衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】 作:神宮寺志狼
大丈夫かな....キャラ崩壊してないよね....?
あと、本日誕生日である〈あの子〉が久々に活躍するお話でもあります。
これ、本来ハルナの絆ストーリーにするつもりだったのに.....。
後、私は車の運転免許なんて持ってないので、その辺の描写、間違ってたら教えてください。
シャーレの衛宮先生。
助けて貰ってから3週間以上が経過し、待てど暮らせど、彼は訪れません。
今、トリニティは衛宮先生と
けれど。助けてもらったお礼がしたい。
私にできることは料理を作るだけ。
「あ、もしもし。
シャーレの.....えっ、衛宮先生ですか....!
あぁ、よかった、私です、愛清フウカです────」
私には完璧な作戦があり
シャーレの衛宮先生はお料理上手と聞きます。
あの美食研の4人揃ってあの人の話を良くするし。
執着しているんだからそれは疑いようのない事実。
私がお弁当を持っていって何になるというのかというお話。
でも、だからこそ、効くんです。
お料理上手ということはしばらくの間、誰かの料理を食べる機会はなかった....はず。
お料理とは、自らの為に作るものではないことを知っている。
誰かを笑顔にするために、私はずっと厨房に立ってきた。
「よし、具体的な好みが分からなかったから、色々作ってしまったけれど────」
私なりには完璧。
厚底三段弁当箱の完成。
そうして、シャーレへと出発した。
しかし────。
「なんでこうなるのよぉ.....!」
ゲヘナの外へ出た少し後、アイツらが当然のように現れた。
「あちらの車へ乗り移ります。
イズミさん、貴女はそのまま───」
「え!私だけこのまま運転~!!?」
そして運転中の私は急襲を受け───
気がついたら────
「アカリさん、こちらのお吸い物も美味しいですわよ。」
「あ、いいですね。」
「私こっちの唐揚げの方が気になるんだけど。」
まごころ込めた私のお弁当箱は、蹂躙されてしまった。
私のたった一つの、お礼すら、目の前で儚く消えてしまった。
どうして、こうも何もかも上手くいかないのか────
「フウカが居なくなった?」
連絡してきた天雨が、こともなげに言った。
『はい。
仕事を終えてシャーレに行くと行った後、連絡が取れないのだとか。』
「そういえば朝こっちに連絡来たな。
「昼飯は用意しなくていいです」って。
なんだったんだ?」
『さぁ?自分の胸に聞いてみたらいいんじゃないんですか?
それよりです。仕事の話をしましょう。
フウカさんが最後に確認されたのは、ゲヘナの地区を出た後です。
つまり─────。』
その後、何かに巻き込まれたか、常日頃の如く攫われたか。
で、この問題の厄介な点といえば。
「つまり、「ゲヘナ地区の外で起きた事」だから風紀委員会は直接関与できないってことだな。
任せろ、その為のシャーレなんだから。」
見えてはいないだろうが、にの腕に力こぶを作った。
天雨は溜息を吐く。
ひょっとして呆れられてる?
『SRTが今も機能してくれていれば、こうやって衛宮先生のお手を煩わせることも、ヒナ委員長がこんなになる事も......失礼しました。
らしくない弱音を吐きました、忘れてください。』
SRT .....?
何処か聞いたような気がする名称だ。
「悪い天雨。
その「SRT」ってのはなんだ?」
なにかの略称であることは確か。
例えば警察における特殊強襲部隊、通称S.A.Tとか。
天雨がそんな愚痴をこぼすのだからそう言った件のE.T.Oに近い性質のものだろう。
『なんで知らないんですか。と言いたいですがそれもそうでしたね。
衛宮先生に渡されたガイドブックには恐らくもう載っていないでしようから。
「SRT────Special Response Team」
連邦生徒会長旗下のSRT特殊学園に通う特殊部隊の総称です。』
なんだそれ、初耳だ。
「ってか連邦生徒会長が帰ってきたのか?」
『いえ、帰ってきてなんていません。今も失踪したままだと聞いています。
ですから閉鎖する方向で決定していたんです。
SRTの権限はシャーレのそれに近く、学区、自治区に関わらず活動することができます。
例えばこの間のトリニティで大暴れした美食研究会の引渡し。
この場合、トリニティは美食研究会を捕縛することはできますが、裁くことはできず、ゲヘナに委ねる形になります。』
そうだ、その結果、またも懲罰房を脱走した。
これも原因がわかっていない。
下手な話ミカの回した手かもしれないが。
「で、SRTだったら逮捕できると。 なるほどな。」
大半、必要な権利がシャーレにあるわけで。
自分がいなくなることを見越して、連邦生徒会長は超法規的な権限を有するシャーレを設立し俺に預けたのだろう。
『今はヴァルキューレに大半が編入されたと聞いています。』
「そうか。」
連邦生徒会長が居なくなったのは半分俺のせいのようなもの。
その後始末は、俺がしなければならない。
ヴァルキューレは....カヤの管轄だったか。
今度事情を聞いてみよう。
『......衛宮先生。』
重い雰囲気で、躊躇うように話す天雨。
それは疲れではなく、俺に対して失望したような。
「他にもなんかあったのか?」
聞き方は良くなかっただろう。
そこは認める。
けれど───
『.........だからあなたの事が嫌いなんですよ、私は。』
「は?」
聞こえてきたのは否定の言葉。
おまけに小さいが、舌打ちしたような声も聞こえるし。
まぁ強いて言うなら、まだ体の中で弾丸も剣も精製されてない為、本気では無いのだろうということだけ。
嫌な把握の仕方だが。
なんか、本当に天雨からキレられている。
心当たりは無い。
原因がわからない。
「ま、待ってくれ。
舌打ちされるほどお前に何かしたか?
何がダメだったんだ?
言ってくれないと分からないぞ。」
『.......いえ。
失礼しました、これはまたの機会にします。』
「....そうか、お前がそういうなら無理には聞かないけど。
ただなぁ────お前、大丈夫か?」
俺の中での天雨アコとは、激情家ではあるものの、それを表に出さず、ある程度は自分の立場を弁えて話をするような奴だ。
しかもその裏では「どう相手を懐柔するか」とか「自分の優位に立てるような策略」なんてのも考えてるのでは、なんて思っていた。
それが、どうだろう。
感情的に意見を述べている。
「ちゃんと飯食って、寝てるか?
徹夜はしてないだろうな?」
余計な世話ではあるものの、心配して怒られることもないだろう。
そう思っていたのだが─────
『私よりもっと心配するべき人がいるでしょう!』
(ガチャリ──!)
一方的に、電話を切られた。
明らかに取り乱している。
これは天雨からは聞き出せない。
とりあえずまずは目先の問題だ。
あの状態の天雨は放っては置けないが、フウカの件も放ったらかしにしてゲヘナに行けば今度こそ何を言われるかわかったものではない。
なんて考えてる中──
「.....やっぱりゲヘナは野蛮だよね~。
通話相手、風紀委員会の変な服きてるあの子でしょ?」
少し───いや。
かなりの嫌味を混ぜ込んだミカの発言。
「─────。」
やや思うところはあるが一旦スルー。
デスクの上のシッテムの箱を手に取る。
相手は隠れてる訳じゃないからイリヤの「目」を借りる理由もない。
たまにはアロナにも仕事をしてもらおう。
ずっと、彼女には貧乏くじを引かせてばかりというか....ちゃんと頼れていない。
「アロナ、ゲヘナ周辺の防犯カメラから数時間前の監視カメラのデータにアクセスして美食研の4人の移動経路を出してくれ。」
『わかりました!
それと、すみません衛宮先生。
ちょっとイリヤさんの事で相談が───』
「イリヤの....?
喧嘩でもしたのか?」
聞けば「そんなことしません」と首を横へ振るアロナ。
どうやらゲヘナやトリニティだけでなく「シッテムの箱」の中でも問題が起きているらしい。
「.....ここ最近、様子がちょっと変なんです。」
わざわざ小声で相談するのだから、本当にイリヤにも何かあったのだろう。
───よく良く考えれば、今のイリヤの現状を何も知らないのだ、俺は。
何か食べているのか?
眠れているのか?
不都合なことは無いか?
この数ヶ月、一切気にしてやらなかった。
「.....わかった、気に止めておく。
さてと....ミカ。
不用意に嫌味な発言するのは辞めた方がいいぞ。
.....俺は出掛けてくるから、いい子で留守番してろよ。」
「うん、おっけー!
気をつけてね衛宮先生。」
バンの所まで移動。
この頃最近ゲヘナへ顔を出していない。
確かにほったらかしていたのは俺が悪い。
『衛宮先生!
フウカさんの現在地が判明しました!
やはり、美食研究会に拉致されたみたいです。』
「流石だな、アロナ!
よし、いつもは捕まってる側けど、今は一味違うぞ。」
目指すべき道が、ようやく見えた。
そこにどうやって行くかなら、自分で決められる。
まず、情報をヴァルキューの交通局に─────あれ?
「なんか勝手に情報がヴァルキューレに送信されてるんだが....。」
Divi:sion systemで地図を検索しただけなのに.....。
しかも、事細かに情報が送信された。
「まぁさしてまずい事じゃないしな。
さてと、仕置きの時間だ、美食研究会。」
シフトレバーを
という訳でいつも通りナビをお願いした。
「アロナ、ナビを───あれ?」
が、しかし───またもDivi:sion systemがナビを開始。
どうなってるんだ、俺の端末は....。
美食研究会───もとい、給食部のトラックの進路へ回り込むように迂回するルートが指定された。
『わわわっ....!?
私のお仕事が取られてしまいました!』
アロナより、早く。
尚且つ指示をしていないのに必要な情報を出し、それだけでなく次に必要な事柄まで繋げてくれる。
信号の切り替わりの表示、相手のトラックのリアルタイムの位置表示から、推定速度。
完全にアロナが携帯のDivi:sion systemによるナビを観察しているだけになっていた。
───というか、待て。
アロナより先に情報を得るって、どんなシステムだよ。
しかも相手の位置情報とか、何処から持ってきたんだ?
.....違法なルート使ってないよな?
「アロナ。
コイツのデータは合ってるのか?」
『ちょ、ちょっと待ってください先生。
─────位置情報と交通システムにアクセスしました。
........タイムラグも0.00005秒しかありません。
うぅ...何故か分かりませんがこのシステムAIさんに、凄く鼻で笑われた気がします。
こう....
って。』
「やけに具体的だな ....。」
呆然と向こう側の教室で立ち尽くすアロナ。
彼女に構うことなく、システムはナビゲートを続けカウントダウンが始まった。
なんて───分かりやすい。
落ち合うのは人通りの少ない十字路交差点。
穏便に済ませたいが、隣につけても彼女達の車は止まらない。
それどころかスピードを上げるだろう。
一方のこちらはパトカーなんかじゃないんだから交通法を無視する訳にもいかない。
ハルナ達の車をどう止めるか。
残り時間は────後1分。
「なぁ、その十字路。
接触予定時刻の信号はどっちが青だ?」
今度は張り合うようにアロナが先に答えた。
『こちらの車の進行方向が、青信号です!
恐らく彼女達の事ですから、信号も無視して通るのではないかと....。』
「目標地点に歩行者とか停めてある車とか──」
今度はシステムの方が先だった。
しかしアロナの焦りは別の方向へ向いていた───主に俺のせいで。
『衛宮先生....まさか!?』
残り時間、30秒。
俺の出した結論は──
「アイツらの進路上に、車をぶつけて強制的に停める!」
無茶苦茶な手段だった。
『き、危険です!
そのバンは緊急用の衝撃吸収材エアバッグを装備してはいますがお互い50km/h以上での衝突となると!』
アロナもシステムも俺の案を否定した。
けれど、システムの方は、それに留まらない。
まるで、見ていたかのように、語る。
「──────。」
ホシノを通じて手に入れたあの力。
あれを使いこなせれば───。
覚えている、どうやったか。
魔力の流れをコントロールするのと同じだ。
『な、何を言ってるんですか!このお馬鹿なシステムさんは!
ハルナさん達の乗っているトラックは言うに時速120キロを超えているんですよ!?』
アロナはカンカンに怒ってDivi:sion systemに対して腕を振って猛抗議している。
『衛宮先生───!』
「お前も心配症だよなアロナ。」
『お願いですから無茶だけは───!』
如何せん時間が無い。
俺は決意を固め、アクセルを全開まで踏む。
これから波乱の幕が上がる前兆か、静けさをまとう十字路。
その交差点へ到達する。
過ぎ去る前にブレーキを入れ、前輪を軸に車が90度回転した。
ドアを開いて車から転がるように飛び降りる。
立つは十字路の中心。
神経を研ぎ澄ます。
スローモーションのように視界に移るゲヘナ給食部のトラック。
展開が遅れれば、死、あるのみ。
その余裕、恐らく僅か3秒にすら満たない。
『もう───!
"概念"から抜け出したからってッ!
どうして無茶ばかりするんですかぁぁ!!』
この世の終わりを悲観するかのような叫びと共にアロナのバリアが展開された。
だが、甘えてはいられない。
それは、最後の守りだ。
自分で選んだ選択だ。
であるのなら、その責任は、その方法は、手段は。
俺が行使しなければ。
「────
トラックを受け止めるがごとく左腕を伸ばし──
「"
投影において、持ちえる最大の盾を引き摺りあげた。
「
さらにホシノの盾を右手で展開する。
壁を盾で穿った時を。
ミカの拳を受け止めたあの時と。
同じ理屈で、力場を作った。
「──────!」
そのさ、コンマ5秒あっただろうか。
アカリが運転するその
ボンネットはまるで無かったかのようにペシャンコに潰れる。
当然のように車は、爆発した。
視界に映ったのは投げ出されたフウカの姿。
幸いなことに衝突の反動で爆発からは逃れられたようだ。
しかし、その身は縄で縛られている。
アレでは受け身すら取れまい。
重力に抗うすべを持たず自由落下していくフウカ目掛け跳躍する。
奇しくも、初めてフウカを助けた時のように、アスファルトを削り取って、着地した。
その拘束を解いた。
「すまん、荒っぽくなっちまった。
大丈夫────」
「あ、あれ?
衛宮...先生...?
どうして────ここに?」
いや、どうしても何もない。
「何って、お前を助けに来た。
風紀委員会に給食部の....牛牧ジュリ...だっけ?
そいつが報告したらしいんだ。
それで天雨から俺のところに回ってきた。
───それより、お前顔酷いことになってるぞ。
あぁ....いや、そうしたのは俺か、悪い。」
そう言って彼女はポケットから携帯を取り出して、内側のカメラで自分の顔を確認した。
飛散し、付着した米粒、漬物、調味料、油まみれだ。
「─────っっ.....//
ひ、酷いです、最初に言ってください!
こんな顔で....折角.....。」
顔を真っ赤にして怒った彼女に驚きを覚えた。
まぁ、これで会うのは二度目だが正直あまり怒らないような印象を持っていた。
「そっか、お前怒るとそんな顔になるんだな。
また生徒の新しい一面を見れて嬉しいよ、オレは。」
「はっ?
えっ.....あの....//」
その後。
赤面する彼女と、一安心した俺の元へヴァルキューレの生徒とどういう訳かゲヘナの救急医学部 部長のセナがやってきた。
セナはあの日と全く同じように死t....負傷者である
そんな訳で俺たちにも事情聴取の話が回ってきた。
「すみません。
衛宮先生、それとゲヘナ給食部の愛清フウカさん。
署へ同行して頂きたいのですが───」
「待った。
俺はともかく、フウカはそのままって訳にもいかない。
この格好で居させたくない。
ここからならシャーレの方が近いだろ?
一度戻ってシャワーを浴びさせてやりたい。」
「────。」
「なるほど.....分かりました。
では日を改めて伺うので、後で連絡致します。」
物分りが良くて助かった。
パトカーが去っていく。
「ただ...。」
失敗したのは、シャーレのバンまでレッカー車で移動され、回収対象になってしまった事。
つまり、俺達は歩いてシャーレに帰るしかない。
「......悪かった。」
給食部のトラックも木っ端微塵だ。
.....この場合シャーレで賠償するのが良いのか、元々問題を起こしたのは美食研究会なので
────少なくとも風紀委員会に請求が行くことだけは、避けなければならないな。
なんて考える中。
『本当です!軽率ですよ、衛宮先生!』
フウカへの謝罪の筈がアロナによって咎められる。
『間に合わなくて死んでしまったらどうすつもりだったんですか!』
「いや、こう.....フウカが
反省はしている。
だが、間違ったことをしたとは、思わない。
「私の...為に来てくれたん...ですよね?」
喜ぶ彼女。
この前は困惑してたり、誘拐されたことに対して憤慨していたのに。
変わった感性の持ち主らしい。
「そうだけど....。
そう言うフウカはどこに向かう最中だったんだ?」
「シャーレです。
.....衛宮先生に.....その....。」
────待った。
今朝彼女は連絡してきた時「昼食を用意しなくて良い」と言った。
そして、彼女の顔に着いた様々な料理や調味料の残滓。
「もしかして、この前の礼に弁当とか?」
こくり、と彼女は頷いた。
となると、シャーレに来る最中、美食研究会に拉致された事になる。
つまりは俺のせいじゃないか。
「折角作ってきたお弁当も....殆どアイツらに食べられてしまいましたけど....あはは..。」
「──────。」
自身にも腹が立つが、ハルナ達の行動も看過できない。
「料理の真髄は「心」。」
そう言ったアイツ自身が、フウカの心の籠った料理を略奪したのだ。
「.....ちょっと、アイツらには喝を入れとくよ。
あと、今度から用事があるなら、俺をゲヘナに呼んでくれ。
────って、言ったけど何時でもどこでも動ける訳じゃないんだった。
すまん、無責任なこと言った。
それよりも折角シャーレに行くんだ。
シャワー浴びたら、気分転換に料理でもするか。」
捲し立てたように提案してしまった。
こういう距離関係は浦和の時にもそうだったけど、地道に───
「衛宮先生と....一緒にお料理....悪くない...よね。
私で良ければ、喜んで♪」
その顔は、あんな事があったにせよ。
まるで目的を達成したかのような、明るい笑顔だった。
その後、シャーレに着いて2人ともシャワーを浴びたり、連絡をとったりして。
落ち着いた時には夕方。
2人で夕飯の支度をした。