衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】   作:神宮寺志狼

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先に言います。
タイトルは間違いではありません。
汚名、挽回
間違われることで有名な「汚名返上」と「名誉挽回」

1番大事なところを入れ替えてしまっては元も子もない、というもはや間違っている造語なのにも関わらず浸透してしまったのがこの言葉です。

なんでこんなタイトルかって言うと。

ナギサが士郎に対して恩を仇で返す(ような事)をしてしまうからですね。
さて、皆さん、ナギサの絆ストーリー覚えておりますでしょうか。

まさかの昆布茶を先生に振る舞い

「珍しい茶葉が入りまして」とか言い始めるし、先生も最後の最後まで気づいていないフリをしていました。

さてさて、さらに皆様覚えておりますでしょうか。
士郎の苦手なもの。

梅昆布茶

後は、わかりますね?
因果も何もない悪改変。
(ゲス顔)


それとすみません。
このエデン条約編2章と3章のインターバルに挟まる絆インタルードは2章の話を引き摺っており、言ってしまえば「騒動後の始末感」が半端ないです。
しかも「エデン条約3章前」なので一切がスッキリ解決しません。
ただのまとめです。

ですが、3章の結末。
言ってしまえばナギサやヒフミの意識変化に大きく関わってくる大事なお話となっています。(伝わるかどうかは分からないけれど)
飛ばさずお読みいただきたい。

あ、あと最後に。
前回ミカの事に対してかなり長い前書きをしました。
恒例にするつもりはありませんが、今回はナギサです。

ナギサ推しの先生方。
これまで本当に申し訳ありませんでした。
ここまでかなりナギサを貶めるような脚本にしました。

特にミカに逃げ場を用意されて一瞬責任を投げそうになるナギサ。
どう考えても解釈違いというか、キャラクター像が崩壊してるというか。

敢えて、こうしました。
言い訳にしかなりませんが、私は、「ティーパーティーのホストとして完成する前の弱いナギサ」を書きたかった。

セイアが襲撃されたと知らされ、急にホストの座を投げ渡されて。
葛藤だらけだったと思うんですよ。

個人の意見になるんですが、私も今の仕事場の上長が「上長の責任」をほぼ私に投げて実質的なリーダーをしていた頃がありました。

同情を誘うつもりはありませんが、今までの人生の中で1番精神的にボロボロになった時期です。

まず思うのは「何故、私なの」と。
それだったんですよね。

まぁ「弱いお前とナギサを一緒にするな」なんて言われても文句言えないですけど。

そして、去年の夏イベで語られた「以前のナギサ」に照らし合わせたら同じだったのではないかと。

こう、ガンダムSEEDの某ヤマト准将といいますか。
いや、これ以上言葉を重ねても仕方ない。
結果こうしたのは私なんだから。




今作のエデン条約編3章はティーパーティーの3人全員出すつもりです。
特に大きく変わるのはナギサ周り。

例えそれが煤だろうが油で汚れていたとしても。
誇りだけは、汚せない。
失態を贖うつもりはありません。
弱いナギサを書いたのは、「ここからがスタート地点」だから。

ナギサは絶対に輝かせてみせます。


Vol3-1 interlude
TRINITY Nagisa's Interlude 1「汚名、挽回(上塗)


 

あれからはや数日。

トリニティでの騒動は落ち着きつつある。

 

というのもナギサがようやく、声明を出したからだ。

 

 

半年間もの間、ティーパーティーの代表の命を狙う何者かと戦ってきたこと。

その上でシャーレとすれ違い、対立してしまったこと。

結果的に多くの人を巻き込んでしまったことを謝罪した。

 

それは、事実とは若干細部が異なるカバーストーリー。

確かに、エデン条約を控えている今風呂敷をこれ以上広げては身も蓋もない。

 

されど、今回の事件でミカが主犯であることを隠すような内容。

表向きにはミカにもパテル分派の代表として部下の失態に対する責任をとってペナルティを課せられている。

 

次に、セイアの現在の状態はおろか襲撃さえ明かされていない点。

 

そして、犯人は見つかっていない、というアリウス分校の犯行の秘匿。

 

 

更に言うと、サクラコ曰く、「救護騎士団団長と百合園セイアが身を寄せていると思われる建物は焼け跡となっていた」そうだ。

捜索の経緯もこれまた一癖あった。

俺達が美食研と対峙していたあの時、浦和は単独行動していた。

着ぐるみの生徒を見て何か勘づいたらしくシスターフッドに連絡をとり、その場に召喚。

浦和もあれはあれで結構人使いが荒いらしい。

尾行が気づかれたのか、途中から足取りを見失ったらしい。

 

つまりだ。

なのでその建物に本当に二人が居たのかどうかも定かではない。

 

更に言うと後日、その着ぐるみは再び姿を現した。

あのヘリの墜落地点から焼け爛れて発見された。

 

その着ぐるみの生徒の中身が救護騎士団団長なのか、百合園セイアなのか、それと無関係な誰かなのかはっきりしていない。

 

そうだ。

今回、色々なことが解決していない。

 

例えばミカの件。

 

確かに今のミカには責任能力はない。

だからといって周囲まで巻き込んだ上で騙し通すのは無理がある。

 

しかもティーパーティーの信用はナギサのした事によって低下している。

だというのに事情を知っている生徒に箝口令を敷くという危うい手段。

 

処罰を受けた側からしたらナギサの対応やミカに対しての不満しか生まないだろう。

公私混同に近い、職権乱用とも言える。

 

さらに身柄はシャーレ預かりである。

ペナルティに対する課題はシャーレの業務の手伝い。

ナギサも出来るなら様子を見たかったが流石にティーパーティーの代表がこぞって2人とも抜けるというのは本末転倒というかナギサ曰く政治的理由もあり大問題のようで。

 

週に一度はシャーレでティーパーティーの仕事をするような条件になっている。

ナギサに用事がある生徒はわざわざシャーレまでやってくる始末。

正直言って、トリニティ内にシャーレのオフィスを構えた方が早いまである。

 

さてさて、そんなこんなで今日はそのナギサとミカと共に作業をする日なのだが────

 

「ねぇー。

一日中書類と睨めっこばっかりだとつまんないよ。

先生はこういうの好きなの?」

 

「あのなミカ。

そういうお前だって、パテル分派の後始末があるだろ。

というかやり方わからないって言い出すなんて思ってなかったぞ。

これまで処理どうしてたんだよ。」

 

「えぇー?

そういうのは大体"皆"がやってたし。

「余計なことしないでください」なんて言う子もいたしさー。」

 

 

......そうやってミカに何もさせずに自分たちで好き勝手していた訳か。

実際、非合法武器の密輸はミカの監督不行届なだけで、一切関わっていない可能性まである。

サクラコや浦和の話では、どうやら対象の生徒達はこぞって「ミカに指示された」旨を強調しているようだが。

 

やはりミカの記憶が戻らないことには何も分からない。

 

一方、その隣では一言も話さず手を(せわ)しく動かすナギサの姿。

 

「ミカもあれくらい見習った方がいいぞ。

ほら、あれだ。

口より先に手を動かせ、って奴。」

 

「だってやる気出ないんだもん。

家にあった化粧品はおろかお気に入りの服も全部燃えちゃったし。

知らないうちにペナルティで庶民暮らしを強要されてるし。

まぁ特別カリキュラムは退屈だったから別に良かったんだけどさぁ。

流石に銀行の口座まで止まってるのはおかしくないかなぁ?

まさか生活費すらおろせなくなってるとは思わなかったよ。

 

だからその点に関しては衛宮先生には感謝してるんだよね。

基本ずっとシャーレにいろって話になってるから、わざわざトリニティまで戻らずにここで暮らせてるし。

それに料理もとっても美味しい!」

 

そう。

ナギサと違い、ミカは授業以外の時間はシャーレにいる。

それは寝食と含めて、だ。

 

シャーレの居住空間にある、ちょっと大きめな間取りの部屋をあてがった。

しかし、第一声は「狭い」だった。

 

 

というかそもそも実は俺の部屋だったりした。

藤河組も約50人、それぞれ2人1組で相部屋だがそれだけでも25部屋は埋まる。

その上色々なスペースを潰してほぼ丸々1階分が厨房になっている。

マコの部屋だけは一人部屋だが居ないからと言って使わせる訳にも行かず。

部屋の移動するのならほぼ服しかない俺の部屋、ということになった。

 

ちなみに俺は今休憩室で寝泊まりしている。

その点は別に不満は無い。

 

問題なのは、ミカと藤河組の軋轢だ。

もともとTHEお嬢様なミカと庶民───いや最早底辺と言ってもいい価値観で生きてきた藤河組の生徒たち。

 

ミカが不満を言う度、藤河の後輩達もミカに対しての不満や愚痴を言い始めるのだ。

 

完全に周りを振り回す傍若無人なお嬢様になった。

これが本来の彼女の姿なのだろう。

ここまで来るとナギサの塩対応にも納得がいく。

そして、セイアという少女も、彼女のことを適当にあしらっていたのだろうことも。

 

「......。」

 

そして、今。

ナギサの万年筆を持つ指に段々と力が籠っていくのを感じる。

フレームが歪んでいる。

いつバキっといってもおかしくない。

 

「ミカさん....その辺にしてください....。

そもそもこうなったのは大半貴女のせいなんですから。」

 

「えー?私何かした?」

 

「─────衛宮先生、いえ、シャーレにミカさんを預けたのは失敗だったかもしれません。

いっその事牢にでも閉じ込めて反省するまでロールケーキだけの生活を────」

 

「....ナギちゃん真顔で言うのやめよ?ね?」

 

さらに言うとミカの面倒を見ている間の生活費はナギサの仕送りであったりする。

俺は断ったのだが、どれだけ言っても退かなかった。

 

本来のナギサは負けず嫌いなのかもしれない。

さらに言うと、どうやら補習授業部だけでなく正義実現委員会、ヘリ墜落の被災者の人達に謝りに行ったそうだ。

ちなみにゲヘナは美食研究会がトリニティで暴れた手前、強く出れないらしく、負債そのものが相殺されたのだとか。

 

 

ナギサはある1点以外において、完全に俺に対して遠慮している。

トリニティの(まつりごと)

ここに関してだけは一切口を出させてくれない。

確かに俺は政治に関しては無知蒙昧だ。

とはいえな....。

 

「それで、先生。

さっきから部屋の外に何人かいるんだけど。

何で?」

 

ミカの視線が部屋の外へ向けられる。

シャーレで人の出入りは行われていないのが結界で分かる。

 

だとすれば答えはひとつ。

 

「多分、藤河組の皆だな。」

 

「ふーん....。わざわざドアの外で何してるの?」

 

確かに雰囲気がおかしい。

入ってくるでもなく、立ち去る訳でもない。

椅子を引いて立ち上がる。

 

「少し様子見てくる。

ミカ、お前は気にせず手を動かせ。

そろそろナギサに怒られるぞ。」

 

ドアに向かっていくと「げっ、やばっ!」なんて声がする。

足の歩みを早めた。

廊下には案の定蒔苗(まかない)を初めとした藤河組の生徒。

どいつもこいつも逃げようとしている。

 

「何してんだ?お前達。」

 

恐る恐る振り向く彼女たち。

全員が目を合わせず、遠くを見ている。

 

「....うっす!士郎の旦那。

いや特に、なんも。」

 

「.......腹でも減ったか?

それとも何か?

問題でも起きたとか。」

 

「いやぁ....何も───」

 

蒔苗の後ろではヒソヒソと話している後輩達の姿。

間違いない、絶対に何かある。

 

「蒔苗の後ろにいるのは七種(さいぐさ)か?」

 

呼びかけると驚いたのか震える少女。

呼ばれるとは思っていなかったのだろう。

 

七種(さいぐさ)ユリカ。

いつも蒔苗(まかない)ミキの後ろにいる藤河組の財政管理担当者兼、蒔苗のお目付け役。

 

2人の関係は藤河組になる以前からであり「カタカタヘルメット団」の時からの付き合い。

基本的に他のヘルメット団や自治区の生徒と喧嘩に発展する蒔苗に対してマコが七種(さいぐさ)に指示をしたのだとか。

一件蒔苗の暴走を制御できなさそうな2人組だが、内気そうに見える七種(さいぐさ)はマコ曰く怒ると手がつけられなくなるらしい。

 

「よし、お前達、何があったのか言うまで人質な。」

 

2人の首根っこを掴んだ。

 

「あ!ちくしょう!離せよ旦那!

あたしは何されたって動じないし、絶対(ぜってぇー)口割らねぇからなっ!」

 

勇ましいことこの上ない。

こいつ、腕はともかく、性格的には美甘と相性良いのではなかろうか

 

「......。

観念しようよ、ミキちゃん。」

 

「じゃあユリカが言えよ!

『ホシノパイセンに皆して怒られましたー』って。」

 

......?

ちょっと待った。

なんでホシノの名前が出てきたんだ?

 

「アビドスでなんかやったのか?お前達。」

 

「あ、やべっ!」

 

口を滑らせた蒔苗に視線が集中すると同時に七種(さいぐさ)が白状した。

 

「対策委員会付きの子達が部室でトリニティの文句を言ってたそうなんです。

特に、その.....そこに今いるナギサさんのこと....。

 

『自分の学園内だけはいい顔をたててこっちには謝りにも来ない。』とか。

『急に()()()シャーレに出張ってきて居場所を掠め取った恥知らず。』とか。

『面汚しの生徒会長が。』とか。

冗談半分だと思うんですけど、『ちょっと分からせた方が良くない?』なんて事も言ったりしたそうで....」

 

その言葉の後、七種の後ろにいる2人の顔が俯いた。

蒔苗の班員だ。

おそらくその話をしていた当人達だろう

現状、話から察せられた陽気さは何処にもない。

 

話の途中なのは分かっている。

しかし良くない方向に走り出しているのは明白だ。

「藤河組」が「カタカタヘルメット団」に()()()()()()ように思えた。

原因は当然、リーダー藤河マコの欠員によるもの。

彼女達にとってマコは頼れる姉貴分であり、かつ指導役。

言わば、「しつけ役」の不在。

今のこいつらには叱ってくれる存在が誰もいなかった。

 

 

────違うだろ。

頭を冷やせ。

そもそも俺はマコに頼りすぎていた。

元はと言えば、こいつらをここへ呼んだのは俺なのだから。

何が正しいか、何が間違いか、俺が言うべきだったのだ。

 

蒔苗も諦めたように七種(さいぐさ)の後に続いた。

 

「そのさ....セリカとかは「またその話~?」って言ってくれたんだけどさ。

それを聞いたホシノ先輩、怒り出したんだ。

 

『なら今すぐトリニティの生徒会長を撃ちにいけば?』って。」

 

いや待て、お前がそれを言うのか。

 

「ホシノの奴何考え─

───待て、今、ホシノの前でなんて言ったって?」

 

『面汚しの生徒会長───』

記憶───いやホシノの()()が、呼び起こされた。

 

「──────。

その後お前達はなんて言い返した、ホシノはなんて言った?」

 

怒りを、押さえつけるように、拳を握りこんだ。

ホシノの前で、その発言は許されない。

 

蒔苗と七種は知らない様子で、後ろにいる二人へ視線を送った。

それにより1人は泣き出し、七種が介抱し、会釈だけしてこの場去った。

その様子をみて蒔苗が睨みをきかせ、ようやく残った生徒は白状した。

 

「....今思えばホシノ先輩の声色、すごく冷えていたのに。

私達ノリよく「そうしましょ!」なんて言ってしまって。

 

その後、こう......言い表せない目で.....

「貴女達も、他人から何かを奪った経験があるじゃない。

責める権利、ある?」

って....物凄い失望したような瞳で問いただされて。

 

誰も何も言えなくて、何で怒ってるのか分からないまま「すみません」って言ったら。

「1人残らず藤河組のみんな集めて」って。」

 

何度も頭を下げる目の前の少女。

庇い立てするように蒔苗が俺の視線からその子を隠した。

 

「そっからあたしら全員呼び出されて、説教されたんだよ。

 

『今回の件に関して、皆がどう思ってても私は構わないよ。

けどさ、きちんとした事情も知らないのにないことあること言うのはさ、違くない?

 

言葉は力なんだよ。

それこそ弾なんかより責任はもっとずっと重い。

 

何も知らないのに生意気言って、人の人生狂わせたり奪ったりすることだってあるかもしれないよ?

そういう痛い目見る時は大体いつも取り返しがつかないんだよ。

 

特にさ、貴女達がいるシャーレはキヴォトスにおいて大事な場所。

色んな学校が頼ったり、頼られたりする()()()()なんだよ。

なのに貴女達皆がそんなだったら衛宮先生に迷惑がかかっちゃう。』

 

 

何か旦那の事も責めてたぞ。

「衛宮先生は甘すぎる」って。

 

貴女達はまだ子供だから重い責任なんて背負えない。

自分で背負えるだけの責任を持てる発言をしろ。

トリニティの生徒会長ときちんと話をするまでアビドスに戻ってくるな。

って言われて....その.....出禁、喰らった。」

 

......俺としても、怒った当人としても痛い話だ。

代わりに叱ってくれたホシノには念を押して謝っておこう。

とりあえず反省は後回し。

 

「確かにお前達には何一つ明かしてない。

 

それどころか今マコが何処にいるのか、俺だってナギサにだって分からないんだ。

お前らの憤りだってよく分かるよ。

 

それで?

ホシノに叱られた上で、お前達はなんでここに来た。」

 

親によっては、反省しない子供を家から追い出して鍵をかける、なんて諭し方もあるらしいが、今回が正にそうだろう。

 

こいつらは、自分の居場所を失ってどうすればいいか分からない迷い子だ。

 

「「追い出されたのもお前のせいだ」ってナギサに文句言う為か?」

 

「違う、そんなんじゃない!

......けど。」

 

皆反省している、と言わんばかりに噛み付いてきた蒔苗。

けれど、その勢いは削れて言った。

 

どうしていいか、わからないのだろう。

 

「今の、お話。聞かせていただきました。」

 

ドアが開かれる。

 

「ナギサ?!

ちょっと待ってくれ、まだ───」

 

「衛宮先生───少々お暇を頂いてもよろしいでしょうか。

藤河組の皆さんと、お話がしたいのです。」

 

こいつらをナギサとぶつけるのは、みんなの意思を確かめてからだと。

そう思っていたのだが。

 

ナギサが俺を見る視線には、迷いがなかった。

大丈夫なのか、と聞くのが無粋で、失礼に思えるほど。

自然に、トリニティのホストとして、そこに居る。

 

だから敢えて別の話題にした。

 

「ミカは大丈夫なのか?」

 

「ええ、今のミカさんは()()()ですから♪」

 

なんか、急に怖いこと言い始めた。

 

「.....どういうことなんだよ...。」

 

「見れば、わかるかと。」

 

.....何を言ってるのか分からないけど。

とにかく覚悟は決まっているらしい。

 

「.....レセプションルームを使ってくれ。

こんな廊下でするような話じゃないんだろ?

 

この人数でしっかり話し合いができるのはそこだけだ。」

 

「ありがとうございます。

ではしばらくの間ミカさんをよろしくお願いいたします。」

 

そして、軽く頭を下げたナギサは、誰に声をかける訳でもなく。

堂々と歩いていく。

その様子を見て、皆が左右に別れて道を作った(譲った)

 

「なんだよ、アイツ。

盗み聞きなんてお嬢様にしてはいい趣味してんなぁ。

 

それになんだよ、あのお高くとまった態度。

何も言わずにひとりで行っちまったしよ....。」

 

折角ナギサが覚悟決めたというのに、ぶつくさ文句を垂れる蒔苗。

何も分かっていない。

───すこしカチンと来たぞ。

 

アイツ(ナギサ)の格好が立たないから解説してやりたくないんだけどな。

 

お前達に指示を出せるのはマコか俺だ。

何せお前達は「シャーレの藤河組」なんだからな。

 

それをトリニティの生徒会長(ホスト)とは言え、着いてこいなんて指示もお願いも出来ないだろ。

空気で察しろって事だこの馬鹿。」

 

「え...えぇ...何!?

旦那までマジでキレんなってっ!

 

───ってかなんだよ皆して「あー言っちゃった」みたいなこの場の雰囲気!」

 

......。

訂正、反省してないバカ1人。

ここはホシノを見習うことにしよう。

 

「なら、俺からも一つ。

 

ナギサと和解するまで職務室に戻ってくるな!」

 

後ろを振り向いて部屋に戻る。

ピシャリと自動ドアが冷たく閉まった。

 

Interlude 質疑応答

 

「───お忙しい中、お集まり頂き誠にありがとうございます。」

 

なんて、第一声はそんなんだった。

あたし達は怒られた事は一度置いて、そいつを睨みつけた。

 

トリニティのホストが何を言いに来たんだか。

贅沢している奴の頭から出てくる言葉なんて上っ面だけを整えたその場だけのもん。

 

「こうしてお話の場を設けて頂いたのは他でもありません。

藤河マコさんについてです。────」

 

そうして語られたのは、今は反省してます。みたいな感じの「過去の事」として話された出来事。

皆納得なんて出来て無さそうな表情で聞いている。

 

「────要するに、あんたはウチの姉御を「生徒」どころか「人」としても見てなかった。

 

士郎の旦那を利用するための「道具」として扱ったって事だよな。」

 

「.....はい、事実です。」

 

これを聞いて、怒らない奴はいなかった。

本気で銃を構えてるやつもいる。

 

が、手を出すのはあたしが1番早かった。

綺麗に整った制服の(えり)を掴む。

 

「さすがお貴族様。

言うことが人のそれとは思えないわ。」

 

拳を握りこんで振り上げる

何時でも殴れる体勢。

後ろから「やっちまえ」と背中を押す声さえ聞こえる、

 

それでもこいつは動じない────視線をそらさない。

ずっと真っ直ぐ見つめてくる。

 

瞳に映る私自身と、視線が交差する。

 

まるで「自分で自分を殴ろうとしている」ような気がした。

 

生きる為に、「誰かから奪うしかなかった」私達。

生きる為、「誰かを疑うしかなかった」目の前の少女。

 

加害者(していた側)被害者(される側)になったに過ぎない。

ホシノ先輩の、言う通りだ。

 

「手を挙げにならないのですか?」

 

「.....まだてめぇの謝罪を聞いてない。」

 

気づけば、私の振り上げた腕は、力無く垂れていた。

 

「正直、そういう気持ちはない、っていったら嘘になる。

 

あたし達にとってあんたらトリニティってのは我儘で自分勝手で、金でなんでも解決する大人達と同じ「敵」だった。

ゲヘナの方がマシ、くらいのな。

 

今だってそう変わらねぇ。

 

けどよ、あたし、見ちまったんだよ。

姉御に助けられたあの場所で。」

 

マコ姉がトリニティの生徒や住民と協力して人命救助してたとこを。

トリニティに足を運んだのは、私と姉御だけだ。

トリニティには良い奴もいっぱいいる。

同じくらい、嫌な奴も。

自分の失態を棚に上げて、他人のせいにしてふんぞり返ってる奴。

 

あんたもその後者だと思ってた。

 

でも実際は違う。

 

「殴られる事が分かっててあんたはここまで来た。

しかもわざわざ私達に手を出させるよう誘導してるみたいな言い方しやがって。

これじゃあ結局てめぇの手のひらじゃねぇか。

なんだ、何の為だ、何がしてぇんだよ!お前っ!」

 

 

「私なりの責任のとり方です。

申し訳ありません、あなた方の怒りを収めるにはこれしか──」

 

「なら───殴る訳には行かねぇ。」

 

振り返る。

 

「おい、てめぇら。

今回被害にあったのは誰だ!」

 

「「うっす、マコ姉と蒔苗っす!」」

 

「そうだ、姉御とあたしだ!

だからあたしは姉御が帰ってきたときにこいつの処分を決めてもらおうと思う。

その時にボコしていいって言うならボコす。

殴るなり思うだけ弾叩き込め!

だから今はこいつは許さねぇ、殴ったら全部ケリが着いたことになっちまう。」

 

掴んでいた襟首を離す。

 

「勘違いすんじゃねぇぞ。

謝るってなら先に姉御に対してだ。

次舐めた事してみろ、てめぇの顔にもう一つ穴を作ってやる。」

 

ここに至るまで

笑顔ひとつ見せなかったこいつはここに来て

 

「ありがとうございます。」

 

微笑んで、感謝しやがった。

 

「チッ....戻るぞてめぇら、あたしらはこんな奴に構ってる暇なんてねぇんだ。」

 

「「うっす!」」

 

ずっと頭を下げている桐藤ナギサを1人残してレセプションルームを後にした。

 

Interlude 質疑応答 End

 

「お待ちしておりました、衛宮先生。」

 

「よっ、昨日は大変だったな。」

 

「申し訳ありません.....衛宮先生。

まさかミカさんがあれほど開き直────こほん。

我儘な様子とは思いませんでした。」

 

その翌日の事。

ナギサからトリニティの件のテラスに呼び出された。

今日は仕事抜きでの茶会として招待してくれたらしい。

───にしては、相手が俺だけ、というのも配慮がなっている、といえばいいのか。

俺としてはその辺のマナーや礼儀は全くわからないけれど。

 

しかも途端に謝ってくるのだからこれもまた引け目を感じているに違いない。

 

ちなみにミカは酷い有様だった。

何しろビッグサイズのロールケーキに頭が埋まって「うーうーう」と呻いていたのだから。

 

「あぁ。いや本当に悪かったな....。

お前がどんな苦労してきたか、その一部が垣間見えた気がするよ。

セイアが倒れてから引き継ぎとか何もなかったんだろ?」

 

「お気遣い有難く。

そうですね、これと言ったことは特に。」

 

「えっと、サンクトゥス分派だっけ?

そっちの代表とは仲良くやってるのか?」

 

「───それなりには。」

 

聞くと、ナギサは言葉を濁した。

ぼちぼち、と言ったところか。

どうしようか、と悩んでいたところ、彼女の方から切り出してきた。

 

「申し訳ありません。

隠し事をしている訳でも、衛宮先生を信用していないわけでもないのです。

 

ですが....この立場になってから誰かに意見を求めたり、助けを乞う事がなかったので...何処まで話していいのか、と。」

 

「なるほどな。

部外秘以外のことならちょっとした悩みだって相談には乗るぞ。

 

俺は最初に話した通り、結局トリニティの事を理解しきれてない。

ある程度は補習授業部に居て、理解したつもりではあるけどまだ足りないはずだ。

 

お前と一緒に歩むって決めた。

皆でこの学校をより良くしようって言った。

だから、お前達の事も理解したい。」

 

「『理解する努力を止めてはいけない。』ですか。

ヒフミさんから聞いています。

 

『衛宮先生は勉学は積極的には教えてこなかった。

でも大切な「生き方」について教えてもらった』と。」

 

生き方.....。

そんな大層なもんじゃない。

ただ諦めるな、止まるな。

それしか言えなかった。

 

「それより、昨日。

大丈夫だったか?

アイツら変なこと言ったり、迷惑かけたりしたか?」

 

アイツら、というのが誰のことなのか。

言わずとも気づいたらしい。

 

「........そうですね...。

特に酷い事()()()()()()()()()()....。

アビドスの生徒会長には感謝しなければ....。」

 

その理由も....思ったより記憶に残るようなことだったのか。

まぁナギサが何も言わないなら水に流そう。

という事で一言、アドバイス。

 

「違う、ホシノは生徒会長じゃなくて()()()だぞ、ナギサ。」

 

「これは失礼しました。

生徒会長の座は空席でしたね。

 

さて、では御足労頂いたお詫びを兼ねてお茶を。

 

実は以前「コンブチャ」という紅茶を頂いたのですが、それが中々の美味でして ....失礼しました。

 

私、紅茶には目がなくて。

キヴォトスにある紅茶のブランドはおおよそ把握しているくらいで ...。

「レプトン」のような一般的な物から、トリニティでもなかなかな手に入らない「トワイライト」社の高級茶葉まで───

マコさん曰く「衛宮先生も紅茶が好き」と聞いております。」

 

トワイ....ライト?

一缶下手な話2千円くらいしてしかも1週間くらいで飲みきっちまうあの?

 

マコの奴....適当なこと言ったな!?

「待て待て!そんな高級茶葉で香り慣れしてる奴と対等に話せる自信なんてないぞ!」

 

焦りつつそう言うと、まさかの「冗談です」なんて返しやがった。

 

「おそらく、紅茶に対しての意見が食い違うと、以前の関係よりもっと悲惨なことになってしまうので。

あら、そうでした。

方式や手順に対して意見はありますか?」

 

「いや、ナギサに任せるよ....。」

 

悲惨な関係になる、ということはナギサには譲れないこだわりがあると言うこと。

この辺りもアーチャーがよく言っていた。

方式や温度、時間により味、風味、香りが全く異なると。

とかいっておきながらナギサ、こちらに選択肢を用意するのは、なんなんだ。

 

「さて、お話がだいぶ逸れてしまいました。

これから召し上がって頂くのは先日手に入った茶葉でして。

どうも百鬼夜行連合学院の方面で古くから飲まれているものなのだとか。」

 

「そのコンブチャが?」

 

コンブチャ、というのは昆布(コンブ)を摩り下ろしたお茶ではない。

烏龍茶のような発酵させる飲料で、茶に砂糖や酵母菌をそなえ発酵させることで作られる別名:【紅茶キノコ】とも呼ばれる。

 

百鬼夜行連合学院にはまだ足を踏み入れたことすらない。

もしかしたら俺の知識と一切違う飲み物になっている可能性も。

 

 

「はい、ベルガモットの爽やかな香りが広がる、すっきりとした飲みやすい味わいで─────。」

 

何やら背を向けてアレコレ準備していたナギサがフリーズした。

 

「───梅...?

そうですか失礼しました。

梅の香りが微かに香る、美味しい紅茶.....だそうです。」

 

何か、変なこと言ってないか?

 

振り返るナギサの表情は引きつっている。

俺の目の前にソーサーと件の茶が入ったティーカップを置くだけ。

 

無言.....?

昨日蒔苗達にああ言った手前、こういうのは空気を読んで───

「お、いい香りだな。

いただきます。

 

───────。」

 

1口、どろりとした粘り気のある風味。

喉全体に残る少々の不快感。

 

これは魔改造したとろろ汁のような───。

 

「おい、ナギサ。」

 

「ど、どうでしょう今回の紅茶は────」

空気を読んで──────読めるか!こんなもんッ!!

「これはコンブチャじゃなくて昆布茶だぁ!しかも梅!」

 

梅昆布茶。

苦手すぎて1口手につけてそれっきりだったそいつ。

まさかこんな所で、こんな手段で───

 

さらに追い打ちがナギサを襲う。

周りのティーパーティーの生徒がボソボソと色々口にし始めた。

 

「確かシャーレの公式サイトに衛宮先生のプロフィールあったよね。

確かあれ、苦手なものとか書いてあった....。」

 

「────本当。

ということはナギサ様はわざと───」

 

みるみるうちに、ナギサの顔が青ざめていく。

 

「ち、違うのですっ!先生これは───」

 

そして頭を抑えながら、

 

(バタッ....)

 

その場で卒倒した。

 

 

「お、おい!?ナギサしっかりしろ!」

その後茶会など続けられるはずもなく。

救護騎士団にナギサを預けてお開きとなった。

 

また、俺に手を挙げた前例があることから「桐藤ナギサは衛宮士郎に毒を盛った」とかいう噂が流れたんだとか流れてないんだとか。

 

【終】




なんだ ....1万文字超えるって....

当初軽く五千文字で終わる予定だったのに...。

アズサとの絆エピソードの前半はとある理由で士郎を怒ったアズサが士郎をガンショップに連れていく話です。(今のところ)さて、士郎はどんな銃を買うでしょう。

  • 回転式拳銃(リボルバー)(一丁)
  • 自動式拳銃(オートマチック)(二丁)
  • サブマシンガン(一丁)
  • マシンガン(一丁)
  • アサルトライフル(一丁)
  • スナイパーライフル(一丁)
  • ショットガン(一丁)
  • ショットガン※レバー式(二丁)
  • アンチマテリアルライフル(一丁)
  • 買わない
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