衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】   作:神宮寺志狼

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今回はInterlude連続から本編に入ります。

読みにくくてすみません


#12 覆面水着団参上/衛宮士郎強奪作戦

interlude 12-1 「銀行を襲う」

 

「待──。」

 

かなり遠いここからでも酷い鈍い音が聞こえるほどに衛宮士郎は危ない気絶のさせられ方をしていた。

 

頭から血を垂れ流し、兵士に担がれて銀行内部に運ばれていった。

 

「アイツらっ!!」

 

「待ってセリカちゃん!!!今出てっちゃダメ!」

 

 

銃を持って突撃しようとするセリカをホシノが止めた。

 

「なんでよ!!今止めないと士郎がどうなるか──」

 

「....私もセリカに同意。」

 

セリカの横にシロコが並んで抗議する

 

 

「あー、もう....。

 

アヤネちゃん。あの銀行の内部調べられる?」

 

 

『少々お待ち下さい.....

 

ダメです。全てのデータをオフライン管理しているようで、サーバーへのアクセスポートどころか、案内図や見取り図すら出てきません。』

 

そう、アヤネが報告する。

 

 

「.....ヒフミちゃん。どう思う?」

 

 

 

「....おそらく、皆さんがカイザーローンに支払っていた借金や利息はあの闇銀行経由でいつも資金洗浄....いえ。その逆の事をされていたのでしょう。」

 

 

「逆の事...ですか?」

 

ノノミの質問にヒフミが答える。

 

「要は先程話した通りに、犯罪に利用する為のお金に変えられていたのでは?と.....

 

この場の全員が同じ光景を見てますから見間違いではないでしょう。

もう既にカイザーローンはあの闇銀行と癒着にあるのは明白です。」

 

「私たちが支払っていた現金が、ブラックマーケットの闇銀行に流れてたってことは....。」

 

「....じゃあ何?私達、ブラックマーケットに犯罪資金を提供して、

犯罪の片棒を知らないうちに担がされてたわけ?」

 

 

シロコとセリカは怒りに燃えている。

 

 

「....もしかしてカイザーローンに...私達アビドスは利用されていたってことですか?」

 

 

 

 

 

 

「....証拠を抑えよう。

 

アヤネちゃん。ドローンの映像残しておいて。

 

あいつは先生に怪我を負わせた上に知らないって嘘ついた。

 

なんなら攫ったってことに変わりないんだ。

 

これは間違いなくカイザーローンを犯罪で訴えられる。

もしかしたら腰の重い連邦生徒会にその動画を送りつければ動いてくれるかもしれない。

 

先生を都合よく利用してるみたいでホントは嫌だけどさ。

 

あと、銀行の何かしらの書類も手に入れたい。」

 

 

ホシノが提案した。

 

 

 

「でしたら、集金記録と銀行内のサーバー内の電子データはどうで─────。

 

そうでした、どちらも銀行の中ですし、無理ですよね。

 

あ、あはは....。

ごめんなさい、忘れて────」

 

 

「いやー。ナイスアイデアだよー。ヒフミちゃん。

シロコちゃんあの手で行こう。」

 

 

(ガシャッ)

 

音と共にホシノがショットガンに弾込めする。

 

 

「ん、そうだね、ホシノ先輩。ここはあれしかない。」

 

シロコも戦闘体制を整え、対策委員会の他の生徒に何かを配り始める。

 

 

「え、ええと....何かいい案があるんですか、?」

 

 

その手渡されたブツを見て皆が納得した。

 

「あ....たしかにその方法なら!」

 

「ま....士郎も捕まってるし、昨日便利屋も狙ってたし、それなら──」

 

 

 

 

1人だけ混乱するヒフミ。

 

「.....あ、あのう。全然話が見えないんですけど、

 

「あの方法」って一体...?

 

あ!衛宮先生を誘拐された事を言い訳に突入するとか───

ダメです、裏で誰が糸を引いてるか分からない状態でカイザーローンとことを構えたりしたら────。」

 

 

シロコは首を横に振った。

 

「.....私たちに残された方法は1つしかない。」

 

そして、それを被る。

 

 

 

 

「銀行を襲う。」

 

 

 

シロコが悪い笑みを浮かべて言った。

 

「はいっ!?」

 

 

「シロコちゃん流石だね~。

ここはブラックマーケットなんだから先生さらって連邦生徒会に身代金要求したり、またまたとんでもないオークションに先生を売り出したりする生徒が数人居てもおかしくないよねー。

 

私達は衛宮先生を強奪するついでに銀行強盗のフリをしてデータと書類を掻っ攫えばいいんだよー。

 

そして、覆面を被ってれば私達がアビドスの生徒とは分からない。」

 

「1」と表記された桃色の覆面を被ったホシノが概要を説明した。

 

「ん、完璧な作戦。」

 

真顔でサムズアップするシロコ。

 

 

 

「え、えぇぇぇぇっ!!!?」

 

 

「わあ☆そしたら悪い銀行をメタメタにしちゃいましょう♪︎」

 

「えぇ!!殴られた士郎の百倍....ううん!

1億倍くらいとことんまでボコボコにしてやろうじゃない!」

 

 

「あ....うあ....あわわ.....。

あ、アヤネさん!止めてくれますよね!?」

 

 

『..........』

 

 

「アヤネ....さん?」

 

 

通信先のアヤネは眉間に皺を寄せ、こめかみに血管を浮き出させていた。

 

 

(ほっ....大丈夫でした。)

 

 

そう、ヒフミが安心したのもつかの間。

 

 

『アビドス対策委員会オペレーターとして要請します。

衛宮先生の強奪および悪徳闇銀行に対するこれまでの仕返しをしましょう。』

 

 

 

その言葉を聞いて、最後に

言峰を見たヒフミの表情は絶望に染まった。

 

 

「.......仕方あるまい。これも神のお告げだろう。」

 

セリカの色合いに似た、真紅の覆面を付けており、神父としての服を脱ぎ捨て、鍛えられた肉体に黒シャツ1枚という格好になっていた。

 

 

 

「......。」

 

 

 

 

「それ、元々シロウに使ってもらう予定だった覆面.....。

 

あなたに似合うのは真っ黒か、逆に悪趣味な真っ白の方がいい。

 

次までに作っておく。」

 

 

「フ....

これは手厳しいな。砂狼シロコ。」

 

 

 

 

(えぇ.....衛宮先生にまで銀行強盗させようとしてたんですか .....?)

 

ヒフミは目の前が真っ暗になった。

 

 

 

「では、ヒフミちゃんはこちらを!」

 

 

そうしてヒフミはノノミに先程まで持っていたたい焼きの紙袋の目の位置だけ切り取ったものを頭から被せられた。

 

[ステータスが更新されました。]

 

ホシノ、シロコ、ノノミ、セリカ、アヤネ

「対策委員会」

「覆面を被った女子高生」

 

ヒフミ

「帰宅部」

「紙袋を被った女子高生」

 

言峰綺礼

「トリニティ大聖堂 神父」

「覆面を被った中年の男」

 

 

 

 

「わ、私もご一緒するんですか!?闇銀行の襲撃に!?」

 

「さっき約束したじゃーん?ヒフミちゃん、今日は私達と一緒に行動するって。」

 

 

言質を取られた、とヒフミはホシノの目の前で膝を着いた。

 

「う、うああ.....わ、私、もう生徒会の人達に合わせる顔がありません....。」

 

 

「それについてはもう遅いぞ?ヒフミ嬢。

ここに来ている時点で君には合わせる顔など、とうにない。」

 

 

言峰の投げた言葉が、ヒフミにクリティカルヒットする。

 

「強いて言うなら認識阻害の魔術程度で我慢したまえ。」

 

と神父らしからぬ言葉を口にした。

 

 

「うへ....神父さんが魔術なんて使っていいの?」

 

「その質問を受けるのは、さて、何度目だったか。

ともかく急ぐぞ。」

 

 

 

 

 

 

「では覆面水着団!行きましょう☆」

 

ノノミの掛け声で全員、銀行へと走っていった。

 

 

interlude 12-1 「銀行を襲う」 out

 

 

 

 

 

 

 

interlude 12-2 覆面強盗団

 

D.Uの公衆電話BOX。

 

「依頼に失敗したわ。」

 

そこで陸八魔アルは部下から渡された紙を震えながら読み上げる。

 

 

『失敗しただと....?お前、本気で言っているのか!?』

 

電話先の男は怒鳴り声を上げた。

 

 

(ヒッ...!?)

 

「大丈夫....落ち着いて、社長。」

 

 

 

電話先からごちゃごちゃと言っているのに対して怒ったように振る舞う。

 

「そ、それはこちらのセリフね。

渡された情報の中にシャーレの衛宮先生と、あの災厄の狐と呼ばれた狐坂ワカモがいる。だなんて、一切なかったわよ!!」

 

やはり初耳だったのか相手側も黙った。

アルの持つカンペはカヨコが書いたものだ。

内容は任務失敗を「契約と違う」という明確な条件定義をする事により責任を半分押し付ける物だ。

 

アルは当初反対していた。

 

実際失敗したのは自分たちの実力と準備不足。

 

 

しかし、カヨコとムツキ、そして衛宮士郎を目前にトリガーを引いたハルカだからこそ、と言うべきか、あのいつもは従うハルカでさえ、「話が違います....」と言い出した為、それに対しては明確にしなければと、説得された結果、その流れに乗ることにしたのだ。

 

「連邦生徒会に内通者がいるから監視の目は抜かりない、と言っておきながらよ?

 

ふざけているのかしら?それとも私達便利屋68を舐めているの?」

 

実際、一般企業どころか裏企業でさえ学校に手を出せばどうなるか分かったものでは無い。

 

しかし、この依頼に関してはどういう訳なのか知らないが「連邦生徒会が手を出さない。」と最初から条件に含まれていた。

本当に5人の生徒に根を挙げさせるまで行かなくても、足止めして借金の返済の邪魔さえ出来れば良かった。

 

しかし、それは唐突な乱入者の2人によって全てが破壊された。

 

連邦捜査部シャーレの先生、衛宮士郎。

 

D.Uの矯正局に捕まっていたはずであり指名手配犯に近い立ち位置の「災厄の狐」狐坂ワカモである。

 

 

この2人組は本来なら有り得ない。

捕まえる側が指名手配犯を手の内に置き、利用している。

 

しかも公然に、堂々と。

 

 

カヨコはカイザーの裏の手である便利屋68へ対する、連邦生徒会の裏の手(カウンタージョーカー)だと推測したり、それにしてはあまりに手が混みすぎている。など勘ぐった。

 

しかし、衛宮士郎の態度を見て一変した。

 

 

あれは「悪行を許さない」正義の目だ。と。

 

カヨコが出した結論は「衛宮士郎は狐坂ワカモの危険性を知らない、もしくはそれ抜きで傍に置いている甘い先生」である。

 

『.....格安で回してやった高射砲搭載戦車はどうなった?

クルセイダーもだ。』

 

 

「そんなもので太刀打ちできるような人員じゃない、って言ってるのがわからないのかしら.....。

 

貴方はあれを見てないから分からないのよ。」

 

 

これは陸八魔アルの本心だった。

 

 

災害には人間為す術もない。

やれるだけの事はした。

 

しかし、敵わない。

 

 

だからこそ、カヨコ達の意見も筋が通っている、とこの話を持ち出したのだ。

 

 

 

 

『アレ、とはなんだ?

 

情報に不備があったことは認める。

しかし、シャーレは最近発足したばかりの元連邦生徒会長の置き土産だ。

 

情報が無いのも仕方ないだろう。』

 

依頼主は曖昧にして誤魔化そうとする。

それは社長としてのプライドが許さない。

 

 

 

「貴方それでも理事長なの?情報は命よ?」

 

そう放った言葉が図星だったのか痛いところを突かれたのか、相手はキレた。

 

 

『そんな事貴様に言われずとも分かっている!!

なんだ?依頼主に対して文句を言う便利屋など聞いたことが無い!!』

 

 

「......ッ!

こうなって当たり前よ!!

 

何せ災害級が7人もいるのよ?

 

風紀委員長空崎ヒナが7人....いえ、言いすぎたわ。

 

4人敵にいると思いなさいよ!」

 

過剰表現に対して、少し落とすことにより、自分たちは適切に脅威を認識していることを明確にするテクニックだ。

 

 

『馬鹿なことを言うな。なんだ?災厄の狐はともかく、シャーレの先生は地区を1つ丸焼きにでもしたというのか?

まさか、噂通りに魔法を使ったとでも?

 

ハッ!馬鹿馬鹿しい。』

 

 

「そうね、それが本当に噂なら良かったわね。」

 

その言葉を待っていた。

 

と言わんばかりに、アルの言葉と同時にカヨコが端末で依頼者に動画を送った。

 

『馬、馬鹿な......』

 

 

それは日雇いの生徒から回収したとある動画である。

 

珍しい「先生」を動画を撮って回していたらしい。

 

 

 

「どう?これでわかって貰えたかしら?」

 

 

『..........認めよう。

 

なら報酬も増やそう、前回の3倍だ。

 

目標は小鳥遊ホシノを除くアビドス対策委員会とシャーレの先生。

そして災厄の狐の排除だ。』

 

 

「退くなら今だよ、アルちゃん。」

 

 

理事長の提案、隣にいるムツキ。

その言葉に、陸八魔アルは頷かなかった。

 

 

「.....増額報酬は要らないわ。

 

その代わり、衛宮先生は私達の好きにするって事でどうかしら。」

 

 

 

 

 

しかし、その問いに答えが来ることはなく。

 

 

(ガシャンッッッ!!!!)

 

相手ならの返答がないまま 通話は打ち切られた。

 

 

 

「えっ!?」

 

 

「どうだった?社長。」

 

カヨコに問い詰められるアル。

 

「た、多分問題なく受けれた....と思うわ。」

 

(え!?これなんで切られたの?!最後の提案気に食わなかったのかしら!?

悪くない提案だったけど......

 

まぁ、誰かと話していたみたいだし.....無言ってことはそのまま続けろって意味よね....?)

 

 

アルは切り替えた。

 

 

「さて、当面の問題はこれからどうするかよ。」

 

「え?社長、一体どういうこと........?まさかまた戦うの?」

 

 

カヨコが冷や汗を垂らしながら質問する。

 

 

「し、仕方ないでしょう!?ここで依頼を断ったら私たちの失ったものは一体どこに行くのよ!!時間は巻き戻せないのよ?」

 

 

陸八魔アル、いや便利屋68の全財産ははっきり言えば吹き飛んだ。

 

災厄の狐、狐坂ワカモの手によってオフィスとして借りていた部屋が建物ごとまるまる無くなったのだ。

 

 

「依頼を成功させて、報酬を貰わないと.....私達は───」

 

 

「でもさ、あの狐と先生がいたらとてもじゃないけど勝てないよ?

日雇いの傭兵すら怯えて敵側についちゃったし。

しかも私たち無一文じゃん。

 

これでどう戦うのさ?」

 

「大丈夫よ。手はあるわ。」

 

「わ、私がバイトでもしてきましょうか?

 

そ、その。シャーレの「先生」をしとめられなかったのは....わ、私の責任ですし....。

 

つ、次はちゃんと殺しますから....!」

 

 

ハルカの提案にアルは笑って言った。

 

「そんな事はしなくていいわ、ハルカ。

 

 

皆、融資を受けに行くわよ。」

 

と。

 

 

 

 

「お待たせしました....陸八魔アル様。」

 

そうして便利屋一行はカイザーローンのコネを使ってブラックマーケットの闇銀行を訪れた。

 

「何が「お待たせしました」よ!本当に待ったわよ!6時間も!ここで!

 

融資の審査に、なんで半日もかかるの!?別にうちより先に人も......いえ、たしかに何かさっき騒動があったみたいだけど。

そんなに時間かかる事でもなかったんでしょ?

 

私の連れは待ちくたびれて、そこのソファーで寝ちゃってるし!」

 

 

 

「私共の内々の事情でお待たせした事、大変申し訳なく思っております。」

 

カイザー理事からの連絡で「便利屋68にはやって貰わなければいけない仕事がある、粗相のないように」と言われているため銀行員はあまり強い態度を取れないでいた。

 

「ほら、起きた起きた。」とアルが社員の目の前で手を叩けば全員目を覚ましアルの元へやってくる。

 

「....さて。

ではご確認を───」

 

 

銀行員はクタクタであり正直面倒事はゴメンだ、と思っていた。

 

午前中はアビドスくんだりまで赴いて集金活動。

その上、シャーレの若造に見つかってしまった。

 

マーケットガードに取り押さえさせたが、正直処分に困ってもいる。

消したら消したで火の粉は降りかかる。

 

かといってそのまま釈放しようには相手は連邦捜査部などという話は通じない相手であり、彼は自分の事を「アビドス高校の顧問」だと言った。

 

となれば、カイザーローンと闇銀行の繋がりが世間に知らしめられるだけでなく、アビドス高校からの問合せもあるだろう。

 

間違いなく自分はクビか、最悪()()される。

 

 

そんな状態で接待していたからなのか、陸八魔アルの機嫌が段々と悪くなっていく。

 

「えっ、はぁ?今なんて?」

 

「ですから、これでは融資は難しいと。

 

まずは、より堅実な職に就いてみてはいかがでしょう?

日雇いや期間工など手っ取り早く始められるものも───」

 

 

 

 

 

「なんでここに来てあなたに──」

 

 

 

陸八魔アルは考えていた。

 

 

ここで融資を受けられないのであれば、どうしようもなくなる。と。

 

オフィスは吹き飛んだ。

 

かなり高い賃貸料金だったにもかかわらず。

修理費も自分達持ちだろう、と。

 

 

(ムカつく.....もういっそ大暴れして、銀行のお金を持ち出しちゃおうかしら?

 

......いえ、落ち着きなさい。

今ここからお金を持ち出せたとして、ブラックマーケットから抜け出すのは至難の業。

マーケットガードもあちこちにいるし....

 

でも案外大したことないかもしれない。

 

私たち4人なら....そんな連中───。

 

 

 

それはそれで良くないわ!

騒ぎを起こすということはブラックマーケットに楯突いて敵になるということ。

そして、依頼者の顔に泥を塗るかもしれない.....

 

はぁ...)

 

 

「ホント....情けないわね。災厄の狐だったら迷わず全て壊すんでしょうね~.....。」

 

災厄には利害など関係なく、敵味方関わらず、目前にあるものは全て壊してゆく。

 

「.......陸八魔アル様。

 

やはり承認が降りませんでした。

 

お力になれず、申し訳ありません。」

 

 

それもそうだ、とアルは納得してしまった。

 

こちらは文無し。

 

銀行の口座は風紀委員会によって凍結され、企業ごっこと罵られ、挙句の果てには依頼を失敗して後がない。

 

振り返れば振り返るほど、理想との対比に悩まされる。

 

 

(私が望んでいるのはこんな、こんなものじゃない....

 

何事にも恐れず縛られない、ハードボイルドなアウトロー.......)

 

 

「では、またのご利用を─────」

 

 

 

(そう、なりたかったのに────)

 

 

 

 

アルが諦めて受付を去ろうとした、その時だった。

 

 

 

(パッ....)

 

フロア全体の照明が落ちた。

 

「な、何事よ!?」

 

 

 

耳を澄ますと銀行員の会話が聞こえてきた。

 

「待合室より、......ハッキングされました!?」

 

「テレビの回線から侵入されている!!

普通に考えてありえない!!

 

待合室には拘束したあの男とそいつが持ってた電源のつかない端末しか放り込んでないぞ!?」

 

 

「カヨコ、ムツキ!ハルカ!居るわよね!?」

銀行員と一緒になってパニクっているアルが叫んだ。

 

「.....叫ばなくてもいるよ。」

 

とカヨコが一声。

 

「ひっ!ビックリした!」

 

「何何これ~。」

 

 

 

 

そして、

 

 

(ダダダダダダダッ!ダダダダダダダッ!!)

 

「銃声っ!?」

 

「アル様!下がってください!!」

 

 

 

暗闇の中、マーケットガードの叫び声が聞こえてくる。

 

 

「うわっ!!ァァァアアッ!!」

 

「うわあああっ!!」

 

「何が起きて!!」

 

 

 

 

 

「早く予備電力に切り替えろ!!」

 

「ダメです!!完全に乗っ取られました!!」

 

 

 

「乗っ取られた?セキュリティ厳重なハズのブラックマーケットの銀行員のサーバーと電力制御まで....?」

 

 

カヨコが疑問を呈する。

 

そんな事より今は何が起こっているのか把握したい、とアルが端末のライトで周囲を照らした。

 

そこには、覆面を被った女子高生とボスであろう、中年の男性が立っていた。

 

 

 

 

「社長!ライト消して!」

 

カヨコが端末を奪うように取り上げライトを消した。

 

 

その瞬間、部屋の電気がついた。

 

 

 

「全員その場に伏せて!持っている武器は捨てて!」

 

 

 

陸八魔アルは、銀行強盗の現場を、目撃した。

 

 

 

 

 

interlude 12-2 覆面強盗団 out

 

 

 

 

「 ....生、先生....先生ッ!!」

 

 

「ッ!!」

 

起き上がる。

 

 

俺が居るのはアロナの教室だ。

 

頭が痛い。

 

 

「.....アロナ、何が起きたんだ?」

 

 

彼女は説明する。

 

「先生はマーケットガードに盾で思い切り頭を殴られて気絶していたんです。

 

ごめんなさい、バリアを展開したのですが、すこし遅かったみたいで....

先生にまた怪我をさせてしまいました.....。」

 

 

アロナは涙目になっている。

袖口には涙を吹いたシミが出来ていた。

頭の上にあるヘイローも情緒不安定なのか波を打っていた。

 

 

「.....悪い、心配かけた。

でもアロナがバリア張ってくれてなかったら死んでたんじゃないか?」

 

 

痛みだけは本物だった、ダメージをアロナが相殺してくれただけだ。

今も脳みそが飛び出ているのでは、と思ってしまう。

 

 

「.....はい。アレは本当に危険でした。

 

でも、先生が生徒さんの呼び止めに反応せずそのまま突っ走るからいけないんです!!

 

もう少し反省してください!」

 

 

 

泣きながら怒られたんじゃ何も言えない。

 

 

「.....すまん...。」

 

「もういいです!

 

コホンッ、先生状況を説明します。」

 

 

 

アロナは再び顔を拭うと状況を整理してくれた。

 

 

「先生は今銀行員内の待合室に縄で縛られて拘束されています。

シッテムの箱は先生にしか起動できませんから、壊れたものとして没収されずに済みました。

 

運良く先生が取られたものはありません。

通常端末もです。

 

室内に見張りは居ません。

相手は完全に先生を力のない一般人として油断してます。」

 

 

そうか。

ならホシノ達と連絡が取れる。

 

ただ、こう、

 

これ以上生徒に助けられる先生というのは、如何なものか。

 

 

 

「分かった。縄なら投影した剣で切る。

その後脱出しよう。

 

部屋の扉は?」

 

 

「電子ロック式みたいです。

解除するには銀行内のサーバーにハッキングして番号を抜き取った方が早いと思います。

 

私が直接こじ開けてもいいのですが、失敗したら回路が焼き付いて出るに出れなくなってしまいます.....」

 

 

俺の怪我のせいか、アロナは自信をなくしていた。

 

かといって強引に勇気づけても仕方ない。

 

 

「ならその手でいこう。

階層や部屋の間取り、脱出経路は俺が何とかする。」

 

構造を読み取るのは俺の無駄な能力のひとつだ。

 

立ち上がる。

 

それをアロナに呼び止められた。

 

「先生、この銀行はアビドス高校を襲っている便利屋68と何か繋がりがあるんだと思います。

 

ですから.....その、少し時間をください。」

 

「....今じゃないと不味いのか?」

 

 

アロナは首を縦に振った。

 

 

「おそらく先生が拘束された事でホシノさん達は動かざるを得ないと思います。

そのついでに銀行のデータなり、集金記録を回収してもおかしくありません。

 

シロコさんの趣味が銀行強盗の計画を立てる事なのは衛宮先生も知ってますよね?」

 

 

あぁ、たしかにシロコは今朝の会議でもそんな案を出していた。

 

 

「まさかお金を盗むかもしれないって?」

 

「.....。」

 

わからない、そうアロナは言う。

 

「でも、そうなる前に私が、いえ、先生が回収してしまえば、生徒達が罪を犯すことはなくなります。

 

なので、探させてください。」

 

 

「───────。」

 

 

俺が捕まったせいで、ホシノ達が犯罪を?

 

かといって、アロナにだけそんな重みを背負わせたくはない。

 

だから───

 

 

「ダメだ。」

 

 

俺は否定した。

 

 

 

俯くアロナ。

 

間接的にだろうと、初めてアロナが自分の意思でやりたい、って言ってくれたことを否定した。

 

それでも、断ったのは、彼女自身の認識を正すため。

 

「アロナだって俺の生徒じゃないか。

お前にだけ、そんなことをさせる訳には行かない。」

 

暗かったその表情に光が戻る。

 

「せ、先生!?」

 

「アロナが自らやりたいって言うなら、俺が責任をとる。

俺に出来ることなら、俺も手伝う。

それでいいよな?」

 

「.....っ、はいっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

意識が現実に戻った。

 

 

投影、開始。(トレース オン)

 

ナイフ程度の短刀を手元に作り出し、腕の縄を切る。

 

次に足の縄を切り、体が自由になった。

 

 

 

「鍵を解除する魔法でも使えればいいんだけどな....。」

 

愚痴っていても仕方がない。

望んだところでそんな力は手に入らないし、遠坂みたいに優秀な訳じゃないから俺だと手に余る。

 

「よし、アロナ、端末をテレビに繋げればよかったんだよな?」

 

 

『はい。数分かかります。

後、ごめんなさい、その間先生は無防備になってしまいます。

おそらく警備の人も上がってくるでしょう。』

 

不安そうなアロナを勇気づける。

 

「大丈夫だ。俺はアロナを信じてる。

だから俺のことも信じて欲しい。」

 

なんとも説得力のない。

 

こうして捕まっている自分を信じてくれとは。

 

 

 

それでも端末の中の彼女は最大限微笑んで

 

『はいっ!わかりました!衛宮先生!』

 

そう言って、俺にこの場を預けてくれた。

 

 

 

階段を駆け上がってくる音が聞こえる。

 

投影 開始(トレース オン)

 

干将・莫耶をこの手に作り上げる。

剣が脆くなっているとはいえ脅し程度には使えるはずだ。

 

 

 

 

「ゴホッ....ゴ....」

 

(カーンッ、コロコロ、カンッ)

 

口から吐き出たものが甲高い音を立てて次々と床に落ちる。

 

 

 

 

────知らない。

 

そんなものは見ていない。

俺はここで時間を稼がなければ。

 

 

『先生ッ!!?』

 

叫びと共に当たりが真っ暗になった。

 

『すみません、手元が狂ってしまいました!

でも、大丈夫なんですよね!?

 

口から沢山──が出て──』

 

 

「大丈夫だ。アロナ。」

 

 

生徒のやりたいことをサポートできずに、何が先生だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここだ!ハッキング元はここからだ!」

 

 

(バコンッッ!!)

 

停電したが為にガードが無理やり扉をこじ開けて入ってきた。

 

機械の身体、その手にはアサルトライフル。

 

暗闇の中。相手はまだこちらの位置を把握するどころか、辺りが見えていない。

 

「なんだ?アレは」

ガードは起動しているシッテムの箱の光に吸い付かれるように移動している。

 

先手を取れる。

そう思い、戦闘態勢に入る。

 

気配で察知されたのか、機械のその目が、俺を捉えた。

「貴様─────」

 

その銃口が俺に向けられた。

 

「フッ──!」

 

双剣を振り下ろす。

 

「うぐぁっ!!」

 

予想とは裏腹に、干将・莫耶はその機械の身体を容易く傷つけた。

 

何故か、銃弾数発で破壊される剣が、今ケーキを切り分けるように分厚い鉄の装甲を切り裂いた。

 

 

「どうしたっ!!?」

 

後ろに続く者が入ってきては俺と視線が合う。

 

 

「貴様ッ!!どうやって拘束を!!」

 

 

「ッ!!」

 

左に持っていた双剣の片方を投げる。

それは円の軌道を描いて、彼が持っていた大型ライフルの銃身を輪切りにした。

 

 

足に力を入れ───

 

「───あぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!」

 

 

そのまま突進して機械歩兵を廊下の壁に叩きつける。

 

 

「ぐっ!!このっ.......!!」

 

敵の腕が俺に向かって伸ばされる前に。

もう残った剣を彼の肩口に突き刺し、壁に固定する。

 

 

「待て貴様ッ!!」

 

 

動けなくなった彼を見て額に流れる汗を拭った。

 

「ふぅ、さっき殴られて気絶させられたからな。正当防衛だ。」

 

 

正直苦しい言い訳である。

 

 

『先生!アビドス高校に関連したデータが見つかりました!!

回収します!』

 

 

「分かった!ここから出よう!アロナ!」

 

 

俺はシッテムの箱を回収し、1階を目指した。

 

その間も血反吐を吐きながら剣を投影してはアロナのシールド越しから敵を切り付ける。

 

 

 

『先生!もう少しです!!』

 

 

「あぁ、ここが1階なはず──────なっ!?」

 

 

 

そこで見たものは、覆面を被った、強盗団だった。

 

対策委員会編第2章終盤で士郎には

  • 無限の剣製を使って欲しい
  • カタルシスにはまだ早い(固有結界未使用)
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