衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】   作:神宮寺志狼

28 / 134
#21 風紀委員会参戦/呉越同舟

爆煙により、俺達の周りには煙が舞っている。

 

「ゲホゲホっ....もう嫌、なんなのよ!みんな無事よね!?」

 

陸八魔の弱気な声が聞こえる。

 

「社長!ムツキ!ハルカ!早く隠れよう!

 

ヤツらが来た!」

 

鬼方が便利屋の3人に指示を出していた。

異例の光景....ではないが何か妙だった。

 

いつも会う度冷静そうに見えていた鬼方が怯えているように冷や汗をかいている。

 

「うちの風紀の連中だよ、あれ。

ここまで追ってくるなんて....しかもこのタイミング.....」

 

狙ったようだ。と言いたいのだろう。

 

 

 

鬼方周辺の視界が晴れて来ている。

 

(ドゴォォン!)

 

先程までとは違う重い砲声。

飛んできていたのは戦車の砲弾だ。

 

盾を手に持ち走り出す。

 

(ドンッ)

 

「えっ....ちょ、先生何っ!?」

 

飛翔してくる砲撃に気づいていない鬼方を感覚を頼りに突き飛ばした。

 

(ガギィィィィンッ!!!)

 

瞬間、左腕で構えた盾に砲弾が直撃する。

ミシミシ軋みのような音と共に腕の骨に衝撃が伝わり踏ん張りきれず──────

 

「────あ──....ぎっっっ!!」

 

 

半身が吹き飛ぶような勢いで、俺は地面に叩きつけられるように飛んだ。。

 

 

「ちょっと、カヨコ!大丈夫!?」

 

「私は平気....でも。」

陸八魔が鬼方の方に走っていく。

 

 

「....どうして、なんで庇ったの。」と、瞳孔の開いた鬼方の目がこちらを見た。

 

「士郎、無事よね!!!」

 

 

煙に巻かれた状況の中、セリカの声が聞こえてくる。

 

 

状態を確認する。

 

 

耳鳴りがうるさい。頭の中で鐘が鳴っている

 

体は受けた衝撃のせいか足先まで痺れている。

左半身は一時的な麻痺状態、指先に至っては麻痺しているという()()()()()()()()()

 

消し飛んではいない、ちゃんと身体についている事は目で確認できる。

 

───い布で巻かれた腕などない───

 

しっかりと自分の腕がついている。

 

 

動く右半身を駆使し、盾に体重を乗せて立ち上がる。

手でも足でもまだ動くなら───

 

「あぁ─────大丈夫だ!」

 

俺は声を張り上げる。

 

ここでのんびり寝ていることなど許されない。

 

 

「───!大丈夫ですか!?衛宮先生!」

 

どうにかセリカ達と合流し、若干引き気味のノノミに肩を借りた。

先程の砲撃以降、相手はこちらの位置が粉塵によって把握出来ていないらしく、攻撃が来なかった。

 

「大丈夫ですか?先生。」

 

「大丈夫だ、足を引きずってるけど、見た目ほど悪くない。

受けた攻撃で一時的に麻痺してるだけだ。」

 

慌てるノノミを笑って宥める。

 

「それで、なんで風紀委員会から攻撃されるのよ!?

もしかして便利屋を捕まえに来たってこと!?」

 

 

「いえ、もしかしたら私達かもしれません。」

 

煤で顔の汚れた黒舘が話し始めた。

 

「そもそも風紀委員会からの拘束を解いて逃げ出してきましたから。」

 

とさらっと「脱走してきた」と黒舘は言う。

しかし、それはおかしいとアヤネは反論した。

 

『ですが、あのタイミングは私たち全員が疲弊していたタイミングでの制圧攻撃..

 

 

確実に漁夫の利を狙っていたんだと思います。

 

そして、迫撃砲の攻撃範囲内には私達もいました。

正確な砲撃が出来るのに、相手の顔が分からないなんてことあるんでしょうか?』

 

「じゃあ何!?私達も便利屋68も美食...研究会?もまとめて叩こうって魂胆だったってこと!?」

 

 

一応、セリカ、ノノミはアビドス対策委員会であり、その責任者として俺がいた。

 

書類上、まだ通らないアビドス対策委員会の正式な部活申請の件を除けば

先程の攻撃は確信犯である。

 

俺と同じことを考えていたのか、ノノミも呟く。

 

 

「ゲヘナの風紀委員会は、ブラックマーケットの生徒や便利屋68のような他校の非公認部活とは異なります。

 

一歩間違えれば、政治的な紛争の火種になるかもしれません.....。

 

アヤネちゃん。

ホシノ先輩とはまだ連絡がつきませんか?」

 

『.....はい。

普段なら、ここまで連絡が取れないこと無いはずなのに....。』

 

アビドスのリーダーはホシノだ。

 

対策委員会の委員長。

そのホシノが今不在。

 

となれば自ずと視線が俺に向く。

 

 

「衛宮先生.....どうしましょう。」

 

「.........」

 

打って出るか、それとも撤退するか。

 

「.....下手に顔を出した瞬間撃たれかねない。

それは交渉する余地が無いって事だ。

 

この煙が晴れたら間違いなく標的を確認せずに彼女達は撃ってくる。

 

かといってな。

セリカ、ノノミ。

 

2人で風紀委員会と戦えるか?」

 

「.......」

 

「......厳しいと思います。」

セリカは沈黙で、ノノミはキッパリと言ってくれた。

 

「だからだ。皆が相手の標的になっている以上、ここは協力して切り抜けるべきだと思う。

 

陸八魔!居るんだろ!?

こっちに1度合流してくれ!

じゃないと風紀委員会に協力してお前たちを引き渡すぞ!

 

っと。これでよし。」

 

全員があんぐり口を開いている。

 

「.....ま!待ちなさいよ!」

 

と、慌てたように陸八魔達がやってくる。

 

「そんなのどうやっても逃げられないじゃない!!

何でも聞くからそれだけはやめて!!

 

ヒナが居たら────」

 

と涙目で訴えてきたのを見てセリカが満足そうに笑っている。

 

「先に誤解を解くとヒナはこんなこと絶対しない。

 

それに引き渡すこともしない。

俺はアビドスの顧問として便利屋68の社長に共闘の提案をしたいだけだ。」

 

「....え?ヒナがいない....?」

 

目をぱちくりさせる陸八魔。

 

「お互い一時休戦して風紀委員会と戦ってくれないか?

 

黒舘も頼む。

今の状況、対策委員会だけじゃ勝ち目がない。

 

風紀委員会と交渉できる対等な状況に持ち込む必要がある。」

 

「....つまり戦力を削れればそれでいいと?」

黒舘が要約してくれる。

 

 

「あぁ、風紀委員会を倒す必要は無いんだ。

どのみち相手の戦力がどの程度か分からない以上、倒せるかも分からない。

 

最悪時間を稼ぐだけでいい、1時間だ。」

 

 

陸八魔が唸る。

 

「......頼る戦力が他に居ないこともないんだ。

でも、この手は使いたくないし、彼女たちが来てくれたとしても1時間かかる。

 

それにこのままじゃ皆共倒れだ。

 

頼む。」

 

 

俺は頭を下げる。

 

とはいえ首しか動かせない。

今だ自由になっていない体はノノミに支えられみっともない状態だ。

 

スーツはボロボロになったから邪魔くさくて脱ぎ捨てた。

 

もう「先生」としての威厳は何処にもない。

 

 

そんな俺を見て、予想外にも最初に口を開いたのは鬼方だ。

 

(カチャッ)

 

「はぁ.....。

 

あてにできる戦力がいるなら今すぐ呼んで。

「使いたくない」はただの我儘。

 

弾薬よし.....弾倉よし.....私の方は大丈夫。

どうするの?社長?」

 

と。

陸八魔に指示を促した。

 

 

「......私は勝算のない戦いはしないわ。」

 

陸八魔はそう言った。

 

「......そうか。」

 

 

「────でも、先生には勝算があるんでしょう?

うちの社員も救ってくれたし。

 

いいわ、騙されてあげようじゃない。

そっちはどうなの?美食研?」

 

 

「決まっていますわ。衛宮先生と貴女とはいずれ決着をつけなければなりません。

 

ので、ここは1番確実な方法を。」

 

「私も衛宮先生に助けていただきましたし。

まだ大将さんにラーメンのお代を払っていませんから。」

 

気絶していたアカリは砲声で目覚めたのか、起き上がって来る。

 

 

なら後はこっちの問題だ。

 

「今更で悪い。

 

セリカとノノミが便利屋と組むのが嫌だって言うならこの話は全部無しだ。

 

どうする?」

 

 

「.....そんなの選択肢ないじゃん!

いいわよ!一緒に戦ってあげる!

 

感謝しなさいよね!!」

 

と元気そうなセリカを見てホッと一息。

反面、心配そうなノノミ。

 

「大丈夫だ。

事実上風紀委員会は許可もなく、アビドス自治区内で政治的中心の立場であるアビドス対策委員会を誤射、又は意図的に攻撃したんだ。

 

それにここには一応連邦捜査部の看板背負(しょ)ってる俺もいる。」

 

「....ですね。

立場はどうあれ、私たちは攻撃されました。

であればやることは明確ですね☆」

 

 

「よし、なら美食研究会も便利屋も今は全員シャーレ所属扱いで頼むアロナ!」

 

『わかりました!それとシャーレのオフィスに先程救難信号を出しました!!

 

藤河さん達が今こちらに向かっています!』

 

 

援軍も呼べた。

 

皆の意思も決定された。

 

「ねぇ、先生、いい加減その「陸八魔」って言うのやめてくれないかしら?

「社長」または「アル」って呼びなさいよ。」

 

 

へ?

 

「でしたら黒舘も呼びづらいでしょうから私のことは「ハルナ」と。」

 

黒舘に続いて美食研の自己紹介が始まる。

 

先程までの緊迫した空気が台無しだ。

 

 

「獅子堂イズミ!イズミでいいよ!先生!」

 

「私はジュンコ!いつか先生の料理も食べさせてね!」

 

 

仕方なく復唱する。

この際だ、苗字にコンプレックスを持っている生徒もいるかもしれない、聞いておこう。

 

「イズミにジュンコな。了解。

そういえば便利屋68の皆はなんて呼んだらいい? 」

 

 

「私はカヨコでいい。

貴女達はどうするの?ムツキ、ハルカ。」

 

「じゃあムツキちゃん───ごめん嘘!先生冗談通じそうにないや!

ムツキって呼んでね!!」

 

最後、気の弱そうな生徒。

 

「......ハルカです....よろしくお願いします。....先生。」

 

ハルカの頭に手を置いて撫でてやる。

 

「了解、カヨコ、ムツキ、ハルカ。よろしくな。」

 

 

視界が晴れていく。

 

左腕にはやっと痛覚が戻ってきた。

痛い、打ち身と言うにはキツイ。

 

が、バーサーカーに真っ二つにされた時に比べたらまだ耐えられる。

 

 

ノノミから離れ、自らの足で立った。

 

「よし、皆準備はいいな!

 

射撃─────」

 

 

敵の集団が見える。

 

一目見ただけでこちらの20倍近くの生徒がいるのがわかる。

 

それでも、逃げ出そうとする生徒は見当たらない。

皆、覚悟している。

 

「──────開始!!」

 

(ダダダダダダダダダッ!!!)

 

風紀委員会への先制射撃。

煙でまだこちらの位置が特定出来ていない全面の生徒達が倒れていく。

 

 

 

 

いい加減。その倒れていく姿を見て瞳を背けるのを辞めないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

状況は一変した。

 

200人以上いた風紀委員会前線の生徒の数は極端に減っていた。

 

 

「やぁぁぁっっ!!!!」

 

「死んでください死んでください死んでください死んでくださいッッ!!」

 

 

前線には駆けるセリカと、銃弾をものともせずに圧をかけていくハルカ。

 

それを狙撃しようものなら、ハルナとアルの正確無比な射撃によってその生徒は反撃された。

 

カヨコとムツキは相手の背後に回り込み、暴れている。

この2人の行動が1番効果が高いだろう。

 

アカリ、ジュンコがセリカとハルカの後衛を務め2人の隙をカバーし、ノノミとイズミが残存生徒を制圧。

 

俺もその後を追った。

 

 

とうとう司令塔であろう生徒の所まで戦線を押し込んだ。

 

「な、何?!────私たちが負けているっ!!?

一個中隊級の規模だったんだぞ!?」

 

昼間、高速道路で美食研究会を追っていた銀髪ツインテール、ライフル持ちの少女が皆の力に圧倒されている。

 

 

電話が鳴った。

 

『衛宮先生!聞こえますか!?』

 

それは紛れもなく火宮の声でその発信先からも銃声が聞こえてくる。

 

「聞こえてる。

もしかしなくても居るんだな。ここに?」

 

『......はい。』

 

そうして、相手の後方から出てきた火宮。

 

「よっ、久しぶりだな。」

 

端末の通話を切る。

 

「.....先生、こんな形でお目にかかるとは.....。

 

まさか先生がそちらにいらしているとは.....ごめんなさい。」

 

状況が掴めない中謝られても困る。

結局は対策委員会のメンツがいた事を認識できていなかったのだろうか。

 

『先生、ここは私が。』

ここでアヤネが交渉役を願い出た。

 

「わかった、アヤネに任せる。」

 

『はい。

 

 

アビドス対策委員会の奥空アヤネです。

所属をお願いします。』

 

銀髪の生徒は黙った。

不味いことをしたのだろうと言う気持ちと、こちらの対応に度肝を抜かれているのか声が聞こえない。

 

 

──────しかし、突如としてアヤネの回線に割り込んできた者がいた。

 

 

『それは、私から応えさせていただきます。』

 

「ア、アコちゃん.....?」

 

 

アコ、と銀髪の生徒に呼ばれる生徒の姿がホログラムで展開される。

 

第一印象としては真面目そうだが考えが読めない。

 

そして、とんでもなく奇妙な服装をしていた。

 

一瞬見間違った。

首には鈴、いやそれは鈴と言うにはおかしい形をしていてもはやカウベルのようだ。

 

1番は服だ。

何を隠そう。いや隠していないのだ。

シャツと思わしき服は全面のボタンが閉じられている。

 

当たり前だ。胸を全開で露出させる年頃の女の子などそうはいないだろう。

 

だがそこではなかった。

露出しているのは全面ではなく側面。

服の側面が切り取られたように肌が露出している。

 

そいつは笑顔で

 

『こんにちは、アビドスの皆様。

私はゲヘナ学園所属の行政官、アコと申します。

 

今の状況について少し説明させていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか?』

 

なんて口にしやがった。

 

正直、今どうして戦っているかより、その服装について小一時間ほど問い詰めたい。

 

胸部から腰にかけて人間というのは男性であれ女性であれ内側には色々な器官や内蔵がある。

 

心臓、肺、気管支、胃に肝臓。

 

要は体におけるいちばん重要な臓器が詰まっているのだ。

 

そんな側面をまるだしにし、冷やす服装を来ているのはこちらの動揺を誘う作戦なのだろうか?

 

 

『イオリ。反省文の標準形式は私の机の左の引き出しにあります。

ご存知ですよね?』

 

と、そいつは目の前にいる銀髪ツインテールの少女を表面的には笑いながら叱った。

 

 

とりあえず、俺の当初の目標。

話し合いの場を設けると言うのは大規模な戦闘の後に実現されたのだった。

 

 

 

 

 

 

Vol.1 第1章 END To Be Continued...

Vol1 2章終了後、見たい絆ストーリー。とある事情により絆が深まらないのでホシノを除く。

  • 黒見セリカ
  • 砂狼シロコ
  • 奥空アヤネ
  • 十六夜ノノミ
  • 早瀬ユウカ
  • 羽川ハスミ
  • 空崎ヒナ
  • 本編を進めろ余り我を待たせるな雑種
  • 全部書け、そのような泣き言聞く耳持たん
  • 「バカの藤河は何処だ!」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。