衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】   作:神宮寺志狼

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#7 災厄の狐/VS便利屋68(Ⅱ)

俺はワカモ、黒見と一緒にメインストリートでホシノ達と合流した。

 

「やほー。先生。元気そうだねー。」

 

「悪い、迷惑をかけた。」

 

彼女は以前、俺の行為を危険だと告げ、止めるとまで言った。

それを尚正気で行っている俺はどう映っているのだろうか。

 

幻滅させただろうか──いや、そんなのはとっくにされている。

小鳥遊ホシノはそれでも尚、ここに来てくれた。

 

 

 

「お礼を言うならワカモちゃんに言ってねー。

 

何せ戦車と真反対の方向に向かって。

『こちらから先生の匂いがする』って言って聞かなかったんだから。」

 

 

........。

 

そういえば陸八魔が言っていた。

 

『う、嘘でしょ!!?

偽装の為にわざわざあの戦車別の場所に止めさせたのよ!!?

そんな簡単に見つかるはず───!!」

 

 

「撹乱するために戦車だけ別の場所に置いてたみたいですけれど、そんな手には引っかかりません。

 

あなた様の匂いは覚えましたから。」

 

ワカモは自信満々に胸を張って言った。

いや、聞いてるこちらとしては小恥ずかしいし、人前でそういうのはどうなんだ、ワカモ。

 

「そ、そうか。

その、なんだ。改めてありがとな、ワカモ。」

 

つまり、だ。

 

何処かに出かけようものならずっと着いてくるということだ。

 

 

「それで?どうしよっか。

私は叩いておくべきだと思うけどな~。」

 

それはさておき、とホシノが切り出した。

 

もちろん便利屋68の事だろう。

これまで散々自分達を苦しめてきた集団のアジトが割れたのだ。

おそらく放置、とはならないだろう。

 

「.....便利屋を追い詰めるいい機会だと思う。」

 

「いいですねー。悪い子達を懲らしめましょう!」

 

「私もホシノ先輩の意見に賛成です。

こちらから攻める機会は滅多にありません。」

 

シロコ、ノノミ、アヤネはホシノと同じ結論に至ったようだ。

 

残るは黒見だが.....

 

「....いいわ!アイツらにはラーメンの借りもあるし!

とことんやってやろうじゃない!!」

 

 

「お?セリカちゃんもやる気満々だね~。

 

先生とワカモちゃんはどうするー?」

 

 

ホシノがこちらに目配せしてきた。

 

 

止める理由はない。

 

今、便利屋68と戦って、彼女達をアビドスから叩き出せるのであれば当然それがいい。

 

しいて、確認することがあるとすれば────

 

 

「皆が命の取り合いをしないのであれば。」

 

今でも、女の子が互いに銃を向け合うという、この世界の馬鹿げた常識には馴染めていないし、出来ればそんなことをして欲しくはない。

 

かといって、陸八魔達は俺の言葉を聞いてはくれない。

当然だ。

 

少し考えればわかる。

 

あちらも仕事でやっている。そう簡単に「はいそうですか。では仕事キャンセルします。」とは出来ないだろう。

 

それに口調からしてもう既に前金を受け取っているようだった。

 

 

どちらも、譲れない。

 

言葉で分かり合えないなら戦うしかない、と。

 

 

それでも止めたいと思うのはおかしいのだろうか。

 

「俺は、便利屋68を倒すんじゃなく、止めるために動く。」

 

 

「大丈夫だよ、先生。

犯罪ばっかり起きてるキヴォトスでも、人を殺す事の罪がどれだけ重いかはみんな知ってるよ。

 

じゃまとめると、『便利屋68を滅多打ちにしてアビドスから追い出そー』って事でいいよね?」

 

 

と、俺の意図を察してくれたホシノがまとめた。

 

残るはワカモだが。

こちらを見て複雑な表情をしている。

 

「.....それがあなた様の望みなのであれば。

 

致し方ありません。

 

本当であれば四肢を切り落とし、神経を引きずり出して肉を割いてこの世のありとあらゆる苦しみを─────」

 

 

「ワカモ!ストップ!

流石にそれはやりすぎだ....。」

 

「....はい。」

 

 

見れば対策委員会の皆はワカモの言葉に呆れていた。

 

「.....あんまり暴れないでくれよ?

ワカモと一緒にいられるのは、連邦生徒会の防衛室長のお情けなんだから。」

 

「うっ....わかっておりますとも。

 

このワカモあなた様の寛大なお心に感銘を───」

 

いや、うん。分かってないけどまぁいいか。

 

 

 

 

 

 

災厄の狐と過去呼ばれた生徒は、俺の前では一度も非行を行っていない。

 

それはワカモだけではない。

 

シャーレにいま常駐している元ヘルメット団員もだった。

 

 

仕事を教えていくと元々要領がいいのか

 

「次はどうすればいい?」と聞いてきた。

 

 

これまできっかけが無かっただけで、生きてゆければ何でも良かったのだ。

 

悪いことをしなければ生きられない人間など───それほどいない。

 

間違っていたら教えればいい。

 

そうして、正しい道を歩き始めたなら、後は見守ってあげればいい。

 

なら、陸八魔みたいな生徒だって────

 

 

「これでいいんだよな....藤姉.....。」

 

俺は便利屋68のオフィスへ、皆と一緒に歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして。

 

 

 

「あら、戻ってきたのね、衛宮先生。

 

何かしら?気が変わって私たちの顧問になりたい、って言うなら考えてあげない事もないけれど?」

 

 

 

と、陸八魔は俺に面と向かって言った。

 

 

 

「いや、それは断る。」

 

目に見えているだろう俺の答えに、陸八魔は食い下がった。

 

「そ、そう。なら交換条件をつけましょう。

 

 

貴方が私達の顧問になったら、私達はアビドスから手を引きましょう。

 

これでどうかしら?」

 

 

「「!!!!」」

 

対策委員会、皆の息を飲む声が聞こえる。

 

「シャーレ顧問の先生には権限があるはずよね?

 

捜査部は無制限に生徒を加入させられる。

 

 

でも、貴方はどの学園のどの部活に対しての顧問にもなれる。

そうよね?」

 

 

 

流石はアウトローを自称するだけあってこちらの情報を持っている。

 

 

 

対策委員会にとっては破格の条件だ。

 

 

俺は失うものは何も無い。

 

陸八魔もホシノにも。

 

 

 

頷きたいが、その真意は何処にある?

 

 

何故俺を顧問に置きたがる?

 

便利屋68はキヴォトスきってのアウトローだと、陸八魔アルは言っていた。

 

であればなんの為に?

 

 

俺が疑問を投げかける前にホシノがその条件を却下した。

 

 

「駄目駄目ー。

 

先生はもうアビドス対策委員会の顧問だよ。

今先生は渡せないなー。

 

 

それに、先生は私達を心配してきてくれたのに、それを横取りするのは許せないなー。」

 

 

え?俺はいつの間に対策委員会の顧問になったんだ?

 

──いや違う。これはホシノのはったりだ。

 

顧問になるにしても、連邦生徒会に正式な書類を出してからでないと認められないのだ。

 

しかし、今ホシノは受けてもいい筈の提案を却下した。

 

俺を差し出さなかった。

 

それはつまり────。

 

 

「ホシノ、それって。」

 

 

黒見からばしっ、と怪我した背中を叩かれる。

 

 

「もう、あんたを皆認めてんのよ!

 

対策委員会の顧問だってね!」

 

 

「そうですねー。認めてないのはセリカちゃんだけですよー?」

 

ノノミが笑って言った。

 

 

「う、うるさいわね!!それもこれもこの人が私の事仲間はずれにして苗字呼びしてるからだしっ!!

 

私のこと認めてくれない奴を認められるわけないじゃない!!」

 

 

 

え?

 

「いや!お前馴れ馴れしく呼ばないでって昨日──」

 

「うるさいっうるさいうるさーーーいっ!昨日は昨日よ!!

それにあんたが余りにも先生らしくないからついムキになっちゃうの!悪い!?」

 

 

 

まぁ、そりゃそうだ。

あれだけ醜態ばかり晒してきている俺が、今更先生だ、と言っても

「じゃあ、セリカ、って呼んでもいいのか?」

 

 

「はっ...//!?ちょっ、いきなり呼び捨てなの....!?」

 

歳頃の乙女の心はようわからんでござる。

 

「じゃあセリカちゃん、セリカさん.....」

 

いやしっくり来ない。

 

 

 

「べ、別に嫌とは言ってないでしょ!馬鹿士郎!!」

 

 

 

その呼び方が──

 

 

『うるさい!この馬鹿士郎!!』

 

 

 

どうしても、あの威厳のない怒った遠坂の顔を思い出させて。

 

 

「プッ....!!」

 

 

「な!何よ!文句あるの!?」

 

 

つい笑ってしまう。

 

「いや、無い。その方がなんか気楽だ。」

 

 

 

そうして対策委員会が答えを出す。

 

「先生は。士郎さんは渡せません。」

「交渉決裂。撃ち合うのみ。」

「はーい!準備完了でーす。!」

 

 

 

そうして何故か呆気にとられている陸八魔も。

 

 

「───い、いいじゃない!ハルカ、ムツキ、カヨコ。やるわよ!!」

 

 

「はーーい!」

 

「はぁ....こうなると思った....。」

 

 

「邪魔者は全て....排除します。」

 

 

戦闘準備が整った。

 

 

 

ここに、お互いの信念を通すための戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

burning love

 

 

 

 

 

 

 

相手はざっと見積っても70人。+改造された戦車4台。

 

こちらは俺を含めて7人。

俺は基本的に生徒には攻撃できないから実質6人だ。

 

 

圧倒的戦力不利。

 

しかし、それを覆すだけの力が対策委員会にはあった。

 

 

 

 

日々借金のために指名手配や調査派遣任務などに参加しているからだろうか。

 

それともこの過酷なアビドスだからだろうか。

 

言うなれば彼女たちはよく切れる剣だった。

 

 

 

特出して強いのはホシノだ。

 

 

周りのサポートをしながら前衛を担当し、尚且つ生徒を戦闘不能に追い込んでいる。

 

盾の存在もあるが、それ以上に彼女の戦闘スタイルだ。

 

常に盾を展開しているが為のショットガンの片手打ち。

 

 

 

慣れてなければそんな危ない事は出来ないだろう。

 

 

腕力、脚力と膂力。

 

その小さい体のどこに、それほどの力があるのかと思えてしまう。

 

 

そして、普段のあの態度からは想像できないほどの腕前。

 

 

むしろ、これが彼女の本当の姿なのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

しかし残念ながら、それを遥かに上回る生徒が1人存在した。

 

 

 

「ふふ、うふふふふふ……」

 

 

ワカモだ。

 

彼女の戦闘を見るのはこれが初めてになる。

 

はっきり言って滅茶苦茶だった。

 

 

バーサーカーを思い出させる破壊の化身。

 

彼女は目の前にある物を、者を、モノを全て蹂躙した。

 

 

「あっはははははははっっ!!」

 

予め市街地での戦闘許可を得ていたから良かったものの、始末書で済んでほしい、と願わざるを得ない。

 

 

臆して、建物裏に逃げる生徒は建物ごと崩し下敷きにして。

 

怯んで動けなくなった生徒にも容赦なく脳天に弾丸を連射。

 

 

挙句の果てには相手の戦車を、強奪。

しかも搭乗していた生徒を脅して配下にしてその戦車の上に立ち、傭兵生徒を一掃した。

 

 

その様は、下手をすれば蛮族にすら見えた。

 

 

 

「ふふっ♪見ていてくれましたか?あなた様。」

 

 

あぁ、うん。

 

見たよ。見させられたよ。

 

正直ここまでとは思っていなかった。

 

噂とはヒレが着くものだ。

 

地区をひとりで壊滅させた、なんて言う話信じていなかった。

 

でも今ならわかる。

 

できるかできないかでのみ言えば、ワカモにはそれだけの力がある、と。

 

 

 

 

「嘘でしょ!?貴女災厄の狐じゃないの!!!

 

どうして貴女みたいな生徒が先生の下に居るのよ!!」

 

 

陸八魔の悲痛な叫びが聞こえる。

 

そりゃあそう言いたくなるだろう。

暴風の中では、やはり人間は小さいものなのだと。

 

 

「貴女は私達の側の筈よね!?」

 

 

ワカモは冷たく言い放つ。

 

 

「私が貴女方と同じ...ですか?

 

その発言そのものが不快です。

士郎さんを傷つけておいて良くもそのようなことが言えますね.....」

 

 

 

そうして、大半が絶好調のワカモによって掃討された。

 

 

この子が、俺の傍を離れたら暴徒と化す......?

 

 

ダメだ、そうなる前に人としての道徳を教えなければ。

 

 

「社長。一度退こう?

 

分が悪すぎるよ。」

 

 

 

「くっ....覚えてなさい!!対策委員会!!」

 

そうして、便利屋68は逃走した。

 

 

 

 

勝利.....には程遠い犠牲だった、主に建物が。

 

倒壊した建物、ビルを含め実に200以上

破壊した車57。

病院送りにした傭兵生徒30人。

 

 

 

 

俺の放った偽・螺旋剣(カラドボルグ)ですら、破壊してしまった家は50件に満たない。

 

 

それを、人力で、尚且つひとりでこの結果だ。

 

何をどうすればこうなるのか。

 

 

ついでに便利屋68のオフィスは木っ端微塵になった。

 

もう、何も残ってはいない。

 

「ワカモ......。」

 

俺が名前を呼べば、彼女は戦車から飛び降り、嬉しそうにこちらへやってくる。

 

 

「はいっ♪なんでございましょう?」

 

 

俺には苦渋の決断だった。

 

 

 

「.....悪い、頼むからシャーレに帰ってくれ。」

 

 

「え─?」

 

 

その他5人、とさらにアロナも、うんうんと頷いていた。

 

 

 

「お、お待ちください...!?あなた様!?今なんと?」

 

 

「......流石にやりすぎだ。

 

確かに戦っていいと言ったし、敵の生徒にそれほど、それほど酷い仕打ちはしなかったのはわかる。

 

でもな、やりすぎだ。」

 

 

 

誰がどう見ても、災害だった。

 

 

「これじゃアビドスが無くなる。

 

だから、悪い。今回ばかりはシャーレに帰ってくれ。」

 

 

 

「そ......そんな、私、私....嫌わないでください!あなた様に嫌われたら私」

 

 

「嫌ってない!ただ、お前の戦闘にはここは合わないんだ。」

 

 

「言っていただければ直します!

ですので、どうか。どうかお傍に......」

 

 

 

これだけはダメだ。罰と思って留守番してもらおう。

 

 

「ダメだ。」

 

 

ギャン泣きするワカモを、なんとかなだめながら説教し俺はアビドスの外郭まで彼女を送り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

対策委員会編第2章終盤で士郎には

  • 無限の剣製を使って欲しい
  • カタルシスにはまだ早い(固有結界未使用)
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