衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】 作:─────
基本的に「原作」で起きなかったことには基本的に理由が存在します。バタフライエフェクトですね。
ただし、基本的に終わり方は原作と同じ終わり方、言わば「収束」しますし、
良いことばかり反映される訳ではありません。
ご都合展開ばかりではなく士郎が苦しい場面も多くあります。
それで曇る場面や爽快感がすくない作品になってることも理解しています。
でも、理屈っぽくしないと書けないんですよね....
あとはあくまで、あくまでですが。
私個人として「焦点化ゼロ」(簡単に言うと語り手、ナレーターにより話が進行する情報制限のない書き方)が苦手です。
というのもまぁこの作品無茶苦茶伏線とか張りまくってるせいで迂闊に情報が出せないのはありますし。
逆を言えば、焦点化ゼロが「甘え」のように感じられてしまって有効活用できてません。
(あくまで手法そのものではなく「私が使った場合、中途半端になってしまう」と感じられる為であって、使っている作品を否定する意味ではないことはご理解いただきたく)
というか否定し始めたらほぼ全ての作品を否定する事になる。
この作品でその書き方をしたのは数回でしょうか。
基本的にはキャラクター1人の視点にした書き方をしています。
情報制限のある外的焦点化もあるんですけど.....それするくらいなら心情を語れる今の「内的焦点化」が良いかと思い、ずっと書いてきました。
ただそうすると問題は「読者」に対する要求量が増えてしまう、と言ったところですかね、多分。
情報処理は勿論、ころころ変わる視点。情報を得られないことによる誤認識などなど。
逆にミスリードや誤認識を起こさせる為に使っている部分もあります。
上手い落とし所を探していきたいものです。
追伸。
自信はゼロになりました。
ここから先のエミュレートが上手くいくかわかりません。
少女の手から銃が零れ落ちかける。
もう握っているほどの握力もないのだろう。
「ツルギ......そちらは.....どう、ですか.....。」
膝を瓦礫の床に着き、身動きのできなくなった
翼は折れ、腕を垂らし、銃は持っているものの構えられるほどの力は残っていない。
「........そう...ですか... 」
彼女が声をかけた相手からは返事が戻ってこない。
目の前で庇うように、立っている彼女の両の腕はショットガンを杖のように地面に刺していた。
返答が無いのも仕方が無いことである。
なぜなら
彼女は、ハスミを守る為に、立ったまま気絶していた。
同様に、誰からも返答はない。
気づけば辺りの銃声は止んでいた。
聞こえてくるのは瓦礫を踏み鳴らして近づいてくる足音だけ。
「.....私たちは....負けた...のですね。」
そうして悟った───いや、最初から、この場に残り戦うことを決めた時点で彼女達には理解できていた。
まともな
されど、その口元は笑みを浮かべている。
後悔など微塵たりともないからだ。
彼女達は
自分達の信じる「正義」。それを実行し、実現できたからに他ならない。
「......ベストは、尽くした。
弾薬も体力もない...。
任務、完了だ......。」
もう1人、この場で意識を保っていた人物がいた。
風紀委員、
彼女も力尽きたのか、ハスミの背に、寄りかかり座り込んだ。
されど、彼女はハスミより軽傷。意識ははっきりしていた。
「よく....残る気になりましたね.....。」
「.....それは、こちらの
よく粘るじゃないか。
......お前たちはほとほとめんどくさいと思ってはいたが、こんな所で役立つとはな....。」
「良く回る舌ですね....。」
「.......そろそろ
守護者───
これより、
されど、それをハスミ達は悔しがる素振りなど見せず、むしろ微笑を零した。
「.....理解できない.....なんで──。」
その様子に、ミサキは指示を取りやめた。
───いや、取りやめたではない。
単純に聞きたいことがあったが為に中断したからに他ならない。
これは、延命ですらなかった。
「────これから死ぬって言うのに、どうしてそんなに嬉しそうな顔をしてるの.....?」
「........。」
その問いに答えるものはいない。
気づいてミサキが辺りを見回すものの、倒れているものは誰1人として苦痛に顔を歪めてなどいない。
皆────満足そうに笑っていた。
「────私は、貴女達から「日常」「平和」と呼べるものを、奪った。
なのに───」
どうして、とその先を心の中で繰り返した。
ミサキは直ぐに首を小さく振り、考えを改める。
「まぁ、いいや。
結局はどう思っていようとも、これか無駄になるんだから。」
されど。
その躊躇が命運を分けた。
声の聞こえてきた方角を、ミサキは無気力なまま向いた。
「......聖園ミカ.....。」
そこにはワンオフの制服を着たティーパーティー、パテル分派のリーダー、聖園ミカが立っていた。
「こんにちは、随分派手なパーティーしてるね!」
驚きを隠せない。
クーデターを起こした聖園ミカは現在シャーレで監視下におかれていたはず。
いくらなんでも自由には動けないと踏んでいた。
が、予想に反し、目の前に計画外の敵が立っている。
「衛宮先生とナギちゃんはここにはいないみたいだね。
良かった。
ねぇ
「.....ッ...。」
無意識に一歩、退いた。
ミサキは戦力を確認した。
500以上いた
いくら耐久力と数の暴力でけしかけたところでこの女は止められる気がしない。
何故なら、
これを相手にするには質も量も足りない。
それに言葉の1つが脳裏でなにか引っかかっていた。
(私
辺りを見回す、が目の前の女以外に敵は見当たらない。
次は耳を澄ます。
爆音と建物の倒壊する音。
(ブロロロ......!)
その中に車の走行音が混じる。
それは段々とこちらに近づく。
目を凝らす。
無防備に立つ、目の前の女の奥の煙の中から────
「おりゃぁぁぁぁぁっっ!!」
1台のバンが、突っ込んできた。
「は───?」
咄嗟に横へ跳躍した。
自身の回避が間に合ったミサキは、すぐさま後ろを振り向いた。
バンにはシャーレのエンブレム。
そして降りてくる何人ものヘルメットを被った生徒達。
────噂に聞いた、藤河組だ。
「......流石に分が悪い。」
「これで形勢逆転かな?
じゃあミキちゃんユリカちゃん。
皆のことはお願いしていいんだよね?
「おっす!期待してんぞお姫さんよ!」
「わ、分かりました!
────皆、始めるよ!」
「「応!」」
仕留め損ねた、などと言っている場合ではない。
目の前の少女の顔が豹変する。
言い表せない恐怖感に、顔や背筋を冷たい汗が流れる。
あの怒りに満ち溢れた
「......冗談じゃない。」
ミサキの表情は眉を顰め苦虫を噛み潰したものへ変化した。
アリウススクワッド全員で挑むならまだしもここに居るのは守護者とはいえ人形ばかり。
結論としては、数に物言わせて時間稼ぐ以外に選択肢がなかった────。
一方、槌永ヒヨリも驚愕していた。
「うわぁ......人生ってどうしてこんなに過酷なんでしょうね.......。」
が、その行く手は彼女はたった1人、残ったシスターに阻まれた。
とはいえ敵も手負い。
30分も戦闘すれば片がつく。
そうして弾薬を温存し戦闘した結果。
「ヒナタさん大丈夫ですか!?」
「はぁ....はぁ.....。
ありがとうございます...ですが。
.....そういえばヒフミさんがどうしてこちらに────いえ、そんな事よりも衛宮先生はお見かけしていませんか!?
ナギサさんとゲヘナの風紀委員長さんと共に逃げたのですが....追っ手がかかり私が───けほっ....ごほっ.....。」
未だに彼女は立っていた。
さらに言えばそれどころではなかった。
増援まで到着してしまった。
人数としては2人。
しかしその内の1人が、とんでもない化け物だった。
自分達のリーダーが言っていた。
『狐坂ワカモには気をつけろ』
と。
実際彼女はD.Uでリーダーと戦闘し、
「うわぁぁん.....こんな時に私のところに来るなんて本当に───」
「──────。」
愚痴をこぼそうと口を開いた彼女をワカモが睨みつける。
そしてなんの前口上も確認もなく、発砲した。
放たれたライフルの狙撃をしゃがんで交わした。
そしてその弾丸の軌道を視線で追う。
(ドガァァァン!)
なんと、基軸に直撃したとはいえ、ビルが1つ、崩れ始めた。
ヒヨリは真顔で、冷静に検討した。
「......私では敵いませんね.....ここはリーダーに合流することを優先としましょう。
後の時間稼ぎはお願いしますね。」
そうしてただ
「逃がすと思い────」
「ワカモちゃん!今は衛宮先生とアズサちゃんを探すことが優先です!
ヒナタさんも重症です。
早く安全な所へ運ばないと!」
ギリギリ意識のあったヒナタはとうとう倒れ目を伏せた。
「 .....命拾いしましたわね。
仕方ありません、一時撤退いたしましょう。」
こちらも痛手ではある。
ここまで来て、負傷者を離脱させるための援護。
2人の捜索を断念しなければならなくなった。
「.....ヒナタさんは私が連れていきます。
ワカモちゃんは───」
「いいえ、それはなりません。
何時どこから誰が攻撃してくるかも分からないのです。
それにそれをしてしまえば私はハナコさんとの約束を破ることになります。
私も共に行きましょう。」
かくして、衛宮士郎と空崎ヒナ、桐藤ナギサを離脱させるため
「士郎さん.....どうか ....」
ご無事で、と。
しかし彼女の願いは叶わない。
男が倒れている。
灰とも黒色ともとれるそのスーツを、赤い血で濡らして。
彼は喋ろうとする度に、首からピュルピュルと噴水のように断裂した血液が噴出した。
────もう、助からない。
その隣にはマスクをつけたよく知っている生徒の姿。
「....銃弾は頸動脈を貫通した。
出遅れだ。
時期に貴様はヘイロー────いや、死ぬ。」
「─────あ.....あぁ..........ッ!!」
それが───白州アズサが見たものだった。
「......ここでお前が出てくるのか、アズサ。」
「─────。」
錠前サオリに撃ち抜かれ、血を流して倒れる衛宮士郎の姿。
ここで、悲しみより怒りが先に来る。
それが白州アズサという優しいが故に感情の制御に乏しい少女であった。
「.......どうだアズサ。
トリニティにもシャーレにもお前の居場所はない。
私達のような「人殺し」を、受け入れてくれる場所などこの世界のどこにも存在しないんだ。
もし、あるように見えても全ては儚く消える幻だ。
この男のようにな。」
サオリは死んだ男を見下ろした。
そしてその銃口をトドメを刺さんとばかりに額に突きつける。
「サオリィィィィィッッ」
まずアズサが最初に投げたのはスモークグレネードだった。
それをサオリはアサルトライフルで迎撃して気づいた。
「まだ甘い夢に酔っているのか。
仕方が無い、覚ますのを手伝ってやろう。」
一件すると何ともない攻撃ではある。
が、先頭の序盤からスモークグレネードを投げるのは相手の力量や不意打ちでなければ効果を発揮せず、むしろ煙によって自らの視界も防がれてしまう為、下策である。
が、アズサが狙ったの一番の目的は、倒れている士郎にトドメを刺させない事。
目立つ行動で視線をこちらに向けつつ視界をくらませれば確実にサオリはアズサと戦闘をしなければならなくなるからであった。
「.....煙幕のつもりか。
─────と、なればだ。」
アズサはサオリの左後方へ回り込み、攻撃をしかける。
(ダダダダダダダダッッッ!)
目算20mあるかないかの距離。
予想してなければ回避など困難だった。
が、しかしサオリはゲリラ戦を得意とする者。
強襲、奇襲の位置やタイミングを測るのは容易だった。
「甘い.....それに───」
サオリはその射撃を回避してなどいない。
標的が移動しているのだからそもそも当たるはずがない。
同時に手榴弾を弾丸の雨の中に投げ込みアズサの斜線上にも簡易的な爆煙を作った。
「くっ...!」
敵の位置が分からないのでは攻撃のしようも、迎撃もしようがない。
アズサは後ろへ退くことに決めた。
されど、それ全てが読み通り。
その後方へ回り込んでいたサオリは気配を消してアズサへ近寄った。
取った戦術そのものはアズサと同じ。
されど、練度と機転、として速度と丁寧さは段違いだった。
しかし、アズサも決して戦闘を始めたばかりの赤子、という訳では無い。
すぐさまこの状況がサオリの手のひらの中にあると理解した。
「........前進したか。
悪くない判断だ。」
アズサは野生の直感じみた勘によりサオリの奇襲を間一髪で避ける
されど、逃げられた側のサオリが焦ることなどない。
およそ彼女が戦場に置いて焦りをみせることは稀である。
それは自身が構築してきた戦術と状況判断能力による裏打ちされた自信からくるものであるからだ。
彼女の個人的な戦力としてはそれほど高くは無い。
が戦術指揮官をさせればアリウス分校で右に出るものはいない実力者である。
その結果
前方へ走っていたアズサの足元は突如として爆発した。
「ぐっ.....ううっ!!」
受身をとる暇もなくアズサは元いた位置へ、爆風によって吹き飛ばされた。
「....!指向性地雷....!?」
目の前には長方形の箱のようなものがいくつも置かれていた。
赤外線で侵入者を認識し、感知範囲に入れば爆発する地雷の1種。
それがあの爆煙の中に隠されていた。
身を隠すため、移動する為だけにサオリは手榴弾を煙幕代わりに用いたのではない。
最初に起こしたアズサの煙幕すら最初から利用されていた。
「怒りで冷静さを忘れるのはお前の良くない所だ。
以前にもそんな感情は捨てろ、と教えた筈だが。
お前は相変わらずだな。だからこのような結果になる。」
「────。」
アズサも理解した。
もし自分が自らを最初からただの武器として戦っていたとしても、彼女には勝てなかっただろうこと。
そうして
「何も考えずに突撃とは正気か?アズサ。
お前の特技はゲリラ戦における奇襲攻撃だ。
だと言うのに私と正面から戦って適うはずがないだろう。」
アズサは立ち上がる。
味方もいなければ増援も期待出来ない。
補習授業部の皆を置いて戦場へやってきたのだ。
それでも彼女は時間を稼ぎたかった。
まだ士郎は死んでいない、そう認識し博打のような戦闘による時間稼ぎの末に救援が駆けつけてくれることを祈らずには居られなかった。
たとえそれが虚しい結末になろうとも。
「この状況.....何が目的だ、サオリ。」
故に戦闘で勝てない───時間が稼げないのであればそれ以外の手段を使うまでだ。
対するサオリは余裕の表情でアサルトライフルの
しかしその口からは何かを気にする様子が伺える。
「──────。」
そしてその後ろからやってきた。
顔をマスクで被った自分と同じくらいの少女。
「姫、状況は?」
「──────。」
姫と呼ばれる少女。
サオリと同じく、アズサにとっては元は仲間。
「......チッ.....ミサキは
ヒヨリは
本当に想定外のことばかり起こる。」
「────。」
姫と呼ばれた少女はアズサに歩み寄り「久しぶり」と声をかけた。
「アツコ.....どうしてこんなことを。」
「─────。」
彼女はサオリに「どうするの?」と投げかけている。
「........何が起きてるのか教えてやろう。
私たちは「エデン条約」を
条約が締結される古聖堂に巡航ミサイルを撃ち込み、ティーパーティー、
そして混乱の中、条約の内容を私たちにとって都合の良いようにねじ曲げた。
過去を遡れば私たちも「
そしてそれは今も変わることがなかった。」
それを聞いたアズサ目を驚愕しながら否定する。
「───そんなこと、できるわけが無い!
それはただのこじつけ、屁理屈だ。
(ダダダダダダッ!)
「ぐっ.....ううっ!!」
その否定の言葉を、サオリは銃弾と銃声をもってして断ち切った。
銃弾はアズサの左頬を直撃する。
喋っていた途中で被弾したせいか、アズサの口からは血が流れ出る。
「
お前
暖かい場所に一人ずっと居座って、私たちまで騙して綺麗でいようとするお前はもう既に「アリウス分校」の生徒ではないだろう────!」
サオリの銃のグリップを握る指に力が篭もる。
冷静であることと怒らないことはイコールではない。
「だと言うのに「私たち」と誰が同じだと言った──!?」
(ドカドカッ!)
「あぐ.....っう.....!」
アズサに指を指すように、サオリは銃口を向けて再度引き金を引いた。
次に直撃したのは銃を持っていた右腕だった。
絶え間なく、されど外すことのない連弾にアズサは銃を手放し、左腕で右腕をかばう。
戦場で、かつ敵の目の前でたった一つの抗える
勝敗はこの時点でついていた。
───いや、勝敗というのなら最初から、第一次公会議の時から定められた結末だったのかもしれない。
「.....続けよう。
トリニティとゲヘナの間で紛争が起きた時、「
私たちはただその本来の筋書きに、「アリウス分校」の役割を書き加えただけだ。
けれど、結果はどうだ。」
「────。」
アズサを取り囲むのは「初代:戒律の守護者」ユスティナ聖徒会。
「これが私たちが「トリニティ」としての権利、権限をもっている証明だ。」
「ようやく.....理解した。
この襲撃は単に各学園の首脳部を狙ったものでもなければ、事態を混乱させるためのものでもなくて───
エデン条約の
それによって、あの不可思議な戦力を確保することが目的だったのか。」
そして、その戦力が牙を向けば、トリニティとゲヘナは概念的に弱い立場になり一方的に潰されていくことを、アズサは理解した。
「........お前は連れていく。
認めたくないが「トリニティ」であり「アリウス分校」の生徒、どちらの側面も持っているお前を放置しておけばいずれ支障になるだろう。」
「───────。」
サオリが強行しようとするその傍ら、アツコが冷めきった声なれど優しく「戻ってくる気はないか?」と声をかける。
されど返事より先にサオリが止めた。
「辞めておけ姫。
こいつの意地を折るのは簡単じゃない。
昔からそうだっただろう。」
「──────。」
アツコは、「でも今なら?」と返す。
けれど、強情に睨みつけるアズサの表情は変わらない。
それは「諦めを知らない」「足掻く者の瞳」。
「無駄だ。
トリニティで「自分は孤独」だと学んだと思っていたが。
─────その意地を、思いを、すぐ傍で煽る存在がいたんだろうな。
この世界の真実を隠し、事実を歪めて、嘘を教える。
そんな悪い
そこで、アズサは気がついた。
今のサオリと、過去のサオリの違和感。
「......サオリ、1つ聞かせて。」
「─────なんだ。」
サオリはアツコへ向けて「こいつは何を言っているんだ?」と聞き返している。
過去のサオリは士郎に対して「アズサを守ってくれ」と言っていた。
対する今は?
士郎を「悪い大人」と蔑んでいる。
「なら聞き方を変える。
「.........。」
アズサは直感で正解を見つけ出した。
今のサオリには士郎と会った記憶が無いと。
───否、それだけでは無いのかもしれない。
「「私だけが」.....と言ったな。
ならトリニティへの潜入......何故サオリは私に一任した.....?
「一般人」として振る舞うことの出来ない私がトリニティに潜入しても成功率は低い事は分かっていたはずだ。
失敗出来ないことは自分でやる、それがサオリ、あなただった。」
「─────うるさい。質問は一つだけだと───
........?
なんだ?何かが向かってくる?」
サオリはアズサに銃を突きつけたまま周囲を警戒する。
そして視線が1台の車を捉えた。
一瞬目を疑った。
風紀委員会やティーパーティー、
こちらに向かってくるのは「給食部」とボンネットに書かれた1台のの車両だった。
「ッ....チッ!!」
動揺のせいか、対応が遅れる。
そして、攻撃をするものの、遮二無二突っ込んでくる車を止められない。
「───姫!下がれ!」
そうしてアズサとサオリ、アツコの間を割くようにやってきた給食部の車にはアズサにとって見覚えのある面子が乗っていた。
「クソ!待てアズ───チッ.....!」
そうして再びの銃声の嵐。
「アカリ!早く衛宮先生を。
ハルナとイズミとジュンコは相手の足止め!
急いで!」
愛清フウカが必死に美食研究会に指示を出している様子を目の当たりにし、アズサは我を忘れた。
「貴女も大丈夫、アズサ?!」
「あ、あぁ....だけど.....どうして。」
「クロノススクールの配信を見たの───話は後!
全員乗ったわね!出すわよ!」
そうして給食部の車はドリフトの容量でその場で180度ターン。
砂煙を巻き上げ視界を覆い隠した上でフウカはアクセルペダルを思いっきり踏んだ。
「えっ!?ちょっと待って私乗ってないんだけど!」
一人取り残されたイズミもそれを追って走り出す。
「─────なんだ今の───」
いきなりの事にサオリは戸惑いを隠せない。
さらに50mm迫撃砲が彼女達に降り注ぐ。
サオリ達は知らない。
この攻撃は風紀委員会のもので、士郎を助けようとするフウカの為に一計を案じたハルナ達美食研究会がフウカを攫ったように見せかけ、ゲヘナ本校から直接連れてきたものだということを。
「───────。」
「......そうだな、姫。
今は2人と合流する。」
踵を返し、迫撃砲の攻撃で出来た爆煙を使い。
サオリ達はその場から去った。