衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】 作:神宮寺志狼
それこそ今にして思えば士郎の「今は俺の言葉じゃない、けれど、俺の言葉にしてみせる。」という士郎の「背負った過去ときちんと決着をつけ現在の生き方を捨てて、本当の意味で生徒達を守り支えられるような先生を目指したい、けれどどうすれば良いのか分からない。」とか歌詞にある「きっと変われない、だけど変わりたい」というそのままですね。
というかこの作品のコンセプトの真髄のひとつには「Unlimited codes」があります。
知っていますでしょうか、世紀末聖杯戦争。
金ピカと青タイツとYAMA育ちがクソ強い格闘ゲーです。
それはさておき有り得た可能性、士郎が辿ってきた聖杯戦争。
色々なキャラの視点で追っていくブルーアーカイブ
そう、それが意味するは無限の可能性。
撃ち合いという名の会議が始まった。
サオリ達の率いる「
動きはぎこちなく鈍化し、安定していない。
それでも数としての差が縮まったわけじゃない。
相手は無限の軍勢だ。
どれだけ倒れても、存在が揺らいでも行動原理までは変わっていない。
こちらが「ETO」を名乗ったところで「
このままでは何も変わらない。
────だからこその切り札。
勝利をもたらす砲声を、今から鳴り響かせる。
俺と同じように、「誓約」にしばられた彼女達を。
古いしきたりは終わりだと。
「解放」の音を。
「ホシノ、ヒナ、ツルギ、ミカ、ワカモ!
特殊弾頭の使用を条件付きで許可。
攻撃準備だ。
目標「
そう指示を出しながら、自分も手元にあるマテバに弾頭を装填する。
弾薬を即座に切り替えられる。
これはリボルバーの良い利点だ。
「
ヒナからの要求に即座に反応する。
彼女には事前に説明してあったとはいえ最終確認は必要だ。
「目標対象周辺約50mに普通の生徒がいないこと。」
『.....了解。』
『任せて~。』
『.......了.....解....キヒッ....!』
『おっけー☆』
ヒナを先頭にホシノ、ツルギ、ミカが返事をくれた。
隣でもワカモがクリップをライフルに装填している。
「はい....♪あなた様の敵は....全て私が壊してみせます....!」
たった今、全行程が完了した。
後は指示を出すのみだ。
敵を見据える。
いや────敵、ではない
意志を奪われ、ただひたすらに契約に反したものを排除する
さらに、その存在を「道具」として複製された。
あれも、「導くべき生徒」な筈だった。
だから、「敵」として撃てない。そもそも
確かにお前たちには与えられた役目があって、それに従っているだけなんだから。
けれど、今の時代を変えていく、作っていくのは─────
「過去の亡霊なんて要らない。
契約を守らせるだけの人の心のない執行者なんて要らない。
シャーレの顧問として命じる。
─────撃て!あの古代の約定に縛られた亡霊達を解き放ってやれ!!」
だから、申し訳ない。
お前たちが何をどう思って、こうなったのか。俺には分からない。
何があったのかも、知らないままだ。
それでも、すまない。
俺はお前達の、その存在を、踏み越える。
十分だ、よくやった。
だからもう眠れと。
けれど、不安もあるだろうか。
なら安心して眠れるよう、これから証明しよう。
この時代はこの時代の者達で、守るのだと───。
マテバの銃口を
─────引き金を、引いた。
おそらく望んでいたであろう平和は、俺たちの手で紡いでみせる。
(キィッ──────ボォオオォォォン!)
彼女達に銃弾が直撃。
同時に青白い炎を巻き起こし、周囲の守護者を何十体も巻き込んだ。
爆風が周囲を包み込む。
「シロウ、弾着観測できる?」
ヒナの声に風の中目を凝らす。
青くきらめく灰。
それが晴れるとサオリの前に何十体も鎮座していたはずの守護者のいた場所には何もいなくなっていた。
それどころではない。
その周辺の守護者も連鎖的に現在進行形で消滅していた。
その様子に思わず瞳を閉じて祈った。
どうか安らかに眠って欲しいと。
「........ごめんな、こんな強引な
でも、ありがとう。ユスティナ聖徒会。お前たちのおかげで今がある。
ご苦労様だったな、もう、ゆっくり休んでくれ。」
一方のサオリは混乱していた。
「何...そんなまさか。
「ユスティナ聖徒会」の
貴様ッッ....何をしたァッ?!」
「何も、ただ片っ端から契約破棄してってるだけさ。」
吐き気もなければ、体のどこをも怪我していない。
これで
あぁ、少し肩の荷が降りた。
口元が微笑んだ。
けれどそれはサオリにとって嫌味ったらしく笑う意地の悪い大人にしか見えないだろうな。
回想
(バァァン!)
薬莢が目の前の拳銃から飛んでいく。
同時に魔力の炸裂する音が周りに響く。
剣製には成功した。
が────
「クソッ....200近く
5時間も粘ってこれか......。」
屋根も崩れ、雨漏れしているゲヘナの旧校舎の一室。
目の前の机の上には形の違う弾丸が並んでいる。
今しがた、俺が作ったものである。
参考にしたのはとある生徒たちの使用している弾丸だ。
9×19mmの弾丸は15発。
7.7×56mmに近いものが5発。
そして、弾丸になり損なった金属のような素材を圧縮して12ゲージの3弾に放り込んだもんが10発。
7.62×63mmの弾丸3発。
12.7m×55mm弾、6発。
「.......少なすぎた。」
そも
形を保った成功品があるだけマシと思っておこう。
剣を弾丸にするだけでこれなのだ。
技術的に銃なんて俺には作れるわけがなかったのだ。
その点、現在使っている「大人のカード」に蓄積された「生徒の武器」の設計図に「投影」の要領で魔力を流し込んで銃を作る「展開」魔術はやはり一線を画している。
この「弾丸」の使用者はもう決めている。
銃本体を「展開」して順に弾を込めていく。
準備は完了した。
これは俺たちにとっての「銀の弾丸」になる。
「シロウ?大丈夫?昨日の夜9時からずっと篭もりっぱなしだけど.....。」
.....そろそろいい頃合いだ。
ゲヘナばかりにいるわけにもいかない。
「今行く。」
俺は戸を開けて心配そうなヒナの頭に手を置いた。
「休んでなきゃダメじゃないか。
お前達だって重症なんだから。」
「......つくづく貴方に言われたくはないのだけど?」
「委員長に同意します。」
「.......それは酷くないか?」
たわいも無いことを話しながら3人並んでその場を後にする。
まずは1人目。
歩きながら装填した天雨の銃をヒナに手渡した。
「そ、そんな?私いつの間に.....あら?」
天雨は自分が銃を落としたのだと勘違いしたらしい。
「大丈夫だ、これは俺が
「────......。シロウ?これは一体?」
マジマジと天雨の銃を見るヒナ。
説明は、当然必要だ。
「────5発だ。対「戒律の守護者」専用の弾丸。
....そうだな......「誓約解除弾」もしくは「制約解錠弾」って所だ。」
「.......仕組みは分からないけれど、これがシロウのいう「切り札」なのね。」
ありがとう、といって彼女は銃を受け取った。
「.....俺が言うのもなんだけど。
随分あっさり受け取るな。
俺ですら試射もそこそこしかしてないぞ。
安全性とか────」
「シロウの事は信頼してるから。
それにこれに頼りきる訳じゃない。」
嬉しくはある。
俺が頼りにならない分、それをしっかり有効活用してくれればそれでいい。
「......わかった。
ただこれだけは約束してくれ。」
そして俺は歩みを止めて条件を説明した。
まず第一に「生きている生徒相手に撃たない事」。
これは対象者がどうなるか分からないから。
次に、発砲する時以外に衝撃をあまり加えないこと。
弾丸はこれまで幾度と作ってきた。
が、ここまで過度な加工をしたのは初めてだ。
何が起こるか分からない。
「......わかった。」
「最後、この5発はしっかり使い切ってくれ。」
「........。」
ヒナは愛でるように俺が作った天雨の銃を撫でる。
しかしその表情は「申し訳ない」とか「困った」もので。
「....分かった。
けどシロウ?
貴方、連邦生徒会に許可とったの?
キヴォトスでは認可が下りている弾しか使えないけれど?」
なんて、見落としを提示された。
「──────。」
全然─────知らなかった。
そういえばD.Uで初めて戦闘になった時早瀬が「違法弾丸がどうの」と言っていた気がする。
まずい、七神にドヤされる案件だ。
「......やっぱり。
シロウって、しっかりしているようでどこか抜けてる。
シャーレでもそうなのかしら....」
溜息を吐くヒナ。
冷ややかな視線をこちらに向けるアコ。
いつもという訳ではない。
遠坂なんかといた時はむしろ俺が指摘する側だったのだが。
「つまりこれを使えって、お前達に指示するってことは......」
「規則を守らせる側の「
oh......。
無駄手間か。そう思っていたのだが、天雨は俺たちと違い、悪どいことを言い始める。
「ですが、「違法指定された弾薬
「......天雨、お前なぁ───」
相変わらずの言い回し。
この言葉の穴を突き視点。
これが今の俺たちに必要なものなのかもしれないな。
「そうね、今回は相手が相手。
「何も聞かなかった」なんて事にはできないけれど、アコの言葉にも一理あると思う。
シロウは事後、報告した方がいい。
それに、所詮弾丸も「道具」なのだから。
結局は使う側が、どう、何に使うか。」
まぁ例外はあるけれど、とヒナは付け加える。
確かにこれは危険な武器である。
それこそ、アリウスが所持する「ヘイロー
けれど、目的は違う。
殺すためではなく、生かす為の凶器。
刃が人を害し傷つけるか、癒すため使われるか 、生かす為、何かを捌くか。
その程度の違い、されど大きな差。
「...「道具はただ道具」「力はただ力」か。
────あぁ、恩に着る。」
彼女達を「
俺にできるのはこの程度だ。
「くっ......せめて.....。」
苦虫を噛み潰したような表情のサオリは後退しながら未だ残存している「守護者」の何人かへ指示を下す。
どうやら残っている「ユスティナ聖徒」にトリニティ・ティーパーティーへの攻撃をするよう指示しているようだった。
「.......サオリ、お前まだ────」
「まだだ....っ!
結束の弱い方を先に潰してやる!」
「.........。」
そう言われて尚俺とヒフミは動かない。
アズサを支えながら、サオリと対峙し続ける。
「....そうか、トリニティより私が優先か。
「別にそういうつもり─────いや、そうかもしれないな。」
確かに傍から見ればそうかもしれない。
脳裏に浮かぶ一抹の不安。
大を生かす為に小を切り捨てる、それが正義の味方の生き方。
そして「学校」と向き合うのが、「シャーレ」としての義務。
けれど、「先生」としてなら────
「今大事なのはサオリ、お前だ。」
ここで、去ってはならない。
生徒と向き合うのが「先生」なのだから。
そして信じている。
毎度、信じることしか出来ないと言ってきたが、今回ばかりはそれで正解だ。
「それに、今戻ったりしたら多分ナギサから殴られるからな。
「自分のすべきことを果たせ」ってな。」
あの古書館でナギサと再開した時に言った。
「頑張ってほしい」と。
それは「願い」であり、「頼み」であり。
そして、現在の「ホスト」としての桐藤ナギサへの、「信頼」の現れである。
「あいつなら、大丈夫だ。」
(ダダダダダダダッ!!!)
ナギサ率いるティーパーティーの本隊、そのすぐ側面に砲撃部隊は配置されていた。
それが間一髪、何も知らないナギサ達の緩衝材となり、免れた。
しかし、逆に砲撃隊は急襲に対応できず、戦闘不能や逃げ惑う生徒が続出、総崩れになった。
「チクショウ.....!なんなんだよこいつら!」
「攻撃通ってんのか!?」
それでも尚、孤軍奮闘する生徒たちがいた。
頭にヘルメットを被り、それぞれ色の違うジャージを着た「統一されてないことによって統一されている」生徒達。
「ミキちゃんも皆も!無駄弾はダメだよ!それに今退がるのも。
せっかく立て直したティーパーティーが本当に崩壊しちゃう!」
「けどよユリカ!多勢に無勢でどうしようと無いっての!」
「どうにかするしかないよ!」
その正体は悩んだ末にトリニティを支援することを決めた藤河組の生徒達であった。
しかしその人数は元の半数である20人に満たない。
その他の生徒は元々居たアビドス対策委員会のバックアップに回っていて合流できていない。
20人対100人────それが藤河組と「ユスティナ聖徒会」の彼我の差。
(ダダダダ─────カキンッ!)
「うぇぇぇ!!?こんな時にジャムるかよ!ふっざけんな!チキショウ!」
筒状のマガジンには9mm弾丸が50発から100発ほど装填出来るのだが如何せん特殊だった。
そして、彼女は銃の整備が苦手であった。
そうしてガシャガシャとマガジンを外そうとしている最中ユスティナ聖徒が目標をミキに定め、集中砲撃を始める。
して、彼女たちは別段風紀委員会や正義実現委員会のように戦闘訓練をしている訳ではない。
彼女達がするのは専ら、喧嘩だった。今では銃撃より事務処理の方が凄いとは士郎の言葉。
故に、誰もミキに気を配る余裕など、なかった。
迎撃するための銃が使えず、当然身を守る盾などない彼女に何百発もの弾丸が直撃する。
リロードにより射撃にインターバルが挟まったことで銃撃は止んだ。
彼女は、それでも尚、倒れていなかった。
「─────ち、きしょう.....!」
彼女を立たせていたのは底意地だった。
「まだ、桐藤ナギサ─────まだ姉御に謝罪させてねぇ....。
こんな所で、テメェら見てぇなヤツらに───」
だからこそその心根は「今すぐ走って逃げ出したい」であった。
けれどそれでも尚立っていたのは、自らが「姉」と慕う生徒への義理。
恐怖と痛みで震える膝や足。
それは「動けない」のではなく「動かない」と決めたことによるもの。
「いいぜ....やってやろうじゃねぇか....。」
八方塞がりになった彼女はとうとう、自らの身を盾にすることを選択した。
再度彼女へ銃口が向けられた。
幻聴か、とミキは思った。
その耳に届いたのは、その慕う姉こと「藤河マコ」のものだったからだ。
「今です、支援射撃開始!」
「光よ───!!」
その勘違いは多くの銃声で払われた。
ミキが振り返れば桐藤ナギサを中心にしてティーパーティーのが。
そしているはずの無いゲーム開発部と─────
「あ.....あぁ......あ!」
「なーに泣きそうな顔してんの。」
藤河マコが立っていた。
「姉御ぉぉぉぉ!」
彼女は泣きながら走りだし、その足元にすがりついた。
「マコちゃん....よかった生きてたんですね....」
「藤姉だ....」
「マコ先輩....」
「うわぁぁぁぁぁん!!」
それを見たユリカを含めた藤河組全員が遅れて同じ行動を取った。
「あー...はいはい、気持ちはわかるけど落ち着きなさい。
先に状況をひっくり返すわよ。
「ええ。皆様手を止めてはなりません。
動ける方は私達と共に前方への火力支援を!」
呆気にとられている藤河組を他所にナギサとマコが前進し、使えそうな榴弾砲を見繕う。
2人は地面に膝付き、砲撃の準備を始めた。
「いやなんでホストのあんたが、前線への指示はどうしたんだよ。
それに姉御まで。」
ミキがそう問うと頬や服を煤で汚したナギサは答える。
「ちょうど任せられそうな
それに私はこれでもホストですから、指揮は当然のこと、ありとあらゆる武器兵器の仕様にも精通しています。
適材適所、というものですね。」
「そういうこと、あんた達もやれることやりなさい!」
マコの叱咤激励で全員が涙を拭いて、期待に答えるべく───
「「応!」」
トリニティの支援を改めて開始した。