バカと真剣とドラゴン―――完結―――   作:ダーク・シリウス

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デートその二問

彼氏彼女とはやはりデートをするべきじゃろうな・・・・・。

じゃがワシとハーデスは男。蒼天では同性愛の結婚はできるが、

日本の法律では許されておらん。

 

「・・・・・どうすればよいかの」

 

今日は週末の日であると同時にハーデスとデートをする日でもある。

ここはやはり男らしい服を着てデートをしている風に見せ掛けて―――。

 

 

ガチャ(ワシの部屋に姉上が入って来た音)

 

 

ドサッ(何故か姉上の衣服がワシの目の前に置かれる音)

 

 

 

「・・・・・姉上、これはどういうことなのじゃ?」

 

「アンタ、ハーデスの『彼女』なんだから女の服を着ないといけないのに

どういうこともなにもないでしょう」

 

「ワシは男じゃぞ!?」

 

「学校外、しかも中学生の男の子に告白された男はどこの誰かしら?ちゃんと

自分は男だと説明したの?」

 

ギクッ!

 

「・・・・・してないのね。ま、アタシには関係のないからアンタのことは

どうでもいいけどしっかり女らしく行動しなさい」

 

「・・・・・ここまでしろと指示されていないのじゃが」

 

「なら、アタシと入れ代る?アタシは別に構わないけどそれだと演技を途中で

放り投げたって意味に捉えられるわよ?」

 

「―――――っ」

 

演技を放り投げる。演技のホープとしてそれは断じてしてはいけないこと。

姉上の言葉は理不尽な事だらけで苦労や酷い目に遭っておるが

ワシが唯一自慢できる演技がそんな程度であることだけは絶対に―――。

 

「分かったのじゃ・・・・・」

 

思われたくないのじゃ!

 

 

―――川神駅―――

 

「・・・・・」

 

周りから視線を感じる。ワシが女装をしていることを変に思っておるからか?

姉上から借りた衣服はワシが着ても姉上と似ておるからもぉ・・・・・。

 

「ヘイ☆そこの可愛いお嬢―――」

 

「はい、ナンパ一人確保ーっと、竜兵相手よろしくな」

 

「おう、おらこっちで俺と二人きりで話でもしようぜ。

―――とくにお前のケツの穴に用がある」

 

「い、いやぁぁあああああっ!犯されるぅううううううううっ!」

 

・・・・・なんじゃ、今の瞬間は。

 

「気にするな、気にしたらそこで負けだぞ秀吉」

 

「ハ、ハーデス・・・・・」

 

「流石に二度あることは三度あると思って早く来て見ればこれだ」

 

まったくと溜息を吐いたハーデスは黒髪に黒い瞳、パーカー付きの赤い上着に

黒い長ズボンという出で立ちでワシの視界に映った。

 

「お主、また魔法を使っておるのか?」

 

「いや、魔法の力は使っていない。素の状態だ。にしても・・・・・」

 

ワシの身体を品定めするように見詰めてくる。

 

「なんじゃ、どこかおかしいかの?」

 

「いや、おかしい以前の問題にてっきり何時も通りの男の服を着てくるもんだと

思っていたんだけど・・・・・」

 

「・・・・・ワシはお主の彼女という設定で演技をしておるのじゃ。

ならば服装も女の服でなければならぬ」

 

「ふーん、ま・・・・・これから遠出のデートをしようと思っていたから別にいいか」

 

遠出?どこか違う地域に行くつもりじゃったのか。

 

「途中までこいつらと同行することになるがいいよな?」

 

「む?誰じゃ?」

 

「ん、あいつら」

 

親指で差すハーデスの指を追って視線を向けると・・・・・異様な集団が固まって佇んでおった。

 

「・・・・・ハーデス、あの者達は誰じゃ?」

 

「最近、蒼天の人間となった殺し屋集団」

 

「こ、殺し屋・・・・・!?」

 

「今俺の分身が監視中でな。何時までも閉じ込めておくのもなんだしリフレッシュを

兼ねて旅行しに行くんだ」

 

・・・・・そのような者達を手懐けようとしておるお主は怖ろしい奴じゃと思う。

 

「さて、何時までも待たせたらあいつら何しでかすか分からないから行くとしよう。

はい、秀吉の乗車券」

 

既に用意しておった新幹線に乗る為に必要な乗車券を手渡されて、唖然としておると

手を掴まれ殺し屋集団のところまで引っ張られた。

 

 

~~~しばらくして~~~

 

 

「うおぉおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」

 

「速い、速いわねこの乗り物は!」

 

「景色が次々と変わっていくなんてどれだけの速度で動いているんだ」

 

殺し屋集団とは思えないほど子供のように興奮してベッタリと窓にへばり付いている

光景を何とも言えない。

しかも、ワシらがいる新幹線の二階の一車両は全てハーデスが予約して貸切状態にしていた。

じゃからどれだけ騒いでも注意してくる者はおらん。

 

「ハーデス、あの者達とどこで知り合ったのじゃ?」

 

「んー、それは言えない。悪いな」

 

「いや、気にせんでいい」

 

二人きりで座るワシら。殺し屋集団と同じ空間におると思うと気が気でしょうがないが、

ハーデスと共にいると安心できるのは絶対安全な空間にいるからじゃろうな。

 

「ところで、遠出とはどこまで行くのじゃ?」

 

「ああ、蒼天だ」

 

「蒼天じゃと?ならば、この新幹線では行けられぬではないか」

 

「ふふふっ、俺がなにも考え無しで新幹線に乗ると思うか?」

 

む・・・・・なんじゃか意味深なことを申すな。またとんでもないことをするつもりかの?

 

「ワシを驚かそうと思ってもそうはいかんのじゃ」

 

「別に驚かそうとは思っていないが、ま・・・・・もう少しすれば分かるさ」

 

そう言うハーデスの言葉からしばらく経った頃に新幹線の窓が黒い景色ばかりしか

映らなくなり、殺し屋集団達はつまらなさそうにはしゃぐのを止めて窓ガラスを

見詰めたり仲間同士で雑談、お菓子や食事に食べることに没頭しだした。

 

「そろそろだな」

 

「む?」

 

「窓ガラスを見ていろ」

 

そう言われ窓ガラスに目を向けると・・・・・黒から一変して青に変わった。

 

「蒼天は何も飛行機だけで観光客が来るわけじゃない。

―――こうして蒼天と繋ぐ海の中の新幹線に乗って進むんだ」

 

「な、なんじゃとっ!?」

 

では、今ワシらを乗せている新幹線は海の中に進んでいると言うのか!殺し屋集団達も景色が変わったことで窓ガラスの向こうを見詰め出す。速度は緩やかで海の中にいる生物達の姿が肉眼で確認できる。まるで水族館の中にいると思わせる。

 

 

その後―――新幹線は時間を掛けて蒼天の駅のホームに辿り着いた。それからハーデスは

もう一人の自分を魔法で作りだして殺し屋集団を引き連れてどこかへと行ってしまった。

 

「大丈夫かの?」

 

「問題ない。問題を起こしたら殺すと言ってあるからな」

 

「自分とおっかないことを言うのじゃな、本気でそうするのか?」

 

「本気だ。そのぐらいあいつらの手綱は握れないんだ。

色々と事情聴取をしたら問題児がいることも分かった。

だから蒼天に連れて来て反論ができないようにしようとしているんだ。

ここは俺の国だし、問題を起こせば直ぐに牢屋行きだ」

 

色々と考えた末に出た答え・・・・・そしてその行動力。

 

「さて、あいつらのことは置いといてデートをしようか」

 

「分かった。たくさん楽しもうぞ」

 

女装をしてもワシは男じゃ。男が男を好きになるわけがない。

ここは蒼天、同性愛が許されている―――。

 

「はっ!?」

 

ワシはもしかして・・・・・ハーデスの術中にハマっておるのか・・・・・?

 

―――☆☆☆―――

 

ハーデスと手を繋いで歩いているワシは巨大なゲームセンターへ足を運んだ。

ゲームだけではなく身体を動かすスポーツセンターやのんびりとゆとりが得られる

小部屋、バー、レストランが詰まった施設。前回蒼天に来た時はこのような施設に

内されていなかったが、中は騒然としていて賑やかじゃった。

雄二や明久が喜びそうな遊び場じゃろう。

 

「ハーデス、何をするのじゃ?」

 

「体感ゲームだな」

 

「と言うと?」

 

「自分自身がゲームのキャラクターと成ってクリアし続けるんだ」

 

真っ直ぐ目的のゲームに足を運ぶハーデスの説明を聞き理解したところで長蛇の列が

できている場所に辿り着いた。その列に並び、しばし待つとようやくワシらの順番が

回った。スタッフの人からゲームの内容を短く聞かされた後にスタッフが開け放った

扉の向こうへ足を運んだ―――。

 

「何もない?」

 

思わず漏らした。扉を潜った先には天井が高く広い四方形の空間。

これからどうなるのかと不思議で辺りを見渡すとワシらの後ろに並んでいた者達までもが

楽しみだとばかり笑みを浮かべ入ってくる。もしやチームを組んでゲームをする者かと

思えば空間が一変した。何もなかったはずの空間は時代劇によく見る町の風景と変わっていく。

 

「こ、これは・・・・・!?」

 

「ゲームを開始する度に参加者達を楽しませるために様々な町の風景や自然を

コンピューターが自動で決めて仮想現実を構築する。今回は江戸時代のようだ」

 

隣で語るハーデスの全身が光に包まれていて、光が消失すると・・・・・新撰組が

着ていた袴と羽織、刀を腰に差した出で立ちの姿でおった。

 

「秀吉も似合っているじゃないか」

 

そう言われ、ワシは視線を下に落としたところ―――一言で言えばワシも新撰組の格好をしていた。

 

「さて、今回の勝利条件はなんだ?」

 

空を見上げるハーデス。ワシも釣られて空を見るとアナウンスが聞こえてきた。

 

『皆さんこんにちは!早速ルールを説明します。今回のゲームの内容は侍となった皆様に

悪徳代官を斬ってもらうことが勝利条件です。ただし、皆様の目の前に展開している

体力のゲージが無くなってしまったらその人は即時ゲームオーバーです。悪徳代官は

目の前に聳え立つお城の中におります。それでは頑張ってゲームスタートです!』

 

アナウンスの説明を聞き、目の前に緑色のゲージが何時の間にかあった。

これはゲームで言う体力のライフかの。

 

「行くぞ、秀吉」

 

「うむ。武器なぞ振るったことがないから足を引っ張ってしまうかもしれんが」

 

「大丈夫、お前は俺が守ってやるよ」

 

・・・・・それはそれで男としての見せ場がなくなるではなかろうか。

ワシが男らしい姿を見せねばならぬ。ハーデスと共に駆けだして城の方へ。

道は何も施されていない地面で走る度に砂埃が少々舞う。

右へ左へと進みまるで迷路のように宛てもなく進むこと数分の時間が費やした時、

目の前に大勢の武士が現れた。ワシらのように体力ゲージがあった。

 

「敵だ、用心しろよ」

 

「了解した」

 

短い会話しながら触れたことがない刀の柄を握って抜刀。

これはゲーム、相手は人間ではない。じゃから、ワシの攻撃を受けても痛みはない!

 

「おおおおおおおおおおっ!」

 

慣れない刀を上段から振るえば敵は防御の構えと成り振るった刀を受け止めた。

その時左右から二人の敵が肉薄してくる。しまっ―――!

 

「慣れないことをすると碌な目に遭わないな」

 

目の前の敵と左右から来る敵の首が宙を舞い、体力ゲージが一気になくなった。

敵の身体は倒れ消失した。

 

「ただ闇雲に突っ込むんじゃない。相手の動きを見て自分の直感を信じ、刀を振るえ」

 

四方八方から振られる刀に対して、曲芸のような動きをしつつかわし、首を狙って攻撃する。

その動きをワシは何時までも見詰めて、見惚れていた。

 

「秀吉、後ろから敵が攻撃してくるぞ」

 

「ぬっ!?」

 

咄嗟に反射的で刀を真上に上げたら衝撃が腕に伝わる。

思わず顔を顰めていると目の前から銀の一筋が飛来して来た。

それが何なのかあっという間に見えなくなって理解できなかったのじゃが、

 

「ジャイアントスイング~!」

 

刀がないハーデスが敵の両足を掴んで駒のように豪快に振り回し、敵を薙ぎ倒しながら

けん制していく様子を窺わせる。その時、ワシの頭にコツンと硬い感触が。振り返ると

一本の日本刀がワシの背後に落ちていた。

―――銀の一筋の正体はハーデスが刀を投げ放ったからだと見た瞬間気付き、

物凄いコントロールじゃと感嘆するが一歩間違えれば味方に当たっていたかもしれない

という事実に戦慄した。

 

「よし、あらかた片付いたな」

 

「ワシは何もしておらんの・・・・・」

 

「生身で戦い慣れていないんだからしょうがない。

少しずつ慣れればダメージを与えるぐらいにはなる」

 

敵を殆ど一人で片付け自分の刀を手にしたハーデスは鞘に収めつつ言う。

 

「戦いに不向きじゃなワシは」

 

「しょうがないと言っただろう。お前は俺と違って平和に暮した方が似合っている」

 

「お主は過酷な暮らしが合っていると申すのか・・・・・?」

 

「俺だって平和に暮らせるなら暮らしたいさ。だけど、俺に付き纏う力がそれを難しくして来る」

 

頭を撫でてくるハーデスの顔は苦笑いだった。

 

「だが、俺の背中を見詰めてくれる者や俺と一緒に戦ってくれる者に

俺の傍で生きてくれる者がいれば俺は負ける気はない」

 

「・・・・・」

 

「俺はそう言う奴だ。家族がいないと何の為に頑張ればいいのか分からない」

 

背を向けるハーデスの羽織りに大きく書かれた誠の文字。

 

「俺の本名は一誠」

 

「一誠・・・・・?」

 

「数字の一に誠心誠意の誠で一誠。この文字と同じだ」

 

ハーデスの本名の名前・・・・・それが一誠・・・・・。

しかし、どうして突然そう言いだしたんじゃろうか。

 

「俺の両親が自分の名前を俺にくれた。唯一、両親の思い出が俺の名前だけ」

 

「・・・・・思い出は無いのかの?」

 

「この世界にある訳がない。両親が死んだ後もこの名前だけが両親と繋がっている証。もしもこの名前を奪われたら俺は俺で無くなる」

 

スタスタと歩き始めた。そんなハーデスを追い、ワシも歩き始める。

それからゲーム攻略までハーデスはこの話をせず、ワシをフォローしながらゲームを楽しんだ。

 

「(両親がいない・・・・)」

 

目の前で両親を失った気持ちは一体どれほどのものなのか、ワシは理解できない。

両親が強盗に殺されたと言う話しは仮に本当じゃとして、

ハーデスは泣いた?それとも落ち込んだ?ハーデス・・・・・お主は今心の底から

幸せなのかの・・・・・?

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