衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】   作:神宮寺志狼

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─────その骨子は捻れ、踊り狂う─────


#3 担い手/頼り無い先導

 

(パリンッ!)

陶器が割れるような音が響き続ける。

 

1つ、また1つと、手元の短刀が折れていく。

 

 

 

結果的に言うと、俺は大敗を期していた。

 

 

──銃は剣よりも強し。──

 

 

ここは戦国時代より前なんかじゃ決してない。

 

現代兵器の飛び交う戦場だ。

 

 

 

そんな事少し考えればわかる筈だった。

啖呵をきった時、恐らく冷静ではなかったのだろう。

 

戦争が当たり前の日々。

 

年頃の少女達が文字通り重火器を持ち歩く世界。

 

今もどこかで誰かが、互いに傷つけあっている。

 

そんな普通ではない光景が目に浮かんで、頭に来ていたのだろう。

 

 

『あいつの強さってのは戦争そのものだ。

 

いくら強い兵士だって戦争そのものには太刀打ち出来ないだろ?』

 

かつてギルガメッシュについて、セイバーと遠坂に言い聞かせた言葉を、今身をもって体感している。

 

(パリンッ!)

 

「がっ───!!」

 

被弾する。

 

腹部をえぐられるような痛み、今度はかすり傷では済まない。

 

ジャケテッド・ホローポイント弾。

 

それは小口径弾丸の火力、いや威力を上げるため弾頭に穴を開け、工夫された物。

肉が弾け飛ぶような感覚とともに土手っ腹に穴が空いた。

 

 

「先生!!」

 

早瀬が走ってくる。

 

彼女の無防備な姿を見て、むしろこっちが走り出す。

 

守らなければ。と。

 

「────I am ..... the bone of my sword(体 は剣 で 出来ている).......

 

"熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)ッ...!!!"」

 

あの丘から盾を引きずり出し、仕方なく早瀬につれられて遮蔽物まで後退する。

流石に弾丸ではアイアスの盾は破壊できないようだ。

 

しかし、展開しながら戦う、なんて器用なことは俺にはできない。

 

「先生はもう下がっていてください!!」

 

俺の付き添いをした早瀬を中心に前衛が交代する。

 

 

「衛宮先生!」

「ご無事ですか....!!」

 

俺はといえば、眼鏡をかけた生徒2人に声をかけられ手当を受けていた。

 

「大丈夫だ....」

 

おかしい。

未熟だった頃でさえ、あの「魔拳」のような葛木の拳に10発は保った物が5~6発、銃弾を防いだだけで砕け散った。

 

 

遠坂が昔言ってた世界の強制力、ではない。

 

何せアイアスの盾は一切破壊されてない。

 

となると、単純に───

 

 

「そうか、この世界の銃は破壊力が桁違いなのか。」

 

 

 

「喋らないでください!!」

 

「今傷口を───」

 

(ギシイッ)

 

「なんですか....この身体。」

 

その台詞と共に紅い眼鏡の生徒が身を引いた。

俺の腹部には剣が詰まっていたからだ。

 

「どうして.....」

 

いつぞやの治癒が発動しているんだ....。

いまやセイバーもいない。

あれはセイバーの魔力を鞘に充填しなければ効果は発揮されないはずだ。

 

ハッとして、俺の体を見て怯える2人に状況を説明する。

 

「あ、俺なら大丈夫だ。

すこし───いや君たちに比べたら些細だけど、怪我の治りが早い体質なんだ。

 

それより悪い。

 

あんな啖呵をきっておいてかっこ悪いところを見せちまった。」

 

頭を地面に着け謝罪する。

結局足を引っ張ってしまった。

面目無い。

 

「...い、いえ。

私たちは別に────」

 

赤いメガネの子はそういうがもう1人の生徒はそれはもう激おこ状態だった。

 

「本当です!

 

剣で銃に挑むなんて時代錯誤もいいところです。」

 

「....本当に面目ない...。」

 

「そ、それでも剣戟で銃弾を弾くなんてすごいです!

それに遠くからの狙撃も確実に対処していました。

 

もしや衛宮先生は運動神経より、目の方が良いのでは無いでしょうか?」

 

赤いメガネの少女はフォローを入れてくれた。

 

「あ、ありがとう。

 

....ええと。」

 

そうして思い出す。

俺は早瀬と七神以外、誰の名前も知らない事を。

 

それを察してくれたのか彼女達は自己紹介をしてくれた。

 

「私はアビドス高等学校の1年、奥空アヤネです。」

 

「....ゲヘナ学園の風紀委員会所属。火宮チナツです。」

 

アビドス高等学校とゲヘナ学園.....。

おそらく俺はこれから途方もない数の学校へ向かうことになるんだろう。

すべて覚えられるのだろうか?

 

 

それはそれとして、奥空に火宮か、よし。覚えた。

 

簡単な自己紹介の終わりを見計らったタイミングで通信が来る。

 

 

 

『どうやらご無事のようですね。先生。』

 

その声は七神リンのものだ。

 

「あぁ、なんとか。」

 

 

『......どうして、あの子はこんな人を....』

 

「へっ?」

 

通信から少し、ほんの少しだけ、七神リンの俺に対する不満、いや落胆する声が聞こえた。

 

『なんでもありません。

 

ですが先生。

 

二度と前衛で戦おうなど、考えないでください。

今貴方に死なれてしまっては全てが崩壊します。』

 

七神の言葉には少々の苛立ちと棘が感じられる。

 

 

「─だけど。」

 

 

 

『大人とは、もっとドンと構えているべきです。

先生であるなら生徒の自主性を重んじるべきでしょう?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パキン

 

もはや現実で鳴っていない筈のそれは、耳元で、大きな音を立てた。

 

何かが砕けた。

 

体内で弾ける剣の弾丸は衛宮士郎(この身体)を切り刻む。

 

 

「そうだ。」

 

 

俺は誓ったはずだ。

 

誰に?

 

あの───に誓ったはずだ。

 

『あんたの生徒達は───』

 

俺はなんと言ったのか

 

『俺がきっちりと───』

 

──は、俺に何を託したのか

 

 

 

間違えるな。

 

今の衛宮士郎はなんだ?

 

 

 

そんなの────言うまでもない。

 

あの人の期待を、裏切ってはならない。

亡くなった者の意志を軽視してはいけない。

記憶から引き出せずとも、忘れてはならない。

 

 

 

 

 

「俺は、見守らなきゃいけない。──

 

それこそが、衛宮士郎に許されている仕事(役割)だ。」

 

俺の答えにため息をついてなお、彼女は一応のこと安心したように話してくれた。

 

『そうです。ようやくお分かりになられたようですね。

 

お渡ししたタブレットは持っていますか?』

 

「あぁ、これか。」

 

傷のひとつもない。

高そうだから壊したら大変だ、ということで最初から、あえて遮蔽物に置いていた。

 

 

『先生にやっていただくのはあくまで戦術指揮です。』

 

戦術指揮って....。

俺に生徒達に人を傷つけさせろってのか?

 

「.....俺には「退いた方がいい」とか「今だ!攻めこめー」くらいしか出来ないぞ?」

 

なんだってこんな事に....。

 

()()戦争で培った経験値がこんな嫌な役の立ち方をする事になるなんて。

 

 

『.....むしろ、それで十分です。

 

指揮に自信はお有りですか?』

 

「まぁな。

....これでもちょっとした戦争をセイ──

使い魔と生き抜いた人間だ。」

 

『説明も?』

 

「不要らない。

 

あぁ、でも見たことない兵器とか、俺の世界...?での常識と異なるもんが出てきたら頼む。」

 

嘘偽りなく答えると七神が皆に通達する。

 

『分かりました。

 

では皆さん。

今から衛宮先生が戦術指揮を取ります。』

 

 

早瀬達の声が聞こえた。

 

『今度は戦術指揮をとるんですか?

まぁ、むしろそれこそ、「先生」って感じしますけど。』

 

『....いささか腑に落ちない点がありますが、分かりました。

先生の指示に従います。』

 

まぁ、あんなことがあった後だ。

信用してくれって言う方が土台無理な話だろう。

 

「悪い皆、力を貸してくれ。」

 

 

『『はい!!』』

 

 

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