バカと真剣とドラゴン―――完結―――   作:ダーク・シリウス

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デートその三問

仮想現実で悪徳代官をハーデスが見事に斬り伏せた後にゲームセンターから出ずレストランに

足を運んで食事を摂った。ワシはボリュームたっぷりのハンバーグ&ステーキセット、

ハーデスはペペロンチーノにサラダ、コンスープ、ステーキ、ピザじゃ。

 

「雄二並みにお主も食うの」

 

「人型とは言えドラゴンだからな。食欲も旺盛なんだ」

 

優雅に食べながら答えてくれる。ドラゴンは食欲が旺盛なのか。

 

「そう言えば、殺し屋集団達はどうしておる?」

 

「あいつら?・・・・・アマテラスの頂上にいるぞ。宇宙が青くて丸いことに興奮している」

 

瞑目したハーデスが状況を教えてくれた。あの宇宙まで伸びている建物の中におるのか。

さぞかしそれは興奮するじゃろうの。

 

「お待たせしました。カップル専用のメニューでございます」

 

ワシらの横に現れた店員がハート形のストローを入れた状態の特大パフェに赤いドリンクが

入れられた容器を置きだした。頼んだ覚えがないのじゃが・・・・・。

 

「当店では若いカップルを対象に無料で提供している物です。どうかお幸せに、LOVE♡」

 

それだけ言い残して店員はいなくなった。・・・・・完全にワシを女扱いをしておったな。

この恰好をしている時点でワシが男じゃとは気付かないじゃろうが・・・・・。

 

「秀吉」

 

「んむ?」

 

「はい、あーん」

 

突き出されるアイスを掬ったスプーン。ワシはそのスプーンに疑問を抱かず当然のように食べた。

舌に伝わる冷たさとほどよい甘み、まだ残暑が残っている時期に良く美味しい。

 

「今度は秀吉からな」

 

「うむ、分かった」

 

お返しとばかりワシもアイスを掬ってハーデスの口元に突き付けるとアイスを食べてくれた。

―――こう言う事を付き合っている者達はしておるんじゃな。

 

「それにしても秀吉は肉食系女子だな」

 

ワシの前に置かれている肉系の料理を指摘して来た。

が、聞き捨てにならないことを言うから訂正させてもらうのじゃ。

 

「肉食系女子ではなく肉食系男子じゃハーデス」

 

「女の格好をして誰が男だと気付く」

 

「それを言われると言い返せん・・・・・」

 

「ははっ、可愛いな。知らない奴だったら目の前に優子がいるようだぞ」

 

それについては否定せん。ワシと姉上は似ておる。両親とてそうじゃ。

ま・・・・・見間違えられてもしょうがない。今では慣れたし、

逆にそれを利用して入れ替わることもたまにある。主に姉上個人が困った時に。

 

「さて、次は西区の牧場にでも行くか。騎乗しにな」

 

「馬の背に乗れるのかの?」

 

「西区を管理している王に馬を世話している部下がいる。そいつに頼めば乗せてくれる。

前回は祭の時だったから乗せることはできなかったが、今は大丈夫だろう」

 

そう言う事なら騎乗体験をしたいの。互いにあーんを繰り返しながら食べさせ合い、

ハーデスが会計を済ませている間外で待機する。

 

「・・・・・どこの国でも空は青いの」

 

視界に聳え立つ巨大な塔が見えるのじゃが、既に有名所となっているアマテラス。

この国をハーデスは一人で創り、永い年月を懸けてここまで発展させた。

元の世界に戻りたくとも戻れない状況の中でハーデスは堕落な生活をせず、

前向きに進んで生きていた証。

 

「イッセー・D・スカーレット・・・・・あの者は凄いのぉ・・・・・」

 

「そうだねー。私も尊敬しちゃうよ。―――ふぅっ」

 

「ひゃっ!?」

 

耳に息を吹かれた。くすぐったい上に突然ワシを驚かせる者に非難する

目で振り返ると・・・・・。

 

「やっぱり、あの時の男の娘君だね。久し振りー」

 

「お、お主は・・・・・!」

 

「渡良瀬準。覚えていたかな?」

 

麦わら帽子を被り、白いTシャツの上にチャック付きの上着を羽織った状態で身に付け、

ズボンを穿いている少女がいた。いや、ワシはこの者を知っておる。

この者は―――渡良瀬準―――男じゃ。

 

「どうしてここにおるのじゃ・・・・・」

 

「おかしな質問をするんだね。私はこの国に住んでいる住人だよ?」

 

「いや、そういうことではなく。どうしてお主がワシの目の前におるのかということじゃ」

 

「あーそういうこと。読者モデルの仕事帰りなの。休日は仕事で今回早く終わったんだよ」

 

ワシと歳が変わらぬはずなのに仕事とは。しかし、この者と再び相見えると思いもしなかった。

この者とワシは真逆な考えで性格も正反対かもしれんからな。

 

「それでキミは?またここに遊びに?」

 

「ま・・・・・遊びに来たのは確かじゃな」

 

「じゃ、あの愉快な人達もいるんだね?」

 

愉快な人達・・・・・明久達のことか。

 

「いや、今日は友達の一人と一緒に来たんじゃ」

 

「ふーん?その友達って男の子?」

 

「そうじゃがどうかしたか?」

 

「だって、女の子の格好をしているからついに自分の本当の気持ちを曝け出したのかなって思ってさ」

 

―――――これは罰ゲームの副産物である!

 

「あ、もしかしてデートだったりする?」

 

「・・・・・罰ゲームでデートをすることになっただけじゃ」

 

「へぇ・・・・・罰ゲームねぇ?で、相手はどんな人?」

 

「・・・・・教えん」

 

ハーデス=中央区の王となど教えるわけにもいかない。それよりハーデスはまだかの。

店の方へと視線を配るとワシの想いが通じたのか、ハーデスが出てきた。

 

「待たせた・・・・・」

 

「あ、この人なんだね・・・・・って、あれ?」

 

渡良瀬が興味深そうにハーデスを見詰める。じゃが、思っていた人物と違うのか小首を傾げた。

 

「私が知らない人だね。てっきり愉快なお友達の誰かと思ったけど」

 

「愉快な・・・・・お友達?」

 

「あ、自己紹介をしていなかったね。私は渡良瀬準って言うの。よろしくね」

 

「死神・ハーデスだ」

 

二人は握手をし合う。

 

「死神・ハーデス?・・・・・んーと、もしかして死神の格好をした人だったりする?」

 

「ああ、そうだ」

 

「わおっ、ビフォーアフターだね!ギャップが凄過ぎるよ。―――でも」

 

ズイと渡良瀬はハーデスの顔を覗きこんだ。

 

「どこかで会ったような気がするんだけど・・・・・」

 

「秀吉、俺、逆ナンされてるぞ」

 

「お主、どうして嬉しそうに顔を輝かす?」

 

「されたことがないから嬉しいに決まっているだろう?」

 

「ははは、私はこう見ても男の娘だよ?ナンパじゃないから彼氏を取らないから安心してね」

 

「待て、ワシが嫉妬しておると勘違いされては困る」

 

呆れと困惑で息を一つ吐く。渡良瀬が何を考えて言っておるのか理解ができんのじゃ。

ワシから見ても渡良瀬は紛れもない少女と認識してしまう。それは渡良瀬が男である

事実を知らなかったらの場合じゃが―――。

 

「ふーん、じゃあ私もハーデス君の彼女になろうかな。今日一日だけ♪」

 

「はっ?」

 

この者は・・・・・何を言い出すのじゃ?相手は・・・・・男なんじゃぞ・・・・・?

 

「ね、私も一緒に付いて行っていいでしょ?ダメって言ってもついて行くからね」

 

「俺の意思は?」

 

「無いわ」

 

本気でこの者も来る気なのかの!?

 

「ふふっ、木下ちゃんの乙女な姿を思う存分に見たいわ♪」

 

意味深な笑みを浮かべハーデスの腕に抱きつく渡良瀬を見て―――何故かイラッときた。

 

―――☆☆☆―――

 

西区の牧場に浮く車で移動し、久し振りにやってきた。専用の駐車場に停車した車から

降りたハーデスの後をついて行けば巨大な大樹の家々を素通りにし進んで行く。

 

「ハーデス、どこに行くのじゃ?」

 

「西区の王とその幹部達がいる施設だ」

 

「え?西区の王様のところに行くの?」

 

信じられないと渡良瀬が目を丸くした。そう言えばハーデスの正体を

気付いていないのかの・・・・・?教えた方が良いか、それともこのまま黙っていたほうが良いのか少しだけ悩んでおると、木造の大きな建物が見えてきた。

あれが西区の王と幹部達が務めている・・・・・。

 

 

―――どこにいるんですか桃花様ぁああああああああああああああああああっ!

 

 

「「「・・・・・」」」

 

建物が激しく揺れる幻覚が見えてしまった。それに今の声は・・・・・・。

ワシはさり気なくハーデスに目を向けると額に手を当てて俯いていた。

まるで何しているんだ・・・・と呆れ果てている様子じゃった。

 

「ハーデス・・・・・なんと声を掛けて良いのやら」

 

「取り敢えず、会いに行くか」

 

「え?ハーデス君。本当に行くの?関係者以外立ち入りは禁止だよ?」

 

渡良瀬は信じられないと歩き始めるハーデスを見る。

 

「大丈夫。俺、関係者だし」

 

「そうじゃな」

 

「え?え?」

 

何時までもここにいても何も起こらない。ハーデスの後を追い建物の中に入る。

外見と変わらず内部も木造で木の香りが鼻の中に通る。

 

「木の香りがするの」

 

「私、初めて入ったけど本当、良い香りがするわ」

 

渡良瀬も同意と口にした。ハーデスはこの建物の構図を知っているのかどんどん先に

進んで奥に行く。どこに向かうのか共に歩くことしばらくして、どこかに入って行った。

ハーデスに続いて入ると厨房のような部屋だと直ぐに分かった。

包丁や鍋、フライパンといった調理道具が綺麗に並べられていて、

 

 

ガラッ(棚を開けたハーデス)

 

ガシッ(その中にいた見覚えのある少女を掴む音)

 

シュバッ(全身に縄で縛った音)

 

 

「よし、行くか」

 

「ちょっと待って下さい!?あなたは誰ですか!?」

 

西区の王・・・・・桃花殿じゃったな。驚愕の色を隠さずハーデスを見詰める。

対してハーデスは西区の王を背負い厨房を後にした。一拍遅れて渡良瀬とハーデスを追う。

ハーデスの背を確認した時は艶のある長髪をサイドテールに結い上げ、緑を基調とした

セーラーみたいな服を身に包んだ―――片手に武器を持って怒気を孕んだ双眸の少女がいた。

 

「貴様、何者だ・・・・・」

 

「あー、やっぱりお前も気付かないか」

 

「なんだと?桃花様を拘束しているお前など私が知るわけがないだろう」

 

警戒心を剥き出しにして武器を構える少女に対して頬をポリポリと掻くハーデス。

徐に左手を頭に置いたかと思えば梳かすように手を動かしつつ黒い髪が赤より鮮やかな

真紅と成り、短かった髪が腰まで伸びた。

 

「なっ――――」

 

「えっ――――」

 

少女と渡良瀬が思わず漏らした。当然じゃろう、何せ―――中央区の王が元の姿に戻したからの。

本来、この場にいないはずの王が王を捕まえて目の前に正体を明かしたのじゃ。

 

「ご、ご主人様!?」

 

「愛紗、お前の怒声が外まで聞こえたぞ。女の子なんだからもう少し淑女らしくしないと、な?」

 

「あ・・・・・う・・・・・」

 

―――愛紗。その名こそが彼女の名前。ハーデスは愛紗の頭に手を置くと途端に耳まで顔に朱を散らした。

そして、彼女は跪き頭を垂らした。

 

「も、申し訳ございません・・・・・主に対して得物を突きつけるなど・・・・・」

 

「見知らぬ輩が入ってきたら当然の行動だ。俺は気にしていないぞ。

それよりもお前の探し人を見つけたやったぞ」

 

「あ、あのーご主人様・・・・・?縄を解いて欲しいかなーなんて思っちゃったりしていますけど」

 

「桃花、仕事をサボるなんて俺は悲しいぞ?大切な家族が一人失うなんてな」

 

「え、ご主人様?それは一体どういう意味なんでしょうか?

って、愛紗ちゃん。そんな怖い顔をしたらご主人様が怖がっちゃうよ?」

 

「愛紗、翠はどこにいるかわかるか?」

 

「翠ならば次の競馬に向けて馬の世話をしています」

 

「なら、牧場の方だな」

 

「あの、二人とも。私の話をスルーしていない?ねぇ、お願いだから聞いてくれる?」

 

「それじゃ、桃花をよろしくな」

 

「ええ、二度と主の手を煩わせないように厳重にして見張りも付けます」

 

「ほどほどにな。ああ、愛紗」

 

二人の話はそこで止まり、愛紗の耳に顔を近づけ口を動かした。

すると、愛紗の顔は見る見るうちに赤く染まってコクリと頷いた。

 

「・・・・・分かりました。喜んでお相手をさせていただきます」

 

「ん、待っててくれよ?」

 

「はい、それでは・・・・・」

 

ペコリと頭を垂らした愛紗を見た時、突然ワシの視界に光が発生して真っ白に染まった。

 

「・・・・・む?」

 

視界が回復した頃に緑の草原―――牧場が目の前にあった。

この瞬間、あの時と同じ・・・・・。もしや、魔法を使ったのかの?

 

「イッセー様!」

 

歓喜の声が聞こえた。渡良瀬の声だと直ぐに理解し、

渡良瀬の方に振り向くと・・・・・。ハーデスの胸に飛び込んで抱きついていた。

 

「まさか、ハーデス君がイッセー様だなんて、全然気付きませんでした!」

 

「気付かれちゃ変装の意味がないだろう」

 

「そうですよね。でもでも、今日はイッセー様とデートなんて私嬉しいです!」

 

「俺、男なんだけど」

 

「大丈夫です。蒼天は同性愛結婚は許されているんですから何も問題はないです。

というか、そうしたのはイッセー様でしょ?」

 

目を輝かせハーデスを見詰める。まさか、本気でハーデスのことが好きだとは・・・・・。

 

「俺、普通に女の子が好きだが」

 

「じゃあ、私は手術して女の子になりますね」

 

「・・・・・マジで?」

 

「はい、マジです。だって、私の全てを受け入れてくれそうな人が好きなんですよ?」

 

―――――。

 

全てを受け入れてくれる。渡良瀬はそういう人物が好きだと言う事をワシは

分からされた。ハーデスが男を受け入れるほど寛大な心の持ち主かどうか・・・・・。

 

「男に好意を向けられるなんて生まれて初めてだわ・・・・・」

 

「私は慣れていますけど、本当に好きな人が男とは思いませんでした。

―――でも、後悔していませんよ?」

 

太陽のように笑みを浮かべた渡良瀬をワシはただ見詰めるだけ思考が停止した。

本気であやつはハーデスのことが好きだと、男じゃと言うのに男にハッキリ告白しおった。

蒼天に住んでいるから、男同士で結婚ができるから、

男に告白できるのじゃろうか・・・・・。日本に生まれ住んでいるワシにとって

あまりにも疑問が付きない異性同士の付き合い。

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