衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】   作:神宮寺志狼

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#13 自己矯正証明(マインドギアススクロール)/And thus I works,Gunsmith.

 

「全員その場に伏せて!持っている武器は捨てて!」

 

「言う事聞かないと、痛い目にあいますよ☆」

 

 

 

「あ、あはは.....みなさん、ケガしちゃいけないので、伏せてくださいね.....。」

 

「うへ~、ここまでは計画通りだね。

 

次のステップ進もー。

リーダーのファウストさん!指示を願う!」

 

 

「えっ!?、ファウストって私ですか!?リーダーなんですか!?私が?」

 

 

結論から言えば遅かった。

 

顔の認識が何故だが上手くできないが、話し方はシロコとノノミ、そしてヒフミだ。

 

大柄な男も後ろにたっている。

 

おそらく言峰だ。

 

 

止めなければ。

 

 

そう思い、走り出した所を首根っこを掴まれて物陰に引きずり込まれる。

 

 

「やめろっ!はな───」

 

「しっ─。」

 

 

俺を捕まえたのは、便利屋68のオフィスで初めて会った白黒の子。

 

「文句言いたいのはわかるけど、静かにして。」

 

「あれ?課長、優しいねー。わざわざ先生助けてあげるの?」

 

もう1人の白髪の少女がそう言う。

 

 

「助ける...?俺を?」

 

 

その言葉に反応して拘束していた手が離れる。

 

「.....別にそんなんじゃない。ただこの状況でどうして出ていくの、と思って。」

 

 

というか、

 

「なんでお前たちがここに───やっぱりホシノ達を襲いに来たのか!」

 

俺の言葉に目の前の少女は目を丸くした。

 

「え?アビドスの生徒がいるの?

 

まぁ、でもそっか。

そうでもなければ先生はひとりでここまで来れないか。」

 

顎に手を当てて考え始める目の前の少女。

 

そうか、この子達は認識阻害によってホシノ達を認識できてないんだ。

 

 

そんな現状認識など、聞こえてきたシロコの声に比べたら些末な事だった。

 

「さぁ、そこのあなた、このバッグに入れて、少し前に到着した集金記録。

 

それとさっき捕まえた男の人。

シャーレの先生を引き渡して。」

 

 

「は、はい!こちらです!!これでもかというくらいに詰め込みました!」

 

「いや....ええと、お金は───」

 

 

それは、シロコが銀行員を脅して、金を受け取っている光景だった。

 

 

 

 

(それはダメだ!!)

 

 

 

 

剣を投擲するのでは、間に合わない。

 

俺は懐にあったホシノから受け取った銃を取り出して、銀行員の持ったバッグを狙って発砲した。

 

 

(パァン!!)

 

「ヒッ!!」

 

狙い通り、銀行員がバッグを落とした。

 

 

 

「ダメだ。止めろっ!」

 

 

「ちょ、待って!」

 

後ろにいる子の制止を振り切って歩いていく。

 

 

 

「..........シロウ?」

 

「先生が、私達を─────」

 

「しかも先生が一緒にいたの便利屋68じゃない!?」

 

覆面を被った少女たちが黙り込んだ。

 

 

 

「そんな方法で何かを得ても、悲しいだけだ。

だから止めるんだ。」

 

 

 

「.....知ったことを言うね。「先生」。」

 

背の低い生徒が俺の前にたちはだかる。

 

おそらくホシノだ。

 

 

 

「......「先生」は私たちの敵になるんだ?」

 

 

『でも、裏切ったら────殺すから。』

 

過去そう言ったホシノが俺に対して銃口を向けてくる。

本気だ。

 

「じゃあ、────仕方ないよね。」

 

「───ッ....待て!ホシ───お前と戦うつもりなんて──。」

 

「ダメだね。「先生」は私たちを裏切ったからね。」

 

お前にここで、そんな絶望したような声のまま殺されてやるわけにはいかない。

 

────だが、死ぬ

 

 

距離は5mもない。

散弾を避けるなんて不可能だ。

攻撃を防ぐにはどうしたらいい?

 

───防げないと、蜂の巣だ。蜂蜜みたいに血を流して、俺は絶命するだろう。

 

アロナの守りがあるとはいえ、彼女も息を乱して今にも倒れそうだ。

無理もない、先程まで何十人からの銃撃を力を使って守ってくれたのだ。

 

盾だ、盾がいる。

 

ホシノの持っているような、分厚くて神秘を纏った盾だ。

 

投影では間に合わない。

それに、あの盾は剣の丘にはない。

 

なら、また別の場所から─────

 

 

 

「じゃあね。「先生」。」

 

 

引き金が引かれる。

直感する死のイメージ。

 

「──────抽出、開始(トレース オン)

 

 

出せる。

 

 

剣なんて誤魔化して、大砲みたいな銃だって作れた。

なら、できる。

 

どんな犠牲を払っても持ってこい。

 

 

心臓の音がうるさい。

黙れ、止まれ、急げ、忘れろ。

 

 

ここでホシノに俺が殺されたら。

 

 

────彼女は一生自分を許せない!!

 

(バァンッ!)

 

 

(カンカンカンッカキィィィン!!!!)

 

 

防いだ。

 

足元に放たれた銃弾を間一髪のところで防ぐ。

 

 

 

 

「えっ??!」

 

「あれは......」

 

 

「先輩の...盾よね?!でも、この前と違って()()()()()!」

 

 

 

「──────その盾.......なんで!!!」

 

冷静だったホシノの表情が一変した。

 

 

知らない。

 

防げたならそれでいい。

 

 

それに、この盾も言ってる。

 

ホシノが無事ならそれでいい、と。

 

 

 

「─────────!」

 

 

走って窓ガラスを割ってその場を離脱する。

 

 

俺を助けに来たと言うのであれば俺がその場にいなければいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、待って!!」

 

セリカが一番に走り始めた。

それに続いてシロコ、ノノミが続く。

 

 

 

「...........あれは、あの盾は────」

 

 

「ホシノさん!早く行かないと!!」

 

ヒフミに肩を叩かれるが、心ここに在らずのホシノ。

 

 

 

 

 

「───────────やっぱり、あれは、───の!」

 

走り出す。

 

「えっ!?待ってください!置いていかないで!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外は騒ぎのせいでめちゃくちゃだった。

 

マーケットガードが追ってくる。

背中を向けて走れる訳もなく、足が止まった。

 

「クソッ!!なんだってこんなに。」

 

 

出来ることなら銃が欲しい。

拳銃じゃ弱すぎる。

 

距離があって剣は投影しても意味が無い。

弓だって、構えられなければ意味が無い。

 

 

ホシノの盾があるなら、ホシノの銃も欲しい。

 

『先生!後ろに──』

 

 

振り返る。

 

 

そこには盾を振り上げた、ホシノの姿。

 

「ごめん、先生」

 

 

俺は後頭部を殴られ、今日二度目の気絶をさせられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「幾ら利用されていたとしても、人助けは止めるべきじゃないよ。」

 

夢を見る。

 

その少女は、警戒心がなくて。

 

すこし、おてんば娘で。

 

かなりの考え無しで。

 

そして、異常なまでに、他人に優しかった。

 

「ホシノちゃん───私、本当は。」

 

 

 

 

 

 

 

 

揺れで起きる。

 

 

「む、起きたか衛宮。」

 

言峰に担がれて、俺は闇銀行から離脱していることを悟った。

 

「安全圏までそのままにしていろ。

 

思った以上にお前の体はボロボロだ。」

 

 

そうして、身を委ねること10分。

 

ようやく下ろされた。

 

 

「ここまで来れば大丈夫でしょう....」

 

認識阻害が解け、その一言がヒフミの言だと気づく。

 

「ふうっ...暑っつい。もう脱いでいいわよね?」

 

 

一息休憩、という感じだろうか。

 

しかし、誰も話さない。

 

 

「........。」

 

「..............」

 

 

 

「─────」

 

言葉につまる。

みんなの視線が俺に向く。

 

セリカ、シロコ、そしてホシノに、睨まれている。

 

 

「いや~、先生芝居上手いねー。

わざわざ銃まで発砲して。

 

これなら私たちがアビドスの生徒だってバレることは無いねー。」

 

口調はいつも通りだが、その目は冷たく、やっと、そこで己の行動を振り返った。

 

お前たちが間違っていないと、否定しないと、言っておきながら。

目的は違えど、俺はシロコに銃を向けた。

 

───それを認識した途端に身体の中で、何かが耐えきれず破裂した。

 

 

「が、あ、あぎっ!!....」

 

ジョキジョキと、体から生えてくる。

 

「が、ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁッッッ」

 

──壊れた。音を立てて。

 

 

 

「っ!!先生ッ!?」

 

今、俺を睨んでいたことなど忘れたかのように、目の前の生徒達が駆け寄ってくる。

 

「えっ!?なんで腕!腕から針....違う!何これ、刃!?」

 

「それだけじゃないです、右腕中穴だらけですよ!?」

 

「ちょっ....救急車────え?」

 

 

 

集団幻覚だったかのように、身体から生えた剣と銃弾は消滅し、傷跡だけが残った。

 

遠からず、ホシノに撃たれた弾を防がずとも、俺の腕は赤い蜜を流す事に変わりはなかった。

 

 

「──────だから言っただろう。衛宮。

 

あれほど、魔術を使うなと。」

 

 

生徒を押しのけて言峰が蹲った俺の右腕にそっと何かを巻いた。

 

 

『え....魔術を使うなって.....どういう事ですか!?言峰さん!』

 

アヤネの焦る声が聞こえる。

 

やめろ、説明なんていらない────

 

 

「言葉通りの意味だ

衛宮士郎の身体はキヴォトスにとって異物。

魔術特性で言えば「キヴォトスに存在しないもの」だ。

 

魔術を使えば使うほど内側から壊れていき、衛宮士郎という存在を保てなくなる。

 

とはいえ、運のいい。

診たところ、魔術回路に損傷はなく、神経がズタズタに引き裂かれただけのようだ。

 

 

おそらく魔術回路か、それに関する魔術要素の暴走と言ったところか。

それもどうやら止まったらしい。

 

引き金と安全装置には条件があるのだろう。

 

そうでなければ今ここでお前は死んでいた。」

 

 

 

『内側から....?』

 

 

 

「今見た通りだ。

衛宮士郎は魔術を使い続ければ死ぬ。という事だ。

 

さて、この男が自らの寿命を削ってまで邪魔をした理由は一体何なのだろうな?」

 

 

『衛宮先生は、ただ、私たちが間違いを犯さないように──

 

ただ、それだけの為に?』

 

 

「......。」

 

シロコは黙り込んだ。

 

言峰の一言で怒りを向ける矛先が、無くなってしまったようだ。

 

 

 

「で、でも、便利屋68と一緒にいたわ!」

 

セリカはシロコを庇うように言った。

 

「───私の知る限り、衛宮士郎は自覚のある悪行を良しとしない。

たとえ無自覚であろうとそれを見過ごさん。

「正しさ」に関しては自身の意志を捻じ曲げることはない。

 

故に、自らの生徒である君達の行動を止めた。

 

おそらく便利屋68と共にいたのは偶然だろう。」

 

 

「......」

 

セリカも黙り込んだ。

 

 

「......余計な事は言うな!

それ以上、口を開いたら───」

 

 

言峰を睨みつける。

 

恨まれるのも、憎まれるのだって、彼女達の気が晴れるならそれでいい。

 

「やれやれ、お前に対する誤解を正してやっただけなのだがな?」

 

 

「それがどんな理由であっても、シロコ達に銃を向けた事実は変わらない。

それに、俺がそうして欲しくないから止めただけだ。

俺がひとりで突っ走って起きたことなら原因は全部俺にある。

 

何ひとつとして、シロコ達が気に病む必要はないんだ。」

 

 

「いやそれは違───」

 

 

喋りかけたシロコを置き去りにし、セリカが俺の目の前に立った。

 

 

「は!?ここまで来て「全部自分が悪い」!?

あんたどれだけ自己中なのよ!?」

 

胸ぐらを掴まれる。

 

「せ、セリカちゃん!」

 

ノノミが止めに入ってきてくれたが、彼女は止まらない。

 

 

「どれだけ抱え込めば気が済むわけ!?

 

先生の献身がちょっとおかしいなって、心の中で思ってたけど!

 

責められて違うなら違うって言いなさいよ!

間違いだって言うなら私達を叱りなさいよ!

 

会って2日目の朝もそうだった!!

何?自分が折れれば全部上手くいくとでも思ってんの!?

 

それでも私達の顧問なわけ!?」

 

 

セリカにネクタイを引っ張られ、引きずられる。

 

「痛っ!!離せセリカ!」

 

 

「さっさと帰るわよ!馬鹿!!1から10まで全部アンタのこと話してもらうんだから!!」

 

 

 

「あ、あはは....。」

 

ヒフミがセリカの行動力に堪らず苦笑いした。

それ皮切りに少し雰囲気が和らぐ。

 

「.......帰ろう。皆。こうして集金記録も手に入っ────」

 

シロコがバッグを開ければ、書類の束が───いやそれだけでは無かった。

 

やはり、札束が大量に入っている。

 

「ありゃ!?なんじゃこりゃ!カバンの中に札束が!」

 

流石のホシノも予想外なのか、ほんとに驚いている。

 

俺は頭を抱えた。

 

「うえええええっ!!?シロコ先輩、現金盗んじゃったの!?」

 

「違う、シロコが盗んだんじゃない。

銀行員が普通の銀行強盗と勘違いして入れて渡したんだ。

 

もうここまで来ると集金記録が入ってる方が奇跡だぞ?」

 

 

「──どれどれ....うえぇ、軽く1億はあるね。

本当に5分で1億稼いじゃったねー。」

 

スルーされたような気もする。

ホシノとは少し時間を置いて、また話をしよう。

 

 

「やったじゃない!何ぼーっとしてるのよ!シロコ先輩!

さっさと帰りましょ!」

 

 

 

「──────────それ───は。」

どうしたらいいのか分からくなった。

叱るべきなのか、それともこの場は誰かに委ねるべきなのか。

先生の取るべき道は、先生とは何なのか。

 

間違い、だと指摘していいのか?

 

盗んだお金を使うのはどう考えても犯罪で、悪い事だ。

 

「........」

シロコが立ち止まって、黙り込んだ。

俺の方をじっと見てくる。

 

 

『ちょ、ちょっと待ってください!

今の話の流れでそのお金を使うつもりなんですか!?セリカちゃん!?』

 

アヤネの一言にセリカが素でキョトンとした。

 

「アヤネちゃん、なんで?借金を返さなきゃ。」

 

『そんな事したら、本当に犯罪だよ!?セリカちゃん!!

衛宮先生がわざわざ私達の為に───』

 

「でもさ!このお金はそもそも私達が汗水流して稼いだお金なんだよ?

それが闇銀行に流れてたら犯罪者の武器や兵器に変えられてたかもしれない!

 

悪人のお金だよ?私たちが正しい使い方した方がいいじゃん!」

 

『...そうだけど....でも...』

 

アヤネは言い返せなかった。

 

それは、セリカの本心からの言葉だった。

悪い者達からお金を奪って、正しい使い方をする。

それが黒見セリカの正義なのだと。

 

 

「......そうかもね。でも────先生はどう思う?」

 

 

ホシノが話を俺に回した。

 

 

「俺が言っていいのか?ホシノも同意見だって勝手に思ってるんだけど。」

 

 

「......そっか。

できることなら先生から言って欲しかったんだけどなー。

 

 

ここで私が「いいじゃん!そうしよー」なんて言ったらどうするつもりなのさ?」

 

 

「へ?」

 

それは考えてなかった。

いつもはへらへらとした態度をとっているが、ホシノの根は真面目だ。

これは間違いない、そう思っていた。

 

だから考えていなかった。

 

真顔になって考え始める俺をみてホシノが苦笑いした。

 

「あ、ごめんごめん。いまの意地悪だったね。

 

嘘、冗談だよー。

 

 

 

さて。セリカちゃん。今の私達に必要な物って何?

私達、なんで銀行を襲ったりしたんだっけ?」

 

ホシノが間を置いてセリカに質問した。

 

「それは.....先生を助けて集金記録を───」

 

「だよね。じゃあ、それ以外は余計だよね?

副次的に得たもので満足してたらダメだよ。

 

悪人の犯罪資金だから?

それでも私達がやった事は罪だよ?

人を脅して、お金を取った。

あの場に罪のない人達だって居たかもしれない。

 

そんなお金を1度でも使っちゃったらこの先ピンチになった時にも

「仕方ないよね」って言って、やっちゃいけないことに手を出すかもしれないよ?

 

次は普通の銀行かもしれないし、別の学校かもしれない。

 

おじさんとしては、カワイイ後輩に汚れて欲しくはないなー。

 

基本的には私も先生と同じだよ。」

 

この際、ホシノが提案した「バスジャックが~」と突っ込むのは止めた。

 

 

「うっ....そんな事には──」

 

 

「ならないって?

ほんとにそう言い切れるかな?

 

それに、こんな汚いお金で学校を守ってなんの意味があるのさ?

 

こんなことするくらいなら最初からノノミちゃんが持ってる燦然(さんぜん)と輝くゴールドカードに頼ってたはずだよ。」

 

ホシノの目線が後ろにいるノノミに移った。

 

「....私もそう提案しましたが...ホシノ先輩が反対されて。

 

先輩の気持ち、わかります。

いくら必死で、頑張ってきたとしても、最後まできちんとした方法で返済をしない限り、アビドスはアビドスで無くなってしまう。

 

銃を向けられた時は悲しかったですし、苦しかったですけど。

先生もそうなんですよね?

 

先生のいた世界の常識とか正しさが何か、というのは分かりませんけれど単純に他人を傷つけて欲しくなかった。

そうして自分たちの利として欲しくは無かった。

 

そうしたら、私達はブラックマーケットの大人たちと同じになってしまいます。」

 

 

 

「.....私は確かにシロウに間違ってるかどうか聞いた。

 

でも、間違いって言ってくれてもよかった。」

 

 

「え?」

 

シロコが呟いた。

 

 

「「それは違う、これが正しい。」

 

そう言って貰えるならそれでも良かった。

でも、「間違ってない」って言われて嬉しかった。

 

それだけは....ありがとう。

 

でも、甘やかして欲しいなんて一言も言ってない。

私もセリカと同意見。

 

貴方は大人。時には子供を叱ることも必要....なんだと思う。

 

 

だから、シロウの言葉で聞きたい。

 

私達はこのお金をどうしたらいい?」

 

 

「─────────────。」

 

 

以前の俺なら、間違いなく「届け出よう」とか、「謝って返しに行こう」と本気で言っただろう。

 

だが、彼女たちが罪を犯したのは何の為か。

 

それに、セリカの意見にも一理はある。

このまま返却してしまえばその金は誰かを傷つけるために使われる。

 

 

 

「─────持ち帰ろう。」

 

 

 

『「「えっ!!?」」』

 

そりゃ驚くだろう。

使わない、使わせないなんて言いながら持って帰ろうなどと。

 

「ほう?それはどういう風の吹き回しだ?衛宮士郎。

 

お前もこのキヴォトスの常識にあてられたか?」

 

 

「馬鹿言ってろ言峰。

使う為に持ち帰るんじゃない。処分する為に持ち帰るんだ。」

 

 

『あっ!そうですね!ここで置いていったりしたら足が着いてしまいます。』

 

 

「これならセリカの意見もホシノの意見も半分ずつ通る。

 

なぁ、アビドス校舎に焼却炉ってあるのか?ホシノ。」

 

 

「あー....うん。あるよ。」

 

どうも、納得がいかないのか、それとも焼却炉にいい思い出がないのか。

煮え切らない返事だ。

 

 

「ならそこで処分しよう。

 

なんなら敵の正体がハッキリするまで取っておいてもいい。

皆が返したいってなっても、それなら大丈夫だろ。

 

いや、まあやっちまったことはどうしようも無いけど。

 

でも、俺に出来るのは意見を出して、責任を取ることだ。

 

俺は決めてやれない。

 

というか、せめて悔いが残らないようにホシノ達が選択した方がいいと思う。」

 

 

「.....そうだね。うん。」

 

俺の言葉を聞いてホシノも納得したようだ。

 

「学校まで持ち帰って処分しよっか。

ま、これで先生も共犯だよね?」

 

 

正義の味方が犯罪なんて、とわざとらしく言うホシノ。

 

「ぐっ.....俺の正義って結局個人的な正義なんだろうな。」

 

 

「まぁ、人間には悪なしでは生きられんからな。」

 

なんて笑ってこちらを見る言峰。

 

 

『待ってください!!何者かがそちらに接近しています!!』

 

 

場が和んだところで次から次へ。

 

 

「....追っ手のマーケットガード!?」

 

 

『い、いえ、武装はしていません!数4人!!

 

調べますね.....』

 

 

「は、早く逃げないと!ほら、士郎!肩貸すから!」

 

せっかくだが、俺は断った。

 

「いや、ダメになったのは腕だけだ。足は動く。

むしろそっちの方が辛い。

 

 

それに見つかった場合、もう認識阻害解けてるんだから皆覆面被って俺を拘束して逃げ帰る。

 

位の方がいいんじゃないか?」

 

 

 

「─────────────。」

 

俺の発言に、皆目を丸くした。

 

「あ、アンタね....こういう時だけ、そんな酷いこと私達にやれっていうの?」

 

 

「.....でも、まぁ折角の先生の好意ですから。止血も兼ねて縛っちゃいましょう☆」

 

ノノミが意地悪そうに言う。

 

「いや!止血替わりに縛るな!!」

 

 

馬鹿騒ぎしている間にアヤネから報告が上がる。

 

『あれは───便利屋のアル社長!?』

 

 

「えっ!?」

 

「さ、さー。みんな急いで覆面被ってー。」

 

 

(ばさっ)

 

 

そうして、現れたヘトヘトの陸八魔。

 

 

「はぁ...はぁ...ふぅ....ま、待って!!」

 

 

「....!」

 

シロコが陸八魔に銃を向ける。

 

 

「待って!私は敵じゃないから!」

 

 

(なんでアイツが....やっぱりアンタなにかしたんじゃないでしょうね?)

 

俺を拘束したセリカが耳打ちする。

 

知らない。

俺は陸八魔があの場にいたことすら、知らなかった。

 

(撃退する?)

 

(どうかな?戦う気がないって相手を叩くのもねぇ....)

 

(お知り合いですか ....?)

 

(まぁねぇ~そこそこ?)

 

シロコとホシノとヒフミが話し合っている。

 

 

「あ。あの....」

 

そうして陸八魔が口を開く。

 

 

「銀行の襲撃、みせてもらったわ....。

 

ブラックマーケットの警備を、ものの5分で攻略。

先生の妨害はあったみたいだけど、元から狙っていたみたいだし....

銀行の中にいた私は衛宮先生が拘束されてるなんて知らなかったわ。

 

そうして逃げ出した衛宮先生も捕まえて────

 

 

あなた達稀に見るアウトローっぷりだわ。」

 

 

「....!?」

(覆面のおかげで...気づかれてないみたい。)

(そうみたいだね~)

 

「正直、凄く衝撃的だったと言うか....このご時世にあんな大胆なことができるなんて.....私感動したの!

 

私も頑張るわ!法律や規律に縛られない!本当の意味での自由な魂!

そんなアウトローになりたいから!」

 

 

(い、一体何の話なわけ!?)

 

シロコもセリカも混乱している。

 

 

「そ、そういう事だから....な、名前を教えて頂戴!」

 

 

「...名前!?」

 

シロコが戸惑いながら応対する。

 

「そう。

組織名とかグループ名とかチーム名とかあるじゃない!

正式な名称じゃなくてもいいから.....私が今日の勇姿を心に深く刻んでおけるように!!」

 

(うへ、なんか盛大に勘違いされてるね。)

 

 

 

そして、ノノミが前に出た。

 

 

「....はいっ!!仰ることはよーくわかりましたっ!」

 

(の、ノノミ!?)

 

「私達は....人呼んで.....」

 

 

そうして、俺は訳の分からない単語を理解できないまま頭に叩き込まれた。

 

 

「覆面水着団です!」

 

 

「「.....覆面水着団!?」」

 

 

陸八魔と俺の声が被った。

 

訳が分からない、そんな名前で、陸八魔が納得するわけ────

 

 

「や、ヤバい.....超クールね!!カッコ良すぎるわ!!」

 

 

「は?」

 

 

なんだ?この都合良い展開は。

 

覆面で顔を隠しただけなので、アビドス高校の面子と、バレてないだけマシなのだが。

 

もしかして、陸八魔アルの感性は少し変なのか?

 

 

そこに、撹乱するためにか、ホシノが付け足した。

 

 

「うへ~、本来はスクール水着に覆面が正装なんだけどね。

ちょっと緊急だったもんで、今日は覆面だけなんだー。

 

ボスはさっきも言ったけど、ここにいるファウストさんだよ!」

 

 

「 .....ど、どうも、ボスです。」

 

「そうなんです!!普段はアイドルとして活動してて、夜になると悪人を倒す正義の味方に変身するんです!

 

申し遅れました、私はクリスティーナだお。」

 

 

 

「「ファウスト」に「だお」ですって?キャラも立ってる ...!?」

 

「うへ、目には目を、歯には歯を。無慈悲に、孤高に、我が道のごとく魔境を行く。

 

これが私らのモットーだよ!! 」

 

 

 

 

「いや、お前たち何─────むぐっ」

 

「はいはーい。アンタは黙ってなさい!」

 

 

過度な盛りに異論を唱えたかったが、セリカに口を塞がれた。

 

そして、遠目に、俺を心配してくれた白黒の子が見えた。

 

 

 

 

 

「あれ?カヨコちゃん。あれって.....」

 

 

「......なんだ、アビドス高校の。

良かった、自作自演だったんだ。

 

.... って、何してるのアルは?」

 

 

「わー、アルちゃんドはまりしちゃってるじゃんー

特撮モノのイベントに連れてってもらった子供みたいな顔をしてる!」

 

 

 

 

その、赤い目と俺の目が合った。

せめて、お礼ぐらい、言わなければ。

「んー!!!むんぐぐぐーー!!!」

 

 

「....ひっ!?先生!?何私の手のひら舐めてるのよ!!」

 

セリカの手が離れる。

 

 

「そこの、白黒の子!」

 

 

呼ばれた少女は驚いて自分を指さす。

 

「わ。私?」

 

 

「そうだ。

 

怒鳴って悪かった。

でも、心配してくれてありがとう。」

 

 

「.....別に。ほっとけなかっただけ。誰かさんに似て。」

 

そういって、その子の視線が陸八魔に向いた。

 

やはり、そうなのだろう。

目の前にいる、陸八魔アルは冷酷な殺し屋でも、キヴォトス1のアウトローでもなんでもないのだろう。

 

 

「名前はなんて言うんだ!?」

 

シャーレのオフィスで見た書類に覚えがある。

ただ、全ての生徒の名前と顔が一致しない。

 

 

「....鬼方カヨコ。別に覚えなくていいよ。」

 

「助けてくれようとしたお前のこと、忘れない。」

 

 

(もういいでしょ!てきとうに逃げようよ!)

 

と、セリカがホシノとノノミに言っている。

 

 

 

「そうですね....それでは、この辺で。

 

アディオス~☆」

 

「行こう!夕日に向かって!」

 

 

 

 

そして、その場を

 

 

「あの....夕日まだですけど ...」

 

と、ボスであるヒフミの冷静なツッコミの中、走り去った。

 

そう、集金書類が、はいったバッグを、陸八魔の目の前に置いて。

 

 




次回───

士郎、ゲヘナ学園へ



という訳で、少し話が逸れます。

というか、ヒナを、ヒナと士郎に会話して欲しい。って自己満ですね。

こんな事してるから感想が途絶えるんだぞバーカ。

対策委員会編第2章終盤で士郎には

  • 無限の剣製を使って欲しい
  • カタルシスにはまだ早い(固有結界未使用)
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