バカと真剣とドラゴン―――完結―――   作:ダーク・シリウス

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真約十一問

砂浜に正体を露わにしたハーデス。いや、イッセー・D・スカーレットは溜息を一つ吐く。

 

「最近、俺を狙う輩が現れたんでな。だから分身体も護衛として

近くに来させるようにしたんだ」

 

「・・・・・貴様、俺達に正体を隠していたとはな」

 

「見物だったぞ。死んだはずだった旅人が目の前にいたのにそれを信じていたお前らをな」

 

「英雄様達に騙していたのか貴様は・・・・・」

 

「いんや、英雄は俺の正体を知っているぞ。なにせ俺から口止めして教えたんだからな」

 

トントンと金色の軍杖を肩に叩きながら言うハーデスに川神鉄心が問うた。

 

「お主、正体を晒していいのかの?」

 

「相手が相手だ。分身体がいくら俺と遜色がない実力を持っているからって

本来の力を発揮できるわけじゃない。万に一つの可能性も考えて考慮しこうしたんだ」

 

「鉄心、貴様は知っていたのだな?死神の正体を」

 

「お主が気付かないとはしょうがないと思っておったぞい。気を隠すことはできる者は

他にもおるし、なにより旅人が姿を暗まして十年。

まさか学園に通い始めているなどお主も思いもしなかったじゃろう?」

 

「どうして我々に正体を隠していたのですか?」

 

「俺が開発した試験召喚システムの様子、調査をする為さ。

中央区の王が国から抜け出て学園に通うなんて世間が無視しない訳がない。

だから正体を隠して中から静かに見守っていた。学園長のカヲルも俺のこと知っている」

 

海に視線を向けるとザブザブと海水を掻き分けながら濡れ鼠状態の敵が戻ってきた。

 

「海水浴は終わったか?」

 

「野郎、私達をふっ飛ばして何がしたい―――」

 

「もう一度海に吹っ飛んでもらう」

 

敵の足元に巨大な魔方陣が出現して、再び敵は空高く跳んだ。

 

「凍れ」

 

杖の先を砂浜に突き付けた時、氷が瞬く間に発生して広大な海までもが凍った。

凍った海に落ちる敵の下に尖った鋭利な氷が盛り上がって空に向かって発射した。

 

「お主・・・・・殺す気かの?」

 

「あれで死ぬならそれはそれで。何せ俺の命を狙う輩だ。殺しても問題ない。

俺はまだ死ぬ気はないからな」

 

「が、どうやら切り抜けたみたいだがな」

 

ヒュームが金色の双眸を海に向けながら言った。敵は発射される氷の矢を見事に防いで

こっちに駆けて来ているのだ。その実力と身体能力は凄まじいの一言だろう。

ハーデスは全身に闘気を纏って氷の大地へと砂を巻き上げながら跳びだした。

瞳に戦意の炎が宿り、未知な集団と戦う好奇心と興奮で心が躍りハーデスは勇ましく

戦いに臨む。最初にハーデスと激突したのは

 

「江雪、今食事を与えてやろう」

 

髪を結いあげている侍のような服装の中年男性であった。

手には日本刀を携えてハーデスに迫る。

 

「剣士か?なら、俺も武器で戦おうか」

 

空間に穴を広げて意匠と装飾が施された宇宙にいると思わせる程の常闇に星の輝きを

する宝玉が柄から剣先まで埋め込まれてあり、刃の部分は白銀に輝かせ至るところに

不思議な文様が浮かんでいる金色の大剣を取り出して豪快に上段から振り下ろした。

敵も刀を斜め上から振り下ろし両者の刀剣は鍔迫り合いする。

その瞬間に他の敵がハーデスに飛び掛かる。

 

「せっかちな奴らだ。順番を待つということはできないのか?」

 

腰辺りに九本の狐の尾が生え出して飛び掛かる敵に向かって貫くかのように伸び、

突き出した。

 

「人間ではないな」

 

「分かりやすく言えば化け物だ」

 

「なら、何も問題はない」

 

日本刀を一瞬で振り続けハーデスを斬り掛かるが、全身に纏う闘気に阻まれて肉体に

切り傷すら付けることができない。

 

「・・・・・なに?」

 

「残念。俺は今、物理的な攻撃は一切効かない状態でいる。

だからお前の攻撃も一切効かないわけだ」

 

ハーデスを中心に大爆発が生じた。侍のような男性は爆発に巻き込まれ爆風により

吹っ飛び重傷を負った。対するハーデスは細胞を活性化させてダメージを回復させた

直後に巨大な生物が迫った。怒濤の拳のラッシュを紙一重で交わし続け軽く腹部に手を

添えた途端に巨大な生物の腹部は風穴を開けて吹っ飛んだ刹那、

左右から黒髪の少女二人が刀を横薙ぎに振るうも、全身に覆う闘気によって刃が肉体に

当たらない

 

「コンビネーションってのがなっちゃいないな」

 

氷の大地から数多の刀剣類が飛び出して二人の黒髪の少女をけん制し、遠ざける。

その時、遠くから光が見えた。ハーデスはその光に目を向けると、

弾丸の如く宙を駆けてくるも、軽く手を横薙ぎに払ってその光の弾丸を明後日の方向へ

弾き飛ばした。

 

「銃弾、にしちゃ鉛玉じゃないな。気の弾丸―――おっ?」

 

ハーデスの身体にワイヤーのような物が巻きつかれて身動きが取れなくなった。

 

「ようやく、隙を見せてくれたな」

 

緑のパーカー、頭に水中メガネのような物を装着した緑髪の少年が両手の指先から糸を出していた。

いや、厳密に言えば両手の指先に獣のような爪を装着していてそこから伸びている。

 

「糸か」

 

「そう言うこった。俺が引っ張ればお前の身体はみじん切りになるぜ」

 

「それは嫌な死に方だ。抜けさせてもらう」

 

「は?」

 

巻きつかれていた状態のはずだったハーデスは容易く糸の拘束から抜け出した。

そんな有り得ない光景に少年は開いた口が塞がらない。

 

「糸は物質。なら、無機物に潜れることができる俺だったらこんな芸道は朝飯前だって」

 

「ちょっ、んなのアリ―――ぐぅっ!?」

 

拳を突き出したハーデスに吹っ飛ばされた。

 

「修羅場を潜ってるだけあって、防御も大したもんだ」

 

殴った時の感触が人体ではなかった、何かしらの方法で拳の威力を最小限にした

敵の少年に感嘆を漏らす。と、赤い灼熱の炎がハーデスを包みこんだ。

 

「やった・・・・・のかな?」

 

炎の正体は巨大なタンクと銃型のノズルの火炎放射器みたいなものを背負い構えている

覆面に拘束具という出で立ちの巨漢の男の目に映る火の塊。男が放った炎は

燃え尽きるまで水でも鎮火できない煉獄の業火の炎。燃え続ける炎を囲む敵達は警戒して

臨戦態勢で様子を見守る。

 

「―――はははっ」

 

「なっ・・・・・!」

 

燃え盛る炎から笑い声。―――有り得ない、と誰もがそう思った。

 

「俺が知っている炎より全然熱くもなんともないな!」

 

炎が何かに吸いこまれていき、しばらくしてハーデスの姿が現れた。

 

「お前の武器の炎、ごちそうさま」

 

「ルビカンテの炎を・・・・・喰ったっていうの!?」

 

「そういうことだ。だから俺に炎なんて効かないぜ」

 

「あ、有り得ない・・・・・」

 

「さて、そろそろ俺も攻撃しようか」

 

笑みを浮かべたハーデスの全身に赤いオーラが噴出し包まれる。

次第にオーラは鎧に具現化していて龍を模した全身鎧を装着した。

 

「まさか、鎧型の帝具!?」

 

「帝具じゃない。神を滅ぼすことが可能の摩訶不思議な能力の一つ―――神滅具(ロンギヌス)だ」

 

背中にドラゴンの翼を生やし、宙に浮けば金髪の美青年も天使のような翼を一対の

円盤状から生やしている。

 

「―――面白い、そういう武器か」

 

「ええ、そうですよ。では、始めましょうか」

 

美青年との空中戦が開始した。円盤状から出ている翼が一度羽ばたけば翼の羽が散らばり、

鋭く一斉にハーデスへ飛来したに対して猪突猛進にその羽を自ら当たりながら美青年の

懐に潜り込んだ。

 

「ちゃちな攻撃だなぁ?」

 

「くっ・・・・・!?」

 

ハーデスと距離を置こうと後ろへバックしながら高速で下がるが、それ以上の速度で

背後に回り込んでかかと落としで美青年を氷の大地に蹴り落とした。

その後、光を残す程の速さで落下し、敵を翻弄しつつ拳や蹴りで攻撃していくハーデスだった。

 

「野郎!」

 

「お?」

 

鎧を装着していた敵が殴りかかって来た。敢えてその拳を受け止め威力を味わった。

 

「・・・・・その程度か」

 

お返しとばかりハーデスも敵の鳩尾に拳を突き刺した。

その一撃、たったの一撃で敵の膝を折らすに十分な威力だった。

 

「意気込みは良し、だがまだまだ経験が足りんな」

 

「ならば、我らが羅刹四鬼がその経験を見せつけようか!」

 

筋骨隆起で髭を生やした大男が凄まじい勢いでハーデスに迫る。

 

「皇拳寺百烈拳!」

 

怒濤に拳を激しく波のように繰り出してハーデスに殴りかかる。

ハーデスも敵の見様見真似で拳を激しく繰り出し、殴り合いが勃発した。

―――だが、

 

「うっ、ぬっ、ぐぅ・・・・・!」

 

一発、一発、また一発と敵の肉体にハーデスの拳が直撃し始め。

 

「己の強さを自信に持つことは良いが、あまり過信しすぎるとこうなる!」

 

極限まで鍛えられた敵の肉体に鈍い音と共に拳が突き刺さった。敵は大したダメージを

負ったわけでもないのに氷の大地にひれ伏した。

 

「なんだ・・・・・これは・・・・・」

 

「お前の気、生命エネルギーにダメージを与えた。例えどれだけ鍛えようとも気を

絶たれちゃ防ぎようもないだろう?それと、お前の拳は少し荒い。知り合いの武術の

総本山と言われている寺院に紹介してやるよ。そこで位置から修行し直せ」

 

「へぇー?そういう寺がこの世界にあるんだ?」

 

クリーム色の髪を鉄製の髪留めで結いでいる褐色肌の少女が興味深そうに尋ねてきた。

 

「そこって強い奴いる?」

 

「砂浜にいる白い袴を着ている爺さんが総代だ。かなり強いのは確かだな」

 

「なるほど、キミを殺したらそのお爺さんと戦ってみよっと」

 

手を突き出したかと思えば、爪がハーデスに向かって伸びた。

その爪を容易く片手で摑んでまじまじと見つめる。

 

「・・・・・変わった体技だな。爪が伸びるなんて初めて見たぞ」

 

「私達羅刹四鬼は自在に身体を操ることができるんだよ」

 

「それは面白い。それを俺に見せて欲しいもんだな」

 

そう言いながら褐色肌の少女に飛び出すと少女の背後から手刀の構えをした手が伸びて

来てハーデスを肉薄するのだが、逆にその両手を掴んで思いっきり引っ張れば褐色肌の少女に

誰かが背後からぶつかりながら迫って来た。

そんな状況でも少女は爪を伸ばしてハーデスを貫かんとするのだが、

赤い全身鎧を貫くことができず迫りくる二人の敵に豪快に蹴りを入れると、

まるでゴムのように両腕が後ろへ伸びて行った。

 

「・・・・・なんか、面白いな」

 

伸びる腕を見てそんな感想を漏らすと、顔に右の頬から鼻にまで伸びている傷跡、

後の髪を結い上げ道着を身に包んでいる女性が襲い掛かるのだが―――。

 

「痺れていろ」

 

その敵に対して真上から轟き振る雷の攻撃をし身体に麻痺状態させて無効化するのだった。

 

「さてさて、後は何人だ?」

 

腕を手放し遠距離からの攻撃を弾きつつ、辺りを見渡す。

まだ倒していない敵は数多く存在している。

 

「・・・・・もうちょい、楽しみたいが」

 

紫色のチャイナドレスを身に包み眼鏡を掛けた少女が大きな鋏で攻撃を仕掛けてくる。

その鋏に虚空から発現した鎖で開かないように巻き付け、衝撃波でふっ飛ばし

獣耳に尻尾の金髪の女性と殴り合いして気になって隙を突いて尻尾を触れると。

 

「ひゃっ!?」

 

「・・・・・ほほう?」

 

面白い反応をしたので、ハーデスは金髪の女性を組み敷いて思う存分に尻尾や獣耳を触れた。

そしてマタタビを嗅がせると酒で酔っ払ったように顔を赤くして女性は呆然とする。

 

「やばい可愛い。ペットにしたいかも」

 

「仲間に何をしてんのよアンタはぁっ!?」

 

桃色のツインテール、ピンクのドレスに似た服装という出で立ちの少女が駆けながら

怒声を発し光の弾丸を乱射して来た。ハーデスはその少女の特徴をズバリと言った。

 

「貧乳!」

 

「上等、その喧嘩買ってやるわ!死になさい!」

 

「抱きしめていいか?密着具合が良さそうだ」

 

「変態!」

 

「失礼な!」

 

バンッ!と氷の大地を叩けば、氷の表面に罅が生じて、

ツインテールの少女の周りを囲むように罅が繋がると氷が崩壊して海に少女は沈んだ。

 

「マイン!」

 

先ほど倒したと思っていた鎧の敵が海に落ちた少女を助けに向かった。

その様子を最後まで見ずに虚空に向かって拳を突き出すと拳に固い感触がして

氷の大地に少女を助けに行った鎧の人物と同じ鎧を纏った人物が姿を現した。

 

「透明化になれる鎧か。だが、俺には通用しないぞ。戦うなら真正面から来い」

 

「男らしい戦い方を要求してくれる。お前みたいな標的は初めてだ。

望み通り、真正面から戦ってやるぜ!」

 

ハーデスは次の敵と戦いを始めた。

 

 

 

 

 

 

「あやつ、あそこまで強いとはのぅ・・・・・」

 

「俺と戦っていた時は・・・・・本気も全力すらでもなかったというのか・・・!」

 

「私達人間より逸脱した存在・・・・・なるほど、確かにその通りですな」

 

「凄い・・・・・あれがハーデスの戦い・・・・・」

 

「次元が違う戦いを私達は見ているのだね・・・・・」

 

「凄まじい戦いだ・・・・・」

 

 

 

「クソが!俺はオネスト大臣の息子なんだぞっ!刃向かうんじゃねぇっ!」

 

「ここはお前がいた世界じゃないからお前はこの世界からしてみれば平民当然だ。

いい加減にその甘ったれな考えを捨てろ親の七光り」

 

「俺の帝具の恐ろしさを味わいたいようだなぁっ!?」

 

「―――これがその帝具とやらか?」

 

顔に大きな☓の傷跡がある褐色肌の男から奪ってみせた携帯型の盤状を見せびらかす。

自分の帝具をあっさりと気付かぬ間に奪われたことで苛立ちと情けなさにハーデスに

対する怒りが燃えあがる。

 

「それを返しやがれ!」

 

「お前みたいな奴には不必要だろう。返して欲しければ力づくで奪ってみせろ」

 

右拳の正拳突きをかわし、逆立ちした状態で足を勢い良く振るって頭を強く蹴った。

その威力は脳震盪を起こす程。敵の男は身体をガクガクと震わせている間に

トドメを刺されたのだった。

 

「私の歌を聞いてちょうだーい!」

 

「うん?」

 

場に合わぬ発言に声の主に振り向くと衝撃波が襲いかかった。

不快な特殊音波による物だと認識した時には行動が一時的不能になっていた。

 

「―――――」

 

次の瞬間。

 

「グウオオオオオオオァァァアアアアアアアアアアアアッ!」

 

お返しとばかりドラゴンの咆哮もとい衝撃波を放って、

氷の大地を粉砕しながらもマイクを持った少女に攻撃した。

 

「葬る!」

 

「これ以上仲間を傷付けさせない!」

 

黒髪の二人の少女が迫ってくる。ハーデスは翼を広げ、上空へ飛んだ。

鎧を解除し、代わりに大天使の姿へと成って手の平を上空へ掲げ巨大な光の十字架を作り上げた。

 

「こいつで終わりだ」

 

巨大な光の十字架は真っ直ぐ敵に向かって飛来し、直撃した直後に大爆発が発生した。

その光景を空から眺めるハーデスはポツリと呟いた。

 

「神は何の目的で俺に刺客を送り込んでくる・・・・・?」

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

「・・・・・・っ」

 

「目が覚めたか?」

 

黒い長髪に赤い目の少女の意識が取り戻したことにハーデスは声を駆けた。

敵の襲撃を受けて三十分は過ぎ、全身に鎖が巻きつけられ武器らしい武器は没収している。

後は事情聴取をするだけで意識が回復するまで待っていた。少女は今の現状を把握し尋ねた。

 

「・・・・・どうして殺さない」

 

「殺す理由はなくはないが、聞いてからでも遅くはないだろう?」

 

尤もなことを言われ少女は表情を一つも変えない。

 

「さて、色々と聞かせてもらおうかアカメとやら」

 

「いつ私の名を」

 

「気絶している間だ。俺の能力みたいなもんでお前の情報を調べさせてもらった。

ついでに武器の情報もな」

 

お前の武器、おっかな過ぎるだろうと赤い鞘に収まっている刀を見せびらかす。

 

「互いの自己紹介は良いだろう。俺は聞きたいことはただ一つ。

―――神がお前に俺のことを何て言ったのか、何の目的で俺に刺客を送ってくる理由を知りたい。

教えてくれればお前らを見逃すぞ」

 

「お前の命を狙うのにか?」

 

「気絶している間、お前の命を奪うことができたのにそれをしない。

逆に考えればお前らを殺すことに造作もないってことだがそれを理解しているんだな?」

 

ハーデスの言葉の意味にアカメは何も答えない。ただただ赤い目を真っ直ぐハーデスの金色の目に向けるだけだった。

 

「また俺を狙うならまた撃退するだけだ。いつでもどこでもな。ただし、人の目の届かないところ限定だ。お前がいた世界とこの世界の認識と概念は違う。殺人は犯罪だし、犯罪を犯した人間を探す方法は髪の毛や指の指紋、血液や唾液からでも調べることができるんだ。いくらお前らが強かろうといずれ捕まる可能性はある」

 

「・・・・・」

 

「この世界で有意義に暮らすのも良し、俺の命を狙うのも良し。

お前らの強さは大体把握できたわけだし狙われた時は喜んで相手になるよ。

俺の暇つぶしに兼ねてな」

 

そうそうとハーデスは付け加える。

 

「しばらくはお前らの行動を監視させてもらう。

だが、お前の仲間が人を殺すようなことがあれば、そいつを容赦なく殺すからよろしく」

 

それだけ言って、言いたいことを全て終えたのか背を向けアカメから遠ざかった。

姿が見えなくなったところで巻きついていた鎖が音もなく消失した。

 

「・・・・・完全な敗北」

 

死は免れた。だが、アカメ自身は初めての敗北感に何とも言えない気持ちを噛みしめる。

 

 

 

 

 

「あ、ハーデス」

 

「なんだ、まだいたのか」

 

「だって、心配だったから・・・・・」

 

「そうか。ありがとうな」

 

「それで、何か聞けたの?」

 

「あっ、聞くの忘れたな。まぁいいや。どうせまた直ぐに会いそうだし」

 

松永燕と紺野木綿季と合流を果たすハーデス。三人も家に帰ろうと足を運ぶ。

 

「あの人達。強かった?」

 

「お前達よりは強いと断言はできる」

 

「じゃあ、戦って楽しかった?」

 

「ああ、久々に楽しんだ。強さは個々それぞれだが川神百代よりは楽しめた方だ。

未知な武器と様々な戦い方をする奴らだ」

 

笑みを浮かべるハーデス。本当に楽しかったんだと二人は見て察した。

 

「でも、あんな人達がどうしてあなたを狙うの?」

 

「黒幕が俺の命を狙っているようだ。その理由は俺も分からないが・・・・・」

 

「また、あの人達はあなたの命を狙いに来ると思うと・・・・・」

 

「お前は気にするな。これは俺の問題だからな」

 

松永燕の言葉を遮り、ポンと艶のある黒髪に手を置いて撫で始めた。

 

「それに俺の傍にいてくれればそれだけで十分だ。俺は守るべき大切な家族がいれば

負けることはないんだ。燕、ユウキ。お前らは俺の家族だ。絶対に守って見せる」

 

「イッセーさん・・・・・」

 

ジーンと松永燕は感動し、瞳は濡れてハーデスの顔を覗きこむように見つめる。

 

「そっか・・・・・ねぇ、ハーデス。ボクを強くして貰えないかな?」

 

紺野木綿季の発言に怪訝な面持で問うた。

 

「強くなくてもいいんじゃないか?」

 

「ううん、必要だよ。今回は誰も死ななかったけど次はそうじゃない展開になるかもしれない。

だから、ボクも巻き込まれる可能性だって無いわけじゃない。

もしもの場合にボクもその状況に応じる為に備えた方が良いと思うんだ。

―――特に格上の相手と戦うプレッシャーと勇気に」

 

真摯に言う紺野木綿季。その表情は言葉と共に真剣で瞳に固い決意が籠っているのを

見受けれる。

 

「・・・・・ゲームのようにはいかないぞ。強さとは心身ともに辛い状況下の中で身に付く。

お前が懇願している相手はお前が思っているような男、人間じゃない。それでもか?」

 

「お願いハーデス。何もできないなんて役立たずに等しい。そんな何もできない自分を

ちょっとでもできるようにしたいんだ。誰かのためにボクも頑張りたい」

 

「ユウキ・・・・・」

 

「どんな辛い特訓だって頑張る。だからお願い」

 

彼女の真剣な願いをハーデスは少しの間だけ沈黙を貫き・・・・・短く息を吐いた。

 

「止めたくなったら何時でも言え。その時、お前の覚悟はそんなものだということだからな」

 

「―――うん、分かった」

 

 

 

 

 

 

 

「皆、大丈夫か?」

 

ハーデスがいなくなって更に時間が経った頃にアカメの仲間達が意識を取り戻した。

 

「殺されずに済んだことに信じられないわね」

 

「一部の帝具は奪われた様子だけど、アカメこれからどうする気だ?全員で挑んで

この様じゃ標的をどうこうすることはできないぞ」

 

「まさか、無傷で俺達に勝つなんてどんだけ強いんだよ。信じられねェ・・・・・」

 

嘆息する仲間を見てアカメは淡々と言う。

 

「・・・・・しばらく私達は監視される」

 

「もう監視しているがな?」

 

今の今まで気付きもしなかったハーデスの存在に誰もが目を丸くした。

 

「お、お前!?もういなくなっているんじゃないのかよ!」

 

「ああ、俺は本物じゃない。お前らを監視する為の影武者だと思え。

これからしばらくお前達の家でお世話になるからよろしくな」

 

「あんた、何でもアリなのね・・・・・」

 

マインが疲れた表情で言う。ハーデスは軽く笑って全員の顔を見渡して言う。

 

「逆にお前達も利益だと思うが?この世界の情報をどれだけ知っているか知らないが

知りたいなら俺に聞け。何でも教えてやる」

 

「私達は敵のはずなんだけどどうしてそこまで親切にするのだ?」

 

「この俺でもお前らをこの場で殺すことができるけど・・・・・試してやろうか?」

 

「・・・・イエ、ケッコウデス」

 

完全敗北をした上に命を取られなかった。殺されても当然であるのに相手は

それをしなかったのは色々と理由があるからだろう。

その中には殺す価値もないか何時でも殺すことができるからと含まれているはずだ。

 

「因みに、証明書みたいな物はあるか?」

 

「それ、必要なのか?」

 

「当たり前だバカ。証明書が必要な時もあるんだぞ。衣食住が困らないからって

細かなことにも目を向けろ」

 

「私達は違う世界から来て甦った敵味方だぞ」

 

「しゃーない。俺の国でお前らの証明書を作成してやるよ」

 

ハーデスの「俺の国」という単語に全員は怪訝な顔になった。

 

「俺の国とは?」

 

「そのまんまの意味だ。俺は一国の王の一人だ」

 

懐から紙の束をアカメの前に放り投げた。

 

「これを全員家で前の世界の出世を書かず自分の名前と歳、特技を書いておけ。

後はこっちで制作してお前らの身分証明書を作成してやる」

 

「・・・・・どうして命を狙う私達にそこまでしてくれる」

 

アカメの問いにハーデスは笑みを浮かべた。

 

「お前らを殺すのは容易いが、俺を楽しませてくれた礼だ。お前らはこの世界にとって

俺みたいな存在だし、放っておけるかよ」

 

「俺達がお前みたいな存在だとはどういうことだ」

 

「この世界とは適合、適応しないってことさ。俺は人じゃないドラゴン、

言い方を変えれば化け物だ。お前らは違う世界じゃどんな存在だったか知らないが、

人を殺すことに躊躇もしない、リアルに暗殺が長けている。

この世界で人殺し、悪さをすれば悪人。そんなお前らが俺を殺す為に住み慣れた

世界とは異なる世界で問題なく人生を送れると思うか?」

 

「・・・・・」

 

「別に俺に協力、味方になれとは言わない。お前らが問題を起こさない為に監視をするだけだ」

 

「ふざけんな。どうして俺が大人しくしていないといけないんだ?」

 

顔に☓の傷跡のある男が否定的な態度をした途端、

 

「なら、お前は死亡願望だと認識して良いんだな?」

 

男の周囲に意匠が施された鋭い氷の槍が数多に発現して零距離で突き付けられた。

 

「・・・・・っ!」

 

一瞬で主導権を握られ、男は言葉を呑んだ。ちょっとでも首を動かせば氷の槍の切っ先に

触れて皮膚を破り肉を斬るほどの距離で身動きが取れず眼だけ無表情な

ハーデスを捉えることしかできない。

 

「いいか。もしもこの世界の人間に対して危害を一回でも行った奴は問答無用に殺す。

死にたくなければ大人しくしていろ。これは決定事項だ、異論は認めないし反論も許さない」

 

ハーデスの警告に誰もが沈黙し暗黙の了承をした瞬間だった。

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