衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】   作:神宮寺志狼

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#5 捨てられた砂漠/アビドス砂漠へ(Ⅱ)

 

砂漠に向かう途中、何度もホシノに連絡を取ろうと試みた。

届かない。

 

繋がらない。

 

『衛宮先生!アヤネさんならどうでしょう?

いつもオペレーターとして校舎に残っていた彼女になら────』

 

「連絡着くかもしれないって事か。」

アロナの予想はドンピシャ。

 

『衛宮先生?お体の方は大丈夫なんですか?

それに、なにやらガタガタと音が────』

 

「話は後だ。

ホシノ達は今何処にいる!?」

 

『すみません、レーダーも通信も全てノイズまみれなんです。

.....磁気嵐の影響にしては突然すぎます。

もしかしたら意図的に通信妨害を引き起こされているのかもしれません....』

 

「そうか.....。」

 

アビドス校舎にあるアヤネ達の通信機器はアロナによればかなり強力なものらしい。

まぁそうでも無ければ遠距離でのオペレートなど出来ないだろうが....とにかく強力な通信をジャミングすると言うのだから十中八九カイザーの手回しで間違いないだろう。

 

 

『はい、衛宮先生はどちらに?』

 

「俺は今送ってもらった座標に向かってる。

安心してくれ、藤河達、それにワカモと一緒だ。

 

アヤネ。ホシノ達が向かっている地域の土地主は?」

 

 

『......カイザーコーポレーションです。』

「やっぱりか.....」

 

『衛宮先生、どうかしたんですか?』

 

「それを話す前に先に聞いておきたいんだがアビドスの土地は先代の対策委員会、アビドス生徒会が売ったんだよな?」

 

『はい....契約書などを見る限り衛宮先生の仰った通りです。』

 

当たり。

 

「次、アビドスにお金になりそうなものってなんかあるか?

土地由来の物とか、例えば鉱山とか燃料とか。」

 

『いいえ、ホシノ先輩曰く『そんな物があったらとっくに目をつけられて盗まれてるよね』だそうで....』

 

これも当たりだ。

 

「つまり、カイザーは土地その物が目的だったんだろう。

10億の金を損失しても帰ってくる程のものが、このアビドスの土地、またはどこかにあるんだ。

 

アヤネ、例の地点における過去の物資搬入記録とかって分かるか?

大規模なものが見つかればそれでいいんだ。」

 

これで出てくればよし、全く影も形もないと言うのであればそれはブラックマーケットの時と同じくカイザーが必死になって隠したいこと、という事だ。

 

 

『いえ....衛宮先生、ホシノ先輩達が向かう直前まで探していたんですが....何も。

 

砂漠に監視カメラなんてありませんから当然ですけど...。

街経由でのアビドス砂漠方面に向かう車両の痕跡すらないみたいなんです。』

 

 

「やっぱりか、だとしたら情報が流れてくること自体おかしいと思うんだ。」

 

『.....衛宮先生、それは、カイザーによる罠。という事ですか?』

 

 

断言はできない。

 

「カイザーが便利屋68を雇っていたのがゲヘナで調べが着いた。

アイツらとしては対策委員会は目の上のたんこぶなんだろう。

 

邪魔だから出ていって欲しい、だから追い出そう。

そういう魂胆なら何をしてくるか分かったもんじゃない。

 

とりあえずアヤネは現状待機だ。」

 

 

『ごめんなさい....最初は反対したんです。

「衛宮先生を待とう」って。

 

でもホシノ先輩やセリカちゃんが「これ以上は後手に回るかもしれない」って.....なので... 』

その結果が5日間。

アヤネ達は最後まで俺を待ってくれた。

その期待を裏切ったのは俺の方だ。

 

「寝てた分、働いてくる。

 

ちゃんとホシノ達を連れて帰る。だから安心してくれ。」

 

 

『はい、お願いします!』

 

 

 

 

Interlude 5-1 焦燥

 

時は遡ること、風紀委員会の戦闘があった2日後。

アヤネは調べ事で出かけていた。

 

 

セリカとノノミは帰ってきた。

 

「おはよう~、2人ともー。

家で寝てても良かったんじゃない~?」

 

ホシノ先輩はそう言ったが、少しだけ殺気立っている。

シャーレから帰ってきてから様子がおかしい。

 

てっきり無茶をしたシロウに対してまた小言を言うのだと、そう思っていた。

......その本人は今シャーレのビルで寝ているので、その苛立ちかもしれないが。

 

「散々だったわよ....ほんとに....」

 

ボロボロな姿でそう言った。

 

「ごめん.....私がヘマしたから....風紀委員会に捕まっていなければ....」

 

「あの衛宮先生は.....?」

 

ノノミがそれを口にすると、セリカも焦った。

 

「そ、そうよ!士郎は...?便利屋68は?

あの後どうなったのよ!!?」

 

「それはおじさんの口から説明するねー。」

 

戦闘の終息理由。

ホシノ先輩と風紀委員長との話し合いの結果。

 

「風紀委員のNo2ちゃんはかなり反省してるみたいだねぇ、衛宮先生の大怪我....ううん、自殺未遂と風紀委員長ちゃんからの説教が効いたみたい。」

 

「自殺未遂...って。」

 

ノノミもセリカも、顔が青ざめる。

 

「ホシノ先輩....どういう事ですか?

衛宮先生は何をしようとしたんですか!?」

 

 

「先生を治療した真っ黒神父さんによるとね、先生は自分の許容量を超えた魔術を使おうとしたんだって。

 

魔力が足りない中、大技使おうとして、発動できたとしてもそこで死んでたって言峰神父は言ってたよ。」

 

 

「.....その大技、って何?」

 

疑問に思う。

言峰神父の言が本当であるなら、これまでシロウは手加減をしていた事になる。

 

奥の手は最後まで隠すもの、とはいうがキヴォトスにきてシロウにはそんな余裕は無かったはず。

 

 

「.....固有結界、じゃないかって言ってた。

 

私も詳しい説明を受けたわけじゃないんだけどさ。

 

自分の心象風景、つまり心で、世界を上書きする、とんでもない魔術なんだって。」

 

「心象風景で....世界を書き換える....?」

 

3人して首を傾げる。

 

「ようは衛宮先生の思い通りの世界になるってこと。

 

ただ、魔力の消費とそもそもの発動条件を満たすのが難しくて、発動できても一時的なものなんだって。

それに衛宮先生が万全のコンディションでないと展開出来ないだろう、って言ってた。」

 

「嘘!!だって士郎ずっと魔法使ってたもの!!

迫撃砲を沢山の剣で迎撃したり、ホシノ先輩の盾とか作ったり!」

 

 

「.....セリカちゃんが倒れた時も、風紀委員の生徒さんと斬り合いをしてました。

不思議な剣でした。

投擲した後に、まるで意思があるかのように、衛宮先生の元に戻ってきたんです。」

 

「 .......なら十中八九、無理だよ。

天雨アコに追い詰められた衛宮先生は最後に自殺しようとしたんだ。」

 

「自殺....?自爆ではなく...ですか?」

 

ホシノ先輩は頷いた。

 

「風紀委員長ちゃんによると、当人の狙いは衛宮先生への意趣返しみたいなものだったらしくてね?

 

揶揄う程度だったらしいんだ。

慕っている風紀委員長ちゃんについての嫉妬....なのかなぁ?

 

その他にも魔法の情報収集を兼ねてたみたいなんだけどさ、最後の一言に衛宮先生がキレちゃったらしくて。

 

って言っても匂わせただけらしいんだけどさ。

「投降しないなら倒れてる皆を撃ち殺す」って。

 

だからその....アコちゃんに対してできる最大限の方法が。

 

自分の命を盾に懲りてもらうこと、だったみたい。

 

死ぬ寸前...って死んでないけど。

死の淵でも、誰かを更生させようだなんて、先生らしいね~。」

 

 

「「.........」」

 

笑えない。

本当に笑えなかった。

 

 

「じゃあ....私達一歩間違えたら.....」

 

「セリカちゃんのせいじゃないけどね、先生は今頃死んでたかもしれない。」

 

 

 

その後は誰も喋らない。

 

ホシノ先輩は顔を洗ってくるといって教室から出ていった。

 

 

ホシノ先輩の苛立ちはよく分かる。

けど、それだけじゃない。

 

完全に、なにかスイッチが入ってしまっている。

 

 

「ちょっ!?シロコ先輩!?」

 

 

私はホシノ先輩のバッグを漁った。

 

ただの勘だった。

それも嫌な予感。

 

そうしてそれは出てきた。

 

 

「なんですか.....これは....」

 

「ちょっとそれ.......」

 

ホシノ先輩のバッグの中に入っていたのは、退学届書だった。

 

戻ってきた本人を問い詰めたが

「こんなご時世だし?遺書くらい残しておいた方がいいかな~?」

なんて、シラを切る。

 

 

「これは私が預かってシロウに見せる。」

 

「まー、見つかっちゃったら仕方ないねー。いいよー、どうせ()()()要らないし。」

 

と意味深な発言をした。

 

皆言いたいことがあった、しかし、こんな状況だからこそ、何も言えなかった。

 

 

「皆さんこれを見てください.....ってなんですか....この空気。」

 

「気にしない気にしなーい。

それで?何がわかったのさアヤネちゃん。」

 

皆が待っていたアヤネが帰ってきた。

 

調査によるとアビドス自治区の大半の土地はカイザーコンストラクションの持ち物になっているらしかった。

 

「え!?どゆこと?アビドス自治区がアビドスの所有じゃないって.....そんなわけ....」

 

全員驚愕した。ホシノ先輩も今回は本当に何も知らないようだった。

 

「すでに砂漠になってしまった....本来のアビドス高校本館と、その周辺数千万坪の荒地。

 

そして、砂漠化が進んでない、市内の建物や土地まで....

 

所有権がまだ渡っていないのは、現在本館として使っているこの校舎と、周辺の一部の地域だけでした.......。

 

取引の契約は、アビドスの前生徒会長でした....」

 

アヤネの推測としては借金返済、もしくは利息分の代わりとして売ったのではないか、と。

 

「何をやってたのよ!その生徒会の─────」

 

セリカの怒声はそれ上回るホシノ先輩の声にかき消された。

 

それは宥めているようでもあり、まるで思い返したくないと、今思い出してしまえば、何もかも壊れてしまうと言わんばかりに。

 

「2年前ねぇ~。

 

そういえば風紀委員長ちゃんが言ってたんだけどさ──────」

 

そのアビドスから接収した土地のひとつである、アビドス砂漠にてカイザーグループは何かをしているらしい。

 

矢継ぎ早にやってくる情報に皆して困惑した。

 

 

「はぁ?そんなの調べに行くしかないじゃない!!なによ、その企んでる「なにか」ってなんでそんな曖昧なわけ?

.....って言ってても仕方ないし!

がたごと抜かす前にこの目で直接確かめに行くわよ!」

 

今にも駆け出しそうなセリカに、アヤネが待ったを掛けた。

 

 

「待ってください!衛宮先生がいない状態で行くのは......」

 

 

しかし、それに同意するものは、誰もいなかった。

 

アヤネだけが、シロウの状況を、現場で見ていなかった。

 

「ん、シロウは置いていく。」

 

私が代わりに、否定した。

 

「シロコ....先輩?」

 

 

「.....シロウは対策委員会....ううん、アビドスの私達の為に頑張ってくれた。

もう十分。」

 

私の言葉にホシノ先輩も同意した。

 

「そだね、衛宮先生をつれていったらまた怪我するかもしれないし、言っても止まらないしさ?」

 

ノノミも、セリカですら閉口している。

 

仕方なかった。

私がボディーガードとして護衛をしたゲヘナではシロウを守れずに攫われ、

セリカもノノミも、守ると誓ったシロウを最後まで守りきれなかった。

 

シロウを責めているものは誰もいない。

皆、臆病になっている。

 

「そ.....そんな、せめて少しでも待ってくださいませんか!?

現状を客観的に判断できている人はこの場にいないと思います!」

 

 

「.....なら5日だけ待つよ。」

 

ホシノ先輩は折れないアヤネに仕方なく妥協案を出した。

 

「神父さんが4日後には目を覚ますだろうって言ってた。

だから5日。

 

それで衛宮先生からなんの連絡もなければ。」

 

置いていく、とホシノ先輩は宣言した。

 

 

 

結局期限の5日後までホシノ先輩は教室には顔を出さず、退学届書について話を切り出すことも出来なかった。

 

シロウからの連絡も、無かった。

 

「本当に.....行くんですか、ホシノ先輩。」

 

「うん、アヤネちゃんの心配もわかるけどさ、これ以上後手に回る訳にはいかないでしょ。」

 

 

そうして、アビドス砂漠へ私達は向かった。

 

 

私達は、後悔した。

この判断を。

 

全てカイザー理事の手のひらで動かされてるとは知らずに。

 

 

interlude 5-1 焦燥 END




ホシノは誰かの姿を士郎に重ねていて、本編よりやたらと不安定です。

Vol1 2章終了後、見たい絆ストーリー。とある事情により絆が深まらないのでホシノを除く。

  • 黒見セリカ
  • 砂狼シロコ
  • 奥空アヤネ
  • 十六夜ノノミ
  • 早瀬ユウカ
  • 羽川ハスミ
  • 空崎ヒナ
  • 本編を進めろ余り我を待たせるな雑種
  • 全部書け、そのような泣き言聞く耳持たん
  • 「バカの藤河は何処だ!」
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