衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】   作:神宮寺志狼

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#3 対峙/ゲヘナの風紀委員長

『ゲヘナの風紀委員長...空崎ヒナさん....どうして、ここに.....。』

 

 

アヤネが唖然としていると、突如通信が入った。

 

 

『一応、私もいる。』

 

ホログラムに写る人物の名前を俺は叫んだ。

 

 

「シロコ!無事だったんだな!!」

 

 

『.....シロウは後でお説教。

私じゃなくて多分ホシノ先輩の。』

 

死なない程度に頑張ってね、とこんな俺を見てため息をついた。

 

 

 

一方。

 

『わ、私は命令通りに便利屋68の──────』

 

 

(バババババババババババッッ!!)

 

ヒナが空に向かって弾幕を放ち、天雨の言葉をかき消した。

ポロポロと、弾丸が自身の体に降り注ぐことも厭わずに彼女は話す。

 

「確かに私は便利屋68の調査をしろと、命令したわ。

だけど、その命令には調査としか書かなかった。

手出ししないように、と付け加えなかった私にも非はあるけど、独断専行したのはどういう了見?

 

それで?アビドスの自治区の防衛範囲内で戦闘を起こして、政治的中核を担う2人に傷をおわせて、戦争でも引き起こしたいの?貴女。」

 

『い、いえ、私はそんなつもりでは─────』

 

「つもりではない?

それが言い訳になるとでも?

 

貴女に風紀委員会の全兵力を与えたけれど。

それは場合によっては便利屋68の背後にいる企業と戦闘になるかもしれなかったから。

 

私たちは風紀委員会であって生徒会じゃない。

政治的問題行動を起こしたら私達だけでは解決できないのよ?」

 

 

『ですがここはアビドス自治区─────』

 

()()()()()()()けど、何?

 

貴女が対峙していたのは連邦捜査部シャーレ。

衛宮先生の意思一つで、このキヴォトスのゲヘナ学園以外の勢力を味方にすることだって出来たわ。

 

仮にそうなっていたら貴女に勝算はあった?

いいえ、無いわ。

 

いまそうなっていないのは、単純に衛宮先生の優しさよ。

情けをかけられた状態で、戦闘に勝って、ヘイローのない先生を叩き潰して?

今どんな気分かしら。」

 

 

『───────────────。』

 

ヒナは反論を許さず、天雨は口を閉じた。

どのような言葉も、ヒナの前ではもう、意味をなさなかった。

 

「見なさい。

シャーレの生徒達を。

 

彼女達は学籍を持たない不良の生徒だった。

気性の荒かった彼女達が自分の恩人である先生をここまでボロボロにされて。

それでもなお、愚行を犯した風紀委員(私達)を安全地帯にまで運んで治療までしている。

 

チナツ。

私が許可するから一部の生徒を連れてシャーレの生徒に同行しなさい。

それ以外の全員は武装解除し、待機。」

 

『委員長!わ、私は────』

 

 

「私が与えた任務も明日からでいいと言ったのに、何故休まなかったの?

 

もういい、説教は後回し。

自室で謹慎しつつ、休んできなさい。

 

明日も1日謹慎、いいわね?」

 

 

『......はい。』

 

 

口を開くなら今しかない。

 

「ヒナ!!」

 

彼女は申し訳なさそうに視線を下げ、先程の雰囲気とは打って変わって、その声はか細くなった。

 

「ごめんなさい.....先生。

私、余計な事をした。」

 

「そんな事はどうだっていい、なんで藤河達と。」

 

 

「......シャーレから私宛に電話が来たの。

衛宮先生が風紀委員と止むを得ずに戦闘している。

 

これはどういう事だ、とね。

 

事情を把握した私は拘束されていた砂狼シロコを解放し、藤河さん達に協力を仰いでここにきた。

 

 

ごめんなさい....もっと早くここにこられていたら。」

 

 

「いや....悪い。

それは俺じゃなく、倒れた皆に言ってくれ。」

 

 

 

 

 

「──────ねぇ、先生、どういう状況?」

 

 

そして、その場に現れた生徒2人。

 

 

「士郎さんっっ!!!」

 

ワカモが駆け寄ってくる。

寄りによって今来て欲しくない人物が。

 

「こんな.....こんな....」

 

(ギロッ!)

 

ワカモがヒナを睨んだ。

 

彼女は弱々しく瞳を背ける。

 

 

「先生、凄いことになってるね。」

 

俺の真後ろから声をかけてくるのは、ホシノだった。

 

 

「.....悪い、上手くできなかった。」

 

何が、なんて言わない。

 

「いやー、咎めるつもりは無いよ?

藤河ちゃん達から少し話は聞いたし。

 

こんな激しい戦闘の中、以前の先生だったら間違いなく最初に出て行ってやられてたよ?」

 

 

違う。

 

前に出たい意思を抑えたんじゃない。

抑えられたんだ。

 

『ホシノ先輩!!今までどこに居たんですかッ!』

 

アヤネがキレている。

 

「流石に、昼寝してたー、で済まされる雰囲気じゃないね~。

遅れてごめんね。」

 

 

「ホシノ.....って小鳥遊ホシノ.....?」

ホシノに対して、ヒナが視線を逸らした。

 

なにか思うところがあるのだろうか?

 

 

「ゲヘナの風紀委員長さん。この状況、貴女の口から説明して欲しいんだけど。」

 

「......。」

 

(スチャッ!)

 

沈黙したヒナにワカモが銃を向けた。

 

「.......責任、取ってくださいますわよね?」

 

 

 

 

『───もう少し、気の利く大人にならなくてはな。少年。』

 

 

 

 

ここでアイツの言葉が思い返される。

このままでは本当にアビドスとゲヘナとシャーレの関係が拗れてしまう。

 

「あ、痛たたた.....!!」

 

と、我ながら演技力ゼロの声。

 

 

「「衛宮先生!!」」

「士郎さんっ!?大丈夫ですか!?」

 

と三者三様に俺の方に駆け寄ってきた。

 

「悪い、かなり辛い。

 

悪いけどホシノ、ワカモ、ヒナ。

 

シャーレまで同行してくれないか?

反省会はそこでしよう。」

 

ホシノとワカモとヒナ3人とも反省する点など一切ない。

しかし、俺の意思を汲み取ったホシノがヒナとワカモに促す。

 

「いやぁ、おじさんも腰が痛いなぁ~年寄りをあんまり立ち話に参加させないでくれないー?」

 

その様子に驚くヒナ。

 

「貴女。本当に小鳥遊ホシノ?

....1年生の時とは随分変わった。

人違いじゃないかと思うくらいに。」

 

「ん?私のこと知ってるの?」

 

「......情報部にいた頃、各自治区の要注意生徒達をある程度把握してたから。

特に小鳥遊ホシノ。

貴女のことを忘れるはずがない。

あの事件の後、アビドスを去ったと思ってたけど。」

 

「.....。」

 

ホシノは一瞬ヒナを真顔で見つめる。

 

「 .....ごめんなさい、先生、私に貴方の傍にいる資格なんて───」

 

翻るヒナ。

ここで逃したら、もう彼女は二度と俺と顔を合わせないだろう。

 

その小さく怯えた肩を掴む。

 

「......ダメだ。帰ることは俺が許可しない。」

 

「別に、私はシャーレの所属になったつもりは無いのだけれど.....」

 

 

拒絶の意志をみせるヒナ。

 

「1度でも『先生』なんて呼ばれたら俺はお前の先生だ。

だからシャーレの所属だし、嫌がってもそうする。

 

それに、ここで帰ったら正式にゲヘナに訴える。」

 

 

一刻も俺から離れて泣き出したいだろう、その姿をそんな汚い手で引き止めた。

 

ワカモもホシノもドン引きしている。

 

 

「ずるい人.....そんなこと言われたら、私帰れない。」

 

 

俺はあえて続ける。

 

「後処理があるって言うなら、そんなの明日でいい。

 

さっきの話からすると、天雨、随分と寝てないんだろ?

休ませてやれ。

それとお前もだ。

罰としてシャーレで数日間は俺の世話をしてもらうぞ。」

 

と強引に話を持ち込んだ。

 

 

「.....わかった。」

 

 

そう言うと、ヒナは命令待ちしていた部下達に撤収の合図を送った。

 

 

「でも、衛宮先生さぁ、普通に考えてその傷は病院行った方がいいんじゃない?」

 

 

病院に行って治るならマシだが、そうはならない箇所もある。

 

「言峰を呼びつける。」

 

「え.....あなた様、まさかあの腹黒神父とお知り合いで....?」

 

意外にもワカモがその呼び方をした。

 

「なんだよワカモ、しってたのか?言峰の事。」

 

 

「知ってるも何も、私を焚き付け、先生と出会わせてくれたのはあの男ですから。」

 

 

「──────────は?

 

ちょっと待て!!D.U襲撃の件、言峰の仕業だったのかよ!!!!」

 

俺の焦りにワカモはしれっと嫌味を口にする。

 

「言ってもどうせ『私は聞かれたから答えた迄。』と言いますわよ。あれは。」

 

 

「.........」

 

酷いヤツだ。

 

「話は後 後~、セリカちゃんとノノミちゃんは今救急車来たみたいだから。」

 

『美食研究会はしれっと離脱しました。無傷で。』

 

次々と報告が来る。

アヤネの最後の言葉が、すこし恨み言のように聞こえた。

 

 

「衛宮先生!車に乗ってください、皆さんも早く!」

 

藤河の仲間に支えられ、俺はホシノ、ワカモ、そしてヒナと車に同乗した。

 

薄らぐ意識の中、俺が最後に見たのは。

 

「綺麗な肌色 .....」

 

 

 

Interlude 3-1 深き眠り

 

 

限界だったのか、その人は傷ついた身体を横たえて、私の膝にストン、と頭を横たえた。

 

髪の毛の感触に身体を震わす。

 

「え....え?衛宮先生?」

 

脈もあり息もしている。

そして、傷はとうに塞がっていた。

傷ついた体を治すため睡眠をとっているのか。

 

私が余計な事をアコに指示した。そのせいで傷ついてしまったその体。

それを退けようなどとは微塵も思わなかった。

 

ただ、こちらを睨む者2人、罪悪感で心が押し潰れそうになる。

 

 

「ごめんなさい....。」

 

ただ楽になりたくて謝った。

もう一言アコに伝えていればこうはならなかったかもしれない。

 

 

そんな私を、彼女たちは責めない。

 

それが私にとっては辛かった。

 

 

「聞いた話風紀委員会の1人の独断行動でしょ?

風紀委員長ちゃんは悪くないでしょ。

むしろ謝られてもおじさん困っちゃうよ。」

 

 

「私が文句を言いたいのは、士郎さんが傷ついている間何をしていたのか。ということです。

 

あと、位置変わってくださいます?」

 

 

そういうので狐坂ワカモに場所を譲り、彼の頭は再び、人肌の枕の上に置かれた。

 

 

「そんなこと言ったら私達もその場にいなかったじゃん?ヒナちゃんの事だけ責められないよ。」

 

「そ、それもそうですが.....」

 

 

 

「衛宮先生は優しいからねぇ~、きっと私達のこと見てられなかったんだろうね。

それに戦闘に参加してない各グループのリーダーだから客観的に話し合えるとも思ったんだろうね?

 

だからシャーレに招いたんだと思うよ?

 

それにヒナちゃんその目の下のクマは寝てない証拠でしょ?

多分先生は見抜いてるよ。」

 

 

「......そうね。」

 

 

ホシノの端末に通信が来る。

 

『ホシノ先輩、少しご相談したいことが。』

 

「ん?何ー?

あ、遅れちゃった件はほんとに申し訳ないと思ってるよ。」

 

『いえ、それはまた後日きちんと事情を聞かせていただきます。

 

それはさておき。』

 

 

奥空アヤネから語られる、衛宮先生の「奥の手」

 

 

「自分を傷つけるような言葉ねぇ....魔法使いってそんなもんなんじゃないのかな。

良くは知らないけど。

ワカモちゃんは?」

 

「.....いえ、士郎さんは魔術を平和利用していました。

 

粗大ゴミを回収して修復して使えるようにしたり、魔術の鍛錬として陶器や器なども。

 

士郎さんが戦闘で魔術を使うところは殆ど見ておりません。」

 

「....そう。」

 

 

『私は、衛宮先生の周囲の状況が変化するのを確認しました。

 

アスファルトだったはずなのに唐突に荒れた大地に変わったんです。

 

その大地には剣が突き刺さってました。

 

.......そういえば、先生が初めて被弾したあの日。

 

D.Uで私は先生の傷口を見ました。

 

傷口には剣が覆うようにびっしりと詰まってたんです。』

 

「.......やっぱり魔法、使わせない方がいいかもね。そもそも先生の魔法は寿命を削ってるんだし....」

 

「寿命を.....削る?」

 

小鳥遊ホシノは意味のわからない言葉を言い始めた。

 

先生は自らの命と引替えに魔術を使っているのだと。

 

 

「衛宮先生の魔術特性?

それがこのキヴォトスでは珍しい「剣」なんだって。

 

概念的価値が下がってて、使っていく事に衛宮先生は危険になっていくみたいだよ。」

 

「.........」

 

 

アコの罪が重くなった。

そして思ったことが1つ。

 

「ねぇ、小鳥遊ホシノ。

衛宮先生は「銃」は持っているの?」

 

「.....銃はアビドスに置いていったよ。

シャーレに戻るから危険じゃない 、って返された。」

 

おかしい。

中折式の銃を、彼は持っていたはず。

 

 

「あぁ、それは衛宮先生の魔術で作られた銃だよ。」

 

運転席の藤河という生徒がそう言った。

 

 

「.....衛宮先生はゲヘナでも一度魔術を使ってる。

 

私達、正確には先生を攫った美食研究会を追撃中、道路標識が落ちてきてイオリ....私の部下が車の下敷きになりそうなところを彼は銃を使って標識の落下軌道をズラしてくれた。」

 

 

イオリも、そしてD.Uで衛宮先生に助けられたと口にしたチナツも恩を仇で返している。

 

やはり合わせる顔がない。

 

「─ッッ!やっぱり私ここで─────」

 

走行中のバンのドアを開けて身を投げ出そうとした。

 

「ダメだよ。」

 

私の知っている小鳥遊ホシノの声で、腕で止められる。

 

 

ゴォォと吹き抜け、皆の髪を風が乱した。

 

髪の間から、鋭い視線を向けられた。

 

「きっと、ヒナちゃんが帰ったら、今の先生はガッカリする。

 

ヒナちゃんにじゃないよ。自分自身に。

 

間違えた、って。

 

やり方を間違えたって。

ゲヘナになんて行かなければよかった。

ヒナちゃんに余計なことを言わなければよかった。

 

そもそも自分は先生に相応しくなかったんだって。

 

セリカちゃんもノノミちゃんも、先生の目の前で大怪我した。

 

人助けが形になったような先生は今凄く傷ついてる。

 

そんな衛宮先生をさらに傷つけてどん底に突き落とそうって言うなら」

 

 

 

ショットガンの銃口が顎に突きつけられる。

 

 

「例えゲヘナの風紀委員長であっても、容赦しないよ。」

 

冷たい、その眼差しは間違いなく、過去、1年の時の小鳥遊ホシノだった。

 

 

「..............わかっ.....た。」

 

そういうと銃は下ろされる。

 

「皆混乱してるんだよ。

シャーレで寝たらスッキリすると思うからさ~。

 

話し合いは明日にしようよ。」

 

 

「うん.....。」

 

 

私は弱々しく、返事をすることしか出来なかった。

 

その後シャーレに到着し、先生を寝かせ、仮のベッドで横になる。

 

 

 

しかし、先生はその後、5日間程目を覚ますことは無かった。

 

 

 

Interlude 2-3 深き眠り END

 

 

Vol1 2章終了後、見たい絆ストーリー。とある事情により絆が深まらないのでホシノを除く。

  • 黒見セリカ
  • 砂狼シロコ
  • 奥空アヤネ
  • 十六夜ノノミ
  • 早瀬ユウカ
  • 羽川ハスミ
  • 空崎ヒナ
  • 本編を進めろ余り我を待たせるな雑種
  • 全部書け、そのような泣き言聞く耳持たん
  • 「バカの藤河は何処だ!」
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