衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】   作:神宮寺志狼

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3月31日 冬木市にて
#1 選定の呼び声


「シロウ、貴方を─────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めたのはいつもの蔵だった。

 

「....夢か....」

 

聖杯戦争が終わってから、あの夜が明けてからまだ数年。

アイツが消えた日の事を未だに夢に見る。

やや寂しげな蔵の中を見る。

 

扉がやや開いていて、日が差したその場所にはツナギを来た俺だけが寝っ転がっていた。

 

 

夢の中の声の主は、いない。

────いるはずの無いその姿を探すこの頭をポカポカと殴った。

 

「っと.....そろそろ桜が来る頃だな。」

 

洗面所に行き顔を洗い、日課の走り込みを終えて居間に戻る。

そこにはいつもの、紫に髪が染まった綺麗な女子───否女性が立っている。

 

「センパイ、おはようございます。

今日はご自分で起きられたんですね?」

 

「おはよう、桜。

毎度お前の世話になる訳にもいかないからな。」

 

いつも通り桜と朝食を作る。

 

 

「先輩、今日の朝食は───」

 

「おっはよぉぉ!!士郎!桜ちゃん!もうご飯できてる!?」

玄関だと言うのに、調理場の水音さえかき消して耳に入ってくる藤姉の声には感服する。

 

「いまやってるよ!

ったく....あの腹ぺこ虎は....」

 

藤姉を加えて食事をする

 

「「「いただきます」」」

 

 

 

「そういえばさ、士郎。」

 

何か意味ありげな視線を感じて藤姉の方を見る。

 

「....何さ。」

 

「教員免許試験、受かったんだって?」

 

あぁ、その話か。

 

「え!流石です、先輩!」

 

「いや、何で藤姉が知ってるのさ。」

 

「いやー、そっちの方面に知り合いがいてね〜。

 

でも受かったのに知らせないなんて、水臭いじゃない。」

 

このこの、と言った感じで肘で小突いてくる。

尚、今は食事中なので大変行儀が悪うございます。

 

「まぁ、先輩の事ですから担当の学校決まってから、とか考えていたんでしょう?」

 

「相変わらず怖いくらい察しがいいな、桜。」

 

「まぁ、いつも通りの士郎というか。

あ、ついでに遠坂さんや慎二君、柳洞君にも知らせておいたから。」

 

 

「は?」

 

「これはパーティーの予感だわ~。」

 

「絶対食事が目的だろ!

というか、どうやって遠坂に?

 

あいつ今は外国なんだろ?」

 

「どうやってって、電話だけど?」

 

 

それもそうか。

 

電話なら海外でもやり取りできる。

 

 

「まぁ、携帯の番号も貰ったんだけどさ、な~ぜか、繋がらないのよねぇ~。

 

『士郎が馬鹿なことした時は連絡ください』って言ってたのに。」

 

 

「遠坂が、ケイタイ...?」

 

桜がキョトンとした顔で俺を見る。

 

「先輩、姉さんの連絡先知らないんですか?」

 

 

いや、むしろ遠坂が携帯電話を持っているイメージがつかないレベルなんだが.....。

 

「あいつって、機械音痴な所あったろ?

携帯なんて持たせて大丈夫か?」

 

顎に指を当てて考える桜。

 

「そういえば姉さん、何かと私に機能や操作の事を聞いてきました。

 

もしかしたら、先輩に努力している姿を見せたくなかったのかもしれません。」

 

桜はあくまでも「使えるようになった」とは一言も言わなかった。

VHS(ビデオテープ)でのテレビ番組の録画さえ出来ない奴だ。

 

最近はスマートフォン、なんて液晶タップ物も出始めているのに

 

「あぁ。

あいつ変な所で意地っ張りだしな。」

 

納得した、したが、藤姉が「鏡を見て同じこと言ってきな」と言わんばかりの顔をしてこちらを見ている。

 

 

 

「でも、まさかホントになっちゃうなんてねぇ....。」

 

 

にまにま、と言った感じの表情に変え、藤姉は続けた。

 

 

 

 


 

回想

 


 

 

聖杯戦争という名の殺し合い(正義の味方の舞台)は終わり、結局、振り出しに戻ってしまった。

 

 

 

 

「だって、誰かの為になりたい、っていう思いが、間違えのはずがないんだ。」

 

そう、遠坂に言った。

 

 

 

言峰綺礼は言った。

 

 

『正義の味方には倒すべき悪が必要なのだ』

 

 

俺はそんなもの望んじゃいない。

 

 

────正義の味方─────

 

親父(切嗣)の言う『片方しか救えないエゴイスト』とはもはや別物を目指していたことに気がついた。

 

 

いや、元より違っていた。

 

 

『そうだ、

誰かを助けたい、という願いが綺麗だったから憧れた。』

 

『誰もが、幸福であってほしい願いなどおとぎ話だ。』

 

アーチャーに見せつけられた。

 

未来の自分(エミヤ)を。

 

何度も何度も人を助け(殺し)、摩耗し、絶望し、崩れ落ちたその歯車(守護者)を。

 

 

 

 

俺がするべきことは─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな時に藤姉に進路面談で呼び出された。

 

 

『士郎はなりたい職業とかないの?』

 

 

『いや、特には──』

 

 

世間で言う『正義』を守る職業なんていくらでもある。

 

でもその全てが万人の正義で、肩入れした方しか救えない。

 

 

俺が望む、『セイギノミカタ』とはかけ離れている。

 

『強いて言うならNPOとかNGOとか、かな?』

 

 

そんな俺の答えを聞いた藤姉は頭を抱えた。

俺のことを心配しての事だろうか?

 

かと思えば何かを思いついたように、その言葉を口にした。

 

 

『ならさ!士郎!!教師に興味無い!?』

 

 

 

『は?』

 

 

 

なんでさ。

 

 

 

『俺、人に物を教えるの得意じゃないぞ?それは遠坂や桜の方が向いてる。

それに興味なんて───』

 

藤姉は人差し指を振って「ちっちっ」と舌を鳴らした。

 

『教師を舐めちゃダメだぞ~。

 

なんせ教師っていうのは世界平和に繋がるんだから!』

 

 

『はぁ?どうしたらそこに繋がるんだよ。』

 

俺の質問に藤姉はふざけた口調ながら真剣に答えた。

 

『士郎、今この世の中、世間、色々あるけど。

いい時代を作っていくのって、なんだと思う?』

 

 

 

『そりゃ首相だったり行政とか政治家とか大人とかじゃないのか?』

 

 

『違うのよ。

 

いい?士郎。

 

良い時代を作っていくのはね──────』

 

 

 

 

 

「『次の世代を担っていく子供達』か......」

 

 

藤姉は「子供達への正しい教育」こそ、がいい未来を作っていく。

そういったのだ。

 

『基本優しいし、間違っていたら怒ってあげられる士郎ならいい教師になれると思うんだなぁ~これが。』

 

 

その日は1日中悩んだ。

 

 

蔵の中で座り込み、俺に魔術を教えていた時の親父(切嗣)を思い出す。

 

真剣だが、成功した時には笑って褒めてくれたっけな。

 

その癖俺が魔術を会得する事自体には反対していたのに。

 

 

あの時の切嗣も確かに俺の憧れた────

 

 

 

「決めた。」

 

 

 

─────────────────────────────

 

 

 

そうして俺は教師になったはずだった。

 

しかし、その教師生活は想像したものとは一切合致しないものになる事をこの時はまだ、知らなかった。

 

 

 

 

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