バカと真剣とドラゴン―――完結―――   作:ダーク・シリウス

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戦二問

蒼天の唯我独尊高校、日本の神月学園。召喚システムがある学校同士の全面戦争の当日。

僕達は九鬼家の豪華客船に乗りこんで戦場となる船団に向かっている。

 

「九鬼家にこんなデカい船があるなんてな」

 

「・・・・・贅沢」

 

「しかも豪華なディナーも用意してくれるとはな」

 

「それに比べてなんだか場違いな格好をしているよね僕ら」

 

「しょうがないじゃないの。学生服で行くのは当然だし」

 

「はい、そうですよ吉井君」

 

第二学年と第三学年の皆は思い思いに食事をしていたり雑談をしている。

その中で一際目立っているのが・・・・・。

 

「葵とハーデスの奴、人気者だな」

 

雄二の言う通り複数の女子に囲まれているワケなんだよねぇー。

 

「大丈夫だよ雄二。雄二にだって綺麗な彼女がいるからそんな嫉妬しなくてもいいじゃないか」

 

「ばっ!翔花と俺は付き合っていないぞ!」

 

「あれ?僕一言も霧島(妹)さんの名前を言っていないよ?(ニヤニヤ)」

 

「なるほど、雄二もそろそろ認めてきたのじゃな(ニヤニヤ)」

 

「・・・・・嫉ましいほどにもある」

 

「秀吉まで何言いやがる!コイツが俺に言う女なんて翔花ぐらいしかいないだろうがっ!?」

 

「直ぐに霧島(妹)の名を出すぐらいじゃ。予想していたとなると雄二はその気はない

わけではないと言うことじゃぞ?」

 

そうそう、秀吉の言う通りだよ。ほら、噂をすればなんとやら・・・・・。

 

「雄二・・・・・私達も負けないぐらいイチャイチャする」

 

「誰がイチャイチャなんかするか!」

 

彼女から逃げるように(実際に逃げているんだろうね)僕達からいなくなった。

 

「―――姫路瑞希嬢」

 

と、凛とした声が姫路さんのフルネームを発した。この声・・・・・。

 

「せっかく私達は共に戦うのですから親睦を深める意味も兼ねて私とお話をしましょう」

 

「あぅ・・・・・高城先輩」

 

高城先輩、今回あのエロい先輩は・・・・・。

 

『うふっ、ハーデス君。あなたの活躍を期待しておりますわ』

 

『小暮先輩っ。近い、ハーデスに近いです!』

 

『もう少しだけ離れてくださいっ』

 

『・・・・・私もくっつきたい』

 

ハーデスに誘惑していた。

 

「あの、その、特に話をすることがないのですが・・・・・」

 

「なにを仰るのですか。あなたは戦いを強いられる場所に配置される。

あまり無茶なさらずに自分のペースで戦ってくださいね」

 

「そっ、それは勿論です」

 

「それと件のことで少しお話を・・・・・」

 

「そ、それはこの場で出すことではありませんっ!私、ハーデス君に呼ばれて

いますので失礼しますっ」

 

「彼があなたを呼ぶ理由はないはずですが?」

 

姫路さんの退路を先回りして絶つ高城先輩はズイと顔を近づける。

 

「瑞希嬢。あなたにとっても悪くないはずです」

 

「私はあなたの提案には乗りませんっ。私は今がとても大切にしたいんです」

 

「ですが、それではあなたの―――」

 

「いいんです。私は―――」

 

何やら会話が平行線状態・・・・・姫路さんと高城先輩の間に何が起きているんだろう。

 

 

『皆様、まもなく目的地に到着します。各クラス順に並び先生の指示に従って行動してください』

 

 

突然のアナウンスが流れた。―――僕達の戦場が見えてきたんだね。

 

「時間ですか。残念ですが話はこの戦争が終了次第続けましょう」

 

恭しくお辞儀をする高城先輩は集まりだす各クラスの中へと姿を消す。

鉄人の呼び声に反応し、Fクラスの皆が集い始める。さて、いよいよだね。

唯我独尊高校と全面戦争!

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

「これはまた壮大な・・・・・」

 

「短期間でここまで造った蒼天は凄いわね」

 

「まるで本当に赤壁の戦いを体験する雰囲気だね」

 

目的地―――沖にある船と船が分かれて対峙している何百、何千という船の団体が停泊している

海域に辿り着き、これから戦場として使用される船に乗り込んだ。潮の香りが鼻に

刺激してこんなところで試召戦争をしようなどと考える蒼天の王様の考えは度肝を抜かれる。

 

 

『おはよう!神月学園と唯我独尊学園の諸君。中央区の王、イッセー・D・スカーレットだ。移動しながら俺の話を聞いてくれよ。これからルールを説明するからな』

 

 

「やっぱり、当日でルールが発表されたね」

 

「肝心なルールを聞きたいところだったぜ」

 

「でも、イッセーさん。宇宙にいるんじゃなかったの?」

 

 

『最初は勝敗の決め方だ。勝敗はスクランブル・フラッグ―――旗取り合戦で勝敗を決める』

 

 

「旗取り合戦だと?」

 

 

『どうして旗取りだと疑問を浮かべているだろう。それはその方が効率が良いからだ。

ただし、ただの旗取り合戦じゃない。敵味方の陣地に立会人の教師の代わりに旗が

各科目のフィールドを展開してくれる。自分の陣地に最大2つ同じ科目の文字が

書かれた旗と学校の色が用意させてもらい、皆にはその旗を持って敵の旗を奪い取り尚

且つ自分の旗を立ててもらう。さらに細かく勝敗のルールを説明すれば制限時間以内に

相手の王と書かれた印の旗を奪えば勝利、または敵の全滅』

 

 

「・・・・・ようは王の旗を全部奪えば勝ちってことか。シンプルだが分かりやすくて良い」

 

「保健体育のフィールドにムッツリーニを配置させて頑張ってもらえるしね」

 

「・・・・・俺に任せろ」

 

 

『因みに回復試験は無い。戦死したその瞬間に海へ向かってダイブという罰ゲームを

施させてもらった』

 

 

何て罰ゲームを考えたんだあの王様!

 

 

『その為、不格好になるが全員には救命胴衣を身に付けてもらう。落ちた後は戦場の

船団の近くに配置した蒼天の海上自衛隊に救助されるので安心してくれ』

 

 

そこのところもしっかりと万全の態勢を怠っていない。

 

 

『それでは、三十分後。唯我独尊学園と神月学園の全面戦争を開始する。

それまで救命胴衣の受け取りと作戦会議や配置を整えていろよ』

 

 

王様の声がピタリと止んだ。

 

「こりゃ、意外と普通に戦うより大変だな」

 

「旗を奪われたら大変だもんね」

 

「敵の全滅はまず不可能に近い。どっちも回復試験をできないどころか、

得意科目にいればバンバン腕輪の能力を使えるからな。だとすると旗を奪い取って

俺達の旗をいち早く立てることが重要だ。それも相手を全滅する勢いでだ」

 

「ふむ・・・・・そういう状況になるとワシらは厳しいのではないかの?」

 

「・・・・・得意科目はそれぞれ」

 

ハーデスのようなオールラウンダーの人物がいれば話は別だろうけど、

いるとすれば片手で数えた方が早い。

 

「中央の俺達の陣地の旗は何の科目なのか知りたいな」

 

「行けば分かるよ。雄二は代表同士の作戦会議をしたほうがいいんじゃない?」

 

「ああ、そうだな。ハーデス、上級生の代表達に声を掛けてくれるか?

場所は味方の陣地の中央にと」

 

『・・・・・(コクリ)』

 

忍者のようにフッと音もなく消えるハーデス。

 

 

~~~しばらくして~~~

 

 

各代表達が僕達Fクラスがいる中央に集まりだした。救命胴衣も全員に渡っている。

 

「皆も知っているだろうが、ルールは旗取り合戦。防衛しつつ敵を倒しながら旗を

取りに攻めて行くのが当然ベストだろう」

 

「ならば、予定通り皆さんの配置はこのままでよろしいですね?」

 

「A・B・Cクラスの皆は何時でも動ける体勢でいて欲しいところだが、

あの王様は絶対に何か隠しているシステムがあるはずだ」

 

「は?隠しているって何がよ」

 

「それが分かれば苦労しないんだよ。直江達が言うにはあの王様は大の悪戯好きで

人を驚かすのが右に出るものはいないそうでな。もしかしたら他にも何か工作しているはずだ」

 

「ふん、Fクラスの言葉にイマイチ信用ができないな。

お前らはタダ旗を奪われないように戦死するまで攻撃していればいいんだよ」

 

小馬鹿するような言い方をする根本君の発言に雄二から感じるオーラに僕は気付いた。

物言い気な態度をしたから根本君は鼻を鳴らして問うた。

 

「何だ坂本、言いたいことがあればハッキリと言ってみろ」

 

「なに、後ろに引き籠ってばかりじゃどこかの誰かさんに見直したと言われなくなるなぁ?

と思っただけだ」

 

「・・・・・どういう意味だ坂本」

 

「おや、Bクラスの代表がこの程度の謎が分からないとは。

おっと観察処分者だってことを忘れていたぜ。明久並みのバカだってこともな」

 

ちょっと雄二!キノコ頭の根本君と一緒にするんじゃない!

 

「・・・・・坂本、貴様ぁ・・・・・っ!」

 

「そう心配するな根本。俺達がきっちり敵中央の船を乗っ取ってやるからな。

その役目は当然ハーデスだ。ハーデス、お前の格好いいところを見せ付けてやれ。

木下達がお前の雄々しい様を見たがっているはずだぜ?」

 

『・・・・・分かった。任せろ』

 

「その意気だ。お前に好意を抱いている女にもっと惚れさせてやれ」

 

清々しいほど雄二の顔は邪悪な笑みを浮かべている。だから対する根本君は憎々しげに

ハーデスと雄二を睨んでいるんだよね。味方同士の仲間割れなんて起きないと良いんだけど。

 

「にしても、唯我独尊学園が乗っている船団とかなり離れておるの?」

 

「船を動かして攻めてくる可能性があるかもしれんな」

 

「だな。どこかに船を動かす為の操縦があるはずだ。残りの時間はこの船を調べてみるか」

 

「それと誰かがもう一つの旗を持ってもらわないと相手陣地に旗を立てれないわ」

 

「・・・・・それは代表が持つべきだと思う」

 

「うーん、それは大丈夫なものか?旗を持っている奴が狙われるはずだからここは旗を

持ってくる役割も必要だと思うが」

 

平賀君がそんな提案を指摘する。

 

「なるほど、それじゃ足の速い奴を旗を運送する任命しよう。高城先輩達上級生からその役割を誰か与えてくれないか?」

 

「分かりました。私達は後ろで待機する形ですからね。

前線に出るあなた達に紛れて戦況の情報を収集させて作戦を立てましょう」

 

 

『試召戦争開始まで残り三分』

 

 

どこからか声が聞こえてきた。各クラスの代表達は自分の持ち場へと戻っていく。

 

「ハーデス」

 

小山さんがハーデスの名前を呼んだ。赤い目を小山さんに向ければ、

こっちにきてと手を招かれて近づく。

 

「飴玉あげるから口出してくれる?」

 

こんなときに飴玉?でも、確かに人差し指と親指の間に飴玉があった。

ハーデスは何の疑いも無く口元の仮面を外してあーんと口を開いた。

 

「そのまま、ね?」

 

ゆっくりと飴玉を持った手がハーデスの口に持って行った―――と思ったら

ヒョイと自分の口の中に放り込んであろうことか。

 

「ん」

 

『・・・・・』

 

彼女はハーデスの唇に唇を重ねたんだ。そんな光景に唖然と見守る僕ら。

小山さんの両腕がガッシリハーデスの頭と背中に回して抵抗させない為か、

逃がさない為かそのままモゴモゴと動かし続ける。次第に水音が聞こえてくるのは

気のせいじゃない。小山さんの顔も段々朱に染まったところでお互い顔を遠ざけると

ハーデスの口と小山さんの口に銀色の糸が繋がった。

それがとても煽情的でエロい・・・・・!

 

「・・・・・負けちゃ、ダメよ。ハーデス」

 

ハーデスの唇に人差し指でなぞるように触れた後、

もう一度硬直状態のハーデスの唇に自分の唇を落とした。

 

「私が負けそうになったら助けに来てね?誰でもないあなたに助けられたいから」

 

『・・・・・(コクリ)』

 

「それじゃ」

 

小山さんは遅れてこの場からいなくなった。

この場に秀吉のお姉さん達がいたら暴動が悪化していたかもしれない。

 

 

ガシッ

 

 

「死神・・・・・ちょっとこっちに来てくれるか?」

 

「あんなもの見せ付けられて、黙っていられるほど私達はお淑やかではありません」

 

『・・・・・』

 

怒り狂い、殺意と敵意が膨れ上がったこの場に極道さんと

エスデスさんが問答無用とハーデスをどこかへ連れて行かれた。

 

 

『お前ら、どさくさに紛れて死神を抹殺するぞ』

 

『了解です隊長。我々の目の前で堂々と掟を破りし異端者に死の鉄槌を・・・・・』

 

『死神が死した後に悲しむ女子達は我々で慰めてやりましょう!』

 

『当然だ。戦争が始まったその瞬間こそが』

 

『『『『『死神の死!イヤッハァーッ!』』』』』

 

 

・・・・・救いようがないクラスメート達だ。そう思った時

 

 

『唯我独尊学園VS神月学園の全面試召戦争―――開始!』

 

 

戦争が始まった。

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

味方の中央の船は激しい戦闘で怒声が響き渡る。

 

『くたばれ死神ぃっ!』

 

『よくも俺達の前で小山さんと熱血ラブチューを見せつけてくれやがったなゴラァッ!』

 

『俺達に対するあてつけかあァんっ!?』

 

味方同士が仲間割れを起こして。でも、拳で殴っても足で蹴ろうとしても

ハーデスの身体に当たらず空ぶるばかり。

 

「あれ、どーすりゃいんだよ」

 

「放っておいた方がいいんじゃね?」

 

「そういえば、船の操縦の仕方誰か分かったの?」

 

明久の素朴の質問に誰も答えない。が、後方から聞こえてくる声。

 

 

『トーマ、何かレバーみたいなのがあるよー?』

 

『おや、こんなところにあったのですね。動かしてみてくださいユキ』

 

『うんっ。せーの!』

 

 

ガゴッ!と言う音が一拍遅れて聞こえてきた。すると、景色が動き始めた。

厳密に言えば―――船が動いた。味方の船と繋がっていた船が別離となって前に進む。

 

「あれれ!?味方と離れちゃってるよ!」

 

「これじゃウチだけあっちの学園と戦わないといけないんじゃないの!?」

 

戸惑う俺達に更に声が聞こえてきた。

 

 

『ああ、言い忘れていた。船を動かすには各船にあるレバーと操舵がある。

船同士が接近すると前後左右連結する。逆にまた操作すれば離れるから船を動かし

衝撃に備えて戦ってくれ』

 

 

それをもっと早く言って欲しかったぜイッセーさん・・・・・ッ!

 

 

「よっしゃー!そう言う事なら俺が船を動かしてやるぜぇ!」

 

そして、この面白い状況をいち早く動きだしそうなキャップが真っ先に操舵の方へと

駈け出した。

 

「見て!向こうからも一隻くるわ!」

 

「奴さんも船を動かして襲撃してきたな」

 

この船より少し小振りな一隻の船。高さはこっちの方が上だがどうやって連結をするんだか。

様子を見ているとその小ぶりの船は俺達の横を通り過ぎて味方の船に進んでいく。

 

「スルーされたッ!?え、どうして?」

 

「なるほど、こういう戦い方もあり何だな?―――おもしれぇじゃねえか!」

 

野性味たっぷりな顔が笑みを浮かべる坂本。

通り過ぎた小舟の反対側から突然の衝撃が船に乗っている俺達に襲いかかった。

 

『敵の船が接触してきたぞっ!』

 

―――俺達FクラスとSクラスの本隊に知らずに挑んできたか。

この船にある旗の科目は数学。島田が得意科目だ。警戒して臨戦態勢の構えになっていれば、

ドタドタと唯我独尊高校の学生達が現れた。何故か全員レベルが高い女子ばかりだ。

 

『『『美人美少女キタァー!\(≧∇≦)/\(≧∇≦)/\(≧∇≦)/\(≧∇≦)/』』』

 

『『『『『うるさいわよドブ男共っ!』』』』』

 

 

しかも、口が悪い上に気が強いようだ。

 

「数学のフィールドに入って来たのが運の尽きね。ウチが相手になるわ!」

 

島田は勇ましく名乗り上げて召喚獣を喚んだ。

相手も召喚獣を足元に喚び出しては島田と対峙する。

 

 

試獣召喚(サモン)ッ!』

 

 

                 数学

 

 

唯我独尊学園 神無月陽 578点 VS 201点 島田美波 神月学園

 

 

「数学のフィールドに入って来たのが・・・・・なんだって?」

 

「そ、そんな・・・・・!」

 

「私達が何も考えずに攻めてきたんじゃないわよ自意識過剰!」

 

圧倒的な点数の前に、島田は紙一重で何とか避ける。色々と召喚獣を操作する機会が

あったから避ける経験も積んでいるので、島田は一撃でやられはしない。

 

「くっ、操作が巧過ぎるじゃない!」

 

「私達唯我独尊学園の生徒は皆、高校一年生になると召喚獣を扱う授業が多いの。だから、

戦争でしか召喚獣を扱わないあなた達神月学園が勝てると思っていたのかしら?

―――それは大間違いよ」

 

「わ、私も加勢します!」

 

「瑞希、ありがとう!」

 

姫路が島田を加勢する。だが、予想外なことが起きた。敵側も加勢が入って―――。

 

 

                      数学

 

唯我独尊学園 ミーシャ・ルドルフ 591点 VS 431点 姫路瑞希 神月学園

 

 

「因みに、彼女はドイツ人だからね」

 

んだ・・・・・とっ!?

 

「ウチと同じ国に住んでいた娘がこんなに点数を叩きだすなんて・・・・・!」

 

「日本が大好きだから蒼天で日本語の読み書きをたくさん勉強したの。

今じゃ日本語の読み書きはマスターしたわ」

 

―――読み書きができるのとできないの違いでこんなにも差が出るのか。

 

 

『戦死しなさいドブ男共!』

 

『いやらしい目で私達を見るんじゃねぇっ!』

 

『げっ、一撃―――どわぁぁあああああああっ!?』

 

『福村が突然跳んだぞっ!?』

 

やばい、被害が深刻だ・・・・・っ。やられた味方はいきなり跳んで海に落ちた。

 

「も、もうダメ・・・・・きゃぁあああああああああああああっ!?」

 

「美波ちゃんっ!?」

 

ついに女子も海に落ちた。想像していたよりかなりシビアじゃないか!

くそ、こんなことになるならもっと真剣に勉強してくれば役に立てたのに!

 

「つぇえ・・・・・まるでSクラスと相手している感じだ」

 

「ど、どうしよう!?Sクラスも何人かやられちゃってる!

クラスの皆も殆どやられちゃってるよ!?」

 

「得意科目と操作の技術がものを言ってるねこれ」

 

「数学は苦手ではないが、操作はあまり・・・・・」

 

戦意喪失になり掛けている味方。敵は強者揃い。頼みの味方のSクラスは拮抗中。

残る俺達の切り札は・・・・・何故か敵が現れた方から姿を現した。

片手には科目が書かれている赤い旗を携えて。

 

『・・・・・残りはそいつらだけだ』

 

「死神っ!?嘘、味方が何時の間にやられたって言うの!?」

 

「押せぃっ!Fクラスの前で無様に負けることは許さんぞ貴様ら!

破れた者はFクラスの者当然と思え!」

 

英雄の鼓舞が聞こえた。相手は十人程度、こっちはSクラスと含めてその二、三倍。

―――決着は遠くない。

 

 

 

「優子ー、見える?」

 

「若干だけど・・・・・人が吹っ飛ぶ光景が見えるわね」

 

「・・・・・望遠鏡を持ってきて良かった」

 

「代表、それがあるなら言って欲しかったわ」

 

「・・・・・ごめん。でも、ハーデスが相手の船を奪った」

 

なら、ハーデスがいる船は被害が出たけど勝ったワケね。

まぁ、Sクラスの本体がいるんだし負けるとは思ってないけど、

 

『伝令!Eクラス共がかなり押されている!至急増援を!』

 

『Dクラスの船の方もだ!奴ら、得意科目ばかり狙って襲ってくる!』

 

ただ単純に旗を奪うんじゃなくて自分の得意な科目で戦う。それが向こうの戦法。

 

「・・・・・予想していたより早くも被害が出ていますね」

 

高城先輩が伝令からの情報をノートに纏めながら思案顔で呟いている。

 

「どうします?私達も船を出して戦いに行きますか?」

 

「いえ、もう少しだけ様子見をしましょう。

孤立を狙ってこられたら一溜まりもありませんからね」

 

「・・・・・それを押し退けて勝ち進む存在があの船にいる」

 

「あれ、小舟が離れて行くよ。乗ってのは・・・・・・ハーデス君だ!」

 

「本来の務め、遊撃隊として動こうとしているのでしょう。

誰か坂本君に伝えてください。後退をするようにと」

 

 

 

「後退だと?」

 

「ああ、高城先輩からの指示だ。相手の情報を知りたいんだろう」

 

「味方も随分と減らされたの」

 

「貴様らFクラスが軟弱過ぎるからだろうが。おかげで我々も何人か犠牲が出たぞ」

 

九鬼君が憮然とした態度で腕を組みながら言う。

 

 

『んだぁっ!?こちとら死に物狂いで戦ったんだぞ!』

 

『そうだそうだ!俺達に負けたクラスにとやかく言われたくない!』

 

『んだとぉっ!?だったらこの場でお前らを海に叩き落としてやろうか!』

 

『てめぇら雑魚と一緒に戦うことすら虫唾が走ってどしようもないんだよ!』

 

『『『『やんのかゴラァッ!?』』』』

 

 

あーあー、味方同士が仲間割れを起こし始めちゃってる・・・・・。

 

「英雄・・・・・どうにかならないのかお前のクラスメート」

 

「それはこっちの台詞である大和」

 

ダメだ・・・・・今思えばSクラスとFクラスは因縁があって協力する思考がなかったかも。

敵が現れて一時的に戦っていたから言い合いなんてしなかったに過ぎないんだ。

 

「根本の野郎・・・・・まさかこうなることを予想して考えたんじゃねぇだろうな」

 

「かなり拙いではないかの」

 

「・・・・・仲間割れは時間の問題」

 

とりあえず、仲間同士の言い合いは皆がいる船団に着くまで続くことは確かだろう。

 

 

 

 

「愛紗、一部隊が全滅した」

 

「あの人がそうしたんだろう」

 

「まったく、手加減ぐらいして欲しいわね」

 

「手加減なんて、できると思うか?」

 

「できないでしょうね。戦い事になると彼は手を緩める気なんてないもの」

 

「それであの方は?」

 

「真っ直ぐ右翼の船団に向かっている。助けに行く気なんだろう」

 

「では、当初の予定通り十分後には攻めましょう。―――全兵力を投入してね」

 

 

 

 

「お帰りなさい坂本君。戦った相手はどうでしたか?」

 

「AクラスとSクラス並みの点数の保持者ばかりが攻めてきやがったぜ。

その上、Sクラスと揉め事が発生した。もう協力し合うなんて気はしないだろう」

 

「それは困りますね。あなた方が第二学年の中で突破力のある

クラスなので期待していたのですが」

 

「期待をする以前に俺達はFクラスだ。点数の低い奴らばかりでバカの集団だぞ?

操作が慣れているとはいえども点数が変わらないままじゃあっという間に負けるのが必然だ」

 

「では、配置を変えましょう。F・Sクラスの皆さんにはそれぞれ右翼と左翼の船団に別れてもらいます。さらに少数精鋭として何人かあなた達と親しい

Sクラスの人と共に戦ってください。全体がダメなら個体に」

 

「直江達に人選を任せよう。俺らは別にSクラスと親しいわけじゃない」

 

後ろで聞いているであろう直江に尻目で視線を送ると、何も告げず踵返して離れて行く。

親しいSクラスにいる友人に声を掛けに行ったんだろうな。そして俺達がいる場所は王の印が描かれた旗がある船。チェスで言えばキングの位置だ。

他の船よりも一回り大きいから他の船を見渡せれる。

 

「それと死神・ハーデス君は?」

 

「遊撃隊として動いて貰っている」

 

「木下さん、彼の今どんな行動を?」

 

「右翼の船団に向かっています―――待って下さい、あれは―――!」

 

どうしたんだ?何かとんでもないことが起きているのか?

 

「唯我独尊学園の船団が全隻、こっちに向かって来ています!」

 

とんでもないことが起きていた。全隻だと・・・・・!?

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