衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】   作:神宮寺志狼

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今までにないエデン条約編を、あなたへ。

なんて、これまで見たことない(当社比)シナリオです。

(多分)

私、この作品書き始めてから一つだけ徹底してることがあって。

「他の人の「先生作品」を見ない」ようにしています。

絶対影響受けるし、流されるから(戒め)


途中のインタールードは、読みにくかったらごめんなさい。
ナレーターがあの子なら、この方が面白いと思って。




#20 そして狂劇は終わらない

 

「ッ───!」

(ブゥン!)

 

振り上げた右手。

掴んでいるのは、白き短刀。

それをこれまで強制的庇護下対象であった生徒めがけ振り下ろす。

迷いもなければ、これまでの痛みもない。

 

ミカは戸惑っている。

対峙して、ようやくわかった。

確かにミカは強い。

されど────それと脅威度はイコールにはならない。

 

「え、衛宮先生、本気!?

先生が私と戦って勝ち目なんてある訳ないじゃん!?

や、やめ─────!」

 

(ガキィイン!)

 

ミカはこちらの攻撃を銃で受け止めた。

ギリギリと鉄と鉄のぶつかる音が小さく響く。

 

「弾が当たってはい終わりだよ!?

だから────」

「ならそうすればいいだろ。

第一な、()()()()()()人殺しなんざ出来やしねェよ。

だって、そういう瞳はしてないからな。

土台そんな度胸────いや、「覚悟」もないだろ。

 

殺意だって?

お前のそれはただの「拒絶」だ──!」

(ブゥン!)

「きゃっ...!」

 

そのまま振り下ろしミカごと弾き飛ばす。

僅か数mのみ。

 

俺達の間には決定的差がある。

目に見えてミカは本気を出していない。

対して、こちらは全力全開だ。

 

「なんで...?わかるわけ──」

 

「時には死に。

時に殺す。

それが魔術師本来の生型(生き方)ってもんだ。

 

だってのに、人の殺意程度、見破れずしてどうするってんだ。」

 

「────そんなこと言うなら本当に撃っちゃうからね!」

 

(タタタタンッ!)

 

ミカのサブマシンガンから、銃弾が放たれた。

その数、ざっと見積もって12発。

 

常人ならば、ミカの言った通り、撃たれて当たりおしまいだ。

────されど。

 

しゃがみ、低姿勢。

頭上を、ミリ単位で銃弾が掠めていくことに、なんの恐怖心もわかない。

殺気がない。

 

 

アリスと戦闘したネルの動きを、見様見真似で模倣する。

軸足のつま先に魔力を集中させ、弾けるように前方へ飛翔する。

 

再度干将、莫耶で十字に切りつけた。

 

「痛った!」

想定以上にミカの反応速度が遅い。

腕に切り傷をつけてしまった。

やはり神秘を纏った剣による攻撃なら、簡単に生徒は傷ついてしまう。

 

これこそが、あの枷がある理由だろう。

だからこそ、それを理解した今だからこそ、俺はこの剣を振り続ける。

 

ミカのこちらを見る目が、怯えるように。

額から汗を流す。

 

「......どうして。」

 

「どうして?

大体な。

お前が言ったんだぞ。

『白州アズサを守ってくれ』って。

だから、俺はお前を裏切ってない。

 

お前の願いに耳を傾けたままだ。

 

お前から、お前の思いを、守っているに過ぎない。」

 

数秒の沈黙。

ミカの表情は驚愕からまるで嘲笑するかのようなものへ急変した。

 

「あ、あんなのデタラメに決まってるじゃん!

衛宮先生が補習授業部を守れば守るほど、ナギちゃんとの確執は広がってくし.....」

 

「そんなわけあるか。

お前もナギサと一緒で中途半端だ。

そうさせたいならもっと効率良く....

いや、悪い。

お前は「ナギサやセイアほど頭良くない」んだったか?

 

でも言ったよな?

「何もかも台無し」って。

 

なぁ、なんで途中でやめたんだ?」

 

「...。」

 

あれだけ好戦的だった筈のミカに戦意がない。

手に持っていた二刀を空に消す。

これの出番はもう、ないだろう。

 

「ミカ、お前は俺と同じだ。

犠牲にしてきたもの、失ったものがあるから、後戻りなんてできない。

 

でも決定的に違うことがある。

お前の場合、目指した場所がどこだか分からずに探してる状態だ。

問題はどうして、立ち止まってるのかだ。」

 

 

ミカがセイアを傷つけ、当人が「殺してしまった」と思い「進むことしか出来なくなった」のだとしたら分からないこともない。

けれど、ミカは立ち止まっている。

そう。

俺が疑問に思っているのはそこだ。

それが、理解できない。

思考しても、思考しても、俺には分からない。

 

多分それは、俺にとって欠けたナニカだから───。

 

「戦った結果、少なくとも言えることがある。

さっきも言ったが、お前には悪意を持って人を殺せる度胸はない。

まぁ、振る舞いの結果、傷つくやつもいるんだろうけどな。」

 

後ろで、目を閉じるワカモのように。

それは仕方がない。

人は生きていれば誰かを傷つける生き物だ。

そして、傷つけたことにすら気づかずに進んでいく。

 

けれど問題はそこにはない。

 

気づいた時に、どう動くか。

罪処(ざいか)はそこにある。

 

「ミカ。

今のお前なら、まだ戻れる。

お前が死んだと思ってるセイアは、生きてるし。

ナギサだってお前がこんな事をしたのが浦和のせいだって思ってるくらいには、お前のことを心配してるんだよ。」

 

「........嘘だよ。

だって、アリウススクワッドが「ヘイローを破壊できる爆弾」で────

壊したって────。」

 

 

これで確信した。

この子は怯えている。

俺にではない、単に()()()()に。

 

歩みを止めたのも、案外その勇気が無かったからかもしれない。

 

それに、「ヘイローを破壊できる爆弾」だって?

物理的に触れることができないものをどうやって破壊するっていうんだ。

それだけの火力か、または概念兵装か。

アリウスには相当な武力の備えがあることがよく分かる。

 

「お前さんは()()()()()()()を見てないんだろ?

なら話は早い。

今からセイアを見つけ出して話をして。

お前がやったことは償わなきゃならないけど、まだ戻れない訳じゃない。

戻ってこい、ミカ。」

 

手を差し出す。

そこにいてはダメだと。

 

「お前が目指したかったものも、一緒に探してやる。

迷惑かけた奴にも一緒に謝ってやる。

苦しみは、そう簡単に消してやれないけれど、それでも傍にいる。

 

それにな子供は悪いことしてなんぼだぞ。

お前のは度が過ぎてるけど、本来そんなもんなんだよ。」

 

「.....衛宮先生、私───。」

 

一歩二歩と、こちらに足を進めるミカ。

その手が、俺の手に触れる。

 

 

『それで、綺麗に丸く収まると?

そんな話があるわけないでしょう?』

 

背筋が凍るような、冷徹な、声。

 

(タタタタタタタタッ!)

 

「───!」

理解するより先に体が横に転がった。

 

音の発生源。

それは───

 

「ミカ!お前───。」

 

「───あれ?

ごめんね、衛宮先生....。

体が、言うこと聞かなくて───。」

 

ミカが、銃口をこちらに向けて立っている。

その腕は震えている。

右に左にと小刻みに。

これは、演技ではない。

間違いなくミカは抗っている。

 

それにミカの体にまとわりつくイヤな気配。

 

「魔...術、か?」

 

このタイミングで何処の誰が?

あの声の主が主犯格か?

 

何が原因で発動した?

 

 

考えてる暇もない。

続けざま、ミカの指がトリガーにかかる。

 

───しかし。

 

「あ。

弾切れみたいだね。

 

無駄弾撃ってて良かったぁ。」

 

ホッとするミカの表情。

されど、ぽとりと、体育館の床に水滴が落ちる。

 

「でも、さ。

もうどうしようもないね...。

とうとう体まで言うこと聞かなくなっちゃったよ...。

 

ねぇ、先生.....どうしたらいいのかな....。

もう分からないよ...。」

 

彼女の頬は濡れている。

 

いや、流れていないだけでずっと、最初から彼女は悲鳴をあげていた。

 

『私も時々、何がしたいのか、何をしようとしてたのか、分からなくなるんだ......』

 

いつかの日の言葉。

俺を問いただした時のミカの表情は暗かった。

もうあの時から、ずっと彼女は助けを求めていたんだろう。

 

確かにミカは悪いことをした。

 

けれど、それはミカ自身の気持ちと、行動にによって償われるべきで───

他の者が触れていいものじゃない。

 

綺麗な話なんてない、だと?

 

「俺はいい、もう大人だ。

夢見がちとか、甘いとか言われたって仕方ない。

けどな────

子供が夢見て何が悪いって言うんだよ。

 

「衛宮....先生?」

 

頭にきた。

あの声だけじゃない。

会話してからずっと、思っていた。

 

「セイアも、ナギサも。

そしてお前も、諦め早すぎるし物分り良すぎなんだよ。

子供ってのはな、もっと自由であるべきだろうが。

 

何が都合のいい話は存在しないだ。

馬鹿言うな。」

 

自由だったか、と言われれば。

俺は───そうじゃなかったけれど。

別にそれでも構わなかった。

今だってほら。

子供の頃から夢見てきた「正義の味方(ナニか)」の手掛かりをずっと探している。

 

「お前達、我慢効き過ぎだよ。

辛いなら、辛いって言えばよかったんだ、お前達は。

もっと、我儘言っていいんだよ。」

 

そう言ったものの。

やはりこれは俺の落ち度だ。

 

助けを求められないのが、キヴォトスの生徒達である事なんてずっと前からわかっていた筈だった。

アビドスでもミレニアムでも───

 

────前言撤回、モモイは別だな。

 

頬が、ひとしきり緩むのを感じ、気を引き締めた。

前を見る。

 

 

「────先生.....。」

 

抵抗していた、ミカの体から力が抜けていく。

 

それは────どうしようもなく、戦わなければいけないことを暗示していた。

 

『シロウ、やりたい事は概ね分かるわ。

あの状態じゃ解呪も難しいし。

 

よく聞きなさい。

 

干渉はしないだろうけれど、ヘイローへの直撃はさけて。

神秘まで()()とあの子もどうなるか分からないわ。』

 

「了解。」

 

イリヤの警告に素直に頷いた。

目線を向ければアロナも心配そうにこちらを見ていた。

 

「待ってろ、今自由にしてやる。」

 

それが合図か。

彼女の体が、こちらに一瞬揺らりと動き───

 

(スッ...!)

目の前に迫った。

 

「────!」

 

高速で迫る、拳。

狙いはこちらの頭。

 

先程見たのは彼女の拳が悠々と体育館の壁を貫いた事。

であれば、直撃を受けてはまず立って居られない。

意識を失うどころか、頭が残っていればマシだろう。

 

手元に干将・莫耶を作り上げ、その拳を受け流した。

 

(パリンッ!)

 

──否、受け流そうとした。

しかし、ミカの拳は悠々と、あの双剣を砕き割ったのだ。

 

「ッ...!」

 

頭を横へ。

耳をギリギリ掠めていく。

その風圧で、鼓膜は破れたのか片側からは音が聞こえない。

 

(ブンッ!)

2発目のスイングが飛んでくる。

これは防ぐより躱す方が望ましい。

 

されど、それを躱したとて、あと何度続くか。

言峰の拳に比べれば素人だが、威力と速度は侮れない。

 

喰らえば間違いなく動けなくなる。

かと言って生半可な剣では防げない。

 

拳が、風と共に目前に迫る。

時間が足りない。

死が唐突に襲い来る。

 

(パァンッ!)

 

突如響いた銃声にミカの体が後ろへ引いた。

回避した?

 

「あなた様───今です───っ。」

 

横から声がかかる。

倒れ、意識を失っていた筈の彼女の声。

銃口は、こちらに向いていた。

 

距離が開き、余裕が出来た。

心配は後だ。

この隙を無駄には出来ない。

 

盾を構え、床を蹴る。

無論、迎撃の為に振りかぶられるミカの腕。

 

されど、覚悟はもう決まってる。

脳裏に映る、硬く強いそれを───

 

「───()()()()

 

(ゴォォン!)

 

鉄と拳の合わさる音。

前はカイザー理事の拳相手に体勢を崩した。

 

それがどうだ?

ミカの拳は受け止められている。

何故か。

それは神秘の力か、もう1枚力場による障壁を作っていたからだ。

結局はホシノ諸共、あの盾に世話になる。

正直、シャーレに神棚作って、拝み倒してもまだ足らないだろう。

 

(バキンッ!)

しかし、取ってつけたような力場は軋み始める。

二度三度、振るわれる拳にヒビが入る。

 

けれど、構わない。

 

 

そして、こちらが本懐。

左手に生み出したものをミカの胸元に振り下ろす。

その真名は───

 

───破戒すべき全ての符(ルール ブレイカー)

 

 

 

取り巻く魔力とかけられた魔術は、はち切れるように、霧散した。

(───ドタッ...)

 

力無く倒れたミカを盾を捨て、短刀を捨て受け止める。

 

「今度から、辛いなら辛いって、助けて欲しいって言うんだぞ?

いいな。」

 

 

 

「──────先生───!」

 

(ドンッ!)

 

ミカに突如押し倒された。

攻撃、や反撃などでは無い。

 

そんなはしゃぐだけの体力が余っていたのか。

 

「おま────」

そう思い、諌めようとした直後。

視界がミカの体に覆われると共に───

 

(ドカァァァァァァン!)

 

突如巨大な爆発と衝撃に襲われた。

 

 

 

 

 

Interlude 20-1 「勇者パーティの大冒険」

 

[現在の進行度をロードしますか?]

▶〔はい

▷いいえ

 

前回までのあらすじ。

いつものようにゲームをしていたアリス達の元に、突如ニュースが流れてきました。

 

それは私のマスターであり、皆の「先生」であるエミヤ シロウがトリニティで状態異常瀕死になったという情報でした。

 

ミドリは心配そうに言います。

 

「衛宮先生....大丈夫かな?」

 

ミドリは────いえ、ゲーム開発部の皆はマスターの事が大好きです!

 

私達ゲーム開発部はマスター・シロウのお陰でミレニアム プライスという幾万の部活による大戦を生き延びることができました。

 

そしてアビドスサンドストーム事件※〈モモイが勝手にそう言ってるだけです〉において白い世界蛇(ヨルムンガンド)相手にゲーム開発部は多大なる戦果※〈戦闘に参加したのはアリスだけです〉を上げ、大魔術師シロウの付き人といっても差し支えない働きをしました。

 

ですが、マスター・シロウはモモイ曰く危ういところがあるらしく。

 

「あの人はヤバいね!

何がヤバいって怖いもの知らずな所だよっ!

聞いたんだけどさ、士郎ってユウカに「なぁパソコンの使い方教えてくれないか?」って頼んだらしいんだって!」(中略)

 

と言っていました。

 

「鏡」争奪戦においてもマスターはチビメイド(ネル)先輩の前に飛び出して、アリスのように蹴り飛ばされてしまいました。

 

確かにマスターは立派な「正義の味方」で「先生」ですが、時に命知らずな部分があります。

 

そしてそれはゲーム開発部の皆が知っていることでした。

 

モモイは言います。

 

「案外女の子に囲まれて元気にやってるんじゃなーい?

士郎ってラブコメの主人公出来そうなスペックしてるじゃん

あ、違う。ギャルゲーの主人公か!」

 

と。

それに対して、ミドリやユズからは大ブーイングです。

 

「衛宮先生がそんな女の子にデレデレしたり顔真っ赤にする訳ないじゃん!いくらなんでも偏見が過ぎるよお姉ちゃん!」

 

「.....その言い方はあんまりだと思う....。」

 

「だってさぁ───」などとモモイはあーでもないこーでもないと言い続けます。

 

 

そんな時、算術使ユウカがやってきました。

 

 

「衛宮先生と連絡が取れないけど貴女たち何か知らない!?!」

 

 

事情を聞くと、そこにはハレ先輩もいて、流れてきたニュースは間違いなく真実の情報だったそうです。

アリス達もマスターへ連絡を取ろうとしましたが、電話もメッセージコールも繋がりません。

 

「「送信できませんでした」ってどういうことなのさ!」

ミドリの携帯を握る手に力が入ります。

ユズはいつものロッカーへ入ってしまいガタガタと震えています。

 

チビメイド(ネル)先輩相手に「逃げられない」と決意を固めていたあの頃のユズはどこへ行ったのでしょう?

 

アリスは大慌てです!

「聖典」の正体が発覚した時もでしたが、こういう時、アリスはどうしていいか、わからなくなります。

 

ミドリやユズに「大丈夫です!」と話しかけますが、通じません。

 

ゲームをプレイ中のモモイのコントローラー捌きもどこかぎこちありません。

 

マスターなら、こんな時どんなことを言って宥めるのでしょう....?

 

そう、考えていたアリスの耳に、モモイの力強い言葉が響いてきました。

 

「なんだ!簡単なことじゃん!

気になるなら確かめに行けばいいんだよっ!」

 

 

そうして、その日深夜の3時、私達はこっそりとミレニアムサイエンススクールを抜け出しました。

 

当然、電車が来るまで駅前のゲームセンターで時間を潰し、始発でトリニティに向かおうとしたところ───

 

「待って.....今衛宮先生、ゲヘナに向かってる。」

 

ユズが携帯をこちらに見せてきます。

その記事には「重症を負いながら自らの生徒の為、ゲヘナへ向かった」と書かれています。

 

皆大慌てです!

モモイの指示で入ってきた改札から出て、慌ててゲヘナへのルートを再検索。

 

そしてまたまた入って出てきた改札に入場。

ここでミドリの一言が炸裂し、モモイに99999のダメージが入りました。

「今の改札 出る必要性あった!?」

 

「はぅあ──っ!」

 

ここからは行動不能になったモモイをアリスが引きずりながら、ユズによるナビゲートのターンが始まります!

 

そして、朝4時頃。

ゲヘナに着いたアリス達はとんでもない言葉を聞きました。

 

「待って.....今衛宮先生、アビドスに向かってる。」

 

「.......。」

 

「........。」

 

「......。」

 

こうして、ゲヘナの駅のホームでユズが必死にアビドスへのルート検索を開始しまして。

 

苦労したアリス達がアビドス高校へ辿り着いたのは朝の7:00でした。

 

しかし、アリス達を待っていたのは桃色の酒池肉林の保健室です。

 

なんと、ピンク色の髪の生徒とマスターが裸で大人御用達(ごようたし)ゲームの展開と同じシーンが繰り広げられていたのです。

 

これにはマスターを心配して来たアリス達は驚愕です!

(後に勘違いだったと説明されました。)

 

そして、マスター達から語られる惨状。

 

トリニティとゲヘナの軋轢、エデン条約。

そして、スパイ嫌疑をかけられた補習授業部。

陰謀の上に更に陰謀、謀略と、お話の内容は真っ暗闇でした。

 

やはりここはアリス達勇者が────と。

 

ですが、問題はここからでした。

 

マスターの何気ない一言が、アリス達を絶望に追いやったのです。

 

「あと、そうだな。

ホシノ、対策委員会はお前とアヤネを残して全員下がらせてくれ。

補習授業は部長のヒフミと後ハナコ。

正義実現委員会はイチカ。

ゲーム開発部は全員下がってくれ。」

 

なんとここまで来て、蚊帳の外です。

流石にこの展開にはアリスもいじけてしまいそうでした!

 

「えー?ここまで来て私たちだけ放置って酷くなーい?!」

 

モモイはシロウに抗議しました!

 

反対にミドリは「仕方ない」と内心諦めています。

 

アリスも何か言おうとしたのですが、アビドスのノノミ先輩が笑ってこちらを見ています。

その手には大きなミニガン。

 

モモイはその笑顔を見て、顔をひきつらせ、アリス達は教室から締め出されてしまいました。

 

 

「───私、「ABYDOS EATS」っていう運び屋をしてる。

何か欲しいものがあったら連絡して、届けに行く。」

 

アビドスのシロコ先輩は私達に情報を提供してくれたり。

 

「あんた達!気をつけて帰りなさいよ?

アビドスはあの士郎ですら初見で迷ったんだから。」

 

と、セリカは優しくしてくれました。

 

けれど、帰りの電車、アリス達はしょぼくれていました。

 

「酷い酷い酷ーい!あんまりだよぉ!

これが先生のやることかぁ!」

 

モモイはいじけています。

 

ですがそれより酷いのはユズでした。

 

「マコ先輩....トリニティで行方不明.....。」

 

「......。」

 

ミドリの顔も、暗くなりました。

ミレニアムプライスの「ミレニアムプライス入賞おめでとうパーティ」やその後数日間、藤河組の皆さんや、藤河マコさんにはお世話になりました。

あのユウカが、ミレニアムの携帯を幾つか贈呈する程です。

組員の人達は

 

「あたしたちの機種、もう何世代も前のものだからありがたいわぁ」

 

と喜んでいました。

 

そんな、組員の皆を見て笑っているマコ先輩。

 

 

「若い頃は馬鹿やってなんぼ、って士郎もよく言ってるし、遊びなさいよ!馬鹿ガキ共っ!」

 

そう言って、D.Uを連れ回してくれたマコ先輩の笑顔。

 

それを思うと、アリスは胸部が苦しくなります.....。

 

「......探しに行きたい...。」

 

ボソッと、ユズが呟きました。

アリスやミドリは勿論。

暴れていたモモイも、その一言を聞いて。

 

決意したのです。

 

Interlude 20-1 「勇者パーティの大冒険」 Out

Interlude 20-2 奇襲

 

ミネさんに助けられて、早ひと月。

 

「あー.....」

ソファーに体を預けてだらりと過ごす毎日。

 

暇だ。

当然仕事がない。

シャーレで過ごしていた頃からは考えられないほどの手持ち無沙汰。

ここはほぼ医療所と言ってもいい。

ミネさんのお陰で掃除も片付けも必要ない。

 

そして銃は手元にないので整備で時間を潰すことも出来ない。

当然ヘルメットもない。

 

暇を潰すものと言えば、ミネさんが持っている文庫本1つのみ。

 

そして、当然のように携帯もない。

 

二度(ふたど)と言わず何度でも言おう。

 

暇だ。

暇だ。

暇、なのだ。

 

隣に視線を向ける。

 

綺麗に座り、まるで絵なのではないかと勘違いするようなミネさんの佇まい。

彼女の持っている文庫本は綺麗なものの、何度も読まれているのだろう、栞はかなりすり減っている。

 

よく良く考えれば私がここに来るまでそもそも補給も何もしていないのだから彼女にとっての暇を潰すものも殆どなかったはずだ。

あれだって何回読まれた本なのか。

 

()を挙げず、まるで当たり前かのように表情一つ変えない。

 

彼女こそ、トリニティの高貴さに相応しい。

本当にそう思う。

 

「ねぇ、ミネさん。

それ何───」

 

読んでるの、と。

ただのたわいない質問をしようとしただけ。

 

(カキンッ!)

 

金属の弾けるような音が聞こえた気がした。

耳に届いたのは私だけではなかったらしい。

 

ミネさんの長い耳がピクっと動いた。

 

「今の音は何でしょう?」

 

彼女が立ち上がる────銃と盾を持って。

 

「さ、さぁ。

でも、何か聞きなれた音よね。

こう────金属板に銃弾が当たったみたいな。」

 

(ドゴォン!)

 

次に聞こえてきたのは爆発音。

 

「─────言い得て妙ですね。

マコさん、燃料が燃えるような匂いがしませんか?」

 

その言葉を聞いて、冷たい汗が背筋を伝った。

走ってガレージへ。

 

扉を開けようとノブを捻る。

 

「────。」

 

開いたドアの隙間から黒い煙が漂う。

間違いなく、燃料に引火している。

 

消化器を持ち、扉を全開にして中へ入ろうとした時だ。

(チュン───!)

 

頬を、弾丸が掠めた。

 

「は?」

 

速攻で扉を閉め鍵をかけた。

 

一瞬だけ見えた。

爆破され、こじ開けられたガレージのシャッター。

そしてその奥にいたガスマスクを付けた、生徒の集団。

 

状況が掴めない。

あの集団が纏うのは、私達ヘルメット団なんかとは全く違う。

感情のない、殺気。

 

『鍵をかけられました。』

 

『構わない、ブリーチング弾を使用しろ。

この建物の入口は、もう確保してある。

目標物も、目視で確認したと連絡が入った。

 

目に付いた者は"消せ"。』

 

薄い扉から聞こえてきた言葉にゾッとした。

ブリーチング弾?

目標物?

躊躇なくわざわざそんな弾使って扉こじ開けようって?

 

───普通じゃ、ない。

 

 

「マコさんっ!

どうしました!?」

 

「ミネさん!不味いよ!

多分()()()()にバレた──!」

 

「───。」

 

言葉だけで通じたらしい。

ミネさんは私の手を引いては百合園セイアのいる部屋に入って即座に引き金を引いた。

 

『ぐぁぁっ!』

 

もう敵が窓から侵入していたらしい。

ミネさんが彼女を肩に担いだ。

 

「ど、どうするの!?」

 

「────逃走します。」

 

逃走───あの冷静で判断力があり、尚且つ腕が立つミネさんが逃走を選んだことに、生唾を飲む。

当然の決断だ。

 

敵が何処に、何人───いや、何部隊存在するかも分からないまま味方のこない籠城戦をしても無意味だ。

しかも相手は必要とあらば壁だろうがドアだろうが構いなく破壊してくる。

 

これに対してどんな守りの手段があろうか。

 

しかし、問題はそこではない。

 

「でも逃げるってトリニティに!?」

 

「いいえ、それは難しいでしょう。

間違いなく彼女達は逃げ道を塞いでいます。

 

残念ですが───これは目的地も勝算もない逃走。

"敗走"です。」

 

敗走。

別に戦っていた訳でもないのに、ミネさんは悔しそうに強調した。

 

「マコさん。

厳しい戦闘になると思います。

貴女に今戦う手段はありません。

 

くれぐれも私の傍から離れぬよう、お願いします。」

 

「──────。」

 

一番の問題は。

銃も盾も剣もない。

ここに役に立たない足手まといがいる事だった。

 

 

 

数時間後、私達は完全に包囲された。

林の中に、敵が何人いるのか、分からない。

 

「ミネさん、ごめん。

私のせいだね....。」

 

「いえ、あの時の貴女の立ち振る舞いは立派でした。

それに───この程度の()()は日常茶飯事でしたから。」

 

徐々に近づく足音。

それに、ミネさんと背中を合わせ、備えた。

 

しかし────

 

(ウィィィィィィィィン!)

 

突如として、聞こえてきたサイレンの音。

ヴァルキューレ警察に誰かが通報した....?

 

気づけば林の中の気配は消えていた。

 

 

「ばぁ!」

 

「ッ──!!」

 

(チャキッ)

 

ミネさんが声のした方向にショットガンを向けた。

私は完全に腰が抜けていた。

 

「─────。」

 

そこには白目を向いて、両手を上げている才羽モモイの姿があった。

 

「あ、貴女達!?

なんでここに!

というかヴァルキューレ警察は!?」

 

安堵と共に声をかける。

 

「お知り合いですか?マコさん。」

 

今だ緊張感のあるミネさん。

私は銃を下げるよう言った。

 

 

「いいえ、通報なんてしてません。

今のは携帯のゲームの効果音(SE)をスピーカーモードで鳴らしただけです。

 

事情がありそうだったし .....。」

 

「アリスのセンサーが告げたのです。

林の中に50人近くいる、と。」

 

中規模部隊に囲まれていたと思うとゾッとする。

 

「.....どうやら此処に来ているのは貴女達だけではないようですね。」

 

ミネさんが周囲の様子を伺って言った。

 

「ん?いや私達だけだよ?

なんで?」

 

モモイの返答に、悩みながら「そう、ですか。」とミネさんは一言告げた。

 

どうやら、アレはサイレンの音だけで退いたわけではないらしい。

 

「それにしても、ナイスタイミングよ、あんた達。」

 

ユズちゃんの差し伸べてくれた手に掴まって、ようやく立ち上がる。

なんといつかみっともないところを見せてしまった。

 

「行くところがないなら、とりあえず私達の部室に来ませんか....?」

 

行くあてのない私とミネさんはお互いを見あって、ゲーム開発部部長の言葉に、甘えるのだった。

 

Interlude 20-2 奇襲 End

 

 

 

 




後書き

あえて書きませんでしたが、モモイ達の裏で動いていたのは、メイドです。

アズサとの絆エピソードの前半はとある理由で士郎を怒ったアズサが士郎をガンショップに連れていく話です。(今のところ)さて、士郎はどんな銃を買うでしょう。

  • 回転式拳銃(リボルバー)(一丁)
  • 自動式拳銃(オートマチック)(二丁)
  • サブマシンガン(一丁)
  • マシンガン(一丁)
  • アサルトライフル(一丁)
  • スナイパーライフル(一丁)
  • ショットガン(一丁)
  • ショットガン※レバー式(二丁)
  • アンチマテリアルライフル(一丁)
  • 買わない
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