るなんてラッキー!」

 

中央区の王=旅人さんが来ることを知った風間ファミリーが

嬉しそうに笑みを浮かべてはしゃぐが。

 

「いいか!お前達があの方に何かしてみろ。

この俺が直々に超絶の鬼の補習を受けさせるから覚悟をしろ!」

 

今までにない真剣な面持ちの鉄人がそう言うんだから本気でするんだろう。

 

「―――だからこそ、お前達の鞄に不必要な物を無いか抜き打ち持ち物検査をさせてもらう。

無駄な抵抗はするなよ?抵抗した物は問答無用に鬼の補習だ!

一人でも抵抗した者の連帯責任として全員が鬼の補習!」

 

 

『『『な、なにぃーっ!?』』』

 

 

そ、そんな横暴なっ!って、教室にぞろぞろと先生達が入って来たのはどうしてなの!?

え、僕らが一番失礼千万な事をしかねないクラスだから?持ち物チェックは当然?

 

「さて吉井。お前はジャージに着替えろ」

 

「僕だけ他の皆より警戒しすぎじゃないですか!?」

 

 

ポロッ (携帯ゲーム機が落ちた音)

 

 

「おい明久。ゲーム機が落ちたぞ」

 

「あ、ありがとう雄二」

 

拾ってくれたゲーム機を制服のポケットに仕舞いこんで鉄人に懇願した。

 

「―――西村先生!少しは僕のことを信じてくださいっ!」

 

「貴様はジャージにすら着替えるな・・・・・っ!」

 

あれ、何だか鉄人が怒りに燃えているような・・・・・?

 

 

 

 

まさか、このタイミングで持ち物検査されるとは露にも思わなかった。

 

「うわーん、アタシの非常食と筋トレの道具が奪われちゃったわー」

 

「私のぬいぐるみも没収された・・・・・」

 

「旅人さんとの愛を育む為の本も没収するなんて先生達は何て鬼畜な・・・・・」

 

「俺様のプロテインがぁー!」

 

「あはは、皆気の毒だね」

 

「モロは何か奪われなかったのか?」

 

「・・・・・ノートパソコン」

 

ああ、モロもちょっと落ち込んでいるな。俺もエロ本を奪われてしまった。

 

「ハーデス、お前はなにも没収されていなかったか?」

 

『・・・・・(コクリ)』

 

こいつの方がよっぽど学校に持ち込んではいけない代物を隠し持っているんだが、

西村先生直々の検査を掻い潜ったようだ。何てスキルの持ち主だ。

 

「雄二!こんな非道な仕打ちを受けて黙っていられると思う!?」

 

「思うわけがないだろう。あれは、あれは俺達が保健体育を向上させる為の必要な聖書なんだ!」

 

「・・・・・ここで屈したら俺の唯一の武器が奪われてしまう・・・・・!」

 

 

『そうだそうだ!俺達はあの聖書が必要なんだ!』

 

『相手は一人!数で攻撃すれば如何に筋肉だるまといえども負けるはずがない!』

 

『坂本!俺達に指示をくれ!』

 

 

凄まじい団結力がここで発揮した。さらにハーデスがいれば無敵になるんだが生憎

あいつはその気がさらさらないらしい。いや、こっちにはガクトがいる。

ハーデスの力を借りずともタイマンで西村先生と張り合えるガクトを中心に団結すれば

奪われた大事な物を取り返す可能性が少なからずある。

 

「ワン子、坂本達と一緒に奪われた物を取り返しに行くぞ」

 

「オーケー!」

 

機動力のワン子、破壊力のガクト。これで西村先生に対する交戦の準備は整った!

狙うとしたら昼休みの職員室!

 

 

―――Bクラス―――

 

 

「今日からこのBクラスに編入する帰国子女の天野夕麻だ。皆、仲良くしなさい」

 

「皆さん、よろしくお願いします」

 

艶のある腰まで伸びた黒い髪に紫色の女子が恭しくお辞儀をした。そしてその笑みは男女問わず魅了させる。

その同時刻、1-Fクラスにも新たな人物が加わっていた。

 

紺野木綿季(こんのゆうき)です。皆、よろしくね!」

 

『『『よろしくっ!』』』

 

ヘアバンドを装着している紫の長髪に赤い目の身長140センチ代の女子が元気よく挨拶をした。

 

 

―――Sクラス―――

 

 

「一限目は世界史ですね」

 

「うむ、蒼天の問題が出ればいち早く我が答えてやろうではないか」

 

「蒼天・・・・・旅人さん・・・・・体育祭の時に来るなんてな。今回は海なんだろう?」

 

「あの方の水着姿を願わくば、見てみたいところですね」

 

話しているうちに授業が始まる鐘が鳴り始め、各々と席に着く。そして教師らしき人物の足音がSクラスの生徒達の背後から聞こえ、その者は真っ直ぐ教卓に進んだ時、

 

「は?」

 

「え?」

 

「なに?」

 

「マジで?」

 

「おおー!」

 

信じられないものを見る目で教卓に立つ人物をSクラスの生徒達は目を丸くした。

 

「世界史の先生と特別に入れ替わり臨時の教師として今日一日総合科目の教師として

就任させてもらいましたイッセー・D・スカーレットだ。

イッセー先生でも王様とでも好きなように呼んでくれ」

 

刹那。

 

『『『ええええええええええええええええええええええええええええっ!?』』』

 

有り得ない人物がそこにいて、有り得ない人物が臨時の教師として登場した。

 

 

―――Aクラス―――

 

 

「先生、遅いわね?」

 

五分前には来ているはずの高橋先生が教室に現れないことに不思議に思った。

クラスメート達も授業の準備は整って先生が来るのを待つだけ。更に待つこと三分後、

教室の扉が開いた。きっと先生だろう。準備に手間取ったのかもしれない。

 

「さーて、授業を始めるぞー」

 

自然と教室に入ってまるで自分が教師のように振る舞う高橋先生じゃない男性が入って

来て教卓の前に立った。

 

「国語の担当の先生と変わってもらい、今日一日総合科目の教師として就任した

イッセー・D・スカーレットだ。皆、よろしく」

 

「・・・・・はいっ!?」

 

『『『な、何だってぇぇぇえええええええええええっ!?』』』

 

なっ、なんで・・・・・っ、なんでアンタが臨時の教師なんて

やってんのよ・・・・・!?

 

 

―――Fクラス―――

 

 

「なあ、なんだか新校舎のほうで騒がしいよな?」

 

「どうせまたSクラスがやらかしたんじゃねーの?」

 

「うーん、それしか思いつかないよね」

 

「ハーデスに散々やられたってのに・・・・・」

 

懲りないな。英雄にはしっかりと暴走しないように手綱を握ってもらわないと困る。

前回のような騒動を二度と起こさない為にも。

 

「さて、鉄人から奪われた宝を奪還する時間はまだ先だ。最初の授業はなんだ?」

 

「・・・・・うげ、マロの授業だぜ」

 

「アタシ、寝ちゃいそう・・・・・」

 

「寝たら背後から鉛筆の芯で起こすからな」

 

「そんなことしたら痛いじゃないの!」

 

それは躾というものだワン子よ。と、そろそろ授業が始まるな。

ミカン箱の前に座ってマロを待つと、この教室の扉が開いた。

 

 

『(バカめ!何も知らずに開けたな!?)』

 

『(扉にはブービ・トラップが仕掛けてある。今度は髪も真っ白に染まってしまえ!)』

 

『(マロを改めシロだ!)』

 

 

クラスメートの何人かが意味深な笑みを浮かべているのが見えた。

扉に目を向けるとくす玉がぶら下がっていて、

扉を開けると自動的にくす玉が開く仕組みになっていた。だから扉に手を掛けた教師は―――。

 

 

パカッ(くす玉が開いた音)

 

バサッ(くす玉の中に入っていた大量の白い粉末が髪に被った音)

 

 

その真紅の髪や前進に大量の白い粉末によって白くなった・・・・・って。あれ?

 

 

「・・・・・」

 

『『『・・・・・』』』

 

 

本来入ってくる人物と全然違う人が扉のところで固まっていた。

その人物は・・・・・旅人さんその人だった。

 

「へ・・・・・旅人さん!?」

 

「ちょっ、どうしてここにいるのぉっ!?」

 

「というか・・・・・あれ、ヤバいんじゃない?」

 

モロの指摘には尤もだ。蒼天の王が生徒の悪戯で髪が汚れたんだ。

そのことであの人の次に起こす行動が読めない・・・・・。あの人は自分の髪を触れて

白く汚れた髪を一瞥すると、

 

「悪い、身体を洗ってくるから自習だ」

 

そう言うなり扉を閉めた直後。俺達は絶叫の声を上げたのだった。

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

「大和ぉっ!」

 

「英雄ぉっ!?」

 

「し、信じられぬ!た、旅人が!旅人が臨時の教師として―――!」

 

「分かっている!分かっているから!こっちも旅人さんが来たから落ち着けぇッ!」

 

自習が終わるや否や、九鬼君が教室に入って来た。と言っても自習が終わるまで

あの人は戻ってこなかったけど・・・・・怒って帰ってしまったわけじゃないよね?

 

「なに?このクラスにもいたのか?なら大和、旅人さんはどこに行った?」

 

「えーと・・・・・自習と言ってどこかに行っちゃった」

 

「は?自習?なんでまた?サボり?」

 

「ブービ・トラップに引っ掛かった旅人さんが白い粉末まみれになって―――」

 

説明しようとしたところで扉が突如壊れたと思えば、鬼の形相に表情を変えて

入って来た西村先生が怒鳴り込んできた。

 

 

『誰だ!蒼天の王に悪戯をした奴はぁっ!?』

 

『て、鉄人っ!?』

 

『いや、この際誰でもいい!全員超絶の鬼の補習をしてやろう!

その後、蒼天の王に誠心誠意謝罪をしろ!』

 

『ちょっ!待ってください!関係のない俺達までぇっ!?』

 

『俺は言ったぞ!蒼天の王に何かしたら超絶の鬼の補習をするとなっ!』

 

『つ、次の授業は歴史のマロだからあの王が来ると誰も思わないってぇ!?』

 

 

げっ、そうだった!朝そんなこと言われていたっけ!?あっという間に

クラスの半分以上のクラスメート達が問答無用に補習室へ連れて行かれた。

 

「大和君・・・・・頑張ってください」

 

「旅は道連れ世は情け・・・・・であるか」

 

「大和ー頑張ってねー?」

 

「骨は拾ってやるからな」

 

「い、嫌だぁああああああああっ!」

 

何時の間にか俺はクラスメート達と纏めて西村先生に担がれていて補習室へ連れて行かれた!

 

 

―――昼休み―――

 

 

「ううう・・・・・酷い目に遭った」

 

「本当よ・・・・・完全なとばっちりだわ」

 

「というか旅人さん・・・・・全然現れないね」

 

「先生達が必死に探しまわっているみたいだけど、まるで神隠しに会っているか

のようで見つからないみたいだ」

 

「まさか、本当に帰ってしまったのか?」

 

「あれぐらいで怒るような人じゃないだろう?」

 

僕らの宝物を奪還する以前に最初から補習室で昼まで監禁されてはその意欲が

無くなってしまった。奪還は後日にし、何時ものメンバーに加わって

Sクラスの主力メンバーもいる。僕と雄二、ムッツリーニに秀吉、姫路さんや島田さんを

除いた面々は蒼天の中央区の王と交流を持っている人達が多い。

僕らは今、屋上に向かっている。

 

「臨時の教師として俺達の前に現れるなんて・・・・・俺達を脅かすやり方は変わらないな」

 

「アレはかなり驚いたって。普通、多忙なはずの王が臨時の教師として来るか?」

 

「でも僕は嬉しいよー?答えを求められた時は必死に手を挙げて問題を答えたら

褒めて頭を撫でてくれたもん」

 

にへーと榊原さんが嬉しそうに笑んだ。

 

「中央区の王が好きなんだね?」

 

「うん!トーマと準と同じぐらい大好き!」

 

「私もですよ」

 

「いや、若には聞いていないからな?」

 

そんなこんなで雑談して屋上に出ると、上半身裸の十二枚の金色の翼を生やした

王様がサングラスを掛けて長い椅子に寝そべっていた。アレはまるで日光浴じゃないか・・・・・。

 

「―――って、こんなところにいたよ旅人さんが!?」

 

「びっくりしたぁっ!」

 

「てか、物凄く寛いでいるよあの人・・・・・」

 

「ここ、海じゃないんだけどな・・・・・」

 

でも、居ても立ってもいられないって感じで皆が王様のところに近づくと

サングラスを掛けた目がこっちに向いた。

 

「おっ、もう昼食の時間か・・・・・ふぁ・・・・・」

 

「え、まさかここでずっと寝ていたのですか?」

 

「ああ、乾かしていたからな。待っていたら眠くなってきたからさ寝ていた」

 

乾かしていた・・・・・?辺りを見渡すと・・・・・あ、上着が柵に干されている。

王様に視線を戻すと上着を取りに行って羽織っただけのあの人は僕らに振り向く。

 

「この姿で悪いが改めて自己紹介だ。俺は中央区の王のイッセー・D・スカーレットだ。

よろしくな」

 

きっと、僕達に対する自己紹介なんだろう。僕は反射的に頭を下げた。

よろしくお願いしますと籠めて。

 

「さて、大和達も改めて久し振りだな。大きく成長して元気そうで何よりだ」

 

「はい、お久しぶりです!」

 

「久し振りだぜ旅人さん!じゃないや、イッセーさんって呼んでいいっスか?」

 

「この名も偽名だが好きなように呼んでいいぞ」

 

偽名なんだ。どうして偽名で名乗っているのか僕が知るわけ無いけれど、

皆・・・・・特に大和達はそんなこと気にしていないようで笑みを浮かべていた。

 

「じゃあイッセー!私と結婚して!」

 

「断わらせてもらう」

 

「速っ!?でも、そんなイッセーが大好き!」

 

「僕も!僕もイッセーが大好きだよ!」

 

「あはは、はいはい分かってるって。甘えん坊だなユキは」

 

上着を羽織った状態のまま京と榊原さんを抱き締めたまま頭を撫でた。

身長は雄二より高めでガクトより小さいぐらいかな。海にいたら絶対に逆ナンされそうな人だ。

 

「んじゃ、昼飯にしようか」

 

王様がそう言うと、

 

「「イッセーの隣は渡さない!」」

 

「あっ、ずりぃっ!俺も座りてぇ-!」

 

「京、イッセーの隣はお姉さんが予定していたんだぁー♪」

 

「あ、あの・・・・・私も座りたいです」

 

「内弁慶だから、彼の背中を合わせて座ろっと」

 

「ま、負けない!」

 

「私もよ」

 

―――女の子の殆どが王様の傍に座ると良い争いになった。

な、なんて羨ましいのだろうかっ。彼が王様じゃなかったら須川君に連絡して

異端審問会をしていたところだ・・・・・!

 

ガチャ

 

誰かが屋上の扉を開け放つ音が聞こえた。誰だろう?そう思いを胸に抱きつつ扉の方へ

視線を送ると。見知らぬ女子が姿を現した。

 

「あの人かな?」

 

あどけない容姿の女の子。誰かを探しにここに来たらしいけど、誰かここにいるのかな?

 

「キミは誰?」

 

「初めまして、僕は紺野木綿季っていいます」

 

「こんのゆうき・・・・・第二学年じゃないな?」

 

「うん、今日一年F組に入ったばっかりだから先輩達は知らないのは当然かもしれない」

 

転校生・・・・・はたまた転入生だろうか?

 

「学校で有名な死神って人を探していたんだけど、先輩のことですよね?」

 

『・・・・・俺に何か用か?』

 

「手合わせをお願いできないかなって思いまして」

 

手合わせって・・・・・勝負、決闘のこと?

 

「お前、今日この学校に来てハーデスに勝負を吹っかけるなんて、何を企んでいる?」

 

大和が訝しむ。それは当然だ。ハーデスのことを知らないのに真っ直ぐハーデスに

尋ねて勝負をしたいなんて、まるで事前に調べているような感じだ。

 

「えっと、それはちょっと言えないかな。ただ、強い人がいるって聞いてね。戦ってみたいんだ」

 

『・・・・・俺と戦ってお前に何が得る?』

 

「んーと、それも言えないんだ。ごめんね?」

 

『・・・・・いいだろう。相手になる。放課後、グラウンドで戦おう』

 

いきなり了承したハーデスと謎の美少女の戦いは放課後に始まろうとしている。

 

『・・・・・取り敢えず、一緒に食べるか?』

 

「あ、いいの?それじゃお言葉に甘えて一緒に食べるね」

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

第一グラウンドにてハーデスと紺野木綿季の戦いを見るためギャラリーが集まる。

二人の立会人として川神鉄心が左右に対峙するハーデスと紺野木綿季を一瞥して口を開く。

 

「これより、神月学園の伝統である決闘を行う!ルールは武器有りの決闘で相手が

戦闘不能、または降参の意思を示さん限り戦いは続く。が、相手が敗北しても攻撃を

する意思を感じた時ワシが問答無用で止めるからな」

 

「はい!」

 

『・・・・・(コクリ)』

 

紺野木綿季の武器は片手直剣。対するハーデスは一対の刃が備わっているトンファー。

だが、その傍には様々な武器が置かれている。全部刃が潰れている物ばかりのレプリカ製。

 

「東方1年F組の―――」

 

「紺野木綿季です!」

 

「西方2年F組の―――」

 

『・・・・・死神・ハーデス』

 

「両者、構えぃ!」

 

トンファー、片手直剣をそれぞれ構える二人を見て川神鉄心は一喝するように発した。

 

「始めいっ!」

 

 

ガキンッ!

 

 

 

「あの子・・・・・本当に一年生?」

 

「私も驚いているところだ」

 

隣にいる百代ちゃんもそう言いつつ興奮している。死神君の強さは世界一と言っても

過言じゃない。だけどそれは本来の強さを発揮した意味で。正体と強さを隠している

死神君は強さをセーブしているけれど、強い。

そしてセーブしている死神君と渡り合っている少女・・・・・紺野木綿季ちゃんは強い。

まるで戦い慣れた動きと剣さばきをして、死神君と張り合っている。

蝶のように動き回り蜂のように鋭く攻撃を仕掛ける。

 

「見た感じ、どっちも本気を出していないみたいだね」

 

「最初は相手の強さを計っているんだろう。しかし、死神があんなに動けるなんてな。

くそ、私の時もあんな風に戦って欲しかったぞ」

 

愚痴る百代ちゃん。

 

「百代ちゃん、どっちが勝つと思う?」

 

「甲乙付け難いな。どっちも初めて戦闘を見ているから何とも言えない」

 

「うーん、そっか。でも、死神君が勝つと思うよ」

 

「ほう?その根拠は?」

 

「ふふっ、私の大好きな死神君だからね」

 

「こいつ、急に惚気やがった。まあいい、私にはイッセーがいる」

 

そのイッセーは死神君なんだけどねぇ・・・・・?

百代ちゃん、その事実を知ったらどんな反応をするのか楽しみだよん。

 

 

 

 

―――強いっ。ボク、紺野木綿季は目の前の対戦相手の強さをそう思った。

刃が備わったトンファーと扱う人と戦うのは初めてだけど、ここまで攻防が早くて

鋭くて気が抜けないなんて。こんな凄い人を倒さないといけないなんて、その理由は

分からない。でも―――もう一度生を与えられミッションをクリアすれば

ボクは・・・・・皆のところに戻れるっ。

 

「はぁっ!」

 

袈裟斬り、垂直斬り、横薙ぎを瞬く間に放っても彼は完全に身切って

全てトンファーの刃で防ぎきった。この人、防御が完璧すぎる!

腕を引いて一瞬だけ溜めていると彼の両腕が見えなくなった―――!

 

「っ!?」

 

見えなくなった理由は左右からトンファーを振ってまるではさみのように

挟もうとしてきたからだ。持ち前の反射速度で回避したけれど、

ボクの髪が一拍遅れて宙に舞った。けど、彼はそれ以上追撃してこない。

半径3mぐらいの範囲でしか動こうとしない。ボクのこと気になるって言っていたけど、

その理由を知るためにこうして戦っている。だけど、こんなことして何が分かるんだろう。

直剣を構えて突進を試みようと思ったボクの目に彼が動き出した。

自然とした歩きで大量に置かれている武器の方へと足を歩んだからだ。武器を換える為に?

その様子を見ているとトンファーと・・・・・レイピアを換えた。

 

トクンッ

 

レイピア・・・・・脳裏に浮かぶあの人が使っていた武器・・・・・。

 

『・・・・・行くぞ』

 

短く掛けられた声を聞いた途端、目の前に骸骨の仮面が迫っていた。

目を大きく見開き、突き出されたレイピアの刀身を剣で防ぎ―――!

 

ギィィィィンッ!

 

防ごうとした剣が逆に大きく跳ね退けられ鼓膜が破れそうかもしれない

甲高い金属音の音がグラウンド中に響き渡った。この感じ、あの人初めて戦った時と―――!

 

『・・・・・全力で来い』

 

「っ!?」

 

既に彼は刀身を振るっている。彼の言葉より意識を取り戻して振るられたレイピアを

さばいて距離を置く為にバックした。

 

「全力って・・・・・これは一種のゲームみたいなものでしょう?」

 

『・・・・・お前が振るうその剣に何を籠めている?』

 

「っ!」

 

『・・・・・俺は空っぽだが、俺と違ってお前は何かを剣に籠めているはずだ。

その重みがお前を強くしているのが分かった』

 

この人・・・・・ボクを知ろうとしている・・・・・。

 

『・・・・・世界はまだまだ強者がいる。この町にお前以上の強い奴はそれなりにいるぞ』

 

「じゃあ、キミ以上強い人はいるのかな?」

 

『・・・・・残念ながら人だと存在しないな』

 

そっか、やっぱり強いこの人・・・・・。どれだけ戦ってきたのか想像が付かないや。

 

「分かった、じゃあ・・・・・全力で行くよ。キミを倒す為にね」

 

宙をスライドしてあることをする。と、ボクの制服が光に包まれ、

胸に軽鎧の胸当てと軽装な紫の衣装と変わった。

 

『・・・・・服装が変わった・・・・・?』

 

「詮索は無しでお願いね?」

 

帯剣していた腰に一本の片手直剣を抜き取り前に構える。

 

「先輩、空中戦と地上戦どっちがいい?」

 

『・・・・・意味深な質問だ。―――どっちもってのは良いか?』

 

「うん、いいよ。それじゃ・・・・・第二回戦始めよう!」

 

突進すれば彼も呼応して突進してくる。やっぱり戦うならこの方がしっくりくる!

 

「せいやぁっ!」

 

『・・・・・』

 

鋭い意気込みと共に突き出し、薙ぎ払い、上段と下段から振るう!

彼もさっきとは全く違う動きをしてくれてボクを完全に倒そうとして来るのが肌で感じた。

 

ギィンッ!キンッ!ガギンッ!ギギギィンッ!

 

何度も何度も剣がぶつかり合って擦れ合う度に火花が生じ散る。肉薄しようとしても彼が

あっさりと防いで逆に肉薄されてしまうことも何度目だろう。上段から振るられた

レイピアを防いだつもりだけど、後方へ吹っ飛ばされた際に彼が振ったレイピアから

氷の刃、炎の刃、風の刃が具現化してボクを肉薄する。

 

「そんな攻撃もできるんだね!だったらボクも―――!」

 

属性付きの攻撃を切って彼の懐に飛び込んだと同時に刀身を輝かせる!

気合の声と共に剣を叩きつける!

 

ガギィンッ!―――バキッ!

 

彼のレイピアが真っ二つになった。この好機を逃さない―――!

 

「ふっ!」

 

武器のない丸腰状態の彼に袈裟斬りをし、身体を素早く回転させ横薙ぎに切り付け、

さらに畳みかけるために腕と手首を力強く振るった瞬間に、彼の手が輝く刀身となり

ボクの剣を受け止めた。

 

『・・・・・面白い、こんな面白い戦い方をしてくれるとは嬉しいぞ』

 

「そっちこそ、その剣みたいなことをできるなんて知らなかったよ」

 

『・・・・・これは気を刀身のように具現化している。仮に破壊されても俺の闘気が

尽きない限り何度も具現化できる』

 

それ、結構シビアだね・・・・・。切り札でもありそうだし・・・・・。

 

『今度はこっちの番だ』

 

闘気の刀身が形を崩して鞭のように細長くなり、彼が腕を振るうと鞭は意志を

持っているかのように思わせボクに襲いかかってくる。剣で一閃してもまた元に戻って

僕に襲いかかる。

 

「まるで蛇のような動き・・・・・!」

 

攻撃の軌道が読みづらくて大変だ。闘気の鞭に手こずっていると、飛来してくる輝く球が

視界に飛び込んできた。輝く球をかわし、闘気の鞭に対応して、直接攻撃してくる彼も

接近戦―――何て何度も繰り返すこんな戦い方は何時までも保てないかもっ。

 

ドッ!

 

「がっ・・・・・!」

 

ボクの腹に彼の脚先が深く突き刺さって空高く蹴られた。

 

『・・・・・次は空中戦だな』

 

前にいた彼の意図を察し、背中に二対四枚の透明的な羽を展開して彼に斬りかかる。

対して彼は空を蹴って移動し続けるその行動にボクは心の中で驚愕と感嘆していた。

 

「蹴って空を浮くなんてどれだけ超人な人なんだ!」

 

『・・・・・妖精みたいな羽を生やすお前には言われたくないな。

後で下にいる皆になんて誤魔化すのか楽しみだ』

 

「え?こういうの皆知らないの?」

 

『・・・・・お前、意外と天然なんだな』

 

・・・・・ボク、もしかしてやっちゃった?

 

「ど、どうしよう・・・・・あまり目立つことは好きじゃないんだけど・・・・・」

 

『・・・・・頑張れ』

 

そう言って斬りかかって来た。空中戦でもこの人の強さは変わらない。

足さえ闘気の刀身を生やして蹴りで斬りつけてくるから四苦八苦・・・・・!

さらに彼が空高く移動するのを追い掛ければ上から飛び攻撃が放たれる。

それをまた斬って攻撃を回避していくと何時の間にか雲の上まで飛んでいたことに気付く。

でも、そんなの関係ない。速度を上げて、攻撃ももっと鋭く振り、何度も彼に攻撃を仕掛ける。

上下から来る攻撃を何とか反射的に回避し、防いだりし続ける行為を繰り返し、

 

「はぁっ!」

 

闘気の刀身を交差した瞬間を狙って斬り上げ、彼の無防備な懐に飛び込む。

 

「食らえッ!」

 

刀身を輝かせ―――あの技を発動する!

 

「『マザーズ・ロザリオ』ッ!」

 

『っ!?』

 

「はぁあああああああああああっ!」

 

十字を描くように神速の十連続突きを放ち、最後にトドメとして十字の交差点に一番強烈な十一撃目の突きを放ったっ!

 

『・・・・・それが・・・・・お前のとっておきの技か・・・・・っ』

 

力なく地上へ落ちる彼。

 

『―――最高だぞ、紺野木綿季。いや・・・・・転生者』

 

「っ!?」

 

 

 

 

 

「な、なんだ・・・・・肌に突き刺さるこの感じは・・・・・っ!?」

 

「遥か上空で・・・・・何が起きておるのじゃ・・・・・」

 

「一年のか・・・・・?いや、まさか・・・・・死神・・・・・お前なのか?」

 

 

 

 

 

彼から膨大な力を感じ始める。そして、最後に言った言葉はボクを絶句させる。

まさか・・・・・ボクの正体を気付いた・・・・・!?

 

『俺をここまで肉弾戦でダメージを負わせたのはこの世界でお前が初めてだ。

なら、それ相応の礼をしないとな』

 

―――禁手(バランス・ブレイカー)―――

 

意味深な呪文みたいな言葉を呟いた彼の全身が光に包まれた。

光が消失した時には彼の姿が一変している。

 

ドラゴンみたいな全身を覆う黒色と紫色の鎧を身に纏い三対六枚の翼を生やしている彼―――。

その姿を見て彼は力を解放したんだと察した。

 

『―――――』

 

彼は胸を仰け反らした。まるで思いっきり酸素を吸っているかのように。

 

『ギェエエエエエエアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!』

 

「―――――っ!?」

 

叫び・・・・・いや、これは咆哮レベルの声量・・・・・!あの声で空気が振動し、

雲が一騎に無くなった・・・・・!鼓膜が破けそうなぐらい轟き耳を押さえていると、彼が動き出した。音も無くボクの懐に潜り込んでいたんだ。

それに反応する前に拳がボクの腹に突き刺さる。

 

「っ・・・・・!?」

 

地上で戦った時よりも速度が速く、重い・・・・・!

これが・・・・・あのヒトが言っていたイレギュラーの本来の力・・・・・!

だけど、ボクは・・・・・!

 

「負けるもんかぁあああっ!」

 

剣を輝かせ、彼に上段から振るう!ふと、黒い影がボクの手首を巻き付けて

明後日の方向へ思いっきり放り投げられた。その正体を確認した時は目の前が

真っ暗に染まっていて強引に体勢を変えて真っ暗なものから避けた時は衝撃が全身に襲った。

 

『遅いぞ』

 

「ぐふっ・・・・・!」

 

背中が・・・・・・!痛みに堪えて彼に振り向いた。

 

『・・・・・チェックメイト』

 

「あ・・・・・・」

 

手を伸ばしていた彼の手の平には黒い球体があった。それを見た時はボクの勝敗は決まった。

 

 

ドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

上空から黒い柱がグラウンドに落ちて突き刺さった。

その衝撃波は半端なく、学園全体を激しく揺らす程だった。

学園長が何らかの方法で最小限に被害を押さえたけれど、黒い柱が無くなった頃には

グラウンドに巨大なクレーターができあがっていた。まるで隕石か何かが落ちてきた後のようだ。

その光景を唖然と見つめていると上空から黒い物体が舞い降りてきた。

六枚の翼と尻尾、黒い鎧を全身に覆うその姿はまるでドラゴン。

僕達に興味を示さず、クレーターの方へ近づき、何かを担いで出てきた。

―――紺野木綿季さんを担いで。

 

「お主、誰じゃ」

 

学園長が厳しい表情で鎧の人に聞いた。鎧の人はその問いに答えずただ指を弾いた。

その直後に信じられない光景が起きた。クレーターがあるグラウンドは光り輝き、

勝手に元の状態に戻ったんだ。魔法でもないとできないその事実に目を大きく見開いていたら

一年生を担いでいる人の鎧が一瞬の光と共に消失し―――死神の格好をしたハーデスが姿を現した。

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

「・・・・・んっ」

 

『・・・・・気が付いたか』

 

ボクに声を掛ける誰かがいることに気付いた。ぼんやりとそっちに振り向くと死神の格好をした・・・・・ああ、彼がいた。・・・・・ボク、負けちゃったんだね。

 

「キミ、強いね・・・・・」

 

『久々に本気を出した。と言っても一割程度だがな』

 

あれで一割・・・・・全力だったらボクは歯牙にも掛けれなかったんだ・・・・・。

 

『お前から情報を見させてもらった』

 

「情報・・・・・?」

 

『俺の能力の一つだ。相手の情報をステータスのように目の前で広がり、

名前と血液型、体重にスリーサイズ、趣味や特技と言った全ての情報を観覧できる』

 

そんなこと何時の間に見たんだろう・・・・・。って、寝ている間だよね。辺りを見渡すと白い部屋に薬品の臭いが鼻の中に通ってくる。ここ・・・・・保健室か。

 

『単刀直入で聞くぞ。お前はこの世界の人間じゃない。別の世界で死んだ人間だな』

 

「っ・・・・・!?」

 

そこまで・・・・・ボクから情報を調べることができるのか・・・・・。

まいったな・・・・・これじゃ隠しようがないじゃないか。

 

『教えてもらえないか。どうしてピンポイントに俺を尋ねた?

死んだお前を突き動かすものはなんだ』

 

負けたからには・・・・・勝者の知りたいことを教えないとね。

別に口止めされているわけじゃないし。

 

「・・・・・元の世界に帰る為」

 

『元の世界に帰る・・・・・?』

 

「ボク、後天性免疫不全症候群(エイズ)って病気を患っていたの」

 

教えるなとも言われていない。だから問題ないはずだ。

 

「でも、症状が限界を迎えて、死んだ」

 

『・・・・・』

 

「意識が薄れていく最中ボクはこう思った。

死にたくない、もう一度・・・・・もう一度皆と生きてみたい、そう願ったんだ。

そしたら、急に目の前が眩しくなって白い空間にいた。

そこに自分は神と名乗るお爺ちゃんがいたんだ」

 

『神・・・・・だと?』

 

「うん、その神様はこう言ったんだ。

『お前の望みを叶える代わりにあることをしてもらえば願いを叶えよう』と」

 

そう、そのあることとは・・・・・目の前にいる存在を・・・・・。

 

「キミを、殺すことだよ」

 

『・・・・・っ!?』

 

動揺が伝わって来た。そうだよね・・・・・そんな反応をして当然だよ。

 

「でもボクは・・・・・人を殺してでも元の世界に帰りたくない・・・・・。

引き受けちゃったけれど、キミと戦っているうちにそう思うようになった。

神様から相手は世界を支配するボス級のモンスターって教えられた。

でも、ボクはやっぱり・・・・・誰かの犠牲の上で成り立つようなことをしたくない。

そんなことして元の世界に帰っても罪悪感が何時までもボクを縛り続けるだろうから」

 

上半身を起こしてペコリと深くお辞儀をした。

 

「ごめんなさい。謝っても許して欲しいとは思っていない」

 

『・・・・・』

 

彼は何も言わない。ただただ無言でボクに赤い目を向けてくる。

でも、しばらくして仮面を外し、マントも取った。真紅の長髪に獣のような垂直の

スリット状で金色の瞳だ。

 

「気にするな。だが、俺の頼みを聞いてくれるならいいぞ」

 

「頼み?」

 

「俺の協力者になってくれないか?」

 

協力・・・・・者・・・・・?

 

「お前が知っている情報を俺に提供してくれ。俺は数十年この世界に生きて未だに

分からないことがある。もしかしたらお前の情報でようやく分かるかもしれないんだ。

だからこそお前みたいな協力者が必要だ」

 

協力者・・・・・少なからずキミを殺そうとしていたボクにそんな事を

言うなんて・・・・・彼は心が広い。まるで・・・・・あの人のようだ・・・・・。

 

「紺野木綿季―――」

 

「ユウキでいいよ?」

 

「いいのか・・・・・?」

 

「うん、いいよ。キミ、取っても強かったし今まで負けたことがないボクを勝ったんだからね」

 

「わかった。なら、俺のことをハーデスって呼んでくれ。学校では死神・ハーデスと名乗っている」

 

分かったと頷く。死を連想させる名前だけどそれはきっと偽名に違いない。

 

「この世界でのことは俺に聞け。この世界の大半は俺達が支配しているからな」

 

「俺達・・・・・?」

 

「これから教えてやるよ。ピンからキリまでな」

 

彼は明るく微笑んだ。そんな笑う顔を見ていた僕も釣られて笑った。暖かくて優しい笑顔にね・・・・・。

 

「うん、これからよろしくね!」

 

「こちらこそ。それと家はどこにある?」

 

「この近くだけど?って言ってもちょっと遠いかな」

 

「そういうことだったら俺の家に移り住まないか?他にも何人か一緒に住んでいる家族がいる。皆強いぞ」

 

へぇ、強いんだ。どんな人達だろう。会うのが楽しみだ。

 

「移り住んでいいんだね?」

 

「いいぞ。空き部屋はまだあるし」

 

「分かった。でも、案外助かったかも。ボク、料理作ったことが一度もないから

毎日インスタントか弁当で過ごさないとダメだったんだよねー。

お金をたくさん用意してもらったけどさ」

 

「神様はそんなことまでしてくれるのか。気前がいいじゃないか」

 

意外そうに彼はそう言う。

 

「互いに暇だったら勝負しよう」

 

「勿論いいけれど特別な空間みたいなところがあるの?」

 

「そうだぞ。どんな攻撃をしても耐え凌ぐ強固で特殊な力を施している。

ついでに巨大なプールの施設やゲームセンターもあるぞ」

 

「プール!?うわ、楽しみ!」

 

死神の格好に戻った彼と一緒に地上へ降り立つ。仮面を被った彼を、

ハーデスとあんなことやこんなことを聞き、

 

「先輩と呼んだ方がいい?」

 

「・・・・・普通に呼び捨てでも構わないぞ」

 

「分かった、ハーデス。今度は負けないからね」

 

「・・・・・何時でも相手になってやる」

 

 

―――蒼天―――

 

 

「おや、思っていたより早くお帰りになされましたな」

 

白い帽子と白い浴衣を身に包む一本に纏めた青髪の少女が現れたイッセーに声を掛けた。

 

「別に懐かしむわけじゃないからな。それなりに遊ばせてもらったよ」

 

「ふふっ。楽しめましたか?」

 

「ああ。で、そっちになんか動きがあるか?」

 

「特に異常は無いかと」

 

それを聞いて頷き、少女と共にどこかへと足を運ぶ。

 

「蒼天は他の国と逸脱しているなんてよく言われているが、逆に問題ごとも多いからな」

 

「主に国同士ですな」

 

「日本は特に問題ない。が、他が問題だ」

 

「ここのところ、蒼天に不法入国や領域を侵入して我々の海域での密漁、

さらには軍事兵器についての訪問、取材などが多くなった。この対処に追われて忙しい

あまり私は好物のメンマを堪能することもできないですぞ」

 

不満げに漏らす少女にイッセーは苦笑を浮かべる。

 

「密猟に関しては守護龍に任せる。警告を三度もしても受け入れなかった場合、沈める」

 

「おやおや、怖ろしいことを言いますな」

 

「船員を船から居なくなった後だ。船員は母国に帰ってもらう」

 

「なるほど、あくまでも船を沈める。さらに言えば見せしめということですか」

 

少女の問いにイッセーは何も返さず目的地に辿り着いた。そこは機械的に

作られた空洞で、大勢の人間達が船を模した巨大な物に寄って掛かっていた。

 

「あの天照も完成した今、これも完成間近です」

 

「月に行くためにはそれなりの乗り物が必要だ。それがこのツクヨミ」

 

「主の力で月面に人間が住める環境を整えた後に我々は更に拡大する」

 

「計画はそうだ。人員の選抜の方は?」

 

「世界中から選り抜きしておりますが、まだ少々掛かるかと」

 

「そんなもんだろう。気長に待つさ。戻ろうか星」

 

「はっ、我が主よ」

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