衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】 作:神宮寺志狼
衛宮先生がD.Uに1度戻り、そのままゲヘナへと向かう事になった、とシロコ先輩から連絡が来た。
ホシノ先輩はどこかへ出かけ、私とノノミ先輩とセリカちゃんは先生────正しくはアロナちゃんから来た情報整理のお仕事をしている。
「大丈夫かな?士郎達。」
タブレットに表示される電子ファイルを捌きながらセリカちゃんは呟く。
ゲヘナ学園といえば治安の悪いことで有名な自治区、そこにシロコちゃんと2人で飛び込んだのだ。
「たしかに心配だけど.....」
「シロコ先輩、変なところでスイッチ入ったりするし。ゲヘナの生徒と喧嘩して、巻き込まれたりしなきゃいいけど。」
(あ、心配事は先生ではなくシロコ先輩絡みなんだ。)
それは口に出さず、追求する。
「先生のこと信頼してるんだね。セリカちゃん。」
「べ、別に?
銃弾で撃たれたって
体から剣が生えてきたり銃弾で穴だらけになっても魔法ですぐさま元通りなんでしょ?
先生の安否なんて二の次よ。」
「うーん.....アヤネちゃんどう思います?」
とノノミ先輩が話に入ってくる。
「どう、というのは?」
「衛宮先生の言う「魔術」はそんなに便利な物なのでしょうか?」
ノノミ先輩の言いたい事は分かる。
私が聞いたのは
「怪我が治りやすい体質。」
「先生の魔術はキヴォトスにおける異物。」
ただそれだけ。
見たことあるのも剣や弓、盾を生み出している所のみ。
「セリカちゃん。
そもそも衛宮先生の魔術の行使が、先生の死に直結するんだからそれをアテにするのは良くないと思います。」
「.....そっか、そうだよね
でもそうそう怪我しないでしょ。
というか、怪我しても人助けしてそうな人だし。
あれは止めても無駄。
好きにやらせとくのが1番いいわよ。」
シロコ先輩じゃあるまいし、とセリカちゃんは付け足した。
それに「うーん」と唸るノノミ先輩。
「どうしたんですか?」
「.....どうしてか先生が魔法を使う時、先生が自身に対して銃口を頭に向けているイメージがどうしても離れなくて......
銀行強盗計画しているシロコちゃんと違って良い事をしている分止め辛い上に魔術を使えば使うほど、その────」
「....」
「........」
想像しただけでゾッとした。
1度魔法を発動する事に自らのこめかみに拳銃を突きつける先生の姿を。
私たちの想像したものに対する嫌悪感が顔に出ていたのか
「.....ごめんなさい。」
と、ノノミ先輩が謝った。
「いいえ、その認識は間違っていないと思います。
先生が魔術行使をする事に死に近づいている、というのでは実感がわきませんが。」
私だけは、D.Uで銃撃され、お腹から血を流す衛宮先生を見ている。
銃で撃たれたら死んでしまう。
それは本当の事だと、私は知っていたのでなおさら、
それを理解しているからこそ、その表現は私の先生に対する認識を改めた。
「ま、実際怪我してるしね。
大丈夫よ!何があっても私たちが士郎を守ればいいんだし!」
と自信満々にセリカちゃんが笑う。
「ええ、そうです☆。」
とノノミ先輩も。
私は前線に立って衛宮先生を守ることは出来ない。
だからこそ、目の前の2人のその意志に憧憬の念を抱いてもいて、
なにせ、ブラックマーケットの時も、いざと言う時の足でまといになりかねないのもあり、アビドスに1人残り、便利屋68について調べつつオペレーターの仕事をしていた。
だから衛宮先生の魔法が暴走した時傍に居ることすら出来なかった。
私もいつかは前に出て、皆さんと一緒に戦えるようになりたいと。
そう思った。
そして、そんな話をしていた時に、アラートの警告音が耳に入ってきた。
「!!」
アビドスにおける監視レーダーに爆発の情報が映る。
私はPCのある席まで移動してカタカタと情報を広げていく。
爆発規模、衝撃範囲、そして座標。
「嘘......。」
私が口に手を覆ったのを見てセリカちゃんが駆けてくる。
「どうしたの!?アヤネちゃん!」
「南西2kmの地点で爆発です......C4の爆発連鎖による衝撃を感知。
ですが....ここは柴関ラーメンのある所です。」
「........。なんで!柴大将のお店が狙われるのよ!」
「分かりません.......。」
「陽動かも....しれません。」
私達二人が沈黙している中、ノノミ先輩が呟いた。
「どういう事?」
セリカちゃんが私に聞いてくる。
私もその可能性を考えていない訳ではなかった。
「....もし、便利屋68が私達を学校から引っ張り出すために、柴関ラーメンを爆破したとしたら?
それか、戦力の分散が目的かも.....」
「え!?じゃあ何...?アヤネちゃん達は柴大将を見捨てるつもりなわけ!?」
「そんな事ないです!
でも、私達皆で出ていって、その間に学校が乗っ取られたら.....
だからといってこの状態で戦力を分散するのは──────」
「だから何!?
結局柴大将を見捨てるってことじゃない!!
アヤネちゃんの不安もわかるけど便利屋68がそこまで用意周到─────かもしれないけど!!
きっと士郎なら何も考えずに突っ込んでいくわ!!」
と、セリカちゃんが教室の扉を開けた。
「全く士郎の予想もアテにならないじゃない!
何が
『あれだけボロボロにやられた便利屋68にも立て直す時間が必要だろうから当分は襲撃がないと見て間違いは無いと思う。
多分銀行にいたのも事務所があった建物ごと崩落して資金が無くなったから融資を受けに行ったのかもしれない。』
よ!」
と衛宮先生の言った言葉を1字1句間違えずに真似して見せた。
セリカちゃんの様子を見てノノミ先輩も椅子から腰を上げる。
「.....行きましょう。アヤネちゃん.....。」
「ですが......。」
迷う私を見てセリカちゃんが提案した。
「なら私だけで行く!ノノミ先輩とアヤネちゃんはここに残って!」
それは、駄目だと思った。
ここに誰かが残るなら、前線で戦うことの出来ない─────
「いえ、私がひとりでここに残ります。ノノミ先輩はセリカちゃんと2人で柴関ラーメンへ向かってください。
私ならレーダーもドローンもありますから、何かあってもすぐに察知して逃げられますし、連絡もできます。
それに、オペレーターをするなら、ここが。 」
「アヤネちゃん、ほんとに大丈夫!?」
今の私では皆のように前線で背中を並べて戦えない。
ならばこそ、ここが私の戦場なのだ。
「はい、どうか!お気をつけて!!」
柴関ラーメンのあった場所にたどり着く。
そこには便利屋68と交戦中の謎の集団がいた。
「.....便利屋と言うだけあって中々やりますわね....。」
4対3で不利の戦況。
1人は別の場所で倒れていて、どうも気絶しているようだった。
店を見る。
1ヶ月ぐらいだろうか、お世話になった店はもう建物の柱1つも残っていない。
慣れている。自分が住んでいた場所が荒んでいくのは。
アビドスはそういう場所だった。
「.........セリカちゃん....。」
「大丈夫よ、ノノミ先輩。
それより柴大将は────」
大将の姿を探した。
「セリカ!無事だったんだな!」
しかし目に映ったのは意外な人物。
それはゲヘナに居たはずの士郎だった。
「士郎!?どうしてここに居るのよ!それにそのエプロン姿。
────って、それもだけど、柴大将は!」
「無事だ。
軽傷で済んでる。
今アロナが救急車を呼んだ。」
ホッと息を着いた。
それでスイッチが切り替わる。
「───────それで?どっちがこれをしでかしたの?」
彼は目を逸らした。
「.....陸八魔達だ。」
それで頭に来た。
「やっぱりあんたたちの仕業だったのね!!」
「セリカ!話を────」
「聞く必要ないわ!!
私達だけじゃ飽き足らず!柴大将の店にまで手を出すなんて!」
その時に目に映る。
士郎はいつもスーツの下に青と白柄のシャツを着ている。
その襟元が紫色に変色していた。
「士郎、それ血よね!?」
襟元を掴む。
「これは違うんだ!別の───」
優しい士郎なら「つまづいた」とか「転んで」とか言うに決まってる。
さっき、自信満々に士郎を守ると言っていたのは誰だったのか。
身近に居ない人を、どうやって守るというのか。
軽口を叩いた自分にも腹が立った。
それより、もっと許せないのは────────
ギロッ、と便利屋68を睨む。
彼を害したであろう生徒たち。
「あんた達許さない!絶対に許さないんだからっ!!!」
セリカが美食研究会の射線を塞いで戦闘を始める。
あれは止まらない。
「────あの馬鹿っ!
悪い!ノノミ!セリカのバックアップ頼めるか!?」
「わかりました!」
ノノミに急いで指示を出し、端末でアヤネに連絡を取る。
「アヤネ、ただいま!
早速なんだがホシノはどうしたんだ!?」
『わかりません、何処かへ出かけていて、おそらくいつものパトロールかと。
でもどうしたはこちらのセリフです!衛宮先生!
シロコ先輩はどうしたんですか!!』
「うっ.....ゲヘナで騒ぎに巻き込まれてはぐれた。
無事ではあるんだけど連絡がつかなかった。
だから明日改めて問い合わせるつもりだ。
後で話す!」
『わかりました.....それと先生。
おかえりなさい。ご無事で何よりです。』
セリカの怒りとノノミの制圧射撃の圧力に浅黄が口を開いた。
「ありゃ、来ちゃったみたい。対策委員会!
流石に5対4は分が悪いね~!」
「.....ちょっとタイミングズレちゃったけど、どうせいつかは白黒つけないといけない相手だし.....。
確保しておいた傭兵をこっちに呼ぶ。」
鬼方が「傭兵を雇った」とそう言ったのが引っかかった。
便利屋68に資金がない、というのは間違いだったのだろうか?
いや、耐火金庫に入っていたところで今では瓦礫の下敷きになっているはずだ、彼女たちは手持ちの資金で傭兵を雇ったとでも言うのか。
数十分経過。
便利屋68が雇った多くの傭兵、これまた30人。
数の不利により、美食研究会と対策委員会は追い込まれていた。
ホシノもシロコも今ここにはいない。
美食研究会はアカリがダウン。
黒舘や残りの2人はそもそも初期の爆破によるダメージも蓄積されているのか動きに機敏さが見受けられない。
特に酷いのは黒舘だ。
無理な体勢で柴大将を庇ったのだろうか。
片腕はだらりとぶら下がっているだけ。
もし、あの場で、黒舘と口論していなければ、もしかしたら俺が柴大将を守ることが出来たかもしれない。
そんな反省は後回しだ。
今、ホシノが居ないため、敵の攻撃を皆して平等に食らっている。
.....なら、俺のやる事は決まっている。
「
ホシノの盾を片手に前に出張った。
「ちょっ!?士郎何してんのよ!あんた、魔法使ったらどうなるか────。」
そう、最前線に俺が飛び込んだ時、それはやってきた。
空から落ちてくる砲弾の雨。
それは間違いなく俺達に向けられた攻撃の意志。
「セリカ、黒舘、皆!上だ!!」
その言葉にセリカ達のみならず、便利屋68の皆も空を見上げ、迎撃する、が間に合っていない。
「ダメ!間に合わない!士郎下がって!!」
セリカに肩を掴まれる。が、それは出来ない。
落ちてくる砲弾を睨みつける。
あれが落ちてきたらここにいる皆共倒れだ。
叩き落とすにはある程度の火力と数が必要だ。
盾を地面に刺し、右手を前に───
「
左でコントロールするように右腕を抑えて狙いを定め、
剣の丘から1本ずつ剣を引っ張ってきては投影した瞬間にその砲弾に掃射する。
下がれない、下がれるもんか。
だってここには皆も柴大将だっている。
「ふざけ─────」
ここで、誰かが傷つくなら、俺は一体なんのために、切嗣から魔術を教わったというのか。
「─────てんじゃ、ねェェェッッ!!!!」
出しゃばるなと、何かが俺に告げる。
そんな事はどうだっていい。
魔魔力の流れは早くなる、されど展開される弾幕に追いつけない。
もっと早く、早くと、急ぐ事に魔術回路が悲鳴をあげ軋む。
間に合わないじゃなく間に合わせろ。
体感としては1分くらいだろうか。
どうにか凌ぎきった。
「─────ハァ....ハァ....みんな無事だな....?」
膝に手を付き肩で息をしながら皆の姿を見る。
「士郎!大丈夫なのよね!」
むしろ心配されるのは俺の方らしい。
「大丈夫だ。
アヤネ、敵の位置は特定できるか!?」
『はい....敵集団の位置及び所属を確認しました.....しかしこれは....』
流石アヤネだ、と言いたいが何やら歯切りが悪い。
「どうしたんですか?アヤネちゃん。」
ノノミが聞き返す。
『こちらに攻撃を開始したのは、ゲヘナの風紀委員会です!』
ここにきて予想外の第4勢力が乱入してきた。
対策委員会編第2章終盤で士郎には
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無限の剣製を使って欲しい
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カタルシスにはまだ早い(固有結界未使用)