Sクラスの人達と九鬼君のお姉さんがボク達と同じ目的でイッセー君の家に泊まりに
来たことを知って数十分。イッセー君は夕食の準備に取り掛かっている。
一緒に林冲ちゃんと作っているその様は・・・・・。
「何だかあの二人、夫婦みたいだねー」
『・・・・・っ』
これだけでも水面下で激しく反応する人達だと知った日はない。
どれだけあの人に慕っているのか分からなくもない、
『イッセーさん、鍋の下準備が整いました』
『ありがとう』
『それとこの油揚げ―――』
『あっ、それを俺の前に出すな!』
『え?』
ポンッ
『それをいただくのじゃぁああああっ!』
『えっ?きゃあああああああっ!』
ドンガラガッシャアアアアアアアアンッ!
「・・・・・なんか、いきなり久しく見ていないヒトが現れたね」
「あのヒト・・・・・たしか玉藻って名前だったわね」
「狐じゃから油揚げに反応してしまったからかの?」
「・・・・・多分」
ボク達は会ったことがあるからそんなに驚きはしないけれど、他の皆はそうじゃない。
突然現れたセーラー服の少女に目を丸くしている。ま・・・・・当然な反応だよねきっと。
「・・・・・夕飯の準備ができたぞー」
「あ、あの・・・・・今出てきたヒトって誰なんですか?」
「・・・・・俺の姉的な人だ」
「お、お姉さん・・・・・?そんな人いるなんて聞いたことが・・・・・」
「そう言う設定だ」
伊達ちゃんとイッセー君の会話のやり取りはそれで終わり。林冲ちゃんと鍋や食器、
箸などとテーブルに並べ置き終えれば席についた。イッセー君の隣には当然のように
玉藻さんが座った。だけれども、玉藻さんのことを知らない人達にとって気になる
対象だから誰かが必ず聞いてしまう。
「イッセー、そ奴は何者だ?」
「俺の姉兼師匠的な人」
「・・・・・師匠?」
「そうじゃぞ。クロウ・クルワッハと一誠を育てた玉藻様じゃ」
えっへんと胸を張って(しかも巨乳)自慢げに言う妖怪の玉藻さん。
「イッセーさんに師匠がいたんですね」
「言っておくけど最初から強くなかったからな?」
「他にもお主を鍛えた者はいるが・・・・・こ奴らには関係のない話しじゃな」
むっ・・・・・それはちょっといただけない発言だね。ボク達はイッセーくんの彼女なのにさ。
「関係なくはないぞ。我は一誠と結ばれるのだからな」
「妾が許さん。一誠の姉としてお主のような輩に一誠を渡さんのじゃ」
「ならば、我を認めさせるしかなさそうだな」
「暴力で解決しようと思っておるならば笑止千万。
―――この場にいる全員と戦っても妾の方が強いからの?
無論、一誠を除いてじゃがな」
不敵な物言いに豪語。玉藻さんは嘲笑を浮かべながら九本の狐の尾を広げだした。
「・・・・・貴様、何者だ」
九鬼さんが警戒心を抱いて席から立ち上がった。英雄のクローンの皆もだ。
「やれやれ、相手の名を知る時は自分の名を言ってからじゃと相場であろうに。
それすら頭に回らぬのか?まぁ、ずっと一誠の中にいたから名乗らんでも知っておるわ」
「どういうことだ・・・・・」
「―――妾は赤ん坊ころからずっと一誠の魂に取り付いている妖怪じゃからな。
じゃからイッセーのここから外の景色をテレビを見ている感覚で見ておったわ」
イッセー君の魂に取り付いている妖怪・・・・・?それは初めて知ったよ!?
というかずっと見ていたってことはボク達のあんな時やこんな時も・・・・・!?
「妖怪だと?フハハ、冗談が過ぎるぞ」
「俺が本当だと言っても?」
「イッセーの言葉なら信用できるな」
「・・・・・妾の言葉に信用の欠片もないと申すのか小娘っ」
あ・・・・・玉藻さんがショックを受けた。
「というか玉藻。いきなり正体を明かしていいのかよ」
「お主は妾のものじゃと言う自己アピールをしたかったから別にどうでもよい。
それよりも早く鍋料理を食べたいのじゃ一誠」
尻尾が忙しなくフリフリと動かし始めた玉藻さん。
イッセーの前だと態度が違うねー。
苦笑を浮かべ「しょうがないな」と言いつつ
「そうだな。冷めないうちに食べるか」
「納得はしていないが、久方ぶりのイッセーの手料理だ。堪能しよう」
「いただきます!」
イッセー君の言葉で楽しい鍋パーティが始まった。
『お邪魔します・・・・・ってもう食べ始めているのか』
『しかも鍋・・・・・私達も食べます!』
エスデスちゃんと遼子ちゃん達も直ぐに来てまるで女子会を開いたような雰囲気になった。
「・・・・・ワシは男じゃぞ」
「俺もだ」
気にしない気にしない。
「―――さて、イッセーさん。色々とお聞かせ願いたいことがあるんだけど」
「弁慶・・・・・どうして羽交い締めをしながら俺に問う。
信長と正宗も俺の両腕に抱きつくのもだ」
「「逃がさない為です」」
「「・・・・・」」
・・・・夕食後、食器類の後片付けは公孫勝と史進を任せたイッセーが、
英雄のクローン達に囲まれた。
「イッセーさん。私達が学園に来る前からずっといたそうじゃない」
「・・・・・それがどうしたと」
「その時、大和達は気付いていなかったみたいだけどどうして正体を隠していたのか
教えて欲しいなと思っているんだよね」
「・・・・・仕事だ」
・・・・・もう何度も聞いたイッセーが正体を隠す理由。
イッセーは私達に説明した台詞と同じ言葉で英雄のクローンの五人に告げた。
「なるほどな。確かに、蒼天の王という立場の者が堂々と学校を通うなど
世間が騒ぐに決まっている。お前の言動も理解できなくはないな」
「そこはハッキリと理解できると言って欲しいもんだな。ま、そういうことだ」
「でも、私達に教えてくれたっても良いじゃない?」
「教えたところで、ボロがでる可能性が低くないんだ。それに、いままで距離を
置いて接していたお互いが急にくっつくなんてあまりにもおかし過ぎるだろうが」
・・・・・私はおかしくはない。直ぐに死神は私を助けてくれた
あの人だと直感で察してくっついたから。
「そこんところ、英雄は分かってくれたから今まで通えていたんだ」
「英雄君も知っていたの!?」
「うむ、直接英雄に訊いたら目を丸くしておったわ。
まったく、姉である我にまでイッセーから釘刺されていたとは言え少しショックであったぞ」
「教えたら教えたでお前は直接俺に会いに来るだろうが」
「当然だろう。お前は我の夫と成る男だ。
―――お前が我が九鬼家従者部隊序列1位になる前から決めていたのだぞ」
・・・・・イッセーが、あの財閥の従者だった・・・・・?
「なんじゃと、それは本当かのイッセー」
「ああ、大和達がまだ小学生だった頃にな。クラウディオ・・・・・あの銀髪の爺さんにスカウトされたんだ。
数年の間、九鬼家の従者として働いていたぞ」
「全然知らなかったよ・・・・・」
「そうね、意外だわ。執事なんてに想像もしなかったわ」
・・・・・愛子と優子の目が丸くなっていた。イッセーの昔の話がもっと聞けるかもしれない。
「・・・・・イッセーは強いのに序列一位って?」
「金髪の爺さんが序列零位だから、まだ空いていた位が序列一位だったもんで
俺がそこに収まったんだよ。本当なら俺は百回以上あのクソジジイを倒しているから
実力だけでも序列零位だろうがな」
「若い頃からヒュームは九鬼家に仕えておったからな。
やはりそう簡単には序列零位などに昇格はできんのだ」
「今と成ってはどうでもいいけどなぁ」
・・・・・見てみたい、執事姿のイッセーを。だから、イッセーの目の前まで歩み寄って見詰めた。
「どうした?」
「執事姿、見てみたい」
「ほう、霧島財閥の御令嬢がそう言うとは思わなんだ。が、我も久しく見たくなった。
イッセー、あるのであれば執事服に着替えてはくれぬか?」
「マジで?・・・・・あー、分かった分かった。着てくるからお前らまでそんな目で俺を見るな」
・・・・・好奇心が宿した目で見続けるとあっさり折れたイッセー。
楽しみ、そのまま私の専属執事になって欲しい・・・・・。
~~~しばらくして~~~
「わぁ、久し振りに見ました!」
「懐かしいと義経は思う!」
「昔のまんまだねぇ・・・・・」
「ふはははっ!弁慶の言う通りであるな!」
・・・・・執事服に着替えてきたイッセーが私達の前に姿を現す。
ビシッとした服装に、ポニーテールに結い上げた真紅の長髪。
・・・・・その場で立っているだけでこの場の雰囲気を変えてしまうその姿に皆色めき立つ。
・・・・・うん、格好良い。
「イッセー、そのまま再び我の専属の従者にならぬか?」
「ならないしなれないからな。今の俺、王様だから無理だからな?」
・・・・・今日だけでも私の専属執事になってほしい。
そう思っているとイッセーが短い息を吐く。
「女全員風呂に入ってこい。林沖、案内よろしくな」
「分かりました」
・・・・・お風呂、イッセーの家で泊まるのは久しぶり。
着替えは皆と持ってきた荷物を隅っこに置いてある。
・・・・・あの中から着替えとタオル、パジャマを取り出して三階のお風呂場に行くだけ。
「なんだ、一緒に入らぬのか?」
「寝言は寝てから言え!」
・・・・・残念。
―――☆☆☆―――
『・・・・・ふぅ、いい湯だな』
『そうですね。それにイッセーのお風呂がこんなに広いなんて』
『九鬼家の共同風呂より広いね。おまけに遊び場まであるし』
『イッセーさん曰く、『風呂場でも楽しみたい』だそうです』
壁の向こうから聞こえてくる女子達の和気藹々な声、女子は綺麗好きな上に風呂も
好きじゃからイッセーの風呂は評価が高いはずじゃ。そして男子風呂に入っている
ワシとイッセーは。
「かゆいところはないか?」
「ん・・・・・気持ちいのじゃ」
互いの背中を流し合っている。所謂男の裸の付き合いじゃ。
こうしておると、イッセーと付き合っているという感覚が無くなる。
こういう付き合い方もまた良いもんじゃな。
『・・・・・』
『どうした霧島財閥の令嬢』
『・・・・・大きい』
『ふっ、羨ましいか?イッセー・・・・・いや、あの頃は旅人と名乗っておった
あの男を小さい時から育んできた想いがすくすく成長したのだ』
『・・・・・でも、イッセーは小さい胸が好きだって』
『・・・・・なんだと!?』
なにやら・・・・・あっちは女子トークを始めおったぞい。
『おや?大きい胸は嫌いじゃないって言ってたよ?』
『つまり、あの男はどっちが好みなのだ?』
『えっとぉ、密着感が好きだから貧乳派と自分で言ってましたよ?』
『もっと詳しく言いますと、相手と抱きしめる距離が少なければ少ないほど、
相手との顔を近づけれて良いとか言っていました』
『・・・・・我の胸では満足してくれぬと言うのか』
いや九鬼の姉上よ。イッセーは抱き合う距離が少なければいいと言うだけあって
嫌いではないのじゃが・・・・・。
『となると、この中で一番小さい義経が有利だってことだね』
『な、なななにを言っているんだ弁慶!?』
『むぅ・・・・・抱き締める時の距離か。
確かに大きな胸だと相手と抱き締める際にその分の狭さ広がるということだな』
『あの人と距離が縮まる・・・・・そう言う意味で貧乳は羨ましいかも』
「のう、イッセー。女子はあんなことを言っておるがいいのか?」
「別に俺は嘘を言ったわけじゃないし。でも、大きな胸が嫌いと言った覚えもない。
大事なのは相手との距離なんだ、相手と感じる互いの体温、温もりなんだ。
それを俺は好んでいるだけに過ぎない」
『・・・・・愛子と優子、羨ましい』
『えっと、アタシ的にはもう少し育って欲しいと思うのだけれど』
『そう?ボクとしては今のままが良いね。それに史進ちゃんと楊志ちゃん、
ユウキちゃんもおっぱいが小さいからイッセーくんとより身体全体で感じれるでしょう?
体温とか心臓の音とか』
『へっ?え、えっと・・・・・うん』
『恥ずかしいって、抱きしめられるのは』
『温かくていいんだけどねぇ~。最近は抱き締められていないや』
『なら、お風呂を上がったらイッセーくんに抱きついちゃおうよ。
今日は思いっきり甘えるよボクは』
工藤が断言した。後ろにいるイッセーは口の端を吊り上げていた。何やら嬉しそうじゃな。
―――ギュッ
「っっっ!?」
「ん・・・・・お前の体温、良い感じだ」
イ、イッセー!?なぜに抱きついてくるのじゃ・・・・・!?
「は、放すのじゃ・・・・・!」
「なんで?いいじゃん」
「は、恥ずかしいからに決まっておろうが・・・・・っ」
「男同士の裸の付き合いをしているのに今さらなことを・・・・・」
今それを申すのか!?それを言われたら急に意識をしてしまうじゃろうが!
『・・・・ふと思えば、あの壁の向こうは男子風呂か?』
『うん、そうだよ。今頃、イッセーくんと優子の弟くんが入っているんじゃない?』
『・・・・・ちょっと待って下さい。まさかと思いますが、私達の話声は筒抜けだと?』
『・・・・・イッセーは耳が良いから、聞こえているはず』
『逆に言えば、アタシ達もイッセーとウチの弟の会話の
筒抜けってわけだけど・・・・・聞こえないわね』
あ、姉上よ・・・・・何やら不穏な空気がここまで漂ってくるのは何故かの。
『・・・・・男同士の裸の付き合い。二人は全裸・・・・・』
『・・・・・優子?』
『ごめんなさい、ちょっと様子を見てくるわ。―――如何わしいことをしていないかどうかを』
姉上ぇーっ!?
「こっちにくんのかよ。羞恥心というのは無いのか」
呆れを通り越して感嘆を漏らしたような物言いで男子浴場に繋がる扉に目を向けた時。
『きゃああああああああっ!』
姉上の悲鳴が聞こえてきた。悲鳴?なにに悲鳴を上げるのじゃ?小首を傾げていると、
ハーデスがあっという間に扉を開け放って風呂からいなくなってしまった。
「だ、誰よアンタ!?」
「あぁ?んなこったぁどうでもいいんだよ。お前、この家に住んでいる女か?」
「違うわよ!それより、早く出て行きなさいよ!」
顔に大きなバツ印の傷跡がある眼つきの悪い男が脱衣場の扉を開け放った途端に出くわした。
キョロキョロと辺りを見渡すといやらしい笑みを浮かべ出す。
「あいつの目を盗んで奪われた帝具を取り戻しに来たついでに色々と
物色をしていたがへぇ・・・・・。女がいるじゃねぇか。
きーめた、お前ら全員はこのシュラ様の玩具にしてやる」
「なっ・・・・・!」
玩具ってなによ・・・・・!まさか、アタシ達を襲う気・・・・・!?
「優子、そいつから離れて!」
後ろから愛子の必死な声が聞こえた。勿論そうしたい!
だけど、目の前の男がアタシの身体に巻いたタオルを無造作に掴んで奪われてしまった。
「やっ・・・・・!」
「へへ、いい声で泣けよ女」
アタシを床に押し付けて覆い被さってくる。い、いや・・・・・いやっ・・・・・!
「助けて、助けて・・・・・(イッセー・・・・・)!」
「誰も助けにきやしねぇよ。外には俺の仲間が見張っているし、
なにより裸で俺を攻撃してくる女なんているとおもうかよ?
いたら速攻そいつから襲ってやるがな」
目の前の男が顔を近づけてくる。
こんな怖くて嫌な男にアタシは・・・・・アタシは・・・・・!
「へへっ、この世界から来てご無沙汰だから張り切って壊れるまで・・・・・」
「ご無沙汰だから・・・・・何を張りきるって?なぁ、シュラ」
男の表情が一変した。目を丸くして顔が強張ったその表情をさせる人物は・・・・・。
「俺は言ったよな。この世界の人間に危害を加えるなと。
―――強姦未遂であるが、よりにもよってお前は危害を加えちゃならない女をしてしまった」
赤くて大きな手が男を鷲掴みにしてアタシから遠ざけてくれた・・・・・タオルを腰に
巻いたイッセー。だけど、右肩から右手まで人間じゃない・・・・・赤い鱗に覆われている。
そう、強化合宿の時見せてくれたドラゴンのそれだ。
「覚悟、できているんだよな・・・・・?」
「ま、待て―――(バキバキバキッ!)ギャアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?」
「死ぬ覚悟を」
思いっきり男を握り潰すと同時に嫌な音が聞こえてくる。イッセー、本気で怒っている。
それもマジギレに等しい。
「・・・・・いや、ここで殺すのは忍びない。人気のないところでじっくりと、殺してやる」
「っ!?」
踵返してアタシに背を向ける。まさか、本気で殺すの!?―――ダ、ダメッ!
ダッとイッセーの背に飛び込んで必死に行かせないと留めた。
「殺しちゃダメ!」
「・・・・・」
「アタシは大丈夫!イッセーが助けてくれたから大丈夫だったから!
だから、だから人を殺しちゃダメ!」
「・・・・・これは前からコイツと決めたことだ。
決めたことはちゃんとしないと示しが付かない」
アタシの説得を聞き受け入れて・・・・・!受け入れてよ・・・・・そんな決めたこと
だからってそんなの・・・・・おかしいじゃない・・・・・!
泣きそうになっていたら、向こうから走ってくる足音が聞こえてきた。
「おい、今の悲鳴は・・・・・―――っ!?」
「お前ら・・・・・ちゃんと見張っていろって言ったよな?」
見知らぬ男の子と女の子達。イッセーと知り合い・・・・・?
だけど、顔を強張らせてイッセーを見て冷や汗を流している。
「ご、ごめん・・・・・シュラとエンシンがいないことに気付いたんだ」
「エンシンは」
「この家の玄関の前にいたからとっ捕まえた。
後はそいつなんだけど・・・・・ヤっちゃった?」
「いや―――これからだ」
イッセー・・・・・!
「・・・・・そいつをこっちに渡してくれ。今回は私達の責任だ」
「ああ、本当だな。お前ら、俺の大切な女が酷い目に遭ったんだ。どう落とし前をつけてくれる?
今の俺は―――物凄く苛立っていてお前らを殺しても良いと思っているんだ。
なぁ・・・・・お前ら諸共殺して良いか?」
「・・・・・本当にすまない。この通りだ」
名も知らない女の子が深く頭を下げた後に他の知らない人達も頭を下げた。
「・・・・・」
彼女達の誠心誠意の謝罪にしばらく静寂が包んだ。でも、舌打ちしたイッセーが静寂を破った。
グジャッ!
「アアアアアアアアッ!」
「イッセーっ!」
「足の筋肉と骨を握り潰しただけだ。連れて行け、それとエンシンも共犯として
牢の中にぶち込んでいろ。それと―――二度目は無いぞ」
「・・・・・本当に悪かったな」
アタシを襲った男をイッセーが放り投げて大きな身体の男の人が受け止めた後に皆いなくなった。
「・・・・・悪かった、優子」
「え・・・・・」
「どうしても許せなかった。頭では分かっていた、でも心が納得できない。
俺の大切な家族を傷つけた、傷つけようとする輩を許すことができない」
ドラゴンの手が普通の人間の手に戻って行く最中に謝罪された。
「怖い思いを、させてすまなかった・・・・・」
「イッセー・・・・・」
「・・・・・」
アタシから離れていく・・・・・。なんで・・・・・どうして・・・・・?
どうしてあなたはそんな・・・・・必死に泣くのを堪えて辛そうな
顔をするの・・・・・?
―――☆☆☆―――
「・・・・・元気を出すのじゃ、一誠よ」
「・・・・・」
「未遂とはいえ、主は守ったのじゃ。何も奪われてはおらん」
九本の狐の尾を生やす玉藻の全ての尾が玉藻諸共ハーデスを包ませている。
二人だけの空間を作り優しく母のように姉のようにやんわりと励ましている玉藻は
抱き締めた状態で何度も何度も言い聞かせ続けていた。
女子風呂から離れ真っ直ぐ自室に戻ったハーデスをずっと。
「・・・・・俺は浮かれていた」
「・・・・・そうじゃな、何時ものお主ならば直ぐに気付いておったじゃろうの」
「あいつらを守ろうとしていたのに、俺は浮かれていた。疎かにしていた・・・・・」
「分かっておるならこれからどうするべきことも分かっておろうな?」
「・・・・・分かってる。もう次は無いことも」
子供のように玉藻へ縋るハーデスの頭を優しく梳かしつつ撫でる。
「今のお主を今夜は添い寝したいところじゃが、妾の代わりをしてくれるものが現れた。
今夜はその相手と寝るが良い」
玉藻は蜃気楼のように消え、
ハーデスの背後に暗い部屋の中を静かに佇んでいたオレンジのパジャマ姿の優子。
「イッセー・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
声を掛けようにも無反応で、優子自身もなんて声を掛ければいいから分からない。
けれど、一つだけ方法があった。―――それはハーデスが求めていたこと。
優子は静かに足を運び、ハーデスを背中から抱き締めた。
自分の温もりをハーデスに伝わせようと優しくそして強く。
「アタシはもう大丈夫よ・・・・・だから、もう落ち込まないで」
「・・・・・落ち込んでいるんじゃない。浮かれていた自分が許せないんだ」
「・・・・・浮かれていていいじゃない。たまにはあなたも休憩ってものが必要よ。
あの時みたいに浅い眠りでしか眠れない状況なんて辛すぎよ」
「それを俺は望んだ。最初は全て両親を殺した相手を復讐する為に・・・・・」
「この世界はその人はいない。この世界は本当のあなたを知る人はいない。
それは悲しいことだろうけど、逆に思えばあなたを狙う人はこの世に存在しないのよ?」
静かに月明かりの下でハーデスに語る。何時になく優しい自分がいることを
自覚しながらも今はハーデスを励ます一心で口を開く、言葉を発す、語り続ける。
「ありがとう・・・・・また、あなたに救われた、
助けてもらった・・・・・だから、今度はアタシがお礼をする番よね・・・・・?」
「お礼なんて・・・・・いらない」
「アタシがしたいの・・・・・だから、イッセーのしたいことをしていいのよ?
アタシはあなたを全ての行動を受け入れる」
―――次の瞬間。優子の視界が反転して背中に柔らかい感触と衝撃が全身に広がった後に
覆い被された。ハーデスにだ。
「・・・・・イッセー」
「女が、軽々しくあろうがなかろうが、そう言うな。女としての品格が減る」
「あなただけよ・・・・・アタシがこういうことを言うのは」
両腕を挙げてハーデスの首の後ろに回すと引き寄せる。二人の顔の距離があっという間に近づき、どちらかが動かせば相手の唇と自分の唇がぶつかる。
―――しかしまた優子の視界が反転した。何時の間にか優子はハーデスの胸の中で抱かれていた。
「なら・・・・・お前の温もりを感じたい・・・・・」
「・・・・・甘えん坊ね。イッセーって」
「・・・・・俺は人の温もりがないと落ち着かないんだ」
「悪く言ったわけじゃないの。可愛いって思ったのよ?」
綺麗に笑い、再びハーデスの首の後ろに腕を回して身体と身体を隙間なく密着させた。
「温かい?アタシの身体・・・・・」
「ああ・・・・・温かい・・・・・とても安心する。これが・・・・・好きなんだ」
「なら、いっぱい堪能して・・・・・」
足も動かし、ハーデスの足を太股で挟み込み温もりを伝わせる。
「大好き・・・・・大好きよイッセー・・・・・世界で一番、好き」
「・・・・・優子」
自分の唇をハーデスの唇に押し付けた後に頬をハーデスの頬と擦り合う。
自分の身体に愛しい男の匂いをマーキングするように。
「・・・・・」
「なぁに?」
見詰めてくるハーデスを尋ねる優子の唇が封じられた。ハーデスの唇によって。
最初は軽いキス。それから段々と重ねる回数が増えて―――。
「んんっ・・・・・」
「んふ・・・・・」
二人の舌がどちらからでもなく絡み合い、相手の唾液を求め合い、
抱き締める腕の力が増していく。体温も熱くなり、二人の温もりが混じり合い
一つになる錯覚を覚える優子の意識が朦朧とし、思考が鈍くなりつつあることを
自覚してもハーデスとの熱いキスを止めようとしない。
「(ああ・・・・・これなんだ・・・・・愛子と翔子が病み付きになったキスって。
熱い・・・・・アタシだけじゃない。
ハーデスの身体も熱い・・・・・一つに蕩けちゃいそう・・・・・)」
ハーデスの腰に優子の両足が絡み、さらに密着が増した。
「(アタシの心と身体は・・・・・もうハーデスの物・・・・・)」
もう止められない、止まらない、止まる気はさらさらないと顔を左右に入れ替えながら
少し荒っぽく唇を擦り付け、強く舌を吸われる感覚を感じながら
強く抱きしめ合い・・・・・。
「「・・・・・」」
互いの顔が離れれば、銀の糸が二人の唇を艶めかしく繋がった。
「・・・・・優子、愛している」
「うん・・・・・アタシも・・・・・」
「・・・・・もう一度・・・・・」
「滅茶苦茶にして・・・・・」
「・・・・・分かった」
それ以降・・・・・二人の部屋から断続的に聞こえる熱い吐息は―――扉越しに聞き耳を
立てている面々達の顔を真っ赤にさせるのに十分だった。