衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】 作:神宮寺志狼
下手すると年齢制限17.5いくかも....いかないかも
本作の士郎は原作の先生と違って「帰る家」はありません。
多分生徒達からしたらキツイだろうなぁ、と想像して書きました。
士郎がだらしないとも思わないし生徒というか女の子に対して配慮もちゃんとするはするんだけど、どこか足りない気がするんですよ。
「こんばんわ~....」
いきなり士郎さんが出てくる訳もなく、というか急に尋ねたから居るかすら不明のままだけど。
何かはよく分からないけど大事な式典で起きた騒動の数日後。
夕暮れと言うには少し遅い20:00頃。
私はD.U郊外付近にあるシャーレの建物へとやってきた。
士郎さんに用事があった為だ。
まぁ、用事というのも本当はメッセージで解決するレベルの問題だったけれど、一日待っても一切の既読がつかなかった為である。
「まぁ、忙しいって聞いてたし。
メッセを確認する暇もないのかもしれないけど....あれ?」
セキュリティの厳しそうなビルの前。
インターホンを鳴らしても応答はなかったのにも関わらず、ドアは開いた。
「これ....入ってもいいんだよね....?
後で咎められたり....ま、いっか。」
ビル内を上がり、エレベーターに乗る。
案内板にはカフェやレストランの階層もあるらしく、そちらに目移りしそうになった所を慌てて気持ちを切り替えた。
「シャーレは...あ、この階か。」
ボタンを押し、しばらく待つ。
私は店員さんに昨日言われたことを振り返った。
『え...?もう1回言ってもらっていいですか?』
『あぁ、だからさ。
あのシャーレの先生.....衛宮士郎が手伝ってくれた「ミラクル5000」あっただろ?
特に生地を真似て「ミラクル6000」としてあの古聖堂で振舞ったじゃないか。
それなんだけどさ.....あの後「ミラクル5000」と食べ比べしたけど何も一切変わってない」って連絡が後を絶たなくてさ......。』
『あー.....そんな事になってたんだ。
でも実際あれ、私達が食べたのは随分食感とか味わいが違ったけど....。』
『だよな?俺も当時はそう思ったんだよ!
でもアレが何度やっても再現できなくて、このままじゃまずいと思ってよ。
だから衛宮先生を連れてきて欲しいんだよ。
連絡先も知らないし、かと言ってここを離れてD.Uに行く訳にも行かなくてよ。』
『は、はぁ。』
まず、分からないまま商品として紹介したことが間違いだと思う。
まぁ、「堅苦しいシスターでも反応してしまう売り文句」を考えてくれ。なんて無茶振りをした士郎さんにも非があると思うけど。
エレベーターが指定した階に到着し、廊下を歩き回る。
執務室を覗いてみるが、そこではただひたすら生徒が業務をしていた。
どう見ても話しかけられる雰囲気じゃない。
数人は黒いセーラー服や赤いジャージを着ている生徒達。
その生徒達は私の存在に気づくや否や、訝しむように睨んでくる。
雰囲気でわかる。
この生徒達は
茶肌、黒髪の生徒が誰かに話しかけている、どうやらトリニティの生徒もいたらしい。
話を終えると話しかけられた生徒が3人連れてこちらにやって来た。
「あの....何か御用でしょうか?
トリニティの生徒さんですよね?」
「そうだけど....えっと、すみません。
そっちは?」
シャーレでトリニティ生徒が働いているのは初めて知った。
というか働いている...のか?
学年も分からないので一応敬語...で話しかけてみる。
「あ、ごめんなさい!
私は「補習授業部」の部長をしている2年のヒフミと言います。
」
────先輩だった。
というか補習授業部。どこかで聞いた覚えがある。
補習授業部....そう、士郎さんが顧問をしてる部活だ。
「そうですか。
私は放課後スイーツ部1年の杏山カズサって言います。
ちょっと士郎さ.....衛宮先生に相談があって来ました。」
簡潔に自己紹介すると事務室の奥からひょこりと桃色の髪の生徒が姿を見せる。
「こんにちは、カズサさん。」
「あ、ハナコさんも補習授業部だったんですね。
てっきりシスターフッドの人だとばかり思ってました。」
どこにいたのか。
声をかけてきたのは2年の浦和ハナコさん。
この人はこの前の古聖堂での式典で知り合った。
話したことをすぐ理解してくれるので助かっている。
「衛宮先生なら今頃部屋じゃない?」
そう返答したのはまたまた桃色の髪の生徒.....。
綺麗な身なりをしていて特注の制服を着ているのでティーパーティーのお偉いさんだとすぐに分かった。
政治には疎いのでこういう所はたすかる。
って....待った。
この部屋だけで既に
正義実現委員会の生徒っぽいような気がするけど...。
それはさておき、士郎さんは自室に居る、と。
「で、ですが衛宮先生はおそらく────」
「宜しければ案内しますよ?」
ヒフミさんの言葉に重ねてハナコさんが提案する。
....?
何かまずい事でもあるのだろうか?
「.....何ここ、部屋じゃなくない?」
休憩室と書かれた部屋には敷布団と適当に置いたかのようなタンス。
他には特に何も無い。
強いて言うなら改修の後の残る無理やりとってつけたようなクローゼットの白い扉。
その扉だけが変に白い。
ペンキ代が無かったのだろうか?
「という訳で、ここが今の衛宮先生の部屋になります。
ですが.....。」
「うん....。」
そこに士郎さんは居なかった。
出かけたのか、それとも手洗いにでも行ったのか。
「まぁ、待ってればそのうち戻ってくるでしょ。
わざわざありがとうございました、ハナコさん。」
「いえいえ、では私も戻りますね。
そうして、彼女も去っていった。
というか、ごゆっくりどうぞ、って普通家主や家内が言うものでしょ。
「あれ?音がしたと思えば、カズサじゃないか。」
「──────────」
で、その声に振り向けば例の白いクローゼットのような扉から、上半身裸の下にジーンズという格好の不審者が登場した。
「え、あ........//」
「....悪いなこんな格好で、流石に声が聞こえたから下は履いてきたんだけどさ....。」
硬そうな胸板。
割れた腹筋。
見事な上腕二頭筋。
「お、おいカズサ?」
「─────い」
「い?」
私は全力をもって───
「あ、あんたなんでそんな格好でこ、来ないで──!」
(ドシンッ!)
拒絶の意を顕にし、その胸を突き飛ばした。
同時に体勢を崩してしまい、後ろに倒れかける。
「お、おい!カズサ!」
すんでのところで彼は私を庇うために抱きしめてきて2人して倒れる。
気づけば私は士郎さんの腹の上に乗っていた。
触れて分かるガッシリとした鍛えられている身体。
くっきり見える鎖骨。
空気とともに入ってくる男の人の匂い。
無理無理無理無理!
これは刺激が強すぎるってのっ....//!
しかもこれ.....まるで私が押し倒したみたいな体勢で────
「ど、どうしたの士郎!────あ....//」
「「あ。」」
最悪なタイミングで小柄な正義実現委員会っぽい服装を着たピンク髪の子がドアを開いた。
瞬間────
「エッチ!死刑死刑死刑────///」
顔を赤らめ、大声を出して彼女はその場を逃げ去った。
「お、おい待て!コハル!」
「ちょ...//」
士郎さんは私の下から抜け出して
これは....うん、
シャーレの廊下を走るピンク髪の小さい子を、士郎さんはひたすら追っていく。
──ってか、待って。
いや、うん。髪の毛濡れてたし、シャワー浴びてたのはわかったんだけど、何で。何で!?
さてはハナコさん、こうなると見越してあんな言葉!
2人を追いかけて事務室の前を通り過ぎる。
「わぁお.....//」
「....?なんだ?シロウは何をしてるんだ?」
「うふふ....っ♡修羅場ですかね♪」
見えた。
浦和ハナコのまるで楽しむかのような微笑んだ表情。
なんか会話の節々で変な人だとは思ってたけど───。
「士郎の馬鹿!不潔!ヘンタイ!
まさか私たちがいる時にシャーレであんなこと───」
「ま、待て!コハル!
誤解を生むから止まれ!止まってくれ!」
本当に今回は士郎さんが馬鹿だと思う。
まぁ扉開いた瞬間、見えたのが女の子と男の上裸なんだから、変な勘違いしてもおかしくないって。
止まれるわけ、ないじゃん。
こうして、シャーレ内では裸の士郎さんが女子生徒を追っかける、なんてとんでもない状況が発生。
目撃したシャーレの外まで逃げ出したのに、それでも上半身裸の士郎さんは走って着いて行った。
というか、もうお互い止まれなかったんだろう。
後日、D.Uでは「衛宮先生が女子生徒を裸で追っかけ回した。」という噂が広まってしまう事を、この時の私たちは、知る由もなかった。
「.......す、すみませんでしたっ!!」
カズサはわざわざ謝りに来た。
深々と頭を下げ揺れる髪の毛の隙間からインナーカラーのピンクが見え隠れする。
「いや、まぁ俺は気にしてないし。
「ご、ごめんなさい。
まさか悪ふざけのつもりがここまで事態が進むとは思ってなくて。」
「........。
いいです
もう気にしてないので。」
浦和センパイ....ねぇ。
もうカズサにとっての浦和の扱いが決定したようだった。
「というか衛宮先生もさ!
どう考えても施錠されてない休憩室が自分の部屋って!
おかしいでしょ!
風呂入るにしてもシャワー浴びるにしてもさ!!
もういっそ家帰ったら!?
歳頃の女子生徒がわんさか居る建物の中でこれはちょっとないわ!」
なんて、完全にスイッチの入ったカズサに怒られる始末。
いや、まぁ正論なんでぐうの音も本当は出ない筈なんだけど。
「家....家....。
なんと言うか、
冬木に帰りたくても帰れないし。
戻ったら二度と戻って来れないし。
「ここが、って....ここは職場でしょ!
────まさか、先生。家ないの....?」
カズサのツッコミに浦和も反応する。
「まさか、それはありえないと思いますよ?
それでは「シャーレの先生」が実質「住所不定」になってしまいますから色々と通らない点が.....ですよね?先生。
先....生?」
「──────。」
失念していた。
確かにそれで行くと、今の俺はキヴォトスにおいて住所不定である。
まぁ、嘘偽りを並べたところで質問攻めされたらバレるので現状を説明した。
「ありえない....まさか職場に寝泊まりしていたって....それ自分の時間がないってことじゃん.....。」
「........。」
シャーレに着任してからというもの書類関係を一切書いた覚えがない。
思い返せばおかしい事ばかりだ。
手元にある「大人のカード」はともかく、給金される口座は契約する前から作られていたし。
手元にある端末だって、七神から借りっぱなしの携帯だ。
住所を書き込むような契約などしていない。
「......やっぱりここが家ってことで────」
「ダメに決まってるでしょ!」
カズサは猛反対してくる。
さて、ちょっとばかし浦和に救援を求めますか。
「───衛宮先生。」
そう、思っていたのだが。
視線を向ければ、かなり真剣な面持ちで先に話を切り出された。
「....実を言いますと、今回あのようなイタズラ...といいますか行動に出たのも訳がありまして.....。
コハルちゃんは意識しすぎているのでともかく....ヒフミちゃんや藤河組の皆さんから「衛宮先生はデリカシーがない」ですとか.....「シャワー後の衛宮先生の格好に困る」ですとか「業務に支障が出る」と.....そう言った意見がたまに見受けられまして.....。
いっその事部外者を招いてダメだししてもらおうと思っていたのですが。」
.......言い換えればそれ、衛宮士郎の生活態度に対する査察ってことですよね?
「いや、待て待て!
むしろ俺は大浴場とか使うと生徒とバッティングするかもとか思ってわざわざ工事費払ってシャワー室作ったり、私物は基本事務室に置かないようにしたり一応配慮はしてるんだぞ!これでも!
確かにこの前上裸で話しかけたのは悪かったと思うけど!
基本的に生徒と会う時は服だって着てる!
あの時がイレギュラー過ぎただけなんだって!」
だらしが無い、と言われるならまだしも。
生活することそのものを否定されてはどうしようもない。
「いやだから論点が違うでしょ....あぁ、もう.....。
こんな場所で生活してたら絶対に
「.....?
襲われるって、誰に。」
まぁ、確かに藤河組の皆は元不良だったり、ミカも何時どうなるかわかった事じゃないけど.....。
いくらなんでもシャーレ内の生徒に襲撃されることはないだろう。
例え外からの襲撃だったとしてもシャーレ敷地には結界が張ってある。
「あらら.....これは.....。」
「あぁ....うん、浦和センパイのイタズラももっともだわ.....。
「無防備」すぎ....はぁ.....。」
??
「襲われたって自分の身くらいは守れるつもりだぞ。」
「........。
全くわかってないみたいだね.....。
で、この前メッセージで送った───」
「え?
あぁ....あれなら作り方をもう教えたから心配するな。
悪かったな巻き込んじまって.....。」
結局、その日、というのがなんのことか分からないまま話が終わった。