衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】   作:神宮寺志狼

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#10 迷わずに手を伸ばして

旧校舎へ向かう途中、ホシノから着信が入った。

いつものごとくほぼ自動で繋がった。

 

『お~、繋がった。

お疲れー、先生。 』

 

口調はいつも通りだが、何処かその雰囲気には緊張感があった。

 

「ホシノか。」

『大体話は聞いてるよ~』

 

誰からだろう、藤河組の誰かか?

 

『ヒフミちゃんが泣きながら相談してきたんだー。

「友達が人殺しに行っちゃった、けれど私じゃ止められない、どうしたらいい?」って。』

 

「──────。」

 

『流石に電話でするような内容じゃないし、私達はそ(・)れ(・)に(・)関(・)し(・)て(・)は(・)力になれそうにないから衛宮先生が帰ってきてから相談しなよ。って。

今どこにいるのか知らないけど、動けるならトリニティに行ってあげてー。』

 

ヒフミの友達。

そう聞いて最初に浮かんだのは2人。

ワカモとアズサだ。

 

特にワカモは何をしてもおかしくない。

アズサは「アリウスの事を諦めない」と言っていた。

そんな短慮には走らない.....そう思いたいが。

 

「何せ俺を助けてくれたのがアズサだからな....。

ちなみにホシノ、お前たちはどうする。」

 

『準備は出来てる。

今回は止められても行くよ。

ヒフミちゃんは私たちの大事な友達だしね。』

 

ホシノの背後では忙しそうなアヤネやセリカの声も微かに聞こえてくる。

 

「いや、俺からも頼む。

お前達の力を貸してくれ。

いつも大事な時にいてやれないのに虫のいい話だってのはわかってる。」

 

『─────そっか、おじさん達の力が必要なんだね。

そういえば先生に頼まれごとされたのなにげに初めてじゃない?』

 

確かにそうかもしれない。

本来であればホシノ達には一切関係の無い事だったはず。

それでも俺は頼った。

 

『でもさ、衛宮先生。

そこまで背負わなくていいんじゃない?

確かに先生はアビドス対策委員会の、生徒会の顧問だけどさー。

 

私たちだけを助けるのが先生の仕事でも、したいことでもないでしょ?

それは皆分かってるからさ。

───ん?はいはーい。セリカちゃんに代わるね。』

 

と謝罪に対しての答えがホシノから返ってくると共に────

 

『あーー!もうさっきから聞いてれば!

士郎!あんたが来るまで私たち誰も頼らずに頑張ってきたのよ!

今更あんたがいないくらいでどうにもならないわよ!!』

 

何も言っていないのに、セリカからの怒号が飛んでくる。

もう、それは「お前はいらない」って言ってるように聞こえるんだが。

 

「いやお前───」

 

『大体人の心配よりまず自分のことを考えなさいよ!

私たちだって本当に大変なら蛇が暴れた時みたいに連絡するし!

「助けて」くらい言えるっての!

 

それも出来ないあんたにあーだこーた謝られる理由はないの!

分かった!?』

 

「は、はい。」

 

『黙って倒れられるより頼られて忙しい方がマシ!』

 

正論もっとも。

反論の余地なし。

ついついかしこまってしまった。

セリカからホシノの手元に携帯が戻った。

 

『.....セリカちゃんは素直じゃないよね~。

 

まぁそんな訳だからさ。

もう少し、気楽に行こうよ~。』

 

「......わかった。所用が済んだらトリニティに行く。

現地で合流しよう。渡したいものもある。」

 

『了解。』

 

 

「士郎先生.....。」

 

用事が済みヒナと廊下を歩いていると、トコトコ走って抱きついてきた奴がいる。

 

「イブキ、どうしたんだよ。」

 

彼女は泣きながら縋ってきた。

 

「マコト先輩とイロハ先輩が....凄く苦しそうで.......イブキにもなにか出来ることない?」

 

俺とヒナはお互いを見る。

流石にどちらもどうしてマコトやイロハが大怪我をしたのか知らないのだろう。

ただ、その理由をイブキに話すのは躊躇われた。

 

「......イブキ。

お前にはお留守番しておいてくれ。」

 

「お留守番?」

 

「そうだ。ゲヘナで俺たちの帰りを待ってくれ。

これはお前にしか頼めない。」

 

その視線は「イブキを置いて行っちゃうの?」と投げかけているように思えた。

が、それでも尚、彼女は承諾した。

 

「.....うん、怪我した人のお世話しながら待ってる。」

「.......いい子だ。頼んだぞ。」

 

ゲヘナ校門前に到着する。

現在朝の4時前。

 

「───じゃあ今銀鏡(しろみ)はトリニティに?」

 

「えぇ、無事って連絡が来たわ。

トリニティも相当混乱しているはず。何が起こるか分からないから気をつけて....。」

 

いつもの無感情のような声で、寂しそうに言う。

 

「あぁ。」

 

それに俺も素っ気なく返事をした。

 

「本当に───」

「分かってるよ。

お前と桜を見に行くって、約束したからな。」

「───えぇ。約束は守ってくれるのよね。」

 

ヒナは「しかたない」と言わんばかりに薄く笑みを浮かべた。

その姿に背を向け────

 

「行ってくる。」

「行ってらっしゃい。」

 

ゲヘナを後にする。

 

Girls Give Fine

 

トリニティ内の混乱は思っていた以上になかった。

道も混雑しておらず校門前ではマリーが立っている。

 

「衛宮先生!本当にご無事で何よりです.....。

行方不明と聞いて心配していました。」

 

「ありがとう。

戻ったばかりで悪いけどナギサと浦和の居る所に案内してくれ。」

 

「───!

わかりました!こちらです!」

 

マリーの後に続き、古書館に着いた。

古書館が現在の指揮所になっていると聞いた時は驚かされたが。

館内へ入ると俺を最初に出迎えたのは、ウイだった。

 

「.....あぁ....衛宮先生....ご無事でしたか...っ。」

 

ゼェゼェ、と息を荒くし、目の下には壮大なクマを作っている。

俺のボロボロになったスーツを両手で掴んで息を整えている。

 

「大変そうだな。

まさかここが指揮所兼怪我人の搬送先になってるとは思わなかったけど。

よく開ける決断をしたな。」

 

古書館に他人を入れたがらない彼女。

だというのに、今は人手で溢れかえっている。

 

「....失礼ですね....私とて現状がどれほど大変な状況かは理解してます。

本も人も、治療が早いに越したことはありません。

 

それに、いの一番に衛宮先生やヒナタさんの状態を知れると思って。

ヒナタさんは.....その無事でした。」

 

「────そっか、ありがとな。」

 

よかった、残してきたヒナタは無事だったのか。

少し、肩の荷がおりた。

結局はウイは俺達の事を心配してくれたようだ。

しかし結局のところ古書館の管理そのものは怠っていない───いや、人が増えたからこそ監視の目が必要なのだろう。

彼女が息を荒くしている理由はそれだろう。

 

「ウイ、ナギサや浦和は?」

「.....こっちです。」

 

古書館内も、ゲヘナの食堂とそう変わりない。

あちこちに傷ついた生徒達が横になっている。

 

 

「「シャーレの先生」だ!」

「本当に生きてたんだ.....ナギサ様を庇ったって話だったけど。」

 

 

周囲の横になっている生徒も体を起こし、俺を期待や疑いの眼差しで見る。

 

「───衛宮先生。

よく、戻ってきてくださいました───。」

 

けれど、後ろめたいことなど何一つない。

ならば今、立派にこの学園をまとめている彼女(ナギサ)に恥じないように─────

 

「た(・)だ(・)い(・)ま(・)、皆。」

 

下は向かない。

折れてなどいない。

絶望なんてしていない。

まだまだここからだ───!

 

前を向いて、胸を張った。

立場としては良くなかっただろう。

大人のする事ではなかったかもしれない。

それでも、此処に、守り抜いたものがある───!

 

「ナギサ、よく頑張って統制してくれた。

でもまだ終わりじゃない。

俺じゃトリニティの皆をまとめることが出来ない。

 

だから、もう少し力を貸してくれ。」

 

「───はい。ト(・)リ(・)ニ(・)テ(・)ィ(・)の(・)ホ(・)ス(・)ト(・)と(・)し(・)て(・)全力を。」

 

ナギサも大丈夫だ。

凛々しく、余裕をもって優雅に立っている。

 

「浦和────ナギサを手助けしてくれて、ありがとう。」

 

視線を横へ。

責任など持たなくてもいい、なんの権限もないはずの浦和。

それでも彼女はここまでしてくれたのは────

 

「衛宮先生────ヒフミちゃんが───」

「あぁ、知ってる。

大事な時に、傍で支えてやれなかった。

けど、俺も言いたいことがある。」

 

───彼女に守りたいものがあったからだ。

それはこのトリニティを、なんて壮大なものじゃない。

ただ、自分の友達の為に自分のできることを精一杯に。

 

「わ、私だって頑張ったんだから!」

 

その隣にいるコハル。

よく見てみると服はボロボロだった。

 

「お前なんだよその格好。」

 

特に腹部。

素肌が見えるほど服がちぎれている。

 

「エッチ!どこ見てんのよ///!」

「....まぁまぁコハルちゃん。

─────衛宮先生、コハルちゃんは本当に頑張りました。」

 

そして浦和から語られるコハルの行動。

セナの運転するナギサが乗ったゲヘナの救急車を襲ったトリニティの生徒を牽制射撃で止めたこと。

それにより共に行動することになり、パテル分派の戦争急進派の凶弾からナギサを庇ったことを。

 

「......ありがとうコハル。

お前がトリニティに残ってくれてよかった。」

 

「べ、別に私は悔しかっただけなんだから!

私は今正義実現委員会じゃない ....先輩達と一緒に戦うことも出来ない.....だから、「私に出来ること」をしただけ!」

 

「そうか....。」

 

頭を撫でようと手を伸ばす。

───が、前に拒絶されたことを思い出した。

 

「......撫でないの?」

 

だって言うのに催促するように聞いてくるんだから。

本当に歳頃の少女の気持ちはよくわからん。

 

「はいはい、よく頑張りました。」

 

「───っ!?子供扱いしないでってば!!」

 

うん、やはりよく分からなんだ。

 

 

「衛宮.....先生。」

 

背後から声がかかる。

忘れもしない。

置いてきてしまったもの、守れなかったもの。

そして───最後まで俺を守ってくれたもの。

 

振り返り、そして2人を抱きしめた。

 

「ありがとう、ごめんなツルギ、ハスミ....!

本当にありがとう....!」

 

「───!?え、衛宮先生....!?

み、皆さんの目の前....///」

「ヒッ....ギェェェェァァァ!?」

 

顔を赤らめるハスミ。

同じような表情で腕をバタつかせ、頭から煙を出すツルギ。

 

触れ合いは一瞬のもの。

けれど、それでも、ここに皆で居られることが嬉しい。

 

「俺は、お前達を見捨てた。

許してくれとは────」

 

「───あの状況ではっ!」

暴れていた筈のツルギの顔が焦ったものへ変化する。

 

「.....しかたなかったと.....思います.....。

それに......嬉しかったんです。

その.....最後まで、私達を守ろうとしてくれた事が....。」

 

「私達はそれが最善だと思い、承知の上で行動しました。

それは衛宮先生も同じだと思っています。

ですから───あの場において、正しさこそなくとも、誰も間違ってなどはいません。」

 

ハスミに続きもう1人声を上げた。

 

「私も、そう思う。」

 

人集(ひとだか)りが急に散らばり道ができた。

やってきたのは風紀委員会の生徒に支えられた銀鏡(しろみ)イオリの姿。

 

「......見て、ゲヘナの生徒よ。」

「やだ。なんでトリニティに....?」

 

ヒソヒソと陰口が聞こえてくるも、銀鏡は一切動揺などしていない。

鋭い目で、俺を見据えている。

 

「皆(・)、必死だった。

これはその結果というだけ。

お前が謝罪するようなことは何も無いだろ。」

 

冷たく突き放すような口調。

ツルギ達の表情は何が言いたげだが。

 

「......俺は、お前達を信じられなかった。」

「それは当然だ。

全員ボロボロだった、誰が欠けたっておかしくなかった。

それでもここにいられるのは誰も諦めなかったから。

 

────ヒナ委員長からあの後の事を聞いた。

確かに思い返せば、あの時の委員長は今まで見た中で一番追い詰められていた。

怪我も酷かったし、歩くのだって苦痛だったはずなんだ。

 

けど、私は止めなかった。」

 

「銀鏡....。」

 

彼女は口元を力(りき)ませ、拳を握っている。

 

「私達はいつだってそうだった。

ずっと委員長の背中を見てたんだ。

憧れてた。

「きっと委員長なら」って。

 

だから止められなかった。」

 

震える肩。

悔しいと。

何も出来なかったと語っている。

 

「感謝してるんだ、あんたには。

だから.....

ありがとう。

私たちの委員長を助けてくれて。」

 

イオリが頭を下げた。

それに続いて、後ろにいた風紀委員会の生徒たちも。

その光景に、もう彼女達への嫌味も、忌避する視線も無くなっていた。

ただ、誰もが呆気にとられている。

 

「......銀鏡.....。

いやイ(・)オ(・)リ(・)。頭を上げてくれ。」

 

彼女の肩に手を置いた。

そうだ、お前が謝る必要なんて、ない。

 

「でも私たちは────」

「さっきハスミが言っただろ?

正(・)解(・)な(・)ん(・)て(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)。

でも間(・)違(・)っ(・)て(・)も(・)な(・)い(・)って。

 

それに矛盾してるぞ。

あの時俺と一緒にヒナが逃げなかったらどうなってたんだか分からないぞ。」

 

その揚げ足を取るような俺の発言に、頭をあげたイオリは顔を真っ赤にして突っかかってきた。

 

「な!?

違う、私が言いたいのはそういうことじゃない!

人が頭を下げてるのに────」

「....頭、あげてくれたじゃないか。」

「───!?

お前からかってるのか───痛(う)っ....。」

 

元気だった彼女も、隠していただけで相当なダメージを負っている。

 

「なら、次ヒナが無茶なことを言ったら諌めてくれ。

言えなかっただけで、ずっと一人で背負わせてる事、気になってたんだろ。

ならこれからそうしていけばいい。」

 

「────あぁ、そうするよ。」

 

イオリも、もう大丈夫だ。

 

「やっほー衛宮先生。」

「待て待て、姫さん!しーっ!」

「......ダメだ....諦めよう?ミキちゃん」

 

はて?

何故、ここにいない者たちの声が聞こえてくるのか。

 

 

「おい、どうしてここにいるんだ?ミカ、それに蒔苗(まかない)と七種(さいぐさ)まで。

俺はシャーレでミカの監───面倒を見てろって言ったよな!?」

 

「えへへ....来ちゃった!」

 

何が来ちゃっただ。

......本当に全く、お転婆な姫様だこと。

 

けれど話を聞けば俺を心配して来てくれたって言うんだから責められない。

それどころかハスミやツルギ、イオリはミカ達のおかげで助かったようなものだ。

 

「......仕方ない、来た以上、今回はミカ達も戦力として数えるからな。」

 

切り替えろ。

ここからは、「シャーレの先生」として。

 

「ミカ、それにツルギ。

これを受け取ってくれ。」

 

「なになにー?プレゼント.....え?」

「.....衛宮先生、これは────」

 

「2人とも戦っているならわかると思う。

これは「戒律の守護者(ユスティナ聖徒会)」にのみ、使うんだ。」

 

そして、「切り札」を、2人に手渡した。

これで3(・)人(・)目(・)。

 

後2人。

 

 

 

 

「ナギサ、浦和とコハルを借りていく。

準備が出来次第現地に───」

 

「......わかりました。

ヒフミさんを、どうか────」

「わかってる、それこそ言われるまでもない。」

 

昔、似たやり取りをした。

その当時は、お互いの事を理解しきれず、疑い、敵対していた。

 

けれど、今は違う。

これまで築いた軌跡は途切れていない。

 

「先に行く、後で。」

 

朝焼けにはまだ早い。

現在時刻は夜中の3時。

 

「あなた様....!」

 

古書館を出ようとすると出入口に集(たか)っていた生徒がまたも道を開けた。

その先には泣き腫らした顔の2人。

 

1人はこちらへ駆け出して、抱きついてきた。

 

「お、おい...!」

「よくご無事で....本当に....ええ...本当に....!」

 

せっかく泣き止んだのだろうに。

安心したからなのか、またこいつは泣き出してしまった。

 

「.....心配かけたなワカモ。

お願いだから、もう泣かないでくれ。

大丈夫だ、俺はちゃんとここに居るから。」

「......はい。」

 

そして見回す。

この場に、補習授業部の全員が集まった。

────そう、アズサを除いて、だ。

そして、もうひとりが泣いている原因が、それだった。

 

「衛宮先生.....。」

「.....ヒフミ。」

 

「アズサちゃんが戦っています。

一人で.....多分今もずっと.....。」

 

ホシノから聞いている。

けれど、人伝の情報と、辛そうに目尻を腫らした彼女では重さが違う。

 

 

「同じ場所にいられないって言われて。

どうしていいか分からなくて...私じゃどうしようもなくて....。

こんな大変な事になってしまって.....もう、私みたいな普通の学生に出来ることなんて....ないんじゃないかって。

 

どうすれば、どんな言葉をかけたら、あの時アズサちゃんを....ずっと、そればっかりで....だって私は......。」

 

「────じゃあ何?アズサを放っておくの!?」

 

そんなヒフミに噛み付いたのは、コハルだった。

 

「コハルちゃん.....。」

「普通とか普通じゃないとかそんなのどうでもいいでしょ!?

わ、私は知ってる.....!

一人ぼっちでいることとか、置いてかれることが凄く悲しいことだって!

だから、私はアズサを放っておけない!」

 

「.....そうですね。

一人でいるのは寂しいですから。

それに、折角出会えた私たちの縁.....こんな形でお別れなんて絶対にダメです。」

 

浦和も一瞬、薄く自嘲の笑みを浮かべる。

けれど、過去を後悔するだけが彼女ではない。

 

「私は、アズサちゃんを止めたいです。

ワカモちゃん、貴女はどう考えますか?」

「──────知りません。」

「─────。」

 

浦和に話題を振られたワカモ。

けれど、彼女の口調はとてつもなく冷たかった。

 

「おい、流石に────」

「強いて言うのであれば、非常に腹立たしいです。」

「ワカモあんた───」

 

諌める俺とコハルの声を、ワカモはその声の大きさでねじ伏せてくる。

 

「何が、と聞かれれば。

他人に対して咎めたことを、些細なことをキッカケに自分で破っていった事に対してです。

 

何が最後まで足掻くですか。

今のアズサさんはアズサさんらしくありません。

いいえ───確かに一人で足掻こうとするのは彼女らしいと言っていいかもしれませんが。」

 

「ワカモお前────。」

 

「士郎さん?報告しておりませんでしたけれど。

私、あなた様が桐藤ナギサに撃たれたと聞いて、彼女を亡きものにしようと考えておりました。」

 

.......。実にお前らしいな。うん。

 

「けれど、それをアズサさんはあたかも「自分は経験者です、ろくな思いしないからやめなさい」と言わんばかりに止められました。

けどなんです?蓋を開けてみれば結局は同じではありませんか。」

 

「......たしかにな。

俺もアズサには申し訳ないと思ってる反面、怒ってる。」

 

そうだ、あいつは「アリウスの皆の事は諦めない」と言った。

それを勝手に反故にした。

 

「俺と同じで、他人に頼れないのはあいつの欠点だ。

だから、それは俺達で補うんだ。」

 

ワカモは浦和へ、俺はヒフミへ視線を送る。

 

「ですからハナコさん、私はアズサさんを止めたいと思います。」

「.......ワカモちゃん....。」

 

 

 

「ヒフミ。」

「....はい。」

 

地面に膝を着き、ヒフミの両肩を軽く掴む。

視線を合わせ、語りかける。

 

「大事なものは力じゃないって前にも言ったよな?」

「はい.....大事なのは....力じゃなくて私が、どうしたいか....。」

「お前、アズサに「どうして欲しいか」「自分がどうしたいか」ちゃんとはっきり言ったか?」

 

「......いいえ、言ってないです.....。」

 

まぁ、急に別れを告げられ、混乱していたのだろう。

それは仕方ない。

 

「じゃあ言いたいことは全部きちんと言わないとな。

それに、お前ブラックマーケットで銀行────」

「わわわわっ!!?だ、ダメです!それ以上───」

 

俺はそれしか告げてない。

でも、アズサが自らのことを「普通」じゃないと言うのなら。

 

「 .......そうでした、───でした。

─────!

少し待っていてください、取(・)り(・)に(・)行(・)っ(・)て(・)き(・)ま(・)す(・)!」

 

泣き顔は何処へやら。

ニコから聞いていた。

あいつが語ったことを。

 

何に対して、どう思っているのか。

 

それでも、勇気が出ない時だって、困惑してどうしていいか分からない。

 

けれど、それを支えるのは「先生」の俺であり、友人達だ。

 

「お待たせしました!」

 

ヒフミが戻ってくるとコハルがその背中を叩いた。

 

「何してんのよ、早く行くわよ!」

「では、皆で行きましょうか。」

「アズサさんに文句を言いに───」

 

「......あのなぁ....。」

 

良い感じに締まりそうだったのだが。

ワカモのこんな怒り方は────本当にアズサが大事な友人になったのだろう。

 

「俺の大事な生徒に、人殺しなんてさせない。

止めに行くぞ。」

 

空を見上げる。

曇天、灰色の空。

 

けれど、直に、朝は来る。

空の向こうにだって、光はある。




ようやくここまでこれました。
士郎じゃないけど、折れずにここまで書いてこれてよかった。
それは読んでくれている皆さんのおかげです。
ありがとう。

次回、宣言回、
人によっては怒るかもしれない。
それは「ブルーアーカイブ」を否定する事になるのかもしれない。
それでも許して欲しい。

だってこれは、青春だけで終わらない苦くも酸っぱくもある。
彼と彼女達の「人生」の1ページなのだから。
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