衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】   作:神宮寺志狼

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タイムリーな話ですみません

別にイベントがあったからこうした、って流れではありません。
エデン条約編では、可能な限り各部活の紹介、活躍のような話を盛り込もうと考えておりました。
決して意図したものではありません。

というか今回のイベントは、やられた。

私「おい!誰だよ!トリニティで魔法や魔術が忌み嫌われている、なんて独自設定作ったの!!」



#6 トリニティ自警団と正義実現委員会

 

 

Interlude 6-1 UMA

 

(よし、やっと着いた....)

 

はっきり言って、この着ぐるみは最悪だった。

 

動きにくい。

丈があってないせいでコケる。

デザインセンスが壊滅的。

胴体が長すぎて着ぐるみに向いてない。

 

まぁ、ここまでは急遽用意されたものだから仕方ないとして────

 

「うわぁ....何あれ....。」

「.......。」

 

 

 

目立つ。

ミネさんは何を思ってこれを着て街へ行けと言ったのか、意味不明すぎる。

 

『最近は「カイテンジャー」なる仮装集団や「覆面水着団」なる存在があるそうですし.....着ぐるみ程度なら問題ないと思います。』

 

.........それ両方ともテロリストだから....。

 

それでも、身バレ防止を最優先にする、という話し合いの結果、やはり着ていくことになってしまった。

 

でもこんなもの被ってれば、最悪士郎に会ったところで私だとは気づかれない。

顔を隠すにはうってつけではある。

 

そう、彼女に会うまでは、そう思っていた。

 

「あ、あれはウェーブキャットさん!?

何故こんな所に....。

もしかしたらイベントが!?」

(タッタッタッ!)

 

誰か足音がする。

それも駆けてきている。

 

「お、お待ちなさい、ヒフミさん!」

 

 

(....なんでこんなタイミングで....。)

 

聞こえないようにため息をついた。

聞き間違えるはずのない声。

狐坂ワカモが居るということは、恐らく"補習授業部"の人員だ。

 

三十六計逃げるに如かず。

全力で走って逃げる。

 

 

「ま、待ってください!?

どうして逃げるんですか!?」

 

「───!

ヒフミ、待ってくれ!」

 

それからかなり走ったものの、撒ける気がしない。

やはりこちらとしてはアウェイであり、トリニティ生徒の方が土地勘があるのは当然だ。

 

(それにしたって!)

 

どの道をどう行こうと先回りされている。

 

「裏路地はダメか!!」

 

最悪だ。

知り合いになんて早々出会わないだろうなんてタカをくくっていた自分に腹が立つ。

 

次第に私は行き止まりに追いやられた。

 

「捕まえま─────」

 

その少女に腕を掴まれたその時だ。

 

(ドガァァァン!!)

 

「「!!?」」

 

背後の道路から爆発音が聞こえてきたのだ。

 

全員、今の出来事など忘れたかのようにそっちのけで現場へ急行した。

もちろん私もだ。

 

「あれは.....」

 

現場に急行すれば、そこに居たのはゲヘナの美食研究会と、衛宮士郎その人であった。

 

Interlude 6-1 UMA End

 

 

 

 

 

「くそっ!」

 

あれから随分と走り続けたが、ハルナ達はずっと俺を追ってきていた。

 

撒けるわけがない。

なんせ相手は車なのだ。

人の足で対抗出来るわけが無い。

 

それと────。

「──────ッ...。」

 

先程から視線が刺さる。

 

周囲からのだけではない。

注目されているという意味ではなく、「見られている」のだ。

 

方向は───ティーパーティーのテラス。

この試すような視線は────

 

「アカリさん、グレネードを!」

 

「はーい♪」

(ガシャッ)

 

────戦慄した。

 

一時とはいえハルナ達美食研究会とは共闘した仲で。

俺の事は弾丸一発で傷つく人間だと知っていて、それでも致命傷を負いかねない攻撃をしてくる?

 

あの目は本気だ。

間違いなく、本気で殺し────いや、撃ちにきている。

 

 

どうする。

このままでは抱えた彼女ごと撃たれて、俺は木っ端微塵になる。

抱えながらでは守れない、なら手放し、美食研究会と向き合うしかない。

 

ならばせめて、俺の取れる最大の手段で。

 

「悪い!」

 

「きゃっ....!!」

 

眼下に迫る鉄の馬()へ振り返る。

直前、抱えた彼女を突き飛ばし向かい合う。

 

抽出(トレース)──」

 

──が必要な場所に

 

使い慣れた盾を──!

 

開始(オン)!」

 

救いの手を

 

(ドカァァァン!!)

地面に直撃する投擲弾頭。

爆風が盾と俺たちを包み込んだ。

 

 

「無事か!」

 

「は、はい....。」

 

「手荒な真似して悪い、でも───」

 

背後の少女は赤面して困惑している。

そりゃそうだろう。

 

ゲヘナで誘拐され、トリニティで戦闘に巻き込まれて居るんだから。

 

「流石衛宮先生。

良いご判断です。

 

でもこれで足は止まりました。」

 

ハルナ達の乗ったトラックは停車した。

がそんなことより、視線を誘導するものがあった。

 

「.....なんだ、この盾。」

 

突き出した盾は以前より軽く大きい。

分厚い鉄の板でもない。

 

縁の曲がった、ライオットシールド。

これは、ホシノの盾じゃ、ない。

 

「トリニティの校章.....

.....その盾を持ち出したということは、

「今の自分はあくまでトリニティの一講師」という意思表示ですか。

 

やはり、頂いた情報はあてになりませんわね。」

 

言われて視線を盾へ向ける。

確かにトリニティの校章が刻まれていた。

それより───

 

「「頂いた情報」...?」

 

ハルナの呟いた事は気がかりではあるが、こちらには余裕なんてない。

まずは説得だ。

 

生徒に向ける(意思)など少なくとも()()持ち合わせていない。

 

「なぁ、ハルナ。

シャーレに来てくれればちゃんと料理は出すし協力もするって言ったろ?

 

....今回のは器物損壊に強盗傷害でラインはオーバーしてるから、処罰ものだろうけどさ。

今持ってる一件が片付いたらちゃんと話聞くから今は大人しくゲヘナに帰る気は無いか? 」

 

黒舘ハルナという少女は、提案を一蹴した。

 

「ありません。

私たちの目的はあくまで"美食を追い求めること"ですから。

 

衛宮先生こそ、「トリニティで無理やり講師をさせられている」と伺っていたのですが。

 

D.Uに戻ってくる気はありませんか?

私達は貴方を必要としています。」

 

 

「──────。」

 

揺らいだ。

 

黒舘ハルナという少女は素はいい子だ。

この際考え方が変わってることはおいといてだ。

会話を持ち出せばしっかりとそれに対して返答してくれる。

対話をしてくれる。

 

彼女は嘘をつかない。

今、必要としてくれているのだろう。

 

補習授業部において必要とされていない俺。

俺を必要としているシャーレや他の学園の生徒達。

 

いるべき場所なんて明白だ。

────それでも。

 

「.....それでも─────その提案は、呑めない。」

 

ハルナの驚愕するような表情。

 

そうだ、俺は助けて欲しいと言ってきた少女の要求を、今断ったのだ。

 

「....それは一体何故?」

 

何故?

そんなもの────決まっている。

 

「.....ハルナ。

お前に付き合うのが嫌になったとか、助けないとかそういうんじゃないんだ。

 

確かに此処での居場所なんて俺にはないのかもしれない。

 

魔術師なんていう正体不明の存在で、誰か(生徒)を救いたい一心で、偽善で権威を振りかざしてきた。

忌み嫌われているのだってのも、怖がられているんだってのも解る。

 

実際補習授業部だって、俺なんか居なくたってどうにだってなると思う。」

 

「........では───」

 

「それでも、約束したんだ。

これからよろしくな、って。

一度はアイツらの先生になるって、誓ったんだ。」

 

 

そして、これまでの自分を裏切らない為。

置き去りにしてきたものがある以上、諦めるなんて出来ない。

俺に着いてきてくれたワカモやマコを始めとする藤河組の皆。

ホシノ達対策委員会やモモイ達ゲーム開発部。

 

彼女達全員に胸を張るため。

己の決めた道を、違える事はしない。

 

自らの行いに対する責任。

それこそが、衛宮士郎の取るべき"選択"だ。

 

「だから、どれだけ俺が役立たずでも、いるだけの置物でも。

辞めない。」

 

寄り添うのがダメなら見守ろう。

諌めるために、相手を傷つけなければいけないこともままあるだろう。

 

その結果、この身体と心がどれほど傷つこうとも────

 

「俺は補習授業部の顧問であり続けたい。」

 

彼女は瞳を閉じたまま、呟いた。

 

「.....仮に、それでもその生徒達が、貴方にいて欲しくないと思っていたとしても?」

 

「......。

その時は.......。」

 

決意を言葉に出来た先程とは違い。

パッと返答が出てこない。

 

目はそらせない。

逃がさないという、冷徹なハルナの目。

 

 

思い出すのは、浦和の言葉。

 

「衛宮先生は生徒の悩みや心境に寄り添いたいのだと思いますが、それは貴方のエゴです。」

 

瞼の裏にこびり付いて離れない、その失望したような瞳を。

 

キヴォトス(此処)に来て何度も言われた。

 

「お前は"生徒そのものを見ていない"」と。

 

生徒を助ける、生徒を救う、というその行為の過程を知り始めたばかりの俺は、()()()()()ことに固執して()()()()()()()()()()()()()

 

()()()()()()()()()()のでは天地の差があるように、

()()()()()()()()事と()()()()()()()では何もかもが違う。

浦和は、見抜いていたんだろうか。

 

「──────。」

 

初めて会った日。

人の心など分からないと、彼女は語った。

 

あれは、嘘だったのだろう。

鋭い洞察力、と観察眼を持った彼女は同時に賢かった。

 

相手の視線や行動、言動で分かってしまう彼女であれば。

 

「わからない。

 

でも─────」

 

それでも

 

「──きっと士郎が先生じゃなかったら、こんなに上手くいかなかったと思うのよね!」

 

「私、士郎先生は信じていますから。」

 

「───先生、ありがとね。───」

 

 

同じくらい、覚えている事がある。

 

だから─────

 

 

「努力する。

どうやってとか、そういうのはまだよく分からないけど。

最終的に俺といて良かったと思って貰えるように....。」

 

不審、嫌悪。

そういう感情を抱けば、拭うのは難しい。

 

されど、このままでは終われない。

正しい「先生としての在り方」すら、手探りでそれでも───

 

「よく言った、シロウ。」

 

路地から現れたのは、アズサだった。

バツが悪い。

途端に恥ずかしくなり、真っ直ぐな彼女の視線から目を逸らし頭を搔く。

 

「.....お前、聞いてたのか?」

 

「私だけじゃない。」

 

そう呟くアズサの後ろにはコハル、ヒフミ。

そして────

 

「大丈夫です。

士郎さんには私がついております。」

 

「いつも、ありがとな.....。」

 

出会ってからずっと寄り添い支えてくれるワカモが居た。

 

「......浦和は居ないんだな...。」

 

周囲を見渡すが、彼女の姿は見当たらない。

 

「う、嘘いつの間に!」

「え、えっ!?先程まで一緒だったのに!?」

 

「.......。」

「そ、そうさっきまでそこに居たのよ!」

 

コハルとヒフミは取り繕うように説明する。

 

指差す先には変な着ぐるみを来た生徒。

 

なんだあれ。

中身はかなりの高身長であるに違いない。

 

『........。』

 

ハルナの方へと目を向ければ、やれやれと苦笑いをしつつ優しく見守る雰囲気。

 

「そうですか。

ですが、フウカさんはゲヘナ生徒ですから、今回の件には些か関係ないと思います。

ので、私達に引き渡してください♪」

 

どうも俺の勧誘は諦めたらしい。

が、その流れになったとて─────

 

「それも断る。

第一協力して欲しいなら真っ向から頼み込めばいいだろ。

誘拐なんて無理強いするなって前にも言ったじゃないか。

 

この際ゲヘナとかトリニティの生徒とか関係ない。

俺は守ると誓った。

だからこの子は渡せない。」

 

「.....。」

 

振り返る。

心配そうにこちらを見上げる座り込んだフウカという生徒。

手を伸ばし、引き起こす。

 

「そうですか──────」

「であれば戦って奪い取るしかありませんね。」

 

やる気満々のハルナとアカリ。

事情を知らないのか困惑するイズミとジュンコ。

 

深読みしすぎだが、俺を誘拐するというのは口実で、励ましに来てくれたのではないか、と思ってしまう会話の内容。

 

しかし、こと彼女達に限り、それはない。

己が信念の為に、俺達は互いに向かい合い、銃を取った。

彼女達は美学の為。

 

俺は、自らの「生徒を守る先生」で居続ける(理想を守る)為。

 

もし、此処で指先を動かす度に体が裂かれ、血が流れようとも構わない。

 

「あぁ....。」

 

合図などなく。

先に動いたのはどちらだったか。

目の前にイズミとアカリの放つ数百もの弾幕が形成される。

 

一歩、前に踏み出し指示を出す。

 

「皆俺の後ろに!」

 

1発でも掠れば動きは止まり、直撃すれば続く連弾によりもたらされる死の宣告。

 

それを────

 

(カンカンカンカンカァーン!)

 

この盾もいとも容易く弾いた。

 

盾の方が、俺の体に指示を出している。

魔力を集中させたのは足。

腰を下ろし、大地を蹴り、突進する。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

〈ドンッ!!〉

 

体ごと前方に押し出した盾は、特攻しようとする俺を止めようと射撃を開始したジュンコを宙へと跳ね飛ばした。

 

「痛っ!」

 

吹き飛ばされながら、空中で両手のショットガンを構え直すジュンコ。

頭上で、その銃口がこちらへ向いた。

 

「させないんだから!」

 

(ドシュン!)

コハルが追撃をかけた。

ライフルから放たれた弾丸が、ジュンコの腹部に命中する。

 

「悪いコハル、助かった。」

 

「これくらい大したことじゃないし───

というか、ほら!士郎はあっち行った!」

 

シッシッ、と退けのジェスチャーをするコハル。

その後ろではもうアズサとヒフミが美食研究会と交戦を開始していた。

 

「いや、皆待ってくれ!

これは俺が招いた種というか....。

俺が解決するべき問題で────補習授業部は関係ないんだって!」

 

猛抗議する。

おそらく桐藤の監視されているであろうこの状況で彼女達補習授業を巻き込みたくない。

 

────とは言ってもコハルだけは何も知らない。

補習授業部の諸事情も、今置かれている状況も。

 

「はぁ?

 

いい加減「助けて」の一言でも言ったら!?

補習授業部の顧問のアンタに何かあったら私たちが大変なんだから!」

 

全く見てられない、とコハルは視線を美食研究会に向け、再び射撃態勢に移る。

 

生徒に助けを求めろ、だって?

世話焼くどころか───今だ何の役にも経ってないのに?

 

 

 

「あの娘は、素直ではありませんから。

単にあなた様に頼って欲しいのだと思います。」

 

隣に立つワカモはそう告げる。

 

「頼って欲しい?」

 

「はい。

あの娘だけではありません。

 

ヒフミさんやアズサさん。それから私も。

士郎さんが心配なのです。

浦和ハナコ、あの娘がどう考えているかは分かりませんが....

士郎さんへの誤解も解けました。」

 

「誤解?」

 

「過去の答案用紙の件です。

ヒフミさん自身が「自分が見つけた」と本人へ白状しました。

それに皆さんに士郎さんの事情を軽く説明しましたら。

「酷いことを言ってしまった」と。」

 

「........そうか。」

 

知ってしまったのか、と。

怒るに怒れない。

ワカモは、おそらく俺の為に言ってくれたのだろう。

 

「......アビドスやミレニアムでは上手くやれてたと思ってたんだ。

迷いながらでもちゃんと生徒へ道を指し示し、支える先生として。

 

でも結局はこうだ。

みんなに心配かけて、迷惑かけて。

さっき、補習授業部の顧問であり続けたいなんて言ったけど、正直今もどうしていいか分からない。」

 

弱音を、吐露する俺へワカモが投げかけたのは───

 

 

「それでよいのではないですか?」

 

 

肯定の言葉だった。

 

「え、いやだって───」

 

先生として未熟な俺は、どういうものが理想の先生なのか未だにわかっていない。

目標が曖昧であれば、そこに向かうべき道も見えず。

 

だっていうのに、それでいい?

 

 

「それこそ、あなた様が仰ったように。

初めてのことは誰かに教わるか、共に学んでゆけばよいのです。

どのような時でも私が傍におります。

 

だから、抱え込むのはお止めください。

ですから、あなた様の考えや悩みを話してください。

 

ミレニアムから帰ってきた時、仰ってくださったように。

 

()()()()()()()()()()()を私達と一緒に探しましょう。」

 

「──────。」

 

 

ずっと、頼りになる大人(先生)でなければならないと思ってた。

 

情けなくては示しがつかないと。

 

生徒の役に立たなくてはと。

 

手助けをしなくてはと。

 

そうしてひたすらに、ただ一人で悩み続けてきた。

 

 

理解してもらおうと思っていなかったのは。

 

向き合っていなかったのは。

 

信じていなかったのは。

 

俺の方、だったのかもしれない。

 

 

「お教えください、士郎さん───いえ、衛宮士郎先生。

貴方は今、何を考え、何をしたいのです?」

 

 

「───────────。」

 

瞳を閉じ、思考をリセットした上で言う。

気づけばテラスからの視線も無くなっていた。

 

不安気に事態を見つめる少女へと視線を向けた。

 

「騒動を収めてこの子を無事ゲヘナへ送り返したい。

その為には美食研究会を撃退しなくちゃならない。

協力してくれ、皆。」

 

「「はい!」」

 

と、ようやく俺たちが一致団結したとこで───

 

「閃光弾、投擲します!」

 

掛け声と共にハルナ達の目前に何かが放り込まれた。

「あれは....スタングレネードだ!」

 

物が見えたのは一瞬だと言うのに、見極めるアズサには流石としか言えない。

 

「皆!耳を塞いで物陰に隠れろ!」

 

「えっ!?何よ急に!」

俺の出した指示にヒフミとアズサは従うものの、コハルだけはイマイチ理解していない。

 

それを

 

「失礼!」

 

「むぐっ!」

 

ワカモが抱きしめる形で遮蔽物となった。

 

それは炸裂音と共に激しい光を生み出し、美食研究会全員の視界を潰したようだ。

 

「ギャアッ!」

 

「な、何にも見えない~!!」

 

「こ、これは?!」

 

閃光をモロに受け動けない美食研究会へ、さらに1人の生徒が突進をしかけた。

 

「呼ばれずとも正義が必要な所へ即参上!

スーパースター、宇沢レイサ、華麗に登場ですっ!」

 

(ドガァッ!)

なんと、飛び出てきた生徒は混乱するイズミの顔面を、蹴り飛ばした。

「──────は?」

 

 

「酷すぎるうぅ....。」

(ドサッ....)

 

イズミは完全に戦闘不能へと追いやられた。

続いて───

 

「とりゃあ!」

(バァン!)

 

「痛っ!.....えぇーん!悔しいっ!

こんなやられ方するなんてやだぁ....」

 

持ってた大型ショットガンをジュンコにド近距離から発砲。

ジュンコも力無く倒れ附した。

 

 

 

困惑する俺達へ1人の生徒が近づいてきた。

 

「お久しぶりです。

衛宮先生。」

 

アズサに似た白い髪と、灰色の制服。

見覚えがある。

キヴォトス(此処)に初めて来た日、シャーレ奪還に協力してくれた────

 

「守月か!

久しぶりだな!

 

早速で悪いんだけどどうなってるんだ?

なんでお前がここに?

一体誰なんだアイツ....。」

 

「あの子は宇沢レイサと言いまして、私の所属するトリニティ自警団の一員です。」

 

トリニティ自警団?

首を傾げる俺の元へヒフミが駆け寄ってきて説明した。

 

「トリニティ自警団とはその名前の通り、自主的に治安を守る有志団体です。

非公認ではありますが地域の治安維持にかなり貢献しているそうです。」

 

自主的治安維持活動か...。

 

「.....巡回中、変な着ぐるみを着た人物に戦闘が起きていると報告を受けまして.....まさか先生だったとは....。」

 

「変な着ぐるみ?」

 

辺りを見回せば先程の着ぐるみの生徒は消えていた。

どうやら通報してくれたらしい。

 

「....失敗してしまいました...。

ウェーブキャットさんを取り逃しイベントの情報を聞き逃してしまいました。」

 

「落ち込むなヒフミ。

次が必ずある、あれだけ人目につくんだから足取りは残るはずだ。」

 

なんか変なところで落ち込んでいるヒフミをアズサが励ましている。

 

 

何はともあれ、逃走車は炎上し、勝敗は決した。

───はずだった。

 

「────アカリさん、こうなっては致し方ありません。

散開して逃げますわよ。」

 

「そうですね★

後は運次第と言った所でしょうか。

捕まっても恨まないでくださいね♪」

 

どうやらハルナ達は二手に分かれて逃げる腹づもりのようだ。

此処を去るというのであれば別に追う必要性はないだろう。

 

「あっ!逃げるな!」

「逃がさない!」

 

その姿を見てすかさず追いかけようとするコハルとアズサ。

2人に止まるよう指示を促す。

 

「待ってくれ2人共、追わなくていい。」

 

「......確かに勝利条件はクリアした。」

「.......そ、そう?

でもあんな凶悪な犯罪者、放って置く訳には....。」

 

「.....あのな、お前今は正義実現委員会じゃないし、その権利そのものを剥奪されてるだろ?

今は下手に動かない方がいいと思う、それに───」

 

それに───

 

「あ、あれ....。」

 

どうやら守月に通報した生徒に抜かりはなかったらしい。

ヒフミの指差す先。

 

「くひっ....きひひひっ.....みつけた...。

きゃはははははははっ!!」

 

(バンバァン!ドガァァァアン!)

 

(ドサッ!)

 

そこには無言で倒れ伏すアカリと、正義実現委員会の生徒。

装備は両手にショットガン、長い髪を振り乱すその姿はホラー映画に出てくる幽霊を彷彿とさせた。

 

「ツルギ先輩だ....!」

「.....あれが正義実現委員会の委員長、剣崎ツルギ...。」

 

その後、ハスミやイチカも到着し、美食研究会は全員が拘束された。

 

焼けこげた車の座席には見るも無惨なゴールドマグロだけが取り残されて。

 

「ツルギ、ハスミ、お疲れ様。」

 

状況を報告しに行こうと正義実現委員会の皆に合流する。

 

「衛宮先生、お疲れ様です────どうしてゲヘナの生徒を連れているのですか?

彼女も美食研究会のメンバーでしょうか?」

 

が、ハスミは仏頂面でフウカのことを問い質す。

そういえば彼女がゲヘナ嫌いなことをすっかり忘れていた。

「いや、これは───」

 

 

「待て....ハスミ。」

 

そんな彼女に声をかけたのはツルギ。

 

「先生はお前の視線から彼女を庇ってる.....。

そんな風に圧をかけたら話しにくいだろう。」

 

「───失礼しました。

すみません、冷静さを失うところでした。」

 

「....続きをどうぞ。」

 

なんというか、言いたい言葉は呑みこんだ。

ハスミが注意されてるところなんて初めて見たぞ。

 

 

「────なるほど。

衛宮先生は補習授業部の生徒達と合流しようとしていた所を美食研究会によって拉致され、脱出した際に同じく拘束されていた彼女を救出した、と。

 

愛清フウカさん、と仰いましたか?

今の話は?」

 

「はい、全て事実です。

私はゲヘナ給食部に所属しています。」

 

俺達は近くの店のカフェテラスに腰をかけている。

ハスミ達に美食研究会と交戦するにまで至った経緯を説明する為だ。

 

「では、自警団のスズミさんやレイサさんは偶然巻き込まれた形ですか。」

 

「いえ、私達は着ぐるみを着た生徒から近くで戦闘が起きていると報告を受け、現場に急行しました。」

 

「着ぐるみを来た生徒?」

 

着ぐるみって、さっきのあの生徒か。

というか、生徒なのか?

あの胴の長さは明らかに人間のそれ超えてるぞ。

 

中身、機械なんじゃ?

 

「で?ヒフミ、あの着ぐるみはなんなんだ?」

 

「あれはモモフレンズのウェーブキャットさんです。」

 

「.....聞き方が悪かった。

誰なんだ?

守月みたいにお前たちも?」

 

てっきりヒフミが知り合いと歓談していたのかと思っていたが本人は否定した。

 

「.....いいえ、ウェーブキャットさんがいるということは近くでモモフレンズのショーでもやっているのかと思って追いかけて居たんですが、その最中に戦闘の音が聞こえて─────。」

 

ということは、その生徒も偶然俺と美食研究会の戦闘を目撃したわけか。

 

「そう言えば、正義実現委員会(私達)に通報した生徒も匿名だったそうっすよ?」

 

「....その生徒怪しいですね。」

 

「え?あの着ぐるみの奴は無関係だろ?」

 

訝しむハスミの言葉を否定する。

 

「何故、そう思うのですか?」

「いや、後ろめたいことをするって時に着ぐるみなんて普通着るか?

 

ここがテーマパークとか遊園地だってなら木を隠すには森って事でわかるんだが....」

 

いかんせんここは街中だ。

そんなの不審者がいますって自分で言うようなもんだ。

 

「でも、姿を見られたくなかったってのは確かじゃないすかね?」

 

「いや、もしかしたら着ぐるみが好きなだけかもしれない....。」

 

「正気っすか?ツルギ先輩。」

 

イチカの言を否定するのはツルギ。

 

 

「.....憶測を立てても仕方ない。」

 

「.....で、どうするんすか?

捕まえた生徒達。」

 

「.....。ゲヘナ風紀委員会に、引き渡す....。」

 

「そうですね.....今はエデン条約を目前に控えて、色々と過敏な時期です。

下手に事を大きくする訳にはいかないのも確か.....。

ここから先も私たちが能動的に動くのは少々避けたいところです。

 

ツルギ、ここは衛宮先生(シャーレ)からゲヘナ風紀委員会への引渡し。

この部分を先生にお願いしてはいかがでしょう。」

 

ツルギの瞳がこちらへ向く。

 

「.....衛宮先生はどうお考えですか?」

 

 

てっきり、正義実現委員会(自分達)で決めるんだとばかり思っていた。

 

「お前達の仕事に口出しをするつもりは無い。

 

でも、それはティーパーティーに黙ってこっそりって事だろ?

仮に拘束した生徒の処遇を決めるのもお前達であったとして。

それがトリニティの生徒だったら何も言わなかったけど、他学園の生徒の話ならまた別だ。

 

時期が時期だからこそ、判断をティーパーティー(上司)に仰ぐべきだと俺は思う。

 

皆はどうだ?」

 

後ろを振り向いて、ヒフミ達に問う。

 

「わ、私は特に.....。」

「異論は無い、判断するべきは責任を持つ生徒の役割だ。」

「.....そうですね。」

 

「ワカモは?」

 

最後は補習授業部の参謀であり、頼れる副担任。

彼女なら

 

「どちらも捨て難い手段です。

 

前者をとれば、自身の立場が。

後者をとれば政治的均衡が。

 

で、あるならティーパーティーに相談した上で、あなた様がハスミさんの意見を述べたててはどうでしょう?

悪手かもしれませんが「シャーレの先生」としての意見であれば無下には出来ないはずです。

 

士郎さんも、彼女ともう一度話をするべきですし。」

 

 

「.....だな。」

 

いつぞやの、権限を手に入れた天雨のように。

例え誰かの為だとしても、そのまま突っ走ってはダメなのだ。

 

それに、ミカはコハルの事を「正義実現委員会に対する人質かも」と言っていた。

で、あるならこそ、誠実であるべきだ。

 

「.......たしかにそうかもしれませんね。」

 

「決まりだな。

イチカ、ナギサ様に連絡を。」

 

「了解っす。」

 

納得してそれぞれの仕事に戻るハスミ達。

後始末に走る正義実現委員会の生徒たちの姿を見守る。

 

「これで良かったんだろうか?─────痛てっ!?」

 

ボソリと呟くと背中を平手で勢いよく叩かれる。

 

「いいんじゃない?

私は──そこの化け狐ほど頭は良くないけど。

 

ちゃんと私達に相談してくれたじゃない!」

 

「.....だが、やはり戦闘時、前に出ようとしてた。

私は嫌だぞ、シロウを自分の流れ弾で傷つけるのは。」

 

「では、ナギサ様からの連絡がくるまでゆっくり休みましょう!」

 

 

 

そこには、久しぶりに笑っている皆の姿があった。

 

ここにいない、浦和の姿を除いて────

 

 

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