『さて、敵船団に全隻連結を整え次第攻めかかるわよ』
『些か急がし過ぎると思うがな』
『情報じゃ、厄介な敵が二人いるそうじゃない。
しかも遊撃部隊らしく自由に動かれちゃ―――』
『その遊撃隊が単身で乗り込んできたわよ?』
『・・・・もうきたの。予想を上回る速度ね。けれど・・・・・私達には勝てないわ』
―――☆☆☆―――
最終決戦と過言ではないほど、敵味方の船が全て繋がり、足場が一気に広がった。
そして向こうから敵が破竹の勢いで肉薄してくる様子が怒号と悲鳴が飛び交う
戦場の雰囲気を肌で感じる。
『右翼から伝達!敵、数三十により苦戦!』
『中央の味方から伝言!もう、止めちゃっていいですか?』
『左翼から援軍を要請!』
情報を纏めれば神月学園はピンチ状態。対抗はできなくはないが如何せん
一枚岩じゃないのが現状。
「呆れを通り越して相手は強いですね」
「そうね」
アタシ、木下優子は次から次へと来る伝令の報告を聞き、一度も良い話しを聞かない
ことにどうしてくれようかしらと思った。
「ならば。本陣の皆さんにも打って出て貰いましょう。苦肉の策を用いて」
「苦肉の策・・・・・?」
「死神・ハーデス君をここに呼び寄せてください。話はそれからです」
『・・・・・了解。落ち着いたらそっちに行く』
伝令から報告を聞き視線を周囲に向ける。2-Cの援護をしていたところで
相手の勢いを殺いでいた。死神・ハーデスの存在は徐々に唯我独尊高校にも浸透し、
警戒心を抱かせていた。
「ありがとう、ハーデス」
ハーデスに感謝を述べる小山友香。ピンチの時に助けて欲しいと言った自分の願いが叶い、
戦争中にも拘らず熱い視線を向けていた。
自分の為にここまで駆けつけてくれたハーデスに惚れ直したのだった小山は。
『友香、敵がこの船にいなくなったら直ぐに船を動かせ』
「それでどうなるって言うの?」
『味方本陣に向かう道を一時的でもいいから失わせる』
「その後は私達はどうすればいい?あなたの手伝い?」
ハーデスの作戦は悪くないと思いつつ、
尋ねると小山の目がハーデスの赤い目の視線とぶつかった。
『俺は本陣にいる高城先輩に呼ばれている。友香達も一緒に来い』
「分かったわ。―――どこまでもあなたについていく」
味方の船にいる敵を一掃した後に船を動かし、相手の足を鈍らせることに成功した。
船はそのままゆったりと動き味方本陣と連結してハーデスは高城雅春のもとへ
赴いたのだった。
「待っていました死神・ハーデスくん」
『・・・・・俺を呼んだのは?』
隣に立つ小山友香の目の前には小暮葵がおり、
さらに本陣の船は2-A、3-Aの生徒達がいた。
「あなたの力が必要だと判断し呼び寄せたのは他でもありません。
―――この本陣を敵本陣に直接つなげて玉砕覚悟で挑みに行きます」
『・・・・・あまり良策とは思えない。でも、決めたんだろう?』
「あまり戦況が好ましくありません。私達の予想を遥かに唯我独尊学園は強いですし、戦いが長引けばもっと悪化するでしょう。ですので、こういう策をする他ありません」
『・・・・・本当に玉砕な作戦だ。―――ま、従うよ』
「では、準備が整い次第決行します」
「どりゃあああああっ!」
相手の振り回してくる棘付きのハンマーの勢いを殺ぎつつ軌道を逸らして、
副獣で敵の首を突き刺して戦死にした。一対一じゃ時間が掛かって
その間に他の皆はやられていく。主獣の他にもう一体の召喚獣、副獣が現れたことで
元々の点数が半分になっても時間が惜しいんだ。新たに現れた相手を見詰めながら
思っていると相手は僕の腕輪を見て眼を丸くした。
「まさかその腕輪は・・・・・!?」
「へ?」
「皆気をつけろ!腕輪持ちがいるぞ!」
『腕輪持ち!?』
・・・・・何故かあっちの学園の生徒の皆が腕輪に恐れ戦いている?
「えっと・・・・・腕輪がどうかしたの?」
「お前達の学園は腕輪の価値が知らないのか!?俺達にとって腕輪を持たされると
言うことは鬼に金棒、つまり最強の意味を表す!」
「ええええええええええええええっ!?」
蒼天だと腕輪持ちが最強ってどんだけ腕輪の存在は凄まじいんだ!?
「機能は様々だが、腕輪の機能を使えば戦いは有利になるんだ。
神月学園の吉井明久か・・・・・その名前は覚えておくぜ」
何故か尊敬の眼差しを送られてくる!?
止めて、僕はそんな尊敬をされるほどのことはしていないよ!
「・・・・・知らないとはいえ、明久が蒼天の学園に尊敬されている」
「バカの明久がのぉ・・・・・」
「吉井君、凄いですっ!」
姫路さんもそんな目で見ないで!ムッツリーニと秀吉みたいなことを言ってくれれば
まだ恥ずかしい思いをしなくて済むんだからぁっ!
「尋常に勝負!」
「あぶなぁっ!?」
剣を振ってくる相手に鍔迫り合いで防ぎ副獣で横から攻撃しよう!
上段からくる剣を防いだ瞬間に横から剣を横薙ぎに払った。
「っと、危ない!」
僕の攻撃をあっという間に弾き後退した刹那に前へ飛び込んできた、って速っ!
突き出してくる剣を横にずらしてカウンター気味に拳で殴った。逃げられる前に抑え込む!
「くたばれっ!」
「簡単にくたばるか!」
けん制さてしまい、副獣による攻撃をかわされた。むむむ・・・・・戦い慣れているな。
「こちとら、毎日授業や試召戦争で慣れさせられているんだ」
「聞くけど授業で召喚獣に何をさせているのさ」
「普通に問題用紙を代わりに書いてもらったり、体育の時なんか一緒に長距離走をしたり、
野外授業で野菜の栽培もしているぞ。掃除の時なんて本当に便利だけどな」
「なにそのオール召喚獣!?自由すぎないそっちの学校は!」
「普通だと思うが?」
いやいや、こっちに留学してみなよ。
そっちの学校とは絶対に真逆な学校生活をしているんだからさ。
「ま、そう言うわけでそっちの学校とは違い、こっちは全員慣れているんだよ
召喚獣の操作には」
飛び掛かりながら剣を振り下ろされた。さらに曲芸のように召喚獣が踊る。
くっ・・・・・責めづらいな・・・・・。
既にFクラスの主力メンバーぐらいしか生き残っていない。一緒に戦ってくれている
Sクラスの、大和達と親しい九鬼君達も一緒だが。何とか保っている状態だ。
「ええい、これ以上この先に通す訳にはいかんぞ!」
保健体育
神月学園 九鬼英雄 501点 VS 371点 鬼塚良助 唯我独尊学園
九鬼君も黄金の鎧を纏った自分の姿をフォルムした召喚獣を動かして怒濤の攻撃を
繰り広げている。
ここはムッツリーニのステージでもあるから有利なはずなんだけど・・・・・。
『おいムッツリーニ。そんなにバンバン腕輪を使って点数を消費させんな!』
『回復試験ができないから気を付けて!』
『・・・・・ハーデスがいれば・・・・・!』
腕輪の力は点数を消費してこその大技を発揮できるシステム。今回の戦争は回復試験がない。
だからそう易々と大技を放つなんてできない。まさしく奥の手という奴だろう。
地道に操作して戦う他がないからパワーアップした武器で相手を倒し続ける頃だけ
集中しないと―――と、思った時に携帯が鳴りだした。何だろう。ハーデスからのメール?
【To:死神・ハーデス From:吉井明久 これから本陣は敵本陣に奇襲を掛ける。
お前らも船を動かして一緒に行動してくれ】
「な、なんだってっ!?」
「な、なんだ?どうしたんだ?」
「大和・・・・・これ」
丁度近くにいた大和にもメールを見せると大きく目を見開いた。
「マジで・・・・・?」
「大和、どう思う・・・・・?」
目を疑うハーデスからのメールに僕は友人に目を向けた直後―――この船が勝手に
離別して動き始めた。
「なっ、船が勝手に!?」
「誰だ、船を操作しているのは!」
敵もいきなり動いたこの船に驚きの色を隠せないでいる。僕らだってそうだ。
だけど、敵はこの船に孤立したようなものだ。この好機を逃さないと皆で協力して
召喚獣を操作し、敵をこの船から追い出した。それから今の状況を確認する。
「敵はいなくなったが、この船が勝手に動くなんて・・・・・」
「一体誰が・・・・・」
訝しむ僕ら。誰かがレバーと操舵のところに行かなければ動かないはずの船だ。
だとすると僕ら以外にこの船にいると言うことになる。船は完全に繋がっている
敵と味方の船の横に進んでいる。敵味方が入り混じって召喚獣で戦っている
様子が良く見える。だけどこれって・・・・・。
「―――隣を見ろ、俺達の本陣が!」
「へ?」
翔一が指摘しつつ指差す方へ僕や他の皆は向いた。悠々と海を進んでいる
一回り大きい船が僕らが乗っている船の横に並ぶように先行していた。
その甲板に見知った面々がこっちを向いて立っていた。
雄二はそのうちの一人、高城先輩に叫んだ。
「これはどういうことだ!どうして本陣が単独で動いている!?」
「これから我々は敵本陣に奇襲、玉砕覚悟で襲撃しに行きます」
「奇襲?他の皆はどうするんだ!」
「あそこに本陣を構えていては敵が押し寄せてくるのも時間の問題です。
ですのでこのような方法を取らせてもらいました」
涼しい顔で高城先輩はそう述べたのだった。
「狡猾な先輩だな。だが、それもしょうがないか」
「大和?」
「俺達が苦戦するほどの相手だ。他のクラスや先輩も相当苦戦に強いられているはずだぞ。
真正面からの攻撃が難しいなら別の方法で攻めていくしかないってことなんだからな」
「でも、何で僕らが一緒に奇襲しなくちゃいけないの?」
「・・・・・多分」
大和は何か言いかけた時、大和は何かを見て口を噤んだ。彼の視線を辿って後ろに
振り返るとそこにハーデスがいた。
「・・・・・FとSの主力が集まっている俺達も参加させることで
その成功の確率を底上げする為だからだろう。違うか、ハーデス」
問うた大和にハーデスはこう書いて答えた。
『・・・・・これは高城先輩の作戦だ。が、多分そうだと俺は思う』
「お前が考えた作戦じゃないって言うのか。それはそれで驚きだな」
ハーデスがここにいると言うことは、この船を動かしたのはハーデス?
「玉砕覚悟って僕達、負けちゃうの?」
『・・・・・相手はマンモス学園。人数が多いのはしょうがない。
神月学園もマンモス学園だが、召喚獣の操作歴は唯我独尊高校の方が一枚上手だ』
高校生になって直ぐ召喚獣を操作する蒼天の学園。それが三年生まで通えば操作が
向上しない訳がないんだ。僕らの学園も一年生から操作できるようになれば
きっと対等な戦い方をしていられただろうにね。
船が進む先は一回り大きい敵の船に向かっている。けれど、敵側もバカじゃないようだ。
何隻か船が動き始めてゆっくりと僕らに近づいてくる。
『・・・・・邪魔はさせん』
ハーデスがポツリと呟いたと同時に凄い脚力でこの船から跳んで向かってくる
敵の船に乗り込んだ。
「おいおい、ああいうのって有りだったのか?」
「それ以前にモモ先輩ぐらいじゃないとあんな芸道できないでしょう」
「んで、当のモモ先輩は?」
「・・・・・ハーデスと同じことをしているよ」
何時の間に!?というかあの先輩はFクラスだから一人じゃ負けちゃうんじゃないか?
「いや、姉さんは頭が良い方だから狙っていけばAクラスぐらいまではいけるぞ」
「口に出ていた?」
「顔に出ていたぞ」
そ、そうなんだ・・・・・それにしてもあの先輩がね・・・・・。
「でも、そういう大和だって頭が悪いイメージはないけどね」
「そうか?」
「うん、なんというか能ある鷹は爪で切るって感じに」
「それを言うなら能ある鷹は爪を隠すだ明久。だが・・・・・案外そうだったかもな俺って」
ん?どういうこと・・・・・?
「・・・・・今度から真面目に勉学を励んで備えよう」
大和は何か思いつめた表情で漏らしたのだった。どうしたんだろうと思うけれど
今は戦いに集中しないと。ハーデスと川神先輩の方に視線を向け直すと、
あっという間に敵の船を奪っていて青い旗を建てていた。僕らが乗っている船の前に
ハーデスが乗っている船、本陣の船の前に川神先輩が奪取した船が護衛するかのように
並んで敵本陣まで海を駆ける―――。
『なるほど・・・・・奇襲ね。しかも本陣の船で来るなんてなにを考えているのやら』
『負けることを悟っての玉砕覚悟ってところじゃない?』
『こんな無謀な手段をあの人が思い浮かんでも直ぐに実行するとは思えませんが・・・・・』
『敵の総大将角の誰かが決めたんじゃないかな?』
『で、私達はどうする?』
『向かってくるならば、こちらから打って出ないわけにはいかないわ。
私達本陣も出るわよ。そのうち他の味方が気付いて駆けつけてくれるでしょうし』
『なるほど、そういうことね』