「・・・・・ん」
真紅の長髪の男性が意識を覚醒し、上半身を起こした。
隣に眠る真紅の神の女性の寝顔を視界に入れる。
「・・・・・懐かしい夢を見たもんだ」
男は静かにベッドから降りて締め切っていたカーテンを開く。眩く心地いい温かさを
与える太陽の光が暗い部屋を照らし、
「・・・・・もう見慣れたなこの世界」
「・・・・・イッセー・・・・・?」
「起こしたか?」
女性が男の名を発し起き上がった。上半身になにも纏わずにいて、豊満な胸が男の視界に映る。
様子を見ていると女性はベッドから降り、全裸のまま男の方に近づいた。
「何を見ているのだ」
「変わった町をさ」
「そうか・・・・・もうあれから時が経っていたな」
「ミカルのおかげで俺は誰も手放さずにできた」
「・・・・・我にとっては余計なことをしてくれたと思っているがな」
不機嫌に述べる女性を抱き絞めて、情熱的なキスをした。
「もう昔のことだ。今は充実しているだろう?」
「そうだが・・・・・」
「ほら、服を着て下に行こう」
「いやだ」
「なんでだ?」
「―――もっとお前を感じたくなったからだ」
「一誠、時間ギリギリになるまでガイアさんと一緒にいなくても」
「悪い、中々起こしてくれなくて」
「ガイア、ズルイ」
「悪いな。イッセーと子を作るのには激しくしないといかんのだ」
「はい嘘っ!イッセーくんを独占したいだけでしょう!」
「当たり前だが?(キッパリ)」
玄関先で集っている大勢の男性と女性達。皆、正装姿でこれからどこかへ行こうとしている。
全員が集合すると転移魔方陣でどこかへと移動した。
その場所は―――地球が見える月面のコロニーである。
「あっ、来たね!」
「ようやく来たか」
「アタシ達も今来たばかりでしょう?」
男性、イッセーにとって一時的に過ごしたクラスメート達が出迎えた。
「明久、二人はどうだ?」
「え、あ、うん・・・・・充実はしている、かな?」
「・・・・・雄二はよっぽど苦労している」
「ムッツリーニにだけは言われたくねェ!」
「お主ら、成長しても変わらんのぉ・・・・・」
「そう言う秀吉はすっかり女性らしくなってるじゃない」
「そうですよ」
「・・・・・ワシはハーデス・・・・・いや、イッセーの妻じゃからな」
「それはボク達も同じだけどねー?」
「・・・・・うん、そう」
「まだ信じられないけれど、彼の妻になるなんて思いもしなかったわ」
久々に再会を果たすクラスメート達とそこそこ話をしてイッセーは目的の場所に歩み寄る。
その場所ではパーティのような賑やかさが生じでいた。
「おっ、来やがったな!」
「待っていたよイッセーくん」
「主役がいねぇと始まらねぇって」
心から温かく出迎える中年男性達。イッセーは苦笑いを浮かべ、
中年男性達を通り越して階段を上る。
そして階段の頂上に装飾と意匠が施された豪勢で巨大な椅子が三つあり、
「悠璃、楼羅」
途中で足を停め、振り返って二人の女性へ手を伸ばす。
呼ばれた女性は笑みを浮かべその手を取り
イッセーと共に階段を上って三つの椅子に座った。
「―――これより、イッセー・D・スカーレット王の着任式を行う!」
「皆者、心より人王の言葉を静聴せよ」
装飾が凝った正装を身に包んだ二人の男性が真剣な表情とは裏腹に笑みを浮かべながら告げた。
イッセーはゆっくりと腰を上げてこの場にいる全員を見渡す。一人一人の顔を見て、
知人や友人、仲間、家族、かつて敵だった者達までもがこの場に集まっている。
「これは昔の話だ」
ポツリと短く漏らしたイッセーは昔の記憶を脳裏に浮かべながら、懐かしみながら語り始めた。
「小さい頃、俺は本当に弱かった。どれだけ修行をしても、血と汗を流しても当時俺と
同じ修行していた奴らに手も足も出せず負けていた上に苛められていた。でも、そんな
俺を何時も傍で励ましてくれた優しい女の子が二人いた。それが俺の妻である悠璃と楼羅、彼女達だ」
二つの席に座る女性に一瞥して言い続ける。
「だけど、彼女達だけじゃない。俺の世話をしてくれる綺麗で優しく美味しい料理を
作ってくれるメイドもいた。いつも仕事で家にはいなかったけれど温かい笑顔や楽しい話しを
絶えずしてくれた大好きな両親もいた。他にも両親の友達が遊びに来てくれて
つまらない日々なんて一度も感じなかったよ」
場から小さな笑い声が聞こえてきた。笑みを浮かべる者達もいる。
「そう、両親が殺されるまではその日々は続いた」
一気にシリアスな展開に入る。
「俺は誓った。両親を殺した者を復讐をすると。
その為にかつての幼馴染と交流を絶ち、不動と称されている真紅のドラゴンに弟子入りを
し始めてから色々な出会いと冒険、修行の日々を十年間も体験した」
その修行はスパルタ過ぎて三途の川を数えきれないほど行ったと付け加えて。
「俺が高校二年生ぐらいの歳になると傍で支えてくれていたメイドが唐突に学校に
行けと言われて本当、困惑したよ。そりゃ、メイドから英才教育を受けていて社会に
出ても恥ずかしくないほどの知識を得ていたからな。俺が学校に行っても修行の時間が
減ってしまうだけじゃないかとも思った。でも、今思えばそのメイドには深く感謝している。
だって、俺が知らない強敵や懐かしい友人と再会を果たせたから」
心当たりがある者達は深い笑みを浮かべ、さり気なく頷いていたのを確認した
イッセーの口は止まることは知らない。
「その日に友達ができて、強い奴と戦ったり、世界を混沌に陥れる敵と敵対してきた。
そんな日々と時間の中で俺に好きだと言ってくれる女が現れ続け、俺は全て受け入れた。
そして一つの事件を解決した。これで皆と平和に暮らせる。
そう思った矢先、俺は異世界に送られて数十年間その世界に生きることを強いられた」
それには知らない者達の顔に驚愕の色が浮かんだ。ざわめきは起きつつもイッセーの話に
耳を傾けるその意識が強い為、直ぐに静まり返った。
「その世界はこの世界にいる人間がもう一人いてな。最初は驚いたよ。
だけど、これはこれで生きることに楽しむ甲斐があると思って俺が知るもう一人の
人間達と交流することにした。とても個性的な奴らだった。
まだ小学生のくせに中二病とかどう思う?俺からしてみれば、その小学生は自分が他の奴らとは
全然価値が違う存在だと思い込んでいるただの可哀想な小学生だと思った」
ドッ!と笑いが生じた。約一名、顔を真っ赤に染めて羞恥心で身体を震わせていたのを
周りから励ませられたりからかれていた。
「でもま、そんな個性的な人間がいれば世界も面白くなるのは確かだ。
だから俺は異世界で一つ、自分の国を築き上げて王として異世界に生きていた。
最初は苦労したよ。外交、財務、環境、書類整理などなど一人でこなす日々が
何十年も慣れない仕事をした。王様の仕事はこういう事をしているんだなと
分からされていい勉強にもなった」
階段に腰を下ろして、イッセーは自分の話を聞く面々に語る。
「それから俺は有能な人材を集めるべく世界中旅をした。
そして東西南北、中央・・・・・五つの区にそれぞれ王としてその区を纏めてくれるように頼んで
任せた。因みに俺は中央区の王だった。四人の王とその幹部達を見守る為の位置として」
息を一つ吐き、間を置いて言った。
「国には他の国ではできない事を発展させてきた。
それはもうあの国に訪れた皆なら知っているはずだよな?
おかげで世界から良い意味でも悪い意味でも注目を浴び、無視できない国と成った。
その為俺は変装をしてとある学校に通い始めたんだよ」
苦笑を浮かべ、
「初めて通った駒王学園とは別の意味で楽しく、面白く、訳分からない事だらけの学園だった。
知らないとはいえ、王の俺に醜い嫉妬や怒り、憎しみで襲いかかってくる連中が現れるんだし。
ま?それ相応のお仕置きはしたが。だけど、しばらくして俺の命を狙う輩も現れ出したのも事実」
そこでざわめいた。イッセーが手で制止して問題ないと告げた。
「だって、俺・・・・・真龍と龍神の力を受け継いだ有り得ない人型ドラゴンだもん。
滅多に負けることなんてないし。全員返り討ちにしてやったぜ」
感嘆を漏らす面々。当然とばかり頷く面々がいた。
「そいつらは全員、一度死んだ人間や違う世界から召喚された奴らばかりだった。
それは全て、転生を司る神の仕業だったんだ。俺が元の世界に帰れないでいた原因も
その神の仕業でな。もうそいつらと相対したら神を七人も倒した。後に最高権力者と出会い、
二つの世界を一つにするように頼んだ。
そしてそれが今現在、俺達が住んでいるあの地球がそうだ」
イッセーがいる場所からでも見える宇宙空間に存在する青い星。
二つの世界が一つになっても変わらない大きさだった。
「一つになった世界は本当に色々と変わっていた。
本来あるはずがない国から宇宙まで伸びている巨大な建造物、
同じ人間の魂と記憶が融合されたことで二つの記憶が混雑して混乱していただろう」
腰を上げて豪勢な椅子の前に立った。
「そんな状態のまま月日が経って俺はついに人王として君臨する事ができた。
一時は俺が死んで時期人王の権利がはく奪された身でいたが、
前人王が俺に『お前が人王になるべきだ』。たったその短い言葉だけで俺を人王に仕立て上げた」
一番前の席に座っている厳格な中年男性を見やり、しばらく見つめ・・・・・。
「ありがとうございます。貴方の二人の娘は俺が死ぬまで未来永劫幸せにします」
深く、深く頭を下げて感謝の念を伝えしばらくしてから頭を上げた。
厳格な中年男性は腕を組んだまま目を閉じて何も発しないが、
イッセーはその反応をすることを分かっていたのか、
何も言わず神々しい大剣を亜空間から取り出して前方に突き立てた。
「俺はこの月から地球に住む全人類の皆に誓う。
次の時期人王を決めるまで俺は精一杯この世界を豊かにする。
貧困、環境汚染、温暖化現象、一つ一つ問題を解消して皆が最後に
幸せの中で死ねるように努力する」
だから、とイッセーは力強く叫んだ。
「皆も俺達に力を貸してくれ!一人では何もできないこともある!
俺は皆に期待しているし皆の心や力が一つにすればできないことなんてありはしない!
協力し合って助け合いをしよう!それが地球に住む俺達の最強の強さでもあるから!」
イッセーの発言から沈黙が流れた。―――それは、
「おう!協力するぜイッセーさん!」
「フハハハハッ!当然だ、民を幸せにするこそが我ら力ある者の義務である!」
「ボクも一生懸命頑張るよー!」
「はい、私も頑張ります!」
「俺達もだぜ!」
興奮気味に賛同するイッセーの友人、仲間、家族達が立ち上がった
結果沈黙を破るまでは。それが呼応して、拍手喝さいが巻き起こった。
「いやー、緊張したなー」
「お疲れ様です一誠さま」
「凄かったよ本当に」
「よくもあんな堂々と言えますね。僕だったら緊張していたかも」
着任式は数時間を費やして終了した。俺は家に戻ってパーティ状態になったリビングキッチンの中で一休み。
「お前ら、どんな仕事をするんだ?」
「僕は魔法科の先生になるつもりだよ」
「一誠さんの親衛隊長にでもなりますかね」
「ははは、俺の親衛隊長か。心強くて無防備になっていそうだ」
家族の一人の発言に笑みを浮かべる。
『ちょっとっ!このゲテ物料理を作ったの誰!?異臭を放ってるわよ!』
『ぎゃー!明久が倒れたぁっ!』
『・・・・・AEDの準備を!早く、明久が死んでしまう!』
『しっかりするのじゃ明久ぁっ!』
「・・・・・龍牙、俺の親衛隊長というより料理の親衛隊長になってくれないか?」
「ええ!?なんですかそれ!」
「所謂、キッチンの番人かな・・・・・・」
姫路辺りが勝手に作ったんだろう・・・・・まったく、作らせるなと
あれほど言ったのに・・・・・・。
「でも、色々と大変なことが遭ったけどようやくって感じだね」
「そうだな・・・・・本当、色々と起きて遭ったよ」
「はい、これからもそうなるかもしれませんが」
そう言う星の下で生まれたんだろう俺はと溜息を吐くと真紅の髪を揺らしながら
ガイアが近づいてきた。
「何を話しているか分からぬが一誠」
「なんだ?」
「その・・・・・格好良かったぞ。お前の晴れ舞台を見て・・・・・」
髪の色のようにほんのりと赤くなったガイア。二人の男性は場の空気を
読んだかのように離れて行き、俺とガイアだけの空間ができた。
「ガイア、ありがとうな」
「急にどうしたのだ」
「ガイアが俺を強くしてくれなかったら今の俺はいなかったのかもしれない。
だから感謝しているんだ」
強くガイアに感謝の念を送った。
「ありがとう、俺の愛しい真龍ガイア。本当にありがとう」
「一誠・・・・・」
「これからも俺の傍で生きてくれるか?」
不意に俺の背中に彼女が腕を回してきた。
「当たり前だ。お前は唯一我が認めていた人間だったんだ。
今さらお前から離れるような我ではない。お前が死ぬまで我はずっと傍におる。
それも何百という数の子を産んでもな」
「世界中が真龍だらけって怖ろしいな・・・・・」
「その内の一人の子供に次元の狭間の支配権を譲渡して
我は一誠の傍で生きるのも悪くはないだろう?」
「そうだな」
ガイアの顔を覗きこむ。整った顔立ち、俺と同じ髪と瞳の色。
俺の人生は全てこの『
―――完結―――