衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】 作:神宮寺志狼
これは実際にあったとある地域(又は王国)の名前です。
冒頭のシーンはSNほんへでは存在しないものとなりますのでご注意を
「なぁ、爺さん。」
「ん?なんだい、士郎。」
遠い記憶、たまに見る過去の出来事。
未だに未練がましく、夢に出てくる。
「爺さんはどうやって俺を助けてくれたんだよ。
俺、未だに覚えてるけどさ、正直本当に「あ、俺死んだな。」って思ってたんだよ。」
「......そうだね。
種明かしはしておかないと、いつか無茶をするかもしれないから話さないといけないね。」
切嗣のようになりたいと、必死でしがみついていた。
まだ、魔術を教えてもらい始めたばかりの頃だ。
俺は唐突に疑問に思い、切嗣に聞いたのだ。
「どんな手段を使って、自分を助けたのか」を。
「士郎、病院で僕が言ったこと、覚えているかい?」
「───あぁ、「僕は魔法使いなんだ」だろ?
あんな痛烈な自己紹介、どう頑張っても忘れられるわけないぞ。」
嫌味のように、だが決して馬鹿にした訳ではない口調で返した。
切嗣もそんな俺の態度に苦笑いする。
「ははは。そうだね、今じゃ「もしかしたら言わなかった方が良かった」なんて少しだけ後悔してる。」
確かに、そんなこと言われなかったら。
俺は「魔術」なんてものの存在を知らず。
切嗣の心配事もなかっただろう。
「で?それがなんなんだよ。」
「うん、それが答え
僕は───君を「魔法」を使って助け出したんだ。」
それが嘘だということは直ぐにわかった。
魔術の勉強の抜き打ちテストか?というくらい、少し前に「魔法」について教えて貰ったからである。
「嘘つけ。爺さん、あんたの話だと「魔法」ってそう簡単に起こせないんじゃなかったのかよ?」
はぐらかそうとしたのか、切嗣は肩を落として「仕方ない」と呟いた。
生憎、当時の俺は真っ白で、教えて貰ったことは全部頭に叩き込んでいた。
騙されなかった。
「間違いなく「魔法」だよ。
あの時、士郎は本当に危うかった。
僕の力ではどうしようもなくてね。
だから僕は──君に贈り物をした。」
「贈り物?なんだよそれ」
切嗣は挙動不審に、
その表情はまるで「上手い例え」を考えているかのようだった。
というか、考えていたのだ。
「そうだね、強いていうなら「魔法のランプ」みたいなものかな。」
訝しみ、睨む俺に切嗣は「本当は全然違うものなんだけどね。」と笑っていなした。
「でも、その魔法のランプが使える時間は過ぎちゃったから、今士郎には使えないよ。」
「なんだよ、その消費期限みたいなやつ。
それじゃ意味ないじゃんか。」
そんなことを言いつつ、完全にその「ランプ」の存在を真に受けてしまった俺は興味本位で質問を続けた。
「.......ちなみに、さ。
そのランプ、今も切嗣が持ってるのか?」
「いいや?今もまだ君の中にある。
時が経てばなくなるかもしれないし、もしかしたら君のことを守ってくれるかもしれない。」
でも、頼りにしちゃいけないよ?
と、俺の頭を子供扱いして撫でる切嗣。
その時の俺には「ランプ」がなんなのか分からなかった。
「......そっか、方法が分かったら、なんか役に立つかと思ったんだけどなぁ。
─────って、爺さん、こんな所で寝たら風邪ひくぞ!」
俺はこの助言のおかげで、聖杯戦争序盤に自分の身体の自然治癒の正体に行き当たった。
ただ、知らなければ良かったと、思ったことも何度かある。
だって、そのせいで俺は───
「───宮....生。」
誰だろう.....切嗣 ....?
いや、藤姉だろうか?
「よかった....辛うじて瓦礫の隙間に.....。
待っていてください、今私が───!」
違う、ここはキヴォトスで。
今はエデン条約調印式の真っ只中だった筈で。
目の前にいるのは、ヒナタだ。
彼女は俺たちの上にのしかかる瓦礫を持ち上げて撤去してくれた。
「これだけの力があることに感謝いたします....。」
────あぁ、ナギサさんもご一緒でしたか!
あの爆発の中大したお怪我がないなんて、まるで奇跡のようです。
立てますか?」
「あ、あぁ....!」
ナギサを抱えて起き上がる。
周囲を見渡すと、そこはまるで瓦礫の王国だ。
その光景が、あの日と重なった。
「─────どうして。」
「衛宮先生.....?」
どうしてこうなった。
分かっていたはずだ、アリウスが何か仕掛けてくる事くらい。
いや確かに防いだんだ。
でも、予想がつかなかった。
間髪入れず次弾のミサイルが着弾するなんて。
あの瓦礫の下には何人もの生徒が生き埋めになっている。
それを思うと、吐き気が止まらない。
俺は、何をしていたんだ。
あの日、二度とあのような事を起こさない為に俺は正義の味方を目指していたのではなかったのか。
「クソッ!無事な奴は手を貸してくれ!」
「衛宮先生──!?」
吐き気を堪えて走り出す。
片っ端から瓦礫を撤去する。
その隙間から白い制服と銀色の髪が見え隠れした。
「っっ....!
その身体を、引きずり出した。
「.....あんたは...衛宮先生か....。
どうなっているんだ、状況は────」
意識を取り戻した彼女は辺りを見回して絶句、もはや言葉を失っている。
しかし、無事ならそれでいい。
「他は───」
「せ、せんせぇぇぁ...ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ.....!」
「────は?」
野太い声にびっくりしたものの、この声はツルギのものだった。
振り向けばそこには顔を真っ赤にして、しかも血涙でぐしゃぐしゃになったツルギがこちらに全力疾走していたのだった。
正直、ビビった。
走ってきたツルギは俺の目の前で急制動をかけ、抱きついてきた。
「お、おい────」
「よ、よがっだでず.....ご無事でェ....ウォォォォ....!!
も゛ぅ゛た゛め゛かとぉォォォオッ!」
「わ、分かったから落ち着け!
俺は大丈夫だから、この通り怪我ひとつない。」
.......そうして、ツルギを宥めること30秒ほど。
「....失礼しました....。」
ようやく冷静さを取り戻したようだった。
しかも、無茶苦茶距離を取っている。
その事についてはツッコミたいのだが。
「......あっちこっちから声が聞こえてくる。
あの爆発の中、よく皆無事だったな。」
ツルギの来た方向からは何人か正義実現委員会の生徒が歩いてくる。
ヒナタの周りにも何人かシスターフッドが立っていた。
だが、皆どこもかしこも怪我をして、流血している者もいれば、足や腕を庇っていた。
「........衛宮先生、ご無事だったのですね。」
そうして、同じようにハスミも現れた。
言ってしまえば彼女が一番酷い怪我だ。
翼は至る所から羽根が舞い落ち続け、左腕は折れたのかぶら下がっている。
綺麗で滑らかだった髪は乱れ、頭部から流れ出た血は未だ止まっていない。
そして、引きずる右足。
「お前...それ!」
「この程度.....大した事ありません。
先程の攻撃で正義実現委員会の殆どが戦闘不能になってしまいました。」
その姿に目を背けたくなった。
しかし、それは出来ない。
駆け寄って肩を貸す。
「馬鹿野郎強がるな!
まともに歩くことすら出来ない癖して!」
どうしても。
喧嘩別れのような事をしてしまったせいか、言葉遣いが粗くなってしまう。
「────すみません。
私達が警戒していればこの様な事に───」
「それこそお前の謝ることじゃないだろ。
あんなもん誰だって予測不可能だ!」
二撃必殺。
あのミサイル攻撃は「
気づいた時点でもう遅い上に防ぐ方法なんて皆無。
だが、余程貴重なのか。
それとも十分と見たのか。
三発目は無いようだった。
それが唯一の救いで、まるで「我慢しろ」と誰かに言われてるように思えて仕方ない。
とにかく今は動ける者で救助活動をしなければ。
「.....一体、何....が?」
どうやらナギサも目を覚ましたようだった。
「あぁ....ナギサさん。」
「大丈夫か?」
ヒナタのヘルプを手振りで遮り、彼女は立ち上がった。
「ご心配なく、衛宮先生のお陰です。」
ひと段落着いた後。
とうとうハスミが怒りをぶつけ始めた。
「─────それで?これはどういう事なのか説明していただきたいのですが?
ゲヘナ風紀委員会の方々。」
そして、睨む先は銀鏡イオリ、ゲヘナ風紀委員会だ。
その態度にその他の正義実現委員会の生徒も同じように敵視する。
「それは私達が聞きたいくらいだ!
会場の警備強化を提案してきたのはティーパーティーだと聞いている!」
銀鏡も他の風紀委員会の生徒を瓦礫の中から救助している最中。
冤罪をふっかけられればそうもなるだろう。
お互いに被害が出ているのにも関わらず互いに罪を擦り付けている。
結果として、お互いに銃を向け合い始める。
「ま、待ってくださいハスミさん....!」
「お前達こんな時───ッ!?」
(バァァン!)
俺とナギサが仲裁しようとしたその時だった。
横から殺気を感じると共に、ツルギがショットガンのトリガーを引いた。
「 ........ハスミ、じゃれ合うのもそのくらいにしろ。
敵が来た.....。」
銃口の先では、ガスマスクをつけた生徒が倒れている。
その先に見える集団。
「.......アリウス...分校....。」
「......作戦地域に到着、正規実現委員会の残党───いや本隊を発見。
剣崎ツルギ、羽川ハスミ。
.......「シャーレの先生」と......!「ホスト」のナギサも残ってる。」
赤い眼光で冷たい眼差しを向ける、マスクをつけた気力のない生徒。
あれはアズサのそれと同じ瞳だ。
人を傷つけ、殺すことをどうとも思ってない生徒達。
それだけじゃない。
1人2人どころか中隊規模の人数が、気づけば俺たちを阻んでいた。
流石のハスミも冷や汗をかいて当たりを見回している。
「アリウス分校....!?
ど、どこからこれほどの兵力が......!?
周辺地域は全て警戒態勢だったというのに....。」
......ミサイルと、同じ手口だと思った。
地上ではなく、空中。それも遥か遠い彼方からミサイルを発射した。
2次元的戦略じゃないとすると───
「お前たち.....
「....まさか.....!古聖堂の下のカタコンベから....ですか?!」
驚くヒナタ。
けれど深く考えて「ありえないことはない」と得心がいったらしい。
「けどカタコンベの規模は分からないってお前達が───」
「そうとしか思えないんだ、銀鏡。
逆に言えば、あのカタコンベがトリニティ本館の下まで繋がっているとすればこれまでの辻褄が全て合う。」
あれこれ考えている最中、敵中隊のリーダーに話しかけられる。
「.......それで?
分かったところで何にもならないと思うけど?」
「─────。
そうだな、ありがとう。
今そんなこと考えても仕方ない。」
「.......敵に感謝するんだ....よく分からない。
何か意味があるの?」
特に無い。
油断させようとか、それこそ話し合いで懐柔出来る手合いとは微塵も思ってない。
「それで、これはお前達アリウス分校の仕業でいいんだな?」
後ろをチラリと見る。
戦えそうなのはヒナタとツルギと.....銀鏡だけか。
相手はと言えば黙り込んだ。
余程警戒されているらしい、会話のひとつすらできない。
少しでも情報を得たい所なんだが。
数歩下がる。
「ツルギ、いけそうか。」
「───目標は?」
質問が質問で返される。
ようは「どこまで目指すか」の話だ。
その指示を、下せるのか?
いや────俺が、衛宮士郎が「大人」であるのなら───!
「敵生徒の
全滅の意味を理解してくれているのだろうか、と不安になる。
なんせ────
「ひっ.....ひひっ.....!
.......了解...!」
彼女はトリニティの戦略兵器なのだから。
「この場から離脱するにしても退却するにしてもまず目の前の敵を倒さないことにはどうしようも無い。
皆、力を貸してくれ!
前衛、俺、ツルギ、銀鏡。
援護とナギサのカバーをヒナタとハスミ2人に任せたい!」
「「了解──!」」
指示に従い全員が銃を構える。
「
いつも通りホシノの盾を展開する。
「戦闘───開始!」
俺とツルギが前へ押し込んでいく。
アリウスの生徒ではツルギを止められるわけがなかった。
──が。
「───何っ....!?」
手応えに違和感があったらしい。
何発撃っても、倒れない。
目の前にいるのは、もはや人とは思えない。
氷のような冷たい表皮に闇のようなレオタード。
そして、不釣り合いなガスマスク。
実体化していない銃器。
「─────。」
「なんだ、あれは。
あの威力───そしていくら戦っても手ごたえの無い、この不思議な感覚。
衛宮、先生。
「アレ」は認識できていますよね......。」
弾が、もはやすり抜けていると言っても過言では無いほどに、ダメージが通らない。
この世のものとは思えない存在。
「────そんな、馬鹿な....ありえない───。」
それは、紛れもなく、サーヴァントの気配だった。
魂が、肉体とともに人を成して現界している。
「.......あれがなにか分かりますか?」
ツルギの質問にも頭が真っ白になって答えられない。
代わりに、ヒナタがその質問に返答する。
「あれは.....あの格好は教典で見たことがあります....。
「聖徒会」の服装....
ツルギさん....あれは「ユスティナ聖徒会」........数百年前に消えたはずの 「戒律の守護者達」です....!」
「過去の、英雄....英霊.....。」
その概念は、間違いなく
それも数百体のサーヴァントが目の前にいる。
しかも弾が通り抜ける。
半分実体化、半分霊体なんてそんな中途半端あるのかよ。
足が、1歩退いた。
俺たちは、間違いなく敗北する。
だってこれまでずっと