バカと真剣とドラゴン―――完結―――   作:ダーク・シリウス

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騒四問

『姫路瑞希嬢。どうでしょうか、あれから考えてくれましたか?』

 

『考えも何も・・・・・私は今のクラスが大好きなんです。

ですから私のことは放っておいてくださいっ』

 

『ですが貴女方二-Fの設備はミカン箱やござのままでです。

そのような事態はご家族も望まれていらっしゃないのでは?』

 

『そんなことありませんっ!もしも次の試召戦争が始めたら私達二-Fクラスが

勝って良い設備になりますからっ!』

 

『死神・ハーデス君という無双の如く働き振りをする彼がいれば貴女が頑になって

否定的になるのも分かります。ですが』

 

『ですが・・・・・なんですか』

 

『私達三-Aクラスの代表もまた三-Sクラスをたった一人で倒す実力者。

彼らのどちらが本当の強者と思いますか?』

 

 

―――3-F―――

 

 

「くそぅ・・・・・揚羽さんめ」

 

「どうしたの百代ちゃん」

 

「ああ、ちょっと面白くないメールが来てな。それについて今思い出したら

悔しくてしょうがないんだよ」

 

「ふむふむ、どんなメールだったの?」

 

「イッ―――」

 

百代ちゃんの口を手で押さえた。危ない危ない。

 

「その名前は禁句だよん?」

 

「(コクリ)・・・・・モゴモゴ(分かった)」

 

手を離すと改めて彼の名を口にした。

 

「死神の家で一泊二日したってメールが来たんだよ」

 

「なるほど、死神君が大好きな百代ちゃんにとっては面白くない話だね」

 

「うん、そうだよあーもうー。今度の休みの日は私も泊まりに行くぞ絶対に」

 

「んじゃ、私もご同行させてもらうよん。一人暮らしだし何時でも泊まりに行けるから

気楽でいいんだよねー」

 

本当に悔しそうに顔を顰める百代ちゃんを見ながら口元を緩ます。

 

「ところで百代ちゃん」

 

「なんだ?」

 

「最近聞く噂話なんだけどさ、妙な人達がこの町にうろついているって話聞いたことある?」

 

「妙な奴ら?」

 

まぁ・・・・・一応、知っている人だけどね。顔を見た程度だけどさ。

 

「覆面と拘束具を身に付けている大男とか、白衣を着たオカマな男の人に

変な小動物を飼っている女の人、

男に熱い視線を送っている髪がリーゼントな男の人とか最近そう言う人が見掛けるんだって」

 

「変な奴らなんてこの川神市にいくらでも出没するだろう。私のところ、ああ川神院にな?

死神が面白い四人組を連れて来て一緒に稽古させて欲しいってやつらを連れて来たんだぞ」

 

「面白い四人組って?」

 

「身体を自由自在に操作するんだ。爪を長く伸ばしたり、体中の毛という毛を鋭く生やしたり、

身体がまるでタコみたいに柔らかいんだ」

 

そんな人・・・・・私は知ってるよん。その人達も川神湾の砂浜にいた人でしょう。

 

「中には凄いドMがいてさ。私の拳を食らっても逆に悦んで攻撃を食らいに迫ってくるんだ。

ある意味戦いたくない相手だったな・・・・・」

 

「へ、へぇ・・・・・そうなんだ。で、勝負は?」

 

「私の勝ちだ。今まで相手して来た挑戦達より遥かに強かったぞ。

で、そいつらはな?川神院の門下生として一緒に暮らし始めているんだ」

 

百代ちゃんは楽しげにその人達の事を話し続けた。死神君の行動は人を楽しませる

素質がある事はもう昔から知っている。

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

―――空き教室―――

 

 

HRも始まる前に空き教室でアタシと死神、その他にも彼に好意を抱く女子が集まって一時のプライベートを楽しんでいた。

愛子は対面で壁に背中を預けるハーデスの前に座り、アタシと極道さんは左右に腰を

下ろして彼の腕を抱き絞め、

代表とエスデスさんは床に伸ばされたハーデスの太股に頭を乗せて枕代わりにしている。

だけどこの中にいない人物が約一人、

 

「優子の弟君に悪いことしちゃってるね」

 

「しょうがないわよ。アイツまでくるとうるさくなるし」

 

『・・・・・後で可愛がると言ってあるから我慢してもらっている』

 

Fクラスの生徒達の大半が他人の恋愛や幸福に敏感で不幸のどん底に陥れる事を躊躇もない。

だから、会う約束をしてこうして密かに会っているのよね。

 

「こういう時間も悪くないな」

 

「これからもこういう時間を作ればいいじゃない?」

 

「・・・・・うん、私達だけの空間はとても大事」

 

彼氏彼女の関係だし、会いたいと思う時もある。誰にも邪魔する権利がないこの空間を

アタシ達は噛み締め、堪能したい。

 

 

シュッ!(文房具が鋭く投げられる音)

 

 

キンッ!(見えない壁によって文房具が弾かれる音)

 

 

あっという間に終わった目の前の光景にアタシ達は何が起きたのかさっぱり理解できなかった。

 

「え?なに?」

 

次の瞬間・・・・・床が揺れるんじゃないかってほどの地響きが起こって怒号も聞こえてきた。

 

 

『『『死神ぃいいいいいいいいいいいいいいいっ!』』』

 

 

なっ!黒い覆面を被った大勢の男子達が押し寄せてきたぁっ!?

 

『てめぇ・・・・・いい度胸しているなぁああん!?』

 

『同志土屋の情報通り』

 

『そのラブラブオーラを撒き散らしやがってぇええっ!』

 

『異端者には死を・・・・・!』

 

な、なんでここだとバレちゃったの・・・・・?というか土屋君の名前が出たよね?

アタシ達がハーデスから離れると彼はマントから玉を取り出して床に叩き付けた。

同時に大量の煙が発生して姿をくらました。

 

『おのれ、煙玉とは卑怯な!』

 

『追えっ!死神はそう遠くまで行っていないはずだ!』

 

『A班は一階から探せ!C班は三階!』

 

『『『おう!』』』

 

男子達は一斉に空き教室からいなくなった。そして残ったアタシ達は、

 

『・・・・・バカな奴らだ』

 

「うわっ!?」

 

「アンタ、逃げたんじゃなかったの?」

 

再び何もない場所から現れたハーデスの姿を捉えた。

 

『・・・・・そろそろ授業が始まる。優子達は戻った方が良い』

 

「・・・・・最後は邪魔が入ったから残念」

 

「そうだな。次は・・・・・体育倉庫にでも待ち合わせするか?」

 

「それでも邪魔をしに来られたら私達も対処しないといけないな」

 

そうしよう。じゃないと折角学校の中で接する時間すら無くなるなんて嫌だわ。

まったく、人の幸せを僻む暇があればもっと自分達を磨く努力をしなさいっての。

 

―――2-F―――

 

「む、無事じゃったのだな」

 

『・・・・・土屋の仕業らしいがな』

 

「すまぬ、止め切れんかった」

 

HRが始まる直前にハーデスと極道、エスデスが教室に入って来た。一部の男子を除いて

ハーデスを()りに行ったんだが返り討ちされたか。同情はしないがな。

 

『・・・・・』

 

「む?」

 

ハーデスは席に座る秀吉の傍に跪くと、口元の部分の仮面を外して秀吉の頬に唇を押し付けた。

 

「な、なにをするんじゃいきなりお主はっ!?」

 

『・・・・・したかったから』

 

「時と場所を考えるのじゃっ!」

 

『・・・・・なら人気のない場所ならいいんだな?』

 

ほう・・・・・こいつも本気か。ま、他人事の恋愛に首を突っ込む気はないが

俺を巻き込まないでくれよ。

 

「ところでハーデスと秀吉。お前らは休日何をしていたんだ?」

 

「なんでじゃ?」

 

「いや、お前らが俺達の誘いを断ったその日は明久の家で闇鍋パーティをしていたんだ。

お前の姉と翔子も工藤も極道とエスデスも誘いに乗らなかったからよ」

 

明久も同感だと頷くほどだ。ハーデスと秀吉は顔を見合わせてそれから頷きこう答えてくれた。

 

「ワシらはハーデスの家に泊まっておったんじゃ」

 

『・・・・・お前らに教えたあのリアルな体感ゲーム、

まだ完成じゃないけどそれをやらせていた』

 

「なに?あん時言っていたゲームがもうそこまで完成しているのかよ。

そう言う事なら早く言って欲しかったぞ」

 

『・・・・・付き合っている者同士、一緒に夜を過ごしたい時だってあるのさ』

 

あーそうかい。本当の理由はそっちかよ。

 

「秀吉、お前はついに至ったな(ニヤニヤ)」

 

性別の垣根を越えたと思い、秀吉にからかってみた。だからだろう、秀吉の顔から感情が消えて―――。

 

「・・・・・ハーデス」

 

『・・・・・了解』

 

秀吉の合図にマントから忌々しい玩具の銃を取り出そうとするハーデス。

だが、その対処方法は用意してあるぜ!

 

「食らうか、明久バリア!」

 

「ちょっ、貴様雄二!?僕を盾にするんじゃない!」

 

無駄な抵抗をするな!これは俺の男の尊厳を守る為、お前はその為の究極の盾となるのだ!

 

『・・・・・今度はこっちにするか』

 

 

ズルッ(巨大なバズーカ砲を取り出す音)

 

 

「「・・・・・」」

 

それを見て俺達は固まった。は?あれ・・・・・なんだ?

 

『・・・・・発射』

 

放たれた黒い弾丸は凄い勢いで俺達に直撃してそのまま壁にまで吹っ飛ばされ、

黒い球が弾けたかと思えばなんか粘々したもんに全身が張りついて身動きが取れない!

 

「なんだこれはっ!?」

 

「無関係な僕までどうしてぇっ!?」

 

『・・・・・ん、テストは成功だな』

 

おい!成功って何なんだよこれは!どうにかしろっ!

と叫んでいたら粘々は勝手に煙を立てて消失した。

 

「ったく、驚かせやがって」

 

「それってなんなの?てっきりまた性別を変える銃かと思ったじゃないか」

 

『・・・・・巨大人間獲り。また近いうちに大規模なゲームを行うって王様が考案した専用の道具』

 

あの王様・・・・・また俺達に何かやらせる気か。

ババァと組むと碌でもね事が起きてしょうがないぜ。

 

「で、ハーデス。例のゲーム、俺達にもやらせろよな」

 

『・・・・・まだ完成じゃないけどそれでも?』

 

「秀吉達もできたんなら俺達にもできるはずだぜ」

 

俺の指摘にハーデスは頷いて了承した。うし、今度の休みの日に次は俺達も泊まり込みだ。

思う存分に遊んでやるぜ。

 

「雄二達があのゲームをすれば直ぐにでも気に入りそうじゃな」

 

「それほどまで凄いゲームになってんのか?」

 

「うむ。凄いってもんではないのじゃ。なんせ空を飛べるのじゃからな」

 

 

『空を飛べる?』

 

 

俺と明久だけじゃなく、直江達まで反応した。だが、聞く前にチャイムが鳴ってしまいハーデスを

()りに行っていたはずのムッツリーニ達が教室に戻ってきたことで鉄人も直ぐに入ってきやがった。

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

「ハーデス、空を飛べるとはどういうことだ?」

 

授業が終わり休憩時間になるや否やキャップが気になる発言をしたハーデスに話しかけた。

スケッチブックでハーデスはこう書いて教えてくれた文字を見て俺は小首を傾げた。

 

『・・・・・リアル体感ゲーム、仮想現実世界。

ゲームの世界で俺達は空を飛んでRPGみたいな事をしながら

楽しく体験するゲームを開発している最中』

 

「んーと、つまりどういうことだ?」

 

『・・・・・俺達自身がゲームのアバター、キャラクターとなってクエストをしたりパーティを

組んでモンスターを倒したりとかそういうのをすることができるゲームを開発中なんだ』

 

・・・・・もう、ゲーマーが狂喜のあまり小躍りしそうなほどのゲームをこいつは

開発していると言うのか。とてもじゃないが信じられねぇぞ。

 

「ねね、ハーデス。そのゲームのキャラクターってどんなの?」

 

『・・・・・それは昼休みになったら教える。それより坂本雄二』

 

「なんだ」

 

『・・・・・試召戦争、まだやる気なのか?』

 

話を変え、試召戦争に。確かにそれもそうだな。俺も気になっていた。

どうなんだ?と視線に込めて見れば案の定の答えを発した。坂本は腕を組んで口を開く。

 

「当たり前だ。打倒Aクラスの目標は達成していないんだからな」

 

「じゃあ、これから僕達はどうするのさ?あっちも一騎討ちなんてもうしてこないと思うよ?」

 

「クラス全体のレベルで言えばAクラスの方が一枚上だろう。だが、こっちだって切り札とも言える

仲間がいるから負けた気はしていない。よって今回ばかりは人海戦で行くつもりだ」

 

2-Aとの試召戦争で初めて戦争らしい戦いができるわけか。これは楽しみだ。

 

「特攻隊はハーデスと極道、エスデスのS並みの点数の保持者チームにして」

 

「ふむ、妥当だな」

 

「後は一定の人数を組ませて挑ませ、特攻隊の大打撃を与えてくれるまで

徹底的な守備に固める予定だがな」

 

そのまま代表を討ち取ってしまいそうな勢いのある奴らだが、

 

「お前の(仮)彼女に見破られそうだなその作戦」

 

「誰が彼女だ!俺に彼女なんて存在しない!」

 

周りから向けられる殺気を感じているはずなのにこの男は無視して俺に食って掛かる。

 

「まぁ、他のクラスが俺達に挑んでくる可能性はないだろう」

 

「なんせハーデスが一番Fクラスの中で有名だしねぇ?」

 

『・・・・・赤ゴリラの坂本雄二には負ける』

 

「ハーデス、表に出ろ」

 

売り言葉買い言葉・・・・・やれやれ。

 

「・・・・・Sクラスの動きが気になる」

 

「あっ、そっか」

 

土屋の発言に俺達は懸念を抱いた。

 

「ハーデスがいる俺達に真っ向から勝負を吹っかけれそうなクラスと言えば

Sクラスぐらいだしな」

 

「最強クラスVS最弱クラスって展開な感じだねぇ」

 

「だが、私達は負けはしないぞ」

 

「そうだぜ!なにもハーデスだけがFクラスじゃないんだからよ!」

 

『・・・・・正直、厳しいところだがな』

 

はいそこ、テンションを下げない発言をしない!お前の言いたいことは分かってんだからさ。

個人はともかく、総合的に天と地の差でSクラスの方が圧倒的に有利だ。

一人一人、Aクラスの二倍か三倍の点数を叩きだしているからFクラスのクラスメートには

歯が立たない。バンバン召喚獣の腕輪の能力も使ってくるだろうしな。

 

「また、他のクラスに協力してもらう?」

 

「そうしたいが、同じ手をSクラスは通用しないはずだ。

さてさて、どんな作戦にしようか考える甲斐があるぜ」

 

野性味たっぷりな笑みを浮かべる坂本。この学校は一階も三階も行き来できる階段もあるし、

階段を防がないと挟み撃ちに遭う可能性が多いにある。

俺も少しぐらいは作戦を立てないとSクラス戦の戦いはかなりきつい。

頭の中で作戦を考えているとハーデスが徐に立ち上がって教室から出ようとする。

 

「どこに行くんだ?」

 

『・・・・・トイレ』

 

「と、それは建前でAクラスにいるお前の彼女に会いに行ったりしてな」

 

適当にそう言うと、ドドドドドッ!って激しい足音が聞こえた。

 

 

『待てや死神っ!今日という今日は絶対にお前を―――!』

 

『Aクラスの扉にバリゲードを設置するんだ!』

 

『野郎、自分だけいい思いしやがって。俺にも工藤の保健体育の授業を体験させろやぁ!』

 

 

・・・・・すまん、ハーデス。軽はずみな発言をしてしまったからに。

 

「直江、口は災いの元じゃぞ」

 

「木下、それは・・・・・」

 

「ん」

 

木下が一枚の紙を俺に突き出した。その紙には文字が書かれている。

 

『直江大和、後で女にしてやるからな』

 

・・・・・おおう。

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

―――昼食―――

 

 

「で、直江君は女の子になっていると言うわけなんだねー」

 

「・・・・・口は災いのもと」

 

「・・・・・深く深海のように凄く反省しております」

 

大和が女の子になったまま僕達と昼食を食べるその様は同情を感じざるを得ない。

 

「最近、アタシ達のクラスメート達が良く大騒ぎするわね」

 

「その理由はハーデスが主なんだけどな」

 

「ハーデス、お前も大変だな」

 

『・・・・・だから密かに会っているんだ。なのにどこかのバカが俺にからかったり

そんな話をしてくるからあいつらが嫉妬してくるんだろうが』

 

文字からしてハーデスは機嫌が悪いようだ。それでハーデスの文字を見た僕達は

気を付けようと心から誓った。ハーデスに恋愛話はタブーとして。

 

「・・・・・にしても、ハーデス」

 

『・・・・・?』

 

「お前、良い御身分だな」

 

―――ハーデスの周りは女子しかいないという点を雄二は指摘した。でもハーデスは

『・・・・・なんのことだ?』と小首を傾げて雄二の発言を理解していない様子だ。

秀吉のお姉さんが「なによ、悪い?」と言いたげな視線を送るしね。

 

「それよか、昼休みになったんだから朝のゲームの話を続けようぜ。空を飛べるって話の続きを」

 

翔一が話を切り出した。飛べるって単語が頭から離れられていない様子だね。

翔一の性格とその言動は子供みたいだから、心躍る事も好きなんだ。

 

『・・・・・秀吉』

 

手の平サイズの黒い物体をマントから取り出して秀吉に渡した。それを受け取った秀吉は

ハーデスの意図を察したのか立ち上がって口を開いた。

 

「ゲームスタートじゃ」

 

起動キーなのか、黒い物体が光り輝き秀吉を包んだ!えっ?えっ?どうなってんの!?

秀吉を包む光は直ぐに消失して美少女の姿が見れた。

男子制服を着ていたはずの秀吉はダークな色の服を着ていて髪も黒に染まっていた。

 

「秀吉・・・・・?」

 

「なんじゃ?」

 

「姿が変わったんだが、それで空を飛べるってのか?」

 

「これだけじゃ飛べんのじゃ。羽を生やして飛ぶんじゃよ」

 

「えっ、羽?」

 

「うむ」

 

頷いた秀吉は背中に光る黒い羽根を出したかと思えば宙に浮いて飛び始めた!

 

「うおおおおおおおおおおっ!」

 

いち早く翔一が立ち上がって心底感動したと目をキラキラ輝かしている。

他の皆も目を丸くして空を飛ぶ秀吉を目から離せないでいる。

少しして秀吉は屋上に降りて来たら羽が消えた。羽って自分の意思で出したり消したり

できるみたいだ。だけど空を飛べるということが僕達人間にとって一度は憧れていたこと。

だからそれが現実的に自分の力で飛べると言うなら誰だって楽しいはずだ。

 

『・・・・・ゲームのキャラクターは妖精。妖精は羽を生やしているから

当然空も飛べるようにした』

 

「今の秀吉がそのキャラクターの状態だってか?」

 

『・・・・・そうだ。今の秀吉は影妖精族(スプリガン)という妖精の姿で他にも火妖精族(サラマンダー)水妖精族(ウンディーネ)風妖精族(シルフ)土妖精族(ノーム)闇妖精族(インプ)猫妖精族(ケットシー)工匠妖精族(レプラーコン)音楽妖精族(プーカ)光妖精族(アルフ)の10つの妖精族の妖精族のキャラクターを選べれる』

 

・・・・・色々と名前が出て来て分からなくなってきた・・・・・。

 

「随分とキャラクターが多いが、全部空を飛べれるのか?」

 

『・・・・・飛べれる』

 

えっと、十種類の妖精が全部空を飛べるってことは分かった。後は―――、

 

「ハーデス、十種類のキャラクターの中で一番強い妖精は?」

 

大和が僕が聞きたいことを代わりに聞いてくれた。うん、僕もそれを気になっていた。

ゲームだから当然ステータスも存在しているはずだ。ハーデスに目を向けると、

 

『・・・・・プレイヤーの運動能力を自尊とするゲームだから、どれが強いとかそういう設定はしていない』

 

「え?どういうこと?」

 

『・・・・・戦う時は現実世界と変わらない身体能力でゲームをする。

つまり、ゲームの世界でも川神百代は武神としての力を発揮できる』

 

「それ・・・・・ハードじゃねぇか」

 

大和が溜息を吐いて頭を垂らした。ゲームの中でも川神先輩が強いってことは

僕はゲームの中でも弱いままってことなの!?

 

「それじゃ、川神先輩の方が有利じゃん」

 

『・・・・・そうとは限らない』

 

「え?」

 

『・・・・・川神百代が得意とする格闘スキルの攻撃技は無い。

あるのは魔法と様々な武器のスキルのみ。

だから、身体能力が高いだけで攻撃は武器か魔法で戦うしかない』

 

「逆を言えばワン子とクリス、京にまゆっちは武器を使っている奴らにとっては

大して変わらないってことか」

 

それでも武器なんて使ったことがない僕らにとっては初心者に等しいじゃないか。

 

「聞いていて何だか大変そうなゲームと印象だ」

 

『・・・・・楽なゲームがあると思うか?』

 

ははは・・・・・そりゃ無いよね・・・・・。

だけど良い点を挙げれば秀吉のように空を飛べれるようになる。僕も体験してみたいや。

 

「おいハーデス、妖精になれる道具ってまだあるよな?十種類の妖精の姿って実際どんなんだ?」

 

『・・・・・家に来れば教えれる』

 

「んじゃ、週末の日にお前の家に遊びに行くぜ!」

 

翔一の行動力は凄まじいや。でも、ハーデスも遊びに来て欲しいと暗に言っているし

週末が楽しみだ。

 

「ところでハーデス?」

 

『・・・・・?』

 

「俺は何時まで女になっていればいいんですかね?」

 

『・・・・・一生でも構わないけど?』

 

「本当に悪いと思っているから早く俺を男に戻してくれぇっ!」

 

同情するよ大和・・・・・・。

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

「あーようやく男に戻れたぜ」

 

「良かったわね耶麻ちゃん」

 

「ワン子、どうやらお前はきつーいお仕置きをされたいようだな?」

 

「きゃいん!?」

 

放課後と成り、僕らは帰る支度をしつつ雑談をする。

今日も一日何も問題も起きなかったし平和だった。

 

「おーい、明久。帰りにゲーセンでも行かね?」

 

「珍しいねガクト。ゲーセンをしに行くなんて」

 

「何でも、蒼天のゲームが何時ものゲーセンに増えるんだってよ」

 

「うん、僕達はそれをしに行こうって朝決めていたんだ。明久もどうかな?」

 

どうやら卓也の情報で興味を持って体験しに行きたいらしい。ふむ・・・・・そうだね。

 

「分かったよ。僕も行こうかな」

 

「うしっ、そんじゃゲーセンに行こうぜ」

 

「蒼天のゲーム。どうなんだろうね?」

 

「それは行ってみてからのお楽しみだろう!」

 

これら行くゲーセンは川神駅から十分ぐらいで着く場所にある。

学校からだとそれ以上掛かるけど、翔一達はゲーセンに行くことを決めて辿り着くまでの時間

なんて些細だと思っているだろう。大和達と途中まで一緒に帰ることを思い浮かべながら

先に教室から出ようとする翔一の背を追って行くと、

 

「失礼致します」

 

聞き覚えの・・・・・ある・・・・・声が聞こえてきた。だから翔一の足も停まった。

 

「死神・ハーデス君はおりますか?」

 

「こんにちはFクラスの皆さん」

 

声は二つ。男と女の声だ。翔一の背から顔を出すと、

三-Aクラスの高城先輩とエロい小暮先輩、

それにもう一人知らない長身で髪は背中まで伸びた銀色に目が金と血のように

真っ赤な男子がいた。この人って・・・・・誰だっけ?

 

「なんだ、先輩達じゃん。ハーデスに何か用か?」

 

「ええ、おりますか?」

 

「んや、とっくの昔に教室から出て行ったぜ。Aクラスにいるんじゃね?」

 

翔一の説明を聞いた先輩達は顔を見合わせた。うん、一分前に行っちゃったね。

 

「どうやら擦れ違ったようですわね」

 

「そうみたいですね。ですが、放課後になったばかりなのでまだいるかもしれません。

二-Aクラスに行ってみましょう」

 

ハーデスに何か用なのかな。それにあの見慣れない男子は先輩なんだろうけど、気になるな。

 

「高城先輩、一つだけいいですか?」

 

「なんでしょうか」

 

「先輩であることはなんとなくわかるんですけど、どちらで様ですか?」

 

僕は目を見慣れない先輩に向けながら問うと、高城先輩は頷いて口を開いた。

 

「この場にいる皆様も初めてお会いしたでしょうし、軽く紹介しておきましょう。

彼は三-Aクラスの代表、神月白夜君です」

 

三-Aの・・・・・代表?―――初めて見たんだけど!?

というか、あの蒼天の唯我独尊学園との試召戦争の時は

見掛けなかったような・・・・・。僕の心を読んだのか、高城先輩はこう言ってくれた。

 

「彼を知らないのは無理もないでしょう。彼は基本的に面倒臭い事は好まなく、

あの蒼天との試召戦争も顔を出さなかったほどですからね」

 

どれだけ面倒くさがり屋なんだろうか。

 

「そんな人がどうして?」

 

「死神・ハーデス君と一勝負してもらいたく」

 

アッサリと理由を教えてくれた。ハーデスと勝負だなんて・・・・・そんな無謀な。

 

「先輩よ、いくらなんでもハーデスと戦わせたら可哀想じゃね?」

 

「だな。ハーデスは強いこと先輩だって知ってんだろう」

 

ガクトも翔一も止めた方がいいと説得を試みたけど、逆に・・・・・。

 

「彼なら問題ないはずですよ。なんせ、神月君はたった一人でSクラスを全滅させた超人ですから」

 

高城先輩からの爆弾発言を聞いて、僕らは一斉に驚愕の声を上げたのだった。

 

 

―――2-A―――

 

 

「と、言うわけで死神・ハーデス君。お願いできないでしょうか?」

 

『・・・・・何がと言うわけだ?』

 

「教室に入って来て早々、話が飛んで何を頼んでいるのか分かりかねますよ」

 

「おや、そうでしたね。死神・ハーデス君、帰る前に彼と一勝負してはもらえませんか?」

 

高城先輩が銀髪の男子上級生に一瞥しながらそう言う。

その理由は勝負してもらいたいて言っているけど、

どうして急にそんなことを望んでいるのか分からない。

彼の強さは既に分かっているはずなのに。

 

『・・・・・面倒だから断わる』

 

「そこをなんとかお願いできませんでしょうか?」

 

『・・・・・そっちの先輩も面倒くさそうな顔をしているが?』

 

そう書いたスケッチブックと銀髪の上級生に人差し指で差すハーデス君に高城先輩は

「何をバカな」と小さく笑って振り返った。

 

「神月君、そんな顔をしていませんよね?」

 

「・・・・・(;一_一)」

 

してる、思いっきりしてるよ。これ以上にないほど目にも

「まだ終わらないか」と小暮先輩に訴えているし。

 

『・・・・・高城先輩』

 

「なんですか?」

 

『・・・・・これ、欲しい?』

 

 

ピラッ(姫路さんの水着写真)

 

 

「・・・・・」

 

『・・・・・欲するならタダで渡そう。ただし、俺の条件を満たせ』

 

「条件とは?」

 

高城先輩、その震える手は一体何でしょうか・・・・・。

 

『・・・・・金輪際、俺に模擬試召戦争を吹っかけないでくれ』

 

「いいでしょう。ただし―――」

 

―――姫路さんの浴衣姿、体操着姿、笑っている姫路さんの写真が増えた。

 

「いえ、何でもないです。大切な時間を割ってもらい感謝します」

 

『・・・・・じゃ』

 

ハーデス君から写真を受け取って交渉成立―――上級生の三人はボク達から離れて行った。

心なしか、高城先輩がニヤついているようにも見える。そんな二人のやり取りを見ていた優子が

呆れた面持ちでハーデス君に話しかけた。

 

「アンタ、何時の間にそんな写真を?」

 

『・・・・・クラスがクラスだから、交渉材料も必要になるんだ』

 

「アハハハ・・・・・苦労しているんだね」

 

「・・・・・世渡り上手なハーデスは大好き」

 

世渡りって言うのかな今のやり取りって・・・・・まぁ、言い方が悪いけど

邪魔者がいなくなっていいかな?

 

『・・・・・因みに、誰だったか分かる?』

 

「代表、優子は分かる?」

 

ボクは今年になってこの学園に来たばかりだから先輩達のことはよく知らない。

必然的に一年の頃からいる二人に尋ねた。

 

「うーん・・・・・神月って上級生は聞いたことないわね」

 

「・・・・・ハーデス以外興味ない」

 

『・・・・・それはそれで問題がある』

 

「そうだよ代表」

 

二人でも知らないか。だけど、何時までも気にしてたらどうしようもないし今は―――。

 

「えいっ」

 

ハーデス君との楽しい時間を優先だね。

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