「おっはよー!ハーデス君!」
「・・・・・おはよう、ハーデス」
「おはよう、ハーデス」
教室に入ってHRまで過ごしているとAクラスの三人の女子が現れた。
理由は言わずとも分かるだろう?
「ハーデス、お前のガールフレンドが来たぞ」
『・・・・・分かっている』
「っておい、普通にスルーか?」
違うって突っ込まれるかと思ったが・・・・・まあ、アイツが本当に異性と
付き合うわけがないな。教室から三人の女子と一緒に出て行ってしまったハーデスを見送る。
「何だかここ毎日、木下さんがハーデスに会いに来るよね」
「いつものことだが今回は頻繁に来るな。仲が良いことは別に構わねぇがよ」
「・・・・・俺達には関係のないこと」
明久達もあの四人の行動を今まで見てきたからそんなに気にするほどでもないだろう。
「うーん」
「どうした京」
「あの三人から感じる雰囲気・・・・・何か以前と違う」
「というと?」
「ん、なんだかラブオーラを感じるんだよね」
おいおい、霧島(姉)はともかく工藤と木下(姉)はないだろう。
「ハーデスが誰とも付き合わないって宣言しているんだ。それは有り得ないだろう?
霧島は例外だけど」
『雄二・・・・・』
『うおぉっ!?翔花、いきなり俺の顔を鷲掴みにしようとするな!』
『負けられない・・・・・』
『誰に!何にだ!?』
『姉さんが付き合い始めたから・・・・・』
『は?翔子が誰かと付き合い始めたのか?ま、ハーデスと付き合うことができないし
翔子は諦めて別の男と―――』
『姉さんが死神と付き合い始めたから・・・・・私も負けられない・・・・・・』
『・・・・・翔花、もう一度言ってくれないか?誰と誰が付き合い始めたんだって?』
『私、霧島翔花と坂本雄二が正式なお付き合い・・・・・』
『待てっ!さっきと言っていることが全然違う―――って明久とムッツリーニ!
指に挟んでいる文房具を下ろせ!翔花の言っている事実は真っ赤な嘘だ!他の連中もだ!』
『『異端審問会は異端者を許さないっ!』』
『『『異端者を捕まえて紐無しバンジーの刑を実行っ!』』』
『ちぃっ!ここは―――お前ら、直江も異端者だぞっ!
あの上級生の川神先輩に巨乳を押し付けられてムッツリーニみたいな反応をしていた!』
なっ、ふざけんなこの赤ゴリラがぁっ!
「坂本、俺まで巻き込む理由はあるのかぁっ!?」
『隊長!直江大和も異端者のようです!』
『捕まえて二人の血肉を花火代わりにして空に咲かせよう!』
『『『了解で有りますっ!』』』
おのれ坂本っ!俺まで巻き込もうとは悪鬼羅刹の名前は伊達じゃないな・・・・・っ!
―――2-A―――
『坂本がそっちに逃げたぞぉっ!』
『直江は階下に向かったようだ!』
『A班は階下に向かって直江を上階に追い込め!B班は上階へ坂本を誘導しつつ囲んで行け!』
『『『『『サーチアンド・デュースッ!』』』』』
「なんだか廊下が騒がしいわね」
「Fクラスは賑やかだから好きだけどねー」
「・・・・・私はハーデスの傍にる事がなによりの至福」
彼をAクラスに連れ込んでHRが始まる直前まで共に過ごす。
クラスが違うからこうでもしないと接することができない。
まさか・・・・・アタシが死神・・・・・イッセーと付き合うことになるなんて
自分でもビックリだわ。でもなんでだろうか心がスッキリしている。
三股って普通のカップルから見れば最低な付き合いかもしれないけれど、
蒼天は一夫多妻制だから蒼天に移り住めば・・・・・ってアタシってば何考えてんの!?
「ねね、ハーデス君。七浜のコスモワールドに遊びに行こうよ週末の日にさ」
「・・・・・愛子、いい提案」
「七浜かぁ・・・・・久し振りね」
そこで秀吉と一緒にいたイッセーと出会った。
それからさらに付き合い始めて今に至るのよね。
運命って本当に分からないわね・・・・・。
『・・・・・ところで、何だこの位置?』
「「気にしないの」」
「・・・・・気にしちゃダメ」
イッセーの膝の上に代表が乗って、アタシと愛子はイッセーの隣に座っている状態。両手に花以上の展開になっているわよアンタ。男冥利尽きるじゃない。
『・・・・・遊びに行くにしろ俺は変装しないとダメだ。顔が世間に割られている』
「あ、そっか。死神君は今じゃ有名人だしね」
失念していたわ・・・・・そういえばそうじゃない。あの夏休み最終日の大会で世界中イッセーの顔を見られているし、イッセーが町に歩くだけで野次馬がやってくるし、その・・・・・デートどころじゃないわ。
「おや、死神君じゃないか」
「久保君、どうしたの?」
「なに、キミ達が睦まじく見覚えのある人物にくっついているからね。気になって来たんだ」
「・・・・・睦まじいのは当然」
当然のように代表が言った。まぁ、そんなこと言う代表に久保君は
「失礼」と言ってこう言った。
「そういえば代表は彼のことが好きだったね」
「・・・・・優子と愛子もそう」
代表・・・・・そこでさらに付け加えなくてもいいのに、恥ずかしいじゃない。
「つまり・・・・・複数の女子に好意を抱かれているということか。
死神君、複数の女性と付き合うと言うならば不健全であるが、
仮に結婚する気があるなら蒼天で式を挙げるのかな?」
「もう久保君結婚なんてまだ早いよっ。
でも、もしもそう言うことになったら蒼天で結婚式を・・・・・」
「そうかい。三人共お幸せにキミ達の恋が成就できると良いね。―――僕も成就しないと」
時々久保君が何を考えているのかさっぱり分からない。
分かっちゃいけないような気もするけれど、蒼天の結婚は自由すぎるから久保君に
とって夢のような国かもしれないわね。
「・・・・・ハーデス」
『・・・・・?』
「・・・・・何でもない」
その短いやり取りにイッセーは徐に代表の頭を撫でた。なるほど、構って欲しかったのね。
『ねぇねぇ森羅君って前の学校はどこだったの?』
『僕は小さい頃から飛び級をしていて、バーハード大学にも卒業したんだ』
『バーハード!?凄い、森羅君って物凄く頭がいいのね!』
『それだけじゃないよ。僕は色々と武術を学んでいるからね。
それなりに強いからあの武神さえ倒しちゃうかも』
『あはは!面白い冗談を言うね森羅君!』
『・・・・・あれ、なに?』
「ああ、彼か。最近転校してきた森羅彰君と言うんだ」
『・・・・・手強くなったかもしれないなAクラス』
「あら、彼のこと知っているの?」
『・・・・・いや、知らない』
ただ、このクラスにもう一人増えたと言いたいのかもしれない。
それでもFクラスには劣るかも知れないわね。
『・・・・・そろそろ戻る』
イッセーがいきなりそんな事を言う。その理由は教室の壁に掛けられた時計の針が差す時間。
「え?あ、もうそんな時間なんだね」
「・・・・・あっという間に過ぎちゃう」
「そうね・・・・・」
公私混合を分けないと本来のアタシ達がすることに集中できない。
『・・・・・今度は俺からここに来る』
「・・・・・分かった。寄り道はダメ」
「また会いましょう?」
「じゃあねー。ハーデス君」
教室からいなくなるイッセーを見送ったアタシ達も高橋先生が来る前に自分の机に戻ろうとした。
「木下さん、さっきの変な格好をした人は誰?」
森羅君がアタシに声を掛けてきた。
「彼は死神・ハーデス。Fクラスに所属していて第二学年じゃあ誰も知らない人が
いないほど有名な死神よ」
「死神・ハーデス・・・・・人気があるのかな?」
「人気より知名度があるわ。十人中十人が死神を知っているですもの」
ちょっと自慢げに教える。アタシは間違った事を言っていない。誰も同じことを言うはずだ。
「それって悪い意味で?」
「善し悪し関係なくよ」
「ふーん・・・・・そうなんだ。じゃあ、もっとその死神の事を教えてよ」
興味を抱いたのかアタシにイッセーのことを尋ねてくる。
「悪いけれど今は無理よ。もうすぐ先生が来るから」
「じゃあ、次の休憩にでも教えて欲しい。いいかな?」
「ごめんなさい、彼と会う約束をしているから教えることができないわ。
他のクラスメート達から聞いた方が早いわよ。彼の戦い方は皆知っているもの」
高橋先生が教室に入ってきたことで話は打ち切った。
―――☆☆☆―――
「ハーデス、聞きたいことがあるんだが」
暴動を起こしたFFF団に追われ西村先生の鉄拳と説教から一時間後、
休憩となった現在に話しかける。こいつに聞きたいことができた。
『・・・・・なんだ?』
「お前・・・・・霧島と付き合い始めたのか?」
刹那。騒ぎが一瞬で静まり返って嫉妬心で妬みと怒り、恨み、
憎悪の眼差しがハーデスに向けられている。なんだろう、聞いておいて済まないハーデス。
どうか遠回しな返答で頼む。
『・・・・・想像に任せる』
具体的なことを教えないでくれるハーデス。さっさと教室からいなくなったことで
重苦しい空気が緩和した。
「大和、どうしてあんなことを聞いたのさ?」
「いや、だってなぁ・・・・・ハーデスはアレだぞ?正体と素顔を隠しているのに
彼女なんてできると思うか?」
「できないね」
「できないです」
「アイツに彼女なんてできるわけ無いじゃない」
明久どころか姫路と島田まで否定した。
「ま、明久は異性と付き合うことを禁じられているしな?―――姉公認で」
「うぐっ!」
見えない鋭い言葉の槍に胸が刺さったようなポーズをする明久に笑みを浮かべる。
「傍に女がいるのといないとの差は大きいが、それはそれだけのことだ」
「う、うん・・・・・そうだね・・・・・」
ションボリと落ち込む友人に慰めようとしたが止めた。余計なことを島田と姫路が
言いそうだからな。
「なに当たり前のことを言っているのよ直江は」
「そうですよ。吉井君に彼女なんてできるわけないじゃないですか」
「や、お前らも明久と付き合うことを認められていないのに何言ってんの?」
「「うっ・・・・・それは・・・・・」」
本当にこの二人は・・・・・誤解を招くような発言をするばかりだな。
「そう言う大和は誰かと付き合うならどんな女の子と付き合いたいんだよ」
「俺か?・・・・・まあ、好きになった女だろう。スタイルと容姿は一切関係無しで」
「それって無鉄砲な好みじゃない?」
「いいんだよ。好きになった女は自分の望んだ女とは限らないんだし」
「うーん・・・・・それもそうだねぇ」
ああ、そうだ。
まぁ・・・・・本音を言えば、俺はあの人が好きなんだけど・・・・・・。
「じゃあさ、中央区の王様がもしも女だったら大和はどうする?」
「それ以前に想像ができないって」
明久の指摘に思わず苦笑を浮かべてしまう。
―――2-A―――
短い休憩時間の中、彼が教室に入って来て今度はボクが膝の上に乗って代表と優子は
彼の両隣に座る状態で、楽しく会話をしているところに森羅君が近づいてきた。
「死神・ハーデス君だね?僕は森羅彰って言うんだ。よろしくね」
『・・・・・よろしく』
「スケッチブックで答えてくるのも情報通りだね。
死神君、僕と模擬試召戦争をしてくれないかな?」
模擬試召戦争って・・・・・森羅君・・・・・何をいきなり言いだすんだろう。
「キミの実力を是非とも知りたい。どうだろう、負けた方は何でも言う事を聞く
罰ゲーム付きで勝負しない?」
『・・・・・』
ニコニコと笑みを浮かべる森羅君に対してハーデス君・・・・・ううん、
イッセー君は首を横に振った。
『・・・・・模擬試召戦争で散々面倒くさい目に遭ったから遠慮する』
「うーん、実力を知りたいんだけどなー。
もしかして負けるのが怖いから戦いたがらないってことはないよね?」
『・・・・・戦う事より、学校生活を満喫したい。優劣を決めないと気が済まない
どこかの誰かとはもう戦う気はない』
森羅君との模擬試召戦争を拒絶したイッセー君。イッセー君がそう言うなら相手も
しょうがないと素直に引き下がる―――。
「じゃあ、僕と運動をしようよ。決闘でね」
『・・・・・それも断わる』
「なら、模擬試召戦争も決闘も断わるキミは僕に負けたって認識してもいいの?」
「「なっ・・・・・!?」」
「『・・・・・』」
何を言っているの・・・・・森羅君・・・・・。
『・・・・・自意識過剰は自分を辱めるだけだぞ』
「僕は知りたがり屋でね。どうしても気になることがあると
調べたり比べたがっちゃうんだ。武神を倒したっていうその実力を是非とも知りたい」
知的好奇心って言うんだろうね。だけど、イッセー君は一貫する姿勢でいる。
『・・・・・面倒くさい。勝ってにエアで勝利した気分を味わっていろ』
「・・・・・とことん救えないね。僕に勝てば・・・・・元の世界に帰るかもしれないのにさ」
『・・・・・なに?』
元の世界に帰れる・・・・・?それ、どういう・・・・・こと・・・・・?
「いいのかなー?キミが望んでいたことを僕が叶えても良いと言っているんだよ?
せっかくのチャンスを棒に振っても知らないよ?」
『・・・・・』
キーンコーンカーンコーン。
『・・・・・お前、何者だ?』
「僕は森羅彰。それ以上でもそれ以下でもないさイレギュラー?」
ボクが退くとイッセー君は立ち上がり森羅君と対峙する。
『・・・・・信用できない』
それだけ生の声で言い残すと彼はAクラスから出て行った。
森羅彰君・・・・・キミはどうしてイッセー君を知っている素振りをするんだい。
「木下さん、霧島さん、工藤さん。彼と付き合っているなら止めた方が良い。
彼は正真正銘の化け物だ。人間であり人類を超越した僕の方が、
つまらない人生を送らせないよ?」
「・・・・・ハーデスを倒してあなたは何が得られるの・・・・・」
「普通にスルーされたね。まあ、あの化け物を倒した暁には
この世界を支配してもいいって言われているけれど、
僕としてはイレギュラーな存在を倒して一番強いんだと証明したい。今はそれだけだよ」
「アンタ・・・・・アイツに勝てると思っていると赤っ恥を掻くわよ」
「ハーデス君、かなり強いんだからね」
「ははっ、それを聞いてますます戦いたくなってきたよ。僕は計画的に行動するほうだからね。
―――あのイレギュラーを早くキミ達の前で倒したいね」
―――☆☆☆―――
「―――俺を知っている奴が現れた」
ハーデスは蒼天の上空に浮かんでいる巨大な浮遊大陸に棲んでいる十数匹のドラゴン達に
囲まれた状態で真剣な面持ちで告げた。
『お前を知っている奴?まさか―――』
「いや、あいつらじゃない。初めて会った男に俺の正体を気付いていた」
『主の正体を知っている者など、我ら以外に存在していないはずです』
『ましてや、テメェが自分から人間共に言わない限り俺達のことはわからねぇはずだが?』
『グレンデルの言う通りだ。おい、そいつは本当にあいつらの誰かじゃないんだな?』
「もしもあいつらの中だったらこの場に連れて来ている。それが何よりの証拠だ」
十数匹のドラゴン達は顔を見合わせて訝しむ。
『イッセー、その者を警戒した方が良い』
「分かっている。だからこそお前らにも伝えに来たんだ」
『はっ!俺達がたかが人間に負けると思っているのかよ?
あの世界はともかくこの世界の人間によ!』
「俺の正体を知って尚勝負を吹っかけてきたやつだ。何かしらの力を持っているだろうと
踏んでいる。ゾラード、サマエル、ネメシス。しばらく俺の中にいてくれ。アジ・ダハーカはまた俺の中な」
『数十年振りに主の中に戻るか』
『分かった。久し振りに我らの力を振るうがいい』
『・・・・・(コクリ)』
『さて、また戻るとしようか』
四匹のドラゴンが光の奔流と化と成りハーデスに向かう。
「ラードゥン、不可視の結界でここと蒼天を張ってくれ。
メリアも何時でも動ける態勢でいてくれ」
『分かりました。久々に動きましょう』
『何かしらの合図を出してもらえば一瞬で主の下へ参ります』
樹のドラゴンと金色のドラゴンが肯定と返した。
「他の奴らも警戒してくれ。もしもここに見知らぬやつが現れたら俺に報告してほしい。
ラードゥンも結界に侵入した力の強い奴だったら報告してくれ」
『おい、そいつを殺しても良いんだな?』
「敵だったら容赦するな」
『グハハハッ!大歓迎だぜ!』
嬉しそうに哄笑を上げるグレンデルを余所にクロウ・クルワッハが歩み寄ってくる。
「一誠、お前から見てそいつの強さはどうだった?」
「不気味だとしか言えない」
「不気味・・・・・」
「得体の知れない力を不気味に感じた。
本人自身はそれほど覇気を感じないが逆に不気味さが増す」
「お前がそう言うほどの人間か・・・・・だが、気になる。
―――どうしてお前のことを知った者が今更現れた?」
クロウ・クルワッハの疑問はこの場にいるドラゴン達も尤もな気持ちでもある。イッセーは思案顔で思考の海に潜っても、
「分からない。俺達のようにこの世界へ来た様子じゃないのは確かだ」
『だとすれば、第三者の介入ですかね?』
『誰だよ、第三者ってのはよぉ?』
『・・・・・神か?』
ポツリと蒼いドラゴンが漏らしたのをハーデスは即答した。
「散々世界中を、秘境の地を探しまわった挙句、次元の狭間さえ探し回った俺達だぞ。今さら神が存在しているなんて有り得ない。と、以前の俺だったらそう言っただろうな」
『というと?』
「それはまた後で説明するさ。だが、神は確実にいるが確かなようだ」
『では、人間界とは別の異空間にいる可能性は?』
「可能性はなくはない。だけど、今更どうして俺を知っている奴が現れた?
それが一番の疑問だ。直接本人、そいつも聞くしかないだろうがな」
『簡単に教えてくれると思いませんがね』
「口を割る方法はいくらでもある。それを実行すればいいだけだ」