衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】   作:神宮寺志狼

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正直に言います。
今回の士郎の立ち回りは「悪役」であり「アーチャー」です。
これまで「禁忌」としてきた先生VS生徒の第2弾(第3...?)

で、謝ります。
おそらくこの流れを、この作品内で何度か使い回す事になりそう。

後はヒナタの方は救われるのは当たり前です。
なんで本家のタイトルが翻訳すると「自業自得」や「因果応報」なるような言葉を使ったのか本当に理解できていない。




#6 そして「縁」は巡り───/Be free to follow your heart(VI)

#/6-1.これが彼の願い

 

「はぁ...はぁっ....!!」

 

「お待ちなさい!そこのシスター!」

 

待てと、言われて。

走っていた足が止まりそうになる。

されど、それは──誠実なだけで皆様(トリニティ)に、シスターフッドの皆さんに迷惑をかけてしまう。

 

それでも───

 

「い、行かせてください!」

 

「それは許可できません。

この区域には許可あるもの以外立ち入りすることは禁止されています。

それが例え主催側のシスターフッドであろうとも。」

 

後ろにいる正義実現委員会を率いている方は、確か正義実現委員会、副委員長の羽川ハスミさん。

もしかしたら話せば───しかし、なんと言えば良いのか?

 

「きょ、経典が無いことをサクラコ様にお伝えしなければ....このままでは。」

 

走りながら、逃げながら説明をする。

されど、こんな状況で軽くそんなことを信じてくれる訳もなく───

 

「.....どうしたらそのような嘘の言葉が出てくるのでしょうか。

今日はその経典の公表する式典なのですから。

「経典がない」などと言うことは万に一つもありえないでしょう。」

 

「─────そ、それは...。」

 

自分が、壊してしまって、今修復中で。

それを詳しく話していては、間に合わない。

それに信じていただけるかも....

 

確かに、今更、こんな時間に。

悠長に古書館でウイさんに復元作業(治療)をお任せして寝ていた私が。

 

手に握るカバンを開けようと。

戦闘をしようと、一瞬頭によぎった。

 

けれども───この方達は、何も悪くない。

自らのするべき仕事を、人を助けていた自警団のスズミさんと同じなのだ。

 

それはダメだと。

カバンを開けようとした手を、元に戻した。

 

(チュン!)

「あっ───」

 

直後、足元を撃たれもたついて地面に転がった。

それでも立ち上がらなければ、伝えなければ。

私のせいで、何もかもが、楽しみにしていた皆さんの心に。

 

「まだ抵抗するのですか!」

 

後ろから殺気がする。

逃げられない────

 

(ドシュン!)

 

体は丈夫な私。

けれど、それで動きが鈍重にならないかといえば嘘だ。

撃たれつづけ、足が止まってしまっては、捕まってしまう。

それでは────

 

(───チュインッ!)

 

放たれた狙撃の弾は、突如として発砲されたもう1発の弾丸に弾き飛ばされ───相殺された。

 

「えっ....!?」

 

「弾丸を、弾丸で逸らした?

一体だれが。」

 

 

 

「そこまでだ、ハスミ。」

 

 

 

そこには、あのお方が立っていた。

焔色の髪をしている彼は、何故か目の前に迫っていたハスミさんの銃と()()()()()()を持っていた。

 

「衛宮先生....どういう事ですか?

それは私の.... 何故彼女を...?」

 

 

「......立てるか、()()()。」

「は、はい...大丈夫です。」

 

名前で呼ばれ、ドキリとする。

彼はハスミさんの言葉を聞きつつも無視するように私に近づいた。

それに彼女は腹を立てたようだった。

 

 

「質問にお答えください!」

 

彼のこめかみに血管が浮き出ている。

私にも分かる。

 

衛宮先生は、ハスミさんに対して相当な怒りを感じている。

 

「どうもこうもない。

そこのシスターが言ったことが全てだ。

 

経典は今ここにある。」

 

そうして彼は懐からあのボロボロだった経典を取り出した。

されどその見た目は破砕する前と()()()()()()()()()()()()()様子の───。

 

「良かった...!この()は治療を終えたのですね...。」

「そ、それは経典なのですか....?ですがどうしてここに───」

 

一声ハスミさんにかけた彼はまた答えることなく私に振り向いた。

 

「いいか、ヒナタ。古聖堂まで一気に走るんだ。

あとの段取りは全部()()()()に任せてある。

 

堂々と受付から入るんだ。」

 

「現地の、方....ですか?

ですがこの状況でどうやって───」

 

彼は私に経典を押し付けるように託す。

 

「それに衛宮先生は....?」

 

「いや、ちょっとハスミと「話し」をしなきゃいけない。

それにこれは、「お前にしか出来ない事」だ。」

 

「わ、分かりました.....衛宮先生にご加護が───」

「あぁ....あと最後に伝える事が──」

 

彼は私が祈りを終える前に肩を掴んだ。

 

「あ、あのっ....//!?」

 

「ヒナタ、お前は何も間違えてない。

 

あの経典が壊れたのはお前だけの責任じゃない。

一人で抱えるな。

「自分が愚図だから」とかそんな風に考えるのも間違いだ。

()()()()はお前が作った。

これは運とか偶然なんかじゃない。

お前がしてきた「誰かの為に」が返ってきた、それだけだ。

 

自分の行動が正しいかなんて心配は要らない。

だってお前のそれはいつだって「困っている誰かの為」なんだから。

自信を持て。

お前はお前の()()()()()()()動けばいい。

 

───それと、あれだ。

椅子に座って眠りこけた俺をソファーに運んでくれたのはお前だろ?

ありがとう。」

 

この状況、というのが何を指し示すのか理解できていない私をほら行け、と彼は背中を押した。

 

「さてと....。」

 

去り際の彼を、一瞬「怖い」と感じるとともに、後ろ髪を引かれるような。

認めてくれて、感謝をされた際に感じた胸の高鳴りは───

 

自問自答している暇もないことを思い出し、私は走り出した。

 

 

#/6-2.初面談(ファーストディスカッション)

 

「さてと....。」

 

彼女は折れず、走り去った。

その足音も、もはや風に揺れる木々の音で聞こえない。

 

「......状況の説明をお願いします。

このままではいくら衛宮先生相手であろうと冷静で居られません。」

 

冷たいハスミの声が耳に入る。

 

それも当然か。

彼女にとっては何も恥じることなく職務に徹していただけ。

それを横入りし、銃弾(言葉)を弾かれ、今だ状況が掴めずにいる。

 

どうしたものか。

最終的にこのまま話し合いで済むとは思っていないし、()()()()()()()()()とすら思っている。

だから最後は()()()()()()()()()()

 

しかし、俺と彼女達では条件が違いすぎる。

彼女達は積極的に俺に対してぶつかることは出来ない。

どうしても恐怖感が生まれるだろう。

 

何しろハスミ達にとって、俺は銃弾一発で倒れる人間だ。

取り繕った言葉(反撃)で話し合いと言えようか、本音と言えるだろうか。

 

アーチャーを思い出す。

常に挑発するような、神経を逆撫でする皮肉屋の口調。

丸々あの態度、というのは俺には似合わないと思う。

 

だから、そこは()()()にやらなければいけないのだと解る。

 

「説明が、必要か?

時間も余裕が無い中、お前達に対して誠実であろうとし、銃を使うことを躊躇い、軽くであれど事情を話してもなお、理解して貰えなかった若葉ヒナタって奴の助けに来た。」

 

「─────。」

 

ハスミの目が見開かれる。

事実を話した。

されど、彼女達にとっては自身等の行為そのものの否定だ。

 

「ですが、彼女はこちらの呼び掛けにたいして止まりませんでしたし。

何よりサクラコさんからそういった情報は聞き及んでおりません。

衛宮先生、それは本当なのですか?」

 

ハスミの頬を冷たい汗が流れていく。

 

否定したがっているように見える。

自身がした事が正しいことだと肯定するために、目の前の真実を。

まぁ、事実の再確認というのは大事だろう。

しかし、その動機はきっと矛盾している。

 

「────ナギサには報告済みだ。

実際サクラコには連絡したものの、未だに既読がつかないしな。」

 

「そうでしたか....申し訳ありませんでした。

私達は元の任務に───」

 

「───()()()()、それでいいのかよ。」

 

逃げるのか?と非難するように。

挑発するように、怒らせるように。

軽く高い声でそう言い放った。

 

「....良いとは何の事でしょう。

私達は規則に沿って、与えられた仕事をこなすだけです。」

 

まるで用意された台詞。

冷徹なまでに、感情の含まれない「形だけの」言葉。

 

それはこれまでの、無責任な俺の言葉と何も違わなかった。

だからこそ、問わねばならない。

ナギサの時と、同じように。

 

「ならお前たちの言う「正義」ってのは。

困ってる奴の理由も聞かずに「悪だ」と一方的に決めつけて。

ただひたすら「規範」に従う機械的なものなんだな。

 

それでいいのか、ハスミ。」

 

嗚呼────それは確かに「正義」だろう。

けれど、それでは誰も救えないと知っている。

 

「そ、それは....ですが───」

「それならそれでいい。

安心しろ、お前は何も「間違っちゃいない」。

そう、「間違ってない」だけだがな。

 

「正義」ではないんだから。」

 

正義実現委員会。

その副委員長を正義ではないと否定する。

 

当然、他の委員会の生徒達の反感の視線が刺さる。

 

「お前の「正義」と俺の「正義」。

違うってのは理解してる。

 

だから敢えて、かつてお前に聞かれたことを聞くぞ。

ハスミ、お前の思う「正義」って、なんだ。」

 

 

「──────。」

 

言い淀んだ。

言葉で表せず、揺らぎ、迷っている。

 

 

「即答できない、か。

なら言葉は無用だな。少し付き合ってもらうぞ。

 

────I am the(体は) bone of(剣で 出来ている) my sword.

 

Un ideal far away(ただの一度の綻びもなく)

No then the ends(ただの一度の勝利もなし)

lonely way any no exist(剣の丘で責を負う) sign

"unlimited blade works(無限の剣で出来ていた)"

 

瞬く間に、世界は剣の大地に早変わりする。

吹き荒れる強い風が、皆の髪を揺らしていく。

 

けれど、皆、髪を抑える様子など毛ほどもない。

胸にあったのはきっと、恐怖や混乱だろう。

 

「生徒相手にこれを使うのは初めてだ。

俺は基本、生徒とは対話で接してきた。

 

でも今のお前達は何も自分の言葉がない。

意志のない、言葉の無い思い(銃弾)なら切り捨てたって文句ないよな。」

 

先程、ハスミのインペイルメントでの狙撃を防げたのは「切り捨てた」のではなく「相殺」したから。

それは言葉を切り捨てたのではなく、言葉に言葉を返したのだ。

意思に意思で答え、ぶつけたからだ。

だが、彼女達の意思は弱い。

形だけの心のこもっていない言葉なんて、聞く必要性なんてない。

 

俺が引き出さなきゃいけないのは、彼女達の心、本音である。

 

「衛宮先生....!

貴方は─────」

 

魔術回路を全開で回す。

手元にレバー式のショットガン二丁をよび寄せた。

ブラッド&ガンパウダー。

 

彼女達と戦うのなら、彼女達の長でなければ務まらない。

なんだ、結局自分の銃(マテバ)を使ってないじゃないか。

 

「そ、それはツルギ委員長の──!」

「な、何が始まるの...?」

 

縮こまって動けない者、狼狽え立ち尽くす者、様々だ。

 

「構えろ、今の俺はツルギそのものだ。

「正義」に対して否定肯定はおろか「迷っている」とすら返答出来ない「正義実現委員会」なんて、俺の手で叩き直してやる。

 

自分達が「間違ってない」と「正義である」と示して見せろ。」

 

俺の言葉を、否定してみせてくれ。

お前達が「正義実現委員会」である所以を。

 

「────分かりました....戦闘準備をしてください、皆さん。」

「で、ですが衛宮先生にもしものことが──」

「───マシロ、手加減をすれば失礼に当たります。

それに、あの見上げた丘に立っているのは───紛れもなく()()()()()()()です。

下手をすれば───いえ、この場で負ければ確実に私達は正義実現委員会として居られなくなる。

 

そんな予感がしてならないのです。」

 

退いてはならないと。

負けるわけにはいかないと。

それはかつてのアーチャー(自身の理想)と対峙した俺のようだ。

 

「.....さぁ、暴れる時間だ。」

 

 

#/6-3.Be free to follow your heart

 

「どうにか、辿り着けましたが....。

本当に堂々と入って良いのでしょうか....。

 

あら...貴女方は....。」

 

「来たきた、あん時のシスターさんだぜ。」

先公(センコウ)の言ってた通りじゃん!」

 

辿り着いた古聖堂の受付をしていたのは、今日出会ったばかりの不良生徒の方々。

身なりは整えられておりいかにも事務員、といった様子。

 

「どうしてここに?」

「いや、早速ボランティア中って訳。私みたいに受付だったり中で整列作業してる奴も入れば警備してる奴もいるぜ。」

 

あぁ、良かった。と。

最初に浮かんだのは安堵の思い。

彼女達にはこの様に仕事が与えられ、真っ当に過ごせている。

 

「招待状確認して持ってない奴は通すな、って言われてんだけど、あんたは別だ。

さぁ、入った入った。」

「あれだ、顔パスってやつ!」

 

「えっ...ですがどうして....。」

 

そういえばこの方達は先程、「先生の言った通り」と仰っていたような。

 

「あの先公(先生)から事情は聞いたぜ。

今回のイベントの大事な現物がねぇのにイベントが始まっちまって、間に合うよう届けたいのに通行許可証をあんたが持ってねぇまま向かってるって。

 

だから通してやってくれ。

ってな。」

 

「だけどよ、おかしいよな。

あんな所まで必死に物資取りに来る経典の管理人さんにイベントへの参加権利がないなんてよ。

ちょっと嫌気が差したぜ?私は。」

 

「そうそう、馬鹿げてるよ。

あ、式典は遅れてるよ。

なんせ、とんでもねぇ奴がやべぇブツしょっぴいて来たからなぁ。

なんて言ったっけ?」

 

「「放課後スイート部」.....ちげぇ「放課後スイーツ部」だ。

何か「新作のミラクル6000を無料配布しに来た」とか言ってこの裏手にトラック止めてよ、今とんでもねぇ大騒動中。

護衛にはあの「トリニティの走る閃光弾」もついてたしな。」

 

シスターさんも美味しいものには目がねぇんだな、と彼女達は大笑いしている。

 

「あ、あの時のシスターさんじゃん。

お疲れ様です。」

「こんばんは、ヒナタさん♪」

 

そうしてこちらに来たのはハナコさんと、放課後スイーツ部の───

「そういえば挨拶してなかったね。

私は杏山カズサ。

確か「若葉ヒナタさん」だよね。」

 

「は、はい。

その、この状況は....?」

 

 

そうして事情を聞けば、また衛宮先生が事情を説明してくれたようだった。

どうして、彼は私を助けてくれるのか。

 

「やはり衛宮先生の人徳は素晴らしいのですね。」

 

「いや....私たちが来たのは、頑張ってるのがシスターさん.....ううん、ヒナタさんだからだよ。

 

衛宮先生のお人好しっぷりは知ってたけど、急に「知らない子の助けをしてくれ」なんて言われても断ってたろうし...。

 

衛宮先生が助けようとしてたのが、あの時私達の「お菓子(幸せ)」の為に身を張ってくれたから、さ。」

 

「もっと自信持って下さい、ヒナタさん。

あなたの頑張りが、皆さんを動かしたのですから。」

 

カズサさんやハナコさんの言葉に、目元が潤む。

 

「そら、行った行った。」

 

そうして、不良生徒だった方に手を引かれ、背中を押され、聖堂内に入っていく。

 

ても、これだけは、伝えなければ。

 

「皆さん!ありがとうございます...!!」

 

 

 

 

 

そうして、聖堂内が騒然としている中、()()()()()()()()()()()()がある場所までやってこれた。

けれど、お菓子に釣られるシスターだけではなかったようで。

 

 

「正直ケーキって甘すぎると思うんです。」

 

「分かる、クッキーの方が──」

 

なんて、会話をしながら「経典」を警備している方が2人。

 

「え...どうする?」

「ど、どうと言われましても....。」

「やるしかなくね?」

 

銃を見せて、もう戦うしかないのだ、と促してくる付き添ってくれた「七転八倒団」の皆さん。

けれど、それでは何もかも台無し.....この日は皆さんが健やかに穏やかに、過ごせる式典でなければならない。

 

 

「あら、そこのお二人とも。

休まれてはいかがかしら.....?」

 

迷い、焦る中、聞き覚えのある声が聞こえた。

それは、夕方、重い荷物を持っていて、家まで送り届けたお年寄り。

 

整った服装をしていた高齢のおばぁ様はその警備していた2人に声をかけた。

 

「え...でも今からケーキ食べるのは....」

 

「あら、用意しているのはケーキだけではなくてよ?

他にも紅茶やワッフルなどもありますから。

 

ずっとお立ちになっていてお疲れでしょう?

老人の話し相手になっていただけないかしら?」

 

「まぁ....少しくらいなら。」

「皆「ミラクル5000」だっけ?あれに夢中だし、大丈夫でしょ。」

 

そういって警備の2人も外れて行った。

去り際、そのおばぁ様は私達に向かってウインクをした。

口元が動いた。

 

まるで「行きなさい」と、言うように。

 

あぁ、なんと───

 

「私は、恵まれているのでしょう....。」

 

そうして、ようやくたどり着いた。

経典の入っていた箱を開け、そこへ、元からあったように、経典を戻した。

 

ここに来るまで、辿り着くまでを思い出す。

私の不注意で経典をバラバラにしてしまい。

衛宮先生とシミコさんと一緒に本を戻そうとして、足を引っ張り....。

 

私がくしゃみをしたせいで、ウイさんに経典を(怪我)させてしまい....。

 

けれど衛宮先生の配慮のお陰で「ミラクル5000」を手に入れて、ウイさんとも話せるようになって。

自警団のスズミさんがいたから安全に困った方を助けることができて....。

 

充実していた。

けれど、経典の管理人としての仕事を果たせなかった罰のように式典は早まった。

もう、間に合わないと心のどこかで思う反面、このままではいけないと、衛宮先生を置いて、古書館を出てきたというのに。

 

彼は、私に追いついてくれた。

それどころか、色々な人に声をかけてくださって....。

 

「お、おい、シスターさん!

やることやったんだろ!?

なんで泣いてんだよ。」

 

「い、いえ違います....嬉しくて....。

わ、私は....幸せ者です.....。」

 

 

 

「───色々とありましたが、式典を再開いたします。」

 

 

サクラコ様の声が再度聖堂内に響き渡る。

もう、私にできることは全て終えた。

(きびず)を返す。

 

「お、おい。いいのかよ...せっかくの式典なんだぜ?

こっそり聞いていくくらい罰はあたらねぇだろ?」

 

「....良いのです。

確かに参加したくないと言えば嘘になりますが....なにより私の望みは

 

皆さんが笑顔でいることなので....!」

 

何より、感謝しなければいけない方が、2人。

私は古聖堂を後にする。

 

#/6-4.未来()を見据えて

 

「秩序を守るのが私達の「正義」です!」

 

マシロ、という少女が放った鋼鉄の塊が目前に迫る。

片方のショットガンを空中に放り、身近な剣で斬り裂いてから放り投げた銃をキャッチする。

銃を持ち手のレバーを軸に回転させ、リロードと発砲を繰り返す。

 

その撃ってきた少女に向かってトリガーを弾く。

 

「秩序、規律、規範、規則。

それを守るのは当たり前だし、確かに「正義」だ。

 

ならよ。

何のためにそれを守るんだ。」

 

放った散弾はマシロに命中した。

彼女はよろめきながら、俺の言葉を聞いている。

 

「何のために、ですか?

それは─────」

 

「お前たちが守るそれは、人を、生徒を守り助けるためのものだろ。」

 

ただ守り守らせればいい訳じゃない。

だから言ってる、お前たちの「正義」はただの機械的なもので。

「人を守る規則」を蔑ろにして、思考停止しているんだと。

 

「何の為に守るのか、考えろ。」

 

「....─────。」

 

被弾が限界に達したのか、彼女は倒れ伏した。

残ったのは────

 

「衛宮先生.....。」

「それが、お前たちの全力か?

守りたいもんはそれだけか。

 

......これならゲヘナの風紀委員会、ヒナ達の方が何倍も立派だ。」

 

ハスミの表情が歪んでいく。

 

「.....なん、ですって....?

暴力的なゲヘナと比べられるなんて───」

 

「なら逃げるヒナタを銃弾で止めようとするお前たちは暴力的じゃないってか?

巫山戯るな───。」

 

ハスミに迫る。

弾丸は逸れていく。

その照準はこちらを捉えきれていない。

近距離まで近づけばこちらの勝ち。

 

固有結界は途中で解除、元の林の中へ消えた。

俺に残された戦闘手段はショットガン両方合わせ、10発。

それとほんの少しの魔力のみ。

 

(ガシィン!)

「──っ!?」

 

鍔迫り合いのように、ハスミの銃を、両方のショットガンで押さえつける。

 

「───本当の正義を、見失っていたのは、私達だったのかもしれません。」

 

(カキィィン)

 

ハスミの銃を握る力が弱まり、そのまま銃をたたき落とした。

 

「.......それが、お前の結論か、なら────」

「ですが、それでも。」

 

額に向けたショットガンを、彼女は握りしめた。

 

「正義実現委員会は、トリニティにとっての要の1つ。

副委員長とはいえ、ここで倒れる訳には....っ。

正義実現委員会はトリニティにとっての「正義」です。

 

これまでの事が間違いだったと認めてしまえば、それは受け継いだ委員会の全ての誇りと思いを.......!」

 

彼女の腕に力が戻る。

 

右のショットガンを奪われ死角に逃げ込むために真後ろに回り込む。

 

されど──それは悪手。

翼が広げられ、視界を塞がれた上に銃口が先にこちらへ向いていた。

 

(バァァン!)

 

抽出(トレース)開始(オン).....!」

 

 

無造作に作り出したのは、あのトリニティのライオットシールド。

 

「それはミネ団長の───!」

 

散弾を弾きながら、そのままシールドタックルを見舞った。

 

「くっ....!」

 

ズサァと、倒れ込むハスミ。

されど受身を取って立ち上がろうとする。

お互いの銃をもつ腕が動き....そして────

 

「そ、そこまでです!!

もうこれ以上無意味な争いはお止め下さい!」

 

現れたのは、ボロボロになったヒナタだった。

 

「ヒナタ....!

式典はどうしたんだよ。」

 

「あの経典()はあるべき所に置いてきました。

ですが、衛宮先生。

この惨状は....!」

 

ヒナタが辺りを見回す。

周囲に倒れている正義実現委員会の生徒達。

 

「これは衛宮先生が....?」

「────あぁ、そうだ。

正義を盲信してる奴に喝を入れようと思ってな。」

 

こんな血なまぐさい所は見せたくなかった。

何せ、手を抜けるわけもないので本気で挑んだ。

 

もう、戦うような空気ではないとハスミも察しているのだろう。

 

「.......ハスミ....一つだけだ。

自分が間違ってない、正しい道を進んでいるって言うなら、どんな事を言われても否定しろ。

正論なんて知らぬ存ぜぬで。

その程度で揺らぐ正義なんかじゃ誰も守れやしない。」

 

「......薄々、思っていたのですが。

何処か衛宮先生に既視感があると思ってみれば、そうですか。

ミネ団長でしたか。

.......話が通じる分、まだ楽ですが。

 

忠告の通り精進します....ありがとうございました。」

 

決着はつかず、ケジメもつけられない。

ハスミやみんなは不満を持ったまま。

俺もスッキリしない中途半端のまま、事態は収束してしまった。

 

俺はなにかあった時のために予め呼んでおいたセリナに正義実現委員会の生徒の治療を頼んだ。

 

「衛宮先生、大丈夫なのですか?」

「大丈夫ってのは?

怪我なんて一切してないぞ。」

 

ホッ、と安堵のため息を吐くヒナタ。

 

「衛宮先生.....。」

 

「む、ハスミ。

言いたいことがあったら言っていいんだぞ。」

 

「いえ....ヒナタさんには申し開きのしようもありません。

ですが1つだけ。

 

今だから言えることですが...やはり、私達は間違ったことをしたとは今でも思っておりません。」

 

「そうか.....まぁ、ハスミにとってはいい運動になったじゃないか。

お手軽ダイエット。

心も体もこれでスッキリだ。」

 

我ながら上手いこと言った、とハスミを見てみると。

 

「────衛宮、先生。」

「あ、あれ....?」

 

おかしい、すごい素敵な笑みなのに。

その目は、笑っていなかった。

 

「......面白い冗談を言いますね。

衛宮先生からしたら私は「ダイエットしないと見るに堪えない」ということでしょうか?」

「あ、あの?羽川さん....?」

 

なんか、すごく怒ってません?

 

「.....ッッ!!」

(パシィン!)

森に、静かな乾いた音が響いた。

 

ハスミの好感度は著しく減少した

 

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ゲマトリアに所属している唯一の生徒『西条レイナ』が先生やその生徒と出会い、大人になる話。▼ってのはともかく、先生とか生徒を裏切ったもののどうしようもない状況になって曇らせてぇなあ〜〜〜っていうのを書きたいよね、書きます。▼【挿絵表示】▼【挿絵表示】▼↑↑↑↑↑▼主人公のレイナです。▼━追記 2025.11.5━▼残酷な描写タグを追加しました。▼https:/…


総合評価:2463/評価:8.6/連載:61話/更新日時:2026年05月11日(月) 19:08 小説情報


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