バカと真剣とドラゴン―――完結―――   作:ダーク・シリウス

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真約八問

「ユウキの世界は面白いゲームがあるんだなぁ・・・・・俺もそのゲームを体験したいな」

 

「ハーデスも凄い世界から来たんだね。一言で言うとファンタジーな世界が存在しているなんて」

 

ハーデスとボクはその日、互いの世界の情報を交換し合っていた。

ボクと彼の世界に何があるのか、文化、食文化、国、言える範囲で情報を出し合い、

違う世界同士の比較を確かめ合っている。

 

「茅場晶彦・・・・・天才的ゲームデザイナーに量子物理学者として

知られる科学者か・・・・・違う世界の存在としてその人は歴史に名を残す程の人物だな」

 

「でも、デスゲームを強要させた人物でもあるよ?」

 

「許されないことだが、本人にも何か求めていたんだろうな」

 

「求めていたもの・・・・・」

 

「流石に俺でもそんな仮想空間をゲームとして構築するのは無理だ。

何十年何百年単位の時間が必要だ」

 

「まさか、構築する気だったの?」

 

「試験召喚システムを開発したのは俺だぞ?ゲームぐらい俺でも作れるが、

そこまで完全なる仮想空間を構築するのは至難の業だ。似たようなことはできるけどな」

 

「似たようなこと?」

 

小首を傾げるボクにハーデスは説明した。

 

「チェスって知っているだろう?」

 

「うん、兵士(ポーン)が8つ、戦車(ルーク)が2に騎士(ナイト)も2つ、僧侶(ビショップ)が2つ、

女王(クイーン)(キング)の駒がそれぞれ1つの計16の駒で相手の(キング)の駒を

チェックメイト、詰めるボードゲームみたいなものだったね」

 

「だいたいそうだな。じゃあ、その駒全てが俺達だったら?」

 

「・・・・・えっと?」

 

何を言いたいのか分からないから思わず小首を傾げるとハーデスが補足してくれた。

 

「チェスの駒を俺達自身が成って戦うんだ。それを俺達の世界ではレーティングゲームと称されている」

 

「っ!」

 

そんなゲームがハーデスの世界にあるんだ。ALO(アルヴヘイム・オンライン)

ボクの世界とは違う意味で楽しそうなゲーム。

 

「そのレーティングゲームって誰が構築したの?」

 

「魔王様だ」

 

「魔王・・・・・?」

 

「レーティングゲームは元々悪魔の種の存続が危ぶまれてそれを回避する為に

他の種族を悪魔に転生させ尚且つ色々な思惑も含めて作られたゲームだ」

 

「悪魔に転生ってどうやって?」

 

「チェスの駒を模した悪魔の駒(イーヴィル・ピース)を使って悪魔に転生させるんだ。

だけど転生させる際、転生させる種族の強さによって消費する駒の数も違ってくる。

さらに変異の駒(ミューテーション・ピース)という複数の駒を使うであろう資質を

宿した転生体を一つの駒で済ませてしまう特異な駒がある」

 

悪魔の駒・・・・・人間だけじゃなくて他の種族にすら悪魔に転生することができる駒か。

 

「それって、無理矢理転生されちゃうの?」

 

「割り合わない取引で転生させられる話はあるが、基本的に相手と交渉をして転生する

ことが常識なんだ」

 

「じゃあ、ハーデスも誘われたことがあるんだ?」

 

「あったが、俺は断固拒否した。人間のままでいたかったからな」

 

ハッキリと拒絶したんだ。そう言う考えもある人もいる・・・・・。

 

「ねね、ハーデスの世界で一番強い人って誰なの?」

 

「そうだな・・・・・挙げればドラゴンだ」

 

「人じゃなくてドラゴン?」

 

「ドラゴンにも色んな奴がいるぞ。

蒼天の上空にある巨大な浮遊大陸にいるドラゴン達がその代表だ」

 

まだ行ったことがないけど、ドラゴンがいるんだ。会ってみたいな。

 

「・・・・・ユウキのゲーム、もしかしたら現実的にできるかもしれないな」

 

「え?だってさっき・・・・・」

 

「ああ、あくまで科学のゲームとして構築するのは至難の業だ。

だが、レーティングゲームはユウキがしていたゲームと似ているところがある。

かなり大掛かりで時間も掛かるだろうけど、実現できるかもしれない」

 

じゃ、じゃあ・・・・・ボクの世界にあったゲームがまたできるんだ・・・・・っ!

 

「その為にはユウキ、お前が体験した事とゲームの知識を提供してくれ。

それに近いゲームをなんとか実現して見せるから」

 

「うん、うんっ!ボクも手伝うよハーデス!あのゲームがまたできるならボク、

一生懸命ハーデスの手伝いをするよ!」

 

絶対に実現してみせる。そして、また・・・・・またあの場所を・・・・・。

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

最近、ハーデスが何やらミカン箱にノートを開いて忙しなくペンを動かしている。

時折止めては直ぐに動かす。その光景はまるで科学者その者。

 

「ハーデス、今日も何か書いているね」

 

「授業中でもああだぞ」

 

「・・・・・悪巧み?」

 

「ハーデスが悪巧みなど似合わぬのぅ」

 

雄二達と話し合いながらハーデスに視線を送る。

最近、昼食も一緒にしないで教室にいることが多い。

 

「秀吉、ちょいっと聞いてくれないか?」

 

「んむ?ワシかの?」

 

「この中で一番仲が良さそうなのは秀吉だと思うからね」

 

「・・・・・俺はその二番目」

 

さりげなくムッツリーニが主張しているのは置いといて、秀吉に頼んでいると秀吉は

二つ返事で了承し、ハーデスの傍に近寄った。跪いてハーデスに声を掛ける姿を見守って

いると見慣れたスケッチブックに何かを書いて、書いたページを切って秀吉に渡した。

それを手渡され、当惑した面持ちの秀吉が戻ってくる。

 

「何て書いてある?」

 

「これじゃ」

 

『しばらく話しかけるな』

 

・・・・・これだけ?

 

「・・・・・どういうことだ?」

 

「分からぬ。ちらっとハーデスのノートを見たら絵が書いておった」

 

「絵?あいつ画家になるつもりか?」

 

「さぁーの。ワシには分からぬが・・・・・」

 

ガラッ

 

「ハーデス、手伝いに来たよー!」

 

「あの後輩と深く関係がありそうじゃな」

 

紺野木綿季ちゃん。1-Cの後輩。彼女がハーデスの傍に寄るとハーデスは彼女に対して

声で語り合い、訳の分からないことを討論を交わし始めた。

 

「・・・・・き、聞くに堪えない会話・・・・・」

 

「あれ、何語?」

 

「日本語だ、と思いたいが何か難しいことをばかり話しやがるなあいつら」

 

「む、むぅ・・・・・」

 

絶対に理解できない。あの会話に入り込める隙すら全然ない・・・・・っ!

 

「ん?なんか、面白そうな話をしているね?」

 

その会話に卓也が入り込もうとした。最初は聞いているだけで、しばらくしていると苦笑いを浮かべた。

 

「おい、モロ。何か分かったのか?」

 

「言いたい事と知識はそれなりに理解できたけれど、僕の予想を超えたレベルだったよ」

 

「マジでか。あの一年とハーデス、モロのPC知識を上回っているのか・・・・・」

 

「いや、そうじゃないよ。なんかもっと複雑で、基礎理論が~設定が~構築が~とか

何かを組み込むことと何かを応用しようとしている話ばっかりしていたんだ」

 

「・・・・・で、お前の感想は?」

 

「僕も分からないや」

 

以上、卓也とガクトの会話だった。そして、時間になると後輩は自分の教室に戻り、

ハーデスは変わらず訳の分からないことを書き続ける。

 

 

 

 

午後の授業が終わって、ハーデスとハーデスの家に同居している上級生の皆と家に帰宅した。

 

「ユウキ、試しに最初のステージを構築しようと思っている。手伝ってくれ」

 

「もう!?だって、まだ色々と考えないといけないことが山ほどあるんだよ?」

 

「ユウキの世界のゲームは究極のRPGを体現させたゲーム、

仮想世界=異世界だと認知している。異空間自体作ることは可能なんだ。

問題は俺達自身とアイテム、モンスター、NPCの構築だけだ」

 

「でも、どうやってするの?」

 

ハーデスに尋ねた。だって、今までボクとあれこれと言い、一緒に考えていただけで

まだ本格的な準備すらしていない。ハーデスはどうやってするんだろうか。

 

「既に異空間を作ってある。後はユウキの記憶から抽出してステージを俺が構築するだけだ」

 

「ボクの記憶から抽出?」

 

「所謂コピーだ。本当に抜き取るわけじゃない。まぁ、ついてきてくれ」

 

どこかへ足を運ぶハーデスについていく。ハーデスの家に移り住んでまだ間もないけれど、

地下3階に行く為のエレベーターじゃなくてとある変哲もない扉に近づき開け放って

中に入った。ボクも続いて中に入り、キチンと閉めると部屋の真ん中に大きな透明な

球状の物が浮いていた。

 

「これって・・・・・」

 

「まだ中身は何もない状態だ。この中に俺達が入って、

ユウキが体験したゲームの一部をこの中で構築するんだ」

 

一緒に触ってくれと付け加えたハーデス。透明な球状に触れて中に入ることが

できるんだろうかとちょっと不思議に思いながらも一緒に触れた途端、意識が持って

行かれる感覚が襲われ、視界が真っ白になった。

 

 

―――――。

 

「・・・・・うわ」

 

しばらくして、目を開けるとボクは透明な球状の中にいた。しかもボク小っちゃくなっている。

身体の感覚と感度は良好っと。足場は何もないけど浮いている。

羽を生やしているわけでもないのにどうやって浮いているんだろう?

隣にはハーデスがいる。何時の間にか金色の錫杖が手にしていた。

 

「ユウキ、ゲームの中で一番思い出に残っている景色、場所を強く思い浮かべてくれ」

 

「え?それだけ?」

 

「それだけだ」

 

頭に手を乗せられた。

 

「さぁ、浮かべてくれ。俺はその通りに実現させるだけだからな」

 

実現・・・・・じゃあ、ボクのかけがえのない思い出を・・・・・どうか実現してほしい。

そう願いを籠めて僕は強く、強く記憶からあの光景を思い浮かべた。

あの人と最初に出会い最期に別れたあの場所を・・・・・。

 

『・・・・・目を開けていいぞ』

 

しばらく経った頃にハーデスの声が頭の中に響いた。次に目を開けた時に飛び込む

光景にしっかりと心の準備を整えて。そして・・・・・目を開けた。

 

「・・・・・」

 

・・・・・大きな木、ボクがいる場所は湖に囲まれていて周囲を見渡すと・・・・・。

あの世界と酷似している光景が・・・・・。

間違いない・・・・・この孤島は・・・・・っ。

 

「・・・・・ユウキ・・・・・?」

 

ハーデスが不思議そうに声を掛ける。ゴメン、心の中で謝りながら孤島に根を

張る大きな木に近づき、あの人の腕の中で死んだあの花々が咲いている場所に座りこんだ。

 

「ううっ・・・・・ううううう・・・・・っ」

 

ここでボクは・・・・・がんばって、生きた・・・・・。ここで、生きたんだ・・・・・。

 

「皆・・・・・アスナ・・・・・!」

 

「・・・・・」

 

近づいてくる足音が聞こえてくる。

そして、ボクの真後ろで止まると・・・・・背後から抱きしめられた。

 

「お前にも・・・・・会いたい人がいるんだな」

 

「・・・・・ハーデス」

 

「俺もあいつらに会いたい・・・・・」

 

・・・・・ハーデスも、親しい人がいるんだね。

だけど、何らかの理由でこの世界に来てしまった。

 

「ハーデスも・・・・・会いたい人がいるんだね・・・・・」

 

「この世界で生きることを望んでいないまま数十年も会っていない」

 

そんなに長く・・・・・。数十年もこの世界で生き続けていたんだ彼は・・・・・。

その数十年間、彼にとって孤独に等しい時間だったろう・・・・・。

 

「元の世界に帰る方法があってもできないこの状態。俺はこれからも生き続けるだろう」

 

ハーデス・・・・・。背後に振り返り、優しくハーデスを胸に抱きしめた。

 

「・・・・・ボク達、似ているところがあったんだね。

その気持ち、分かるよ・・・・・」

 

      ―――――会いたい人がいる、あの世界でもっと生きたい―――――

          それがボクとハーデスの似ているところだ。

 

「ボクもね、キミを殺すまで死ぬことができない身体と命になっちゃったんだ。

望んでもいないのにね」

 

「・・・・・悪い、俺の所為で」

 

「ううん・・・・・気にしないで。でも、今それが良かったかもしれない。

―――ボクはキミの傍で生き続けようと思う」

 

「・・・・・一緒に生きてくれるのか?」

 

「うん、支え合って孤独にならないよう一緒に生きよう?ね、ハーデス」

 

強く抱きしめながら決心した。まだ会って間もないこの人とずっと生きよう。

彼と望まないこの世界で・・・・・。

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

「さぁ、僕と勝負しよう死神・ハーデス!」

 

『・・・・・』

 

どうしてこうなった、とハーデスは何度も何度も心の中でそう思った。

Aクラスの生徒にグラウンドで森羅彰が話をしたいと言うことで来て後悔していた。

どうやらハーデスと戦う為に仕組まれたことだと開口一番で分からされた。

ギャラリーも大勢いて遠巻きで囲んでいる。既に森羅彰と決闘をするのか?

という雰囲気で包まれている。望んでいないことをしてもやる気が出ないハーデスは

 

『面倒』

 

と二文字を書いた。

 

「なら、やる気を出させるようにしようじゃないか。―――工藤愛子さんと木下優子さん、

霧島翔子さんと霧島翔花さんを懸けた決闘だ」

 

『・・・・・なんだと?』

 

「彼女達はいずれ―――」

 

ゴッ!

 

森羅彰が勝手に吹っ飛んだ。拳を突きだした状態をしているハーデスが放った衝撃波によって。

 

「くっ・・・・・決闘はもう始まっているということか・・・・・!

やるじゃないか、僕に先制攻撃をしてくるなん・・・・・!」

 

一瞬で森羅彰は氷漬けになった。

 

『・・・・・どうせこうなる』

 

―――パキィイイイインッ!

 

「そうだね」

 

森羅彰が何事もなかったかのように氷の中から脱出したのだった。

それに対してハーデスは足元にあった石を蹴り飛ばし、弾丸の如く飛んで行く石は

森羅彰に当たらず見えないバリアのようなものによって明後日の方向へ弾き返された。

 

『・・・・・召喚獣と同じ能力か』

 

「僕に肉弾戦は一切通用しないよ。僕は全てベクトルで攻防一体してみせるからね」

 

『・・・・・お前、転生者と言う奴か』

 

「さぁ、なんのことかな?ほら、かかっておいでよ。ま、僕の顔に触れることもできないけどね!」

 

強く地面を踏んだ瞬間にハーデスの周囲の地面から鋭く尖った槍状が飛び出した。

その槍を手刀で両断してみせると、森羅彰は空気をベクトルし、

風を激しく渦巻かせハーデスを取り囲んだ。が、その渦巻く風は瞬く間に止んだ。

 

「・・・・・お前を触れて血液を逆流してやろうか・・・・・」

 

『・・・・・触れさせてくれるのか?』

 

「触れる前に僕がキミを触れて血の海に沈めてやる!」

 

ハーデスに飛び掛かる森羅彰。ハーデスは仮面越しに嘆息をし、

懐に飛び込んで両腕を突きだした森羅彰の額を人差し指で触れた。

 

「・・・・・え」

 

『・・・・・触れたぞ?』

 

刹那、三秒の間に森羅彰は見るにも無残な姿でグラウンドに放置された。

ハーデスのコメントはこうだった。

 

『・・・・・能力に頼ったもやしだった』

 

 

 

「ハーデス、キミは強いね!」

 

『・・・・・あいつが貧弱すぎるだけだ』

 

「見ていた僕達も何が起きたのかさっぱり分からなかったけど」

 

「実際、なにがどうなったんだ?」

 

『・・・・・知ったところでどうとなるわけでもない』

 

「ま、俺達には関係のない話ってことだ。だろ、ハーデス?」

 

『・・・・・(コクリ)』

 

教室に入って来たハーデスを囲んで会話の花を咲かせる。また僕達には理解できない

ことを書いているけどね。

 

「ところでだ。お前、何書いているんだ?」

 

『・・・・・究極のRPGの基礎理論』

 

「RPG?ゲームのこと?」

 

『・・・・・自分達自身がゲームのキャラクター、アバターとなりステージにいる

モンスターや町のクエスト、ボス戦等々・・・・・体験できるシステムを考えている』

 

「えっと・・・・・雄二」

 

「たくっ、お前の好きなゲームが現実的に体験できるということだ」

 

―――っ!?な、なんて素敵なゲームを考えているんだこの死神は!?

そんな非現実的なことを蒼天は考えていたなんて!

 

「だが、んなことできるものなのか?」

 

『・・・・・基礎理論が構築できたら実現できる。が、まだ時間は掛かる』

 

「へぇ、実現できたら体験してみよう。自分で武器を振るってモンスターを

倒すことができるそんな面白いことをやらないわけ無いだろう」

 

「・・・・・忍者のアバターを要求する」

 

「お主はゲームの中でも自分の欲望に忠実じゃの」

 

僕、体験できるとしたら剣士がいいね。だって格好良いし!

 

「雄二はどんなキャラクターにする?不良?」

 

「阿呆、そんなゲームのキャラクターがあってたまるか。選ぶとしたら格闘士だ」

 

「ワシは長刀使いの剣士かの」

 

なるほど、雄二はどうでもいいとして秀吉は美少女剣士と言うことだね。

 

「・・・・・ハーデス、性別をハッキリできるキャラクターを作って欲しいのじゃ」

 

『・・・・・自分自身だから大して変わらないと思う』

 

「だってよ、バカで不細工顔の明久」

 

「だってさ、ゲスで女子に弱い雄二」

 

「「・・・・・っ!(睨み合い)」」

 

「・・・・・どっちもどっちだと思う」

 

『・・・・・同感だ』

 

何を言っているのかさっぱり分からないね!そんな分からないフリをしている中、

コンコン、と軽く扉を叩く音が聞こえてきた。

 

「すいません。こちらの姫路瑞希さんと言う方にお会いしたいのですが」

 

聞き慣れない声に、丁寧な口調。誰だろう?雄二達も覚えがないらしく、

皆一葉に疑問符を浮かべている。

 

「失礼致します」

 

僕らが記憶を探っている間に扉が開き、見覚えのない人が教室に入って来た。

その人はスラリと背が高く、細面に切れ長の目という、整った顔立ちをした格好の良い

男子生徒だった。うわ・・・・・。

凄い美形だな・・・・・中央区の王様とは違う格好の良い人だ。

 

 

『誰が入って良いと言ったコルァ!』

 

『ブチ殺すぞワレ!』

 

『病院行っとくか、あァ?』

 

そして、相手が美形の男だと分かった瞬間に敵意丸出しの罵声を飛ばすクラスメイト達。

あまりに徹底したクズっぷりに驚きを通り越して感動すら覚えそうだ。

 

「大変申し訳ありません。皆様の気分を害するつもりはないのですが」

 

華麗な、と形容できそうな一礼をして謝罪を述べる美形男子。凄い。

あんなTVてしか見ないような礼をする人、生まれて初めて見た。

 

 

『美形は帰れ!』

 

『そうだ!お前みたいなのがいると俺達の不細工が目立つだろうが!』

 

『この教室に美形は俺一人で十分なんだよ!』

 

 

その優雅な仕種が気に障ったのか、更にヒートアップする仲間達。

もはやここが進学校の教室だと言ったところで誰も信じはしないだろう。

そんなアレている彼らを宥めるように、美形の人はこう言った。

 

「いえ・・・・・。皆様も、動物のようで愛らしい顔をしてらっしゃると思いますよ?」

 

 

『『『表ぇ出ろやコラァ!!!』』』

 

 

ドガガガガガガッ!

 

 

『お前ら・・・・・静かにしないとお前らの男の象徴をコイツで潰すぞ・・・・・』

 

 

出た、久々のガドリングガン!ハーデスが銃弾をぶっ放したことで仲間達は一斉に両手で

ある箇所を庇うように抑えて教室が一気に静まり返った。完全に委縮しちゃってる。

 

「お久しぶりです死神君。いつぞやの肝試し以来ですね」

 

『・・・・・高城雅春だったな』

 

「覚えておいて嬉しい限りです。あなたに客人ですよ?」

 

『・・・・・予想が付くな。―――葵だろう?』

 

「ええ、正解ですわ。それに高城君。全然話が進んでいませんわ」

 

高城と呼ばれた人の後ろからもう一人、今度は知っている人が教室に入って来た。

制服の上からでも凹凸がハッキリと分かるほど艶っぽい体のラインに、煽情的な仕草。

あの人は、学年対抗肝試し大会でムッツリーニを血の海に沈めた人―――

 

「小暮、先輩・・・・・」

 

「こんにちは、2-Fの皆さん」

 

さっきの高城と言う人に倣ったのか、スカートの端を摘まんでちょこんと礼をする

小暮先輩。いやいやいや。そういうのって普通はロングスカートでやるもので、

そんなに短いスカートでやると・・・・・

 

 

『どうぞ、犬とお呼びくださいお嬢様』

 

『俺様のことはハンサムなゴリラとお呼びください』

 

『動物園へようこそ、小暮様』

 

『今日はどういった愉快な生き物が御所望で?』

 

 

ほら。皆が錯乱しちゃったじゃないか。約一名、友達も入り混じっちゃってるしまったく。

 

「いいえ。私も小暮嬢も、愉快な動物に用事があって来たのではありません」

 

『誰が喋っていいって言った!あァん?』

 

『簀巻きにして窓から捨てンぞワレぇ!』

 

『俺たちゃ小暮様と会話をしてんじゃボケ!』

 

『・・・・・レッツ・パーティー♪』

 

 

数分後、仲間達が急所を抑えて身悶えている地獄絵図、阿鼻叫喚が出来上がった。

うわ・・・・・。

 

『・・・・・知性が低い愉快な動物達が迷惑を掛けた』

 

「いえいえ、あなたが謝ることではありませんわ。―――ハーデス君」

 

妖美な微笑みに艶のある声音でハーデスに話しかける小暮先輩に動じない

ハーデスは凄いと思うのは僕だけだろうか。

 

『・・・・・それで、高城先輩は姫路瑞希に用事があると?』

 

「ええ、少しばかりお話をと思いまして。ついでにこのクラスの代表の方とも

今後の方針に付いて決めようと参ったのです」

 

「はっ、俺はついでかよ?随分と姫路を優先なんだな」

 

「ええ、なんせフィアンセですから」

 

・・・・・はい?

 

『『『んだとゴルラァァァァアアアアアアアアッ!』』』

 

「すいません、今のは高城君の冗談ですので怒りを収めてください」

 

『『『ああ、そうだったんですか。どうもすいませんでした、

お見苦しいところをお見せしまいましてはい』』』

 

なんという360度の態度の早変わり。急所・・・・・大丈夫なの?

 

「姫路と話す前にまず、俺と今後の方針とやらはどういうことだ?」

 

「もうじき、私達は蒼天の学園と勝負をします。ですので、各学年の代表達が集って

せめて自分達のクラスはどういう行動をし尚且つ連携を取るか会談を設けようと

思っております」

 

そっか。既に三年生の方にもその話が伝わっているんだ。

 

「それは当然のことだろうな。俺からもそう言う話しを

第二学年の各代表達に伝えようかと思っていたところだ」

 

「聡明なお考えです坂本君。いえ、赤ゴリラと呼ばれていましたね?」

 

「ちょっと待て。三年生の間で俺はどういう存在になっているンだゴラ」

 

「常村君と夏川君が『Fクラスは野蛮人の集団を纏めている死神がいる。

その幹部は年がら年中発情している赤ゴリラという動物の代表がいるぞ』と

仰っておりましたが違いますか?」

 

常夏コンビ・・・・・何て事を言い触らしているんだ!

ほら、雄二の額に青筋が浮かんでピクピクと動いているよ!

マジギレ寸前までキテいるよ・・・・・。

 

「そいつはそいつは・・・・・面白い情報を教えてくれてどうもありがとうな

高城先輩よぉ・・・・・。ついでとなんだが、

その二人に『木下秀吉と姫路瑞希の手料理を後日渡しに行く』と伝えてくれるか?」

 

「そう言うことでしたらしっかりとお伝えしましょう」

 

「待つんじゃ雄二!ワシまで巻き込むのではないのじゃ!あ、あの先輩だけは勘弁してほしい!」

 

「大丈夫だ秀吉。名前だけだして本当に料理を作るのは―――」

 

「ああ、そういうこと?雄二、ナイス!」

 

姫路さんの料理をあの先輩達に食わせて意趣返しするつもりだね。

 

「んで、その代表同士の会談は何時にするんだ?」

 

「もうすぐ体育祭を迎えますので体育祭後でもどうでしょう?」

 

「問題ない。第二学年の代表達は俺から伝えておく」

 

「ご協力感謝します。さて、本命の姫路瑞希嬢と―――」

 

「ああ、俺と話している間にどっか行ったぞ?」

 

と、雄二が意味深な笑みを浮かべて言う。肝心の姫路さんがいないことに高城先輩は

気を落とした風でも無く、

 

「おや、話に夢中で気付きませんでした。小暮嬢・・・・・おや」

 

ん?高城先輩の反応が気になるな。小暮先輩は・・・・・っとぉっ!?

 

 

『ふふっ、ハーデス君・・・・・』

 

『・・・・・なぜ、押し倒す』

 

『あら、こういうのはお嫌い?』

 

『・・・・・場所を考えろ』

 

『でしたら、茶道部でこの続きを・・・・・それとも、小山さんもご一緒のご希望ですか?』

 

 

せ、制服を半脱ぎ・・・・・っ!ワイシャツまでもが肌蹴させ、ハーデスを迫っているぅっ!?

し、しかも肌蹴た為なのか肩に黒い紐のようなものが・・・・・っ!

 

「・・・・・し、神秘・・・・・っ!(ブシャァァァァッ!)」

 

「誰か救急車を呼ぶのじゃ!ムッツリーニが鼻血で呼吸不全に陥っておる!」

 

こ、このままいけば・・・・・あ、あられもない小暮先輩の煽情的なお姿が・・・・・!

 

『ハーデス君、遊びに―――ってハーデス君が上級生に押し倒されているぅぅぅっ!?』

 

『な、何ですってっ!?』

 

『・・・・・新たな敵が現れた・・・・・!』

 

木下さんと工藤さん、霧島(姉)さんが驚愕している声が聞こえた。

 

「・・・・・小暮嬢。死神君と戯れるにしては些か不謹慎ですよ」

 

「あら?男の子はこういうのがお好みだと―――えっちぃ本で学びましたのよ?」

 

煽情的で瞳が潤っていて唇に人差し指を軽く押しつけハーデスを押し倒したまま、

四つ這いの状態で上目遣いをしながら高城先輩に言う彼女に、仲間達は前屈みとなってしまった。

 

「え、えっちぃ本とはいったい・・・・・っ!」

 

「もちろん・・・・・・保健体育の実技に関する本ですわ」

 

「ブッシャアアアアアアアアッ!(ビクンビクンッ!)」

 

「ム、ムッツリーニィッッッ!!!!!!」

 

な、何て精神攻撃をしてくるんだこのエロい先輩はぁっ!?

もう、この床が赤く染まりつつあるよ!

 

「せ、先輩!ハーデス君から離れてください!」

 

「が、学校の規則を完全に反していますっ!

血を出し過ぎて死んでしまいそうな生徒もいるんですから!」

 

「・・・・・ハーデスを迫るのは妻の務め・・・・・!」」

 

「「代表まで制服を脱ごうとしないで!」」

 

Aクラスの三人が小暮先輩に近づこうとする。

その直後、扉の向こうから暑苦しい人が現れた。

 

「お前ら、席に―――って、なんだこれは!?」

 

―――☆☆☆―――

 

―――昼食―――

 

「た、大変だったね・・・・・」

 

「侮れねェ先輩だったぜまったく・・・・・」

 

「ハーデスが用意しておった緊急用輸血がなかったらムッツリーニは天に召していたのじゃ」

 

「・・・・・だ、誰か・・・・・あの光景の写真を・・・・・」

 

『・・・・・まだ懲りないのかお前は』

 

一同、溜息を吐いて漏らす。あの後のことはもう何も言うつもりもない。

 

「あそこまで言い寄られてお前は無反応なんだな」

 

『・・・・・それがどうした?』

 

「それがって・・・・・お前、何か反応しないのか?」

 

『・・・・・密着具合が少々不満』

 

密着かよ!そっちかよ!まるでイッセーさんだなおい!

 

「なぁ、ハーデス。お前はあんな先輩のデカい胸を押し付けられて不満なんて

贅沢だな・・・・・っ!」

 

『・・・・・俺、貧乳派だから』

 

「なぬっ!?男は巨乳だろう!違うか!?」

 

『・・・・・無いよりあった方が確かにいいと思うけど、

限りなく零になるほど近く抱きしめることが至福を感じる』

 

「いーや、俺様は絶対に無いよりあった方が良いな。大和だって隠している

聖書(エロ本)は年上のお姉さんに巨乳だぞ?」

 

「おいそこのマッスルゴリラ。なに人の性癖を暴露してんだ」

 

だから、ファミリー以外の女子達・・・・・俺を白い目で見ないでくれ。

物凄くいたたまれないから。

 

「・・・・・そっか、ハーデス・・・・・小さい胸が好きなんだ」

 

とある女子がホッと安堵で胸を撫で下ろしている姿を見たのは気のせいにしようか。

 

「じゃあ、ハーデス。抱き心地が良さそうな女の子はこの場にいるのかしら?」

 

ワン子の素朴な疑問にハーデスへ集中する視線。

ハーデスは赤い目を俺達に見渡すことしばらくして―――。

 

『・・・・・試してみないと分からない』

 

こいつ・・・・・美味しい事を考えやがったな。

 

「なら、私から試してみろ」

 

「次は私で」

 

積極的だなおい!そこのヤクザとマフィアの一人娘!

 

『・・・・・家で試す』

 

「「分かった」」

 

「あ、するんだね」

 

ハーデスの性癖というか・・・・・好み?が、分かったところで話がさりげなく変わる。

 

「そう言えば皆、ニュース見た?」

 

「ああ、国家世界会議のことだろう?なんでも、蒼天の王を招いてするらしいな」

 

「ずっと独立国家を貫くと言っていたのにね」

 

「何時までも国同士の交流を絶ち続ける蒼天に業を煮やしたんじゃないか?」

 

国はともかく人は交流していると言う時点で国同士の交流はしているようなもんだろうがな。

物資の流通は一方的に要求している蒼天に対して、解決できない荒事や事件、

自然災害を依頼する世界各国。

 

「でも、蒼天の王様・・・・・イッセーさんは応じるか?」

 

「うーん、どうなんだろうね?」

 

「形だけの参加はしそうだがな」

 

「蒼天と同盟、友好を結んだらどうなるんだ?」

 

「世界各国が蒼天でできなかったことができるようになるんじゃないか?」

 

それは色々とあるが、蒼天はそれに対してどう思うのか定かではない。

国同士の交流は大切だし、絶対に欠かせない。国は援助なしに、

助力も無しに存続は続かない。それはイッセーさんだって知っているはずだ。

なのにしないって・・・・・なにか考えがあるのかな・・・・・。

 

「ハーデス、お前はどう思う?」

 

『・・・・・クリスの言う通り、形だけの参加になりそうだ』

 

「む?そうなのか?」

 

『・・・・・蒼天は世界各国が喉から手を出す程に求めているものが山ほどある。

軍事、技術、試験召喚システム、そして・・・・・ドラゴン』

 

確かに言えているな・・・・・。

 

『・・・・・もしも、それらを我が国にも提供してほしいと言う国が存在するならば、

それは殆どの国が思っているのと道理かもしれない。

だから、蒼天は今の立場を保ち貫き続ける必要がある。余計な力を与えない為にも』

 

「パワーバランスを崩さない為か?」

 

「だけど、皆で一緒に頑張って平和にしていけば崩れないんじゃない?」

 

『・・・・・そう口にするだけなら誰だってできる。でも実際、大気汚染、貧困、

環境問題、飢え、経済不安定と問題を抱えている国に蒼天は全部解決することはできない。

それは国が抱えている問題。国が解決しないと成長しないしこれから先やっていけないだろう』

 

・・・・・あまり頼られると国力が低下するってことだろうか?

まぁ、理解できないわけじゃないし言いたいことも分かっているつもりだ。

が、何だか閉鎖的だな蒼天は。

 

「むぅ・・・・・国の問題は根深いものだな・・・・・」

 

「空の上の人みたいな人は影じゃ苦労しているんだね」

 

「一介の学生のアタシ達にはピンと来ないわね」

 

「イッセーさんも頑張っているんだなぁ・・・・・」

 

朗らかに笑うあの人の姿しか思い浮かべない。

 

「ま、あの人はあの人なりに頑張っている。俺達も卒業するまで頑張ろうぜ」

 

「うん!アタシももっと修行して強くなるわ!」

 

「私は蒼天に移り住んでイッセーの妻になる」

 

「京は壮大なことを言うね。側近になるのも結構大変なのに」

 

「俺様、未来じゃあ何しているんだろうなー」

 

「俺は当然世界中に冒険するぜ!イッセーさんがしていたようにな!」

 

「私はお父さまの軍に入るつもりだ」

 

皆、それぞれの想いを胸に秘めて未来へ突き進む。未来の俺達はそれぞれの道を進み

会えなくなる日が続くだろう。だけど、それが人生ってもんだ。そうでしょう?イッセーさん。

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