衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】   作:神宮寺志狼

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「あれ?
だれ?今私の事「トリニティピンクゴリラ」とか言ったの。」

(指パキポキ)

「べ!別にあれを倒してしまっても───」


#18 Encroachment(侵蝕される境界線)/ VS「裏切り者」 (Ⅰ)

 

「それじゃ、始めよっか。」

 

その言葉にどうしても納得できない。

戦う理由が、ない。

 

確かにミカは俺を騙し。

セイアを、ナギサを傷つけた。

だけれどその目的は?

 

「ミカ───お前が進むその先には、一体何があるんだ。」

 

分からない。

俺を、ナギサを、アリウスを裏切ったミカは何がしたい。

何処へ行───

 

「「私は卑怯者で臆病者、どこにも行けない」と」

 

ふとナギサの言葉を思い出す。

 

「───何も無いよ。

何もかも、台無し。

権力とかこれといった物が欲しくてホストになろうって訳じゃないんだよね。

元々ETOとして置くつもりのアリウスとは完全に敵対しちゃったし。

 

何もかも上手くいかないんだよね~。

 

アリウスはアリウスでなにか企んで勝手にセイアちゃんのヘイロー壊すし。

言っておくと、セイアちゃんのヘイローを破壊しろ、とは言ってないよ。

私は()()()じゃないし。

 

ただ卒業まで檻の中に閉じ込めておいたほうがいいなって思っただけ。

あの時からだよ?全部台無しになっちゃったのは。

 

それ以上は()()に聞いた方が早いんじゃない?

白州アズサちゃん、なんだか一部誤解があるみたいだし私の代わりに説明してよ。

 

そこから色んなことがどうしようも無くなっちゃった訳だし。

ねえ、その辺どう思う?

 

ね、何か言いなよ───。」

 

倒れたアズサ。

もう、受け答える力は残されていない。

だと言うのに、ミカは怒りを露わにしてアズサへ問う。

まさに無駄、無意味だった。

 

どうしてこうなったのか。

こうなるなんて一切予想だにしていなかった。

 

聖園ミカ。

建物を人を道具のように投げ飛ばして破壊し。

他人()へ銃口を向ける事にも全くの躊躇いも───

いや躊躇いならあったのだと思う。

その証拠にミカがパンチを躊躇ったからこそ俺は生きている。

そうでなければ────()()()()()()()()()()()

 

「ワカモちゃん、ミカさん相手にどれくらい時間稼ぎができますか?

どうやら()()()はまだ来るのに時間がかかりそうです。」

 

途端。

こちらはこちらでハナコがおかしなことを言い始めた。

 

先程から俺の方へ視線を何度も向けている。

 

 

「ハ、ハナコ...?」

「ハナコちゃん?」

 

これにはコハルとヒフミも驚きだ。

 

「ハナコ、なんでそんな話を。

まずは目の前のミカを説得し────」

 

「話が通じると、本気で思ってますか?

自らの罪をあれだけ私たちに公開したのですから。

おそらく私たち全員を捕らえるか()()かの二択でしょう。」

 

「────。」

 

取り付く島もない。

それもそうだ、自分でも甘いと、わかっている。

ハナコの言ってることは、正しい。

あぁ、この期に及んで俺はまだミカの事が()()()()()()のだ。

 

()()()()()()()()()()()ここは逃げるしか手がありません。

私やヒフミさんでは足手まといでしかありません。

アズサちゃんと同等、いえそれ以上の戦力といえば───」

 

俺の───状況?

「おい!なんの話し──」

 

「───正直わかりません。

ただ、力の一点だけで言うのであれば。

負けが確定した訳ではありません。

 

私はあのような力の無駄遣いは致しませんので。」

 

ワカモの視線が体育館の壁に向けられた。

アズサを投げ飛ばして空けたと思われる大きな穴。

それが力の無駄使いだという。

 

「ですが正直───情けない話ですが5分もてばいい方でしょう?」

 

「ワカモちゃんで5分ですか.......。」

 

あのワカモが。

5分しか、時間稼ぎができないという。

それほどまでに聖園ミカは()()───

 

「何を仰っているのですか?」

 

「相手が、の話です。」

 

「は?」

 

その言葉に反応したのは俺だけじゃなかった。

 

「ん?もしかして、私バカにされてる?」

 

ミカもワカモも笑いながらお互いに罵り合い──

 

「あら?ご不満ですか?

あなたも馬鹿───いえ違いましたね。

失礼しました。

 

実際、士郎さんに弓引く者は全て醜い()()ですから。」

 

一瞬不機嫌そうにワカモを見るミカ。

その瞳はハイライトが消えていた。

 

歪に曲がる2人の口元。

 

止めてくれ───

 

「───そっか。

じゃあ()()()()仲良く()ろっか。」

 

そのミカの言葉が引き金となって。

 

(ジャキッ!)

(カチャッ!)

 

「「──────!」」

 

(タタタタタタタタン!!)

(タァァン!)

 

撃ち合いが始まった。

 

「ハナコさん!

士郎さんをどうか─────」

 

ワカモはそれきり、こちらへ視線を向けることは無かった。

 

「衛宮先生!今の内にこちらへ!」

 

「そうよ士郎!

あんなの私達に何が出来るって言うのよ!」

 

「─────。」

 

ハナコの意見に同意したコハルが叫んだ。

 

そう。

その通りだ。

 

2人の戦闘は割って入れないほど真剣で。

ミカは狙い打たせまいととにかく偏差撃ち。

対するワカモは迫る弾丸を回避しつつ近寄ったり離れたりを繰り返す。

 

いずれ決着は着くだろう。

 

このまま行けば。

俺の目の前で、いや、目の届かないところで。

あの時のアビドスの皆のように。

 

傷つき、倒れていく。

 

もう逃げないと決めた。

傷つき倒れる生徒から目を逸らすことはしない、と。

 

─────待て─!

 

立ち上がる。

 

走っていって、止めなければ。

目的も、意味も無い、撃ち合いなんていけない。

 

 

それでも、()()()と。

鋼のような体が、心を引きずって動く。

 

どうして────

 

この体は体育館から遠ざかっているのか。

─────────────────────────

「そうだな。

ミカはワカモに任せよう。

生徒を信じるのが、俺の()()だ。」

 

「──────。」

 

「え────。」

 

とうとう、思ってもないことが、口から漏れた。

 

それは俺の言葉じゃ、ない。

 

「ハナコ。

この後はどうするんだ。」

 

まるで操作キャラクターが勝手に動き出すように

俺の体は、勝手に動いている

 

そうか。気づけば、俺は何度生徒を傷つけただろうか。

拒絶され。与えられた役割(テクスチャ)はもうボロボロだ。

世界が言っている

 

おまえはここには要らない、と。

 

とどのつまり───

俺は──

とっくのとうに侵蝕されつくしていたんだ。

 

Interlude18-1 交戦

 

正直な話。

強がりをしていたつもりは無い。

 

単純に相手の力量が、己を超えていた。

ただそれだけの事。

 

(タタタタタタッン!)

 

迫り来る弾丸を勘だけで避け続けて5分は経過している。

私が狙いを定め、それから逃れるために相手は遮蔽を使い移動して───

 

これで幾つのマガジンを消費したのかは知らないが、聖園ミカは未だにトリガーを引き続けている。

相手の装備はサブマシンガンに軽装。

 

数撃入れれば倒れるだろう。

 

 

対するこちらの弾薬は無駄にできない。

クリップは5つしか手元にない。

元々はここでアリウスを待ち構えている想定であり、今その他の弾薬は部屋にある。

 

計、25発。

 

「────あれ?撃たないの?

それだとまるで()()()()みたいじゃん。」

 

「ええ、そうですが?

貴女に使う弾が勿体ないので、持ってきておりません。」

 

「ふーん......そっか。

じゃあ無しでやろっか♪」

 

え?

今、目の前の害虫はなんと───。

 

(ドカッ!!)

 

気づくのが遅かった。

怪力だけじゃない。

 

この女は────

 

「よいしょっ!」

 

「────」

 

(ドゴォン!)

「───ア....ッ!」

叩きつけられ、ミシミシと唸る壁。

口からは少量の吐血。

 

速度だ。

当然軽装備なんだから早く動けるに決まっていた。

ただ、それは。

 

なんと言うか。

 

「────いいよね、貴女は。

色んなところで大暴れして、「七囚人の1人」だとか。

「災厄の狐」だとか。

 

そんな風な不良生徒なのに先生の一言で無罪放免だなんて。」

 

殺意が、あの時のアズサさんの瞳と同じようでそうではない。

憎しみが、悲しみが、怒りが。

全てが詰まった、その視線。

 

「貴.....女は────」

 

骨が砕けそうな力でグリップを握りしめる。

そうでもしないと意識を保っていられない。

 

ドカッと床に膝を着く。

 

「いい夢見れてよかったね。

私は─────!」

 

(タァァァン!!タァァァン!タァアァァン!)

(タアアァン!タァァァン!)

無警戒で近づく彼女へノータイムで引き金を引いた。

 

5発。

全力で、頭部と、腹部に見舞った。

 

「───────。」

 

普通ならこれで終わり。

 

だけれど────。

 

「あははっ!その程度で私を倒そうって?

ムリムリ~☆

 

じゃあ次はこっちの番──」

 

ビクともしていない。

ケロッとしている。

まるで蚊に刺されたような。

怪力で、簡単に射線から逃れられる速度もあって、その上タフとなれば────

即座に横に飛びのいてクリップを装填。

残り20発。

遮蔽物無しで銃口を向け合う。

 

「────正直私が言うのもなんですが。

化け物ではありません?

そんなに頑丈なのであればもはや射線を意識しなくてもいいでしょうに。」

 

「えー?私そんなに脳筋じゃないもん。

そっちこそ過大評価されすぎ。

やっぱり噂はあてにならないかぁ。」

 

ゴトンとマガジンを放り捨てた。

更に懐からマガジンをもう1つ。

一体、そのヒラヒラした服の何処に───と思いきや。

 

「あ、これで終わりかな。」

 

さすがに打ち止めらしい。

 

「無駄に撃ちすぎです。

それこそ────」

 

「無駄、かぁ。」

 

感慨深く、瞳を閉じている。

 

「はい?」

 

急に銃口を下ろした彼女の顔に月の光が当たり、影が刺す。

何か気に障ることを言ったらしい。

 

「無駄、無駄、無駄無駄。

そうだね。

みんな言うよ。

 

「貴女のしていることは無駄です」とか。「無意味です」とか。

酷いよねー。

終わる前に決めつけて。

やりたい事ばっかりで具体性とか詳細が欠けてるとかさ。

もう正直聞き飽きちゃった。

裏で隠れて私のことをバカにして笑ってる生徒も沢山いたし。

 

いっそこのまま()()()()()()()壊しちゃおっかな?」

 

「──────。」

 

その姿は。

どこか誰かに似ていた。

 

「本当は────」

 

「ん?」

 

私は士郎さんに言った。

これまでの行いを反省したことは一度もない、と。

 

しかし、それは───半分は嘘だ。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

()()()、誰かに罰して欲しかったのではありませんか?」

 

「─────────何言ってるの?」

 

「それか、止めて欲しかったのか。」

 

「そんな訳ないじゃん!

大体さぁ、そんないい子がこのキヴォトスの何処にいるの?

 

いないよ、そんな子。

此処には人を傷つけて、痛めつけて利用するような人しかいない。

いたとしたらもうその子は死んでるよ

 

ほらよく言うじゃん。

「死んだ奴だけが良い.....」良い...なんだっけ?

 

まぁいっか。

だから、私も貴女も。

ナギちゃんも補習授業部の子達もみーーーんな、悪い子。」

 

それは自分を誤魔化し、騙すための偽りの言葉。

だからこそ伝えなければいけない。

間違っていると。

 

「百合園セイアは生きております。」

 

「──────。」

 

私にあるのは「それが悪い事」という知識のみ。

実際に罪を犯したところで実感が湧いていない。

それは人としておかしいことなのだろうが、私はどこまで行っても変わらなかった。

 

だから彼女の事など分からない。

それでも一つ言えるのは───彼女は私とは違うということ。

彼女はどこかで悔いている。

罪を認識した上で、今ここに、私の目の前に立っている。

 

何故(なにゆえ)にかは知らない。

 

 

お互いに何秒、止まっていただろうか。

 

先に動き出したのは私ではなかった。

 

「.......。

 

あ、あははははっ!!

あははははははははっ!

 

何言ってるの?

セイアちゃんが生きてる.....?

そんな嘘に騙される訳ないじゃん!

もしかして死にそうだから命乞いしてるの!?」

 

笑っている。

狂ったように。

巫山戯たように。

 

「.....信じられませんわよね。

私も貴女の立場であれば、信じなかったでしょう

ですからそれで結構。

 

後になって貴女は後悔するでしょうから。

ちょっとした仕返しです。」

 

恐らくこの戦い、私は敗北する。

もしかしたら死ぬかもしれない。

でも────士郎さんが生きている限り。

彼女の事は救ってくれる。

 

「ねぇ、いい加減に終わらせようよ。

なんでか知らないけどさ。

貴女と話してると疲れるんだよね。」

 

「そうですね。

そうすると致しましょう。」

 

穴の空いた壁から、風が、そっと髪を撫でる。

それが合図。

 

(タッタッ.....)

 

走り出し銃口を向ける。

相手方は動く気配がない。

 

ただ片手でサブマシンガンを構え。

 

(ダダダダダダ────)

引き金を引いた。

 

それを横へと身を翻し躱す。

(ドガッ...!)

「──────!」

 

否、躱しきれず、胴体に数発被弾した。

苦痛の声を押し殺し、それでも前へ向かって足を動かした。

 

勝てないとわかっていながら。

負けるとわかっていながら戦うのは昔の私では考えられない行為。

何故か。

 

「ワカモ、出来る出来ないじゃないんだ。」

 

あの方が、そう言ったから─!

 

「たとえ越えられない壁があっても、それに向かって挑戦することに意味が無い、なんて俺は思ってない。」

 

ただあの方の横で、笑う為に。

あの方と共に()()()、笑う為に。

 

それにふさわしい。自分でいたいと───!

 

最初にもらった一撃が、私の足を鈍重にしている。

 

構わない

 

(ドガッ!ドガッ....!)

 

被弾すればするほどするほど、歩みは遅くなる。

 

構わない....!

 

意識を保って指先を弾いた。

 

それをスラリと回避する、聖園ミカ。

 

「.........私より脳筋じゃん。」

 

(バババババッ!!)

 

最後の数発が放たれる。

 

「本当に────無意味ですっ!!」

 

銃の穂先の短刀で、薙ぎ払った。

 

「わぁお....。」

 

「お覚悟────!」

 

そのまま短刀を突きつけながら突撃する。

その決死の攻撃は

 

「はい!おしまい。」

 

銃ごと捕まれて、1寸も動かない。

 

「せぇぇの....どっこいしょぉ!

(ズドォオォン!)

 

それどころか、持ち上げられ、地面に叩きつけられた。

 

「ガッ....あぁっ...」

 

今度こそ、意識が消える。

嗚呼、掴めない。

 

「士郎.....さ────」

「じゃあ、バイバ──」

 

されど、この身が潰えることは、無かった。

 

「ミカァァァァァァァァァッッッ!」

 

(ドガァァァァン!!)

 

突如として目の前に。

鉄の塊が飛んできた。

それは聖園ミカをかなりの速度で、壁に叩きつけた。

 

「な、何....これ?」

 

初めて彼女が膝を着く。

 

 

否、鉄塊というには歪な形ではなく。

整った、そう。

まるで剣のような────

 

「───悪い、ワカモ。

待たせたな、よく頑張ってくれた。」

 

私を庇うように、

 

「あとは、任せてくれ。」

 

あの方が背中を向けて立っていた。

 

Interlude18-1 交戦 End

 

アズサとの絆エピソードの前半はとある理由で士郎を怒ったアズサが士郎をガンショップに連れていく話です。(今のところ)さて、士郎はどんな銃を買うでしょう。

  • 回転式拳銃(リボルバー)(一丁)
  • 自動式拳銃(オートマチック)(二丁)
  • サブマシンガン(一丁)
  • マシンガン(一丁)
  • アサルトライフル(一丁)
  • スナイパーライフル(一丁)
  • ショットガン(一丁)
  • ショットガン※レバー式(二丁)
  • アンチマテリアルライフル(一丁)
  • 買わない
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