衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】   作:神宮寺志狼

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作品1周年記念投稿言わんばかりにちょうど投稿出来ま......せんでした!

1周年と1日投稿の120話です。
少し前書きが長くなるのですが読んでいって頂けると幸いです。
後書きは今後の流れを軽く説明する形になると思います。

さて、Vol3.2章21話に入る前にいくつか。

話をしよう(鼻☆塩☆塩)

これは私の持論なのですが
罪を悔いてる者への1番辛い仕打ちって。

・許されない

ではなく。

・罰が与えられない
・責められない
・記憶が消えて日常生活を送っていたふとした瞬間に全て思い出す

辺りだと思うんですよね。

Fate staynightのBADENDに
「校舎内の戦闘で士郎は遠坂凛から逃げていたが、ガンドが直撃して動けなくなる。」

「1日後に学校に復帰。
しかし聖杯戦争どころか、自身が魔術使いである事どころか「正義の味方になる」という目標の記憶ごと凛に削除される」

とかいう生き地獄というか「衛宮士郎」としては完全にタヒんでしまいロボットになる地獄みたいなバッドエンドがあるんですよ。

あれ、マジでプレイしてて心苦しくなった。

最後「俺、何になろうとしてたんだっけ?」的なセリフよ。
遠坂、お前人の心ないんかぁ?

なんでこんなこと言い始めるかって?

これからミカに起きる事に対し「救済」されたという勘違いをして欲しくないからです。

原作とはミカのした事が大きく異なります。
よって、ミカを取り巻く環境、状況にも変化が起こります。

実際、今回書いた第2章の"原作"では敵側のハナコから「セイアが生きている」と告げられて騙していた側なのにバリバリに信じ、戦意喪失しています。
(銃を床に落とすSEすらある)

メタ的話ですが問い詰められてもハナコは証拠という証拠も出せません。
全くもって根拠の無い情報。
ミカ側の視点だと場合によってはハナコの嘘、とも捉えられるのに。
逆にハナコの"目が良かった"とも言えますが。
(という訳で今作では話す役割をワカモに設定、信用されない、という流れ。
逆に士郎は「お前は見てない」というシュレディンガー理論でこれを突破。)

閑話休題。

どちらにしろミカの武装解除、投降の理由は「殺してしまったセイアが生きていた」という所が重きになっています。
これは3章からの序盤の「ポストモーテム(Ⅰ)~(Ⅱ)」辺りでハナコが話していた希ガス。

(ちなみにポストモーテムとはプロジェクト終了後の問題提示の会議の事。
#8のタイトル「プレモーテム/レトロスペクティブ」はここから来ています。
プレモーテムは「プロジェクト開始時点の問題提示」=始める前
レトロスペクティブは「作業後の振り返り」=中間
としました。
本来の意味合いはもう少し違うかも。)

閑話休題←(2回目)

エデン条約編4章序盤は
唯一与えられた聴聞会という「許される可能性のある場」への出席を拒否。
魔女魔女スイッチが入ってしまったのもセイアからの拒絶、人間性の否定の言葉を聞いてしまったから。

この道筋を見て私は「ミカ自身が自分が許されるべきではないと考えている」と解釈しました。

そして、私の作品でミカの言ったことと正反対の原作セリフ
「私は行くところまで行くしかないの」

皆さん誤解しがちですが、彼女は責任感が物凄く強い子です。
実質士郎のサバイバーズギルトの亜種なんじゃないかな?
人を殺してしまった、で行くところまで行こうとするんですから。
「自分の行いの結果、セイアちゃんが死にそうになった」という罪悪感が絶対に心のどこかにある筈なんです。

しかし後にサオリと対決
結果「悪いことした奴は苦しむべき」「でも私は救われたい」という相反した願いも抱えている。
ミカの歪さとはここにあります。
一言で言うと「めんどうくさい」キャラなんですよ。

大体さ、齢18行くか行かないかの女の子がですよ?
事件を起こして─────(以下中略)
ここで
「お前の次のセリフは「テメェのほうがめんどくせぇよ!」だ!」

実際の所はセイアが一言言ってやればあぁはならなかったのに。
(本当に一言足りないセクシーフォックス)

それはそれとしてヒロインにするぞ。
え?ブルーアーカイブって聖園ミカがメインヒロインのゲームでしょ?(すっとぼけ)

ミカ出しゃセルラン1等賞。
「私がブルアカ支えてる~ヒーロインじゃんね~☆」(とあるyoutubeの動画のワンフレーズから)

(多分ここら辺で皆さんから大ブーイング)



さて長くなりましたがここから本編です。


#21 Epilogue/THERE IS LIGHT EVEN BEYOND THE CLOUD SKY

「───ア...ぐ....う...」

 

頭が痛い。

瞼が重い。

身体中が鉛のように重い。

 

(ピピピピッ....ピーーー)

『待っ....生.....起き....』

 

『いや──起き──がない』

 

本当に────重かったんだ。

 

 

 

 

 

目が覚めた。

 

何か、不吉な、嫌な夢を見ていた気がする。

同時に、聞き覚えのある声だった。

 

起きなければいけないと。

眠り続けたままではいけないと、体が起き上がった。

 

「ここは.....」

 

見覚えがある。

 

ここは聖テレサ病院だ。

そのベッドの上で寝ている。

 

現在時刻は───と、周囲を見回した直後、その異変に気づいた。

 

俺の物じゃないかのような茶色い左の手の平。

別談、握ったり広げたりもできるし、感覚も、魔術回路もしっかり通っている。

 

ただ、黒かった。

患者着を解いて確認する。

 

方の付け根から、左手が茶色くなっている。

まるで、部分日焼けしたかのように。

 

そういえば、こちらはミカをあの短刀で刺した方の腕だ。

元々俺のあの枷は生徒に危害を加えたその身体の部位へ罰を与えるように炸裂していた。

 

もしかしたら神秘が限界まであの枷に対抗しようとして、何らかの影響が出たのかもしれない。

 

枷だって、完全に取り外せた訳じゃない。

危急の事態以外での戦闘は控える。

つまり、今までと方針はそう変わらない。

 

 

「....そういえばワカモとミカは───

皆はどうなったんだ。」

 

周囲を見れば横の棚にはシッテムの箱と携帯が無事に置いてある。

無我夢中でシッテムの箱を起動する。

 

『うへへ............ちょこすとろべりーぱいを一つ....』

 

画面の向こう側では教室の机に突っ伏して、涎を垂らしながら寝言を呟くアロナがいた。

 

 

『おはようシロウ。

アロナは寝かせておきなさい。

昨日あんなに酷い戦闘があったんだもの。

最後の漁夫については酷かったわね。

 

アロナがシールドを張って防がなかったら今頃はあなた達この世に居ないわ。

 

他の補習授業部がシスターフッドを連れてきたのはその後ね。

シスターフッドにはハナコが協力を要請してたみたいだけど、予想以上に()()の根が深く広かったみたい。

抜くのに苦労したらしいわ。』

 

アロナが寝てるのはそのせいか。

昨日、ということはあれからまだ1日程しか経っていないということだ。

 

ってか、雑草って。

それ言葉通りの草むしりじゃないだろ。

 

 

 

そして携帯を開くと新着メッセージがいくつかあった。

 

そのひとつは

第三次学力試験の延期について。

 

試験日時は後ほど決めるらしい。

俺がここにいたから受けられなかった、なんて事にならなくてよかった。

 

 

「じゃあミカもワカモも無事だったんだな?」

 

安心したように尋ねる。

そうであって欲しいという願いをのせて。

イリヤは視線は逸らさない

されど、何か悲しげな表情をしている。

 

黙っていると、ようやくイリヤは喋った。

 

『けれど、アロナの守りは「物理的ダメージ」に特化した物。

 

あの「爆発」にはそれと同等の威力、別の性質があった。

 

そうね、貴方やアーチャーの壊れた幻想(ブロークンファンタズム)に似ている気がするわ。

言ってしまえば、「神秘」の弾ける力を利用して「ヘイローに直接干渉し破壊する」。

 

それこそ、あれが「ヘイロー破壊爆弾(デストラクションボム)」じゃないかしら。』

 

「つまり、それは────」

 

アリウス生徒の誰かがその場にいて。

 

裏切ったミカを邪魔者である俺ごと殺そうとした、ということ。

アリウスから攻撃を受けた、ということか。

 

それに気づいたミカは....爆発から、俺を守るため覆い被さった。

 

「....それじゃミカは直接その身で()()()()()衝撃を受けたってのか!」

 

気を失う、その寸前までの感覚が焼き付いている。

破壊力だけならランクAの宝具にだって匹敵してもおかしくないとさえ思えた。

 

『......あれが特殊性だけを詰め込んだ爆弾、もっといえば銃弾でなかったのが、唯一の救いかしらね。

防御不可能かつ、当たればヘイローを一撃で粉砕して生徒を殺す弾丸なんて出てきたらキヴォトス(此処)は─────

 

ミカは一応体の方は無事よ。

ワカモは────

─────あら、()()()()の後処理は終わったみたいね。

説明役が、丁度いいところに来たわ。』

 

草むしりって、なんの事だ?

というか、誰が来たって?

 

『──────再三申し上げますが、衛宮先生はまだ意識が回復していません。

何かあれば、すぐ連絡(コール)してください。』

 

『分かりました、ご丁寧に案内までして下さってありがとうございます。』

 

引き戸のドアが開き、誰かがカーテンを捲ってやってきた。

 

「あ、あら?」

 

可愛くアレンジされた修道服を着た少女がそこにはいた。

近い雰囲気でいえば、ノノミだろうか。

シスターフッドの生徒であることくらいしか分からない。

 

......シスターフッド。

浦和曰く秘密主義を貫く分派。

組織規模としてはティーパーティーや正義実現委員と並び立ち、情報の分野に関してはトリニティの情報局以上ではないか、という話だ。

 

でもって関わったのは一度きり。

ティーパーティーの生徒達による強襲の際に助太刀してくれた。

 

結局あの時以降、サクラコと接触できておらず、何が言いたかったのかも不明なまま。

今回の事件にどのように関わっているのかも、皆目見当がつかない。

 

「こんにちは。

もう起きていらっしゃったのですね。

先程、意識がまだ戻っていないと医師の方が言ってらっしゃったのですが...良かったです。」

 

 

そして───もう1人。

俺の視線はそちらに釘付けだ。

 

「....言峰....。」

 

「時間としては遅い起床だな衛宮。

 

紹介しよう、と言っても名前だけなら一度聞いたと思うがね。

 

彼女は若葉ヒナタと言ってな。

シスターフッド一の努力家かつ力自慢でもある。

現に、キヴォトス(此処)へ来たばかりの時。

私を聖堂まで運んでくれたのが彼女だ。」

 

「紹介ありがとうございます言峰神父。

わ、若葉ヒナタと申します。

 

よろしくお願いいたします。」

 

覚えているかね、と聞かれて記憶を手繰る。

確かに言峰は誰かに運んでもらった、と言っていた気がする。

 

されど、だ

このシスターの身長は170弱....いや、むしろ俺より低いかもしれない。

対して言峰は2m近い。

こんな子が果たして言峰を運べるのか?

実は脱いだり袖をまくったらムキムキの筋肉が出てくる、とか?

 

少し想像して怖くなった。

───が、それは今の俺にとってはそこまで重要では無い。

 

「よろしく、知ってるだろうけど、一応。

俺は衛宮士郎。「先生」だ。」

 

俺が自己紹介すると、彼女は何かを思い出した様子で手を合わせた。

 

「あっ....そうでした、何かあったら呼んで欲しいと言われていたんでした....」

 

そう言って俺の手元にあるナースコール用のボタンを手に取った。

 

が、それはともかく。

 

(ドガッ───ガコンッ!)

彼女の持つキャリーケースが床に無造作に置かれ、倒れる。

 

.....なんだ。今のバカ重い鉄塊を地面に叩きつけたような音は。

 

...そういや、昨日の今日で忘れてたけど、あんな細腕のミカすら人をブーメランみたいに易々とぶん投げてたんだっけ....。

 

ギャップが、酷すぎる。

 

 

 

その後、俺は医師に連れられ数多くの検査をさせられた。

血液検査、レントゲン、果てはCTスキャン。

 

至れり尽くせりだが笑ってはいられない。

現在、手持ちの金は財布ごと別館に置いてある。

 

つまり手持ちはゼロ。

 

絶対に支払いは高いに決まって────

 

 

 

 

「何も要求されなかった?」

 

なんでさ。

 

支払いは、と聞くと「既に徴収済み」と受付で答えが返ってきた。

おかしい。

いくら戦火の絶えないキヴォトスとは言えど入院費は安くない。

現にセリカやノノミ、アヤネやワカモ達の入院費は俺に請求されていた。

 

と、なるとだ。

誰かが先に支払いを済ませてくれていたという言葉そのままの意味になる。

 

「さて、シャーレへ戻るぞ衛宮。

桐藤ナギサやサクラコ嬢が待っている。」

 

「──は?

ちょっと待て!

せめてワカモとミカの容態とか────。」

 

病院のホールで(きびす)を返す。

───が、若葉に腕を握られた。

体が、1歩分も前に進まない。

 

「お待ちください、衛宮先生。

もう御三方は退院されたと聞いております。

ただ───。」

 

「ただ?なんだよ。」

 

その先を、若葉は口にしない。

代わりに言峰が述べる。

 

「着いてこい。

速やかにシャーレに戻るぞ。

万事つつがなく事が進んだとは言えない状況だ。」

 

 

そうして久しぶりのシャーレへと戻ってきた。

もう一ヶ月は戻っていなかっただろうこの場所はいきなり会議室と化している。

 

そこに居たのはナギサにサクラコ、ハスミ、ワカモ。

そして浦和。

よく、この面子で戦争になってないんだ?なんて思う。

 

「あ、あなた様!!

お身体の方は!?」

 

「───あぁ、大丈夫だ。

お前は?」

 

「お気遣い有難く....ですが、あなた様の盾となり、銃となれるのなら────」

 

いつも通りのワカモはそこに居た。

むしろ、何時もより元気そうに。

 

何かワカモも踏ん切りが着いたらしい。

「わかったわかった!

ちょっと落ち着いて───」

 

そして、ナギサと視線が重なった。

 

「─────」

 

手をこちらへ伸ばし、口を開こうとしたナギサに首をふる。

話が、したいのだろう。

ずっと、ホストとして対応してきた彼女。

ナギサの心からの言葉は確かに聞きたい。

 

だけれど、今は、その時じゃない。

 

悲しそうに俯くナギサ。

けれど、顔を上げた時には桐藤ナギサではなく、トリニティのホストがそこに居た。

 

「病み上がりだというのに申し訳ありません、衛宮先生。

ですが、聞いて頂きたい───いえ、お話しなければならないことがあり、お呼びだてしました。

サクラコさん、お願いします。」

 

「わかりました。」

 

そうして、聞かされたのは、補習授業部がアリウス分校の生徒やミカ相手に立ち回っていた時、シスターフッドがどう動いていたか。

 

「シスターフッドがティーパーティー並びにフィリウス・パテル分派の汚職生徒を検挙した!?」

 

イリヤの言ってた()()()()ってこれの事か。

 

「.....はい。

形式上は正義実現委員会が行ったことになっていますが...。

既にフィリウス分派は1割、パテル分派は7割ほどが処罰対象です。」

 

「7...割?!」

 

7割って、ほぼ事実上の壊滅じゃないか。

しかもフィリウス分派さえ1割も政務をこなせる生徒が減った。

それは。

 

「......はい。

このままではトリニティ総合学園はティーパーティー(生徒会)を失い、崩壊しかねません。

そして、ナギサさんやミカさんが行ったことを考えると.....。」

 

「そもそもどうしてそんなことになったんだ。」

 

浦和のアテ、とは恐らくシスターフッドの事だったのだろう。

しかし、どうしてシスターフッドは救援に駆けつけなかった。

 

「私の提案だ。」

 

生徒を庇い立てするように言峰は言う。

 

「お前が?」

 

「衛宮ならば間違いなくアリウスによる強襲を防げる。

であれば、我々はこの際"裏"を固めてしまおう、とな。

 

実際このような事も行われている。

下手をすればお前達の相手は聖園ミカだけでなかった。

パテル分派総てが敵に回っていた可能性もあったということだ───」

 

(バラッ)

 

「───っと。」

 

そうして投げられたクリップで止まっている紙の束をキャッチする。

その資料の中の罪状は様々だが主に多かったのは───

 

ミカを通じてアリウスから非合法な武器や弾薬を調達した証拠と形跡が綴られていた。

 

「これが、パテル分派の7割が処罰された理由か。

じゃあ皆ヴァルキューレ警察に引き渡したのか?」

 

「いえ───それは出来ません。」

 

そう述べたハスミ。

 

「なんでだ?これだけの証拠があるんだから最低限聴取くらい出来るだろうし、下手しなくても矯正局送りだろ。」

 

少なくとも、マコやワカモが薙ぎ払った違法武器を取引していた者たちは全員矯正局送りになったと聞いている。

 

ナギサは申し訳なさそうに、述べた。

 

「はい....ですが、ヴァルキューレ───いえ、各学園の生徒会に所属する生徒は矯正局へ送ることは基本出来ないのです。」

 

それは、政治的理由、と言うやつか?

 

つまりだ学園内で処理するしかないということ。

 

「.......どう処分するつもりだ?」

 

「現状維持をしつつ....各生徒への活動制限、特別待遇の除外を行う。

 

と言ったところです。

さらなる問題はここからです。

 

ミカさんの処分について、どうするか。

シスターフッドが秘密裏に動いていたにも関わらず、ミカさんのクーデターの話やパテル分派の規則違反の噂が、何処からか流れまして。」

 

────は?

そんなの暴動確定じゃないか。

 

「今はどうなってるんだ....!」

 

机をつい叩いて立ち上がる。

 

そう聞くとナギサは目を逸らした。

代わりにハスミが語り出す。

 

「落ち着いてください。

話が出回ったというのも、ティーパーティーの間だけの話です。

昨夜、パテル分派の特別寮とミカ様の個人邸宅が放火によって全焼しました。

その結果、処罰対象としてフィリウス分派の数人を捕縛しました。

1割、というのは、そういう事です。

処罰はナギサ様が行いました。」

 

──────。

7割の生徒の処罰。

これまでミカの企み通り、フィリウス分派は噂のおおよそ半分ほどの無実の罪を着せられていて評判もガタ落ちしていた。

実際世間からの視線は痛いままだ。

 

それがミカのせいだったと知れば。

 

パテル分派に向けられた否応なき怒り。

 

パテル分派のリーダー・ミカの処罰。

どのように罰するか。

それこそ停学処分では済まされないだろう。

 

「まさか....ミカを────退学にするってのか?

んな馬鹿な!

だってあいつは魔術によって記憶を改竄された挙句、操られたんだぞ!

 

やっと、ここからだってのに。」

 

「普通なら、そうするしかないんです。

ですが────衛宮先生の仰った通り、ミカさんの記憶が無いんです。」

 

───────────は?

ナギサは何言ってるんだ。

 

「ないって....何が。」

 

「記憶が。

そう、それこそ本当に改竄されているかのように。

 

セイアさんが白州アズサさんに襲撃されたことも。

自身がクーデターを起こしたことも、私を襲撃したことも。

まるで半年前に戻ったかのように。

 

ですが、都合よく衛宮先生の事は知っているみたいなんです。」

 

だから改竄されてる。か。

 

「.......。

ミカに本当の事は?」

 

そう言うとナギサは首を横に振った。

ようやく浦和が固く閉ざしていた口を開く。

 

「今教えてしまっては、ミカさんがどう動くか皆目見当もつきません。

処罰は保留になっています。」

 

浦和の後、ナギサが口を開いた。

「それに、今のミカさんは、おそらく信じられないでしょう。

見えぬ真実とは拒絶しやすい物。

現に───」

 

私が────そうだった、と。

ナギサは身の上を振り返って話していた。

 

「それに、私も補習授業部の皆さんをこんなことに巻き込んで、衛宮先生を利用した挙句撃ち殺しそうになった。

 

この状況を作ったのは、ミカさんだけではありません。」

 

立ち上がったナギサ。

変わらず、その背にはトリニティ総(責任)合学園が載っていた。

 

「この度は、皆様にご迷惑をおかけして───

本当に申し訳ありませんでした。」

 

頭を、深く下げて謝った。

誰も、責められない。

ただただ沈黙がナギサを刺した。

 

俺が言うべきことでは、ないのだろうが、それでも。

俺自身が、耐えられなかった。

 

「頭を上げてくれ、ナギサ。

 

これは、とあるやつの受け売りなんだけどさ。

そいつに言わせれば

生徒───子供は間違っていい。んだってさ。

 

あと1人はこう言ってた、

 

責任を一人で背負っても解決しない。

そもそも責任を持つってのはそういうことじゃない。

ってさ。」

 

「間違っていい?

責任を、持つな?」

 

聞き返してくれた。

今度は、しっかりと俺の話を聞いてくれる。

大丈夫だ、今のナギサになら伝わる。

 

「あ、あと1つ。

これは敵からもらった、相手の心情を一切考えなかった馬鹿の言葉だけど、適切だから使わせてもらう。

 

そもそもこれは「学校」が責任を取るべき問題だ。

確かに問題を起こしたのはお前たちだし、責任感を感じる立場にあるだろうけど、責任そのものはお前達が本来持ってるもんじゃないんだ。」

 

浦和は俺の言葉の真意を読み取ったのか「なるほど」と呟いた。

反対にサクラコやナギサ当人は理解出来ていない。

 

「どういうことですか?」

 

「要は、「学校」────「トリニティ総合学園」に居る皆で解決していかなきゃいけない問題なんだよ。

派閥争いも、ゲヘナへの確執も、そして───アリウス分派の問題も。」

 

お前達だけでは解決できない。

 

否───お前たちだけで解決しては、いけないんだ。

 

「ティーパーティーの仕事が上手くいかないなら問題だ。

けれどこれは違う。

学校そのものの基軸が、もともと脆かったんだよ。

トリニティは規模も派閥も大きいし多すぎる。

 

だから最初から、()()()()()()()()()()ということが間違いだったんだ。

 

そうだな。

そう考えると.....一人で抱え込んでたのはいただけないな。」

 

そうして、ナギサの頭に手を置く。

ナギサは一瞬怯えるように震えた。

 

「.......セイアもいない、世間体を保つならミカもティーパーティーとして動けない。

そうなると、お前の補助をしてくれる奴が必要だな。

 

─────お前が認可してくれるなら、俺はティーパーティーの顧問になるよ。」

 

「「────!」」

 

ガタガタと机を鳴らす音。

そこには困り果てたワカモの姿。

 

「あなた様、それはあまりにも危険です。

分かっていらっしゃるのでしょうけれど、言わせていただきます。

 

ゲヘナに対して、どう申し開きをするのですか。

今はエデン条約施行前、両者のバランスを崩すようなことをあなた様がなさるなど....。

 

それにアビドス生徒会、対策委員会の顧問でもあります。

士郎さんを信じている彼女達を疑う訳ではありませんが。

あちらは5人で学校を運営しています。

手が足りていないのは彼女たちの方。

 

間違いなくセリカ(黒猫)シロコ(銀髪狼)は不満に思うでしょう。」

 

....言いたいことはわかる。

間違いなく、どちらかしか選択できない。

所詮アビドスは綱渡りをしているに過ぎず、本来いなければいけない。

 

皆が俺へ視線を向けた。

そりゃそうだ。

受け持った責任を、途中で投げ出すような行為だ。

誰がそんな奴に仕事を任せられるというのか。

 

「だけどこのままじゃ── 」

 

元の木阿弥。

ナギサはまた、孤立し1人で責任を背負うことになる。

 

浦和は、ため息を吐いて決心するように立った。

 

「では────衛宮先生ほど頭が回るちょっと変わった生徒と。

トリニティで最大の情報収集能力を持っている集団のリーダーが補助に入ったら、どうでしょう?」

 

「────えっ...私ですか?」

 

「────。」

 

最大の、助け舟だった。

問題はサクラコが一切流れを理解していなかったこと。

それに────

 

「いいのか、浦和。

お前は元々そういう環境が───」

 

「確かに利用されるのは正直に言って、嫌です。

私は道具にされるつもりはありません。

ですが────誰かを手助けするのであれば話は別です。

 

衛宮先生は仰いました。

 

「これはトリニティ総合学園全体が、意識して解決していく問題だ」と。

であれば、それは私達全員に責任がある、という事です。

どうして私だけが無関係でいたい、なんて我儘が通るのでしょう?

 

それに────私には今守りたいものがあります。

一度、自身の手で壊そうとしたものを。

衛宮先生がここまで繋いできた「繋がり」を。」

 

ここまで言われて、誰がダメなんて言えるか。

見たくないものをずっと見てきた浦和は、やっと見たいものが見えたのだ。

 

「.....わかった。

それでいこう。

 

サクラコ、負担をかけるだろうけど、大丈夫か?」

 

確かシスターフッドは内政にはあまり干渉しない主義を持っていた、と浦和が言っていた。

 

「....今回のような事が未然に防げるのでしたら。

安寧の為に()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

 

「「─────。」」

 

なんか変なことを言い始めたサクラコ。

聞き取り方によっては死刑がくだされそうな台詞。

 

当然浦和が反応した。

 

「サクラコさん今の────」

 

既のところで口を塞いだ。

 

「まぁ、なんだ!

とりあえず方針は決まったな!

一旦解散だ!

 

.....ちょっと浦和こっち来い!」

 

「あら...?衛宮先生、そんなに顔を赤らめて──。」

 

全く。

 

まぁそうじゃなきゃ浦和らしくない。

バカ真面目なナギサも、そうやって巻き込んでいくんだろう未来が見えた。

 

見通しの悪いトリニティ総合学園の未来。

そこに一筋の光が、差し込んだ瞬間だった。

 

「ありがとうな浦和。」

 

「こちらこそ........衛宮先生。

本当にありがとうございました。」

 

浦和は、そう、呟いてくるりと振り返る。

 

「やっと、お伝えできました。

では、私は取り調べをしているアズサちゃん達のところへ向かいます。

 

衛宮先生はそちらの方としっかりお話をしてくださいね?」

 

「あぁ、また後でな。 」

 

最後に、互いに手を振って浦和はシャーレを後にした。

 

「衛宮先生!」

 

足音で気づいていた。

そこに居たのはナギサだった。

 

「ん?

謝罪ならもういらないぞ。

 

あ───許す許さないの話じゃなくて。

俺にはそもそも責める権利なんてないんだから。

むしろ、悪かったなお前のことをしっかりと理解してやれなくて。」

 

謝らなければならないと思った。

それはナギサだけでない。

自身にもだ。

 

何せ「他人を理解するための努力を怠った」から。

 

「そんな.....私は。」

 

「俺は今回の件で、より成長できた、.....と思う。

何しろ本気で生徒を怒ったのなんて初めてだったしな。」

 

......拳を握るナギサの表情は、迷っていた。

 

「言いたいことがあるならこの際言ってくれ。

俺は、ずっと「先生」とか「大人」とか「責任」に逃げてたようなもんだ。」

 

「では────。」

 

ナギサは言う。

 

「今回の事件は、まだ解決していません。

先程狐坂ワカモさんが仰ったことは理解しております。

 

それでも恥を忍んでお願いしたいのです。

真相を調べて欲しいのです。」

 

つまり。

それは───。

 

「.....それは犯人探しを続けろってことか?」

 

その質問は、浅慮だったと少し後悔した。

それでも勘違いのないように尋ねなければ。

今の俺たちにあってはいけないのは「誤解」だ。

 

「いいえ、衛宮先生、だからこそです。

 

今の私は裏切り者を探しているのではありません。

 

私は────ミカさんの本当の動機が知りたい─。

 

衛宮先生には、私と共に「裏切り者の真実」を探していただきたいのです。

 

ミカは───

失礼しました。

ミカさんは、本当は何がしたかったのか。

そして、それを気づいてあげられなかった私が、今度は彼女に寄り添って────

 

今度こそ、本当に人の意思の、意味を汲み取れるホストになるために

いつかはミカさんとも、向き合います。

ですから。」

 

「なんだ、そんなことか。」

「え...?」

 

「俺は最初からそのつもりだ。

ミカを放置するつもりなんて毛頭ない。

なんせ学力試験は延期──なんだろ?

なら俺の仕事も、ワカモの仕事も残ったままだしさ。

それに、マコも探さなきゃならない。

 

だから俺はトリニティに居るよ。

だから約束してくれ。

 

まずは一人で考えないこと、周りに相談する。

これまでは出来なかっただろうけれど、今度は俺がいる。

信じてくれ。」

 

「分かりました、浅学非才の身の全力を賭して。」

 

ナギサは、やっと、笑ってくれた。

 

そうだ、やっと、踏み出せた「先生」としての道。

ようやく見えてきたそれを俺は追いかける。

 

大丈夫だ、形から入る、ってのは俺の得意分野なんだから。

 

その先に、皆の笑顔があると信じて。

 

 

vol3 第二章 [完] to be continued....




すみません、完全に設定です。

今作の「ヘイローを破壊できる爆弾」は本物の概念武装です。
理論?仕組み?知ったこっちゃないね←(殴

この後は絆インタールードを挟み、ドタバタシスター魔術師イベント。
と、とあるイベントを魔改造したお話をお送りします。

という訳でエデン条約編、終了とはいきませんが
一区切りとなりました。
ここまでのご意見ご感想をお待ちしております。

あと、「この生徒の絆インタールード見たい」なども。
可能であれば書きます

以上!お疲れ様でした。

あー.....疲れたぁ。

アズサとの絆エピソードの前半はとある理由で士郎を怒ったアズサが士郎をガンショップに連れていく話です。(今のところ)さて、士郎はどんな銃を買うでしょう。

  • 回転式拳銃(リボルバー)(一丁)
  • 自動式拳銃(オートマチック)(二丁)
  • サブマシンガン(一丁)
  • マシンガン(一丁)
  • アサルトライフル(一丁)
  • スナイパーライフル(一丁)
  • ショットガン(一丁)
  • ショットガン※レバー式(二丁)
  • アンチマテリアルライフル(一丁)
  • 買わない
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