衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】 作:神宮寺志狼
(ウィィィィン!!)
遠くでサイレンの音が鳴り響いている。
「はぁはぁっ───!」
あれから2~30分程ヒフミの先導で走った。
この生徒は手馴れている。
『あれは無自覚なアウトローだ。』
言峰の言にも頷かざるを得ない。
この入り組んでいるブラックマーケットを縦横無尽に駆け回り、追ってを撒きやすい道を選んでいる。
適度な距離を置いて逃走した。
その様子に対策委員会の皆も感心している。
「....ここまで来れば、大丈夫でしょう。
それに今にも先生が倒れそうですし...。」
「いや....俺は大丈夫だ。」
生徒の手前、格好をつけたいものの、心臓が今にも破裂しそうだ。
対し、ヒフミは息を荒立てているものの、バテてはいなかった。
「ふむ....。
ここをかなり危険な場所だって認識してるんだね。」
シロコがまるで言峰みたいな前置きでヒフミに質問した。
「えっ?
と、当然です。
連邦生徒会の手が及ばない場所のひとつですから。」
ヒフミは少し語った。
「ブラックマーケットだけでも、学園数個分の規模に匹敵しますし、それは無視など決してできません。
それに、様々な「企業」が、この場所で違法な事柄を巡って利権争いをしていると聞きました。
それだけじゃありません。
ここ専用の金融機関や治安機関があるほどですから。」
「それって、銀行や警察があるって事....!?
も、もちろん認可されてない違法団体だよね!?」
セリカが驚いて聞き返した。
否、驚いているのはセリカだけではない。
「スケールがケタ違いじゃないですか....」
ノノミですら苦笑いしている。
「中でも治安機関はとにかく避けないと.......
騒ぎを起こしたらまずは身を潜めるべきです。」
そう、ヒフミは断言した。
「ふ~ん。
ヒフミちゃん、随分と
あのさ、ヒフミちゃん、助けてあげたお礼に、私たちの探し物が手に入るまで一緒に行動してくれないかな?」
ここまで黙って聞いていたホシノが提案した。
──『....その件だが、彼女達次第では手を貸せるかもしれん。』
言峰が言ってたのはこの事か。
自分の護衛対象であるヒフミではなく、ホシノ達の出方を窺っていたらしい。
「えぇっ!!?」
「わあ☆いいアイデアですね!」
真っ先にホシノの案に賛成したのはノノミだ。
他の皆も互いに頷いていた、が、シロコだけ、何かおかしなことを言った。
「......なるほど、誘拐だね。」
「へっ?」
「はいっ!!?」
俺とヒフミはどうじに素っ頓狂な声を上げる。
「誘拐じゃなくて!案内をお願いしたいだけでしょ?
もちろんヒフミさんが良ければ、だけど。」
セリカが思わずツッコミを入れた。
「..........。」
提案したホシノはその口を閉ざしたまま、何かを見極めるようにヒフミを見続ける。
「......ホシノ?」
その目が疑いの眼差しであることに誰も気づいていないようだった。
「それは違う。黒見セリカ。」
セリカの後ろから気配を消して近寄って肩に手を置いたのは言峰だ。
相変わらず
やられた当人は全身の毛と耳を立たせビクッと体を震わせて飛び上がった。
「ヒッ!?な、何神父さん!!?
止めなさいよ!!心臓止まるかと思ったじゃない!」
「いや済まない。」
とニタニタと気持ち悪い笑みを浮かべ、語り始める。
「君の間違いを正そうと思ってな。
まず、私達。
正確に言うのなら、ヒフミ嬢と私に断る権利は無いのだとな。」
「へっ?」
「.....どういう事?」
シロコも怪訝な顔をして言峰を見た。
「何、簡単な話だ。
単純に私達の存在と登場の仕方が都合が良すぎる。ということだ。
もっと直接的言うのなら、小鳥遊ホシノは私達二人を疑っているのではないかね?
探し物があり、不慣れな土地で、急に良いとこの学園の人間が自らの目の前に出てくる。
当人達には探し物があるという。が、それは本当なのだろうか、隣の学園から送られてきた、自分たちを監視していたスパイが接触してきたのではないか。とな。
実は自分達を襲っている傭兵を雇っている黒幕なのでは?
とな。
実際、私とヒフミ嬢は数度訪れたことがあるため、此処には詳しい。
しかし、その割には今回スケバンに見つかり、逃げ回っていた。
かと思えば、治安機関からの追跡は完全に振り切っている。
ハッキリ言って矛盾している。」
その言を聞いたヒフミを含めた皆がホシノを見る。
彼女は諦めたように認めた。
「へぇ~、やっぱり食えない人だね。神父さん。」
その眼差しには嫌悪が見て取れる。
言峰はそれに気づいてか、知らずか、続ける。
「ブラックマーケットなどという場所は、トリニティでも侵入禁止区域に指定されている。
実際、隣の学校の生徒がそんな場所に向かっていると知ったら、こちらの生徒会もアビドス生徒を危険視せざるを得ないだろう。」
とそこまで言っておきながらコイツは一笑に付した。
「まぁ、これも1つの物の見方、ということだ。
どうやら、先程の話の流れからすると、そこまで警戒心も無くなったのか、はたまた本当だろうと嘘だろうと手元に置いた方がリスク管理がしやすいからなのかまではわからんがな。
そういえばヒフミ嬢を助ける時も、君は最後まで動こうと───」
こいつはほんとに余計な事ばかり。
「そこまでだ、言峰。お前の下らない推測や推理なんてどうでもいい。
けどな──俺の生徒に余計な猜疑心を刷り込むな。
シロコ達だって俺が来た時は疑ってたし、信用されてなかった。」
言峰はフッと鼻で笑って口を閉ざした。
「そうか、余計な助言だったな。
単純にここに居る面子が他人を信用した事に疑問を投げただけだ。
君たちの行動まで、口出しするつもりは無い。好きにするといい。」
と、この場に最悪な空気だけ残しやがった。
「あ、あはは.....本当にごめんなさい....。
お邪魔でしたら私は此処で──」
と、言峰の言にあてられたのか、ヒフミが言い出した。
それをホシノが止める。
「んや、少しも疑ってないって言ったらそりゃ嘘になるけどさー。
さっき聞いてたペロロ様、だっけ?
おじさんには最近の子の流行りにはついていけないからよく分からないけど、その熱量だけは本物だってわかるよ。
本当にただ案内をお願いしたかっただけだし強制もしないよ。
ヒフミちゃんが帰るって言うなら私達はそれなりに探すよ。
で?どうする?」
ヒフミは少し考えて、ホシノの提案を承諾した。
「.....私なんかでお役に立てるかわかりませんが....
アビドスの皆さんには助けていただきましたし、喜んで引き受けます。」
ホシノはホッと一息ついた。
「よーし!それじゃ、ちょっとだけ同行頼むねー。」
どうなるかと思ったが雨降って地固まった.....のだろうか。
「失敗しただと....?お前、本気で言っているのか!?」
机を叩く、機械の人間が1人、豪華な部屋に立っていた。
その手には固定電話の受話器が握られている。
「.....よくも、それで私に電話をしてきたものだな?
確かにこれまでの1週間、お前達は私の依頼通りにアビドス対策委員会の邪魔をしてくれた。
それに対し、報酬も正しく振り込んだ。
が!
今回ばかりは違う。
お前達は依頼を失敗した、と連絡している事が分かって言っているのか?」
そう、苛立ちながら言えば相手は逆ギレし、反論してきた。
『それはこちらのセリフね。
渡された情報の中にシャーレの衛宮先生と、あの災厄の狐と呼ばれた狐坂ワカモがいる
だなんて、一切なかったわよ!!』
その言葉を聞いて頭が白紙になった。
「.....シャーレ...災厄の狐....だと?」
『連邦生徒会に内通者がいるから監視の目は抜かりない、と言っておきながらよ?
ふざけているのかしら?それとも私達便利屋68を舐めているの?』
(ちっ、小娘風情が偉そうな口を。)
「.....格安で回してやった高射砲搭載戦車はどうなった?
クルセイダーもだ。」
そう聞くも電話相手は震えながら言った。
まるで恐怖するかのように。
『そんなもので太刀打ちできるような人員じゃない、って言ってるのがわからないのかしら.....。
貴方はあれを見てないから分からないのよ。』
(あぁ、苛立たしい。)
「アレ、とはなんだ?
情報に不備があったことは認める。
しかし、シャーレは最近発足したばかりの元連邦生徒会長の置き土産だ。
情報が無いのも仕方ないだろう。」
この男はカイザーPMC理事長である。
その大人がどうして陸八魔アルに媚びへつらうように下から目線で会話しているのか。
それは、使える人間がほかに居ないからだ。
元々、アビドス周辺に陣取っていたヘルメット団を利用し、アビドス高校への妨害をしようと画策していた。
そうして、情報を元に部下を連れて居るとされている場所へ向かったが、そこはもぬけの殻。
部下にアビドス周辺を探し回らせたかったが、そうもいかない。
小鳥遊ホシノという生徒はパトロールと称し巡回している。
そして荒っぽい部下と接触すればどうなるか分からない。
となれば諦めて他を当たろう、とは更にならない。
アビドスには人が居ない。
アビドス高校から色々なものを巻き上げた結果だった。
部下を使って嫌がらせしようにもそれは敗北を意味する。
明確な侵略行為、妨害行為として訴えられるだろう。
故に、便利屋68を頼らざるを得なくなった。
『貴方、それでも理事長なの?
情報は命よ?』
ついにキレた。
「そんな事貴様に言われずとも分かっている!!なんだ?依頼主に対して文句を言う便利屋など聞いたことが無い!!」
『......ッ!
こうなって当たり前よ!!
何せ災害級が7人もいるのよ?
風紀委員長空崎ヒナが7人....いえ、言いすぎたわ。
4人敵にいると思いなさいよ!』
は?
コイツは何を言っているんだ。と。
「馬鹿なことを言うな。なんだ?災厄の狐はともかく、シャーレの先生は地区を1つ丸焼きにでもしたというのか?」
笑って言ってやった。
いくら大人の力といえどそれは権力による力であって腕、暴力によるものでは無い。
その筈だった。
「まさか、噂通りに魔法を使ったとでも?
ハッ!馬鹿馬鹿しい。」
『そうね、それが本当に噂なら良かったわね。』
と、端末に動画が送られてきた。
それは焔色のスーツの男が弓を片手に何かを射た様子だった。
その直後、猛烈な爆風に巻き込まれたのか端末が転がり、再度映し出されたのは街が燃える光景だった。
「馬、馬鹿な......」
そして。
「ほうほう.....やはり、投影魔術ですね。」
もう1人ここには大人が居た。
「どうやら投影した物体の魔力を暴走させ爆発を生み出す技のようです。
そして、これは全力で無いでしょう。
セーブした30%の力、と見るべきかと。」
黒いスーツに身を包んだ男はそう言った。
『どう?これでわかって貰えたかしら?』
「..........認めよう。
なら報酬も増やそう、前回の3倍だ。
目標は小鳥遊ホシノを除くアビドス対策委員会とシャーレの先生。
そして災厄の狐の排除だ。」
その言葉に、陸八魔アルは頷かなかった。
『.....増額報酬は要らないわ。
その代わり、衛宮先生は私達の好きにするって事でどうかしら。』
この女、どうもこの化け物じみた男を仲間として引き入れようとしている。
「流石、便利屋68社長。器が違いますね。」
と、黒服の男が言った。
「.....貴様、誰と比べている。」
「もちろん、目の前にいる方ですが?
普通ならここで先生の懐柔案を提示するところですが?
1つ、忠告を。
このままでは貴方は確実に敗北しますよ?」
その言葉に理事長は受話器を本体に叩きつけて切った。
「 ......いいだろう。シャーレの先生と言えど...出来ないことがあるはずだ。」
どれだけ力が強かろうが、逆らえないものがある。
それが立場で契約であり権力だ。
「そういえば、貴方の計画の前段階を壊したのもシャーレの先生でしたね?」
「貴様、知っていて黙っていたのか?」
黒服の男は、「シャーレの先生がカタカタヘルメット団をアビドスから遠ざけた」と言う情報を口にした。
「これも一興でしょうね。どうぞご自由に。
復讐するも良し、陸八魔アルのように懐柔しようとするも良し。
それは貴方の判断です。」
復讐。
いや、これは鉄槌だ。
「私の邪魔をする人間がいてはいけない、それが大人であれば尚更だ。」
カイザーPMC理事長は笑って言った。
士郎が保護したカタカタヘルメット団のリーダー格の生徒を
藤河という100%モブからちょいネームド、くらいに格上して話を進めやすくしようと思います。
いつまでもとあるヘルメットを被った生徒、とかでは書きにくいので。
苗字は藤(村大)河から取っただけで特に名前は決めてませんし、提案が無ければとくに付けないつもりです。
デザインとか絵にするつもりも全くないですが、基本的に弟子ゼロ号を想像していただければな?と。
装備はトンプソン・コンテンダーにします。
対策委員会編第2章終盤で士郎には
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無限の剣製を使って欲しい
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カタルシスにはまだ早い(固有結界未使用)