バカと真剣とドラゴン―――完結―――   作:ダーク・シリウス

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その後

「おはよー大和」

 

「おう、おはよう明久」

 

「と、坂本もいたんだな」

 

「明久と途中で会ってな」

 

教室に入り大和と挨拶を交わしながらミカン箱の前に座った。相変わらずの環境が

よろしくないこの教室にはもう慣れてしまった。

 

「ハーデスと秀吉の罰ゲームはどうなったことやらな」

 

「何も変わっていないだろう?」

 

「そうだよ雄二。あの秀吉が誰かと付き合うなんてないじゃないか」

 

「・・・・・その通り」

 

ムッツリーニが音も無く現れた。あの美少女である秀吉がハーデスどころか誰かと

付き合うなんて考えられない。

 

「ほう、自信満々じゃないか」

 

「だって、ねぇムッツリーニ」

 

「・・・・・(コクコク)」

 

「「異端者が発覚したらその場で処刑するんだから」」

 

「「お前らの考えはよーく解った」」

 

声からして何故か呆れられている。何故だろう?純粋な面持ちで小首を傾げる。

 

「おはようなのじゃ」

 

噂をすればなんとやら、独特なしゃべり方をするこのクラスのアイドルの一人である

友達が入って来た。振り向けばそこに何も変わっていない秀吉がこっちに近づいてきていた。

 

「おう、秀吉。開口一番に聞くがハーデスとのデートはどうだった?」

 

「んむ?楽しかったぞい。途中で渡良瀬と一緒にデートをする羽目になってしまったがの」

 

「渡良瀬・・・・・ああ、お前以上の男か」

 

「直江よ、ワシ以上はとどういうことなのか女体化になって聞かせてもらおうか」

 

「イエ、ナンデモゴザイマセン」

 

口は災いのもと・・・・・肝に刻んでおこう。

というか秀吉、キミは何だか変わったような・・・・・?

 

「なんじゃ明久。ワシの顔を見詰めて」

 

「うーん、雰囲気変わったなって」

 

「そうかの?自分ではわからぬのじゃ」

 

「ま、そういうこともあるだろう」

 

腕を組んでいた雄二がそう言うと大和が言う。

 

「ハーデスとデートして何か刺激なことがあったんだろう。

楽しかったならそれでいいじゃないか」

 

「そうじゃな。―――ハーデスとのデートを延長したい程じゃ」

 

「「「「・・・・・」」」」

 

・・・・・秀吉?それってどういう意味なの・・・・・?

 

「あー秀吉、それは友達としてまたハーデスと一緒に遊びたいと言う意味だよな?」

 

「何を言っておるんじゃ雄二よ」

 

秀吉は小さく笑んだ。

 

「当然じゃろう?ワシとハーデスは男同士で日本では同性愛の付き合いは出来ぬのじゃからの」

 

当たり前のように秀吉は言った。でも、なんでかな。逆に言えば蒼天だったらハーデスと

付き合えると言っているようにも聞こえる。

 

「・・・・・そうか、変なことを聞いて悪かった」

 

「気にせんでいい」

 

自分の席に座りだす秀吉。・・・・・まぁ・・・・・秀吉がそう言うんなら。

 

「ハーデスとは特別何もなかった。これでいいだろう」

 

「俺らが余計な詮索したら、ハーデスに何させられるかわかったもんじゃねえ」

 

「・・・・・身の安全が大事・・・・・」

 

「もう・・・・・あんな目には遭いたくないよね」

 

なんだか腑に落ちないけど・・・・・秀吉がハーデスに漏らせばまたあんな目に遭わされる

可能性はあるため、これ以上の詮索は止めた。

 

 

―――2-A――

 

 

「え”・・・・・弟君、本当にハーデス君にオトされちゃったの・・・・・?」

 

「おまけに、渡良瀬ってあの男の娘もオトしたらしいわよ・・・・・」

 

「・・・・・ハーデスの魅力は凄まじい・・・・・」

 

優子に聞かされた話に度肝を抜かれた。まさか、ボクの提案がこうなるなんて思いもしなかった。

弟君・・・・・ハーデス君のことが好きになっちゃったんだね・・・・・。

 

「・・・・・愛子・・・・・何て提案を・・・・・」

 

「ア、アハハハ・・・・・ごめんなさい」

 

笑って謝っても許されるわけがないだろうけど、本当にゴメンね優子・・・・・・。

 

「・・・・・ライバルがまた増えた」

 

「まさか・・・・・ライバルが女の子じゃなくて男まで加わるなんて。

しかも相手が秀吉もだと知った時は戦慄したわ・・・・・」

 

「うーん、これ以上増えられるとボク達の立場が危ういね」

 

「・・・・・これ以上、ハーデスの魅力にライバルが増えるのは危険。私達が固めておかないと」

 

何時にも増して代表が真剣に言っている。そんな友達であり恋敵でもある彼女と優子と

交えてハーデス君の事を超えを殺して作戦を考えていたら、

 

「三人共、何を話しているだい?」

 

久保君が興味津々だと顔に書いているぐらい分かるほど好奇心な面持ちで近づいてきた。

 

「ハーデス君のことを語り合っているんだよ」

 

「・・・・・優子の弟とハーデスが付き合い始めたから」

 

「ちょっ、代表!こんなところでそれを公にしないでよ・・・・・」

 

優子にとって人生最大の―――って感じだろう。ボクにも兄か弟がいて同性と

付き合い始めたんだと聞かされた時はどんな反応をしているのか定かじゃないや。

 

「・・・・・その話、詳しく聞かせてもらえないだろうか」

 

ガタッと何時の間にか椅子を持ってきて座っていた。は、速い・・・・・っ。

 

「木下さんの弟君が告白をしたのかい?それとも死神君から?」

 

「えと、久保君・・・・・こう言う話しはちょっと遠慮したいかなって・・・・・」

 

「・・・・・二人だけの問題だから、詮索はダメ」

 

「そうか・・・・・すまなかった」

 

久保君はすんなりと身を引いた―――かと思えば教室から出て行った。トイレかな?

 

「・・・・・今の久保君、なんか勢いが凄かったわね」

 

「・・・・・鬼気が迫る勢い?」

 

「代表、それはちょっとかなって思うけどボクもそう感じたよ」

 

―――刹那。

 

 

『『『死神をころせぇええええええええええっ!』』』

 

 

廊下から魂からの叫びが聞こえてきた。目を丸くするボクらだけど特に酷く動揺はしない。

だって―――、

 

「ハーデスだから問題ないわね」

 

「・・・・・ハーデスは強い、大丈夫」

 

「うん、ボクの騎士だからね」

 

ハーデスは自他と共に認める強いヒトなんだからね。

 

 

―――お昼休み―――

 

 

『・・・・・お前ら、口軽過ぎじゃないか』

 

「「「・・・・・ごめんなさい・・・・・」」」

 

屋上で何時もの昼食会を展開する俺達だったが、ハーデスは木下(姉)、霧島(姉)、

工藤に非難染みた文字をスケッチブックに書いて突き付けていた。

その理由は―――木下とハーデスが交際の発覚。

 

「「・・・・・(怒)」」

 

『・・・・・この二人、ウゼェから屋上から放り投げて良い?』

 

「止めろハーデス。そんなことすれば屋上の出入りが禁止になる」

 

『・・・・・じゃあ、また性転換するか』

 

マントから例の銃を突き出したことで明久と土屋は態度を一変して怒りを抑えた。

 

「だけど、ハーデスが男の子と付き合うなんて・・・・・本気なの?」

 

『・・・・・惚れたからな』

 

「どっちが?」

 

『・・・・・俺がだ。口説かれたこともあったから』

 

―――マジで!?

 

「ハーデス!あれは、決してお主を口説いたわけではないのじゃからな!?

お主を励まそうとして言っただけなのじゃからの!」

 

因みに木下はハーデスの足の上にすっぽりと収まっている。

 

「ついに、死神が男にまで・・・・・」

 

「だが、女みたいな顔をしているアイツを見てなんでだ?異和感が感じない」

 

「むぅ・・・・・」

 

ハーデスを慕う女子達は複雑そうに木下を見詰める。蒼天で付き合うなら法律上問題はないが、

ここは日本だ。二人ともそれを分かってて付き合い始め出したんだろう。

 

「イッセーさんが知ったらどんな反応をするんだろうか」

 

「そうだね、男同士の付き合い・・・・・なんか深いかも」

 

「俺様は絶対に年上の美女と付き合う!」

 

「「無理でしょうけどね」」

 

京とワン子が一刀両断。だからガクト、頭を垂らして落ち込まずお前にもかすかな

希望があるはずだから元気出せ。

 

「で、木下(姉)。弟が同性と付き合うことを認めているのか?」

 

「・・・・・」

 

姉に聞けば額に手を当てて深い溜息を吐いた。やはり、同性の付き合いは反対か何とも

言えない複雑な気持ちを抱えるんだろうな。

 

「知らない相手ならともかく・・・・・知人でアタシが信用している相手だったら、

ま・・・・・問題ないでしょう」

 

「そう言う姉上も、ハーデスのことが好きじゃしの」

 

「秀吉・・・・・サラッと何を言っているのかしらね・・・・・?」

 

黒いオーラが固く握った拳から出ている・・・・・出ているから・・・・・。

 

「いや、薄々そうだろうなと思っていたんだが?」

 

「・・・・・もしかしで気付いていた?」

 

『・・・・・』

 

ジーと木下(姉)を見詰める数人。今さら何をと言わんばかりの友人がいれば、

えっ、そうだったの?と今更気付いた友人が数人目を丸くする。

 

「翔子はともかく・・・・・工藤、お前もなんだろ」

 

「あっ、やっぱりバレちゃった?」

 

「・・・・・っ!?」

 

「当たり前だ。あんなあからさまな・・・・・。仲良過ぎるにも態度で分かるぞ」

 

「だな、他に小山や小暮先輩にエスデスと極道ぐらいか?」

 

「一緒に住んでいる奴らも怪しいところだがな」

 

ハーデス・・・・・水面下で着々とハーレムを築いてやがった。って、土屋よ。

指に挟んだ文房具を投げる姿勢になるな。ハーデスの持つ銃に目がないのか。

 

「・・・・・異端者には死を・・・・・っ!」

 

『・・・・・降りかかる火の粉を払わないといけないようだ』

 

青いオーラと赤いオーラを纏う二人。互いがぶつかり合うのも時間の問題だった。

だったのに―――。

 

「これハーデス」

 

『・・・・・?』

 

木下がハーデスの顔を挟んで自分の視線と合うように土屋から視線を逸らした。

 

「ムッツリーニと喧嘩してはダメじゃ。今は昼食中じゃぞ」

 

『・・・・・俺は―――(パク)』

 

「ダメったらダメなのじゃ。ほれ、これでも食べておれ」

 

ちょっぴり怒り気味で玉子焼きをハーデスの口に突っ込んだ木下だった。

食べさせられ玉子焼きを胃に送ると木下に何か言おうと口が開いたけれど間髪を容れず

今度は「あーんじゃ」唐揚げを食べさせられた。

 

「親鳥と雛の図になってんぞハーデス」

 

苦笑を浮かべ指摘してやった。そしたらハーデスは箸を持ってアスパラのベーコン巻きを

摘まむと木下の口に突っ込んだ。やられっぱなしは性に合わないと風な感じだな?

 

「むぅ・・・・・美味しいのじゃ」

 

『・・・・・料理は得意だからな』

 

口の端を吊り上げて嬉しそうに笑ったハーデス。

 

「・・・・ハーデス、私にもして?」

 

徐に霧島がハーデスに近づき強請った。そんな彼女にさくらんぼを手で摘まんで口を

開けて待ち構えている霧島の口元にまで近づけ―――。

 

 

バンッ!

 

 

「しぃーにぃーがーみぃーっ!」

 

見知らぬ男子が鬼の形相で屋上に現れた。はて、誰だろうか?

 

「坂本、お前の知り合いか?」

 

「阿呆、ハーデスを指名しているんだぞ。それ以前に俺があんな島津みたいな

がたいの良い身体の男子と知り合いなわけがない」

 

ま、分かってて聞いた。当の男子生徒は大股でハーデスに近づき、鋭く指を突きつけた。

 

「単刀直入に聞く。お前、木下秀吉と付き合っているとは本当なのか?」

 

『・・・・・教える義理はない』

 

「いや、言わずとも分かる。―――俺と木下秀吉を懸けた決闘を申し込む!」

 

だったら聞くなと突っ込みたいが久し振りの決闘か。ハーデスはどう応じる?

視線を送れば決闘を拒む素振りをしていた。

 

『・・・・・面倒だから断わる』

 

「ならば俺の勝ちとして木下秀吉を俺の嫁にする」

 

『・・・・・と、言いたいところだが。懸けをしないと手に入れられない姑息なお前を

叩きのめしてやるか』

 

マントからワッペンを取り出して男子生徒の足元に落とした。男子生徒もワッペンを

取り出してハーデスのワッペンの上に叩き付けた。

 

「決まりだな。放課後、第一グラウンドで俺達と勝負だ」

 

『・・・・・分かった』

 

俺達・・・・・?ということは仲間も一緒に戦うってことかよ。狡猾な奴だなと

屋上から去っていく男子生徒を見送り、ハーデスを見やる。

 

「どうせ、お前にやられるのがオチって見え見えなんだがしっかり勝って来い」

 

『・・・・・もうすぐ、唯我独尊高校と勝負だから手加減しとく』

 

「そうしてくれるとありがたいぜ」

 

 

―――そして放課後―――

 

 

ハーデスと対する相手は百人はいる男子生徒達が第一グラウンドで対峙していた。

理事長の川神鉄心の立ち合いのもとで何時も通り決闘は始まり―――。

 

『・・・・・落雷』

 

上空から振った稲妻により、相手は感電して全滅。ハーデスの圧勝で決闘は幕を閉じた。

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

『・・・・・』

 

多馬川の原っぱから釣り糸を伸ばして釣りをしているハーデス。林冲達と別れ

今晩の夕飯にと川魚を欲している為に―――。

 

「いやぁ奇遇だな。こんなところで出会うなんてよ」

 

『・・・・・俺を暗殺できないから暇していて釣りで時間を潰していたんだろう』

 

長身でリーゼントのがたいの良い男と肩を並べて釣りをしていた。

 

「ま、お前を殺せなくてもこの世界は刺激を与えてくれることが多いからよ。

それなりに満喫してるぜ?」

 

『・・・・・お前らがいた世界のことは知らないがな』

 

「当然。知っていたらそれこそドッキリだぜ」

 

朗らかに笑う男を川に目を向けたままハーデスは話しかける。

 

『今を楽しめれば問題ない。問題も起こさなければ後は自由に暮らせ。

この世界はそれが可能』

 

「堂々と暗殺する標的と釣りなんざ生まれて初めての経験だがな。でも、そうさせてもらうぜ」

 

それからしばらく沈黙が続き静寂の中で釣り針に掛かった川魚を釣り上げていく。

 

『・・・・・因みに』

 

「おう」

 

『こっから八百メートル離れた建物の屋上にツインテールの少女がいることは気づいてる』

 

「・・・・・やっぱ、お前を暗殺するのに命を懸けないとダメか」

 

男が徐に腕を挙げた。その意図はハーデスと男しか知らない。

 

『・・・・・因みに気付いているか?』

 

「なんだ?」

 

『―――地面から奇襲してくる輩がいることを』

 

釣った川魚を入れたバケツを持って横に跳んだハーデスがいた場所の地面が

激しく盛り上がり、一拍遅れて影が現れた。

 

「ぬおぉっ!?」

 

『・・・・・新手か』

 

着地したハーデスの真後ろから伸びる鞭を釣り竿で捌き、素早い速度で草原を駆ける

少女を赤い目が捉え、地面を強く踏んで土埃を起こし相手の目を欺いたところで、

真上から落ちてくる金髪の少女の右手の正拳を絡め取り土埃に向かって投げ放った瞬間、

死角から銃弾が迫って来た。

 

「おらぁっ!」

 

しかし、その銃弾を男が剣で捌いた。

 

『・・・・・何の真似だ?』

 

「なに、ちょっとした借りを返しただけだ。気にすんな」

 

『・・・・・そう言う事ならそう言う事にしよう』

 

やがて土埃が風に飛ばされ視界がクリアした。ハーデスと男の前には少年と少女が

数人佇んで見据えていた。

 

『あいつら・・・・・なんだかお前らみたいな風体のようだが知り合いかブラート?』

 

「いや・・・・・知らねぇが、お前の言う通り俺達と似ているな」

 

ブラートと呼ばれた男は顎に手をやって目の前の少年少女達を見詰める。

 

「情報通りの標的だな」

 

「私達以外の刺客が倒されちゃった程なんだから強いに決まっているわよ」

 

「心して掛かるよ」

 

「私達を甦らせてくれた神様の為にも頑張らなきゃ」

 

「さっさと倒そうぜ?そしたらパーッと派手にパーティをしたいな!」

 

「はいはい、それは仕事が終わってからね」

 

「・・・・・そうだ」

 

「まったく、お気楽な奴だことで」

 

「気を引き締めて戦おうか」

 

相手は九人。対するハーデス側は二人。数が圧倒的に相手が上だ。

 

『・・・・・ブラート、お前は逃げて良いぞ。相手は俺を狙っているようだし』

 

「おいおい、水臭いぜ。久々に激しい運動ができる時にあいつらのところに

戻らないといけないってのかよ?」

 

帰る気はさらさらないとブラートは剣を地面に突き刺した。

 

「インクルシォオオオオオオオオオオオオッ!」

 

熱く魂から叫んだブラートの背後から異形が姿を現し、

ブラートの全身を覆い全身鎧へとなって包みこんでいく。

その変化に相手は目を丸くした。

 

「まさか・・・・・あれは帝具?」

 

「前の刺客は・・・・・いえ、有り得ないわ」

 

「黙ってろ雑魚。やることは分かり切っているはずだ。―――標的と邪魔する者を殺すだけだ」

 

『・・・・・ブラート』

 

「分かっている。殺すなだろう?」

 

『・・・・・いや、そうじゃない』

 

手を空に向かって伸ばした次の瞬間。空は眩い光を発した後に光の柱が振って相手を

呑みこんだ。

 

『・・・・・出番はないと言いたかっただけだ』

 

「お前・・・・・どれだけ強いんだよ」

 

『世界最強・・・・・と言いたいところだけど、二人ほど回避したか』

 

どちらも剣を手にしている青年と少女。二人は明らかに警戒心を抱いてハーデスを見ていた。

 

「どちらも大した強者だな。まるでアカメみたいだ」

 

「・・・・・アカメ、だと?」

 

青年の眉がピクリと動きブラートの発言に反応した。

だが、それ以上口にすることはできなかった。

 

『・・・・・』

 

ハーデスの赤い目が煌めき、青年はそれを見た瞬間に微動だすらしなくなった。

それは前髪の一部に紫色のメッシュを入れた少女もまた同じ状態。戦わずにして勝つ、

ハーデスはそれをやってのけた。

 

「・・・・・動かない?」

 

『・・・・・相手を停止しただけだ。これがその証拠』

 

青年の肩を強く押し出せば、停止した状態のまま地面に倒れ転がった。

 

『・・・・・自分が停止したなんて気付くことはない』

 

「おいおい・・・・・嫌な力を持ってやがるなお前。で、こいつらどーするよ?」

 

『・・・・・アカメという言葉に反応した。もしかしたらアカメの知り合いかも

知れないから連れていく』

 

「マジかよ」とブラートの呟きを余所に、気絶した七人から武器らしい武器を奪い、

鎖で拘束した。

 

―――☆☆☆―――

 

アカメ達の住処は川神駅からそう遠く離れていない場所の豪邸。その豪邸のリビングキッチンに

一つの魔方陣が出現して光と共にハーデスとブラート、奇襲をしかけてきた九人が姿を現した。

丁度リビングキッチンには何人かがいて、とんでもない現れ方をした二人に目を丸くした。

 

「・・・・・そいつら、誰だよ?」

 

「さぁーな。ただ、アカメの知り合いっぽかったから連れてきた」

 

「アカメの知り合い?」

 

「アカメはいるか?」

 

「妹と出掛けたぞ」

 

金髪の女性がアカメの事を伝えたが、いなければどうしようもない。

 

「こいつらをここに連れてきたのは良いけどどーすんだよ?」

 

『・・・・・お前らと同類だ。この家に住まわせてもらう』

 

「空き部屋があるとはいえ、知らない奴をここに住まわせるなんて抵抗があるぞ」

 

『・・・・・ラバック、エロ本十冊』

 

「十五冊だ」

 

『・・・・・取引成立』

 

「お前ら、何て交渉をしているんだよ」

 

緑のパーカーを来た少年とハーデスのやり取りに金髪の女性は溜息を吐いた時だった。

リビングキッチンの扉が開き、二人の黒髪の少女が入って来た。

 

「ブラート、帰って・・・・・!」

 

「・・・・・え・・・・・」

 

一人はアカメ。もう一人はアカメに似ているセーラー服を着ている少女。

 

鎖で拘束されている九人を見て信じられないと目を丸くし言葉を失った。

アカメ達の様子を見てハーデスは確信した。この九人とアカメは関わりを持っていて

同じ世界から来た転生者であることに。気絶した九人の手の平を突き出し電撃を放った。

それにより気絶した者達は意識を回復して悲鳴を上げた。

 

『・・・・・気分はどうだ』

 

「こ、この野郎・・・・・って、はっ?」

 

顔に傷がある筋肉質な男の目にアカメの姿が飛び込んだ。

 

「・・・・・まさか、アカメ・・・・・なのか」

 

「ガイ・・・・・」

 

目が離せない。逸らすことすらしない。アカメは真っ直ぐ鎖で縛られた

九人を何時までも見詰めた。他の少年と少女達もワッとアカメに話しかけた。

 

「嘘、アカメあなたなの・・・・・?」

 

「わっ、アカメちゃん!アカメちゃんなんだねっ!?」

 

「アタシが死んで以来の再会だわっ!」

 

「前の刺客というのはアカメだったってことか・・・・・」

 

「「・・・・・」」

 

「クロメ・・・・・」

 

「どーなってるんだ。夢でも見ているのか・・・・・?」

 

一方、そんな光景を見守っていたハーデス達は関係を察した。

 

「アカメが暗殺部隊に所属していた頃の同期、仲間達ってことか」

 

「おかしくね?アカメ以外の全員が死んだんじゃなかった?」

 

『・・・・・大方、俺の抹殺をする為に死んだ人間を甦らせてこの世界に送らしたんだろう。

死んだお前らみたいにな』

 

「神の悪戯ってにしちゃ、何とも言えない複雑さだねぇ・・・・・」

 

指を弾いたハーデスに呼応して鎖は消失した。鎖が無くなるとアカメに飛び出す少女達。

アカメの目に涙と顔に綻びが零れた。

 

『・・・・・あいつらの武器はしばらく俺が預かる。

しっかりこの世界のルールを教えてやれよ』

 

「お前はどうするんだ?」

 

『家に帰る』

 

それだけ言って魔方陣を介して家に戻ったハーデスだった。

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