衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】 作:神宮寺志狼
さて、どうなるでしょう。
Q.藤村大河の学生時代の悪友の名前は?
という訳でNo士郎、オールインタールード回です。
先に言います。
「俺は悪くねぇ!俺は悪くねぇ!」
だってそうだもん!
むしろこうならない方がおかしいもん!
???「どうしてこうなったのでしょう。
たかがシャーレのヘリを一機誤射(建前)して、先生を撃ち抜いて(恐怖による敢行)してしまった、だけなのに ....」
オラトリアで「ミネは救護活動において身分を隠すことに反対していた」スタンスなのですが、今回に関しては「セイアの居場所バレ防止の為」として納得いただければ、と。
ついでに弊ヴォトスでは「ミネが破壊して団員が救護する」という噂からミネに対する容姿などの先入観がトリニティ内で独り歩きしています。
余談ですが本作で使われている「2・5・2」がなんなのかと言うと実際の消防隊などにおける「要救助者有リ」「生存者有リ」のコードとなります。
随分昔の話ですが、「2・5・2生存者有り」という映画で知りました。
こんなところで役に立つとは。
補習授業部と美食研究会の戦闘に巻き込まれそうな状況の中
今回はどうにか調達出来たものの、またもそこで問題が発生した。
(ドガァァン!)
巨大な爆発音に空を見あげれば、ヘリが被弾し、街に墜落した。
「あれは────」
視認できたのは一瞬、だけど私は見逃さなかった。
機体ボディに施されていたシャーレのエンブレム。
「急がないと──!!」
ヘリの墜落現場は酷い有様だった。
尾翼ローターを破壊され、ボディが爆散しながらもどうにか姿勢を制御して比較的人口の非密集地に機体を落とそうとしたのだろう。
しかし、腐ってもここはキヴォトス三大学園の1つ。
やはり巻き込まれた者達もいるようだ。
機体が衝突し、破壊された建物からは火が上がり、周囲の建物を巻き込んでいく。
────消防士でもないただの私にはどうすることも出来ない。
そして私にだって優先順位がある。
最後まで機体を制御していたのなら操縦士である私の後輩は間違いなく脱出なんて出来ていない。
着ぐるみを脱ぎ捨てる。
燃え上がる火の中、熱されたヘリの残骸を掻き分けながら墜落地点を目指した。
「.....走馬灯かと思いました....マコ姉。」
後ろから小さいものの声が聞こえた。
「あんた....よく無事だったわね!!
他の乗組員は!?」
「....私だけで.....ゴホッ...」
「───いま助けてあげるから、待ってなさい!」
残骸の中からその身体を引きずり出した。
見るに堪えない火傷で水膨れた皮膚。
もしかしたら呼吸器もやられているかもしれない。
私では、手に負えない。
と、硬いものが手に当たる。
何ともまぁ、焼けこげたスカートのポケットからは彼女の携帯が。
流石はミレニアム製といった感じで画面はやや焼け焦げているものの機能する。
私は直ぐ様ミネさんに連絡した。
彼女は電話には出ない。
故にモモトークにフレンド申請を行い、メッセージを『2・5・2』に設定した。
士郎に拾われ、シャーレの仕事をこなす中で人の連絡を暗記するよう癖をつけていたことが幸いする。
数秒後、着信が来た。
『────
「ミネさん───私、マコ!」
音声はややロボットがかっている。
が、先程の合図でこちらのことを信用してくれたらしい。
『マコさん?
食糧品の買い出しに出かけていたはずでは?』
当然彼女からしてみれば疑問だろう。
突如、最近知り合ったばかりの生徒が知らない者の端末から連絡してくるのだから。
どうしてこんな事になっているのか。
それは、私が端末を持っていないからだ。
軟禁された時に連絡機器は全てティーパーティーに取り上げられてしまっている。
無我夢中で事情を説明した。
「それが───シャーレのヘリが撃ち落とされて街中に墜落したの。
現場は大火事。
私の後輩以下、住民の人達も大勢巻き込んで...。
ねえ、どうしたら────」
『......ッ....。
私は今ここを離れる訳には───』
ミネさんの声が、周囲の声にかき消された。
「おーい!誰かぁっ!誰かいないのか!
瓦礫に挟まれて動けない!助けてくれぇ!」
「こっちの人。呼吸が止まってるんだけど──!」
あちこちから救いを求める悲痛な叫び声が聞こえてくる。
ここはまさに、阿鼻叫喚の地獄。
そこら中の瓦礫の隙間から人の手足などの体が見える。
きっと、動けないのだろう。
救い出された生徒や住民もいるがそちらも酷い有様だ。
私達藤河組───もとい元カタカタヘルメット団は過酷な環境で生きてきた。
しかし、知らなかった。
戦闘に巻き込まれた側の光景を。
被害者側の目線というものを、無力で何も知らない者たちの視点を。
分かっている、これがキヴォトスにおける
それでも、私はややパニックを起こしていた。
「ミネさんっ!!
お願い.....救けてッ!」
『......。』
彼女は百合園セイアの指示によって居場所も目的も、自身の存在すら秘匿しなければいけない立場にあると、私もわかっていた。
それでも、この惨状は今すぐどうにかしなければ、と。
焦りと不安が、この場所には蔓延していた。
少しの沈黙の後───
『セイア様────申し訳ありません。
暫しの間、貴女の傍を離れることをお許しください───。』
そんな謝罪と共に、ミネさんは承諾してくれた。
『現在地を特定しました。
直ちに参ります。』
現在地を、特定?
私はまだ場所を言っていない。
どうして彼女はわかったのだろう?
「え、ええっと.......ありがとう...。
ごめんなさい....。」
『いいえ、むしろありがとうございます。
向かう間に遠隔での診察と手当と処置の仕方をお教えします。
まず倒れている彼女の状態をお教え下さい。』
「え、ええっと───」
そうしてミネさんの言う通りに体を調べていく。
『彼女に「水を飲みたい」などと要求されていませんか?
もし、そうだとしても飲ませないでください。』
「ど、どうして!?」
『重度の火傷を負った場合、体内温度も上昇しています。
故に、水などを飲ませてしまうと血管などの圧力が一気に崩れてしまいます。
また、喉が腫れ、気道が塞がり呼吸困難に陥ります。
ただし、軽度の場合は患部を冷やさなければ状態が悪化する場合もあります。』
つまり、結局一切状態の見分けがつかない私では何も分からない。
『その方の皮膚の色はどうですか?』
「えっ?
....水膨れが出来てて、何処もかしこも真っ赤っかだけど....。」
『───具体的に身体の何割でしょうか?
皮膚が黒ずんでいたりなどは?』
「5割くらい ...だと思う。
黒くはないわ。」
『───話に聞く限り、火傷としての状態はclass Ⅱでしょう。
軽度ではありませんが重症ではありません。
命に別状は無いでしょう。』
「よ。よかったぁ....。」
つい安堵の声を漏らす。
『ですが、安心するのはまだ早いです。
火傷の傷口は処置しなければ感染症や神経の壊死に繋がります。
それにその他の方々も、早く救助しなければ。
マコさん。
とりあえず首に火傷がある場合そちらを優先に、呼吸の安定確保をお願いします。』
「わ、わかった!」
近くの無事なカフェに押し入り事情を説明してありったけの冷水を準備する。
『氷を直接ではだめです、冷たすぎます。
流水、又は冷水を染み込ませた柔らかめのタオルを!』
「店員さん!
ありったけのナプキン頂戴!」
「あ、あぁ!」
そして現場にかけ戻り応急処置を始める。
「.....マコ姉────ワカモの姉御に、伝えてください...。
迎えに行けなくて、すみません...って。」
「───何、今どういう状況!」
喋るな、と言わなければならないのだろうが気が動転してしまっていた。
そうして聞いた事の次第。
「そう....ティーパーティーの砲撃隊が....」
ナプキン───タオルを絞る両手に力が入る。
私だけならまだしも部下にまで手を出したとなれば話は別だ。
夢で会った彼女には申し訳ないが。
桐藤ナギサを許せそうに、ない。
そうしてワカモに連絡する。
予想通り、彼女は困惑しているようだった、
全てが終わって、またシャーレで会った時に、2人には謝ろう。
心配かけて悪かったと。
(キキキィィーッ!)
響き渡る車のブレーキ音。
そちらに向けると大量の医療道具を運ぶミネさんの姿が。
「お待たせしました────」
私には目もくれず後輩を診察し始める。
「呼吸は安定していますね。
皮膚のやけども悪化することは無いでしょう。
適切な良い処置です。」
その言葉を聞いて、今度こそ胸を撫で下ろした。
「では救護活動を始めます!」
そう言うとミネさんは簡易酸素マスクを付け、燃え盛る建物内へ突入。
数分後
ことの次第を見守っていた住民達は何事だ!
という目線で見ていたが。
「火が、隣の建物に移るのを防ぐために建物ごと破壊したんだ...。」
という私の独り言に感嘆の声を漏らし始めた。
それと同時に私は恥ずかしくなった。
自分の後輩の事で頭がいっぱいだったが為に、周りのことを見ないフリをしていた。
「───ミネさん、酸素マスクはまだある?!」
「.....はい。ですが」
「今は一刻を争う状況でしょ!
私にも何かさせて!
知ってるでしょ私の体の頑丈さ!」
ミネさんの迷いは、一瞬だった。
「では共に救助者の捜索を。
問題なければ出口で落ち合いましょう!」
「ええ...っ!」
こうして私達二人は燃え盛る火の中、火に巻かれ身動きできない人たちを助け出し建物を破壊して回った。
いつからか建物前で私たちの戻りを待ち、助け出した人の介抱や回収をしてくれる人達も現れた。
こんな地獄の中でも、皆の意思が一つとなって誰かを助けている。
凄い光景だった。
されど、一番凄いのはミネさんの判断力と行動力、そして爆発だった。
「はっ! 」
(ズドドドドォン!)
ミネさんのシールドバッシュは瓦礫はおろか燃え盛る火すら風圧で鎮火する代物だった。
「救護騎士団です!
道を開けてください!」
と後方から声が聞こえてくる。
「ミネさん!
助けを求めておいてなんだけど、マズいんじゃない?」
「.....そうですね。
全ての建物を見て周り、怪我人にも応急手当はしました。
後は騎士団の皆様に任せましょう。」
そうしてその場を去ろうと現場に背を向ける。
「ま、待ってくれ!」
「あんた達は命の恩人だ!
せめて名前くらい聞かせてくれよ! 」
と、
「み、皆様、落ち着いてください!」
「あんたすごいな、二人共救護騎士団の生徒なのか!?」
「「えっ?」」
そういえば全然考えが及んでいなかった。
ミネさんは「救護騎士団の団長」のはず。
どうして身バレしていないのか?
「え、えっと......私達はトリニティの────救護...ではなく
冷や汗をかきながらミネさんは嘘をついた。
苦虫を噛み潰したような、表情。
嘘をつくのが苦手な誠実なミネさんらしい。
「で!あんたの名前は!」
「私はその.....」
「どいてくださーい!!」
「通してくださいっ!」
後ろから救護騎士団と思わしき集団が近づいてくるのがわかる。
このままでは不味いと、周囲に視線を向ける。
その先には脱ぎ捨てた
まるで、この地獄の中で光る、蛍みたいに─────
「こ、この人は「螢塚ネコ」さん!
奉仕活動部の部長さんよ!」
「マ、マコさん!?」
咄嗟に思いついた偽名で彼女を紹介する。
「そうかそうか!
アンタは螢塚ネコってのか!
手際の良い素晴らしい治療だったぜ!」
「家族を助けてくれてありがとう!」
「てっきり救護騎士団の団員だと思い込んでたぜ!」
どうやらあっさり信じて貰えたらしい。
「応急処置も済んだし、後のことは救護騎士団に引き継いで私達は別の地区に行くから!」
そう言って私はミネさんの手を引いて、先程の声が聞こえたのとは逆の道へ、走り出す。
「おう!みんな道を開けろ!」
「ありがとよ!
今度店を立て直したら寄ってくれ!
俺の奢りだ!」
こうしてどうにか私達は窮地(?)を脱出した。
その後奉仕活動部の「螢塚ネコ」が救護騎士団顔負けの救助活動をしたと話題になりミネさんに助け出された者たちは
「救護騎士団顔負けの生徒が助けてくれた!」
「あの人が救護騎士団の団長やったら?」
など「螢塚ネコ」という架空の生徒を称える声が多数上げ初め。
その後ミネさんが困惑することになるのはまた別のお話。
「んんっ~!!
今日の業務終わりっ!
皆お疲れ様っ!」
「はい、お疲れ様でした~!」
その日はいつも通りのなんら変わらない日。
衛宮先生のお陰でアビドスは一時的に手元に戻ってきたもののその分忙しい日々を送っていた。
セリカちゃんは椅子から立ち上がって背伸びの体操。
ノノミちゃんは皆に飲み物を配っている。
「うへぇ.....おじさんもう無理~
ここで寝るから明日一番最初に登校した人起こしてぇ~。」
「.....ダメ、ホシノ先輩。
ちゃんと家のベッドで寝て。」
「そうよ、そんな事してるから──「あ~、腰がぁ~」なんてことになるのよ!」
シロコちゃんに注意されセリカちゃんの迫真の演技に思わず頬が緩む。
「そうですよ、きっと士郎先生も「健康に悪いからちゃんと帰って寝ろ」って仰いますよ。」
「あー.....衛宮先生なら言うだろーねー。」
衛宮先生は今はトリニティに出張中。
具体的な仕事内容は聞いていないが、他校の事にまで干渉していられるほどの余裕は私達にはない。
まぁ、それでも────
「あ、皆様お疲れ様っす。
パトロール交代しました、今日も各地区異常なしっす!」
「おー...。
お疲れ様ー。
藤河組の皆もしっかり休んでねぇー。」
こうして藤河ちゃんの後輩達はアビドス自治区でお手伝いをしてくれている。
「はい、どうぞ☆」
「お、紅茶っすか!」
「カモミールです。
良かったらどうぞ。」
ノノミちゃんは組員に紅茶を給仕している。
いっその事メイド服でも着せてみたい。
「それにしても本当に忙しいわね。
やってもやっても次の日には書類の山なんだから。
士郎も士郎よ!
ミレニアムでの仕事が終わったと思ったら直ぐトリニティになんて行っちゃって!」
セリカちゃんの愚痴も最もではある。
あるが.....
「仕方ないよ~。
衛宮先生は私達だけの先生じゃないんだし~。
それよりセリカちゃーん。
随分衛宮先生の事が恋しいみたいだねー。」
なんて、からかってみる。
「はっ!?
そ、そんなんじゃないんだから!
べ、別に士郎がいたらもう少し楽だろうな!って思っただけなんだからっ///
他意はないんだからね!?
分かった?!ホシノ先輩!」
「はいはーい。」
「あっ!全然聞いてないでしょ!」
必死なセリカちゃんの様子に教室中にみんなの笑い声が響いた。
そう、何にも変わらないいつも通りの日。
────そのハズだった。
「あれ....藤河組の全体グループにメッセージ?
珍しい......。
.........。」
突如、目の前にいた組員5人の携帯が一斉に鳴り、メッセージを見た全員があおざめた。
「ど、どうしたんですか?皆さん?」
アヤネちゃんが心配そうに質問をすると5人は顔を見合わせた。
「どうする....」
「いや、だって士郎って対策委員会の顧問じゃん?
伝えない訳にはいかなくない?」
「だよなぁ....。」
『士郎』
その単語が出てきた瞬間に、私含めたその場の対策委員会の皆は察した。
衛宮先生に、何かあったのだと。
「....先生がどうしたの?」
私がそう聞くと、観念したのか彼女達は情報を展開してくれた。
「はぁ!?トリニティのトップに士郎が撃たれた!?」
「「────」」
全員が椅子から立ち上がった。
「士郎先生はご無事なんですか!?」
「そう、らしい。」
歯切れの悪い返事。
あまり状況は良くないようだ。
「確か出張ってあのワカモもいっしょでしょ!
何やってんのよアイツ!」
「まぁまぁ、ワカモちゃんの性格上、衛宮先生の事は大事なはずですから、おそらく事情が───」
セリカちゃんを窘めるノノミちゃんに藤河ちゃんの後輩が語る。
「実は、今私たちも聞いた情報なんですが───」
それは、信じられない話だった。
衛宮先生はトリニティの「補習授業部」の顧問になりワカモちゃんは副担任。
しかも「補習授業部」はワケありの生徒で構成された部活らしく。
で、補習授業部の試験の会場がゲヘナに設定された。
それに腹を立てた衛宮先生がティーパーティーに殴り込みに行って反撃を受けたらしい。
衛宮先生は殆どとばっちりを受けている。
「───許せない!
ホシノ先輩、トリニティに殴り込みに───」
「ん、待ってセリカ。
私たちが行っても何にもならない。
ねぇ、シロウは今何処にいるの?」
暴走しそうなセリカちゃんをシロコちゃんが押しとどめた。
「それが....先行して補習授業部を牽引しているワカモの姉御を追って車中で治療を受けながらゲヘナの....どこだっけ。」
「77番街の廃墟じゃなかった?」
「そう!そこに向かってるらしい。」
私達はそう言われ地図を携帯で開く。
誰も何も言わなかった。
全員、銃とその他荷物を持つ。
「み、皆さんどこに!?」
組員の生徒に聞かれる。
「決まってるでしょ!士郎の支援に行くのよ!」
「倉庫に埃を被ってた車があります。
この前点検に出していたのが戻ってきたのでそれに乗って行きましょう。
もしもし、風紀委員長、空崎ヒナさんの番号でよろしいですか?
はい、書記の奥空アヤネです。
実は────」
「ん。
多分1時間すれば辿りつけると思う。」
「はい、衛宮先生の手助けに行きましょう☆」
「あ、後輩ちゃん達~、留守の間は頼んだよ~。」
そうして鍵を放り投げて渡し、困惑する彼女達を置いて対策委員会の部室を後にした。