衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】 作:神宮寺志狼
この作品の場合はエデン条約締結式に入る前に夏空のウィッシュリストは時系列に含まれません。(今更か)
水着イベントは最終編終了後、余裕があれば片っ端から回るつもりです。
調印式当日。
俺は想定の2時間前から会場の敷地内に結界を張り、周囲の街をあらかた見て回った。
結界を張ってる時には多少生徒の視線が刺さるものがあったが致し方ないものとして割り切っている。
街の方も別段違和感は感じられない。
もしここに遠坂やセイバーが居たのならもっと───
「いかんいかん、何を弱気になってるんだ、俺は。」
警備体制は強化されている。
けれども、だ、心配で気が休まらない。
せめて出来ることは、と見回りをしている。
「お、やっぱり居たじゃないか。
おい、「藤村」さん!」
「────はい?」
肩を掴んで「藤村さん」と呼ばれる。
単なる人間違いかと思いきや、どうやら間違いではないらしい。
「あれ、
「おはよう、「藤村さん」。
って....なんだよその立派な背広は。
こんな早くからそんな格好で掃除してるのか?
相変わらず真面目なんだな。
初めて会った時も「新聞紙は燃やすと有害な物質が──」とか、「ゴミの分別はしっかりやれ」とかきっちりしてたよな。」
サキに肩を叩かれているが、その表情は笑っているのでよしとしよう。
「───思い出した、お前の第一声。
「教本にはそんなことのってない」だったよな、サキ。
天下のSRTが自治区のゴミの種類やそれによる回収日時の違いを知らないってのはどうなんだよ、と思ったな。」
自分の真剣な態度を崩すために少しからかうように意地悪く言った。
サキは恥をしのぶように顔を少し紅潮させて逆ギレしている。
「ぐっ......今はしっかりしているんだからべつにいいだろう!
私に言わせれば私よりそういう所頭固いと思うぞ!」
「────.....。」
一方、月雪ミヤコはと言えば────
「なぁ、お前。
なんでそんなムスッとした顔してるんだよ。
なんか悪いことしたか?」
怒っている。
さては、やはり一方的にこちらから
「え───....いえ、そんなこと....ありません。」
かと思えば、俺が指摘すると困惑して顔を触りだした。
「.......何故でしょう...物凄く不愉快な気持ちになります。」
何かボソボソ言っているが....なんでさ?
検討つかないのでサキに話を聞いてみる事にした。
「なぁ、何かあったか?
やっぱりお腹減って腹が立ってるとか?」
「いや、そこまで食い意地は張ってない筈だぞ。
「藤村さん」が何か気に障るようなこと言ったんじゃないか?」
「まさか、俺は普通に挨拶しただけじゃないか。
お前達こそ、何しに来たんだよ。」
逆に尋ねればそうでした、と月雪が俺になにか渡してきた。
「これを、渡しにきました。」
「......これは?」
まぁまぁ重い荷物を手渡される。
よく見たらそれは防弾チョッキだった。
「うぉ....!?
随分立派な代物じゃないか。
使っていいのか?」
「はい、このくらいは必要だと思いましたので。
おそらく、サイズはあっていると思います。」
これを届ける為にわざわざここまで来てくれたのか。
そういえばこれまで誰から何かを渡されたことがあまり無かった。
七神からは「シッテムの箱を」
ホシノからは
ウタハは興味本位から聖剣の模造を。
完全な好意、それも自主的な贈り物は初めてだった。
「生徒からの贈り物なんて初めてだから。
大事に使わせてもらうよ、ありがとう。」
「.....はい♪」
なんだろう。
急に機嫌が良くなったらしい。
ここで電話が鳴り響く。
発信者は....あれ?
「よっ、どうしたんだよ ヒナタ。」
予定時間までまだ余裕があることを腕時計で確認した。
『いえ、宜しければ古聖堂のご案内を....と思いまして。
あと、衛宮先生とお話したい、というお方が.....。
衛宮先生はシャーレにいらっしゃいますか?』
「あ、いや。
もう会場周辺にいるよ。
今から行けばいいか?」
『....ありがとうございます。』
ヒナタからの呼び出しである。
会場の案内は非常に助かる。が、俺と話しをしたいヤツって一体誰なんだ?
「....悪い、呼び出された。
俺はもう行くけど、2人は戻るんだろ?」
「あぁ、そのつもりだ。」
「
ウサギ公園に戻ります。」
確かにこれが正式なSRTとしての活動なのであれば立ち会いくらいできただろうに。
わざわざ強調した部分に触れることなく、サラリと別れを切り出した。
「送ってやれなくて悪いな。
チョッキありがとう!」
「いいえ、とんでもありません。
「藤村さん」こそ、お気をつけて───!」
とりあえず貰った防弾チョッキをスーツを脱いで羽織ってみた。
「ん、本当にピッタリじゃないか。」
これなら銃撃戦になっても体は大丈夫だ。
問題は、
「頭、だよなぁ....」
古聖堂へ戻るとポツンとヒナタが立っていた。
俺にはまだ気づいていないようで、後ろからこっそりと近づいた。
.....ん?誰かと話している?
「そうか....私の部下が失礼した。」
「いいえ....!とんでもありません!
むしろ私のせいで皆さん衛宮先生と戦うことになってしまって...」
この声は.....相手はツルギだろうか。
驚かせようなんてイタズラ心が生まれていたが、封印しよう。
多分、聖堂が爆発する。
「おはようヒナタ、ツルギ。」
「────!!
.....~~//
お、おはようございま....す。」
未だに俺と話す時は緊張するらしかった。
「おはようございます衛宮先生♪」
相変わらず笑顔が眩しいヒナタ。
その後ろに縮こまるようなツルギ。
わりかし相性は悪くないようだ。
「話をしたい奴ってもしかしてツルギか?」
「はい....この間の記念式典での騒動の事で───」
────しまった。
そうだ、俺はヒナタを古聖堂へ送るために後方でハスミ達を足止めしていた。
というか正義実現委員会と戦闘をして、怪我人は居ないもののその意志を叩き潰した。
だっていうのにそのリーダーであるツルギには何も話していなかった。
突如として紅潮していたツルギの表情はみるみる険しいものになっている。
流石に怒っているのだろう。
「────済まなかった!」
「「──!??」」
床に土下座で頭を下げた。
「───そ....そんなことして頂く必要は───」
「もっと早くお前に報告して....話し合っておくべきだったのに、すっかり忘れていた!
正直どんなこと言われたって文句言えない!」
「─────.....」
俺はツルギに対して恩を仇で返したようなものだ。
地面に額をつけているとヒナタから声をかけられる。
「あの....衛宮先生....ツルギ委員長が....もう....」
もう....もう、なんだ?
「.....限界ですので、そのくらいに...」
「───?」
顔をあげると、そこには白目を向いて泡を吹いたツルギが立っていた。
ちょっと待ってくれ。
なんでさ───!
「お、おいツルギ!?」
「───ハッ!?
.......失礼しました....衛宮先生が私に頭を下げている光景から....目を逸らしたく....て。」
.......謝るのは逆効果らしい。
「本当に悪かった。
実際、シャーレとトリニティ正義実現委員会って立場からすればあの時とった行動も、この対応の仕方も全くダメだ。
やりたいだけやって中途半端になっちまった。」
「......いいえ、むしろ、か、感謝しています。
......委員会をまとめる役目、それは私の仕事....です。
ですが、私はハスミに任せきりに.....。
あぁ見えてハスミは....暴走しやすいので....。」
そういえば、トリニティでハスミがフウカにつっかかったときにもツルギは歯止め役になってくれた。
これまでツルギの手網を握っているのがハスミ、という雰囲気があったのだが、本当は逆なのかもしれない。
「.......ですが、確かに今回は異常....かもしれません。
.....まさか、ハスミが....。」
「え?ハスミがどうしたって?」
「.......全く食事を手に付けなくなりました───。」
俺の中で、歯車が何か一つ、外れたような気がした。
「食べなくなったって......どういうことだよ!
アイツは大丈夫なのかよ!」
ツルギの肩を掴んで強く揺すった。
「い、いえ...日常生活に支障をきたさない程度には.....。
ですが....本人が「食欲がない」と....。
ここ最近も元気が無さそうでした....。」
「.....そうか....。」
俺がしたのは、中途半端な事だ。
疑問を投げるだけ。
考えさせるだけ。
その答えを俺は用意してやってない。
「教え導く」のが「先生」だと言うのなら、俺はとっくに失格だ。
「そ....その....衛宮先生....。
お、お願いが....。」
「.......言ってみてくれ、可能な限り応えるよ。」
ツルギは深呼吸すると、その願いをようやく口にした。
「.....この調印式が終わったら、ハスミと.....他の正義実現委員会の生徒とも、お話....して頂けないでしょうか....。
他の生徒も士気が心配です。
先生は私たちのことを考えた上で成された行動に対して否定的な意見も出てきています......。
私としては....なんとも、し難い状況です.....。」
.......そんな事でいいのか?
いや、何を要求されたところで、俺には俺にできることしか出来ないのだが。
「分かった、約束する。
ちゃんと皆と腹割って話すよ。
俺がなんであんなことしたのか。
本当は、何が伝えたかったのか。」
「.....ありがとう、ございます。」
俺の過去を含めて────
ちゃんと向き合わなくては。
「サクラコ様がもうそろそろ御到着するようです。
宜しければそれまで古聖堂の案内を───」
「───待て、お前達。」
ヒナタがようやく本腰を入れて話し始めたその時。
聞き覚えのあるような、ないような声が通路に響いた。
振り向けばそこには、銀髪ツインテール、茶肌でライフルを持った生徒が立っていた。
「.....衛宮、士郎だな。」
その低い声に、ツルギが銃を抜いた。
完全な戦闘態勢、いつ仕掛けられてもいいように構えを取っている。
「......アリウスの生徒....じゃない。
なんだオマエ達。」
ツルギの視線の先。
銀髪ツインテールの後方には何人ものゲヘナ風紀委員会の生徒が連なっている。
「.....思い出した!
お前....アビドスで俺たちを襲った風紀委員会の───!」
「!ぐっ.....嫌なな覚え方をするな!
あれはアコちゃんからの指示で仕方なく───」
嫌な覚え方だが、正直そのくらいしか印象にない。
確か内部のゴタゴタで天雨から火宮と一緒に叱責を受けていた生徒だ!
「.....衛宮先生を...襲った....?」
───しまった、なんだってツルギの前で「お前は敵だ」みたいな発言をしてしまったのだろうか。
「ま、待てツルギ、ストップだ....エデン条約調印式当日に風紀委員会と正義実現委員会がやり合うのはまずい.....いや、今日じゃなくても政治的に不味いんだけどさ....。
こいつらもヒナからの制裁をとっくに受けてる。」
「.......。
了解.....下がります....。」
焚き付けたのは俺なので、説得して止めるのも俺の役目ではあった。
「で、俺に何か用か?」
「......そこのシスター、古聖堂の案内をすると言ったな。
私達も同伴する。」
「はい?」「は?」
急に決定された同伴。
しかも一方的に。
これには2人とも唖然としている。
「....お前たちも警備体制に不安があるのか?」
「いいや、正しく言うなら私が同伴するのはお前だ、「シャーレの先生」。」
「俺?なんでさ。
もしかして監視か何かか?」
ツルギは疑いの目を、彼女に向けている。
正直俺も、信じていいのか分からない。
確かに完全な初対面という訳では無いが....。
「.....あぁ、そうだ。
ヒナ委員長が「衛宮士郎先生を護衛しろ」と私達に指示した。」
「.....風紀委員長....空崎ヒナ....きひひっ....。」
ツルギは納得したのか、銃を下げる。
「|銀鏡(しろみ)イオリだ。
短い付き合いだが、よろしく頼む。」
わざわざ短いと言った手前、俺のことが嫌いなのだろう。
まぁ、俺のせいでいらん責任や厄介事が増えたんだ。
仕方ないといえば仕方ない。
「衛宮士郎だ。よろしくな
俺もヒナの指示ならと、その生徒に同伴を許可した。
こうして俺達は「ギスギス」した状態でヒナタの案内の元古聖堂を歩いて回ることになった。
「....こうしてみると随分と古いな....。」
各所を確認しながら壁を見る。
レンガ造りの柱は至る所にひび割れがあり、草木がその間から姿を表している。
天井も簡単に砕けそうな程砂埃が落ちてくる。
「はい、この「通功の古聖堂」は長い間、廃墟として放置されていましたが.....今回ここで調印式を締結するにあたり大規模な修復、修理が行われたそうです。
その決定につきましては、ナギサさんと、ゲヘナのマコトさんとが合意したものだと聞きましたが、それでも全体が修復された訳ではなく、調印式会場だけのようで、下の方はまだ廃墟の状態です。」
下?
地下があるのか。
「あくまで噂ですが、古聖堂の地下には大規模なカタコンベが存在するそうです。」
なるほど、だから居心地が悪かったのか。
ここは神聖さが感じられると共にどこか息苦しくもある。
「.....?
カタコンベとはなんだ?」
銀鏡がぶっきらぼうな顔のまま質問してくる。
「カタコンベっていうのは地下に造られた空間の事で基本的な役割は墓地だ。
要は大規模なお墓だよ。」
「.....物知りなんだな.....衛宮士郎。」
「まぁ、確かに常識って範疇は超えてるかもな。」
.....銀髪フルネーム呼びは正直堪えるからやめて欲しい。
....ヒナもヒナだ、人選ミスってないか?
正直火宮の方がよっぽど会話しやすいんだが。
「.......チッ....。」
ツルギはツルギで銀鏡のことを目の敵にしてるし。
エデン条約を結んでお互い助け合おうって時にこんなんでいいのかよ.....。
「で、そのカタコンベ、どのくらいの規模なんだ?」
「.....わからないんです。
数十kmにも及ぶ地下墓地.....「第一公会議」の時の記述でも、終わりが見えないほどだった、と言われていて。
ちなみに公会議における締結される「戒律」というのは神聖なものだそうで.....「戒律の守護者」達.....「ユスティナ聖徒会」がその公会議における執行人だったそうで....。」
第一公会議.....それはトリニティ総合学園が生まれ、そしてアリウスが迫害されるきっかけになった会議のことだ。
「第一公会議はここで行われたんだな。
でも確かに「ここは特別」って感じがするな。
どうしてこんな大事なところを今まで廃墟.....放ったらかしにしてたんだよ。
トリニティ発足の記念の土地、建物だろ?」
そんなもの普通に考えれば世界....いや学園遺産として保全されて叱るべきだ。
「さ、さぁ....?
そこまでは私には....。」
「それと、「執行人」ってなんだか怖い響きだな。」
「.....それは、「約束」というのは、同時に破った時に関するルールが設けられることが多いですよね?
そうでなければ、誰も約束を守らない、ということもありますし.....。
そのルール、「制約」の役割を持つ人々の事を「戒律の守護者」とよんだんです。
約束を破る者たちに対するトリニティの武力集団....歴史的には私達「シスターフッド」の前身でして.....あら?」
ヒナタの説明を、携帯の通知音が遮った。
「あ、サクラコ様とナギサさんが到着されたようです。
.....風紀委員会の委員長さんはやや遅れているとの事で....。」
────しまった。
完全に忘れていた、一番警戒しなきゃいけない奴の事をすっかり忘れていた───!!
「なぁ、ヒナタ。
言峰はどこの配置になってるんだ?」
「....?言峰神父ですか?
....確か....祭壇裏手での援助、だったと思いますが.....。」
「そうか....安心した。」
そこならまぁまぁ目立つ。
裏で何かやっていてもおかしくないからな、警戒するに越したことはない。
「さてと、じゃあ、1度戻るか。」
「.....そうですね♪
お付き合いいただきありがとうございました。」
ヒナタが行儀よく頭を下げる。
釣られてか銀鏡も、ツルギもかしこまって礼をとった。
......銀鏡、礼儀知らずって訳じゃないらしい。
案外悪いやつじゃないのかもな。
「おはようございますございます。
衛宮先生。」
「おはよう、ナギサ緊張はしてないか?」
その肩に手を置いた。
彼女はこちらに笑みを返してくれる。
「ええ、むしろこれで1つ肩の荷がおりるというものです。
ようやく、ここまで来ました。
連邦生徒会長が失踪してからどうなるかと思いましたが、ここまで来れたのは衛宮先生や多くの方々のおかげです。」
「確かにそうだろうけどさ。
それを実行しようとしたのは他ならぬナギサ、お前なんだ。
胸を張っていい。
今のお前は誰が見ても立派なホストだよ。
ただ────」
肩に置いていた手を頭に置き直す。
「ちゃんと「桐藤ナギサ」でいられる時間も用意しろよ?
私生活と混じって公私混同とか、絶対やっちゃいけないからな。」
適度に休憩しろ、と言ったつもりなのだが、彼女は笑って反撃してきた。
「あら?それは衛宮先生も同じでは?
聞いたところ「御自宅がない」とか。
まさか「シャーレの先生」が住所不定とは思いませんでした。」
「ぐっ.....しまった。
確かに....俺が言えた義理じゃない.....」
くすくすと笑って、ナギサは俺を揶揄う。
「そういえば貴方の家で居候しているミカさんは?
誤魔化してきましたか?
「エデン条約」と聞いてなにか思い出してしまわないか、気が気でなくて....。」
「いや?その件ならバリバリアイツ知ってるけど、記憶は戻ってないみたいだ。
「えー!お祭りなら私も行きたかった」とか言ってたんでマコの後輩の
ゾクリと悪寒がした。
明確で大きな殺意の視線が刺さるような。
予め敷地内に張っておいた結界が警告を発している。
先程までとは比べ物にならない嫌な予感。
「これは、外か─────!」
駆け出す。
一刻も外の状況が知りたい。
何か─────危機が迫っている!
「衛宮先生!?どちらへ!」
「おい、待て!勝手な行動をするんじゃない!」
待機を命令されていた俺を追いかけてナギサやツルギとヒナタと
けれど、静止の言葉を振り切って、整列していたティーパーティーや
「違う.....何処だ!?」
注目を他所に目を閉じ、意識を研ぎ澄ます。
街並みや集まっている部隊からは何も感じられない。
「前も後ろも右も左も違う。
となれば───」
上か、下かの問題だった。
ゴォォ、という音が聞こえた気がした。
何かエンジンが燃焼運動をするような。
それはやたらと大きくなる。
「.....上だ!この速度は────ミサイルかッ!
全員、古聖堂の中へ退避しろ!急げ────!
最悪俺より後ろにいればそれでいい──-
「────さっさと言われた通り動け───!」
「「は、はい....!」」
「み、皆さん落ち着いて....速やかに移動してください!」
俺の叫びに反応したのはツルギとヒナタ。
察してくれたのか誘導を呼びかけてくれている。
けれど、間に合うかどうか。
悪いが説明している時間なんてないんだよ!
「───来た!」
虚空を睨みつけるように注視する。
────見えた、こちらに煙を吐いて近づいてくる鉄の塊。
防がなければいけない。
もっと前へ。
止めなくては、止めなくては。
回路に全力で魔力を流し左腕を伸ばす。
「
祈りを込めて、言葉を紡ぐ。
ホシノの盾を展開し、神秘による壁を先に始動させる。
「────
"
続いて飛翔攻撃における俺の切り札を投影。
これで、守り切れるか───いや、守るしかない───!!
「────!」
直後、ミサイルは2つの神秘の盾と激突───
「────ッ....!なんて────」
なんて、力なのか。
盾が破られることは無いだろう。
しかし、こちらは生身のただの人間。
対するミサイルはエンジンを積んでいる。
馬力が、違いすぎた。
腕が「砕ける」と軋みと痛みを伴って伝えてくる。
踏ん張れず足が滑るのを、前に進むように動かして誤魔化した。
「──────。
あああああああああああああああああアアアアアァァァァァァァァァァ────!!」
左腕を握りつぶさんが如く右手で固定し、魔力を叩き込んだ。
耐えられなかったミサイルは自らのエンジンの生み出すエネルギーに耐えられず先端から潰れてゆき───
(ドカァァァァン!!)
──自壊して、壮大な爆発を生み出した。
ただし、破壊力に関して言えば決して油断出来なかった。
威力はAランク以上だろうか。
おそらくライダーの宝具、真名解放時と同じくらいの威力だろう。
バーサーカーが相手でも
(ドガッ!)
「──ッ...あ....。」
爆発を防いだものの、即興で作った2枚の盾は消滅し、衝撃によって古聖堂の壁に、一瞬で叩きつけられた。
だが、これで脅威は───
『───、これは.....?!衛宮先生───
────アロナの叫びは、酷い絶望をもたらした。
「「衛宮先生────!!!」」
聖堂から顔を出したヒナタとナギサを見て、凍り付いた思考が動き出す。
「皆避けろぉぉぉぉぉぉ!!」
逃げ場など、何処にも無いだろうことは、俺が理解していだろうに。
2人を抱きしめるように地面に倒れ込んだ。
その瞬間、目の前は真っ白になり、俺の意識は、途絶えた。