衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】 作:神宮寺志狼
「みんな揃いましたね!」
「んにゃ....何何~?この騒ぎ~。」
対策委員会の部屋にはホシノを初めとした5人とワカモが揃っていた。
「それで、この騒ぎは一体なんでしょうか?騒がしい。
それと士郎さんは?」
アヤネとセリカが目を伏せる。
ワカモに話したら爆発しかねないと思ったのだろう。
それでも、話すしかないのだと、アヤネは覚悟を決めた。
「いいですか?ワカモさん。落ち着いて話を聞いてください。
衛宮先生が何者かに襲われました。」
「....はい?詳しく説明を。」
よかった、暴れだしたりしないようだ。とアヤネは一息つく。
「じゃあセリカちゃん。説明を。」
「う、うん。
実はね、みんな。」
そして、セリカは先程起きた出来事を話した。
「うへ....結局こうなっちゃったか。」
「先生は怪我をしているみたいですが聞いた話だとおそらく無事だと思います。
問題はセリカちゃんが狙われていたのに逃げてこれたことから推察すると標的が衛宮先生に切り替わった可能性が。」
「 .....。こうしてる暇はないよ。
セリカちゃん。先生が怪我した場所まで連れてって。
ワカモちゃんも一緒に行こう。」
ホシノが扇動する。
「ええ....士郎さん。待っていてください、私が必ず助けに参ります。」
そして全員が椅子から立ち上がった。
「.....だから身を守ってって言ったのに。
ほんとに先生は馬鹿だなー....それで?敵の高射砲の種類は分かる?」
セリカが答えた。
「多分あの音からして、Flack....でもたぶん、41改の方だと思う。」
「ん...相手は便利屋68、どこから手に入れてきてもおかしくない。」
「厄介だなぁ~。みんな周囲には注意してね。」
そうして対策委員会が現場にたどり着いた。
「先生~!!!衛宮先生~!!!」
「あなた様!どこにいらっしゃるのですか~!!!」
皆が声を張り上げながら呼びかける中、セリカが士郎が倒れた場所に駆け寄る。
「先生!助けにき...た。」
底には少量の血溜まりと、謎の大きな機械。
外見は白く、所々灰色や水色でコーティングされており。
ミレニアムの校章が刻まれていた。
立ち尽くすセリカの元にホシノ達も駆け寄る。
「先生いましたか!?わっ!?なんですか?!これ!!」
アヤネがしゃがみこんで指でつつく。
「....ミレニアム製の機械。それ以外はわからない。」
シロコが分かっていることを説明しているとそれは崩壊するように粒子になって消えていった。
「これは....士郎さんの魔術です。」
ワカモがそう呟く。
「じゃあさっきまでここに先生が?」
「おそらくは。
ですが見当たらないのであれば、拉致された可能性が。
やってくれましたわね.....何処の誰かは存じませんが....」
「はいはーい。どーどー。
とにかく戦車の後もあるしこれを追っていくしかないねー。」
対策委員会はアル達の痕跡を追った。
夢を見る。
魔王の娘が、頑張って勇者になろうとする話だった。
本来相いれぬそれは、村の子に教えを乞うて、様々な人間としての基準、価値観、常識を学んでいく。
そうして娘は村の子達と仲良くなり、村のシンボルにまで成長した。
そうして旅に出た娘は「勇者」となり、かつての友人である村の子とパーティーを組んで様々な冒険をした。
しかし、女王は彼女の存在を危険と判断し討伐しようとした。
実際意図してないまでも、魔王の呪いによって村の子を傷つけてしまった『勇者』はショックを受け、自ら絞首台に上がり、命を落とした。
しかし、それが問題だった。
器である体が死に絶えたあと、その亡骸から魔王が復活した。
村も国も崩壊し、死した魔王の娘は後に本当に心から、自らが人間が好きだったと、やっと理解したのだった。
結局は意識を残したまま自らの体が愛した全てを破壊する、その光景を目にして、絶望した。
この話はこれで終わりである。
誰も悪くない。
魔王の娘は頑張って人間を理解した。
人と仲良くなりたかっただけだ。
女王は国を守るために動いた。
実際、陰ながらその魔王の娘のことを見守っていくうちに気に入っていた。
立場がなければ手を差し伸べただろう。
仲良く会話もしたのだろう。
娘の成長を聞いて、彼女は内心喜んでもいたのだから。
しかし、自らの責任を果たすための苦渋の決断の末、1人の娘より、国をとったのだ。
ふざけるな。
そんな頑張った奴らが報われずに、めでたしで終わる話があってたまるか。
何も悪いことしていなかった奴が、1度のミスで全て、全て失うなんて。
───そんなの認められるかってんだ──!
起きればソファーの上。
半裸でうつ伏せで寝かされていた。
「.....起きた?うなされてたみたいだけど、大丈夫?」
目の前にいたのは白い髪(1人は所々黒髪の部分が残っているが)、赤い目をした、イリヤを連想させる少女2人だった。
「っ...ここは?」
確か俺は黒見をかばって砲撃で弾け飛んだアスファルトの破片が背中に....
そうして気がついた。
怪我が治っていない。
キヴォトスに来た初日だけに発動した治癒は、もう機能しなくなっていた。
それだけでは無い。
元より頼りきりにするつもりはなかったが、アロナのバリアが起動しなかった。
おそらく二次被害による怪我だった為、アロナも予想ができなかったのだろう。
「動かないで。傷口が開いちゃうから。」
「いや....帰らないと....俺は。」
ホシノとの約束を破ることになる。
──ちょっと怪我したけど大丈夫だ。
上手く巻いて帰ってきたぞ。──
と安心させてやらなきゃいけない。
「あ...ぐっ....!!」
腕に力を込め立ち上がる。
「!!聞いてなかったの!?動かないでってば!
ムツキ!抑えて!」
「はーーい!」
ムツキと呼ばれた少女が俺の腰部辺りヒップドロップをかました。
「ぁぎっ!!」
当然全体重が腰に直撃する。
「ちょっと何してるのよ。ムツキ!」
「だって抑えるよりこうした方が楽なんだもん。」
立ち上がるよりそっちの方が体に来る。
「先生の傷が開いちゃうでしょ。あんまり暴れないようにね。」
「はーい。でもさー、捕虜になったのに暴れる先生も良くないと思うな~。」
そうか、と心の中で納得してしまった。
この子達は先日の戦闘で見かけた生徒、つまり便利屋68のメンバー。
間違いなく捕まっている。
「っ....俺をどうする気だ...?」
なんて睨みながら言うとムツキという名の白髪の少女が笑って言った。
「うーん。どうするんだろうね?
連邦生徒会に身代金でも要求してみる?
──────どうするの?アルちゃん。」
あたかも高そうな服を羽織り現れたのはピンクの髪の毛をした間違いなくここのBOSS。
「ごきげんよう、はじめましてね、先生。
私は陸八魔アル。
便利屋68社長にしてキヴォトスきってのアウトロー。」
「陸...八魔....?」
なんとも趣味の悪い名前だ。一成がここに居たらずっと念仏を唱えてるに違いない。
その少女の目はこれまで幾度となく人を─して来たような、人を人とも思ってない悪女の目だった。
纏う雰囲気は柳洞寺に巣食ってたキャスターに引けを取らない。
おそらくその名前も、コードネームか何かなのだろう。
こんな銃弾飛び交う世界だ。
1人2人、悪行の行き過ぎた生徒がいるとは思っていた。
それが、4人も目の前にいる。
──アウトロー──
それは常道から外れた者を指す言葉。
目的の為なら手段を選ばない冷酷非道な裏社会の
そして、かつての切嗣の在り方。
「そうよ、あえて嬉しいわ。
『正義の味方』さん?」
「.....お前たちが狙っていたのは黒見じゃなかったのか?なんで俺をさらった、わざわざ手当までして。
悪いけど俺には人質の価値はないぞ。
なんせ、連邦生徒会長代行はそういう所冷たいし、割り切ってる奴だ。
対策委員会の皆からも、よく思われてないからな。」
自分で言っててそうだったらどうしよう、と不機嫌な口調になる。
実際黒見からは否定されているし。
「ふぅん、謙遜なのかはったりなのか知らないけれど、貴方が思っているより、貴方自身の価値は高いのよ?
SNSやネット上ではかなりの評判は、そうね、悪くはないかしらね。」
即興のはったりは通じないらしい。
「それに、そのセリカって子を狙ったわけじゃないもの。」
「「え?」」
その言葉に寧ろ社員3人が疑問の声を上げた。
「あの....アル様。あの生徒を誘拐して先生をおびき寄せる計画では.....?」
「べ、別にいいのよ。
実際こうして餌がなくても釣れたんだし。」
.....敵を騙すにはまず味方からって奴か。
キャスターってか、アイツだ、アーチャーのやり口だ。
『私は常に勝率の高い手段を取る。』
ニヒルな口調のリアリストを思い出して少し不快になった。
陸八魔を睨みつける。
「それで、俺に何の用だ.....?」
「簡単よ。
衛宮士郎先生?
私達便利屋68の営業顧問になりなさい。」
「....... は?」
訳が分からない。
「ふざけるな!殺し屋の仲間になるなんて死んでもゴメンだ!」
「いや、先生、私達は別に殺し屋ってわけじゃ───」
白黒の髪の子の言葉を遮って陸八魔は語る。
「そ、そうよね。そうでなければ困るわ。
貴方はキヴォトスにおける『正義の味方』。
この私と相対する位置にいる人間だもの。
そんなに簡単に屈服されたらつまらないわ。」
つまらない?
「そう。
でも営業顧問にならないなら貴方には人質としての価値しかないわね。
あなたをダシにして、アビドスの連中をおびき出────」
彼女の言葉は頭に入ってこない。
全身の血が沸騰しそうだった。
対策委員会の子達は自らの居場所、家とも呼べる場所を守ろうとずっと必死に頑張っている。
黒見なんかは本人が言わないだけで、バイトを掛け持ちして、稼いだ金を返済に当てているのだと、シロコやアヤネから聞いていた。
皆辛いだろうに、苦しいだろうに、助けを得られず、それでも笑顔だけは絶やさぬように、楽しく過ごしていた。
それを───
どこからの依頼かは知りませんが私達は親の仇のように彼女達に借金返済の邪魔をされています!!』
アヤネの言葉を思い出す。
金の為だけに、邪魔をして、ホシノ達の日常を破壊してきたのだ。
生徒とか子供とか関係なく、他人の努力を踏みにじる存在が許せなかった。
「────陸八魔。」
背中に乗る生徒の拘束を引き剥がし立ち上がる。
「嘘でしょ!?どこからこんな力!!?」
「何よ、どうせ──ヒッ!?」
彼女が俺の瞳を見る。
今の俺は、どんな顔をしているのだろう。
それすら、わからない。
「────今すぐアビドスから手を引け。」
「ふ、ふざけないで、これだけ支援してもらって手を引け
ですって!?そんな事したら────」
腕の拘束が鬱陶しい。
魔力を流し、「強化」と真逆の方法で、手錠を破壊する。
「そうか。」
「
士郎君』
頭の中で声がする。
いや文字が浮かんできた、のが正しいのか。
声が聞こえた瞬間、手元にあった干将・莫耶は砕け散った。
攻撃を受けた訳では無い。
投影に失敗した訳でもない。
ただ、間違いなく、手に持ったそれは内側からまるで意志を持つかのように崩壊した。
「だっさー、なんだかよく分からないけど失敗しちゃったみたいだねぇ~!!」
目の前の少女に嘲笑される。
そんなことはどうでもいい。
(....パパパパパッ..!)
(ドカ-ン!!)
「あんたは一体誰なんだっ!!?」
周囲を見渡す。
いるわけが無い、存在するわけが無い。
なぜならこの声の出処は、現実では無い。
もう少し
文字が薄れて消えていく。
待ってくれ!まだあんたには聞きたいことが山ほど───。
(バァァァン!!パパパパッ!)
そうして耳に入ってきたのは爆発音だった。
陸八魔は窓に駆け寄りシェードから外の風景を覗いた。
「う、嘘でしょ!!?
偽装の為にわざわざあの戦車別の場所に止めさせたのよ!!?
そんな簡単に見つかるはず───!!」
その言葉とは裏腹に外の様子を確認して戻ってきた、気の弱そうな少女が慌てたように叫んだ。
「あ、アル様!アビドスの方々が───!」
「先生!!目を塞ぎなさいっ!!!」
(パリンッ)
そうしてガラスが割れ、室内に球体の何かが投げ込まれる。
直感的にそれは手榴弾だと理解出来た。
「ヤバっっっっ!!!!」
紙一重で俺は伏せた。
密閉されていた部屋の中、手榴弾が閃光と高熱を放つ。
(ピカッ!!)
「ちょっ!何よこれっ!!」
「スタングレネード.....やられた。何も見えない。ムツキ、ハルカは?!」
「ごめーん!私も無理~!!」
「お役に立てずすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんっ!!」
(バタンッ!!)
部屋の扉が開かれる。
現れたのは涙目の2人組。
ワカモと黒見だった。
「ご無事ですか!!士郎さんっ!!」
「無事!?
無事よね!そうじゃなかったら許さないんだからっ!!」
その声に答えなければ。
「あぁ!大丈夫だ!!
この場から離脱しよう!!」
「はいっ!」「ええっ!」
「...!!待ちなさい!衛宮士郎!!
うっ!!」
(ドカッ!)
目の前でテーブルの角にお腹をぶつけたのか、うずくまった陸八魔を、横目でスルーして便利屋68の事務所を後にした。
「ご無事で良かったです。
万が一の事があったら、このワカモ、後を追うつもりで──」
「悪い、心配かけた。
でも誓って、お前にそんな事はさせたくない。」
走りながらワカモと会話する。
「でも、助けに来てくれたんだな、黒見。」
「えっ?.....何よ?
私が来ちゃいけないわけ?
あんたが私に助けを呼べって言ったんじゃない!!」
いや、俺はホシノに状況を伝えて欲しいと言っただけで、黒見は俺のことが嫌いだから助けになんて来ないと思ってた。
「.....いくら私でも恩を仇で返す事なんてしないわよっ!!
あの便利屋じゃあるまいしっ!!」
ポカポカと殴られる。
「....そっか、でもありがとな。
助けに来てくれて嬉しかった。」
少しだけ、自分の頬が緩む。
「ふ、ふんっ!!当然のことしてるだけよ!
言っておくけど、これでチャラだから!!
別に衛宮先生の事認めた訳じゃないんだからね!」
隣でちょっとワカモの機嫌が下がるのを感じるが。
素直に「衛宮先生」と呼んでもらえた事が答えなのだと。
勘違いでいいから、そう思いたかった。
「ホシノ達も来てるんだろ?
合流しよう!」
「ええ!
倍にして返してやるわ!!!」
衛宮士郎というか杉山さんの悲鳴とか痛みによる叫びでしか得られない栄養があります。
聞いていて心地の良い叫びというか。
でもキレた時の声もいいんだよなぁ、
あと覚悟決めた時の低い声。
あぁぁ~女に生まれてたら結婚したかった。
あれ?俺もしかして歪?
それはさておき実は私ワカモを所持しておりません(えぇ ....)
自分でこの流れにしておいてなんですが正直口調に自信ないんですよね。
丁寧語で話すけど、尊敬語とか使わないイメージ。
難しいなぁ....
あと、とある人の言う「彼女達」とは対策委員会やワカモだけの話ではありません。
もう少しステイナイト要素を取り入れたく思い、下記から希望を選んでください。尚セイバーはとある事情で省いてます。遠坂凛はうっかり意外人間性が完成しすぎてるので省きます。
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間桐桜 (士郎の背中を追い先生に)
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無銘寄りのアーチャー(執事)
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イリヤ(シッテムの箱所属)
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上記三人とも。
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士郎と麻婆だけでいい