―――蒼天―――
「我が君!我が君の麗羽はただ今戻りましたわ!」
宝石が散りばめられ、鮮やかで装飾が凝った服を身に包む綺麗な金の長髪をドリル状にした
瞳が翡翠の少女が満面の笑みを浮かべつつ空港のホールで待っていたイッセーに抱きついた。
「お帰り、数ヶ月ぶりだな。どうだった、世界を旅してきて」
「ええ、我が君に課せられたお仕事もちゃんとこなしつつ西へ東へ北へ、
南へ転々と旅をしましたわ」
「そうか。ご苦労だったが見ない間にまた一段と綺麗になったな。この綺麗な髪も潤っているぞ」
麗羽の髪を手にしながら微笑むイッセーを見た麗羽は初な反応をした。
「わ、我が君・・・・・そのようなことを仰らないでくださいまし。
は、恥ずかしいですわ・・・・・」
真っ赤な自分の顔を見られるのが嫌だと身体で表現して背を向けた途端に、
「姫ー、そろそろ飯食いに行こうよ。あたい腹減ってしょうがないぜ」
「久々に皆と再会かー。ま、元気でやっているだろうけどな」
「ご主人様、天照の完成おめでとうございます」
「ようやく夢の一歩が進めたな主」
お供と思われる少女達が話しかけて来て麗羽の顔を見られていた。
イッセーは五人の少女達を見詰め、満足気に頷いて言った。
「お前らが帰って来る日を待っていた。これでようやく全員が揃ったな。
旅の報告は明日でも良いから今日はゆっくり休みながら皆と会って来い」
「「「「「はい(ああ)」」」」」
―――☆☆☆―――
「アカメこっちにパスだ」
「させるかぁあああっ!くらえ、渾身のオカマアタックゥッ!」
「スタイリッシュ、貴方の胸に飛びこみまぁーすっ!」
「ぬおおおっ!?ブラート、それは卑怯だぞ!」
「コロ、ボールを捕獲!」
「きゅい!」
「球技に帝具の使用は禁止だぞーセリュー」
部屋の広大な一室でサッカーをやっている暗殺者メンバー。
何やら色々とサッカーのルールの常識を超えたことが度々見掛ける様子を審判
であるハーデスがイエローカードを挙げて生物型の帝具を退場させたのだった。
「いやー、この世界の遊びは色々あるんだなー」
「お前はしないのかレオーネ」
「ん?私は別の遊びを夢中だから良いんだよ」
「・・・・・俺の髪を弄ることがか?」
「ふふっ、男で髪が長い身内はいないからちょっとお姉さんが結ってあげようと思ってんだぁー」
揉み上げが長い短髪のスタイル抜群な女性がにこやかに笑みを浮かべハーデスの
真紅の髪を紐で結んでいく。
「言っておくけど、俺は本物じゃないから殺しても意味はないからよろしく」
「いやいや、殺しても死ななさそうな相手に挑んでも無駄だって
何度も思い知らされているからこっちは。私としては今の状況に満足しているし、
お前を殺そうなんて思ってないよ」
「ふーん」
「って、信用してないだろう」
「いや、今の状況に満足しているならランのように何か働くとかしないのかなって思った」
「暗殺ならお任せあれ」
そんな仕事だけは絶対に紹介してやらないとハーデスは溜息を吐いた。
「・・・・・」
レオーネが手を止めてハーデスの頭を撫で始めた。
「なんだ?」
「やー、こんな少年が私達の対象者なんて不思議だなーって思ってさ。
実際、お前は悪人ってわけでもないし」
「今更命を狙われる俺自身も疑問で尽きない」
「だーいじょうぶ。お姉さん達はお前の命なんて狙わないって。多分だけどな」
「油断できねェ・・・・・」
―――神月学園―――
ドドドドドドッ!
『待てこの野郎!』
『もう我慢できねぇっ!今ここで殺してやる!』
『俺達の前でいちゃつきやがってこんちくしょうがぁっ!』
今現在、ハーデスは嫉妬と怒りに狂ったクラスメート(男子)達から逃げ回っていた。
理由は木下秀吉に抱きついて桃色の空間を展開していたからだ。
日々、ハーデスの幸せを間近で見てきた男子達がついに堪忍袋の緒が切れ、大爆発。
鈍器を手にして相手が化け物だろうがなんだろうが
そんなの関係ねぇっ!そんなの関係ねぇっ!と襲撃し始めたのだった。走りだして直ぐに
一階へ降りたハーデスは男子達をとある場所まで誘き寄せると逃走を止めた。そして
前後にFクラスの男子達がハーデスを囲んだのだった。
『へへっ!もう逃げ場はねぇぜ死神』
『往生しろやっ!』
『さぁ、俺達に処刑されるんだな!』
ジリジリと詰め寄り追い詰める一行に対して、ハーデスは背後にある扉を開け放って中に逃げた。
そんな様子を見ていた一行が逃す訳がなく全員で追ったのが運の尽きであった。
「貴様らが自分からここに来るとはな。俺は感心したぞ」
『・・・・・へ?』
ハーデスが入って行った教室には西村宗一郎がいて、扉が閉まった音が聞こえてきた。
追いかけていたハーデスの姿はどこにも見当たらない。
「俺も忙しいがお前達のその気持ちに免じてじっくりと鬼の補習をしてやる。覚悟しろよ」
次の瞬間。生徒指導室と書かれたプレートがある教室から絶叫と悲鳴が聞こえてきたが、
大半の人間は「ああ、またFクラスの連中か」と認識されていたのは別の話。
―――2-F―――
「お前、えげつねぇ・・・・・」
「うん、あの鉄人の間に誘き寄せるなんてね」
「そのおかげで授業の序盤はグロッキー状態だったぞクラスメート達が」
『・・・・・自業自得だ』
授業の序盤はそうだったが、昼休みに近づくにつれ復活したクラスメート達。
その生命力はゴキブリ並みだろう。そして今現在、昼休みなので何時もの場所まで
歩いている最中だ。Aクラスの女子と合流を果たしつつ屋上に行く。
「死神、俺と勝負しろ!負けた奴は勝った奴の言う事を―――」
『・・・・・一日寝ていろ』
ドスッ!
包帯だらけの手が黒く染まった状態で神童の鳩尾に突き刺した。
それだけであいつはKO状態で廊下に倒れ込んだ。
更に鎖をマントから取り出して縛りあげるとスケッチブックに何かを
書き始めて神童の顔へ張りつけた。
『俺は女を自慢の―――で堕とす○○男優だ!近づく女は全て肉奴隷にしてやる!
と言う程の最低な男です。取り扱いの際には気を付けて触れてください。
触れた瞬間でも女を孕まします』
・・・・・お前、それはいくら何でもやり過ぎだろう。
―――屋上―――
「うーん、心地の好い風だわねー」
「そろそろ秋の季節だからね」
「秋か・・・・・読書の季節であるな」
「食欲の秋でもあるよね」
輪になって弁当を広げて食べ始める。心地の好い風に当たりながらも苦ではない。
「はい、ハーデス」
「今日の弁当はボクの傑作なんだよ」
「・・・・・私も頑張って作った」
ハーデスの彼女はもう一つの弁当を彼氏の前に置いた。もう、こんな光景は見慣れたな。
そして、
『・・・・・ほら食え、野郎共』
「うおっ!松茸があるじゃんかっ!」
「おお、豪華ではないか」
「わーい!ハーデス、何時もありがとう!」
「しかも秋刀魚もある。秋らしい昼弁当だなぁ」
俺達はハーデスの弁当を賄い食べさせてもらう。
学食派のガクトがこっちに夢中に箸と紙皿を用意するほどだ。
姉さんも大喜びである。俺もありがたく秋の名物食材を堪能する。
ありがたやありがたや・・・・・。
「美味しいわね・・・・・」
「ええ、本当に。彼が夫になってくれるとこんな美味しい料理が毎日食べれるのですね」
今回は小山と小暮先輩も参加だ。二人もハーデスの手料理に太鼓判を打つ。
当然だろうな。この場にいる全員がハーデスの料理の腕を認めている。
「秀吉、キミはハーデスに弁当を作らないの?」
「んむ?作るぞい。姉上と交代制じゃがな。今回は姉上がハーデスに弁当を作る番じゃからの」
「そっか。ハーデスも楽しみにしているよきっと」
「うむ。ワシも手によりを掛けて作るつもりじゃ」
木下は微笑む。・・・・・あいつ、完全に女の顔をしている。
男なのに女の顔をするなんて第三の秀吉・・・・・侮れない。
「そう言えば、ニュース見た?もうすぐ―――日食の日じゃない」
「日食・・・・・ああ、そう言えばそんな報道があったな」
『・・・・・』
島田の話にハーデスが徐に顔を空に上げた。アイツも楽しみにしているのかな?
「日食かぁー。僕、初めて見るかも」
「そん時は週末の日だ。なんなら皆で日食を見に行くか?」
「賛成!日食なんて数十年振りだし、滅多に置きない現象だから見に行かないと損よ!」
異論はない。日食を見る時はサングラスを掛けて観る必要があるな。
直接観ると眼球に太陽の光でダメージを与えてしまう。注意が必要だ。皆にもそう伝えよう。
『・・・・・』
ふと、ハーデスが立ち上がった。どうしたんだと思っているとアイツは無言で
屋上からいなくなった。
「・・・・・すまぬ、ちとトイレに行ってくるのじゃ」
「・・・・・私も」
「ボクも付き合うね」
「アタシはジュースを買ってくるわ」
続々と木下達がハーデスを追うように続いていなくなる。なんなんだあいつら?
「ハーデスが行くとあの四人もついて行くわね」
「付き合っているんだし、傍にいたいと思うんじゃない?」
「でも、秀吉達の顔・・・・・ちょっと暗かったような」
「ん?そうだったか?」
―――???―――
「ハーデスッ」
『・・・・・』
屋上からいなくなったハーデスを追って捕まえると、人気のない場所に連れ込んで訊いた。
「教えて・・・・・もしも日食の日、帰れたらアンタどうする気なの」
「「「・・・・・」」」
愛子と代表、秀吉もアタシの気持ちと同じはず。だから一緒に来てハーデスの
気持ちを確かめたいとここにいるんだ。
ハーデス・・・・・あなたはどうする気なの・・・・・?
『・・・・・もしもそうなったら・・・・・まだ分からない』
「分からないって・・・・・なんで?アンタ、元の世界に帰りたいって
言ったじゃない・・・・・」
『・・・・・やることはやる。だけどもしも失敗したら俺はこの世界に居続けるかもしれない。
だけど、成功して帰れるのだったら・・・・・その時にならないと俺は分からないんだ』
判断ができない・・・・・。そうか・・・・・彼は蒼天の王。自ら作った国を、
国いる家族や住民をそう簡単に手放すことができないのね。
だからその時にならないとと言っているんだハーデスは。
「・・・・・アンタ、アタシ達を置いて帰る気じゃないでしょうね・・・・・?」
『・・・・・それは・・・・・』
そんなこと・・・・・アタシは許さないわよ。
「ハーデス、アンタがもしも元の世界に帰る気ならアタシも連れて行きなさい」
『っ!?』
それが条件よ。この世界にいないアンタなんて意味がないじゃない。
「しかも、訳の分からない奴らがまたアタシ達におかしなことをするかも
しれないのに帰られちゃ困るわ。アタシ達、アンタよりも弱いんだもの」
卑怯だってことは分かってる。だけど、彼をアタシ達から離れて欲しくない。離れたくないっ。
「・・・・・お願い、ハーデス・・・・・」
「ごめん・・・・・キミの気持ちは知っているけれど・・・・・」
「離れたくないのじゃっ」
代表達もハーデスに懇願する。だけど彼は・・・・・アタシ達を抱き締めるだけで
何も言ってくれない。それがアタシ達の気持ちを分かってくれたのか
分かってくれないのか答えは分からない。
『・・・・・へぇ・・・・・そういうこと。ふふっ、面白い話しを聞いちゃったわ。
早速、味方を集めるとしようかしらね』