衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】   作:神宮寺志狼

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先に告げる。
「ただ"の"1度の敗走もなく。
ただ"の"1度の勝利もなし」
は誤記ではない。
原作をプレイすればわかる。
wikiはルビは間違いでもある。
by「厄介オタク筆者」


────────────────────────────────────

────その体は諸刃。
足には枷がつき、これまでの道を進むのすら困難だ。

それでも、彼は──────────



#2 アンブレラ ラフレシア

Interlude 2-1 Burst Up

 

『なるほど....』

 

天雨アコは戦況を俯瞰する。

 

ボロボロである筈の彼の率いるチームは想定以上に粘っていた。

いやそれどころか四個中隊を相手にしても粘るどころが撃破してこちらに迫ってくる。

 

迫撃砲を再度使用するべきか?

いやそれは最後だ。

 

彼らに勝ち目が見えたところで上空から砲弾の雨を注ぎ黙らせる。

衛宮士郎という大人を自らの掌で踊らせる。

 

これが一番の目的に切り替わった。

 

気に入らない。

 

彼は聡明で純粋だ。

だからこそ、空崎ヒナという人物に対して一切何も間違っていない解釈をした。

 

一度会って話しただけというのに何もかもわかった気になって私達への説教にその名前を出す程度には。

 

腹が立つ。

 

思い出せばそれは朝、チナツからの車の手配依頼を蹴った時からだ。

多忙な風紀委員長に会いたいという一切のこちらに配慮のない要望を出したシャーレの先生が気になって調べてみた。

 

最初はチナツの報告書を握り潰し、委員長に提出しなかった自分を恨みこそした。

しかし読んだ報告書の内容はありえないものだった。

 

「魔術師」「正義の味方を名乗る先生」

 

報告書の内容に書くにしてはそれは不似合い。あれを提出などすれば頭がおかしくなった、と疑われる。

 

確かめたかった。

シャーレという組織もそうだが、衛宮士郎という個人を。

 

「第一中隊、全滅です!!退却し、再度整備に入ります!」

 

「第三中隊被害甚大です!

これ以上の戦闘続行は不可能!

補給の為一時退却します!」

 

 

『だいたい把握出来ました。

シャーレの力、必要となるであろう兵力。

 

予想を遥かに上回っています。.....素晴らしいですね。

 

決して軽んじていた訳ではないのですが、もっと慎重に進めるべきだったかもしれません。』

 

 

しかし──────────

 

『第八中隊、後方待機をやめ、突入を開始してください。』

 

 

風紀委員長命令

それにより、この一時だけ、風紀委員会の兵力全てを借り受けている。

 

内容は「便利屋は68の動向の調査」

 

この一言だけである。

何故そんな命令が下されたかは知らない。

が、下された命令だけをこなしていてはただの新兵。

 

排除なり捕縛なりは自分で考えろということ。

 

 

 

まだまだ兵力はこちらに分がある。

そして相手は死に体。

 

いつかは膝をつく。

 

 

委員長とコンタクトを取ったのならいずれあの先生とも共同戦線を張る日が来るだろう。

 

なればこそ、あの男の真の力を引き出し、把握する必要がある。

それに少しは意趣返しがしたい。

 

圧倒的な数の前に、生半可な兵士一人では何も出来ないのだと。

 

『さあ、いつまで持ちこたえられますか、先生?』

 

Interlude 2-1 Burst Up END

 

 

 

突破口──窮鼠

 

『風紀委員会、第三陣を展開してきました!!』

 

その報告を受ける時にはもう皆、膝に手を付き前かがみになり、肩で息をして聞いていた。

 

「はぁ....はふぅ...ま、まだいるわけ?」

珍しくセリカが弱気になっている。

いつもであれば「上等、かかって来なさいよ!」とでも言っているだろう。

 

 

カヨコが口角を歪めて警告する。

 

『先生、これはもうアコの権限で動かせる兵力を超えてるよ。

 

読み違えたかもしれない。

もともとこれはアコの独断なんかじゃなくて.....』

 

 

「違う、ヒナが理解していたらこんなの話し合いで済む筈だ。

でなきゃこんな────」

『現実を見て!先生!』

 

「もしかして、委員長も来てる感じ?これ。」

 

ムツキの一言。

「ヒナが来る。」

 

その言葉を聞いただけで、アルの態度は一変した。

 

「えっ!?ヒナが来るの!?逃げるわよ!早くっ!!」

 

逃げ場などあるわけが無い。

そんな事は百も承知で彼女は言った。

 

つまり、状況を正しく認識し、的確に行動している現実主義者であろうアルがそれ関係なく「逃げたい」というレベルなのだ。

 

行動より先に心がヒナという存在に負けている事の証左だった。

 

 

『いや、そうは言っていない。

落ち着いて社長。』

 

怯えるアルを励ますことしか俺には出来ない。

 

「ヒナが来たら俺が交渉する。だから安心しろ。

このままじゃ逃げたくても逃げれない。」

 

現実を見ろと。

 

「....え、えぇ、分かってるわよ先生。」

 

不安げな表情。

ほんとにこれが冷酷非道なアウトローの姿か。

 

違う、怖いものに怯えるのは誰だって同じだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

次々と投入される戦力。

 

限りある弾数と体力。

 

一番最初に倒れたのは、ハルカほどのタフさを元々持っていなかった前衛のセリカだった。

 

(パパパパパパッ!!)

 

「あうっ!!!────────」

 

走り回って居た彼女の判断力は落ちていたのか、偏差射撃に対する回避方向を間違えた。

 

一射で足を止めた彼女は狙い撃ちされ、

 

 

(.....パタリ)

 

受身を取ること無く、うつ伏せに倒れる。

 

 

「セリカ──────!!」

 

ハルカもノノミも、前線から抜けた美食研究会の穴を埋めるため、余裕が無い。

動けるのは俺だけ。

 

倒れたところに風紀委員が群がっていき、その銃口でセリカの頭をつついた。

 

「気を失ったふりをしてるだけかもしれない!油断するな!」

 

そんな言葉と共に、セリカの側頭部に突きつけられたアサルトライフルの銃口。

その生徒の人差し指に力が入る。

 

セリカの頭の上にあったヘイローは消えていた。

 

 

 

 

 

その光景が、俺の理性と、被弾による死の恐れをかき消した。

 

 

 

 

 

 

「──────。」

 

右手に握る干将を投げた。

 

(ガキィン────ダダダダダッ!!!)

「え、あれっ...何!?」

 

その刃はその生徒が構えた銃口を逸らした。

短刀の飛来による奇襲に、その生徒達は腰を抜かしている。

 

体は吹き抜ける風のように疾走する。

 

 

「────あぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!」

 

左腕で莫耶を振りかざす。

 

「■ロウッ、──止■■■■!」

 

 

「このっ!!」

 

振りかぶった莫耶はその生徒が両手で持ったアサルトライフルに防がれ、弾き合う。

 

 

しかし、

 

 

(ドスッ!)

 

「───。うっ....。」

 

アサルトライフルを弾いた筈の干将が鍔迫り合っていた生徒の後ろから突如として飛来。

 

その刀身は確実にその生徒の背骨にくい込み剣は砕けた。

 

生徒はセリカと同じように倒れ込んだ。

 

─────それを認識した途端。

 

「がっ──────」

 

 

─────干将を投擲した右腕が、花火のように体内から剣と血飛沫を吹いた。

 

 

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ─────」

 

 

 

 

まるでこの世界で、『先生』が『生徒を傷つける』事があってはならないと、言うように。

 

片膝をつく。

 

『衛宮先生ッ!?

 

セリカちゃん!!セリカちゃん!!お願いだから起きて!!起きてくださいッッ!!』

 

アヤネの悲痛な叫びはセリカに届かない。

 

 

 

前衛であるセリカが倒れ、穴が広がった前線、そしてその身を守りながらの戦闘で、俺たちに勝ち目はなかった。

 

ノノミとムツキが倒れ、アルが倒れ。

 

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……。

 

ごめんなさい、先生....。」

 

「ハルカッ!」

 

前倒するハルカを左腕で支えた。

 

立っているのは俺一人だけ。

「─────────────」

 

 

 

『終わりです衛宮先生。投降をオススメしますが。』

 

「.....その場合皆をどうする気だ。」

 

 

『そうですね、奥空さんに、容赦はしないと言ったばかりなので─────』

 

投降しても、みんなを撃つ気か。

 

 

 

『先生の身柄は保証しましょう。』

 

 

 

『───────ホシノ先輩!ホシノ先輩ッ!!皆が!皆が...ッ.....』

 

アヤネは涙を浮かべ、ホシノに連絡を取ろうとしている。

 

「..........。」

 

俺には腕の中にいる、傷だらけになったハルカしか見えない。

 

生徒を守れなくて、子供を守れなくて、何が先生か、何が大人か。

 

崩れる。

これまで衛宮士郎を支えてきた全てが。

誰も救えないなら────────

 

 

 

 

─────衛宮士郎はここで死んでしまえばいい

 

 

 

「体は──────」

 

『はい?』

 

 

ハルカをゆっくりとその場に寝かせた。

 

 

「─────I am the(体は) bone of(剣で 出来ている) my sword.

 

 

 

耐えられず呟いた自傷の言葉。

 

 

『.....え、衛宮先生。一体、何を.....』

 

困惑するアヤネや天雨。

 

 

『先生!やめてください!

本当に死んでしまいます!!』

 

アロナの声が、聞こえた。

しかし、体は止まらない。

 

進む道も振り返らないと誓ったその後ろさえ、今はもう分からない。

 

 

 

エミヤの言葉はエミヤを傷つけるだけ。

 

倒れた生徒は多かれど。

今、その死の匂いと煙と炎の中で燃えているのは、ただ一人。

 

「私は先生の事信用してるよ。

だから信頼させてね。

約束して、絶対死なないって。」

 

 

心の中で、ホシノに謝った。

固有結界など、この状況で使えば、確実に死に至るだろう。

 

 

 

「──── steel is(血潮は) my body(鉄で), and fire is my (心は 硝子)blood.

 

 

 

魔力など、とうに足りていない。

 

万全でなければ開けない心を曝け出そうというのだ。

全身から魔力を集めても足りない。

 

 

そして、展開したところで戦う相手は生徒。

 

どちらにしろこれは今の衛宮士郎にとって、文字通り「死」の言霊である。

 

 

 

「──I have created over (幾たびの戦場を越えて不敗。)a thousand blades.

Unaware of loss.(ただの一度の敗走もなく、)

Nor aware of gain(ただの一度の勝利もなし)

 

 

言葉の通りに、体から剣が生えていき、それは崩れていく。

その度に、体は切り裂かれ、裂傷から血が流れ出ていく、無駄な魔力は流せないというのに。

 

周囲の大地には剣が現れ始め、鋼鉄のアスファルトは、あの荒野へと変わっていく。

 

 

 

無力だった。

皆倒れた。

 

アイツらの手助けをするどころか、俺は手を伸ばすことさえ。

彼女達の代わりに戦ってやることさえ出来なかった。

 

 

『わ、わかりました!衛宮先生!

止まってください、そのままでは本当に──────』

 

「容赦をしないと言ったのはお前だ、天雨。

追い詰めた相手がどんな手段を持っていて、どんな手に出るか。

 

もう少しお前は、考えておくべきだった。」

 

俺を囲むように炎の円が出来る。

 

それは広がり、完全にこの世界に、俺の世界を落とし込んでいた。

 

 

血を吐き出す、何度でも。

それでもこの体は止まらない。

 

心はとっくに急制動を掛けているのに。

 

 

 

 

血が逆流する。

 

「────With stood pain to (担い手はここに独り)create weapons.

waiting for ones(剣の丘で鉄を鍛つ) arrival

 

『か、構いません!手でも足でも撃ちなさい!!

 

このまま死んでしまったら始末書だけでは済みません....委員長に見せる顔が!』

 

 

俺が止まらないと判断したのか、

 

 

 

天雨は射撃を命じた。

 

 

それを、展開しかけた固有結界範囲内にあった剣が、仮の持ち主を守ろうと、勝手に相殺する。

 

(ごぼっ....)

 

また鉛弾が口から体外へと流れ出る。

 

「───I have no(ならば、) regrets.This is(我が生涯に意味は要らず) the only path.

 

 

My whole life(この体は───) was────────────────」

 

(ドォォォン!!)

 

(バリバリバリバリバリバリバリッッッ!!!)

 

(ダダダダダダダダダダダダダッッッッ!!!!)

 

───────その場に、数度の銃声が、響き渡った。

 

 

詠唱が中断される。

 

 

「「先生ッッ!!!!」」

 

 

 

その声はアロナが呼んだ藤河達。そして

 

 

「─────アコ」

 

 

昼間とはかけ離れたほどの殺意を、自らの部下達に向ける、ヒナの姿だった。

 

「行けぇ!!」

「進め!!」

 

「シャーレの影に藤河組あり!

衛宮先生の力(私たち)を思い知らせてやれ!!!」

 

聞こえる雄叫び。

 

 

「士郎!無事っ!?」

藤河の声が聞こえる最中、俺は意識が霞んでいく。

 

詠唱の中断もあり、強烈な吐き気がする。

 

展開された剣は、行き場を失い、元にあった場所、全てが俺の体に戻ろうとする。

 

 

(シュッ!!)

 

(バババババババッッ)

 

藤河の仲間が、すんでのところで剣を破壊した。

 

「おい!お前達は倒れてる生徒たちを安全な場所に!

この際だ!風紀委員の生徒ともまとめてだ!!」

 

「「応ッ!」」

 

あぁ、安心した。

ちゃんと、配慮してくれている。

 

 

その成長は俺の行為が無駄ではなかったと、そう告げている。

 

『委員長!?どうしてそちらに!?』

 

「アコ、私は便利屋68の動きについて調べて欲しいと言ったはず。

何故、アビドス生徒やシャーレの衛宮先生と戦闘しているの....?

 

きちんと説明して。」

 

 

そうは言うものの、ヒナの放った殺気は、片っ端から倒れている生徒に救助活動をする藤河達を止める程だった。

 




やりすぎました。

反省します。

ですが謝らない。

Vol1 2章終了後、見たい絆ストーリー。とある事情により絆が深まらないのでホシノを除く。

  • 黒見セリカ
  • 砂狼シロコ
  • 奥空アヤネ
  • 十六夜ノノミ
  • 早瀬ユウカ
  • 羽川ハスミ
  • 空崎ヒナ
  • 本編を進めろ余り我を待たせるな雑種
  • 全部書け、そのような泣き言聞く耳持たん
  • 「バカの藤河は何処だ!」
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